説明

粒子分散ゾルと粒子分散樹脂組成物の製造方法

【課題】有機溶媒に、均一に無機微粒子を分散させ、有機機能材料に用いる無機ナノ粒子の機能を工業的に十分に発揮させるための、無機微粒子の有機溶媒分散ゾルおよび無機微粒子分散樹脂組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】
本発明は、無機微粒子の水系分散ゾルに、分散剤を添加する第1工程と、前記分散剤が添加された前記水系分散ゾルを、凍結乾燥または噴霧乾燥して、乾燥微粉末を得る第2工程と、前記乾燥微粉末を、有機溶媒に分散させる第3工程と、を含む、無機微粒子の有機溶媒分散ゾルの製造方法である。
さらに、本発明は、第1工程および第2工程を経て得られた乾燥微粉末を、溶融状態の熱可塑性樹脂に分散させる段階、または、第1工程、第2工程および第3工程を経て得られた無機微粒子の有機溶媒分散ゾルおよび熱可塑性樹脂の混合物を作製し、前記混合物中の有機溶媒を除去する段階を含む、無機微粒子含有熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子分散ゾルの製造方法および粒子分散樹脂組成物に関する。より詳しくは、均一に有機溶媒または溶融樹脂に分散可能な無機微粒子を製造する。そして、それを用いて、無機微粒子の機能が工業的に十分に発揮したシートやフィルムなどのナノコンポジットを代表とする無機微粒子含有熱可塑性樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」とも称する)を製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機樹脂の諸物性を向上させる手法として、有機高分子の特徴である柔軟性、低密度や成形性などを保持しつつ、無機化合物の特徴である高強度、高弾性率、耐熱性、電気特性などを併せ持つ材料の開発が盛んに行われている。そして、このような物性改良手法として、従来のガラス繊維やタルクなどによる強化樹脂に代わり、前述のような無機微粒子を用いた複合材料、いわゆるポリマーナノコンポジットと呼ばれる樹脂組成物が注目されてきている。
【0003】
このような複合材料の例としては、「複合材料およびその製造方法(特許文献1)」や「ポリアミド複合材料およびその製造方法(例えば、特許文献2)」、「ポリオレフィン系複合材料およびその製造方法(特許文献3)」などが挙げられる。熱可塑性樹脂複合材料の充填剤としては、従来、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム等の金属酸化物微粒子が広く利用されている。
【0004】
しかしながら、無機微粒子は、そのほとんどが凝集した粉末の状態、もしくは水に分散したゾルやコロイドの状態で上市されている。まれに有機溶媒に分散した状態のものもあるが、機械的分散により、折角の粒子形状が破壊されていたり、凝集が多く分散が不十分であったり、といった制限が多く、特にラボスケールでは可能な技術でも、工業的な量産性を実現しつつナノ粒子の特異な機能をいかんなく発揮することはできておらず、世の中の無機ナノ粒子の本来の能力を、広範に活用できずにいる。
【0005】
仮に、前述の凝集が抑えられ均一に分散するのであれば、無機微粒子の粒径は小さいほど好ましく、小粒径化にともなって表面積が大きくなるため、相互作用が強まり、従来に無かった特性の発現が期待される。
【0006】
上述した無機微粒子の、有機溶媒中での均一分散を達成するためには、前記無機微粒子の表面を、目的化合物に均一分散可能な官能基を有するように有機化合物で化学的に表面処理し、疎水化する手法がある。これにより、微粒子同士が凝集しにくくなり、有機樹脂中での分散性をある程度は向上させることができる。
【0007】
しかしながら、凝集を防ぐべく細心の注意を払っていても、完全に凝集を防ぐことは難しく、特に工業的スケールで製造しようとする場合、シリカ表面に対するクロロシラン処理などの極めて特殊な組合せ以外の、汎用量産プロセスの開発が切望されている。
【0008】
「無機酸化物微粉末およびその製造方法」(特許文献4)において、サブミクロン大の粒径の無機酸化物の表面をドデシルベンゼンスルホン酸で改質した後、加熱乾燥する手法が記載されている。しかしながら、サブミクロン大の粒子の加熱乾燥操作のため、僅かな粒子凝集でも物性は大幅に低下し、いわゆるナノコンポジットに期待される物性向上効果は得られない。当該発明はセラミック原料粉体を得ることが主目的であり、スラリーとして巨大な凝集が無ければよい、というものであるため、その要求レベルはナノスケールでの均一分散とは程遠い。従って、この技術で得られる樹脂組成物には透明性はまったく期待できない。
【0009】
一方、加熱乾燥操作をせず、乾燥方法としてフリーズドライを用いることにより、凝集を抑え、均一に分散させる技術として、「ポリマーコンポジットの製造方法およびポリマーナノコンポジット(特許文献5)」が開示されている。
【特許文献1】特開昭63−230766号公報
【特許文献2】特公平7−47644号公報
【特許文献3】特開平10−30039号公報
【特許文献4】特開平6−32604号公報
【特許文献5】特開2007−2049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、乾燥過程での粒子の凝集が進行することは避けられず、透明性に代表される外観や、十分に強度、弾性率および耐熱性に優れた樹脂組成物は得られずにいた。よって、有機機能材料に用いる無機微粒子のこれらの機能を、工業的に十分に発揮することは困難であった。有機機能材料に用いる無機微粒子の機能を工業的に十分に発揮するためには、その前提として、「いかに有機溶媒に、均一に無機微粒子を分散できるか」自体が困難な課題として存在する。
【0011】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、有機溶媒に、均一に無機微粒子を分散させ、有機機能材料に用いる無機ナノ粒子の機能を工業的に十分に発揮させるための、無機微粒子の有機溶媒分散ゾルの製造方法を提供することを目的とする。
【0012】
本発明の別の目的は、有機溶媒分散ゾルを用いて、あるいはゾルを経由せず直接的に均一に樹脂に粒子を分散させることで、無機微粒子の機能が工業的に十分に発揮したシートやフィルムなどのナノコンポジットを代表とする樹脂組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、無機微粒子の水系分散ゾルを乾燥する前に、無機微粒子の水系分散ゾルに、分散剤を添加する。その後、分散剤が添加された無機微粒子の水系分散ゾルを凍結乾燥または噴霧乾燥した後に、有機溶媒に分散させる。すると、驚くべきことにナノオーダーで均一に分散した無機微粒子の有機溶媒分散ゾルを得ることができることを見出し、本発明を想到した。
【0014】
加えて本発明者らは、上記の技術をさらに応用すべく、鋭意研究を行った。その結果、無機微粒子の水系分散ゾルに分散剤を添加し、その後分散剤が添加された無機微粒子の水系分散ゾルを凍結乾燥または噴霧乾燥する。その後に、得られた乾燥微粉末を、溶融状態の熱可塑性樹脂(「熱可塑性樹脂」を単に「樹脂」とも称する)に直接分散させると、ナノオーダーで均一に分散した無機微粒子の樹脂組成物を驚嘆に値するほど簡単に得られることを見出し、本発明を想到した。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る製造方法により、ナノオーダーで均一に分散した無機微粒子の有機溶媒分散ゾルを製造することができ、また、該無機微粒子の有機溶媒分散ゾルを用いることで、透明性に代表される外観や、十分に強度、弾性率および耐熱性に優れた樹脂組成物を得ることができる。
【0016】
加えて、有機溶媒分散ゾルを経由せずとも溶融状態の樹脂に分散させることで、ナノオーダーで均一に分散した無機微粒子の樹脂組成物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
上記の通り、本発明者らは、無機微粒子の水系分散ゾルに、分散剤を添加して凍結乾燥または噴霧乾燥したのち、有機溶媒に分散させることで、ナノオーダーで均一に分散した無機微粒子の有機溶媒分散ゾルを得ることができることを見出した。以下、その方法を第1実施形態として、説明する。
【0018】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態は、無機微粒子の水系分散ゾルに、分散剤を添加する第1工程と、前記分散剤が添加された前記水系分散ゾルを凍結乾燥または噴霧乾燥して、無機微粒子乾燥物を得る第2工程と、前記乾燥微粉末を、有機溶媒に分散させる第3工程と、を含む、無機微粒子の有機溶媒分散ゾルの製造方法である。
【0019】
本実施形態は、無機微粒子の水系分散ゾルに、分散剤を添加して凍結乾燥または噴霧乾燥したのち、有機溶媒に分散させる点に特徴を有する。かような態様とすることにより、特に、シートやフィルム状のポリマーナノコンポジットや塗料、透明性や均一分散性を必要とする用途に供される、凝集が少なく工業的な配合・混合に適した、無機微粒子の有機溶媒分散ゾルが提供される。
【0020】
以下、上記第1実施形態について詳説する。
【0021】
[第1工程]
(無機微粒子)
本工程において用いられる無機微粒子としては、特に制限はないが、好ましくは、シリカ、アルミナ(擬ベーマイト)、チタニア、フラーレン等のカーボン、水酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化亜鉛、マグネシア(酸化マグネシウム)、酸化セリウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化スズ、酸化インジウム、酸化インジウムスズおよびその混合物からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。本発明においては、いずれを用いてもよいが、入手のしやすさ、コスト、分散剤の効果の発揮しやすさなどを考慮すると、シリカ、アルミナが特に好ましい。
【0022】
本発明に係る無機微粒子の形状も特に限定されず、一般的な略球状だけでなく、直方体や板状、繊維のような直線形状、枝分かれした分岐形状でありうる。
【0023】
また、本発明で用いられる無機微粒子は、上述の通り、BET法で測定した比表面積が50〜250m/gであると好ましく、より好ましくは70〜250m/gであり、特に好ましくは100〜220m/gである。
【0024】
BET比表面積が50m/gより小さいものは、ナノ粒子としての特性を有さず、シートやフィルム、塗料、樹脂組成物にした場合に仕上がり表面の平滑性が発揮されない虞れがある。また、シートやフィルム、樹脂組成物としての機械物性の向上が望めない虞れもある。さらには、透明性が期待できないなどのデメリットが生じる虞れがある。一方で、BET比表面積が250m/gより大きいものは、製造に特殊な技術が必要となり、コスト的に不利となる虞れがある。
【0025】
また、本発明で用いられる無機微粒子は、大きさにも特に制限はないが、目的とする性能を発現させるため、長径(長軸長さ)が、2〜250nmであることが好ましい。無機微粒子の長径を可視光波長下限である380nmより、かなり小さくすることで、無機微粒子による可視光の散乱はほとんどなくなり、透明性を犠牲にすることなく優れた物性を有するナノコンポジットを得ることができるからである。つまり、透明性を考慮すると、200nmを超えない方が好ましい。また、2nm以上であると、分散性が向上し、コスト面でも好ましい。なお、より好ましい長径は、50〜200nmであり、さらに好ましい長径は、100〜200nmである。
【0026】
なお、ここでいう長径とは、無機微粒子の形状が略球状ならその直径、直方体や板状なら最も長い一辺を意味する。また、短径(短軸長さ)は、透明と機械的物性を兼ね備えた樹脂組成物を得るとの観点からは、好ましくは、1〜12nmであり、より好ましくは1〜10nmである。
【0027】
アスペクト比(長軸長さ/短軸長さ)は、引っ張り、曲げ弾性率をはじめとする機械的物性の向上を考慮すると、好ましくは5〜250であり、より好ましくは8〜100で、さらに好ましくは、15〜50である。
【0028】
また、前記無機微粒子の製法は特に限定されず、気相法、ゾルゲル法、コロイド沈殿法、水熱合成法、溶融金属噴霧酸化法、アーク放電などの従来公知の方法を適宜選択して使用できる。より具体的には、後述する実施例の方法等を適宜参照して行えばよい。
【0029】
(水系分散ゾル)
前記無機微粒子は、市販の水系分散ゾルのものが取り扱い上好ましく、その濃度は一般的に10質量%を超えて20質量%以下のものが多い。
【0030】
ここで、水系分散ゾルとは、水系の溶媒に粒子が分散しているコロイドをいう。無機微粒子の濃度が10質量%を超えて20質量%以下のものをそのまま用いると、分散剤を添加した際にゾルが高粘度となるため、攪拌が困難となったり、全体を均一に混合できなくなるといった不都合が生じる虞れがある。よって、効率よく攪拌するために、無機微粒子の濃度は、10質量%以下に希釈して用いることが望ましい。但し、濃度が5質量%よりも低いと工業的に生産性が悪化するため不利となる虞れがある。よって、より望ましい濃度は5〜10質量%、さらに望ましい濃度は、7〜10質量%、特に望ましい濃度は、8〜10質量%である。よって上記の通り、分散剤を添加する第1工程前に、予め無機微粒子の水系分散ゾルを、固形分濃度として5〜10質量%に調製しておくと好ましい。
【0031】
水系の溶媒とは、主溶媒が水であればよく、アルコール類やアセトンなどの親水性溶媒が少量含まれていても構わない。その量は特に制限されないが、溶媒全体の10質量%程度までに抑えることが好ましく、あまりに多くなると、凍結乾燥時にゾルの溶解をひき起こして良好な凍結乾燥が行えなくなる虞がある。また噴霧乾燥を行う際にも、親水性溶媒の含有量が多くなると、スプレードライ装置内で乾燥速度の制御が困難になるため好ましくない。したがって、好ましい水系の溶媒は、100質量%が水である。
【0032】
(分散剤)
本発明で用いる分散剤は、特に制限はないが、界面活性剤、有機酸およびこれらの誘導体よりなる群から選ばれる少なくとも1種であると好ましい。
【0033】
より具体的には、本発明で用いる分散剤は、特に制限はないが、前記分散剤が、14個以上の炭素原子を有しており、かつ、芳香族環を有する有機スルホン酸であると好ましい。なお、入手しやすさの観点で、より好ましくは炭素原子数16〜24個、さらに好ましくは、16〜18個である。
【0034】
前記分散剤が、14個以上の炭素原子を有しており、かつ、芳香族環を有する有機スルホン酸は、いわゆる、長鎖有機スルホン酸であり、このような長鎖有機スルホン酸は、一般的には水に難溶である。しかしながら、本発明のように、無機微粒子を水系の溶媒に分散させた水系分散ゾルに、このような分散剤を添加することにより、後工程で有機溶媒または樹脂に分散させた際に凝集や沈殿のない、透明性の優れたゾルあるいは組成物を得ることができる。
【0035】
界面活性剤としては、アニオン型、カチオン型、両性、ノニオン型のいずれも適用可能である。後述する第2実施形態において、樹脂組成物とする場合は、アルカリ金属塩型の界面活性剤であると、アルカリ金属イオンがポリマー分子に分解促進などの悪影響を与える虞があるので、好ましくない。アニオン性界面活性剤としては、親水基としてカルボン酸、スルホン酸、あるいはリン酸構造を持つ有機酸系のものが挙げられる。カチオン性界面活性剤は、親水基としてテトラアルキルアンモニウムを有するものが挙げられる。両性界面活性剤は、分子内にアニオン性部位とカチオン性部位の両方を有しているもので、上記のそれぞれを組み合わせた構造であればよく、アルキルベタインなどのベタイン系や、アルキルアミンオキシドなどのアミンオキシド系などが挙げられる。ノニオン型界面活性剤としては、イオン化しない親水性部分を持つもので、アルキルグリコシドのような低分子系、あるいはポリエチレングリコールやポリビニルアルコールのような高分子系が挙げられる。具体的には、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが挙げられる。より具体的には、Triton(登録商標) X、Pluronic(登録商標)、Tween(登録商標)などの商品名で売られているものがこれにあたる。中でも、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルが、無機微粒子の分散能力と微粒子表面への吸着安定性の点で好ましい。
【0036】
有機酸としては、特に制限されないが、カルボキシル基、スルホン酸基、スルフィン酸基、ホスホン酸基、フェノール性ヒドロキシ基、チオフェノール基などの官能基をもつものが挙げられる。好ましい酸性を示す官能基としては、カルボキシル基、スルホン酸基が挙げられる。さらに、本発明に用いられる有機酸は、酸性を示す官能基に加えて疎水性を示す官能基をもつものであることが好ましい。疎水性を示す官能基の具体的な例としては、鎖状炭化水素基、芳香族炭化水素基、環状炭化水素基等が挙げられる。この有機基は、特に制限されない。ただし、後述するような樹脂に対しては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基、デシル基、ラウリル基、ステアリル基などの脂肪族アルキル基;フェニル基、トルイル基、アルキルベンゼン基などの芳香族置換基;アミノアルキル基、エポキシアルキル基、イソシアネートアルキル基などの置換基から選択されることが好ましい。具体的な有機酸の例としては、スルホン酸系誘導体の場合、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸などのアルキルスルホン酸;ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸などの芳香族スルホン酸が挙げられる。中でも、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸が無機微粒子の分散能力と微粒子表面への吸着安定性の点で好ましい。カルボン酸系誘導体の場合、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、ステアリン酸、リノール酸、オレイン酸、乳酸、マロン酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、アクリル酸などのアルキルカルボン酸;安息香酸、フタル酸各異性体、サリチル酸などの芳香族カルボン酸;およびこれらの酸無水物、さらにはポリアクリル酸などの高分子カルボン酸が挙げられる。中でも、安息香酸、オレイン酸が無機微粒子の分散能力と微粒子表面への吸着安定性の点で好ましい。
【0037】
リン酸系誘導体の場合、メチルホスホン酸、エチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、ベンジルホスホン酸などのホスホン酸;メチルホスフィン酸、エチルホスフィン酸、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸などのホスフィン酸が挙げられる。中でも、ベンジルホスホン酸が無機微粒子の分散能力と微粒子表面への吸着安定性の点で好ましい。
【0038】
また、添加する分散剤の量も、分散剤や無機微粒子の水系分散ゾルの種類により一義的に決めることは困難であるが、均一分散するゾルの研究開発を日々行っている当業者であれば、本発明に係る技術的思想に基づいて、適量を適宜選択して添加することができる。指針を示すと、分散剤の量は、無機微粒子100質量部に対して、好ましくは1〜50質量部、さらに好ましくは5〜40質量部、特に好ましくは10〜30質量部である。
かような順で好ましくなるのは、粒子表面を覆うために十分な量とコストとのバランスのためである。また、分散剤の量が少ないと後述する樹脂中への分散が困難となる虞れがあり、多すぎると樹脂の機械物性に悪影響を及ぼす可能性が高くなる。
【0039】
分散剤の添加に際しては、一般的な回転翼を取り付けたモーター型攪拌装置で攪拌しながら投入していく。回転翼の形状は特に制限されない。この際、分散剤を水や有機溶媒により希釈しておいても良い。
【0040】
[第2工程]
(凍結乾燥または噴霧乾燥)
本発明は、乾燥手段として、凍結乾燥法(以下、フリーズドライとも称する)または噴霧乾燥法(以下、スプレードライとも称する)を採用し、その乾燥手段を行うことで、乾燥微粉末(つまり、凍結乾燥物、噴霧乾燥物)を得る点に特徴を有する。かようにすることにより、図1が示すイメージ図のように、ナノオーダーで均一に分散した無機微粒子の有機溶媒分散ゾルを製造することができる。
【0041】
仮に、乾燥手段として通常の加熱乾燥を採用すると、図2が示すイメージ図のように、乾燥中に毛管現象・体積収縮・熱に因る脱水縮合で確実に凝集が進むため、透明コンポジットには適用することができない。また、高沸点水溶性溶媒を繰り返し添加して無機微粒子を表面改質する方法もあるが、溶媒交換に大量の溶媒と熱を要する為、材料費、光熱費の両面で工業的に不利である。
【0042】
一方で、上述の通り従来においても、ポリマーコンポジットを製造する際に、乾燥方法としてフリーズドライを採用する技術は存在する(上記特許文献5)。しかしながら、その技術が採用された主な目的は、アルミナ粒子のようなヒドロキシ基を有する無機材料を含むポリマーナノコンポジットを製造する際の、アルミナ粒子などが有するヒドロキシ基に起因する、加水分解や酸化防止を狙いとしている。すなわち、本願のような、ナノオーダーで均一に分散した無機微粒子の有機溶媒分散ゾルを製造するために採用されているわけではない。
【0043】
現に、無機微粒子の水系分散ゾルに、分散剤を添加する工程を経ないで、無機微粒子の水系分散ゾルをそのまま乾燥させると、乾燥方法としてフリーズドライを採用したとしても、図3が示すイメージ図が示すように凝集が進んでしまう。
【0044】
(a.凍結乾燥)
そこで、本発明では、フリーズドライをする前に、無機微粒子の水系分散ゾルに、分散剤を添加する工程を経る。かような形態とすることで、乾燥中の毛管現象、体積収縮、脱水縮合に伴う無機微粒子の凝集を防ぐことができる。さらには、凍結乾燥法を採用することにより、水系溶媒を用いることができ、溶媒留去の熱消費がない利点がある。「分散剤」は、乾燥した粒子を溶媒に添加する際、すなわち、粒子を溶媒に分散させる際に、投入することが当業者の一般的な常識である。本発明者らは、ナノオーダーで均一に分散した無機微粒子の有機溶媒分散ゾルを得るべく、鋭意研究を行った結果、逆転の発想をすることで本工程を想到した。つまり、無機微粒子の水系分散ゾルを乾燥する前に、無機微粒子の水系分散ゾルに、分散剤を添加し、前記無機微粒子に分散剤が付着した状態で、凍結乾燥して、凍結乾燥物を得る。その後、該凍結乾燥物を、有機溶媒に再分散させると、驚くべきことにナノオーダーで均一に分散した無機微粒子の有機溶媒分散ゾルを得ることができたのである。
【0045】
なお、この凍結乾燥を行う場合は、添加する分散剤の量は、品質安定性の観点で、無機微粒子100質量部に対して、より好ましくは10〜40質量部の範囲である。それは、凝集防止の効果が最も高くなるからである。
【0046】
本発明に係る凍結乾燥は、従来公知の技術を用いることができる。例えば、市販の工業用フリーズドライ装置を用いて行うことができる。装置の例としては、共和真空技術(株)製凍結乾燥機RLEIIシリーズ、RL−Bシリーズなどが挙げられる。該凍結乾燥機を用いて、凍結乾燥を行う方法は次の通りである。
【0047】
(1)無機微粒子の水系分散ゾルを凍結乾燥装置の棚にセットし、2〜5時間かけて−35℃〜−50℃にて凍結を行う。(2)この間、トラップも並行して冷却する。(3)10〜20分のうちに十分排気して0.02〜0.5Torr(2.6664Pa〜66.6610Pa)程度の真空とする。(4)約1日間凍結乾燥を行い、水分を大部分昇華させる。(5)25〜50℃にて数時間2次乾燥を行い、僅かに残存する水分を除去する。(6)窒素又は乾燥空気により常圧に戻す。かような方法により、本発明に係る乾燥微粉末を得ることができる。
【0048】
(b.噴霧乾燥)
乾燥手段として、噴霧乾燥する場合も、ナノオーダーで均一に分散した無機微粒子の有機溶媒分散ゾルを製造することができる。
【0049】
本発明では、スプレードライをする前に、無機微粒子の水系分散ゾルに、分散剤を添加する工程を経る必要がある。かような形態とすることで、乾燥中の毛管現象、体積収縮、脱水縮合に伴う無機微粒子の凝集を防ぐことができる。さらには、噴霧乾燥法を採用することにより、水系溶媒を選ぶことができ、溶媒留去の工程を開放系で連続的に行える利点がある。本形態も、凍結乾燥の場合と同様、逆転の発想、すなわち無機微粒子の水系分散ゾルを乾燥する前の段階で、無機微粒子の水系分散ゾルに分散剤を添加し、前記無機微粒子に分散剤が付着した状態で噴霧乾燥して、噴霧乾燥物を得る。その後、該噴霧乾燥物を、有機溶媒に再分散させることにより、驚くべきことにナノオーダーで均一に分散した無機微粒子の有機溶媒分散ゾルを得ることができたのである。
【0050】
なお、この噴霧乾燥を行う場合は、添加する分散剤の量は、品質安定性の観点で、無機微粒子100質量部に対して、より好ましくは20〜30質量部の範囲である。それは、凝集防止の効果が最も高くなるからである。
【0051】
本発明に係る噴霧乾燥は、従来公知の技術を用いることができる。例えば、市販の工業用スプレードライ装置を用いて行うことができる。装置の例としては、大川原化工機(株)製噴霧乾燥機Lシリーズ、OCシリーズ、CLシリーズ、FOCシリーズなどが挙げられる。該噴霧乾燥機を用いて、噴霧乾燥を行う方法は次の通りである。
【0052】
(1)無機微粒子の水系分散ゾルを、噴霧乾燥装置のチューブ式ローラ液送ポンプにセットし、数kg〜数十kg/hの速度で装置内へ液送する。(2)この間、装置上部より、アトマイザまたはノズルを用いて、無機微粒子水系分散ゾルを噴霧する。(3)装置内気流には空気を用い、吹き込む気流を上部200〜250℃、下部100℃前後となるような条件で調整する。この気流に懸濁液の液滴が乗ることで乾燥が進行する。(4)液滴は飛行中に水分を失い乾燥され、最終的に乾燥粉末として装置下部にて回収される。かような方法により、本発明に係る乾燥微粉末を得ることができる。
【0053】
[第3工程]
前記第2工程で得られた乾燥微粉末を、本工程において有機溶媒に再分散させる。再分散にあたっては、有機溶媒中に、一般的な回転翼を取り付けたモーター型攪拌装置で攪拌しながら粉末を投入していけばよい。無論、室温に戻った後も、該乾燥微粉末同士が凝集することはない。
【0054】
なお、後述の溶融樹脂への直接分散を行う場合には、該第3工程、次の第4、第5工程を省略し、第3実施形態へ進むことができる。
【0055】
(有機溶媒)
前記乾燥微粉末を分散する有機溶媒は、任意のものを用いてよく特に制限されない。しかし、後述する第2実施形態において、樹脂を添加させる場合、貧溶媒であるとあまり望ましくない。
【0056】
溶媒の具体的な例としては、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソランなどのエーテル類;1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、ヘキサノール、オクタノール等のアルコール類;クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、メチレンクロライド、四塩化炭素、トリフルオロメチルベンゼン、メタキシレンヘキサフロリドなどのハロゲン系溶媒;アセトニトリル、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン系極性溶媒;テルピネオール、テルペン油等のテルペン類;オキシム類;γ−ブチロラクトン等のラクトン類が挙げられる。中でも、環境負荷、溶解性、工業的な入手のしやすさなどの観点から、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、メチレンクロライドが好ましい。
【0057】
なお、前記有機溶媒は、単独で用いてもよく、2種以上の混合物の形態で用いてもよい。好ましくは、単独で用いる。
【0058】
[第4工程]
以下、乾燥微粉末が分散した有機溶媒に、無機微粒子100質量部に対して、5〜25質量部の水を添加する第4工程について説明する。
【0059】
つまりは、第4工程は、前記第3工程を経た後、乾燥微粉末が分散した有機溶媒に、微量の水を添加する工程である。
【0060】
本発明の好ましい形態においては、前記乾燥微粉末が分散した前記有機溶媒に、微量の水分を再添加する。かような形態とすることにより、ナノオーダーでより一層均一分散したゾルを得ることができる(図4が示すイメージ図参照)。
【0061】
本工程の興味深い点は、一度乾燥して水分を除去したにもかかわらず、再度微量の水を添加する点にある。一般的な常識を有する当業者であれば、折角除去した水分を、再度添加するという本工程を相到することはかなりの困難を有する。
【0062】
本発明者らは、ナノオーダーで均一に分散した無機微粒子の有機溶媒分散ゾルを得るべく、鋭意研究を行っていた過程の中で、微量の水分を利用すると、ナノオーダーで均一に分散したゾルを得ることができることを、逆転の発想を用いて、見出したのである。
【0063】
添加される水の量は、無機微粒子100質量部に対して、好ましくは5〜25質量部である。より好ましくは、10〜20質量部である。より一層均一分散したゾルを得るという点を考慮すると、5質量部以上であることが好ましく、有機溶媒からの水分析出を防止する観点および極性の低い溶媒における懸濁や2相分離を防止するといった観点で、25質量部以下であると好ましい。
【0064】
この実施形態(第4工程を経る形態)をとる場合には、第1工程で添加する分散剤の量は、無機微粒子に対して5〜25質量部、好ましくは10〜20質量部の範囲をとることが望ましい。分散剤の量が少ないと溶媒中への分散が困難となり、多すぎるとコスト的に不利となる。水の添加により、使用する分散剤の量を少なめに抑えることができ、コストを一層抑えられるということも、本方法の利点の一つである。
【0065】
なお、本発明に使用される水にも特に制限はなく、水道水であっても、純水であっても、イオン交換水であってもよい。好ましくは、イオン交換水である。
【0066】
[第5工程]
前記第3工程または第4工程後、シランカップリング剤またはチタンカップリング剤の少なくとも1種を添加し、前記無機微粒子を表面改質する第5工程について説明する。
【0067】
本発明の好ましい形態においては、さらにシランカップリング剤またはチタンカップリング剤(改質剤とも称する)の少なくとも1種を、前記第3工程または第4工程後の無機微粒子の有機溶媒分散ゾルに添加し、無機微粒子の表面改質をする。かようにすることにより、共有結合の安定な表面改質という効果を奏し、さらに一層ナノオーダーでより一層均一分散したゾルを得ることができる。「前記第3工程または第4工程後」とは、第3工程を経て、そのまま第5工程を行ってもよいし、第4工程をも経て、第5工程を行ってもよいとの意味である。なお、上記したように第4工程を経ることで分散剤使用量を抑制できてコスト低減を図れることを考慮すると、好ましくは、後者である。
【0068】
(シランカップリング剤)
本発明において、水が添加された前記有機溶媒に、シランカップリング剤またはチタンカップリング剤の少なくとも1種を添加することで、無機微粒子の表面改質が行われる。改質剤としては、シランカップリング剤(シリル化剤を含む)、チタンカップリング剤を用いることができる。これらのうちでも、使い易さやコストなどの観点から、シランカップリング剤が特に好ましい。ここで、シランカップリング剤とは、無機材料に対して親和性あるいは反応性を有する加水分解性のシリル基に、有機物に対して親和性あるいは反応性を有する有機置換基を化学的に結合させた構造を持つシラン化合物である。シリル基中のケイ素に結合した加水分解性基としては、アルコキシ基、ハロゲン、アセトキシ基、アルケノキシ基、オキシム基が挙げられるが、通常、アルコキシ基、特にメトキシ基、エトキシ基が用いられる。
【0069】
シランカップリング剤を、一般式RSiXで表した場合、Xは、特に制限はないが、アルコキシ基、ハロゲン、アセトキシ基、アルケノキシ基、オキシム基であり、m+nは4であり、nは1〜3であると好ましい。また、有機置換基Rとしても、特に制限はないが、好ましくは、アルキル基、アリール基、アミノ基、メタクリル基、アクリル基、不飽和アルキル基、エポキシ基、メルカプト基などを挙げることができる。
【0070】
具体的に、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基などが挙げられる。アリール基としては、フェニル基、ベンジル基、トルイル基などが挙げられる。アミノ基としては、アミノプロピル基、アミノエチルアミノプロピル基、ウレイドプロピル基などが挙げられる。アクリル基としては、メタクリロキシプロピル基、アクリロキシプロピル基などが挙げられる。不飽和アルキル基としては、ビニル基、アリル基などが挙げられる。エポキシ基としては、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基などが挙げられる。メルカプト基としては、γ−メルカプトプロピル基などが挙げられる。
【0071】
より具体的には、有機樹脂への相溶性の観点で、エポキシ−シラン、フェニル−シラン、アミノ−シランなどを好ましく例示できる。またトリメチルメトキシシラン等のモノメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン等のジメトキシシランも好ましく用いられる。さらに具体的には、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが例示できる。
【0072】
(チタンカップリング剤)
チタンカップリング剤を、一般式R’TiXで表した場合、m+nは、4であり、Xは、オキシカルボニル基を有する有機基であると好ましい。また、有機置換基R’としても、特に制限はないが、好ましくは、カルボキシル基を挙げることができる。より具体的には、反応活性と有機基の大きさのバランスの観点で、ジイソプロポキシチタンジイソステアレートを好ましく例示できる。
【0073】
また、添加する改質剤の量も、有機溶媒や無機微粒子の種類により一義的に決めることは困難であるが、当業者であれば、本発明に係る技術的思想に基づいて、適量を適宜選択して添加することができる。指針を示すと、添加する改質剤の量は、無機微粒子100質量部に対して、好ましくは0.1〜50質量部、より好ましくは0.2〜20質量部、さらに好ましくは0.5〜10質量部である。かような順で好ましくなるのは、あまりに少ないと十分な効果が得られず、高すぎるとコスト面で不利になることが多いためである。
【0074】
(表面改質方法)
前記水が添加された前記有機溶媒に、シランカップリング剤またはチタンカップリング剤の少なくとも1種を添加し、前記無機微粒子の表面改質をする方法にも特に制限はないが、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0075】
すなわち、水が添加された前記有機溶媒中に、シランカップリング剤またはチタンカップリング剤の少なくとも1種を添加し、室温、溶媒の沸点以下の温度で攪拌し、改質剤と粒子表面との化学反応を進行せしめることができる。この際、改質剤は有機溶媒で希釈した後に加えてもよい。
【0076】
上記第1実施形態で説明したように、無機微粒子の水系分散ゾルへの分散剤の先添加、凍結乾燥または噴霧乾燥、有機溶媒への再分散をすることで、ナノオーダーで均一に分散された無機微粒子の有機溶媒分散ゾルを得ることができる。すると、煩雑なステップや長時間の加熱工程を必要とせず、簡便に高品質な無機微粒子の有機溶媒分散ゾルを製造することができる。また、当該無機微粒子の有機溶媒分散ゾルは、塗料、印刷インクなどの粘度調整剤、塗膜強化剤、触媒担持体、さらには精密表面処理用ゾルとして半導体用CMP研磨剤などに幅広く適用することができる。
【0077】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態は、無機微粒子の水系分散ゾルに、分散剤を添加する第1工程と、前記分散剤が添加された前記水系分散ゾルを、凍結乾燥または噴霧乾燥して、乾燥微粉末を得る第2工程と、前記乾燥微粉末および熱可塑性樹脂を混合する混合工程と、を含む、無機微粒子含有熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、前記混合工程は、前記乾燥微粉末を有機溶媒に分散させる第3工程を経て得られた、無機微粒子の有機溶媒分散ゾルと、熱可塑性樹脂との混合物を作製し、前記混合物中の有機溶媒を除去することを有する、無機微粒子含有熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。なお、前記「熱可塑性樹脂との混合物を作製する工程」を「A工程」とも称し、前記「混合物中の有機溶媒を除去する工程」を「B工程」とも称する。
【0078】
なお、無機微粒子含有熱可塑性樹脂組成物は、無機微粒子が含有した熱可塑性樹脂組成物の意であることは言うまでもない。
【0079】
かような形態とすることにより、透明性に代表される外観や、十分に強度、弾性率および耐熱性に優れた樹脂組成物を提供することができる。さらに、樹脂組成物への配合の際も、マトリクスとしての熱可塑性樹脂は市販のものから任意に選択可能であり、機械強度や耐久性に優れた組成物を、工業的に有利なコストで無機微粒子が均一に分散した樹脂組成物を製造することができる。
【0080】
[A工程]
(熱可塑性樹脂)
熱可塑性樹脂は、その繰返し単位中に、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合、スルフィド結合およびスルホン結合からなる群から選択される少なくとも1種を含むものがよい。あるいは、ポリオレフィンやアクリル樹脂に代表される高分子主鎖が炭素−炭素結合で構成されているものである樹脂が好ましい。
【0081】
上記熱可塑性樹脂としては具体的には、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、環状ポリオレフィン(COP)、ポリメチルペンテンなどのポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)やポリアクリル酸メチル(PMA)などのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)やポリ塩化ビニリデン(PVDC)、テフロン(登録商標)(PTFE)などのハロゲン化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレート(PBT)などのポリエステル樹脂、ナイロン6やナイロン66などのポリアミド樹脂、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアリレート(PAR)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリサルホン(PSU)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、フェノキシ樹脂、ポリアセタール、ポリビニルアセタールなどが挙げられ、さらに、ABS樹脂やAS樹脂などの共重合樹脂や、PC/PSのようなポリマーアロイでもかまわない。これらの中でも、本発明の無機微粒子の均一分散性を最大限活かすために、環状ポリオレフィン(COP)、スチレン・ブタジエンブロックコポリマー(P(S−b−B))、ポリスチレン樹脂(PS)、ポリカーボネート樹脂(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、AS樹脂などの透明樹脂が望ましい。
【0082】
本発明における樹脂組成物中の無機微粒子の濃度は、灰分として1〜60質量%の範囲が好ましい。機械的強度などの諸特性の向上を考慮すると、1質量%以上であることが好ましい。一方、比重の増加を考慮したり、衝撃強度を考慮すると、60質量%以下であることが好ましい。一般に、ポリマーに無機微粒子を大量に配合すると衝撃強度が減少するが、本発明の組成物はナノオーダーの無機微粒子が均一分散したものなので、60質量%程度含有されても、衝撃強度の低下は実用上とても小さいものである。しかしながら、高い衝撃強度という点を考えると、60質量未満であることが好ましく、より好ましくは3〜30質量%である。ここで灰分は、樹脂組成物を空気中、600℃で30分間燃焼させた残渣質量で測定する。
【0083】
(有機溶媒)
ここでいう「有機溶媒」は、熱可塑性樹脂を溶解させるための有機溶媒であるので、「樹脂溶媒」とも称する。
【0084】
本工程で使用される樹脂溶媒としては、第3工程において説明した有機溶媒の具体例が同様に妥当するので、ここでは具体的を列挙しての説明は省略する。この際、第1実施形態の方法により得られた無機微粒子の有機溶媒分散ゾルに、直接、樹脂を溶解させても良いし、樹脂を予め有機溶媒に溶解させておいてから第1実施形態の方法により得られた無機微粒子の有機溶媒分散ゾルと混合しても良い。樹脂を予め有機溶媒に溶解させる場合、その有機溶媒は、ゾルの有機溶媒と同種であっても異種であっても良い。リサイクル性の観点から好ましくは、同種である。
【0085】
[B工程]
混合物中の有機溶媒を除去する際には、エバポレーターなどの加熱減圧留去装置や、熱風循環乾燥機、あるいはスプレードライヤーなどの加熱噴霧装置を用いて溶媒を留去すればよい。この際、留去される溶媒は、環境負荷の観点から、装置の後工程に冷却機を取り付けて冷却、回収することが望ましい。
【0086】
なお、本工程でいう「混合物中の有機溶媒」とは、第1実施形態の方法により得られた無機微粒子の有機溶媒分散ゾル中に樹脂を溶解させた場合は、該ゾルの有機溶媒である。一方、樹脂を予め有機溶媒に溶解させ、その後、第1実施形態の方法により得られた無機微粒子の有機溶媒分散ゾルと混合する場合、該有機溶媒と、該ゾルの有機溶媒との混合溶媒の意味である。
【0087】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態は、無機微粒子の水系分散ゾルに、分散剤を添加する第1工程と、前記分散剤が添加された前記水系分散ゾルを、凍結乾燥または噴霧乾燥して、乾燥微粉末を得る第2工程と、前記乾燥微粉末および熱可塑性樹脂を混合する混合工程と、を含む、無機微粒子含有熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、前記混合工程は、前記乾燥微粉末を溶融状態の熱可塑性樹脂に分散させることを有する、無機微粒子含有熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。
【0088】
つまり、本発明の第3実施形態は、第1工程および第2工程を経て得られた乾燥微粉末を、溶融状態の熱可塑性樹脂に分散させる段階を含む、無機微粒子含有熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。
【0089】
換言すると、本発明の第3実施形態は、無機微粒子の水系分散ゾルに、分散剤を添加する工程と、前記分散剤が添加された前記水系分散ゾルを、凍結乾燥または噴霧乾燥して、乾燥微粉末を得る工程と、前記乾燥微粉末を、溶融状態の熱可塑性樹脂に分散させる工程と、を含む、無機微粒子含有熱可塑性樹脂組成物の製造方法である。
【0090】
この方法は、ナノ粒子をあたかも従来のミクロン粒子であるかの様に扱って簡便にポリマーナノコンポジットを得られるという点で、画期的な手法である(図5が示すイメージ図参照)。つまり、図5が示すイメージの通り、凍結乾燥または噴霧乾燥により、粒子間が距離を保ったままで粉末が乾燥・微粉化されるため、ゾルを経由することなく、直接溶融状態の樹脂に混合させるだけで、ポリマーナノコンポジットを得られる。
【0091】
ところで、本発明は、特に、無機微粒子の水系分散ゾルに、分散剤を添加する第1工程と、前記分散剤が添加された前記水系分散ゾルを、凍結乾燥または噴霧乾燥して、乾燥微粉末を得る第2工程とを、含む点に特徴を有するのである。すなわち、これらの工程を経て作製された「乾燥微粉末」は、第2実施形態で説明したように、有機溶媒に分散させるのみならず、第3実施形態で説明したように、溶融状態の熱可塑製樹脂に分散させても、均一に分散する。
【0092】
すなわち、本発明に係る「乾燥微粉末」は、非常に優れた物性を有する「ポリマーナノコンポジット」の作製に供されうるのである。
【0093】
本発明に係る「乾燥微粉末」を用いれば、粉末自体と、樹脂と、を直接混合するにも拘らず、分散状態は、非常に均一であり、特に、透明性を有する樹脂を用いた場合、得られる樹脂組成物の物性は非常に良好である。具体的には、得られる樹脂組成物の、透明性に代表される外観や、十分に強度、弾性率および耐熱性は、非常に優れている。
【0094】
この実施形態をとる場合には、添加する分散剤の量は、無機微粒子100質量部に対して、好ましくは15〜40質量部、より好ましくは20〜30質量部の範囲である。分散剤の量が少ないと、樹脂中への直接分散が困難となる虞れがあり、多すぎると、樹脂の機械物性に悪影響を及ぼす可能性が高くなる。なお、分散剤をやや多めに使用することにより、一見コスト的に不利にもみえるが、有機溶媒への再分散を行う第3工程、微量な水の添加を行う第4工程、表面改質剤の添加を行う第5工程を省略することで、工程数の減少に繋がる。そして、これら工程を省略することで、高価な材料の添加を行う必要もなくなり、ひいては、最終組成物としてのコストを下げることもできる。なお、本実施形態においては、上記の通り、分散剤の添加(第1工程)、乾燥微粉末の作製(第2工程)は、必須であるが、第3工程に用いられるような溶媒の使用は必須ではない。ただし、必要に応じこのような溶媒を添加して第3実施形態を行ってもよい。
【0095】
第1工程および第2工程を経て得られた乾燥微粉末を、溶融状態の樹脂に混合する方法としては、特に制限はないが、例えば下記方法が考えられる。
【0096】
すなわち、一般的な2軸型樹脂混練押し出し機を用い、まず樹脂ペレットの供給ホッパーからペレットを供給して樹脂の融点以上に加熱しながらスクリューで送る。そこへ下流の無機微粒子粉体供給ホッパーから、当該乾燥微粉末を投入し、溶融状態の樹脂中へ練りこんでいく(図6が示す構成図を参照)。
【0097】
本発明に用いられうる2軸樹脂混練押し出し機としては、例えば、(株)栗本鐵工所のKEXエクストルーダシリーズ、KRCニーダ、ベルストルフ社のZE型2軸混練押出機、(株)モリヤマのMS式2軸テーパー押し出し機などが挙げられる。
【0098】
なお、乾燥微粉末は、乾燥状態を十分に保ったまま、溶融状態の樹脂に分散させることが好ましい。よって、溶融状態の樹脂に分散させる乾燥微粉末としては、第2工程で凍結乾燥後または噴霧乾燥後に速やかに密封した粉体を用いると好ましい。あるいは、乾燥微粉末が、空気中の水分を吸ってしまったと思われる場合には、例えばオーブン内で、100℃程度で、10時間程度乾燥したものを用いると好ましい。なお後述する実施例においても第2工程で凍結乾燥後または噴霧乾燥後に粉体を用いる場合には速やかに密封した粉体を用いている。
【0099】
なお、この他に任意成分として、作業性、安定性を向上させるため、必要に応じて離型剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等の添加剤を添加することができる。
【0100】
上述した方法により製造された本発明に係る樹脂組成物は、優れた透明性を有し、樹脂単体並みの熱時成形性を維持している。その成形に際しては、大小、曲面形状によって、溶融押出成形、射出成形、射出圧縮成形、ブロー成形によって成形品を得ることが可能である。特に、透明性に関しては、上述した方法により製造された本発明に係る樹脂組成物は、前記無機微粒子含有熱可塑性樹脂組成物の可視光領域の全光線透過率が、1mm厚みにおいて80%以上であると好ましい。より好ましくは、1mm厚みにおいて83%以上、さらに好ましくは85%以上である。
【0101】
本発明に係る製造方法により得られる樹脂組成物は、バルク材として用いる場合、剛性の向上を実現し、熱膨張率が低く、また高温時に変形・ソリ・歪みなどを抑制し得るという特性を兼ね備えている。そのため、これらの機能が要求される部材に好適である。例えば、ヒートサイクルの負荷が掛かる電子部品、光学部品、自動車内外装材、さらには家電や住宅に用いられる透明部材、備品、家具にも適した材料といえる。また、薄膜フィルムやコーティング剤として用いる場合も、耐久性、耐候性、耐磨耗性を向上するため、家電、住宅設備、電気・電子部品、光学部品に適した材料といえる。
【実施例】
【0102】
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
【0103】
<無機微粒子の有機溶媒分散ゾルの製造>
[実施例1]
(ゾル1)
1−1:ゾルへの分散剤添加、フリーズドライ
擬ベーマイト型アルミナ粒子分散液である触媒化成工業(株)製「Cataloid−AS−3」(長軸長さ100nm、短軸長さ10nm、固形分7質量%、比重1.05、BET比表面積150m/g)1430g(固形分100g)に、ドデシルベンゼンスルホン酸15gをメタノール15gで希釈したのち添加し、ヘンシェルミキサー(形式;FM10BF、メーカー;三井三池化工機(株))により室温で30分間攪拌した。
【0104】
ついで、共和真空技術(株)製凍結乾燥機RLEII−52を用いて、次の様に凍結乾燥を行った。(1)アルミナ粒子水分液を500gずつに分けて凍結乾燥装置の棚3段にセットし、3時間かけて−40℃で凍結を行った。(2)この間、コールドトラップも並行して−50℃に冷却した。(3)10分のうちに速やかに排気を行い、0.2Torrの真空とした。(4)このまま20時間フリーズドライを行い、水分を昇華させた。(5)+30℃にて4時間2次乾燥を行い、僅かに残存する水分を除去した。(6)乾燥空気により常圧に戻した。この一連の操作の結果、118gの分散剤処理擬ベーマイト型アルミナ粉末(凍結乾燥物)が得られた。
【0105】
1−2:溶媒中への再分散、改質
窒素雰囲気下、1−1で得られたアルミナ粉末(凍結乾燥物)10gを、関東化学(株)製テトラヒドロフラン90gに、撹拌翼とスリーワンモーター(HEIDON社製BL300R)により撹拌しながら再分散させた。ついで、イオン交換水1.5gを添加し、室温で20分攪拌した。この後、改質剤として信越化学工業(株)製「KBM−403」(物質名:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)0.5gを添加し、室温で90分間混合して表面改質を行い、擬ベーマイト型アルミナの有機溶媒分散ゾルを得た。このゾルは、乳白色半透明の低粘度の液体であり、2週間静置後も沈殿は無く、微粒子が安定に均一分散していると判断された。
【0106】
[実施例2]
(ゾル2)
窒素雰囲気下、1−1で得られたアルミナ粉末(凍結乾燥物)10gを、関東化学(株)製テトラヒドロフラン90gに、撹拌翼とスリーワンモーター(HEIDON社製BL300R)により撹拌しながら再分散させた。この後、改質剤は加えずに、室温で90分間混合して、擬ベーマイト型アルミナ粒子分散ゾルを得た。このゾルは、乳白色半透明の低粘度の液体であり、2週間静置後も沈殿はなく、微粒子が安定に均一分散していると判断された。
【0107】
[実施例3]
(ゾル3)
窒素雰囲気下、1−1で得られたアルミナ粉末(凍結乾燥物)10gを、関東化学(株)製テトラヒドロフラン90gに、撹拌翼とスリーワンモーター(HEIDON社製BL300R)により撹拌しながら再分散させた。この後、イオン交換水、改質剤は加えずに、室温で90分間混合して、擬ベーマイト型アルミナ粒子分散ゾルを得た。このゾルは、乳白色半透明の低粘度の液体であり、2週間静置後も沈殿はなく、微粒子が安定に均一分散していると判断された。
【0108】
[実施例4]
(ゾル4)
4−1:ゾルへの分散剤添加、フリーズドライ
ドデシルベンゼンスルホン酸15gの代わりに、p−トルエンスルホン酸10gを用いたほかは、1−1と同様の操作を行った。一連の操作の結果、112gの分散剤処理擬ベーマイト型アルミナ(凍結乾燥物)が得られた。
【0109】
4−2:溶媒中への再分散、改質
窒素雰囲気下、4−1で得られたアルミナ粉末(凍結乾燥物)10gを、関東化学(株)製アセトン90gに、撹拌しながら再分散させた。ついで、イオン交換水1.5gを添加し、室温で20分攪拌した。この後、改質剤として信越化学工業(株)製「KBM−103」(物質名:フェニルトリメトキシシラン)0.5gを添加し、室温で90分間混合して表面改質を行い、擬ベーマイト型アルミナの有機溶媒分散ゾルを得た。このゾルは、乳白色半透明の低粘度の液体であり、2週間静置後も沈殿は無く、微粒子が安定に均一分散していると判断された。
【0110】
[実施例5]
(ゾル5)
5−1:ゾルへの分散剤添加、フリーズドライ
擬ベーマイト型アルミナ粒子分散液「Cataloid−AS−3」の代わりに、日産化学工業(株)製「IPA−ST」(イソプロピルアルコール分散シリカゾル、BET比表面積150m/g、直径15nm、固形分30質量%)を333g(固形分100g)用い、ドデシルベンゼンスルホン酸15gの代わりに、ベンジルホスホン酸を10g用いたほかは、1−1と同様の操作を行った。一連の操作の結果、118gの分散剤処理シリカ粉末(凍結乾燥物)が得られた。
【0111】
5−2:溶媒中への再分散、改質
窒素雰囲気下、5−1で得られたシリカ粉末(凍結乾燥物)10gを、関東化学(株)製トルエン90gに、撹拌しながら再分散させた。ついで、イオン交換水1.5gを添加し、室温で20分攪拌した。この後、改質剤として信越化学工業(株)製「KBM−103」(物質名:フェニルトリメトキシシラン)0.5gを添加し、室温で90分間混合して表面改質を行い、シリカの有機溶媒分散ゾルを得た。このゾルは、無色半透明の低粘度の液体であり、2週間静置後も沈殿は無く、微粒子が安定に均一分散していると判断された。
【0112】
[実施例6]
(ゾル6)
6−1:ゾルへの分散剤添加、フリーズドライ
擬ベーマイト型アルミナ粒子分散液「Cataloid−AS−3」の代わりに、シーアイ化成(株)製「Nanotek(登録商標)CeO水分散ゾル」(BET比表面積65m/g、固形分10質量%)を1000g(固形分100g)用い、ドデシルベンゼンスルホン酸の代わりに、オレイン酸を用いたほかは、1−1と同様の操作を行った。一連の操作の結果、118gの分散剤処理セリア粉末(凍結乾燥物)が得られた。
【0113】
6−2:溶媒中への再分散、改質
6−1で得られたセリア粉末(凍結乾燥物)10gを、関東化学(株)製メチルエチルケトン90gに、撹拌しながら再分散させた。ついで、イオン交換水1.0gを添加し、室温で20分攪拌した。この後、改質剤として信越化学工業(株)製「KBM−903」(物質名:アミノプロピルトリメトキシシラン)0.5gを添加し、室温で90分間混合して表面改質を行い、セリアの有機溶媒分散ゾルを得た。このゾルは、乳白色半透明の低粘度の液体であり、2週間静置後も沈殿は無く、微粒子が安定に均一分散していると判断された。
【0114】
[実施例7]
(ゾル7)
7−1:ゾルへの分散剤添加、フリーズドライ
1−1の擬ベーマイト型アルミナ粒子分散液「Cataloid−AS−3」の代わりに、シーアイ化成(株)製「Nanotek(登録商標)TiO水分散ゾル」(BET比表面積50m/g、固形分10質量%)を1000g(固形分100g)用い、ドデシルベンゼンスルホン酸15gの代わりに、安息香酸を10g用いたほかは、1−1と同様の操作を行った。一連の操作の結果、117gの分散剤処理チタニア粉末(凍結乾燥物)が得られた。
【0115】
7−2:溶媒中への再分散、改質
7−1で得られたチタニア粉末(凍結乾燥物)10gを、関東化学(株)製キシレン90gに、撹拌しながら再分散させた。ついで、イオン交換水1.0gを添加し、室温で20分攪拌した。この後、改質剤として日本曹達(株)製「S−152」(物質名:ジイソプロポキシチタンジイソステアレート)0.5gを添加し、室温で90分間混合して表面改質を行い、チタニアの有機溶媒分散ゾルを得た。このゾルは、黄白色半透明の低粘度の液体であり、2週間静置後も沈殿は無く、微粒子が安定に均一分散していると判断された。
【0116】
[実施例8〜12]
(ゾル8〜12)
以下同様に、1−1の擬ベーマイト型アルミナ粒子分散液「Cataloid−AS−3」の代わりに、固形分100gになるように下記の無機微粒子を用い、無機微粒子の濃度が8質量%となる様にイオン交換水を加え、分散剤には、ドデシルベンゼンスルホン酸15gの代わりに、界面活性剤としてシンジェンタジャパン(株)製「ミックスパワー」(物質名:ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル)を10g用いて、テトラヒドロフラン分散ゾルを調整した。いずれも2週間静置後も沈殿は無く、微粒子が安定に均一分散していると判断された。
【0117】
[実施例8]
酸化インジウムスズ:シーアイ化成(株)製「Nanotek(登録商標)ITO水分散品」(BET比表面積50m/g)
[実施例9]
炭酸カルシウム:丸尾カルシウム(株)製「カルファイン500」(BET比表面積30m/g)
[実施例10]
水酸化アルミニウム:昭和電工(株)製「ハイジライト(登録商標)H43S」(BET比表面積10m/g)
[実施例11]
リン酸カルシウム:(株)サンギ製「高分散性リン酸三カルシウム」(ハイドロキシアパタイト)(BET比表面積65m/g)
[実施例12]
カーボン:フロンティアカーボン(株)製「ナノムブラック(登録商標)」(BET比表面積130m/g)
<無機微粒子含有熱可塑性樹脂組成物の製造>
[実施例13]
(組成物1)
1−2で調製したテトラヒドロフラン分散擬ベーマイトゾル(固形分10質量%)150gに、三菱エンジニアリングプラスチック(株)製ポリカーボネート「ノバレックス(登録商標)7025A」85gをテトラヒドロフラン1500g中に溶解したものを加えて、均一な溶液とした。徐々に減圧度を上げながら溶媒を除去し、最終的に100℃で1Torr(133.322Pa)以下の減圧下4時間乾燥し、さらに混合物を(株)井元製作所製「複合型混練押出機IMC−1852型」を用いて260℃にて15分間混練して均一な樹脂組成物(無機微粒子含有熱可塑性樹脂組成物)を得た。生成物の灰分は14.5質量%であり、添加したアルミナ粒子が全量コンポジット化されていることを確認した。この生成物は無色透明の外観を有し、ヘイズ値は1%、全光線透過率は88%、黄変などはなく、靭性を保持していた。
【0118】
なおこれ以降、生成物の灰分は示差熱・熱重量同時測定装置(TG−DTA)にて測定した値を示す。具体的には樹脂組成物そのままを試料として、示差熱・熱重量同時測定装置(TG−DTA)(TG−DTA320セイコーインスツルメンツ(株)製)を用い測定した。測定条件は、測定温度:23〜700℃、昇温速度20℃/分とし、700℃までの重量減から算出した。
【0119】
[実施例14]
(組成物2)
実施例2で調製したテトラヒドロフラン分散擬ベーマイトアルミナゾル(固形分10質量%)150gを用いて、実施例13と同様の操作を行った。生成物の灰分は14.9質量%であり、添加したアルミナ粒子が全量コンポジット化されていることを確認した。この生成物は無色透明の外観を有し、ヘイズ値は、1%、全光線透過率は89%、黄変などはなく、靭性を保持していた。
【0120】
[実施例15]
(組成物3)
実施例3で調製したテトラヒドロフラン分散擬ベーマイトアルミナゾル(固形分10質量%)150gを用いて、実施例13と同様の操作を行った。生成物の灰分は15.5質量%であり、添加したアルミナ粒子が全量コンポジット化されていることを確認した。この生成物は無色透明の外観を有し、ヘイズ値は、1%、全光線透過率は88%、黄変などはなく、靭性を保持していた。
【0121】
[実施例16]
(組成物4)
4−2で調製したアセトン分散擬ベーマイトゾルゾル(固形分10質量%)150gに、(株)クラレ製PMMA樹脂「パラペット(登録商標)G」85gをアセトン1000g中に溶解したものを加えて、均一な溶液とした。実施例13と同様の操作を行い、均一な樹脂組成物を得た。生成物の灰分は14.3質量%であり、添加したアルミナ粒子が全量コンポジット化されていることを確認した。この生成物は無色透明の外観を有し、ヘイズ値は1%、全光線透過率は89%、黄変などはなく、靭性を保持していた。
【0122】
[実施例17]
(組成物5)
5−2で調製したトルエン分散シリカゾル(固形分10質量%)350gに、帝人化成(株)製PET樹脂 TR−4550BH65gをトルエン800g中に溶解したものを加えて、均一な溶液とした。実施例13と同様の操作を行い、均一な樹脂組成物を得た。生成物の灰分は35.2質量%であり、添加したシリカ粒子が全量コンポジット化されていることを確認した。この生成物は無色透明の外観を有し、ヘイズ値は2%、全光線透過率は86%、黄変などはなく、靭性を保持していた。
【0123】
[実施例18]
(組成物6)
6−2で調製したメチルエチルケトン分散セリアゾル(固形分10質量%)100gに、PSジャパン(株)製ポリスチレン樹脂 HF77 90gを酢酸エチル1000g中に溶解したものを加えて、均一な溶液とした。実施例13と同様の操作を行い、均一な樹脂組成物を得た。生成物の灰分は9.9質量%であり、添加したセリア粒子が全量コンポジット化されていることを確認した。この生成物は無色透明の外観を有し、ヘイズ値は6%、黄変などはなく、靭性を保持していた。
【0124】
[実施例19]
(組成物7)
7−2で調製したキシレン(メチルエチルケトン分散チタニアゾル)(固形分10質量%)100gに、帝人化成(株)製PET樹脂 TR−4550BH 90gをメチレンクロライド1000g中に溶解したものを加えて、均一な溶液とした。実施例13と同様の操作を行い、均一な樹脂組成物を得た。生成物の灰分は10.0質量%であり、添加したチタニア粒子が全量コンポジット化されていることを確認した。この生成物は無色透明の外観を有し、ヘイズ値は5%、全光線透過率は87%、黄変などはなく、靭性を保持していた。
【0125】
[実施例20〜24]
(組成物8〜12)
1−2で調製したテトラヒドロフラン分散擬ベーマイトゾル(固形分10質量%)100gに、下記各種樹脂 90gを各溶媒1000g中に溶解したものを加えて、均一な溶液とした。実施例13と同様の操作を行い、均一な樹脂組成物を得た。生成物のヘイズ値はいずれも低く、全光線透過率は80%を超え、良好な透明性を示した。
【0126】
[実施例20] スチレン・ブタジエンブロックコポリマー <旭化成ケミカルズ(株)製「アサフレックス(登録商標)805」>/キシレン
[実施例21]
熱可塑性ポリイミド <三井化学(株)製「AURAM」>/メチレンクロライド
[実施例22]
ポリアミド12 <ダイセルデグッサ(株)製「ベスタミド―ポリアミド12」>/キシレン
[実施例23]
ポリサルホン <ソルベイアドバンストポリマー製「Udel(登録商標)」>/キシレン
[実施例24]
ポリエーテルイミド <日本ジーイープラスチック(株)「ウルテム(登録商標)」>/メチレンクロライド
[実施例25]
(ゾル13)
25−1:ゾルへの分散剤添加、スプレードライ
1−1と同様に擬ベーマイト型アルミナ粒子分散液である触媒化成工業(株)製「Cataloid−AS−3」(長軸長さ100nm、短軸長さ10nm、固形分7質量%、比重1.05)1430g(固形分100g)に、ドデシルベンゼンスルホン酸30gをメタノール30gで希釈したのち添加し、ヘンシェルミキサー(形式;FM10BF、製造所;三井三池化工(株))により室温で30分間攪拌した。
【0127】
ついで、大川原化工機(株)株式会社製スプレードライヤーL−8i (全高1.8m幅1.3m・乾燥室直径800mm・ヒータ容量8.5kW)を用いて、次の様に噴霧乾燥を行った。(1)上記分散剤添加アルミナ粒子水分散液をロータリーポンプを用いて6.0Kg/hの流速にて定常的に装置内へ供給した。(2)この間、装置上部より、アトマイザを用いてアルミナ粒子水分散液を原液のまま噴霧した。(3)装置内気流は空気を用い、吹き込む気流を上部250℃、下部105℃となるような条件で調整した。この気流に液滴が乗ることで乾燥を進行せしめた。(4)液滴は飛行中に水分を失い乾燥され、最終的に乾燥粉末として装置下部にて回収した。この一連の操作の結果、102gの分散剤処理擬ベーマイト型アルミナ粉末(噴霧乾燥物)が得られた。
【0128】
25−2:溶媒中への再分散、改質
窒素雰囲気下、25−1で得られたアルミナ粉末(噴霧乾燥物)10gを、関東化学(株)製テトラヒドロフラン90gに、撹拌翼とスリーワンモーター(HEIDON社製BL300R)により撹拌しながら再分散させた。ついで、イオン交換水、改質剤は加えずに、室温で90分間混合して、擬ベーマイト型アルミナの有機溶媒分散ゾルを得た。このゾルは、乳白色半透明の低粘度の液体であり、2週間静置後も沈殿は無く、微粒子が安定に均一分散していると判断された。
【0129】
[実施例26]
(ゾル14)
26−1:ゾルへの分散剤添加、スプレードライ
25−1の擬ベーマイト型アルミナ粒子分散液「Cataloid−AS−3」の代わりに、次の操作により合成した針状ベーマイト粒子を用いた。
【0130】
<針状ベーマイト粒子> 機械攪拌機を備えたテフロン(登録商標)製ビーカーに、塩化アルミニウム六水和物(2.0M,40ml,25℃)を入れ、恒温槽で10℃に保ちつつ、攪拌(700rpm)しながら水酸化ナトリウム(5.10M,40ml,25℃)を約6分かけて滴下した。滴下終了後、さらに10分間攪拌を続け、攪拌終了後、溶液のpHを測定した(pH=7.08)。溶液をテフロン(登録商標)ライナーを備えたオートクレーブに代え、密栓し、オーブンで120℃、24時間経時させた(第1の熱処理)。第1の熱処理の終了後、前記オートクレーブをオイルバスヘ移し、180℃、30分間加熱した(第2の熱処理)。第2の熱処理終了後、前記オートクレーブを流水へ入れ、急速冷却(約10℃)をした(第3の熱処理)。第3の熱処理終了後、前記オートクレーブを再びオーブンヘ入れ150℃で、1日加熱を続けた(第4の熱処理)。その後、前記オートクレーブを流水で冷やし、遠心分離(30000rpm,30min)で上澄み除去後、遠心水洗3回、水メタノール混合溶液(体積比 水:メタノール、0.5:9.5)遠心洗浄を1回行なった。その後、凍結乾燥機を用いて乾燥させることにより、無色結晶(A)を得た。この無色結晶(A)は、X線回折の結果、針状ベーマイトであることを確認した。また、TEMを用いて粒子のサイズを調べたところ、平均長軸長さが200nm、平均短軸長さ(径)が5nm、アスペクト比が約40の針状であることが判明した。
【0131】
この針状ベーマイト粒子の8質量%水分散液5000g(固形分400g)に、ドデシルベンゼンスルホン酸120gをメタノール120gで希釈したのち添加し、ヘンシェルミキサー(形式;FM10BF、製造所;三井三池化工(株))により室温で30分間攪拌した。
【0132】
ついで、大川原化工機(株)製スプレードライヤーL−8i を用いて、25−1と同様に噴霧乾燥を行った。この一連の操作の結果、460gの分散剤処理針状ベーマイト粉末(噴霧乾燥物)が得られた。
【0133】
26−2:溶媒中への再分散、改質
窒素雰囲気下、26−1で得られた針状ベーマイト粉末(噴霧乾燥物)8gを、関東化学(株)製テトラヒドロフラン92gに、撹拌翼とスリーワンモーター(HEIDON社製BL300R)により撹拌しながら再分散させた。ついで、イオン交換水、改質剤は加えずに、室温で90分間混合して、針状ベーマイトの有機溶媒分散ゾルを得た。このゾルは、乳白色半透明の低粘度の液体であり、2週間静置後も沈殿は無く、針状ベーマイト微粒子が安定に均一分散していると判断された。
【0134】
[実施例27]
(組成物13)
実施例26−2で調製したテトラヒドロフラン分散針状ベーマイトゾル(固形分8質量%)18.8gを用いて、実施例13と同様の操作を行った。生成物の灰分は15.0質量%であり、添加した針状ベーマイト粒子が全量コンポジット化されていることを確認した。この生成物は無色透明の外観を有し、ヘイズ値は1%、全光線透過率は88%、黄変などは無く、靭性を保持していた。
【0135】
[実施例28]
(組成物14)
2軸混練押し出し機(ベルストルフ社ZE40A)内で三菱エンジニアリングプラスチック(株)製ポリカーボネート「ノバレックス(登録商標)7025A」を280℃にて溶融させ、2軸スクリューにて100rpmの回転数で下流へ送りながら、サイドフィーダーから実施例26−1の方法で調製した針状ベーマイト粉体を、質量比85:15となるように連続的に供給し、混合・混練した。ダイス先端から得られる生成物を、水にて冷却し、ペレット化した。
【0136】
生成物の灰分は14.2質量%であり、添加した針状ベーマイト粒子がほぼ全量コンポジット化されていることを確認した。この生成物は無色透明の外観を有し、ヘイズ値は4%、全光線透過率は86%、黄変などは無く、靭性を保持していた。
【0137】
[実施例29]
(ゾル15)
28−1:ゾルへの分散剤添加、スプレードライ
26−1で水熱合成した針状ベーマイト粒子を用いたが、針状ベーマイト粒子を希釈する際、12質量%水分散液5000g(固形分600g)に調製した。ドデシルベンゼンスルホン酸150gをメタノール150gで希釈したのち添加し、ヘンシェルミキサー(形式;FM10BF、製造所;三井三池化工(株))により室温で攪拌したところ、ゾルは高粘度となり、30分間経過後も一部ゲル状のものが残存した。
【0138】
ついで、大川原化工機(株)製スプレードライヤーL−8i を用いて、26−1と同様に噴霧乾燥を行った。この一連の操作の結果、700gの分散剤処理針状ベーマイト粉末(噴霧乾燥物)が得られた。
【0139】
28−2:溶媒中への再分散、改質
窒素雰囲気下、28−1で得られた針状ベーマイト粉末(噴霧乾燥物)8gを、26−2と同様の操作によりテトラヒドロフラン92g中に再分散させ、イオン交換水、改質剤は加えずに、室温で90分間混合して、針状ベーマイトの有機溶媒分散ゾルを得た。このゾルは、乳白色半透明の低粘度の液体であった。2日静置後に微量の沈殿を生じたが、これをデカンテーションにより除いた上層のゾルは、2週間静置後も沈澱を生じず、針状ベーマイト微粒子は安定に分散していると判断された。
【0140】
[比較例1]
1−1において、凍結乾燥操作の代わりに、三洋電機(株)製恒温乾燥器MOV−212−1を用いて、常圧、150℃にて6時間加熱乾燥を行った。乾燥後の無機微粒子は脆い塊状であった。この乾燥アルミナ10gを1−2と同じく溶媒としてのテトラヒドロフランに90g添加し、水は加えずに室温で20分攪拌した。この後、改質剤として信越化学工業(株)製「KBM−403」(物質名:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)0.5gを添加し、室温で90分間混合して表面改質を行い、擬ベーマイト型アルミナの有機溶媒分散ゾルを調整した。得られたゾルは静置後すぐに沈殿が生じ、アルミナ微粒子が安定分散できていないと判断された。
【0141】
[比較例2〜5]
実施例4−1〜7−1において、凍結乾燥の代わりに、比較例1と同様条件で常圧加熱乾燥を行った。乾燥後の無機微粒子はいずれも脆い塊状であり、これを4−2〜7−2に相当する各溶媒と改質剤を用い、有機溶媒分散ゾルを調整した。これらのゾルはいずれも静置後すぐに沈殿が生じ、無機微粒子が安定分散できていないと判断された。
【0142】
[比較例2]
擬ベーマイト/アセトン/フェニル系シランカップリング剤
[比較例3]
シリカ/トルエン/フェニル系シランカップリング剤
[比較例4]
セリア/メチルエチルケトン/アミノ系シランカップリング剤
[比較例5]
チタニア/キシレン/イソプロピル・ステアリル系チタンカップリング剤
[比較例6〜10]
比較例1〜5において得られた有機溶媒分散ゾルを用いて、実施例11と同様の工程により、実施例11〜15に対応する各種樹脂組成物を作成した。これらの樹脂組成物はいずれも凝集粒が多く認められ、ヘイズ値が高く、靭性が低かった。
【0143】
[比較例6]
擬ベーマイト/テトラヒドロフラン+ポリカーボネート/テトラヒドロフラン
[比較例7]
擬ベーマイト/アセトン+メタクリル樹脂/アセトン
[比較例8]
シリカ/トルエン+PET樹脂/トルエン
[比較例9]
セリア/メチルエチルケトン+ポリスチレン/酢酸エチル
[比較例10]
チタニア/キシレン+PET樹脂/メチレンクロライド
以下、実施例と比較例を表(a)〜(d)に一覧に纏めた。
【0144】
【表1】

【0145】
【表2】

【0146】
【表3】

【0147】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0148】
産業上有用な分野としては、塗料,樹脂,ゴムなどの組成物,印刷インク,触媒担持体,精密表面処理用ゾルなどが挙げられる。中でも、樹脂・塗料分野での応用により、耐久性に優れかつ工業的に有利な樹脂組成物を製造する為に極めて有用な無機微粒子を提供することができる。さらには、熱成形可能な各種樹脂材料、特に無機微粒子がナノメートルオーダーで均一分散することによって初めて可能となる透明樹脂組成物を成形した、熱膨張の少ない建材用あるいは自動車用の樹脂ウィンドウを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】本発明に係る無機微粒子の有機溶媒分散ゾルの製造フローである。
【図2】従来の無機微粒子の有機溶媒分散ゾルの製造フローである。
【図3】従来の無機微粒子の有機溶媒分散ゾルの製造フローである。
【図4】本発明に係る無機微粒子の有機溶媒分散ゾルの製造フローの好ましい態様の一である。
【図5】本発明に係る無機微粒子の分散した樹脂組成物の製造フローの好ましい態様の一である。
【図6】本発明に用いられうる2軸型樹脂混練押し出し機の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機微粒子の水系分散ゾルに、分散剤を添加する第1工程と、
前記分散剤が添加された前記水系分散ゾルを、凍結乾燥または噴霧乾燥して、乾燥微粉末を得る第2工程と、
前記乾燥微粉末を、有機溶媒に分散させる第3工程と、
を含む、無機微粒子の有機溶媒分散ゾルの製造方法。
【請求項2】
無機微粒子の水系分散ゾルに、分散剤を添加する第1工程と、前記分散剤が添加された前記水系分散ゾルを、凍結乾燥または噴霧乾燥して、乾燥微粉末を得る第2工程と、前記乾燥微粉末および熱可塑性樹脂を混合する混合工程と、を含む、無機微粒子含有熱可塑性樹脂組成物の製造方法であって、
前記混合工程は、
前記乾燥微粉末を溶融状態の熱可塑性樹脂に分散させることを有する、または、
前記乾燥微粉末を有機溶媒に分散させる第3工程を経て得られた、無機微粒子の有機溶媒分散ゾルと、熱可塑性樹脂との混合物を作製し、前記混合物中の有機溶媒を除去することを有する、無機微粒子含有熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記分散剤が、界面活性剤、有機酸およびこれらの誘導体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記無機微粒子の水系分散ゾルが、第1工程前に、固形分濃度として5〜10質量%に調製されてある、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記無機微粒子が、BET法で測定した比表面積が50〜250m/gである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記分散剤が、14個以上の炭素原子を有しており、かつ、芳香族環を有する有機スルホン酸である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記第3工程後、前記無機微粒子100質量部に対して、5〜25質量部の水を添加する第4工程をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記第3工程または前記第4工程後、シランカップリング剤またはチタンカップリング剤の少なくとも1種を添加し、前記無機微粒子を表面改質する第5工程をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記無機微粒子が、シリカ、アルミナ、チタニア、カーボン、水酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、セリア、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化スズ、酸化インジウムおよび酸化インジウムスズからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記無機微粒子含有熱可塑性樹脂組成物の可視光領域の全光線透過率が、1mm厚みにおいて80%以上である、請求項2〜9のいずれか1項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−90272(P2009−90272A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135151(P2008−135151)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】