説明

粒子の生物活性化

粒子表面に生物活性化ペプチドを付着させることによって、粒子が生物活性化される。この生物活性化ペプチドは、粒子に1以上の生物学的に重要な機能を付与する、ペプチドを主体とする化合物である。各々の生物活性化ペプチドには、粒子の表面と結合する分子または表面認識部分、および1以上の機能性部分が含まれる。表面認識部分には、アミノ端およびカルボキシ端が含まれており、そして1以上の疎水性スペーサーおよび1以上の結合クラスターで構成されている。かかる機能性部分(1または複数)は、前記アミノ端および/または前記カルボキシ端で表面認識部分に付着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載および特許請求された発明は、部分的に、米国エネルギー省とザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・カリフォルニアとの間の契約番号第DE−AC03−76SF000−98号にて、米国エネルギー省により提供された基金を利用してなされた。政府は、本発明に所定の権利を有するものである。
【0002】
発明の背景
1.技術分野
本発明は、概して、生物システムにおいて使用され得るミクロ粒子および/またはナノ粒子に関する。さらに詳細には、本発明が対象とするのは、当該粒子の表面の化学的性質(surface chemistry)を従来の連結剤を使用することなく修飾し、生物システムとそれらの適合性を増強し、また1以上の生物学的機能を備えた粒子を提供することにある。
【背景技術】
【0003】
2.背景技術
生物システムの蛍光ラベリングは、現代のバイオテクノロジーや分析化学において使用される、よく知られた分析ツールである。かかる蛍光ラベリングの適用には、医療(および非医療)蛍光顕微鏡検査法、組織学、フローサイトメトリー、蛍光in−situハイブリッド形成法(医療アッセイおよび研究)、DNA配列決定,イムノアッセイ、結合アッセイ、分離などの技術が包含される。
従来より、かかる蛍光ラベリングには、ある部分に結合する有機染料分子を使用することが含まれており、その部分は次に、特定の生物システムに選択的に結合し、次いでその染料分子を励起することにより蛍光を発生させてその存在が同定される。かかる分析システムには、多くの問題がある。先ず第一に、励起された染料分子からの可視波長の光の放射は、通常広域スペクトルで存在することを特徴としており、すなわち、全体の発光スペクトルはかなり広域となる。その結果、広域スペクトル発光およびラベリング分子の発光テールに起因して、数多くの検出可能な異なる物質の存在を同時にもしくは同時でなくとも検出すること、または識別することが困難であるため、分析にて同時にまたは順に利用され得る、異なる色の有機染料分子の数には厳しい制限がある。他の問題は、ほとんどの染料分子が比較的狭い吸収スペクトルを有しており、かくして複数波長プローブ用に縦列もしくは連続的のいずれかで使用される多重励起ビームか、また他には、異なる波長でそれぞれに励起される一連のプローブの連続的励起用の異なるフィルターで連続的に使用される広域スペクトル励起光源のいずれかが必要とされることにある。
【0004】
既存の染料分子ラベルで直面することが多い別の問題は、光安定性に関するものである。利用可能な蛍光分子は、反復励起下(104〜108サイクルの吸収/放射)に、退色(bleach)するか、または非可逆的に発光を停止する。これらの問題は、試料が光に曝される時間を最小限に抑えること、ならびに試料から酸素および/または他のラジカル種を除去することによって解消されることがよくある。また、システムの研究用に電子顕微鏡技術で使用されるプローブツールは、蛍光による研究のために使用されるプローブと全く異なっている。従って、電子顕微鏡と蛍光の双方のために単一タイプのプローブで材料をラベルするのは不可能である。これは、多機能分子イメージング: 蛍光+MRI;蛍光+PET;蛍光+CT;蛍光+MRI+PET+CTおよび他の組み合わせの場合や、MRI+PET、CT+EMなどといった、蛍光を含まないような場合にもあてはまる。従って、生物学的および生物医学的用途のための安定な材料で、好ましくは広い吸収バンドを有しており、且つエネルギーへの曝露に応答して検出可能なシグナルをもたらすことができるものであって、染料分子の大きな赤色発光テール特性がなく(それにより、かかるプローブ材料(各々、例えば異なる狭い波長バンドの発光をするもの)の多数を同時に使用することが可能となる)、且つ/または散乱または回折放射ができるものを提供することが望ましいといえる。蛍光を用いる場合でも用いない場合でも、MRI/PET/CTなど、光および電子顕微鏡の双方により同じ試料を画像化するのに使用することのできる、単一の安定なプローブ材料を提供することが、同じように望ましいことといえる。
【0005】
半導体ナノ結晶(NCsまたは量子ドット)は、数百乃至数千の原子で構成される半導体材料の断片である。量子ドットは、量子閉じ込めに起因する、非常に興味深い光学的性質を有している。この閉じ込めは、粒子が、構成する材料のボーア励起子半径よりも小さい場合に起こる。
【0006】
半導体ナノ粒子が初めて合成されてからというもの、1〜7ナノメートル(nm)の範囲に量子ドットのサイズと単分散とを制御すべく、大きな進展が遂げられてきた。カドミウムおよびセレン化物(CdSe)などのII〜IV族由来の材料で作られた量子ドットに、特別な興味が寄せられた。亜鉛/硫化物(zinc/sulfide)の第2層で被覆されたCdSe粒子(CdSe/ZnS)は、光スペクトルの可視領域にて強い蛍光シグナルを発する。これらの材料で作られたナノ結晶のサイズを数ナノメートル変えることで、吸収特性を各サイズにつき類似としながら発光波長を調整することが可能となる。
【0007】
CdSe/ZnS量子ドットの化学合成には、CdとSeとの間の核形成および粒子の成長を制御するために、疎水性環境、および酸化トリオクチルホスフィン(TOPO)などの界面活性剤が必要とされる。この結果、水性環境においては可溶性の低い、高疎水性粒子が生じることになる。そこで量子ドットをプローブとして使用する生物学的用途のために、界面活性剤を除去して、粒子を生体適合性とし且つ水性溶媒中で可溶性とする、表面の化学的性質が必要である。
【0008】
米国特許第6,207,392号および6,423,551号明細書には、生物学的用途のための半導体ナノ結晶プローブならびにかかるプローブを製造および使用する方法が開示されている。このプローブは、半導体ナノ結晶、連結剤および親和性分子を含んでいる。本特許の内容は、その全体を援用して本明細書の一部となる。
【0009】
米国特許第5,990,479号明細書には、生物学的用途のための有機発光半導体ナノ結晶プローブおよびかかるプローブを製造および使用する方法が開示されている。本特許の内容は、その全体を援用して本明細書の一部となる。
【特許文献1】米国特許第6,207,392号
【特許文献2】米国特許第6,423,551号
【特許文献3】米国特許第5,990,479号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、粒子表面に生物活性化ペプチドを付着させることによって、粒子が生物活性化される。この生物活性化ペプチドは、粒子に1以上の生物学的に重要な機能を付与する、ペプチドを主体とする化合物である。各々の生物活性化ペプチドには、粒子の表面と結合する分子または表面認識部分、および1以上の機能性部分が含まれる。表面認識部分には、アミノ端およびカルボキシ端が含まれており、そして1以上の疎水性スペーサーおよび1以上の結合クラスターで構成されている。かかる機能性部分(1または複数)は、前記アミノ端および/または前記カルボキシ端で表面認識部分に付着する。
【0011】
本発明は、生物活性化ペプチドを粒子表面と水性媒体との間の有機インターフェースとして用いて、粒子の表面の化学的特質を調節するための方法を提供する。このペプチドは、無機/金属/半導体ナノ粒子のみならず有機粒子に、水溶性および生物活性を提供する。粒子に活性および/または溶解性を提供するため、他の先行技術にかかる化合物(リンカー(linker)、連結剤(linking agent))を使用する必要はない。本発明による単一の生物活性化ペプチドは、ナノ粒子に対する分子または表面認識部分(MRPまたはSRP)および機能性部分(FP)を有するものである。かかる機能性部分は、SRPの一端または両端に付着しており、そしてターゲティング用の分子認識剤または生物学的接合(bioconjugation)用の化学的ハンドル(chemical handle、接合剤(conjugation agent))を含めた多種多様の機能性薬剤を包含し得る。生物活性化ペプチドSRPのSRPは、粒子表面と有機性表面(機能性薬剤)との間のインターフェースに対して適切な(アミノ酸)特性を提供し、そしてその粒子にタンパク質様の特質を与える。この生物活性化ペプチドは、交換可能な(シグナル)配列、および/または生物学的認識および結合が可能な部分を既に保持している核酸/ペプチド/タンパク質/抗体の付加(接合)によって、粒子にターゲティング能力をもたらすことができる。
【0012】
本発明の以上の特徴およびその他の多くの特徴ならびに付随する利点は、添付の図面と併せて詳細な説明を参照することによってより良く理解されるはずである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、一般に、生物学的に非機能性である粒子を、生物システムにおいてその粒子を有用なものとするのに必要な1以上の機能的特性を有する生物活性化された粒子へと変換することを包含する。このことは、その粒子の表面に生物活性化ペプチドを付着させることによって成し遂げられる。これらの特殊化ペプチドは、その粒子に1以上の生物学的に重要な機能を付与することができる。以下に詳細に述べるとおり、本発明の生物活性化ペプチドは、粒子表面へ生物学的機能性基をつなげるために過去より使用されてきた従来の連結剤の必要性を有効に排除するものである。加えて、粒子に生物学的機能(1または複数)を付与するために生物活性化ペプチドを使用することは、極めて多用途であって且つ比較的簡便である。これは特定の生物学的機能を有する粒子が必要とされる生物システムのいかなるタイプにも、広い用途を有している。
【0014】
「生物活性化された粒子(bioactivated particle)」なる用語は、本発明の生物活性化ペプチド(bioactivation peptide)で、粒子が有するはずのなかった1以上の生物学的機能を有するように処理された粒子のいずれをも意味しようとするものである。本発明の生物活性化ペプチドを使用して粒子に付与することのできる機能のタイプの例としては、水性媒体中での溶解性、生物学的接合、ターゲティング、治療、イメージング、検出、認識(recognition)および診断が挙げられる。
【0015】
広範囲のサイズおよび組成を有する多くのタイプの粒子が生物活性化され得る。かかる粒子は、溶液中でコロイドを形成することができるよう充分に小さいのがよい。生物活性化ペプチドは、生物システムにおいて使用され、そして生物学的に活性な材料を粒子へ付着させるために連結剤または他の表面処理を使用することが通常は必要とされる粒子のいかなるものにも、生物学的機能を付与するために使用され得る。ナノ粒子が、生物活性化のために好ましい粒子である。このような粒子は、0.1〜100ナノメートルの範囲の粒子径を有するものであろう。約100ミクロンまでの直径を有するミクロ粒子も、生物活性化され得る。先に引用した特許に記載のごとき量子ドットは、本発明による生物活性化ペプチドを使用して生物活性化を行うのに特に適している。本発明は、ナノワイヤー、ナノチューブおよびナノロッドなどといったあらゆるタイプの粒子形状に適用される。生物活性化ペプチドは、球状のミクロまたはナノ粒子だけでなく、適宜の形状の粒子の表面に結合することができる。
【0016】
本発明は、広範囲の組成を有する粒子を処理するのに使用され得る。無機および/または有機材料で構成される粒子を使用してもよい。無機粒子が、生物活性化のために好ましい粒子である。前記のとおり、本発明は、生物システムにおいて使用されるために通常は連結剤で先ず処理をする必要のある様々なタイプの粒子のいかなるものでも生物活性化するために使用され得る。ナノ結晶および半導体ナノ結晶などの特異的な粒子の例は、以下でさらに詳細に述べる。
【0017】
本発明による生物活性化ペプチドを、図1に模式的に示す。この生物活性化ペプチドは、分子認識部分(MRP)を含み、これは本明細書において表面認識部分(SRP)とも称される。SRPは、ZnSで被覆されたCdSeコアで構成される量子ドットの表面に結合した状態が示されている。ZnSの被覆は10で示され、これは例証的な目的のためだけに使用されている。生物活性化ペプチドは、「A」および「B」で示される、SRPの一端または両端に位置する機能性部分をさらに含む。この機能性部分は、1以上の生物学的機能を粒子に付与する1以上の機能性薬剤で構成されている。
【0018】
SRPは、結合クラスター(BC′s)および疎水性スペーサー(HS′s)で構成されている。わずか1つの結合クラスターおよび1つの疎水性スペーサーを、SRPを形成するために使用してもよい。しかしながら、少なくとも2つ以上のBC′sおよびHS′sを使用することが好ましい。図1に示すように、SRP/MRPは、SRPに沿って連続的に交互になった3つのBC′sおよび4つのHS′sを含む。いずれのアミノ酸配列の場合とも同じように、SRPはアミノ端およびカルボキシ端を有している(図1を参照されたい)。各々のBCの間にHSが位置することが好ましいが、これが必要なわけではない。BC′sおよびHS′sが共にグループ化する場合に、SRP′sが可能となる。生物反応性ペプチドを所定の粒子表面に結合させるために必要なBC′sおよびHS′sの数は、機能性部分に存在する機能性薬剤の数および機能性薬剤の化学的特性を含めた、パラメータの数に依存するであろう。加うるに、粒子表面のタイプとさらにはSRPに使用される特定のアミノ酸を考慮に入れなければならない。BC′sおよびHS′sの特定の数およびタイプ、ならびにそれらの方向性は、粒子および機能性部分の各々異なるタイプについての通常の実験によって決定することができる。
BC′sは、粒子表面に結合することができる1以上の天然もしくは非天然アミノ酸またはアミノ酸誘導体で構成される。アミノ酸の例としては、システイン、メチオニン、ヒスチジンおよびそれらの誘導体が挙げられる。かかる誘導体は、天然のものでもよいし、あるいは天然のものでなくてもよい。アミノ酸誘導体の例としては、3,3−ジフェニル−Ala−OH、2−アミノ−3,3−ジメチル酪酸が挙げられる(http://www.sigmaaldrich.com/img/assets/6040/chemFiles_vln5_unnaturalaa_small.pdfも参照されたい)。BCは、好ましくは2つのアミノ酸または誘導体を含み、そして10程度のアミノ酸または誘導体を含み得る。SRPを形成するために使用される特定のアミノ酸または誘導体は、同じでも異なっていてもよい。いずれか所定のSRPに対するBC′sの構成は、使用されている特定の機能性部分および付着に対して意図された特定の粒子表面よって変化するであろう。BCの構成は、生物活性化されるべき粒子を選択し、そして1または複数の機能性薬剤を選べば、通常の実験によって決定することができる。
【0019】
HS′sは、疎水性であってBC′sと結合することができる化合物で構成されている。いずれの数の疎水性化合物でも使用することができるが、HS′sは1以上の天然もしくは非天然アミノ酸または、疎水性となるように修飾された誘導体を含むことが好ましい。修飾されたアミノ酸の例としては、疎水性アラニン、疎水性グリシン、疎水性イソロイシン、疎水性ロイシン、疎水性メチオニン、疎水性アルギニン、疎水性バリン、疎水性トリプトファンおよびそれらの誘導体が挙げられる。好ましい修飾は、メチル基由来のHに代えて、アミノ酸にシクロヘキシル基を置換することである。ベンゼンなどの他の疎水性基を、シクロヘキシルの代わりに使用してもよい。HSは、単一の疎水性アミノ酸を含むことが好ましい。しかしながら、上限10までの疎水性アミノ酸が、HSのいずれに存在していても構わない。
【0020】
生物活性化ペプチドの機能性部分(FP)は、SRPのアミノ端(A)、SRPのカルボキシ端(B)か、またはその両方のいずれかに付着した機能性薬剤を含む。かかる機能性薬剤(functional agent)は、粒子への生物学的機能の付与が企図されるいずれのものであってもよい。機能性薬剤の例としては、溶解性薬剤(solubility agent)、接合剤、ターゲティング剤、治療剤、造影剤、検出剤、認識剤および診断剤が挙げられる。化合物によっては二重の目的を果たし得るので、薬剤に重複が生じる可能性がある。機能性薬剤は、SRPまたはその他の薬剤の1つと結合することができなければならない。その機能性部分は、溶解性薬剤などの、SRPの一端のみに付着されるわずか1つの機能性薬剤を含んでいてもよい。それとは異なり、2、3またはそれ以上の機能性薬剤を、SRPの一端または両端に付着させることができる。
【0021】
水性媒体中で可溶性ではない粒子を処理するために使用される生物活性化ペプチドについては、最低でも機能性部分に溶解性薬剤を含めることが好ましい。溶解性薬剤はどこに位置されてもよいが、SRPの一端または両端に直接付着していることが好ましい。溶解性薬剤の例としては、1乃至100のアミノ酸を有する親水性ペプチドが挙げられる。具体例として、gly−ser−glu−ser−gly−gly−ser−glu−ser−gly(配列番号:6)、gly−ser−ser−ser−gly−gly−ser−ser−ser−gly(配列番号:7)が挙げられる。他の多くの親水性ペプチドも可能である。かかる溶解性薬剤は、SRPまたは生物学的接合剤に付着することができるその他の既知の親水性化合物であってもよい。他の溶解性薬剤の例としては、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレンオキシド)、高分子電解質および糖類が挙げられる。セロビオース、スクロースおよびシアル酸などの糖類が好適である。高分子電解質の例としては、ポリエチレンイミンが挙げられる。
【0022】
以下に示すのは、溶解性薬剤以外の様々な機能性薬剤の一覧であるが、これは例示のみを意図したものである。判るとおり、多くの他の機能性薬剤をSRPに付着させて、本発明による生物活性化ペプチドを形成させてもよい。
接合剤:ビオチン、アビジン、ストレプトアビジンおよび誘導体、リジン、システイン、アスパラギン酸、グルタミン酸で終結するペプチド(反応基のアミン、チオール、カルボキシル、非天然物、ケトを伴う)。
ターゲティング剤:抗体、酵素基質、レセプターリガンド。
治療剤:タキソール、ハーセプチン。
造影剤:フルオレシン、ブロモフェニルブルー、ヨウ素、イットリウム、トリチウム、メタロテキサフィリン類(Metallotexaphyrins)、多くの放射活性試薬、MRI増強剤、PET、CT等。
検出剤:前掲の造影剤と同様または類似。
認識剤:抗体および/または認識ペプチドに接合した前記造影/治療剤。
診断剤:以上記載の薬剤のいずれも、診断剤として使用され得る。
【0023】
本発明による生物活性化ペプチドの明示的な例は、以下に示すとおりである。
【0024】
溶解性/接合剤を有する生物活性化ペプチド
・(アミドまたはアセチル)−MRP−親水性ペプチド−ビオチンまたはアビジン/ストレプトアビジン
・ビオチン−親水性ペプチド−MRP−カルボキサミド
・ビオチン−MRP−カルボキサミド
・カルボキサミド−MRP−親水性ペプチド−NHSエステル
・カルボキサミド−MRP−親水性ペプチド−ケト基
・DNAオリゴ−親水性ペプチド−MRP−カルボキサミド
・ケト、チオール類は、異なるペプチドへの直交性接合を許容するはずである(同じナノ粒子上または同じ懸濁液中の異なる粒子上)。
【0025】
溶解性/腫瘍ターゲティング剤を有する生物活性化ペプチド:
・(アミドまたはアセチル)−MRP−親水性ペプチド−トランスフェリン(または腫瘍レセプターの1つに対する抗体)
・トランスフェリン−親水性ペプチド−MRP−カルボキサミド
・腫瘍ターゲティング配列−親水性ペプチド−MRP−カルボキサミド
・DNAオリゴ−親水性ペプチド−MRP−カルボキサミド
トランスフェリン−親水性ペプチド−MRP−親水性ペプチド−トランスフェリン
他の薬剤には、抗体、ミニボディ(minibody)、単鎖フラグメント…等が含まれる。
【0026】
溶解性薬剤を有する生物活性化ペプチド
・アミドまたはアセチル−MRP−親水性ペプチド
・親水性ペプチド−MRP−カルボキシル
・親水性ペプチド−MRP−カルボキサミド
・スクシニル−親水性ペプチド−MRP−カルボキサミド
・親水性ペプチド−MRP−親水性ペプチド
・PEG−親水性ペプチド−MRP−カルボキサミド
・PEG−MRP−親水性ペプチド
【0027】
機能性薬剤の他の例としては、1,4,7,10−テトラアザシクロデカン−1,4,7,10−テトラ酢酸(DOTA)、Ni−NTA、I、Yt、C、さらには多くのタイプのキレート剤、金属イオン、アイソトープ、および磁性材料が挙げられる。
【0028】
生物活性化ペプチドのMRPは、充分に確立されている簡単なペプチド合成プロトコルによって作製され得る。様々な機能性薬剤が、ペプチド合成または特定の薬剤に対する既知の接合技術によってMRPまたはその他の機能性薬剤に付着される。この生物活性化ペプチドは、粒子との混合に先駆けて付着されるその機能性薬剤のすべてを用いて完全に合成され得る。代わりに、生物活性化ペプチドは、付着されるよう意図された機能性薬剤全体の一部のみで、粒子に付着されてもよい。機能性薬剤の残余は、次いで後になってから付着させてもよい。図2を参照すると、生物活性化ペプチドがA1−A2−MRP−Bである同じ生物活性化された粒子を作製するための上記二種類の手法が概略的に示されている。図2の上部では、生物活性化ペプチド(A1−MRP−B)を粒子と混合してA1およびBの機能性を有する生物活性化された粒子を形成する。この生物活性粒子は次いで、A2と混合され、A1、A2およびBの機能性を有する最終的な生物活性化された粒子を形成する。このタイプの二工程手法は、A1が直ちに使用され得るかまたは後で使用するために保存できる可溶性粒子の「ストック」溶液を形成させるために使用される溶解性薬剤であり、数多くの異なるA2機能性薬剤を有する生物活性化された粒子を形成する場合に特に有用である。図2の下部に示すように、A1−A2−MRP−B生物活性化された粒子は単一工程で作製することもできる。
【0029】
前記の単一および多工程合成プロトコルは例示にすぎず、同じ基本的な手法が、MRPの一端または両端に付着されるさらに多くの機能性薬剤を有する生物活性化された粒子を産生するのに使用され得ることは、理解されるべきである。また、図2は粒子に単一のタイプの生物活性化ペプチドを添加することを示すのみである。多くの状況にあって、同じ粒子に異なる生物活性化ペプチドを付着させることが望ましい。生物活性化ペプチドの各々は、単一の異なる機能性薬剤を担持するか、または複数の機能性薬剤を各々有していてもよい。
【0030】
複数の生物活性化ペプチドを有する生物活性化された粒子の例を以下に示す。かかる生物活性化された粒子は、ターゲティング、イメージングおよび治療のすべてを一つのビヒクルにもたらすものである。生物活性化された粒子は、粒子を以下の4種の異なる生物活性化ペプチドの混合物で単に処理することによって形成される:
1)MRP−peg:溶解性薬剤
+2)MRP−親水性ペプチド−トランスフェリン:ターゲティング剤
+3)MRP−親水性ペプチド−チロシン−DOTA−ヨウ素:(核)造影剤
+4)MRP−親水性ペプチド−治療分子:治療剤
【0031】
別の例は、生物活性化すべき粒子を以下のとおりに多機能生物活性化ペプチドで処理することに関するものである
1)MRP−peg−ビオチン:溶解性薬剤+ターゲティング剤
2)MRP−peg−NLS−ビオチン:溶解性薬剤+ターゲティング/検出剤1+ターゲティング/検出剤2
3)MRP−親水性ペプチド−ターゲティング配列−プロテアーゼ切断配列−膜横断配列:溶解性薬剤+ターゲティング/検出剤1+基質+認識/ターゲティング剤2
【0032】
以下の例は、本発明によって調製および使用することができる多くの異なるタイプの生物活性化ペプチドおよび生物活性化された粒子のいくつかを例証するものである。これらの実施例にて示される生物活性化ペプチドは、以下の式を有する:
A−[Ala−C−C−Ala−C−C−Ala−C−C−Ala]−B
ここで、中央の配列はSRP(MRP)であり、そしてAおよびBは機能性部分である。AおよびBは同じかまたは異なっており、そして独立してポリペプチド基、アセチル基、アミン基、カルボキサミド基またはビオチン基を含み、Alaは疎水性基で置換されたアラニンであり、そしてCはシステインである。
【0033】
好ましい疎水性基はシクロヘキシル基であり、従って半導体ナノ結晶などの粒子を被覆するために好ましい生物活性化ペプチドは、Cha−C−C−Cha−C−C−Cha−C−C−Cha(配列番号:1)の配列を有し、ここでChaはシクロヘキシルアラニンである。
【0034】
生物活性化ペプチドは、別途に連結剤を使用することなく、直接半導体ナノ結晶に適用される。生物活性化ペプチドにより、粒子に分子認識能および水/緩衝液溶解性が与えられる。粒子は他の分子と接合でき、且つアミノ酸によってもたらされる広い多様性により他の所望の特質(疎水性/親水性相互作用およびイオン性/電荷相互作用)を与えることができる。本発明は、NCs蛍光プローブターゲティング、X線医学イメージング(要素特異的コアレベル(element specfic core level)および、おそらくはその他のX線)用、ならびにX線光力学的/光熱治療(要素特異的コアレベルに単色X線の吸収を介してフリーラジカル/熱を送達する)用の、身体部分(腫瘍)への粒子のターゲティングに有用である。
【0035】
生物活性化ペプチドはまた、分子認識による有機−無機ナノ構造ハイブリッドの自己組織化(self−assembly)も許容する。それらは、酵素、生体触媒および他のタンパク質/RNA触媒をナノ粒子にインターフェースし、光および/または電荷によって活性化され得るナノマシン/分子マシンの産生を可能とする。例えばナノ粒子において光により発生する電荷は、分離およびタンパク質に移送され、酵素反応、触媒作用等を誘発することができる(例えば光活性化/誘発療法をもたらす)。
【0036】
本明細書における「ナノメートル結晶」または「ナノ結晶」の用語の使用により、有機または無機結晶粒子、好ましくは単一結晶粒子で、約20ナノメートル(nm)すなわち20×10-9メートル(200オングストローム)以下、好ましくは約10nm(100オングストローム)以下の平均断面で、且つ約1nmの最低平均断面を有するものを意味するが、場合によってはもっと小さな平均断面のナノ結晶、すなわち、約0.5nm(5オングストローム)までが容認できる。概して、ナノ結晶は約1nm(10オングストローム)から約10nm(100オングストローム)までのサイズの範囲にある平均断面を有するであろう。
【0037】
「半導体ナノ結晶」なる用語の使用により、励起に伴って電磁波を放射することができるII〜VI族および/またはIII〜V族半導体化合物のナノメートル結晶またはナノ結晶を意味するが、ゲルマニウムもしくはシリコンなどのIV族半導体の使用、または有機半導体の使用が、特定の条件下では可能となり得る。
【0038】
本明細書で使用される「放射」なる用語は、X線、ガンマ線、紫外線、可視線、赤外線、およびマイクロ波放射を含めた電磁放射;ならびに、電子ビーム、ベータおよびアルファ粒子放射を含めた粒子放射を包含することを意味する。
【0039】
「エネルギー」なる用語は、電磁放射、粒子放射、および蛍光共鳴エネルギー移送(FRET)を含めることを意図する。本明細書で使用される場合、「第一エネルギー」なる用語は、最初のエネルギーへの曝露に応答して半導体ナノ結晶化合物内または半導体ナノ結晶プローブ内の半導体ナノ結晶へのエネルギーを意味する。同じ「第一エネルギー」に曝露された場合、異なるナノ結晶はそれぞれ、互いに異なる「第二エネルギー」を供給し得ることに注目すべきであり、そして「第二エネルギー」なる用語の使用は、複数の半導体ナノ結晶と関連して使用する場合、同じである第二エネルギーのことか、または複数の異なる第二エネルギーのことのいずれかを称することは理解されよう。
【0040】
「エネルギー移送」なる用語の使用により、1つの原子または分子から別の原子または分子へ、放射または非放射経路によりエネルギーを移送することを意味する。
【0041】
「近位供給源」なる用語により、別の原子、分子、もしくはその他いずれかの物質へエネルギーを移送すること、および/または別の原子、分子、もしくはその他いずれかの物質から移送されたエネルギーを受け取ることのできる原子、分子、もしくはその他いずれかの物質を意味する。
【0042】
本明細書にて使用される「近位構造」なる用語は、別の原子、分子、もしくはその他いずれかの物質(半導体ナノ結晶プローブを含む)から移送されたエネルギーを受け取ることのできる原子、分子、もしくはその他いずれかの物質(例えば、ポリマー、ゲル、脂質二重層、および半導体ナノ結晶プローブに直接結合される物質)であり得る。
【0043】
半導体ナノ結晶の電磁波放射に関する「狭い波長バンド」なる用語を使用することにより、典型的な染料分子に対する約70〜100nmの放射バンド幅で、さらに100nm程度もバンド幅を伸ばし得る赤色テールを伴うものとは対照的に、約40nmを超えない、好ましくは約30nmの幅を超えず、且つ中央に関して対称である放射の波長バンドを意味する。ここで言及されたバンド幅は、半分のピーク高さでの放射の幅(FWHM)の測定で決定され、そして200nm〜2000nmの範囲で適正であることは注目されるべきである。
【0044】
半導体ナノ結晶の電磁波吸収に関して「広い波長幅」なる用語を使用することにより、開始放射線の波長と同じかまたはそれより短い波長を有する放射線の吸収(開始放射線とは、半導体ナノ結晶によって吸収され得る最長の波長(最低のエネルギー)の放射線であると理解される)で、放射の「狭い波長バンド」の近傍であるがわずかに高エネルギーで生じるものを意味している。これは、高エネルギー側の放射ピークの近傍で生じるが、その波長から外れると速やかに落ち、そして放射から100nm離れた波長ではごくわずかであることが多い染料分子の「狭い吸収バンド」とは対照的である。
【0045】
「検出可能なシグナル」なる用語は、本明細書で使用する場合、半導体ナノ結晶による、可視または赤外または紫外線を含めた電磁波の放射および熱放射;ならびに他のシグナルまたは半導体ナノ結晶の放射線への曝露に応答した散乱(回折を含む)および/または吸収を明示する、半導体ナノ結晶から発散しているシグナルの変化を含むものを意味する。
【0046】
「検出可能な物質」なる用語を使用することにより、実体またはグループまたはグループのクラスで、生物学的材料などの材料中での有無を、本発明の半導体ナノ結晶プローブを使用することにより確かめるべきものを意味する。
【0047】
本発明およびこの例の実施において有用な半導体ナノ結晶には、MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSe、CdTe、HgS、HgSe、およびHgTeなどのII〜VI族半導体のナノ結晶、さらにはそれらの混合組成物;ならびにGaAs、InGaAs、InP、およびInAsなどのIII〜V族半導体のナノ結晶およびそれらの混合組成物が含まれる。前記のとおり、ゲルマニウムもしくはシリコンなどのIV族半導体の使用,または有機半導体の使用もまた、特定の条件下で可能である。半導体ナノ結晶はまた、前記のIII〜V族化合物、II〜VI族化合物、IV族元素、およびその組み合わせからなる群より選択される2種以上の半導体を含む合金をも含み得る。
【0048】
III〜V族半導体のナノメートル結晶の形成は、Alivisatosらの米国特許第5,751,018号明細書;Alivisatosらの米国特許第5,505,928号明細書;およびAlivisatosらの米国特許第5,262,357号明細書に記載されており、それらにはII〜VI族半導体ナノ結晶の形成も記載されており、また本発明の譲受人に譲渡されているものでもある。さらに前記文献に記載されているのは、結晶成長終止剤を使用して、形成の際に半導体ナノ結晶のサイズを制御することである。Alivisatosらの米国特許第5,751,018号明細書およびAlivisatosらの米国特許第5,262,357号明細書の各々の教示は、援用により実質的に本明細書の一部となる。
【0049】
一の実施形態において、ナノ結晶はコア/シェル配置にて使用され、ここで第一の半導体ナノ結晶は、例えば約20Å〜約100Åの直径の範囲のコアを形成し、別の半導体ナノ結晶材料のシェルは、例えば1〜10単層の厚みに、コアナノ結晶の全面に成長する。例えば1〜10単層の厚みのCdSまたはZnSのシェルをCdSeのコアの全面にエピタキシャルに成長させた場合、室温のフォトルミネセンス量子の収率が劇的に上昇する。このようなコア/シェルナノ結晶の形成は、Peng、Schlamp、Kadavanich、およびAlivisatos著の、表題「光安定性および電子接触性を備えた高発光性CdSe/CdSコア/シェルナノ結晶のエピタキシャル成長(Epitaxial Growth of Highly Luminescent CdSe/CdS Core/Shell Nanocrystals with Photostability and Electronic Accessibility)」、the Journal of the American Chemical Society, 119巻30号、1997、7019−7029頁に発表の、本発明者らのうちの一人とその他の著者による出版物にさらに完全に記載されており、その主題は、援用により実質的に本明細書の一部となる。
【0050】
これらの例において使用される半導体ナノ結晶は、広い波長バンドにわたって放射線を吸収する能力を有するであろう。この波長バンドは、ガンマ放射線からマイクロ波放射線までの範囲を包含する。加うるに、これらの半導体ナノ結晶は、約40nm以下、好ましくは約30nm以下の狭い波長バンド内の放射線を放射する能力を有しているはずであり、かくして同じエネルギー源に曝露された場合に放射光の波長に重複なく(または少量の重複しかなく)、異なる半導体ナノ結晶で複数の異なる色の半導体ナノ結晶プローブを同時に使用することが許容される。半導体ナノ結晶の吸収および発光特質の双方は、吸収の狭い波長バンド(例えば約30〜50nm)および放射の広い波長バンド(例えば約100nm)およびスペクトルの赤色側で放射の広いテール(例えばさらに100nm)を有する染料分子よりも有利になり得る。染料のこれらの特質の双方により、同じエネルギー源に曝露された場合に複数の異なる色の染料を使用する可能性が損なわれる。
【0051】
また、半導体ナノ結晶から放射された光の狭い波長バンドの周波数または波長は、半導体ナノ結晶のサイズなどの物理的特質に従ってさらに選択されてもよい。前記の実施形態を使用して形成された半導体ナノ結晶によって放射される光の波長バンドは、半導体ナノ結晶のコアおよびシェルの組成により、(1)コアのサイズ、または(2)コアのサイズおよびシェルのサイズのいずれかによって決定され得る。例えば、3nmのCdSeのコアおよび2nmの厚みのZnSのシェルで構成されるナノ結晶は、560nmのピーク強度の波長を有する狭い波長バンドを放射するであろう。
【0052】
半導体ナノ結晶の発光波長を選択的に操作するために、半導体ナノ結晶のサイズを変更する複数の代替手段が存在する。これらの代替手段には、(1)ナノ結晶の組成の変更、および(2)同心性シェルの形態でナノ結晶のコアの周りに複数のシェルを付加することが含まれている。異なるシェルに異なる半導体ナノ結晶をそれぞれ使用することによって、すなわち、複数の同心性シェルの各々において同じ半導体ナノ結晶を使用しないことによって、複数のシェルタイプの半導体ナノ結晶において異なる波長を得ることもできることは注目されるべきである。
【0053】
半導体ナノ結晶の組成または合金を変更することによる発光波長の選択は、当該技術分野では古くからなされている。例示としては、400nmの発光波長を有するCdS半導体ナノ結晶が、530nmの発光波長を有するCdSe半導体ナノ結晶と共に合金とされてもよい。ナノ結晶がCdSおよびCdSeの合金を使用して調製される場合、等しいサイズとした複数のナノ結晶からの発光の波長は、そのナノ結晶に存在するSとSeの比により400nmから530nmまでで連続的に調節され得る。半導体ナノ結晶のサイズを同じに維持しつつ異なる発光波長から選択できるということは、サイズが均一である半導体ナノ結晶が必要とされる用途において、または例えば立体的制限を伴う用途において使用される場合にすべての半導体ナノ結晶が極めて小さい寸法を有することが必要な用途において重要であり得る。
【0054】
これには、無機NCs間(バンドギャップおよび表面状態)の酸化還元電位と、ペプチド/タンパク質無機−有機接合体の酸化還元電位との整合が、両者間の効率の良い電子移送のために関わり得る。例えば、光活性化酵素が含まれる。
【0055】
これらの例における生物活性化ペプチドは、CdSe/ZnS量子ドットナノ粒子の表面を認識して結合するように設計された。本例のペプチド配列および被覆は、量子ドット以外の粒子でも被覆および機能するであろうことは、理解されるべきである。化学的および物理的特性を有するアミノ酸(親水性/疎水性、電荷および反応性)は、ナノ粒子(およそ2〜10nmのサイズのもの)のZnS層の結合を許容するが、本発明はこのサイズのナノ粒子に限定されないことは理解されるべきである。
【0056】
MRPの限定的でない例はCha−C−C−Cha−C−C−Cha−C−C−Cha(配列番号:1)であり、ここでChaはシクロヘキシルアラニンを表し、そしてCはシステインを表す)である。本発明で、アラニンがシクロヘキシル基で置換されることは必要とされない点は理解されるべきであるが、シクロヘキシル基が好ましい。すべての合成で、N−BocまたはF−moc保護基を用い、また配列はN−アセチル化および/またはカルボキシル化されるとよい。生物活性化ペプチドは、粒子上に直接付加され、そしてDMSO中で量子ドットの良好な分散体の形成が許容されて、その後、水および緩衝液で希釈されたナノ結晶の、安定で高度に単分散の希釈液を生じる。水および緩衝液中での安定性は、Cha−C−C−Cha…配列のN−末端に親水性配列を付加することによって増強される。以下の配列を使用した:G−S−E−S−G−G−S−E−S−G−Cha−C−C−Cha−C−C−Cha−C−C−Cha(配列番号:2)。
【0057】
本例によれば、異なる長さの様々な配列が、同じCha−C−C−Cha−C−C−Cha−C−C−Cha MRP配列が存在しているCdSe/ZnSナノ粒子の表面上に付着される。表1に、量子ドットを可溶化するのに使用される様々な生物活性化ペプチド配列の例を示す。
【0058】
【表1】

【0059】
特定の理論または原理に拘束されることは望ましくないが、ペプチドの表面での結合は、システインまたは粒子の表面でZnとキレート形成または共有結合することができるその他のアミノ酸結合クラスターの存在によって促進されると考えられる。2つの隣接するシステイン間の間隔は、2つのZn間の場合と同様であると考えられる(3.82Å)。システイン/Zn二重結合の複数の繰り返しは、おそらくは表面上のペプチドの安定性を増大させる。システインクラスターに挟まれた疎水性アミノ酸スペーサーの存在もまた、水の除去に拘束されるZn/システインの安定性に有利に働き、表面の順序付けにとって重要である(表面/水の界面でのエネルギーレベルを最小化する)。N−末端に親水性アミノ酸を組み込むことでナノ粒子の溶解性が増強され、さらなる化学的および生物学的接合のための化学的ハンドルが提供される。本例では、所望の標的分子に従ってアミノ酸を慎重に選択することにより、量子ドットの表面に多種多様な化学基を付加できることをが企図されている。さらには、活性配列をペプチド配列に直接ダイアルインすることができ、これにより生物活性化された半導体ナノ粒子がもたらされる。こうして、連結用化合物(linking compound)を用いる生物学的接合で粒子に活性分子を付着することを、場合によってショートカットできる。
【0060】
生物活性化配列がCdSe/ZnSナノ結晶の表面に結合する独特の能力を、ChaCha Eスイマー(swimmer)の配列(HS′sの疎水性シクロヘキシルアラニンがアラニンで置換されたもの)を使用して、可溶化アッセイにより立証した。この置換は、反応の際に粒子の凝集をもたらし、そのため電気泳動ゲルで移動しなくなった。同様に結合クラスター中のシステインをアラニンで置換すると、水性溶媒中で可溶化した後速やかに凝集する不安定な粒子が得られた。MRPとしてランダムなペプチド配列を使用しても、ナノ粒子を安定化させることはできなかった。
【0061】
表1のペプチド配列は、ZnS層に加えてCdSeコアにも直接反応することが示された。量子ドットコアは、水中に直接可溶化させることができ、そしてアガロースゲル上で検出されるのに充分な蛍光シグナルを維持するはずである。コアのサイズ分布はコア/シェル粒子の場合よりも均質であるから、ゲルにおけるCdSeのバンド幅は予想どおりに小さい。コアはコア/シェルよりも小さいので、ゲルにおいてはより遠くに移動する。
【0062】
水中で可溶性となれば、量子ドットは通常、過剰のペプチドから精製される。精製は透析技術または所定の分子量を除去する膜での限外濾過(MWCO)により行うことができる。
【0063】
量子ドット粒子の表面上に生物活性化ペプチドが存在することは、精製された量子ドットについてのFournier変換赤外線試験(Fournier Transform Infrared studies)によって確認した。粒子は窒素流下に水から乾燥させ、そしてKBrのペレットに調製した。そのスペクトルは、ペプチドで被覆された量子ドットにおいて典型的なアミドIおよびアミドIIバンドに対応する波数で強い吸収を示した。これらのバンドは、同じ条件においてペプチド単独の調製物について検出されたが、TOPO/ブタノールから乾燥されたナノ結晶では認められなかった。
【0064】
水溶性粒子の光学的特質は、疎水性溶媒中でのナノ結晶の場合と類似している。吸収および発光スペクトルは、表面上の生物活性化ペプチドの存在に影響されない。
【0065】
可溶性半導体ナノ粒子の物理特性確認によって、また、量子ドットの単分散が粒子表面上に生物活性化ペプチドが付加された後にも保存されていることが示される。各ナノ結晶は、凝集体を形成することなく可溶化される。水性溶媒中への可溶化前後のAFMおよびTEMによるサイズ分布の統計によって、凝集体がないことが確認され、そしてナノ結晶が表面の化学的性質により影響を受けないことが示される。
【0066】
生物活性化ペプチドで被覆された量子ドットは単分散であって、生体適合性であり且つ水性環境において可溶性であるので、それらはゲル電気泳動または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの標準的な生物学的技術で容易に分析することができる。上記のようなナノ結晶は、アガロースおよびポリアクリルアミドゲルにて容易に移動することができる。ゲル電気泳動の場合は、移動距離はナノ結晶の分子量(すなわちそれらのサイズ)および/または粒子の電荷に相関し得るものである。粒子上の電荷は、使用された生物活性化ペプチドの電荷に左右される。同じ生物活性化ペプチドで被覆された異なるサイズの粒子は、同様の電荷を保有することが予想される。さらにそれらはサイズが異なっているので、ゲル上の異なる位置に移動するはずである。このサイズ分離は、サイズの異なる三色の量子ドット(緑色:2.7nm;黄色:5.2nmおよび赤色:7.0nm)についてのアガロースゲルにて実証された。かかる分離は、アガロースゲルのパーセンテージが異なっていても(3〜0.5%)で、ポリアクリルアミドゲルにおいても、異なる電圧についても、そして異なる生物活性化ペプチドを使用しても、再現性があった。サイズ排除HPLC実験によって、ナノ結晶はサイズによって有効に分離されること、およびゲルでのクロマトグラフィーの際の電荷の効果はこの分離に影響を及ぼさないことが確認された。
【0067】
以上より明らかなとおり、独自の生物活性化ペプチド配列を使用して異なるサイズの粒子を可溶化することができ、これらの粒子をサイズで明確に分離することもまた可能となっている。あるいは、異なる種類の生物活性化ペプチド配列により、1つのサイズの粒子を可溶化することが可能である(表1)。先に推論したように、可溶性量子ドットの周囲の電荷は使用されたペプチドの電荷によって影響を受ける。従って、異なる電荷の生物活性化ペプチドを単に選択するだけで、所定サイズの粒子の電荷を修飾することが可能である。この特質を検証するために、同じバッチの緑色ナノ結晶を、表1に示す配列に対応する、様々な電荷を有する4種の異なるペプチド配列によって可溶化した(配列番号:4、3、6および2)。この4種の調製物を精製し、次いで電気泳動分析のためにアガロースゲルに付し、またクロマトグラフィーで特徴を調べるためにSECのHPLCカラムに付した。異なった電荷の生物活性化ペプチドを有する同じサイズのナノ結晶は、異なる位置に移動することが観察された。しかし、電界が加えられない条件下に分離された(サイズのみ)場合、すべての粒子は同じ保持時間を有しており、よって同様の分子量および同様のサイズを有している。
【0068】
量子ドットに付着した生物活性化ペプチドの使用は、水溶性且つ化学的ハンドルを提供するのみならず、電荷や、おそらくは疎水性、親水性、極性、および反応性などの他の特質の制御も可能とする。生物活性化ペプチドを単に変えることによって、半導体ナノ粒子を操作すること、および所望の特性をダイアルインすることが可能である。
【0069】
本発明のこれらの例は、生物活性化ペプチドを使用して半導体ナノ粒子を修飾することにより、複数の利点がもたらされることを立証するものである。完全な生体適合性は別として、この化学的性質は極めて多岐にわたり、天然または非天然の様々な化学基を、アミノ酸を単純に変えるだけで導入することができる。また、ペプチド合成化学が広く使用されており、非常によく特徴付けがなされている。これにより、量子ドットの表面上にあるものの完璧な制御がもたらされる。タンパク質に存在するいずれの化学基であっても、官能基としてMRPに、よってナノ結晶表面上に付加することができる。システインのチオール、いずれかのアミノ酸のN末端アミンから、より複雑なヒスチジンタグ、または活性配列(NLS、ペプチダーゼ応答配列…)までも、MRPに付加され得る。単純な化学基(NH2、COOH、SH、OH…)を、通常の試薬およびプロトコルを使用したさらなる生物学的接合のために使用することができる。
【0070】
CdSe/ZnS半導体の表面へのビオチン部分の付着を、図4に図式的に示すが、ここでは粒子の表面上のペプチド配列のN末端アミンに対するNHS−ビオチンの反応を用いたスクシンイミジルの化学的性質を使用している。粒子表面上にビオチンが存在することは、ストレプトアビジンの存在下に簡単なgel retardationアッセイを行うことによって検出される。
【0071】
先に述べたとおり、可溶化に使用したペプチド配列が活性要素を含んでいる場合、ナノ粒子は一工程で直接コード化され得る。この要素はビオチン(表1)、またはターゲティングペプチド配列であり得る。本発明は、CdSe/ZnSナノ結晶表面に付着されるペプチド配列に含まれるモチーフペプチドで量子ドットを生物活性化することにより、生物学的接合の工程を省略できることを企図するものである。
【0072】
量子ドットに生物学的機能を提供する生物活性化ペプチドの使用によって、簡便で、再現性があり、用途が広く、そして信頼性のある化学的性質がもたらされる。また、いずれの既知の生物学的接合スキームも適用することのできる生体適合性粒子を産生するものである。本発明は、スペーサーや、リンカーもしくはその他の表面モジュレーショングリッドでナノ結晶表面を前処理または調製することを必要としない一工程の化学反応であるという意味で、独自のものである。結合は特異性が高く、おそらくは共有性か、キレート化によるか、ナノ粒子の表面上のイオンへのペプチドの表面上のシステインまたはその他の結合クラスターの結合である。本発明では、アミノ酸が粒子表面上に存在する無機または有機材料と安定なインターフェースを作る独特の特質が利用される。本発明は本明細書に記載のとおり、いずれのペプチド表面またはタンパク質(必要な配列を呈示している場合)でも、光量子放射粒子およびその他の半導体、磁性、放射活性および金属粒子への結合を許容するのである。
【0073】
本発明は、ペプチドライブラリースクリーニング/ファージディスプレイ;in vivo/in vitro薬物スクリーニングおよび大量(mass)スクリーニング(細胞の特定部分へのターゲティングによる薬物刺激に応答することのできる、コード化された量子ドットを使用して);インビボ/インビトロ多色アッセイ(蛍光顕微鏡検査法(共焦点)、蛍光in−situハイブリッド形成法(FISH)、蛍光相関分光法(FCS)、フローサイトメトリー、ビーズコード化(beads encoding)におけるすべての量子ドットの用途);透過型電子顕微鏡(透過型電子顕微鏡(TEM)用の細胞下区画の対比向上のための細胞染色)、低温電子顕微鏡(CryoEM);原子間力顕微鏡(AFM)(AFM/共焦点の組み合わせにおけるプローブ/標準としての使用);ペプチド/ペプチド相互作用でのアッセイ(スクラッチペプチド技術)、ヒスチジン(HIS)タグ、タンパク質/ペプチド相互作用(核局在化シグナル/配列(NLS))シグナル配列、プロテアーゼ応答性配列、ホスファターゼ応答性配列…)、ペプチド/DNA相互作用(DNAグルーブ、Znフィンガー、ロイシンジッパー…)、およびペプチド/RNA相互作用;単一分子検出/クエンチングによるAb/Ag相互作用の分子力学または単一分子蛍光共鳴エネルギー移送(FRET);分子ルール(FRET、共局在)、分子コンパス(ロッド+Qドット);タンパク質構造分析のための結晶学2D、3Dアレイ、またはフォトルミネセンス装置;支持体として量子ドットを使用する固相ハイブリダイゼーションアッセイ(Qドットへの直接的なDNA、クエンチングまたは蛍光増強によって決定する効率)ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);酵素反応速度論アッセイ;様々な量および様々なタイプの量子ドットの組織化(assembly)によるバーコードシステム(ペプチドベルクロ(Velcro)技術またはアンチセンスペプチド);半導体の特質を使用した治療(ミトコンドリアの電子フラックス崩壊、電子ジャンピングを用いた神経学的用途);導電性ペプチド(チトクロムC)を使用した酵素の光活性化;生体適合性装置のための複合体ナノ構造の使用、またはそれらの触媒特質のため;ペプチド−核酸(PNA)技術を含めた様々な分野において有用である。
【0074】
以下は、図3に示すようなCdSe/ZnS量子ドットの可溶化(生物活性化)の、限定的でない例である:
−25μlの、TOPOが被覆された量子ドットをブタノール中の母液(母液は、約8mlのブタノール+TOPOの最終容量中で、40mgの、CdSeコアがZnSと反応したもので構成されていた)から取った。
−QD′sは、25μlのメタノールで沈殿させて、ガラスバイアル中で遠心分離した
−残りのメタノールを廃棄した
−ペーストを650μlのピリジン(無水)で再度溶解させた
−4.0mg(この量は定まっておらず、可変性であってピリジン中のQD′sの量によって容易に定められる)の粗ペプチド(表1に示す生物活性化ペプチドのいずれか)を計り取り、そしてDMSO(50μl)にて洗浄および溶解させて、ピリジン中のQD′sと混合した
−この混合液を10秒間渦流混合(vortex)した
−次に14μlのトリメチル水酸化アンモニウム(メタノール中25%)を添加した
−この混合液を速やかに20秒間渦流混合した
−遠心分離した
−その後、残りのピリジンを廃棄した
−次に500μlのメチルスルホキシド(DMSO)を沈殿に添加した
−沈殿は次いで水/緩衝液に再度溶解して、その後G−25セファデックスカラムでDMSOを水/緩衝液に交換するために希釈した。
【0075】
粒子表面に付着された2つの異なる生物活性化ペプチドを有する生物活性化されたナノ粒子の調製の例を図5に図示的に示しており、以下に記載のとおりである:
−25〜30μlの、TOPOが被覆された量子ドット(QD′s)を、TOPO/ブタノール中の母液から取った。
−メタノール(無水)で沈殿させて、ガラスバイアル中で遠心分離した。
−残りのメタノールを廃棄した。
−ペーストをピリジン(無水)で再度溶解させ、第一励起ピークでの光学濃度を0.25とした。
−2.0mgの粗ビオチン化ペプチド・ビオチン−親水性ペプチド−MRP・カルボキサミド)および2.0mgのpeg化ペプチド・peg−MRP・カルボキサミド)を計り取って混合し、そして50μlのメチル スルホキシド(DMSO)に溶解してピリジン中450μlのQD′sと混合した。
−混合液を5秒間渦流混合した。
−次いで12μlのトリメチル水酸化アンモニウム(メタノール中25%(w/v))を添加する。
−混合液を速やかに5秒間渦流混合した。
−遠心分離した。
−残りのピリジン(上清)を廃棄した。
−得られた生物活性化されたナノ結晶性粒子のペーストを次いで500μlのDMSOに溶解した
−沈殿をDMSOにゆっくりと再溶解させ、次いで水/緩衝液で希釈するか、またはG−25セファデックスカラムで水/緩衝液に交換した。
−水/緩衝液中の生物活性化されたナノ結晶性粒子を透析して、結合していない過剰のペプチドから試料を精製した。
【0076】
以上の実施例に記載のとおり、異なるペプチドを使用してNCsの特質の調節(modulation)を成し遂げることができる。我々は先ず、ビオチン化したペプチドでNCsを可溶化し(ビオチン−表1)、そしてこのビオチン−NC基質について、ストレプトアビジンを用いたゲルシフト実験(図4を参照されたい)での活性を調べた。この基質は、ストレプトアビジンおよびアビジンの双方によって効率的に認識されるようである。これは、生物学的接合の必要性なしにNCsが直接生物活性化できることを示している。生物学的接合は通常、反応後の何らかの精製と接合効率の分析とを必要とするものであるが、本発明により活性なペプチドを直接的に使用することによって生物活性NCsの製造が著しく簡素化される。ペプチド被覆後に試料をさらに加工する必要はない。さらに、我々は従来のリンカーを使用してNCsに生体分子を接合させるのが可能であることも確認した。我々は、スクシンイミジルエステルで誘導体化したビオチンを使用して、生物活性化ペプチドで被覆されたNCsの末端アミンまたはリジン残基にビオチン部分を付着させた。NCsで直接反応させた、ビオチン化されたペプチドのものと同様の結果が、ゲルシフトアッセイによって得られた。
【0077】
ビオチン化された生物活性化ペプチドで被覆されたNCsは、溶液中でストレプトアビジンターゲットと良好に反応することができたが、固定化されたアビジンおよびストレプトアビジンタンパク質に対して調べた場合(例えば96穴プレート方式、アクチンフィラメント上のストレプトアビジン)にはもっと効率が悪かった。我々は、「固相」におけるこの活性の欠如は、NCs表面での活性ペプチドの立体障害の問題に関連したものであると考えた。この障害が、ビオチンとそのターゲットの相互作用の自由度に制限をかけるのかもしれない。この問題を解消するために、我々は異なる量の生物活性化ペプチド:1つのターゲティングペプチド、ビオチン−親水性ペプチド−MRP・カルボキサミド、およびより短鎖のペプチドを、NCsの表面上の溶解性薬剤peg−MRP・カルボキサミドと混合した。このレシオメトリックアプローチにより、NCsの、それらのターゲットとの分子相互作用の改良が許容される。不活性の短鎖ペプチド配列が選択されたのは、立体障害を低減するだけでなく、NCsの溶解性を高めるためでもある。表面認識部分および1以上のポリエチレングリコール基を含む短鎖のpeg化された生物活性化ペプチドは、NCsを効率よく可溶化させ、他の生物反応性ペプチドの反応性を高めることができ、そして粒子のコロイドおよび光物理的特質に影響することなく、非特異的結合の減少も可能にする。
【0078】
表面の化学的性質に対するこの新しいアプローチによって、生物活性化ペプチドが被覆されたNCsの第一ターゲティングを生細胞において実施することが可能となった。NCs−ビオチン−peg接合物(ビオチン−親水性ペプチド−MRP−カルボキサミド プラス peg−MRP−カルボキサミド)を、アビジンと融合させたCD14レセプターを過剰発現している生HeLa細胞にて反応させた。CD14レセプターは、グリコシル−ホスファチジル−イノシトール(GPI)アンカー(anchored)タンパク質ファミリーの一部である。このキメラCD14−アビジンタンパク質は、このように、生細胞の原形質膜における、脂質が係留された(lipid−anchored)レセプターの動力学や、それらの再循環を調べるのに非常に有用である。これに関連して、生物活性化されたNCsの使用によって、単一分子感度でこれらのプロセスの長期および実時間での試験を可能とするという独自の利点がもたらされる。我々は、NCs−ビオチン−peg接合物が、過剰発現されたCD14−Av融合タンパク質を特異的に認識できることを見出した。生HeLa細胞におけるCD14レセプターの再循環プロセスの映画を、NCsプローブの高い光安定性を活用して容易に製作することができた。本発明によるこのタイプの生物活性化されたNCプローブによって、CD14 レセプター分子の挙動に光を照らすために、単一のCD14−Av−ビオチン−peg−NCsやCD14−Av−ビオチン−peg−NCsエンドサイトーシス小胞の、生HeLa細胞の異なる部分(膜、エンドソーム、ゴルジ)における拡散時間および拡散パターンを分析することが可能となる。これらの結果によって、グリコシル−ホスファチジル−イノシトール(GPI)アンカータンパク質の分子動力学をより理解できるようになり得る。
【0079】
以上、本発明を明確な理解を目的として詳細に説明してきたが、当業者であれば本発明の範囲および趣旨を逸脱することなく以上記載した好ましい実施形態の様々な適合および修飾を設定できることは十分に理解するはずである。前記の実施形態は、限定でなく例示として解釈されるべきであり、本発明は本明細書に示した詳細に限定されるべきでなく、請求の範囲およびそれらの完全な範囲の均等物によって定められるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】粒子の表面に付着される、本発明による生物活性化ペプチドの概略図である。
【図2】本発明による生物活性化粒子を製造するための交互方法(alternate method)の概略図である。
【図3】粒子の溶解性を増大させるための、生物活性化ペプチドを用いた粒子の処理の絵画図である。
【図4】粒子にビオチン接合剤を付着させるための、生物活性化ペプチドを用いた粒子の処理の絵画図である。
【図5】2種の生物活性化ペプチドの混合物を用いた粒子の処理の絵画図である。
【配列表】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性化された粒子であって
表面を包含する粒子、および
該粒子の前記表面に付着した少なくとも1の生物活性化ペプチドを含み、
該生物活性化ペプチドは、該粒子の表面に結合される表面認識部分および1以上の機能性部分を含み、該分子認識部分はアミノ端およびカルボキシ端を包含して且つ1以上の疎水性スペーサーおよび1以上の結合クラスターを含み、前記機能性部分(1または複数)は該アミノ端および/または該カルボキシ端にて、前記表面認識部分に付着されている、生物活性化された粒子。
【請求項2】
前記結合クラスターが、システイン、メチオニン、ヒスチジンおよびそれらの誘導体からなる群より選択されるアミノ酸を含む請求項1記載の生物活性化された粒子。
【請求項3】
前記結合クラスターが、実質的に2つのシステインからなる請求項2記載の生物活性化された粒子。
【請求項4】
前記疎水性スペーサーが、疎水性アラニン、疎水性グリシン、疎水性イソロイシン、疎水性ロイシン、疎水性メチオニン、疎水性アルギニン、疎水性バリン、疎水性トリプトファンおよびそれらの誘導体からなる群より選択される疎水性アミノ酸である請求項1記載の生物活性化された粒子。
【請求項5】
前記疎水性アミノ酸が、疎水性アラニンである請求項4記載の生物活性化された粒子。
【請求項6】
前記疎水性アラニンが、シクロヘキシルで置換されたアラニンである請求項5記載の生物活性化された粒子。
【請求項7】
前記疎水性スペーサーが、シクロヘキシルで置換されたアラニンである請求項3記載の生物活性化された粒子。
【請求項8】
前記表面認識部分が、少なくとも4つの疎水性スペーサーの間に一つおきに位置する少なくとも3つの結合クラスターを含む請求項1記載の生物活性化された粒子。
【請求項9】
前記結合クラスターが実質的に2つのシステインからなり、且つ前記疎水性スペーサーが実質的にシクロヘキシルで置換されたアラニンからなる請求項8記載の生物活性化された粒子。
【請求項10】
前記粒子が、前記表面にて無機材料を含む請求項1記載の生物活性化された粒子。
【請求項11】
前記粒子の直径が、0.1から100ナノメートルの間である請求項1記載の生物活性化された粒子。
【請求項12】
前記無機材料が、周期表のII〜IV、III〜VまたはIV族からの元素、金属材料を含む半導体;磁性材料および誘電性材料からなる群より選択される請求項10記載の生物活性化された粒子。
【請求項13】
前記粒子の直径が、0.1から100ナノメートルの間である請求項12記載の生物活性化された粒子。
【請求項14】
前記粒子が量子ドットである請求項12記載の生物活性化された粒子。
【請求項15】
前記機能性部分(1または複数)が、溶解性薬剤、接合剤、ターゲティング剤、治療剤、造影剤、検出剤、認識剤および診断剤からなる群より選択される1以上の機能性薬剤を含む請求項1記載の生物活性化された粒子。
【請求項16】
前記機能性部分(1または複数)が、実質的に1以上の溶解性薬剤からなる請求項1記載の生物活性化された粒子。
【請求項17】
前記機能性部分(1または複数)が、前記表面認識部分に付着した溶解性薬剤および該1以上の溶解性薬剤に付着した1以上の機能性薬剤を含んでおり、該機能性薬剤(1または複数)、は接合剤、ターゲティング剤、治療剤、造影剤、検出剤、認識剤および診断剤からなる群より選択される請求項1記載の生物活性化された粒子。
【請求項18】
前記溶解性薬剤が、親水性ペプチド、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレンオキシド)、高分子電解質および糖類からなる群より選択される請求項16記載の生物活性化された粒子。
【請求項19】
生物活性化されたペプチドの第一の部分および第二の部分が、前記粒子表面に付着されており、該第一の部分は、該第二の部分の機能性部分(1または複数)と異なる機能性部分(1または複数)を含んでいる請求項18記載の生物活性化された粒子。
【請求項20】
生物活性化されたペプチドの前記第一の部分が、親水性ペプチドからなる第一の溶解性薬剤を含む機能性部分を包含しており、且つ生物活性化ペプチドの前記第二の部分は、ポリエチレングリコールからなる第二の溶解性薬剤を含む機能性部分を包含している請求項19記載の生物活性化された粒子。
【請求項21】
粒子を処理して生物活性化された粒子を形成するのに使用するための生物活性化ペプチドであって、該粒子は表面を包含し、該生物活性化ペプチドは、
該粒子の表面に結合可能な表面認識部分および1以上の機能性部分を含み、該表面認識部分はアミノ端およびカルボキシ端を包含して且つ1以上の疎水性スペーサーおよび1以上の結合クラスターを含み、前記機能性部分(1または複数)は該アミノ端および/または該カルボキシ端にて、前記表面認識部分に付着されている生物活性化ペプチド。
【請求項22】
前記結合クラスターが、システイン、メチオニン、ヒスチジンおよびそれらの誘導体からなる群より選択されるアミノ酸を含む請求項21記載の生物活性化ペプチド。
【請求項23】
前記結合クラスターが、実質的に2つのシステインからなる請求項22記載の生物活性化ペプチド。
【請求項24】
前記疎水性スペーサーが、疎水性アラニン、疎水性グリシン、疎水性イソロイシン、疎水性ロイシン、疎水性メチオニン、疎水性アルギニン、疎水性バリン、疎水性トリプトファンおよびそれらの誘導体からなる群より選択される疎水性アミノ酸である請求項21記載の生物活性化ペプチド。
【請求項25】
前記疎水性アミノ酸が、疎水性アラニンである請求項24記載の生物活性化されたナノ粒子。
【請求項26】
前記疎水性アラニンが、シクロヘキシルで置換されたアラニンである請求項25記載の生物活性化ペプチド。
【請求項27】
前記疎水性アミノ酸が、シクロヘキシルで置換されたアラニンである請求項23記載の生物活性化ペプチド。
【請求項28】
前記表面認識部分が、少なくとも4つの疎水性スペーサーの間に一つおきに位置する少なくとも3つの結合クラスターを含む請求項21記載の生物活性化ペプチド。
【請求項29】
前記結合クラスターの各々が実質的に2つのシステインからなり、且つ前記疎水性スペーサーの各々が実質的にシクロヘキシルで置換されたアラニンからなる請求項28記載の生物活性化ペプチド。
【請求項30】
前記表面認識部分に結合可能な前記粒子が、前記表面にて無機材料を含む請求項21記載の生物活性化ペプチド。
【請求項31】
前記粒子の直径が、0.1から100ナノメートルの間である請求項30記載の生物活性化ペプチド。
【請求項32】
前記分子認識部分に結合可能なナノ粒子が量子ドットである請求項31記載の生物活性化ペプチド。
【請求項33】
前記機能性部分(1または複数)が、溶解性薬剤、接合剤、ターゲティング剤、治療剤、造影剤、検出剤、認識剤および診断剤からなる群より選択される1以上の機能性薬剤を含む請求項21記載の生物活性化ペプチド。
【請求項34】
前記機能性部分(1または複数)が、実質的に1以上の溶解性薬剤からなる請求項21記載の生物活性化ペプチド。
【請求項35】
前記機能性部分(1または複数)が、前記表面認識部分に付着した1以上の溶解性薬剤および該1以上の溶解性薬剤に付着した1以上の機能性薬剤を含んでおり、該機能性薬剤は接合剤、ターゲティング剤、治療剤、造影剤、検出剤、認識剤および診断剤からなる群より選択される請求項21記載の生物活性化ペプチド。
【請求項36】
前記溶解性薬剤が、親水性ペプチド、ポリエチレングリコール、ポリ(エチレンオキシド)、高分子電解質および糖類からなる群より選択される請求項34記載の生物活性化ペプチド。
【請求項37】
水性媒体中に懸濁された請求項1記載の生物活性化された粒子を含む組成物。
【請求項38】
水性媒体中に懸濁された請求項16記載の生物活性化された粒子を含む組成物。
【請求項39】
水性媒体中に懸濁された請求項17記載の生物活性化された粒子を含む組成物。
【請求項40】
水性媒体中に懸濁された請求項19記載の生物活性化された粒子を含む組成物。
【請求項41】
水性媒体中に懸濁された請求項20記載の生物活性化された粒子を含む組成物。
【請求項42】
水性媒体中で可溶性である、生物活性化された粒子を製造するための方法であって、
表面を包含する粒子を準備し;および
該粒子の表面を、充分量の請求項21記載の生物活性化ペプチドで処理して、前記水性媒体中で可溶な前記生物活性化されたナノ粒子を製造する工程を含む方法。
【請求項43】
水性媒体中で可溶性である、生物活性化された量子ドットを製造するための方法であって、
量子ドットを準備し;および
該量子ドットの表面を、充分量の請求項32記載の生物活性化ペプチドで処理して、前記水性媒体中で可溶な前記生物活性化された量子ドットを製造する工程を含む方法。
【請求項44】
水性媒体中で可溶性である、生物活性化された粒子を製造するための方法であって、
表面を包含する粒子を準備し;および
該粒子の表面を、充分量の請求項34記載の生物活性化ペプチドで処理して、前記水性媒体中で可溶な前記生物活性化された粒子を製造する工程を含む方法。
【請求項45】
水性媒体中で可溶性である、生物活性化された粒子を製造するための方法であって、
表面を包含する粒子を準備し;および
該粒子の表面を、充分量の請求項35記載の生物活性化ペプチドで処理して、前記水性媒体中で可溶な前記生物活性化された粒子を製造する工程を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−508095(P2006−508095A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548260(P2004−548260)
【出願日】平成15年5月7日(2003.5.7)
【国際出願番号】PCT/US2003/014401
【国際公開番号】WO2004/039830
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
VELCRO
【出願人】(500027932)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (39)
【Fターム(参考)】