粒子分析装置、粒子分析方法およびコンピュータプログラム
【課題】試料中の粒子をより精度良く分類・計数できる粒子分析装置、粒子分析方法およびコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】粒子分析装置は、粒子を含む試料から得られる測定試料を測定し、試料に含まれる粒子の複数の特徴情報を取得する特徴情報取得手段と、前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、試料に含まれる特定の種類の粒子の粒子数、および前記特定の種類とは異なる複数種類の粒子の各粒子数を取得する粒子数取得手段と、前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、前記粒子数取得手段により粒子数が取得された前記複数種類の粒子のうち、粒子数を補正する対象粒子を選択する選択手段と、前記粒子数取得手段により取得された前記特定の種類の粒子の粒子数を用いて、前記選択手段により選択された対象粒子の粒子数を補正する補正手段と、を備える。
【解決手段】粒子分析装置は、粒子を含む試料から得られる測定試料を測定し、試料に含まれる粒子の複数の特徴情報を取得する特徴情報取得手段と、前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、試料に含まれる特定の種類の粒子の粒子数、および前記特定の種類とは異なる複数種類の粒子の各粒子数を取得する粒子数取得手段と、前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、前記粒子数取得手段により粒子数が取得された前記複数種類の粒子のうち、粒子数を補正する対象粒子を選択する選択手段と、前記粒子数取得手段により取得された前記特定の種類の粒子の粒子数を用いて、前記選択手段により選択された対象粒子の粒子数を補正する補正手段と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子分析装置、粒子分析方法およびコンピュータプログラムに関し、特に、粒子の特徴パラメータに基づいて、試料に含まれる粒子の分類・計数を行う分析装置、分析方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、血液や尿などの試料に含まれる粒子の分類・計数が行われている。例えば、フローサイトメータを用いた粒子分析では、シース液に包んで流された粒子含有液に光を照射して、各粒子から特徴パラメータを検出し、その特徴パラメータを用いてスキャッタグラムが作成される。そして、そのスキャッタグラムに出現する粒子を複数の粒子集団に分類し、各粒子集団の粒子を計数することにより、粒子の分類・計数が行われている(例えば、特許文献1)。
また、特許文献1に記載の粒子分析装置は、有核赤血球が含まれる血液試料を測定した場合に、スキャッタグラムに出現する粒子の分画異常を判定し、判定結果を表示部に表示することで誤った分析を防止している。
【0003】
ところで、特許文献1には、有核赤血球が含まれる血液試料では、有核赤血球は、白血球を4分類するスキャッタグラム上のリンパ球の分布領域およびその下部の領域に出現し、好中球の分布領域には出現しないと記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−106984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特殊な疾患患者の血液試料においては、有核赤血球は、スキャッタグラム上の好中球の分布領域もしくは赤血球ゴースト(溶血後の赤血球粒子)の分布領域に出現することがある。そのため、特許文献1に記載の粒子分析装置では、有核赤血球が好中球の分布領域や赤血球ゴーストの分布領域に出現する特殊な血液試料を測定する場合には、粒子の分画異常を正確に判定することができない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、試料中の粒子をより精度良く分類・計数できる粒子分析装置、粒子分析方法およびコンピュータプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の局面による粒子分析装置は、粒子を含む試料から得られる測定試料を測定し、試料に含まれる粒子の複数の特徴情報を取得する特徴情報取得手段と、前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、試料に含まれる特定の種類の粒子の粒子数、および前記特定の種類とは異なる複数種類の粒子の各粒子数を取得する粒子数取得手段と、前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、前記粒子数取得手段により粒子数が取得された前記複数種類の粒子のうち、粒子数を補正する対象粒子を選択する選択手段と、前記粒子数取得手段により取得された前記特定の種類の粒子の粒子数を用いて、前記選択手段により選択された対象粒子の粒子数を補正する補正手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の局面による粒子分析装置は、粒子を含む試料から得られる測定試料を測定し、試料に含まれる粒子の複数の特徴情報を取得する特徴情報取得手段と、前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、特定の種類の粒子の粒子数、および前記特定の種類とは異なる複数種類の粒子の各粒子数を取得する粒子数取得手段と、前記粒子数取得手段により取得された前記複数種類の粒子の各粒子数を補正するための補正の度合いを決定する決定手段と、前記粒子数取得手段により取得された前記特定の種類の粒子の粒子数および前記決定手段により決定された補正の度合いに基づき、前記粒子数取得手段により取得された前記複数種類の粒子の各粒子数を補正する補正手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の局面による粒子分析方法は、(a)粒子を含む試料から得られる測定試料を測定し、試料に含まれる粒子の複数の特徴情報を取得するステップと、(b)ステップ(a)により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、試料に含まれる特定の種類の粒子の粒子数、および前記特定の種類とは異なる複数種類の粒子の各粒子数を取得するステップと、(c)ステップ(a)により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、ステップ(b)により粒子数が取得された前記複数種類の粒子のうち、粒子数を補正する対象粒子を選択するステップと、(d)ステップ(b)により取得された前記特定の種類の粒子の粒子数を用いて、ステップ(c)により選択された対象粒子の粒子数を補正するステップと、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の局面によるコンピュータプログラムは、粒子を含む試料から得られる測定試料を測定し、試料に含まれる粒子の複数の特徴情報を取得する測定装置に接続されたコンピュータを、前記測定装置により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、試料に含まれる特定の種類の粒子の粒子数、および前記特定の種類とは異なる複数種類の粒子の各粒子数を取得する粒子数取得手段と、前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、前記粒子数取得手段により粒子数が取得された前記複数種類の粒子のうち、粒子数を補正する対象粒子を選択する選択手段と、前記粒子数取得手段により取得された前記特定の種類の粒子の粒子数を用いて、前記選択手段により選択された対象粒子の粒子数を補正する補正手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、試料中の粒子をより精度良く分類・計数できる粒子分析装置、粒子分析方法およびコンピュータプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面に基づき説明する。
【0013】
図1は、血液分析装置1を示している。この分析装置1は、血液検査を行うための多項目自動血球分析装置として構成されており、試料容器(採血管)に収容された血液試料の測定を行い、その測定結果の分析を行う。
【0014】
分析装置1は、試料である血液の測定を行う機能を有する測定部2と、測定部2から出力された測定結果を処理して分析結果を得るデータ処理部3とを有して構成されている。
【0015】
なお、図1では、測定部2とデータ処理部3とが別体の装置として構成されているが、両者が一体の装置として構成されていてもよい。
【0016】
図2は、分析装置1の測定部2のブロック図を示している。図2に示すように、測定部2は、血球の検出部4、検出部4の出力に対するアナログ処理部5、マイクロコンピュータ部6、表示・操作部7、血液測定のための装置機構部8を備えている。
【0017】
検出部4は、白血球を検出する白血球検出部を備えている。また、この白血球検出部は、有核赤血球の検出にも用いられる。なお、検出部4は、白血球検出部の他、赤血球数及び血小板数を測定するRBC/PLT検出部、血液中の血色素量を測定するHGB検出部、幼若球を検出するIMI検出部も備えている。
【0018】
前記白血球検出部は、光学式検出部として構成されており、具体的には、フローサイトメトリー法による検出部として構成されている。
【0019】
ここで、サイトメトリーとは、細胞やその他の生物学的な粒子の物理的な性質や化学的な性質を測定することであり、フローサイトメトリーとは細い流れの中に、これらの粒子を通過させて測定を行う方法をいう。
【0020】
図3は、白血球検出部の光学系を示している。同図において、レーザダイオード401から出射されたビームは、コリメートレンズ402を介してシースフローセル403内を通過する血球に照射される。
【0021】
この白血球検出部では、光が照射されたシースフローセル内の血球から発せされる前方散乱光の強度、側方散乱光の強度、側方蛍光の強度が血球の特徴パラメータとして検出される。
【0022】
ここで、光散乱は、血球のような粒子が光の進行方向に障害物として存在し、光がその進行方向を変えることによって生じる現象である。この散乱光を検出することによって、粒子の大きさや成分に関する粒子の特徴情報を得ることができる。なお、前方散乱光とは、照射された光の進行方向と略同じ方向に粒子から発せられる散乱光のことである。前方散乱光からは、粒子(血球)の大きさに関する特徴情報を得ることができる。また、側方散乱光とは、照射された光の進行方向と略垂直方向に粒子から発せられる散乱光のことである。側方散乱光からは、粒子内部に関する特徴情報を得ることができる。血球粒子にレーザ光が照射された場合、側方散乱光強度は細胞内部の複雑さ(核の形状、大きさ、密度や顆粒の量)に依存する。したがって、側方散乱光強度のこの特性を利用することで、血球を分類(弁別)した上で、血球の数を測定することができる。なお、本実施形態においては、散乱光として前方散乱光と側方散乱光とを用いる構成について述べたが、これに限定されるものではなく、分析に必要な粒子の特徴が表れる散乱光信号を得られるのであれば、光源からシースフローセルを透過する光の光軸に対してどのような角度の散乱光を用いてもよい。
【0023】
また、染色された血球のような蛍光物質に光を照射すると、照射した光の波長より長い波長の光を発する。蛍光の強度はよく染色されていれば強くなり、この蛍光強度を測定することによって血球の染色度合いに関する特徴情報を得ることができる。したがって、(側方)蛍光強度の差によって、白血球の分類その他の測定を行うことができる。
【0024】
図3に示すように、シースフローセル403を通過する血球(白血球や有核赤血球)から発せられる前方散乱光は、集光レンズ404とピンホール部405を介してフォトダイオード(前方散乱光受光部)406によって受光される。
【0025】
側方散乱光は、集光レンズ407、ダイクロイックミラー408、光学フィルタ409、及びピンホール部410を介してフォトマルチプライヤ(側方散乱光受光部)411によって受光される。
【0026】
側方蛍光は、集光レンズ407及びダイクロイックミラー408を介してフォトマルチプライヤ(側方蛍光受光部)412によって受光される。
【0027】
各受光部406,411,412から出力された受光信号は、それぞれ、アンプ51,52,53等からなるアナログ処理部5によって増幅・波形処理等のアナログ処理が施され、マイクロコンピュータ部6に与えられる。
【0028】
マイクロコンピュータ部6は、アナログ処理部5から与えられた受光信号をデジタル信号に変換するA/D変換部61を備えている。A/D変換部61の出力は、マイクロコンピュータ部6の演算部62に与えられ、演算部62において受光信号に対する所定の処理を行う演算が行われる。
【0029】
また、マイクロコンピュータ部6は、制御用プロセッサ及び制御用プロセッサの動作のためのメモリからなる制御部63と、分布図作成用プロセッサ及び分布図作成用プロセッサの動作のためのメモリからなる分布図作成部64とを備えている。
【0030】
制御部63は、採血管を自動供給するサンプラ(図示省略)、試料の調製・測定のための流体系などからなる装置機構部8の制御及びその他の制御を行うものである。
【0031】
分布図作成部64は、検出部4の出力に基づいて、2次元のスキャッタグラム(未分類のもの)を作成する。分布図作成部64は、外部インタフェース部65を介して、データ処理部3と接続されており、作成したスキャッタグラム等の測定結果をデータ処理部3へ送信することができる。
【0032】
さらに、マイクロコンピュータ部6は、表示・操作部7との間に介在するインタフェース部66、装置機構部8との間に介在するインタフェース部67を備えている。
【0033】
また、演算部62、制御部63、及びインタフェース部66,67は、バス68を介して接続され、制御部63と分布図作成部64とはバス69を介して接続されている。
【0034】
本実施形態の分析装置1の測定部2は、同一の血液試料に対し、有核赤血球の測定として第1の測定(NRBC測定)と、白血球の測定として第2の測定(DIFF測定)と、白血球の測定として第3の測定(WBC/BASO測定)を行うことができる。なお、第1〜第3の測定は、装置機構部8に設けられたスタートボタン(図示省略)をユーザが押すことにより開始される。ここで、白血球は、大別して、リンパ球、単球、顆粒球に分類される。さらに、顆粒球は、顆粒の染色性によって好中球、好塩基球、好酸球に分かれる。
【0035】
まず、前記第1測定(NRBC測定)について説明する。
【0036】
図4は、分析装置1によるNRBC測定、DIFF測定およびWBC/BASO測定の流れを示す図である。NRBC測定の際には、血液試料に第1測定(NRBC測定)用の第1試薬を混合した第1測定試料を調製し、その第1測定試料を白血球検出部で測定する。
【0037】
図4において、採血管11内の血液試料は、図示しない吸引ピペットからサンプリングバルブ12へと吸引される。吸引された血液試料はサンプリングバルブ12で3つのアリコート(aliquot)に分配される。そのうち、第1のアリコートは、サンプリングバルブ12において、第1試薬としての所定量の溶血剤(ストマトライザーNR溶血剤、シスメックス株式会社製)によって希釈され、希釈試料として反応チャンバ13に運ばれる。反応チャンバ13には、さらに、他の第1試薬としての所定量の染色液(ストマトライザーNR染色液、シスメックス株式会社製)が供給され、希釈試料がさらに希釈される。この状態で、希釈試料を反応チャンバ13で所定時間反応させることで、血液試料中の赤血球が溶血され、白血球および有核赤血球が染色された第1測定試料が得られる。
【0038】
第1測定試料は、図示しない定量シリンジによって、シース液(セルパック(II)、シスメックス株式会社製)とともに白血球検出部に送り込まれ、白血球検出部においてフローサイトメトリー法により測定される。
【0039】
第1測定の場合、分布図作成部64は、白血球検出部から出力された受光信号のうち前方散乱光と側方蛍光の信号を特徴パラメータとして、図5に示す2次元のスキャッタグラム(粒子分布図)を第1測定結果として生成する。
【0040】
このスキャッタグラム(以下、NRBCスキャッタグラムという)は、X軸に側方蛍光強度、Y軸に前方散乱光強度をとって描いたものであり、血液試料中に有核赤血球が含まれている場合には、「赤血球ゴーストの粒子集団」、「有核赤血球の粒子集団」、「白血球の粒子集団」が出現する。これらの粒子集団は、データ処理部3によってNRBCスキャッタグラムを処理することにより認識される。また、データ処理部3は、第1の分類である有核赤血球の分類(NRBC分類)および有核赤血球の計数も行う。
【0041】
次に、図4を用いて、前記第2測定(DIFF測定)について説明する。
【0042】
DIFF測定の際には、血液試料に第2測定(DIFF測定)用の第2試薬を混合した第2測定試料を調製し、その第2測定試料を白血球検出部で測定する。
【0043】
図4において、上述の3つのアリコートのうち、第2のアリコートは、サンプリングバルブ12において、第2試薬としての所定量の溶血剤(ストマトライザー4DL、シスメックス株式会社製)によって希釈され、希釈試料として反応チャンバ14に運ばれる。反応チャンバ14には、さらに、他の第2試薬としての所定量の染色液(ストマトライザー4DS、シスメックス株式会社製)が供給され、希釈試料がさらに希釈される。この状態で、希釈試料を反応チャンバ14で所定時間反応させることで、血液試料中の赤血球が溶血され、白血球が染色された第2測定試料が得られる。
【0044】
第2測定試料は、図示しない定量シリンジによって、シース液(セルパック(II)、シスメックス株式会社製)とともに白血球検出部に送り込まれ、白血球検出部においてフローサイトメトリー法により測定される。
【0045】
第2測定の場合、分布図作成部64は、白血球検出部から出力された受光信号のうち側方散乱光と側方蛍光の信号を特徴パラメータとして、図6に示す2次元のスキャッタグラム(粒子分布図)を第2測定結果として生成する。
【0046】
このスキャッタグラム(以下、DIFFスキャッタグラムという)は、X軸に側方散乱光強度、Y軸に側方蛍光強度をとって描いたものであり、通常、「赤血球ゴーストの粒子集団」、「リンパ球の粒子集団」、「単球の粒子集団」、「好中球+好塩基球の粒子集団」及び「好酸球の粒子集団」が出現する。これらの粒子集団は、データ処理部3によってDIFFスキャッタグラムを処理することにより認識される。また、データ処理部3は、第2の分類である白血球の分類(DIFF分類)および分類された各白血球の計数も行う。
【0047】
なお、第2試薬としての溶血剤(ストマトライザー4DL、シスメックス株式会社製)は、溶血能力が比較的抑えられている。これは、溶血剤は、赤血球だけでなく白血球も溶血させて収縮させることから、白血球が溶血されすぎると白血球の分類が困難となるため、白血球が比較的細かく分類されるDIFFでは、比較的穏やかに溶血させておき、白血球の収縮を抑えているのである。
【0048】
次に、図4を用いて、前記第3測定(WBC/BASO測定)について説明する。
WBC/BASO測定の際には、血液試料に第3測定(WBC/BASO測定)用の第3試薬を混合した第3測定試料を調製し、その第3測定試料を白血球検出部で測定する。
【0049】
図4において、上述の3つのアリコートのうち、第3のアリコートは、サンプリングバルブ12において、第3試薬としての所定量の溶血剤(ストマトライザーFB(II)、シスメックス株式会社製)によって希釈され、希釈試料として反応チャンバ15に運ばれる。この状態で、希釈試料を反応チャンバ15で所定時間反応させることで、血液試料中の赤血球が溶血された第3測定試料が得られる。
【0050】
第3測定試料は、図示しない定量シリンジによって、シース液(セルパック(II)、シスメックス株式会社製)とともに白血球検出部に送り込まれ、白血球検出部においてフローサイトメトリー法により測定される。
【0051】
第3測定の場合、分布図作成部64は、白血球検出部から出力された受光信号のうち側方散乱光と前方散乱光の信号を特徴パラメータとして、図7に示す2次元のスキャッタグラム(粒子分布図)を第3測定結果として作成する。
【0052】
このスキャッタグラム(以下、WBC/BASOスキャッタグラムという)は、X軸に側方散乱光強度、Y軸に前方散乱強度をとって描いたものであり、通常、「赤血球ゴーストの粒子集団」、「好塩基球の粒子集団」、「それ以外の白血球(リンパ球、単球、好中球、好酸球)の粒子集団」が出現する。これらの粒子集団は、データ処理部3によってWBC/BASOスキャッタグラムを処理することにより認識される。また、データ処理部3は、第3の分類である白血球の分類(WBC/BASO分類)および分類された各白血球の計数も行う。
【0053】
なお、第3試薬としての溶血剤(ストマトライザーFB(II)4DL、シスメックス株式会社製)は、溶血能力が第2試薬としての溶血剤(ストマトライザー4DL)よりも比較的高くなっている。第3測定(WBC/BASO)では、白血球の細かな分類をしないため、白血球も溶血剤によってある程度収縮させても、溶血剤によって赤血球を確実に溶血することで、白血球を確実に計数するとともに、採血後の白血球の経時変化による影響を抑えて白血球数を検出することができる。
【0054】
測定部2のマイクロコンピュータ部6は、第1、第2および第3測定結果をデータ処理部3へ送る。図8に示すように、データ処理部3は、本体301と、ディスプレイ302と、入力デバイス303とから主として構成されたコンピュータによって構成されている。本体301は、CPU301aと、ROM301bと、RAM301cと、ハードディスク301dと、読出装置301eと、入出力インタフェース301fと、画像出力インタフェース301hとから主として構成されており、CPU301a、ROM301b、RAM301c、ハードディスク301d、読出装置301e、入出力インタフェース301f、及び画像出力インタフェース301hは、バス301iによってデータ通信可能に接続されている。
【0055】
CPU301aは、ROM301bに記憶されているコンピュータプログラム及びRAM301cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するようなアプリケーションプログラム305aを当該CPU301aが実行することにより、コンピュータがデータ処理部3として機能する。
【0056】
ROM301bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROM等によって構成されており、CPU301aに実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータ等が記録されている。
【0057】
RAM301cは、SRAM又はDRAM等によって構成されている。RAM301cは、ROM301b及びハードディスク301dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU301aの作業領域として利用される。
【0058】
ハードディスク301dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU301aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。後述するアプリケーションプログラム305aも、このハードディスク301dにインストールされている。
【0059】
読出装置301eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、又はDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体305に記録されたコンピュータプログラム又はデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体305には、コンピュータに所定の機能を実現させるためのアプリケーションプログラム305aが格納されており、データ処理部3としてのコンピュータが当該可搬型記録媒体305からアプリケーションプログラム305aを読み出し、当該アプリケーションプログラム305aをハードディスク301dにインストールすることが可能である。
【0060】
なお、前記アプリケーションプログラム305aは、可搬型記録媒体305によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってデータ処理部3と通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記アプリケーションプログラム305aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにデータ処理部3がアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク301dにインストールすることも可能である。
【0061】
また、ハードディスク301dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施形態に係るアプリケーションプログラム305aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0062】
入出力インタフェース301fは、例えばUSB、IEEE1394、RS−232C等のシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284等のパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース301fには、キーボードおよびマウスからなる入力デバイス303が接続されており、ユーザが当該入力デバイス303を使用することにより、データ処理部3にデータを入力することが可能である。
【0063】
画像出力インタフェース301hは、LCDまたはCRT等で構成されたディスプレイ302に接続されており、CPU301aから与えられた画像データに応じた映像信号をディスプレイ302に出力するようになっている。ディスプレイ302は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0064】
次に、図9を用いて、測定部2及びデータ処理部3による処理の流れについて説明する。図9は、本実施形態に係る測定部2及びデータ処理部3の動作の流れを示すフローチャートである。まず、ユーザの操作により、測定部2およびデータ処理部3の電源が入れられると、測定部2の各機構部の初期化、およびデータ処理部3に格納されたコンピュータプログラム等の初期化が行われる(ステップS2−1、S3−1)。
【0065】
続いて、測定部2において、ユーザの操作により、試料番号の入力および動作条件の設定等がなされた後、測定部2は、図示しないスタートボタンが押されたか否かを判断する(ステップS2−2)。
【0066】
スタートボタンが押されたと判断されると、測定部2は、第1〜第3測定試料を調製する(ステップS2−3)。なお、ステップS2−4における第1〜第3測定試料の調製は並行して行われる。
【0067】
続いて、測定部2の1つの白血球検出部により、第1測定(NRBC測定)(ステップS2−4)、第2測定(4DIFF測定)(ステップS2−5)、および第3測定(WBC/BASO測定)(ステップS2−6)が順次行われる。なお、ここでは、1つの白血球検出部により第1〜第3測定が順次行われる構成について述べたが、これに限定されるものではなく、第1測定を行う検出部、第2測定を行う検出部、および第3測定を行う検出部をそれぞれ設け、第1〜第3測定が並行して行われる構成であってもよい。
【0068】
次に、測定部2は、第1〜第3測定で取得した測定結果(第1〜第3測定結果)をデータ処理部3に送信する(ステップS2−7)。
データ処理部3は、測定部2から第1〜第3測定結果を受信したか否かを判断し(ステップS3−2)、受信したと判断すると、以下に説明する分類・計数処理を実行する。
【0069】
[分類・計数処理]
データ処理部3のCPU301aは、第1〜第3測定結果に基づいて、測定試料に含まれる粒子の分類・計数処理を実行する(ステップS3−3)。詳細には、図10に示すように、CPU301aは、NRBC測定(第1測定)結果に対して、有核赤血球を分類・計数するための第1分類・計数処理を実行する(ステップS31)。また、CPU301aは、DIFF測定(第2測定)結果およびWBC/BASO測定(第3測定)結果に対して、白血球を分類・計数するための第2および第3分類・計数処理を実行する(ステップS32,S33)。以下、第1分類・計数処理について説明する。
【0070】
(第1分類・計数処理)
第1分類・計数処理においては、データ処理部3のCPU301aは、まず、第1分類処理を実行する(ステップS31A)。第1分類処理では、NRBCスキャッタグラム上で、有核赤血球の粒子集団(クラスター)と、白血球のクラスターと、赤血球ゴーストのクラスターとが分類される。本実施形態の第1分類処理においては、スキャッタグラム上にプロットされた各粒子と各クラスターの重心位置との距離から、各粒子の各クラスターへの帰属度が得られる。そして、これらの帰属度に応じて、各粒子が各クラスターに割り当てられる。この粒子分類方法は、特開平5−149863号公報に詳細に記載されている。これにより、図5に示すように、NRBCスキャッタグラム上で、有核赤血球のクラスターと他の領域とを区別するための境界、白血球のクラスターと他の領域とを区別するための境界、および赤血球ゴーストのクラスターと他の領域とを区別するための境界が生成される。そして、これらの境界内に存在する粒子がクラスターに属する粒子として認識される。
【0071】
次に、データ処理部3のCPU301aは、第1計数処理を実行する(ステップS31B)。第1計数処理では、第1分類処理において分類された有核赤血球のクラスターの粒子が計数される。
【0072】
(第2分類・計数処理)
第2分類・計数処理においては、データ処理部3のCPU301aは、まず、第2分類処理を実行する(ステップS32A)。第2分類処理では、DIFFスキャッタグラム上で、リンパ球のクラスターと、単球のクラスターと、好中球+好塩基球のクラスターと、好酸球のクラスターと、赤血球ゴーストのクラスターとが分類される。なお、当該ステップS32Bの第2分類処理のアルゴリズムは、上述したステップS31Aの第1分類処理と同様であるので、その説明を省略する。これにより、図6に示すように、DIFFスキャッタグラム上で、リンパ球のクラスターと他の領域とを区別するための境界、単球のクラスターと他の領域とを区別するための境界、好中球+好塩基球のクラスターと他の領域とを区別するための境界、好酸球のクラスターと他の領域とを区別するための境界、および赤血球ゴーストのクラスターと他の領域とを区別するための境界が生成される。そして、これらの境界内に存在する粒子がクラスターに属する粒子として認識される。
【0073】
次に、データ処理部3のCPU301aは、第2計数処理を実行する(ステップS32B)。第2計数処理では、第2分類処理において分類された白血球の4つのクラスターの粒子および赤血球ゴーストのクラスターの粒子が計数される。これにより、リンパ球、単球、好中球+好塩基球および好酸球の各血球数と赤血球ゴーストの粒子数が取得される。
【0074】
(第3分類・計数処理)
第3分類・計数処理においては、データ処理部3のCPU301aは、まず、第3分類処理を実行する(ステップS33A)。第3分類処理では、WBC/BASOスキャッタグラム上で、好塩基球のクラスターと、好塩基球以外の白血球のクラスターと、赤血球ゴーストのクラスターとが分類される。なお、当該ステップS33Aの第3分類処理のアルゴリズムは、上述のステップS31Aの第1分類処理と同様であるので、その説明を省略する。これにより、図7に示すように、WBC/BASOスキャッタグラム上で、好塩基球のクラスターと他の領域とを区別するための境界、好塩基球以外の白血球のクラスターと他の領域とを区別するための境界、および赤血球ゴーストのクラスターと他の領域とを区別するための境界が生成される。そして、これらの境界内に存在する粒子がクラスターに属する粒子として認識される。
【0075】
次に、データ処理部3のCPU301aは、第3計数処理を実行する(ステップS33B)。第3計数処理では、第3分類処理において分類された白血球の2つのクラスターの粒子が計数される。これにより、好塩基球およびそれ以外の白血球の各血球数が取得される。また、本実施形態においては、WBC/BASOスキャッタグラム上で分類された好塩基球のクラスターと好塩基球以外の白血球のクラスターの各粒子数の和を算出することにより、血液試料に含まれる総白血球数を取得する。
【0076】
(白血球の5分類)
データ処理部3のCPU301aは、第2分類・計数処理によって白血球を4つに分類・計数した結果と、第3分類・計数処理によって白血球を2つに分類・計数した結果とに基づいて、血液試料に含まれる白血球を5分類する(ステップS34)。具体的には、CPU301aは、第2分類・計数処理によって得られた「好中球+好塩基球の血球数」から第3分類・計数処理によって得られた「好塩基球の血球数」を減算し、好中球の血球数と好塩基球の血球数をそれぞれ取得する。これにより、白血球が5分類(リンパ球、単球、好中球、好塩基球、好酸球)され、各分類項目の血球数が取得される。
【0077】
[判定処理]
次に、データ処理部3のCPU301aは、第1分類・計数処理による計数結果に基づいて、測定された血液試料に有核赤血球が含まれているか否かを判定する(ステップS3−4)。
【0078】
本実施形態に係る分析装置1では、有核赤血球が含まれる血液試料を測定した場合には、WBC/BASOスキャッタグラム上の好塩基球以外の白血球の分布領域に有核赤血球が出現する。本実施形態においては、WBC/BASOスキャッタグラム上で分類された好塩基球のクラスターと好塩基球以外の白血球のクラスターの各粒子数の和を総白血球数としているため、有核赤血球が血液試料に含まれる場合には、第3分類・計数処理により取得された総白血球数に有核赤血球による誤差が含まれている。
【0079】
そのため、CPU301aが、本ステップにおいて、血液試料に有核赤血球が含まれていると判定した場合には、第3分類・計数処理により取得された総白血球数を補正することが必要となる。
【0080】
また、有核赤血球が含まれる血液試料を測定した場合には、上述のようにして求められた白血球の5分類の結果に有核赤血球による誤差が含まれることがある。例えば、図11に示すように、DIFFスキャッタグラム上において、有核赤血球がリンパ球の分布領域の左下に出現するような血液試料の場合には、上述の第2分類処理の結果、有核赤血球は、リンパ球のクラスターC1として分類される。また、図12に示すように、DIFFスキャッタグラム上において、有核赤血球が好中球の分布領域の左下に出現するような血液試料の場合には、有核赤血球は、好中球のクラスターC2として分類される。また、図示しないが、有核赤血球は、赤血球ゴーストのクラスターとして分類されることもある。
【0081】
そのため、CPU301aが、本ステップにおいて、血液試料に有核赤血球が含まれていると判定した場合には、白血球の5分類(図10参照)により取得されたリンパ球数または好中球数を補正することが必要になる場合がある。
【0082】
そこで、データ処理部3のCPU301aは、本ステップにおいて、血液試料に有核赤血球が含まれていると判定した場合には、後述するステップS3−5における選択処理を実行する。また、データ処理部3のCPU301aは、本ステップにおいて、血液試料に有核赤血球が含まれていないと判定した場合には、白血球の5分類により取得した分類結果、および第3分類・計数処理により取得した総白血球数をディスプレイ302に出力(表示)する(ステップS3−7)。この場合には、白血球の5分類により取得された分類結果および総白血球数は補正されずに表示される。
【0083】
[選択処理]
図13は、データ処理部3のCPU301aによる選択処理の手順を示している。この選択処理においては、CPU301aは、有核赤血球数を減算する補正(NRBC補正)を行う対象のクラスターを、DIFFスキャッタグラム上のリンパ球のクラスターおよび好中球のクラスターから選択する(ステップS3−5)。以下、この選択処理について詳細に説明する。
【0084】
本実施形態では、図14に示すように、DIFFスキャッタグラム上における特定の領域(斜線部)が有核赤血球(NRBC)検出エリアとして予め設定されている。このNRBC検出エリアは、有核赤血球が含まれる血液試料を測定した場合に、DIFFスキャッタグラム上において有核赤血球が多く出現するエリアである。したがって、このNRBC検出エリアに出現する粒子のクラスターには、有核赤血球が含まれていると考えることができる。このことから、本実施形態の選択処理では、CPU301aは、まず、リンパ球のクラスター、好中球のクラスター、及び赤血球ゴーストのクラスターのうちのいずれのクラスターの粒子がNRBC検出エリアに最も多く出現したかを判定する(ステップS51)。以下、NRBC検出エリアに最も多く粒子が出現したクラスターを「補正候補クラスター」という。
【0085】
ステップS51において、補正候補クラスターがリンパ球のクラスターである場合には、CPU301aは、リンパ球のクラスターをNRBC補正の対象のクラスターに選択し(ステップS52)、処理をリターンする。
【0086】
一方、ステップS51において、補正候補クラスターが好中球のクラスターである場合には、CPU301aは、NRBC検出エリアにおける好中球のクラスターの粒子数NAREAが所定数(T1)を超えているか、かつ、第1分類・計数処理で取得した有核赤血球数NRが所定数(T2)を超えているか、すなわち、次の式(1)および式(2)の両方が成立しているか否かを判定する(ステップS53)。
NAREA≧T1・・・(1)
NR≧T2・・・(2)
【0087】
CPU301aは、上記の式(1)および式(2)の両方が成立していると判定すると、好中球のクラスターをNRBC補正の対象のクラスターに選択し(ステップS54)、処理をリターンする。CPU301aは、上記の式(1)および式(2)の少なくとも一方が成立していないと判定すると、リンパ球のクラスターをNRBC補正の対象のクラスターに選択し(ステップS52)、処理をリターンする。
【0088】
また、ステップS51において、補正候補クラスターが赤血球ゴーストのクラスターである場合には、CPU301aは、NRBC検出エリアにおける赤血球ゴーストのクラスターの粒子数GAREAが所定数(T3)を超えているか、かつ、第1分類・計数処理で取得した有核赤血球数NRが所定数(T2)を超えているか、すなわち、次の式(3)および式(4)の両方が成立しているか否かを判定する(ステップS55)。
GAREA≧T3・・・(3)
NR≧T2・・・(4)
【0089】
CPU301aは、上記の式(3)および式(4)の両方が成立していると判定すると、NRBC補正の対象のクラスターにいずれのクラスターも選択せず、処理をリターンする。CPU301aは、上記の式(3)および式(4)の少なくとも一方が成立していないと判定すると、リンパ球のクラスターをNRBC補正の対象のクラスターに選択し(ステップS52)、処理をリターンする。
【0090】
[補正処理]
次に、データ処理部3のCPU301aは、第3分類・計数処理により取得した総白血球数、および上記選択処理によって補正対象として選択されたクラスターの粒子数を補正する(NRBC補正)(ステップS3−6)。図15は、補正処理の手順を示すフローチャートである。この図15を参照して補正処理について詳細に説明する。まず、CPU301aは、第3分類・計数処理により取得した総白血球数WALLから第1分類・計数処理(NRBC分類・計数処理)により取得された有核赤血球数NRを減算する(ステップS61)。次に、CPU301aは、補正対象のクラスターにいずれのクラスターが選択されたか、またはどのクラスターも補正対象のクラスターに選択されていないかを判定する(ステップS62)。ステップS62において、補正対象のクラスターがリンパ球のクラスターである場合、CPU301aは、白血球の5分類(図10参照)により取得されたリンパ球数(リンパ球のクラスターに含まれる全粒子数)LALLから、NRBC分類・計数処理により取得された有核赤血球数NRを減算し(ステップS63)、処理をリターンする。一方、ステップS62において、補正対象のクラスターが好中球のクラスターである場合には、CPU301aは、白血球の5分類により取得された好中球数NALLから、NRBC分類・計数処理により取得された有核赤血球数NRを減算し(ステップS64)、処理をリターンする。また、ステップS62において、補正対象のクラスターがない場合には、CPU301aは、そのまま処理をリターンする。
【0091】
[出力処理]
データ処理部3のCPU301aは、上述のようにして得られた分析結果をディスプレイ302に出力(表示)する(ステップS3−7)。具体的に説明すると、この出力処理では、図16に示すように、総白血球(WBC)の計数結果、5種類の白血球(NEUT、LYMPH、MONO、EO、BASO)の計数結果、及び有核赤血球(NRBC)の計数結果と、WBC/BASOスキャッタグラムと、DIFFスキャッタグラムと、NRBCスキャッタグラムとが表示される。例えば、上記補正処理によって、リンパ球のクラスターの粒子数および総白血球数が補正された場合には、図16に示すように、LYMPH(リンパ球数)およびWBC(総白血球数)の表示位置に、補正を実施したことを示す&マークが付される。これにより、ユーザは、リンパ球のクラスターの粒子数および総白血球数が有核赤血球数に基づいて補正されたことを知ることができる。上記補正処理によって、好中球のクラスターの粒子数および総白血球数が補正された場合には、NEUT(好中球)およびWBCの表示位置に&マークが付される。これにより、ユーザは、好中球のクラスターの粒子数および総白血球数が有核赤血球数に基づいて補正されたことを知ることができる。なお、上記選択処理によって補正の対象となるクラスターが選択されず、総白血球数のみを有核赤血球数に基づいて補正した場合には、WBCの表示位置のみに&マークが付される。
【0092】
以上のように、本実施形態の血液分析装置1によれば、特定の種類の粒子(有核赤血球)が、当該特定の種類の粒子とは異なる複数の種類の粒子(好中球、リンパ球)のいずれかのクラスターに含まれた場合であっても、この特定の種類の粒子を含んだクラスターを補正対象として選択し、この補正対象のクラスターの粒子数を補正するので、精度良く白血球を分類・計数することができる。
【0093】
なお、本実施形態では、NRBC検出エリアに最も多く粒子が出現するクラスターの粒子数から有核赤血球数を減算するNRBC補正を行っているが、本発明の実施形態はこれに限られない。血液試料によっては、有核赤血球が、DIFFスキャッタグラム上の複数のクラスターに分割して含まれる場合が考えられる。例えば、図17に示すスキャッタグラムのように、リンパ球として分類されたクラスターC1に有核赤血球の一部が含まれ、好中球として分類されたクラスターC2に有核赤血球の他の一部が含まれている場合が考えられる。このような場合には、各クラスターC1,C2の補正の度合いを求め、その度合いに応じて、各クラスターC1,C2の粒子数に対してNRBC補正を行ってもよい。図18は、変形例の補正処理の手順を示すフローチャートである。この変形例では、図9で示すステップS4−5の選択処理において、CPU301aが、リンパ球のクラスターの補正の度合いと、好中球のクラスターの補正の度合いとをそれぞれ決定する。具体的には、CPU301aは、上述したようなNRBC検出エリアに出現した粒子数のうち、リンパ球のクラスターに含まれる粒子数の比率Lratioと、好中球のクラスターに含まれる粒子数の比率Nratioとを算出する。そして、補正処理S4−6において、CPU301aは、まず、第3分類・計数処理で取得した総白血球数WALLからNRBC分類・計数処理で取得した有核赤血球数NRを減算する(ステップS611)。次に、CPU301aは、有核赤血球数NRにリンパ球の粒子数の比率Lratioを乗じてリンパ球数補正値Lcomを算出し、有核赤血球数NRに好中球の粒子数の比率Nratioを乗じて好中球数補正値Ncomを算出する(ステップS612)。次に、CPU301aは、白血球の5分類(図10参照)により取得されたリンパ球数LALLからリンパ球数補正値Lcomを減算し、白血球の5分類により取得された好中球数NALLから好中球数補正値Ncomを減算し(ステップS613)、処理をリターンする。以上の処理により、有核赤血球が、DIFFスキャッタグラム上の複数のクラスターに分割して含まれている場合にも、各クラスターの粒子数をクラスター毎に定められた補正の度合いに応じて補正することができる。
【0094】
また、本実施形態では、測定部2の分布図作成部64によってスキャッタグラムが作成されているが、データ処理部3のCPU301aによってスキャッタグラムが作成されてもよい。
【0095】
また、本実施形態では、データ処理部3において、粒子の分類・計数処理、有核赤血球の存否の判定処理、補正対象のクラスターの選択処理、および選択された補正対象のクラスターの粒子数の補正処理が実行されているが、これらの処理を測定部2において実行し、得られた分析結果をデータ処理部3が受信してディスプレイ302に出力してもよい。
【0096】
また、本実施形態では、白血球検出部により検出された血球の特徴パラメータを用いてスキャッタグラムを作成し、作成されたスキャッタグラムに基づいて有核赤血球の分類・計数処理および白血球の分類・計数処理を実行しているが、スキャッタグラムを作成せずに有核赤血球の分類・計数処理および白血球の分類・計数処理を実行してもよい。
【0097】
また、本実施形態では、有核赤血球が赤血球ゴーストのクラスターに含まれている場合には、赤血球ゴーストのクラスターの粒子数から有核赤血球数を減算する補正を行っていないが、この場合、赤血球ゴーストのクラスターの粒子数から有核赤血球数を減算する補正を行ってもよい。
【0098】
また、本実施形態では、有核赤血球が含まれる血液試料を測定した場合に、スキャッタグラム上のリンパ球または好中球のクラスターから有核赤血球が含まれるクラスターを選択し、選択されたクラスターの粒子数から有核赤血球数を減算する補正を行っているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、白血球の分類・計数結果に影響を与える幼若球が含まれる血液試料を測定した場合に、スキャッタグラム上の白血球の複数のクラスターから幼若球が含まれるクラスターを選択し、選択されたクラスターの粒子数から幼若球数を減算する補正を行う等、試料に含まれる複数の粒子のうちから補正対象となる粒子を選択し、その粒子の粒子数を他の種類の粒子の粒子数を用いて補正することが望まれる試料の測定において、本発明を適用することができる。
【0099】
また、本実施形態では、血球から発せられる蛍光強度を検出し、血球の特徴パラメータの1つとして用いているが、蛍光強度の代わりに吸収光の強度を検出し、これを血球の特徴パラメータとして用いてもよい。
【0100】
また、本実施形態では、測定試料に光を照射して血球の特徴パラメータを取得する光学式の測定を行っているが、本発明はこれに限られず、例えば、試料が流される微細孔に直流電流を流し、血球がその微細孔を通過する際に生じる電気抵抗の変化に基づく信号を血球の特徴パラメータとして取得してもよい。また、高周波電流を微細孔に流しておき、血球がその微細孔を通過する際に生じる血球の誘電率の変化に基づく信号を血球の特徴パラメータとして取得してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】血液分析装置を示す斜視図である。
【図2】測定部の機能ブロック図である。
【図3】検出部の構成図である。
【図4】NRBC測定、DIFF測定およびWBC/BASO測定の流れを示す図である。
【図5】NRBCスキャッタグラムである。
【図6】4DIFFスキャッタグラムである。
【図7】WBC/BASOスキャッタグラムである。
【図8】データ処理部の機能ブロック図である。
【図9】測定部およびデータ処理部による処理のフローチャートである。
【図10】分類・計数処理の処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図11】4DIFFスキャッタグラム上で、有核赤血球がリンパ球として分類されたことを示す説明図である。
【図12】4DIFFスキャッタグラム上で、有核赤血球が好中球として分類されたことを示す説明図である。
【図13】データ処理部における選択処理のフローチャートである。
【図14】スキャッタグラム上で、粒子数を補正する粒子集団を選択するための説明図である。
【図15】データ処理部における補正処理のフローチャートである。
【図16】分類結果を表示する表示画面である。
【図17】4DIFFスキャッタグラム上で、有核赤血球の一部がリンパ球として、有核赤血球の他の一部が好中球として分類されたことを示す説明図である。
【図18】変形例の補正処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0102】
1 血液分析装置
2 測定部
3 データ処理部
301a CPU
301b ROM
301c RAM
301d ハードディスク
301e 読取装置
301f 入出力インタフェース
301h 画像出力インタフェース
301i バス
302 ディスプレイ
4 検出部
6 マイクロコンピュータ部
63 制御部
64 分布図作成部
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子分析装置、粒子分析方法およびコンピュータプログラムに関し、特に、粒子の特徴パラメータに基づいて、試料に含まれる粒子の分類・計数を行う分析装置、分析方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、血液や尿などの試料に含まれる粒子の分類・計数が行われている。例えば、フローサイトメータを用いた粒子分析では、シース液に包んで流された粒子含有液に光を照射して、各粒子から特徴パラメータを検出し、その特徴パラメータを用いてスキャッタグラムが作成される。そして、そのスキャッタグラムに出現する粒子を複数の粒子集団に分類し、各粒子集団の粒子を計数することにより、粒子の分類・計数が行われている(例えば、特許文献1)。
また、特許文献1に記載の粒子分析装置は、有核赤血球が含まれる血液試料を測定した場合に、スキャッタグラムに出現する粒子の分画異常を判定し、判定結果を表示部に表示することで誤った分析を防止している。
【0003】
ところで、特許文献1には、有核赤血球が含まれる血液試料では、有核赤血球は、白血球を4分類するスキャッタグラム上のリンパ球の分布領域およびその下部の領域に出現し、好中球の分布領域には出現しないと記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2003−106984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特殊な疾患患者の血液試料においては、有核赤血球は、スキャッタグラム上の好中球の分布領域もしくは赤血球ゴースト(溶血後の赤血球粒子)の分布領域に出現することがある。そのため、特許文献1に記載の粒子分析装置では、有核赤血球が好中球の分布領域や赤血球ゴーストの分布領域に出現する特殊な血液試料を測定する場合には、粒子の分画異常を正確に判定することができない。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、試料中の粒子をより精度良く分類・計数できる粒子分析装置、粒子分析方法およびコンピュータプログラムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の局面による粒子分析装置は、粒子を含む試料から得られる測定試料を測定し、試料に含まれる粒子の複数の特徴情報を取得する特徴情報取得手段と、前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、試料に含まれる特定の種類の粒子の粒子数、および前記特定の種類とは異なる複数種類の粒子の各粒子数を取得する粒子数取得手段と、前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、前記粒子数取得手段により粒子数が取得された前記複数種類の粒子のうち、粒子数を補正する対象粒子を選択する選択手段と、前記粒子数取得手段により取得された前記特定の種類の粒子の粒子数を用いて、前記選択手段により選択された対象粒子の粒子数を補正する補正手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明の第2の局面による粒子分析装置は、粒子を含む試料から得られる測定試料を測定し、試料に含まれる粒子の複数の特徴情報を取得する特徴情報取得手段と、前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、特定の種類の粒子の粒子数、および前記特定の種類とは異なる複数種類の粒子の各粒子数を取得する粒子数取得手段と、前記粒子数取得手段により取得された前記複数種類の粒子の各粒子数を補正するための補正の度合いを決定する決定手段と、前記粒子数取得手段により取得された前記特定の種類の粒子の粒子数および前記決定手段により決定された補正の度合いに基づき、前記粒子数取得手段により取得された前記複数種類の粒子の各粒子数を補正する補正手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明の第3の局面による粒子分析方法は、(a)粒子を含む試料から得られる測定試料を測定し、試料に含まれる粒子の複数の特徴情報を取得するステップと、(b)ステップ(a)により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、試料に含まれる特定の種類の粒子の粒子数、および前記特定の種類とは異なる複数種類の粒子の各粒子数を取得するステップと、(c)ステップ(a)により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、ステップ(b)により粒子数が取得された前記複数種類の粒子のうち、粒子数を補正する対象粒子を選択するステップと、(d)ステップ(b)により取得された前記特定の種類の粒子の粒子数を用いて、ステップ(c)により選択された対象粒子の粒子数を補正するステップと、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の第4の局面によるコンピュータプログラムは、粒子を含む試料から得られる測定試料を測定し、試料に含まれる粒子の複数の特徴情報を取得する測定装置に接続されたコンピュータを、前記測定装置により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、試料に含まれる特定の種類の粒子の粒子数、および前記特定の種類とは異なる複数種類の粒子の各粒子数を取得する粒子数取得手段と、前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、前記粒子数取得手段により粒子数が取得された前記複数種類の粒子のうち、粒子数を補正する対象粒子を選択する選択手段と、前記粒子数取得手段により取得された前記特定の種類の粒子の粒子数を用いて、前記選択手段により選択された対象粒子の粒子数を補正する補正手段として機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、試料中の粒子をより精度良く分類・計数できる粒子分析装置、粒子分析方法およびコンピュータプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面に基づき説明する。
【0013】
図1は、血液分析装置1を示している。この分析装置1は、血液検査を行うための多項目自動血球分析装置として構成されており、試料容器(採血管)に収容された血液試料の測定を行い、その測定結果の分析を行う。
【0014】
分析装置1は、試料である血液の測定を行う機能を有する測定部2と、測定部2から出力された測定結果を処理して分析結果を得るデータ処理部3とを有して構成されている。
【0015】
なお、図1では、測定部2とデータ処理部3とが別体の装置として構成されているが、両者が一体の装置として構成されていてもよい。
【0016】
図2は、分析装置1の測定部2のブロック図を示している。図2に示すように、測定部2は、血球の検出部4、検出部4の出力に対するアナログ処理部5、マイクロコンピュータ部6、表示・操作部7、血液測定のための装置機構部8を備えている。
【0017】
検出部4は、白血球を検出する白血球検出部を備えている。また、この白血球検出部は、有核赤血球の検出にも用いられる。なお、検出部4は、白血球検出部の他、赤血球数及び血小板数を測定するRBC/PLT検出部、血液中の血色素量を測定するHGB検出部、幼若球を検出するIMI検出部も備えている。
【0018】
前記白血球検出部は、光学式検出部として構成されており、具体的には、フローサイトメトリー法による検出部として構成されている。
【0019】
ここで、サイトメトリーとは、細胞やその他の生物学的な粒子の物理的な性質や化学的な性質を測定することであり、フローサイトメトリーとは細い流れの中に、これらの粒子を通過させて測定を行う方法をいう。
【0020】
図3は、白血球検出部の光学系を示している。同図において、レーザダイオード401から出射されたビームは、コリメートレンズ402を介してシースフローセル403内を通過する血球に照射される。
【0021】
この白血球検出部では、光が照射されたシースフローセル内の血球から発せされる前方散乱光の強度、側方散乱光の強度、側方蛍光の強度が血球の特徴パラメータとして検出される。
【0022】
ここで、光散乱は、血球のような粒子が光の進行方向に障害物として存在し、光がその進行方向を変えることによって生じる現象である。この散乱光を検出することによって、粒子の大きさや成分に関する粒子の特徴情報を得ることができる。なお、前方散乱光とは、照射された光の進行方向と略同じ方向に粒子から発せられる散乱光のことである。前方散乱光からは、粒子(血球)の大きさに関する特徴情報を得ることができる。また、側方散乱光とは、照射された光の進行方向と略垂直方向に粒子から発せられる散乱光のことである。側方散乱光からは、粒子内部に関する特徴情報を得ることができる。血球粒子にレーザ光が照射された場合、側方散乱光強度は細胞内部の複雑さ(核の形状、大きさ、密度や顆粒の量)に依存する。したがって、側方散乱光強度のこの特性を利用することで、血球を分類(弁別)した上で、血球の数を測定することができる。なお、本実施形態においては、散乱光として前方散乱光と側方散乱光とを用いる構成について述べたが、これに限定されるものではなく、分析に必要な粒子の特徴が表れる散乱光信号を得られるのであれば、光源からシースフローセルを透過する光の光軸に対してどのような角度の散乱光を用いてもよい。
【0023】
また、染色された血球のような蛍光物質に光を照射すると、照射した光の波長より長い波長の光を発する。蛍光の強度はよく染色されていれば強くなり、この蛍光強度を測定することによって血球の染色度合いに関する特徴情報を得ることができる。したがって、(側方)蛍光強度の差によって、白血球の分類その他の測定を行うことができる。
【0024】
図3に示すように、シースフローセル403を通過する血球(白血球や有核赤血球)から発せられる前方散乱光は、集光レンズ404とピンホール部405を介してフォトダイオード(前方散乱光受光部)406によって受光される。
【0025】
側方散乱光は、集光レンズ407、ダイクロイックミラー408、光学フィルタ409、及びピンホール部410を介してフォトマルチプライヤ(側方散乱光受光部)411によって受光される。
【0026】
側方蛍光は、集光レンズ407及びダイクロイックミラー408を介してフォトマルチプライヤ(側方蛍光受光部)412によって受光される。
【0027】
各受光部406,411,412から出力された受光信号は、それぞれ、アンプ51,52,53等からなるアナログ処理部5によって増幅・波形処理等のアナログ処理が施され、マイクロコンピュータ部6に与えられる。
【0028】
マイクロコンピュータ部6は、アナログ処理部5から与えられた受光信号をデジタル信号に変換するA/D変換部61を備えている。A/D変換部61の出力は、マイクロコンピュータ部6の演算部62に与えられ、演算部62において受光信号に対する所定の処理を行う演算が行われる。
【0029】
また、マイクロコンピュータ部6は、制御用プロセッサ及び制御用プロセッサの動作のためのメモリからなる制御部63と、分布図作成用プロセッサ及び分布図作成用プロセッサの動作のためのメモリからなる分布図作成部64とを備えている。
【0030】
制御部63は、採血管を自動供給するサンプラ(図示省略)、試料の調製・測定のための流体系などからなる装置機構部8の制御及びその他の制御を行うものである。
【0031】
分布図作成部64は、検出部4の出力に基づいて、2次元のスキャッタグラム(未分類のもの)を作成する。分布図作成部64は、外部インタフェース部65を介して、データ処理部3と接続されており、作成したスキャッタグラム等の測定結果をデータ処理部3へ送信することができる。
【0032】
さらに、マイクロコンピュータ部6は、表示・操作部7との間に介在するインタフェース部66、装置機構部8との間に介在するインタフェース部67を備えている。
【0033】
また、演算部62、制御部63、及びインタフェース部66,67は、バス68を介して接続され、制御部63と分布図作成部64とはバス69を介して接続されている。
【0034】
本実施形態の分析装置1の測定部2は、同一の血液試料に対し、有核赤血球の測定として第1の測定(NRBC測定)と、白血球の測定として第2の測定(DIFF測定)と、白血球の測定として第3の測定(WBC/BASO測定)を行うことができる。なお、第1〜第3の測定は、装置機構部8に設けられたスタートボタン(図示省略)をユーザが押すことにより開始される。ここで、白血球は、大別して、リンパ球、単球、顆粒球に分類される。さらに、顆粒球は、顆粒の染色性によって好中球、好塩基球、好酸球に分かれる。
【0035】
まず、前記第1測定(NRBC測定)について説明する。
【0036】
図4は、分析装置1によるNRBC測定、DIFF測定およびWBC/BASO測定の流れを示す図である。NRBC測定の際には、血液試料に第1測定(NRBC測定)用の第1試薬を混合した第1測定試料を調製し、その第1測定試料を白血球検出部で測定する。
【0037】
図4において、採血管11内の血液試料は、図示しない吸引ピペットからサンプリングバルブ12へと吸引される。吸引された血液試料はサンプリングバルブ12で3つのアリコート(aliquot)に分配される。そのうち、第1のアリコートは、サンプリングバルブ12において、第1試薬としての所定量の溶血剤(ストマトライザーNR溶血剤、シスメックス株式会社製)によって希釈され、希釈試料として反応チャンバ13に運ばれる。反応チャンバ13には、さらに、他の第1試薬としての所定量の染色液(ストマトライザーNR染色液、シスメックス株式会社製)が供給され、希釈試料がさらに希釈される。この状態で、希釈試料を反応チャンバ13で所定時間反応させることで、血液試料中の赤血球が溶血され、白血球および有核赤血球が染色された第1測定試料が得られる。
【0038】
第1測定試料は、図示しない定量シリンジによって、シース液(セルパック(II)、シスメックス株式会社製)とともに白血球検出部に送り込まれ、白血球検出部においてフローサイトメトリー法により測定される。
【0039】
第1測定の場合、分布図作成部64は、白血球検出部から出力された受光信号のうち前方散乱光と側方蛍光の信号を特徴パラメータとして、図5に示す2次元のスキャッタグラム(粒子分布図)を第1測定結果として生成する。
【0040】
このスキャッタグラム(以下、NRBCスキャッタグラムという)は、X軸に側方蛍光強度、Y軸に前方散乱光強度をとって描いたものであり、血液試料中に有核赤血球が含まれている場合には、「赤血球ゴーストの粒子集団」、「有核赤血球の粒子集団」、「白血球の粒子集団」が出現する。これらの粒子集団は、データ処理部3によってNRBCスキャッタグラムを処理することにより認識される。また、データ処理部3は、第1の分類である有核赤血球の分類(NRBC分類)および有核赤血球の計数も行う。
【0041】
次に、図4を用いて、前記第2測定(DIFF測定)について説明する。
【0042】
DIFF測定の際には、血液試料に第2測定(DIFF測定)用の第2試薬を混合した第2測定試料を調製し、その第2測定試料を白血球検出部で測定する。
【0043】
図4において、上述の3つのアリコートのうち、第2のアリコートは、サンプリングバルブ12において、第2試薬としての所定量の溶血剤(ストマトライザー4DL、シスメックス株式会社製)によって希釈され、希釈試料として反応チャンバ14に運ばれる。反応チャンバ14には、さらに、他の第2試薬としての所定量の染色液(ストマトライザー4DS、シスメックス株式会社製)が供給され、希釈試料がさらに希釈される。この状態で、希釈試料を反応チャンバ14で所定時間反応させることで、血液試料中の赤血球が溶血され、白血球が染色された第2測定試料が得られる。
【0044】
第2測定試料は、図示しない定量シリンジによって、シース液(セルパック(II)、シスメックス株式会社製)とともに白血球検出部に送り込まれ、白血球検出部においてフローサイトメトリー法により測定される。
【0045】
第2測定の場合、分布図作成部64は、白血球検出部から出力された受光信号のうち側方散乱光と側方蛍光の信号を特徴パラメータとして、図6に示す2次元のスキャッタグラム(粒子分布図)を第2測定結果として生成する。
【0046】
このスキャッタグラム(以下、DIFFスキャッタグラムという)は、X軸に側方散乱光強度、Y軸に側方蛍光強度をとって描いたものであり、通常、「赤血球ゴーストの粒子集団」、「リンパ球の粒子集団」、「単球の粒子集団」、「好中球+好塩基球の粒子集団」及び「好酸球の粒子集団」が出現する。これらの粒子集団は、データ処理部3によってDIFFスキャッタグラムを処理することにより認識される。また、データ処理部3は、第2の分類である白血球の分類(DIFF分類)および分類された各白血球の計数も行う。
【0047】
なお、第2試薬としての溶血剤(ストマトライザー4DL、シスメックス株式会社製)は、溶血能力が比較的抑えられている。これは、溶血剤は、赤血球だけでなく白血球も溶血させて収縮させることから、白血球が溶血されすぎると白血球の分類が困難となるため、白血球が比較的細かく分類されるDIFFでは、比較的穏やかに溶血させておき、白血球の収縮を抑えているのである。
【0048】
次に、図4を用いて、前記第3測定(WBC/BASO測定)について説明する。
WBC/BASO測定の際には、血液試料に第3測定(WBC/BASO測定)用の第3試薬を混合した第3測定試料を調製し、その第3測定試料を白血球検出部で測定する。
【0049】
図4において、上述の3つのアリコートのうち、第3のアリコートは、サンプリングバルブ12において、第3試薬としての所定量の溶血剤(ストマトライザーFB(II)、シスメックス株式会社製)によって希釈され、希釈試料として反応チャンバ15に運ばれる。この状態で、希釈試料を反応チャンバ15で所定時間反応させることで、血液試料中の赤血球が溶血された第3測定試料が得られる。
【0050】
第3測定試料は、図示しない定量シリンジによって、シース液(セルパック(II)、シスメックス株式会社製)とともに白血球検出部に送り込まれ、白血球検出部においてフローサイトメトリー法により測定される。
【0051】
第3測定の場合、分布図作成部64は、白血球検出部から出力された受光信号のうち側方散乱光と前方散乱光の信号を特徴パラメータとして、図7に示す2次元のスキャッタグラム(粒子分布図)を第3測定結果として作成する。
【0052】
このスキャッタグラム(以下、WBC/BASOスキャッタグラムという)は、X軸に側方散乱光強度、Y軸に前方散乱強度をとって描いたものであり、通常、「赤血球ゴーストの粒子集団」、「好塩基球の粒子集団」、「それ以外の白血球(リンパ球、単球、好中球、好酸球)の粒子集団」が出現する。これらの粒子集団は、データ処理部3によってWBC/BASOスキャッタグラムを処理することにより認識される。また、データ処理部3は、第3の分類である白血球の分類(WBC/BASO分類)および分類された各白血球の計数も行う。
【0053】
なお、第3試薬としての溶血剤(ストマトライザーFB(II)4DL、シスメックス株式会社製)は、溶血能力が第2試薬としての溶血剤(ストマトライザー4DL)よりも比較的高くなっている。第3測定(WBC/BASO)では、白血球の細かな分類をしないため、白血球も溶血剤によってある程度収縮させても、溶血剤によって赤血球を確実に溶血することで、白血球を確実に計数するとともに、採血後の白血球の経時変化による影響を抑えて白血球数を検出することができる。
【0054】
測定部2のマイクロコンピュータ部6は、第1、第2および第3測定結果をデータ処理部3へ送る。図8に示すように、データ処理部3は、本体301と、ディスプレイ302と、入力デバイス303とから主として構成されたコンピュータによって構成されている。本体301は、CPU301aと、ROM301bと、RAM301cと、ハードディスク301dと、読出装置301eと、入出力インタフェース301fと、画像出力インタフェース301hとから主として構成されており、CPU301a、ROM301b、RAM301c、ハードディスク301d、読出装置301e、入出力インタフェース301f、及び画像出力インタフェース301hは、バス301iによってデータ通信可能に接続されている。
【0055】
CPU301aは、ROM301bに記憶されているコンピュータプログラム及びRAM301cにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。そして、後述するようなアプリケーションプログラム305aを当該CPU301aが実行することにより、コンピュータがデータ処理部3として機能する。
【0056】
ROM301bは、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROM等によって構成されており、CPU301aに実行されるコンピュータプログラム及びこれに用いるデータ等が記録されている。
【0057】
RAM301cは、SRAM又はDRAM等によって構成されている。RAM301cは、ROM301b及びハードディスク301dに記録されているコンピュータプログラムの読み出しに用いられる。また、これらのコンピュータプログラムを実行するときに、CPU301aの作業領域として利用される。
【0058】
ハードディスク301dは、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等、CPU301aに実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータがインストールされている。後述するアプリケーションプログラム305aも、このハードディスク301dにインストールされている。
【0059】
読出装置301eは、フレキシブルディスクドライブ、CD−ROMドライブ、又はDVD−ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体305に記録されたコンピュータプログラム又はデータを読み出すことができる。また、可搬型記録媒体305には、コンピュータに所定の機能を実現させるためのアプリケーションプログラム305aが格納されており、データ処理部3としてのコンピュータが当該可搬型記録媒体305からアプリケーションプログラム305aを読み出し、当該アプリケーションプログラム305aをハードディスク301dにインストールすることが可能である。
【0060】
なお、前記アプリケーションプログラム305aは、可搬型記録媒体305によって提供されるのみならず、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってデータ処理部3と通信可能に接続された外部の機器から前記電気通信回線を通じて提供することも可能である。例えば、前記アプリケーションプログラム305aがインターネット上のサーバコンピュータのハードディスク内に格納されており、このサーバコンピュータにデータ処理部3がアクセスして、当該コンピュータプログラムをダウンロードし、これをハードディスク301dにインストールすることも可能である。
【0061】
また、ハードディスク301dには、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)等のグラフィカルユーザインタフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下の説明においては、本実施形態に係るアプリケーションプログラム305aは当該オペレーティングシステム上で動作するものとしている。
【0062】
入出力インタフェース301fは、例えばUSB、IEEE1394、RS−232C等のシリアルインタフェース、SCSI、IDE、IEEE1284等のパラレルインタフェース、およびD/A変換器、A/D変換器等からなるアナログインタフェース等から構成されている。入出力インタフェース301fには、キーボードおよびマウスからなる入力デバイス303が接続されており、ユーザが当該入力デバイス303を使用することにより、データ処理部3にデータを入力することが可能である。
【0063】
画像出力インタフェース301hは、LCDまたはCRT等で構成されたディスプレイ302に接続されており、CPU301aから与えられた画像データに応じた映像信号をディスプレイ302に出力するようになっている。ディスプレイ302は、入力された映像信号にしたがって、画像(画面)を表示する。
【0064】
次に、図9を用いて、測定部2及びデータ処理部3による処理の流れについて説明する。図9は、本実施形態に係る測定部2及びデータ処理部3の動作の流れを示すフローチャートである。まず、ユーザの操作により、測定部2およびデータ処理部3の電源が入れられると、測定部2の各機構部の初期化、およびデータ処理部3に格納されたコンピュータプログラム等の初期化が行われる(ステップS2−1、S3−1)。
【0065】
続いて、測定部2において、ユーザの操作により、試料番号の入力および動作条件の設定等がなされた後、測定部2は、図示しないスタートボタンが押されたか否かを判断する(ステップS2−2)。
【0066】
スタートボタンが押されたと判断されると、測定部2は、第1〜第3測定試料を調製する(ステップS2−3)。なお、ステップS2−4における第1〜第3測定試料の調製は並行して行われる。
【0067】
続いて、測定部2の1つの白血球検出部により、第1測定(NRBC測定)(ステップS2−4)、第2測定(4DIFF測定)(ステップS2−5)、および第3測定(WBC/BASO測定)(ステップS2−6)が順次行われる。なお、ここでは、1つの白血球検出部により第1〜第3測定が順次行われる構成について述べたが、これに限定されるものではなく、第1測定を行う検出部、第2測定を行う検出部、および第3測定を行う検出部をそれぞれ設け、第1〜第3測定が並行して行われる構成であってもよい。
【0068】
次に、測定部2は、第1〜第3測定で取得した測定結果(第1〜第3測定結果)をデータ処理部3に送信する(ステップS2−7)。
データ処理部3は、測定部2から第1〜第3測定結果を受信したか否かを判断し(ステップS3−2)、受信したと判断すると、以下に説明する分類・計数処理を実行する。
【0069】
[分類・計数処理]
データ処理部3のCPU301aは、第1〜第3測定結果に基づいて、測定試料に含まれる粒子の分類・計数処理を実行する(ステップS3−3)。詳細には、図10に示すように、CPU301aは、NRBC測定(第1測定)結果に対して、有核赤血球を分類・計数するための第1分類・計数処理を実行する(ステップS31)。また、CPU301aは、DIFF測定(第2測定)結果およびWBC/BASO測定(第3測定)結果に対して、白血球を分類・計数するための第2および第3分類・計数処理を実行する(ステップS32,S33)。以下、第1分類・計数処理について説明する。
【0070】
(第1分類・計数処理)
第1分類・計数処理においては、データ処理部3のCPU301aは、まず、第1分類処理を実行する(ステップS31A)。第1分類処理では、NRBCスキャッタグラム上で、有核赤血球の粒子集団(クラスター)と、白血球のクラスターと、赤血球ゴーストのクラスターとが分類される。本実施形態の第1分類処理においては、スキャッタグラム上にプロットされた各粒子と各クラスターの重心位置との距離から、各粒子の各クラスターへの帰属度が得られる。そして、これらの帰属度に応じて、各粒子が各クラスターに割り当てられる。この粒子分類方法は、特開平5−149863号公報に詳細に記載されている。これにより、図5に示すように、NRBCスキャッタグラム上で、有核赤血球のクラスターと他の領域とを区別するための境界、白血球のクラスターと他の領域とを区別するための境界、および赤血球ゴーストのクラスターと他の領域とを区別するための境界が生成される。そして、これらの境界内に存在する粒子がクラスターに属する粒子として認識される。
【0071】
次に、データ処理部3のCPU301aは、第1計数処理を実行する(ステップS31B)。第1計数処理では、第1分類処理において分類された有核赤血球のクラスターの粒子が計数される。
【0072】
(第2分類・計数処理)
第2分類・計数処理においては、データ処理部3のCPU301aは、まず、第2分類処理を実行する(ステップS32A)。第2分類処理では、DIFFスキャッタグラム上で、リンパ球のクラスターと、単球のクラスターと、好中球+好塩基球のクラスターと、好酸球のクラスターと、赤血球ゴーストのクラスターとが分類される。なお、当該ステップS32Bの第2分類処理のアルゴリズムは、上述したステップS31Aの第1分類処理と同様であるので、その説明を省略する。これにより、図6に示すように、DIFFスキャッタグラム上で、リンパ球のクラスターと他の領域とを区別するための境界、単球のクラスターと他の領域とを区別するための境界、好中球+好塩基球のクラスターと他の領域とを区別するための境界、好酸球のクラスターと他の領域とを区別するための境界、および赤血球ゴーストのクラスターと他の領域とを区別するための境界が生成される。そして、これらの境界内に存在する粒子がクラスターに属する粒子として認識される。
【0073】
次に、データ処理部3のCPU301aは、第2計数処理を実行する(ステップS32B)。第2計数処理では、第2分類処理において分類された白血球の4つのクラスターの粒子および赤血球ゴーストのクラスターの粒子が計数される。これにより、リンパ球、単球、好中球+好塩基球および好酸球の各血球数と赤血球ゴーストの粒子数が取得される。
【0074】
(第3分類・計数処理)
第3分類・計数処理においては、データ処理部3のCPU301aは、まず、第3分類処理を実行する(ステップS33A)。第3分類処理では、WBC/BASOスキャッタグラム上で、好塩基球のクラスターと、好塩基球以外の白血球のクラスターと、赤血球ゴーストのクラスターとが分類される。なお、当該ステップS33Aの第3分類処理のアルゴリズムは、上述のステップS31Aの第1分類処理と同様であるので、その説明を省略する。これにより、図7に示すように、WBC/BASOスキャッタグラム上で、好塩基球のクラスターと他の領域とを区別するための境界、好塩基球以外の白血球のクラスターと他の領域とを区別するための境界、および赤血球ゴーストのクラスターと他の領域とを区別するための境界が生成される。そして、これらの境界内に存在する粒子がクラスターに属する粒子として認識される。
【0075】
次に、データ処理部3のCPU301aは、第3計数処理を実行する(ステップS33B)。第3計数処理では、第3分類処理において分類された白血球の2つのクラスターの粒子が計数される。これにより、好塩基球およびそれ以外の白血球の各血球数が取得される。また、本実施形態においては、WBC/BASOスキャッタグラム上で分類された好塩基球のクラスターと好塩基球以外の白血球のクラスターの各粒子数の和を算出することにより、血液試料に含まれる総白血球数を取得する。
【0076】
(白血球の5分類)
データ処理部3のCPU301aは、第2分類・計数処理によって白血球を4つに分類・計数した結果と、第3分類・計数処理によって白血球を2つに分類・計数した結果とに基づいて、血液試料に含まれる白血球を5分類する(ステップS34)。具体的には、CPU301aは、第2分類・計数処理によって得られた「好中球+好塩基球の血球数」から第3分類・計数処理によって得られた「好塩基球の血球数」を減算し、好中球の血球数と好塩基球の血球数をそれぞれ取得する。これにより、白血球が5分類(リンパ球、単球、好中球、好塩基球、好酸球)され、各分類項目の血球数が取得される。
【0077】
[判定処理]
次に、データ処理部3のCPU301aは、第1分類・計数処理による計数結果に基づいて、測定された血液試料に有核赤血球が含まれているか否かを判定する(ステップS3−4)。
【0078】
本実施形態に係る分析装置1では、有核赤血球が含まれる血液試料を測定した場合には、WBC/BASOスキャッタグラム上の好塩基球以外の白血球の分布領域に有核赤血球が出現する。本実施形態においては、WBC/BASOスキャッタグラム上で分類された好塩基球のクラスターと好塩基球以外の白血球のクラスターの各粒子数の和を総白血球数としているため、有核赤血球が血液試料に含まれる場合には、第3分類・計数処理により取得された総白血球数に有核赤血球による誤差が含まれている。
【0079】
そのため、CPU301aが、本ステップにおいて、血液試料に有核赤血球が含まれていると判定した場合には、第3分類・計数処理により取得された総白血球数を補正することが必要となる。
【0080】
また、有核赤血球が含まれる血液試料を測定した場合には、上述のようにして求められた白血球の5分類の結果に有核赤血球による誤差が含まれることがある。例えば、図11に示すように、DIFFスキャッタグラム上において、有核赤血球がリンパ球の分布領域の左下に出現するような血液試料の場合には、上述の第2分類処理の結果、有核赤血球は、リンパ球のクラスターC1として分類される。また、図12に示すように、DIFFスキャッタグラム上において、有核赤血球が好中球の分布領域の左下に出現するような血液試料の場合には、有核赤血球は、好中球のクラスターC2として分類される。また、図示しないが、有核赤血球は、赤血球ゴーストのクラスターとして分類されることもある。
【0081】
そのため、CPU301aが、本ステップにおいて、血液試料に有核赤血球が含まれていると判定した場合には、白血球の5分類(図10参照)により取得されたリンパ球数または好中球数を補正することが必要になる場合がある。
【0082】
そこで、データ処理部3のCPU301aは、本ステップにおいて、血液試料に有核赤血球が含まれていると判定した場合には、後述するステップS3−5における選択処理を実行する。また、データ処理部3のCPU301aは、本ステップにおいて、血液試料に有核赤血球が含まれていないと判定した場合には、白血球の5分類により取得した分類結果、および第3分類・計数処理により取得した総白血球数をディスプレイ302に出力(表示)する(ステップS3−7)。この場合には、白血球の5分類により取得された分類結果および総白血球数は補正されずに表示される。
【0083】
[選択処理]
図13は、データ処理部3のCPU301aによる選択処理の手順を示している。この選択処理においては、CPU301aは、有核赤血球数を減算する補正(NRBC補正)を行う対象のクラスターを、DIFFスキャッタグラム上のリンパ球のクラスターおよび好中球のクラスターから選択する(ステップS3−5)。以下、この選択処理について詳細に説明する。
【0084】
本実施形態では、図14に示すように、DIFFスキャッタグラム上における特定の領域(斜線部)が有核赤血球(NRBC)検出エリアとして予め設定されている。このNRBC検出エリアは、有核赤血球が含まれる血液試料を測定した場合に、DIFFスキャッタグラム上において有核赤血球が多く出現するエリアである。したがって、このNRBC検出エリアに出現する粒子のクラスターには、有核赤血球が含まれていると考えることができる。このことから、本実施形態の選択処理では、CPU301aは、まず、リンパ球のクラスター、好中球のクラスター、及び赤血球ゴーストのクラスターのうちのいずれのクラスターの粒子がNRBC検出エリアに最も多く出現したかを判定する(ステップS51)。以下、NRBC検出エリアに最も多く粒子が出現したクラスターを「補正候補クラスター」という。
【0085】
ステップS51において、補正候補クラスターがリンパ球のクラスターである場合には、CPU301aは、リンパ球のクラスターをNRBC補正の対象のクラスターに選択し(ステップS52)、処理をリターンする。
【0086】
一方、ステップS51において、補正候補クラスターが好中球のクラスターである場合には、CPU301aは、NRBC検出エリアにおける好中球のクラスターの粒子数NAREAが所定数(T1)を超えているか、かつ、第1分類・計数処理で取得した有核赤血球数NRが所定数(T2)を超えているか、すなわち、次の式(1)および式(2)の両方が成立しているか否かを判定する(ステップS53)。
NAREA≧T1・・・(1)
NR≧T2・・・(2)
【0087】
CPU301aは、上記の式(1)および式(2)の両方が成立していると判定すると、好中球のクラスターをNRBC補正の対象のクラスターに選択し(ステップS54)、処理をリターンする。CPU301aは、上記の式(1)および式(2)の少なくとも一方が成立していないと判定すると、リンパ球のクラスターをNRBC補正の対象のクラスターに選択し(ステップS52)、処理をリターンする。
【0088】
また、ステップS51において、補正候補クラスターが赤血球ゴーストのクラスターである場合には、CPU301aは、NRBC検出エリアにおける赤血球ゴーストのクラスターの粒子数GAREAが所定数(T3)を超えているか、かつ、第1分類・計数処理で取得した有核赤血球数NRが所定数(T2)を超えているか、すなわち、次の式(3)および式(4)の両方が成立しているか否かを判定する(ステップS55)。
GAREA≧T3・・・(3)
NR≧T2・・・(4)
【0089】
CPU301aは、上記の式(3)および式(4)の両方が成立していると判定すると、NRBC補正の対象のクラスターにいずれのクラスターも選択せず、処理をリターンする。CPU301aは、上記の式(3)および式(4)の少なくとも一方が成立していないと判定すると、リンパ球のクラスターをNRBC補正の対象のクラスターに選択し(ステップS52)、処理をリターンする。
【0090】
[補正処理]
次に、データ処理部3のCPU301aは、第3分類・計数処理により取得した総白血球数、および上記選択処理によって補正対象として選択されたクラスターの粒子数を補正する(NRBC補正)(ステップS3−6)。図15は、補正処理の手順を示すフローチャートである。この図15を参照して補正処理について詳細に説明する。まず、CPU301aは、第3分類・計数処理により取得した総白血球数WALLから第1分類・計数処理(NRBC分類・計数処理)により取得された有核赤血球数NRを減算する(ステップS61)。次に、CPU301aは、補正対象のクラスターにいずれのクラスターが選択されたか、またはどのクラスターも補正対象のクラスターに選択されていないかを判定する(ステップS62)。ステップS62において、補正対象のクラスターがリンパ球のクラスターである場合、CPU301aは、白血球の5分類(図10参照)により取得されたリンパ球数(リンパ球のクラスターに含まれる全粒子数)LALLから、NRBC分類・計数処理により取得された有核赤血球数NRを減算し(ステップS63)、処理をリターンする。一方、ステップS62において、補正対象のクラスターが好中球のクラスターである場合には、CPU301aは、白血球の5分類により取得された好中球数NALLから、NRBC分類・計数処理により取得された有核赤血球数NRを減算し(ステップS64)、処理をリターンする。また、ステップS62において、補正対象のクラスターがない場合には、CPU301aは、そのまま処理をリターンする。
【0091】
[出力処理]
データ処理部3のCPU301aは、上述のようにして得られた分析結果をディスプレイ302に出力(表示)する(ステップS3−7)。具体的に説明すると、この出力処理では、図16に示すように、総白血球(WBC)の計数結果、5種類の白血球(NEUT、LYMPH、MONO、EO、BASO)の計数結果、及び有核赤血球(NRBC)の計数結果と、WBC/BASOスキャッタグラムと、DIFFスキャッタグラムと、NRBCスキャッタグラムとが表示される。例えば、上記補正処理によって、リンパ球のクラスターの粒子数および総白血球数が補正された場合には、図16に示すように、LYMPH(リンパ球数)およびWBC(総白血球数)の表示位置に、補正を実施したことを示す&マークが付される。これにより、ユーザは、リンパ球のクラスターの粒子数および総白血球数が有核赤血球数に基づいて補正されたことを知ることができる。上記補正処理によって、好中球のクラスターの粒子数および総白血球数が補正された場合には、NEUT(好中球)およびWBCの表示位置に&マークが付される。これにより、ユーザは、好中球のクラスターの粒子数および総白血球数が有核赤血球数に基づいて補正されたことを知ることができる。なお、上記選択処理によって補正の対象となるクラスターが選択されず、総白血球数のみを有核赤血球数に基づいて補正した場合には、WBCの表示位置のみに&マークが付される。
【0092】
以上のように、本実施形態の血液分析装置1によれば、特定の種類の粒子(有核赤血球)が、当該特定の種類の粒子とは異なる複数の種類の粒子(好中球、リンパ球)のいずれかのクラスターに含まれた場合であっても、この特定の種類の粒子を含んだクラスターを補正対象として選択し、この補正対象のクラスターの粒子数を補正するので、精度良く白血球を分類・計数することができる。
【0093】
なお、本実施形態では、NRBC検出エリアに最も多く粒子が出現するクラスターの粒子数から有核赤血球数を減算するNRBC補正を行っているが、本発明の実施形態はこれに限られない。血液試料によっては、有核赤血球が、DIFFスキャッタグラム上の複数のクラスターに分割して含まれる場合が考えられる。例えば、図17に示すスキャッタグラムのように、リンパ球として分類されたクラスターC1に有核赤血球の一部が含まれ、好中球として分類されたクラスターC2に有核赤血球の他の一部が含まれている場合が考えられる。このような場合には、各クラスターC1,C2の補正の度合いを求め、その度合いに応じて、各クラスターC1,C2の粒子数に対してNRBC補正を行ってもよい。図18は、変形例の補正処理の手順を示すフローチャートである。この変形例では、図9で示すステップS4−5の選択処理において、CPU301aが、リンパ球のクラスターの補正の度合いと、好中球のクラスターの補正の度合いとをそれぞれ決定する。具体的には、CPU301aは、上述したようなNRBC検出エリアに出現した粒子数のうち、リンパ球のクラスターに含まれる粒子数の比率Lratioと、好中球のクラスターに含まれる粒子数の比率Nratioとを算出する。そして、補正処理S4−6において、CPU301aは、まず、第3分類・計数処理で取得した総白血球数WALLからNRBC分類・計数処理で取得した有核赤血球数NRを減算する(ステップS611)。次に、CPU301aは、有核赤血球数NRにリンパ球の粒子数の比率Lratioを乗じてリンパ球数補正値Lcomを算出し、有核赤血球数NRに好中球の粒子数の比率Nratioを乗じて好中球数補正値Ncomを算出する(ステップS612)。次に、CPU301aは、白血球の5分類(図10参照)により取得されたリンパ球数LALLからリンパ球数補正値Lcomを減算し、白血球の5分類により取得された好中球数NALLから好中球数補正値Ncomを減算し(ステップS613)、処理をリターンする。以上の処理により、有核赤血球が、DIFFスキャッタグラム上の複数のクラスターに分割して含まれている場合にも、各クラスターの粒子数をクラスター毎に定められた補正の度合いに応じて補正することができる。
【0094】
また、本実施形態では、測定部2の分布図作成部64によってスキャッタグラムが作成されているが、データ処理部3のCPU301aによってスキャッタグラムが作成されてもよい。
【0095】
また、本実施形態では、データ処理部3において、粒子の分類・計数処理、有核赤血球の存否の判定処理、補正対象のクラスターの選択処理、および選択された補正対象のクラスターの粒子数の補正処理が実行されているが、これらの処理を測定部2において実行し、得られた分析結果をデータ処理部3が受信してディスプレイ302に出力してもよい。
【0096】
また、本実施形態では、白血球検出部により検出された血球の特徴パラメータを用いてスキャッタグラムを作成し、作成されたスキャッタグラムに基づいて有核赤血球の分類・計数処理および白血球の分類・計数処理を実行しているが、スキャッタグラムを作成せずに有核赤血球の分類・計数処理および白血球の分類・計数処理を実行してもよい。
【0097】
また、本実施形態では、有核赤血球が赤血球ゴーストのクラスターに含まれている場合には、赤血球ゴーストのクラスターの粒子数から有核赤血球数を減算する補正を行っていないが、この場合、赤血球ゴーストのクラスターの粒子数から有核赤血球数を減算する補正を行ってもよい。
【0098】
また、本実施形態では、有核赤血球が含まれる血液試料を測定した場合に、スキャッタグラム上のリンパ球または好中球のクラスターから有核赤血球が含まれるクラスターを選択し、選択されたクラスターの粒子数から有核赤血球数を減算する補正を行っているが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、白血球の分類・計数結果に影響を与える幼若球が含まれる血液試料を測定した場合に、スキャッタグラム上の白血球の複数のクラスターから幼若球が含まれるクラスターを選択し、選択されたクラスターの粒子数から幼若球数を減算する補正を行う等、試料に含まれる複数の粒子のうちから補正対象となる粒子を選択し、その粒子の粒子数を他の種類の粒子の粒子数を用いて補正することが望まれる試料の測定において、本発明を適用することができる。
【0099】
また、本実施形態では、血球から発せられる蛍光強度を検出し、血球の特徴パラメータの1つとして用いているが、蛍光強度の代わりに吸収光の強度を検出し、これを血球の特徴パラメータとして用いてもよい。
【0100】
また、本実施形態では、測定試料に光を照射して血球の特徴パラメータを取得する光学式の測定を行っているが、本発明はこれに限られず、例えば、試料が流される微細孔に直流電流を流し、血球がその微細孔を通過する際に生じる電気抵抗の変化に基づく信号を血球の特徴パラメータとして取得してもよい。また、高周波電流を微細孔に流しておき、血球がその微細孔を通過する際に生じる血球の誘電率の変化に基づく信号を血球の特徴パラメータとして取得してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】血液分析装置を示す斜視図である。
【図2】測定部の機能ブロック図である。
【図3】検出部の構成図である。
【図4】NRBC測定、DIFF測定およびWBC/BASO測定の流れを示す図である。
【図5】NRBCスキャッタグラムである。
【図6】4DIFFスキャッタグラムである。
【図7】WBC/BASOスキャッタグラムである。
【図8】データ処理部の機能ブロック図である。
【図9】測定部およびデータ処理部による処理のフローチャートである。
【図10】分類・計数処理の処理手順の詳細を示すフローチャートである。
【図11】4DIFFスキャッタグラム上で、有核赤血球がリンパ球として分類されたことを示す説明図である。
【図12】4DIFFスキャッタグラム上で、有核赤血球が好中球として分類されたことを示す説明図である。
【図13】データ処理部における選択処理のフローチャートである。
【図14】スキャッタグラム上で、粒子数を補正する粒子集団を選択するための説明図である。
【図15】データ処理部における補正処理のフローチャートである。
【図16】分類結果を表示する表示画面である。
【図17】4DIFFスキャッタグラム上で、有核赤血球の一部がリンパ球として、有核赤血球の他の一部が好中球として分類されたことを示す説明図である。
【図18】変形例の補正処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0102】
1 血液分析装置
2 測定部
3 データ処理部
301a CPU
301b ROM
301c RAM
301d ハードディスク
301e 読取装置
301f 入出力インタフェース
301h 画像出力インタフェース
301i バス
302 ディスプレイ
4 検出部
6 マイクロコンピュータ部
63 制御部
64 分布図作成部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子を含む試料から得られる測定試料を測定し、試料に含まれる粒子の複数の特徴情報を取得する特徴情報取得手段と、
前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、試料に含まれる特定の種類の粒子の粒子数、および前記特定の種類とは異なる複数種類の粒子の各粒子数を取得する粒子数取得手段と、
前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、前記粒子数取得手段により粒子数が取得された前記複数種類の粒子のうち、粒子数を補正する対象粒子を選択する選択手段と、
前記粒子数取得手段により取得された前記特定の種類の粒子の粒子数を用いて、前記選択手段により選択された対象粒子の粒子数を補正する補正手段と、を備える粒子分析装置。
【請求項2】
前記粒子数取得手段は、
前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づき、試料に含まれる前記特定の種類の粒子の粒子数を取得する第1粒子数取得手段と、
前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づき、試料に含まれる前記複数種類の粒子の各粒子数を取得する第2粒子数取得手段とを備える請求項1記載の粒子分析装置。
【請求項3】
前記特徴情報取得手段は、試料と第1試薬とから調製される第1測定試料を測定することにより、試料に含まれる粒子の第1特徴情報を取得し、かつ、試料と前記第1試薬とは異なる第2試薬とから調製される第2測定試料を測定することにより、試料に含まれる粒子の第2特徴情報を取得し、
前記第1粒子数取得手段は、前記第1特徴情報に基づいて、前記特定の種類の粒子の粒子数を取得し、
前記第2粒子数取得手段は、前記第2特徴情報に基づいて、前記複数種類の粒子の各粒子数を取得する請求項2記載の粒子分析装置。
【請求項4】
前記特徴情報取得手段により取得された前記第1特徴情報を用いて、試料に含まれる粒子から前記特定の種類の粒子の粒子集団を分類するための第1粒子分布図を作成し、かつ、前記特徴情報取得手段により取得された前記第2特徴情報を用いて、試料に含まれる粒子を前記複数種類の粒子の各粒子集団に分類するための第2粒子分布図を作成する分布図作成手段をさらに備え、
前記選択手段は、前記第2粒子分布図における所定の領域に出現する粒子に基づいて、前記対象粒子を選択する請求項3記載の粒子分析装置。
【請求項5】
前記所定の領域とは、前記第2粒子分布図において前記特定の種類の粒子が出現する領域である請求項4記載の粒子分析装置。
【請求項6】
前記選択手段は、前記所定の領域に出現する前記複数種類の粒子の各粒子数に基づいて、前記対象粒子を選択する請求項4又は5に記載の粒子分析装置。
【請求項7】
前記補正手段は、前記粒子数取得手段により求められた前記対象粒子の粒子数から前記特定の種類の粒子の粒子数を減算することにより、前記対象粒子の粒子数を補正する請求項1〜6のいずれか1項に記載の粒子分析装置。
【請求項8】
前記特定の種類の粒子は、有核赤血球であり、前記複数種類の粒子は、リンパ球および好中球を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の粒子分析装置。
【請求項9】
前記複数の特徴情報は、前記測定試料に光を照射して得られる光学情報である請求項1〜8のいずれか1項に記載の粒子分析装置。
【請求項10】
前記複数の特徴情報は、前方散乱光強度、側方散乱光強度および側方蛍光強度に基づく情報である請求項9記載の粒子分析装置。
【請求項11】
前記試料中に前記特定の種類の粒子が存在するか否かを判定する判定手段をさらに備え、
前記判定手段により前記試料中に前記特定の種類の粒子が存在すると判定された場合には、前記補正手段は、前記選択手段により選択された対象粒子の粒子数を補正し、
前記判定手段により前記試料中に前記特定の種類の粒子が存在しないと判定された場合には、前記補正手段は前記複数種類の粒子の粒子数を補正しない、請求項1〜10のいずれか1項に記載の粒子分析装置。
【請求項12】
分析結果を出力するための出力部と、
前記補正手段により前記対象粒子の粒子数が補正された場合には、前記補正手段により補正された粒子数を出力部に出力させる出力制御手段と、を備える請求項11記載の粒子分析装置。
【請求項13】
前記出力制御手段は、前記補正手段により前記対象粒子の粒子数が補正された場合には、前記補正手段により補正された粒子数と、この粒子数が補正されたものであることを示す情報とを前記出力部に出力させる請求項12記載の粒子分析装置。
【請求項14】
粒子を含む試料から得られる測定試料を測定し、試料に含まれる粒子の複数の特徴情報を取得する特徴情報取得手段と、
前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、特定の種類の粒子の粒子数、および前記特定の種類とは異なる複数種類の粒子の各粒子数を取得する粒子数取得手段と、
前記粒子数取得手段により取得された前記複数種類の粒子の各粒子数を補正するための補正の度合いを決定する決定手段と、
前記粒子数取得手段により取得された前記特定の種類の粒子の粒子数および前記決定手段により決定された補正の度合いに基づき、前記粒子数取得手段により取得された前記複数種類の粒子の各粒子数を補正する補正手段と、を備える粒子分析装置。
【請求項15】
前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報を用いて、試料に含まれる粒子を前記複数種類の粒子の各粒子集団に分類するための粒子分布図を作成する分布図作成手段をさらに備え、
前記決定手段は、前記分布図作成手段により作成された粒子分布図の所定の領域に出現する粒子に基づいて、前記補正の度合いを決定する請求項14記載の粒子分析装置。
【請求項16】
前記決定手段は、前記所定の領域に出現する前記複数種類の粒子の粒子数の比率を算出し、
前記補正手段は、前記粒子数取得手段により取得された前記特定の種類の粒子の粒子数を、前記決定手段により算出された比率に応じて、前記粒子数取得手段により取得された前記複数種類の粒子の各粒子数から減算する、請求項15記載の粒子分析装置。
【請求項17】
(a)粒子を含む試料から得られる測定試料を測定し、試料に含まれる粒子の複数の特徴情報を取得するステップと、
(b)ステップ(a)により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、試料に含まれる特定の種類の粒子の粒子数、および前記特定の種類とは異なる複数種類の粒子の各粒子数を取得するステップと、
(c)ステップ(a)により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、ステップ(b)により粒子数が取得された前記複数種類の粒子のうち、粒子数を補正する対象粒子を選択するステップと、
(d)ステップ(b)により取得された前記特定の種類の粒子の粒子数を用いて、ステップ(c)により選択された対象粒子の粒子数を補正するステップと、を備える粒子分析方法。
【請求項18】
粒子を含む試料から得られる測定試料を測定し、試料に含まれる粒子の複数の特徴情報を取得する測定装置に接続されたコンピュータを、
前記測定装置により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、試料に含まれる特定の種類の粒子の粒子数、および前記特定の種類とは異なる複数種類の粒子の各粒子数を取得する粒子数取得手段と、
前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、前記粒子数取得手段により粒子数が取得された前記複数種類の粒子のうち、粒子数を補正する対象粒子を選択する選択手段と、
前記粒子数取得手段により取得された前記特定の種類の粒子の粒子数を用いて、前記選択手段により選択された対象粒子の粒子数を補正する補正手段として機能させるためのコンピュータプログラム。
【請求項1】
粒子を含む試料から得られる測定試料を測定し、試料に含まれる粒子の複数の特徴情報を取得する特徴情報取得手段と、
前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、試料に含まれる特定の種類の粒子の粒子数、および前記特定の種類とは異なる複数種類の粒子の各粒子数を取得する粒子数取得手段と、
前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、前記粒子数取得手段により粒子数が取得された前記複数種類の粒子のうち、粒子数を補正する対象粒子を選択する選択手段と、
前記粒子数取得手段により取得された前記特定の種類の粒子の粒子数を用いて、前記選択手段により選択された対象粒子の粒子数を補正する補正手段と、を備える粒子分析装置。
【請求項2】
前記粒子数取得手段は、
前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づき、試料に含まれる前記特定の種類の粒子の粒子数を取得する第1粒子数取得手段と、
前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づき、試料に含まれる前記複数種類の粒子の各粒子数を取得する第2粒子数取得手段とを備える請求項1記載の粒子分析装置。
【請求項3】
前記特徴情報取得手段は、試料と第1試薬とから調製される第1測定試料を測定することにより、試料に含まれる粒子の第1特徴情報を取得し、かつ、試料と前記第1試薬とは異なる第2試薬とから調製される第2測定試料を測定することにより、試料に含まれる粒子の第2特徴情報を取得し、
前記第1粒子数取得手段は、前記第1特徴情報に基づいて、前記特定の種類の粒子の粒子数を取得し、
前記第2粒子数取得手段は、前記第2特徴情報に基づいて、前記複数種類の粒子の各粒子数を取得する請求項2記載の粒子分析装置。
【請求項4】
前記特徴情報取得手段により取得された前記第1特徴情報を用いて、試料に含まれる粒子から前記特定の種類の粒子の粒子集団を分類するための第1粒子分布図を作成し、かつ、前記特徴情報取得手段により取得された前記第2特徴情報を用いて、試料に含まれる粒子を前記複数種類の粒子の各粒子集団に分類するための第2粒子分布図を作成する分布図作成手段をさらに備え、
前記選択手段は、前記第2粒子分布図における所定の領域に出現する粒子に基づいて、前記対象粒子を選択する請求項3記載の粒子分析装置。
【請求項5】
前記所定の領域とは、前記第2粒子分布図において前記特定の種類の粒子が出現する領域である請求項4記載の粒子分析装置。
【請求項6】
前記選択手段は、前記所定の領域に出現する前記複数種類の粒子の各粒子数に基づいて、前記対象粒子を選択する請求項4又は5に記載の粒子分析装置。
【請求項7】
前記補正手段は、前記粒子数取得手段により求められた前記対象粒子の粒子数から前記特定の種類の粒子の粒子数を減算することにより、前記対象粒子の粒子数を補正する請求項1〜6のいずれか1項に記載の粒子分析装置。
【請求項8】
前記特定の種類の粒子は、有核赤血球であり、前記複数種類の粒子は、リンパ球および好中球を含む請求項1〜7のいずれか1項に記載の粒子分析装置。
【請求項9】
前記複数の特徴情報は、前記測定試料に光を照射して得られる光学情報である請求項1〜8のいずれか1項に記載の粒子分析装置。
【請求項10】
前記複数の特徴情報は、前方散乱光強度、側方散乱光強度および側方蛍光強度に基づく情報である請求項9記載の粒子分析装置。
【請求項11】
前記試料中に前記特定の種類の粒子が存在するか否かを判定する判定手段をさらに備え、
前記判定手段により前記試料中に前記特定の種類の粒子が存在すると判定された場合には、前記補正手段は、前記選択手段により選択された対象粒子の粒子数を補正し、
前記判定手段により前記試料中に前記特定の種類の粒子が存在しないと判定された場合には、前記補正手段は前記複数種類の粒子の粒子数を補正しない、請求項1〜10のいずれか1項に記載の粒子分析装置。
【請求項12】
分析結果を出力するための出力部と、
前記補正手段により前記対象粒子の粒子数が補正された場合には、前記補正手段により補正された粒子数を出力部に出力させる出力制御手段と、を備える請求項11記載の粒子分析装置。
【請求項13】
前記出力制御手段は、前記補正手段により前記対象粒子の粒子数が補正された場合には、前記補正手段により補正された粒子数と、この粒子数が補正されたものであることを示す情報とを前記出力部に出力させる請求項12記載の粒子分析装置。
【請求項14】
粒子を含む試料から得られる測定試料を測定し、試料に含まれる粒子の複数の特徴情報を取得する特徴情報取得手段と、
前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、特定の種類の粒子の粒子数、および前記特定の種類とは異なる複数種類の粒子の各粒子数を取得する粒子数取得手段と、
前記粒子数取得手段により取得された前記複数種類の粒子の各粒子数を補正するための補正の度合いを決定する決定手段と、
前記粒子数取得手段により取得された前記特定の種類の粒子の粒子数および前記決定手段により決定された補正の度合いに基づき、前記粒子数取得手段により取得された前記複数種類の粒子の各粒子数を補正する補正手段と、を備える粒子分析装置。
【請求項15】
前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報を用いて、試料に含まれる粒子を前記複数種類の粒子の各粒子集団に分類するための粒子分布図を作成する分布図作成手段をさらに備え、
前記決定手段は、前記分布図作成手段により作成された粒子分布図の所定の領域に出現する粒子に基づいて、前記補正の度合いを決定する請求項14記載の粒子分析装置。
【請求項16】
前記決定手段は、前記所定の領域に出現する前記複数種類の粒子の粒子数の比率を算出し、
前記補正手段は、前記粒子数取得手段により取得された前記特定の種類の粒子の粒子数を、前記決定手段により算出された比率に応じて、前記粒子数取得手段により取得された前記複数種類の粒子の各粒子数から減算する、請求項15記載の粒子分析装置。
【請求項17】
(a)粒子を含む試料から得られる測定試料を測定し、試料に含まれる粒子の複数の特徴情報を取得するステップと、
(b)ステップ(a)により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、試料に含まれる特定の種類の粒子の粒子数、および前記特定の種類とは異なる複数種類の粒子の各粒子数を取得するステップと、
(c)ステップ(a)により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、ステップ(b)により粒子数が取得された前記複数種類の粒子のうち、粒子数を補正する対象粒子を選択するステップと、
(d)ステップ(b)により取得された前記特定の種類の粒子の粒子数を用いて、ステップ(c)により選択された対象粒子の粒子数を補正するステップと、を備える粒子分析方法。
【請求項18】
粒子を含む試料から得られる測定試料を測定し、試料に含まれる粒子の複数の特徴情報を取得する測定装置に接続されたコンピュータを、
前記測定装置により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、試料に含まれる特定の種類の粒子の粒子数、および前記特定の種類とは異なる複数種類の粒子の各粒子数を取得する粒子数取得手段と、
前記特徴情報取得手段により取得された前記複数の特徴情報に基づいて、前記粒子数取得手段により粒子数が取得された前記複数種類の粒子のうち、粒子数を補正する対象粒子を選択する選択手段と、
前記粒子数取得手段により取得された前記特定の種類の粒子の粒子数を用いて、前記選択手段により選択された対象粒子の粒子数を補正する補正手段として機能させるためのコンピュータプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−190878(P2008−190878A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−22439(P2007−22439)
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月31日(2007.1.31)
【出願人】(390014960)シスメックス株式会社 (810)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]