説明

粒子状ポリマーの製造方法および粒子状ポリマーの造粒装置

【課題】均一な大きさのペレット等の粒子状のポリマーの製造方法を提供する。
【解決手段】溶融ポリマーを複数の孔を有するダイヘッド11を通してストランドにし、切断して粒子状ポリマーを製造する際に、溶融ポリマーを水平方向からダイヘッド11に供給し、ダイヘッド11下部より押出し、ダイヘッド11の出口温度の最高値と最低値との差を5℃の温度範囲内に制御する。溶融ポリマーは、例えば、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応により溶融重縮合して得られるポリカーボネート等が適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状ポリマーの製造方法等に関し、詳しくは、均一な大きさの粒子状のポリマーを製造することができる粒子状ポリマーの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート等の樹脂ポリマーは、その製造装置において重合反応等が行われ、押出機にて添加剤等が添加された後、ダイヘッドによりストランド状に押し出され、冷却後、カッター等によりペレット形状等の粒子状ポリマーに成形されて、製品となるのが通常である。
【0003】
ここで、最終的な製品であるペレットの大きさが不均一であると、再びそのポリマーを可塑化し、所定の形状に成形加工する場合に、ペレットの長さや径の分布の均一性が流動性や可塑化時間に大きく影響する。つまり、ペレットの長さや径の分布が均一であるほどペレットの供給速度が安定し、可塑化時間を均一化できる。
そこで、ペレットの長さや径の分布はできるだけ均一であることが好ましく、精度としては、ペレットの形状が円柱形状であった場合は、ペレットの平均長さ±0.1mm以内であり、かつ真円換算平均直径±0.1mm以内であるものが85%以上であることが求められている。
【0004】
この問題を解決する方法として、例えば、溶融押出し温度等が重要であることが指摘されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−114486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の溶融押出し温度を単に管理するだけではペレットの長さや径の分布は十分に均一にならず、上記の精度を達成できないという問題があった。
【0007】
本発明は、従来の技術が有する上記の問題点に鑑みてなされたものである。
即ち、本発明の目的は、均一な大きさのペレット形状等の粒子状ポリマーを製造することができる粒子状ポリマーの製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、均一な大きさのペレット形状等の粒子状ポリマーを製造することができる造粒装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者らは鋭意検討を行った結果、溶融ポリマーを複数の孔を通してストランドにする際に、出口温度を所定の温度範囲内に制御することにより均一な大きさの粒子状ポリマーが製造できることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成した。
【0009】
かくして本発明によれば、溶融ポリマーを複数の孔を有するダイヘッドを通してストランドを得、ストランドを切断して粒子状のポリマーを製造する粒子状ポリマーの製造方法であって、溶融ポリマーを水平方向からダイヘッドに供給し、ダイヘッド下部より押出し、溶融ポリマーのダイヘッドにおける出口温度の最高値と最低値との差を5℃以内に制御することを特徴とする粒子状ポリマーの製造方法が提供される。
【0010】
ここで、ストランドの引き取り速度が、50m/min〜250m/minであることが更に好ましい。
また、溶融ポリマーは、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応により溶融重縮合して得られるポリカーボネートであることが好ましい。
さらにダイヘッドにおける出口温度が250℃〜370℃であることが好ましい。
【0011】
更に本発明によれば、溶融ポリマーを複数の孔を有するダイヘッドを通して得られたストランドをカットする粒子状ポリマーの造粒装置であって、ダイヘッド周囲に設置され、ダイヘッドを加熱する加熱器と、ダイヘッドの出口部における溶融ポリマーの温度を測定する複数の温度測定器と、温度測定器により測定された溶融ポリマーの温度により加熱器を制御する制御部とを有し、溶融ポリマーは、水平方向からダイヘッドに供給され、ダイヘッド下部より押出され、制御部は、溶融ポリマーのダイヘッドにおける出口温度の最高値と最低値との差を5℃以内に制御することを特徴とする粒子状ポリマーの造粒装置が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、溶融ポリマーのストランドから均一な大きさの粒子状ポリマーを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施の形態が適用される造粒装置を構成するダイヘッドを説明する斜視図である。
【図2】ダイヘッドを図1のAで示した方向から眺めた背面図である。
【図3】ダイヘッドプレートの構造を説明する図である。
【図4】本実施の形態が適用される造粒装置を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、発明の実施の形態)について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0015】
ここでは、ポリマーの例として、ポリカーボネートを使用して、本実施の形態を説明するものとする。
【0016】
ポリカーボネートは、耐衝撃性等の機械的特性に優れ、しかも耐熱性、透明性等にも優れたエンジニアリングプラスチックスであるので、近年OA部品、自動車部品、建築材料等に幅広く用いられている。
【0017】
このポリカーボネートの製造方法としては、ビスフェノール化合物等の芳香族ジオールとホスゲンとを原料とした、いわゆる界面法と、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを溶融状態でエステル交換し、副生するフェノール等の低分子量物を系外に取り除きながら芳香族ポリカーボネートを得る、いわゆる溶融法が知られている。
【0018】
ここで、溶融法によりポリカーボネートを製造する場合は、芳香族ジヒドロキシ化合物として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通常、「ビスフェノールA」と呼ばれる。)等が、また炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネート等が、またエステル交換触媒として、炭酸セシウムなどのアルカリ金属化合物等が使用され、これらを混合、溶融し、複数の反応器を用いて多段階方式で重縮合反応させる(重縮合工程)ことによって製造が行われる。
【0019】
重縮合反応後は、押出機などの混練機で各種添加剤がそれぞれ供給され、次いでダイヘッドより排出されたストランド状のポリカーボネートは冷却水により冷却された後にカットされ、ペレット化される。
ポリマーのストランド化の条件としては、例えば、ダイ孔部から排出される溶融ポリマーの流量は、せん断速度で100〜1000s−1であり、樹脂温度は、溶融粘度が200〜2000Pa・sの範囲になるように通常250〜370℃の範囲で設定される。そして、このとき本実施の形態が適用される造粒装置が使用される。
最後に脱水機にて水分除去した後に貯蔵容器である貯槽サイロに導入される。
【0020】
次に、本実施の形態が適用される粒子状ポリマーの製造方法および造粒装置について詳述する。
図1は、本実施の形態が適用される造粒装置を構成するダイヘッドを説明する斜視図である。
また図2は、ダイヘッドを図1のAで示した方向から眺めた背面図である。
図1は、溶融したポリマーが供給されるダイヘッド11、溶融したポリマーをストランド状に押出すダイヘッドプレート13、ダイヘッド11から排出される溶融ポリマーの温度を測定する温度測定器である熱電対14a,14b,14c、ダイヘッド11の周囲に配置されダイヘッド11を加熱するプレート状の加熱器15a,15b,15c,16a,16b,17a,17b,17c、18a、18bから構成される。
なお、加熱器15a,15b,15cは、図1に示す通り、ダイヘッド11の前面に横並びで設置されており、また加熱器16a,16bは、図2に示す通りダイヘッド11の突起部12の側面にそれぞれ設置されている。また加熱器17a,17b,17cは、図2に示す通りダイヘッド11の背面に横並びで設置され、加熱器18a、18bは、図2に示す通りダイヘッドの両側面部に設置される。
【0021】
溶融したポリマーは、ダイヘッド11の突起部12にAで示した方向から供給され、ダイヘッドプレート13から押出される。
図3は、ダイヘッドプレート13の構造を説明する図である。
ダイヘッドプレート13は溶融したポリマーを排出する孔19が40個開けられており、この孔19を通してストランド状に加工され、引き取られる。
【0022】
ここで、図1において示した3つの熱電対14a,14b,14cはダイヘッドプレート13から排出される溶融ポリマーの異なる3点の出口温度を測定する。この場合、ダイヘッド11の前面から見てダイヘッド11のそれぞれ左部、中央部、右部の3点から排出される溶融ポリマーの温度を測定する。
3つの熱電対14a,14b,14cで測定された溶融ポリマーの温度のデータは図示しない制御部に送られ、制御部は、熱電対14a,14b,14cで測定された溶融ポリマーの温度の最高値と最低値の差が、5℃以内の範囲に収まるように、10ヶ所の加熱器15a,15b,15c,16a,16b,17a,17b,17c、18a、18bを独立して制御する。
即ち、ダイヘッドを複数の区画に分割し、区画毎に独立して制御を行う。なお、測定された出口温度の最高値と最低値の差が、3℃以内の範囲に収まるようにすれば更に好ましい。また、ダイヘッド11の両端部は放熱が大きいため、上記温度範囲内で他の部分より高めの温度で制御してもよい。
また、制御部を特に設けず、手動で温度制御をすることも可能である。
【0023】
図1におけるダイヘッド11から押出されたポリマーは、冷却されつつ引き取られ、カッターにより切断され、粒子状ポリマーとなる。
図4は、本実施の形態が適用される造粒装置を説明する図である。
図4において、ダイヘッド11より押出されたストランドは、ストランド冷却装置20に送られ、そこで冷却水により冷却される。
その後、カッター30により切断されるが、その際の引き取り速度は、50m/min〜250m/minが好ましい。
【0024】
このような構成のダイヘッド11を有する造粒装置を用いることにより、均一な大きさの粒子状のポリマーを製造することが可能となる。即ち、溶融したポリマーの出口温度のばらつきが小さくなることにより、ダイヘッドプレート13の孔19から引き取られる各ストランドの引き取り速度のばらつきが小さくなる。その結果、粒子状ポリマーの形状が均一化する。
【0025】
なお、溶融したポリマーは、上記の例では、ポリカーボネートを使用したが、上記のようなダイヘッドを用いてストランドを得、それを切断することにより粒子状のポリマーを製造する工程を有するものであれば特に限定されることはない。例えば、ポリエチレンテレフタレートやナイロンなどが挙げられる。
また、粒子状ポリマーは、上述の例ではペレットであり円柱形状であったが、形状について特に限定されることはなく、ストランド状のポリマーをカッターにより切断することにより実現できる形状であれば何でもよく、例えば、切断面が円形や楕円形状であるもの、四角形状であるものなどが挙げられる。
また、粒子状ポリマーの大きさは、特に限定されるものではないが、粒子状ポリマーが円柱形状のペレットであった場合は、長さが10mm以下に加工されたものが好ましい。
押出機で押出すポリマーの溶融粘度については、特に制限はないが、200〜2000Pa・Sであることが好ましい。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明は、その要旨を越えない限りこれらの実施例により限定されるものではない。
【0027】
(実施例1)
ポリマーとしてポリカーボネートを使用し、熱電対の配置以外は、図1に示したようなダイヘッドを有する造粒装置を使用して、重合完了後のポリカーボネート(粘度平均分子量(Mv)=26000)を、大きさが500mm×120mmで、孔径φ7mm、孔数40個のダイヘッドプレートよりストランド状に押出しながら水冷されたストランド冷却シュート(ストランド冷却装置)に落下させた。このときの引き取り速度は150m/minであった。
また、このときの出口部における溶融ポリマーの温度は、熱電対を均等な間隔でダイヘッド上部に横並びに5箇所設置して測定を行った。
出口温度の制御は、所定の中心温度を設定し、この範囲より低くなりすぎた場合は、その熱電対周辺の加熱器の加熱強度を強くし、また高くなりすぎた場合は、その熱電対周辺の加熱器の加熱強度を弱くすることにより行った。
その結果、測定された出口温度は、ダイヘッドの前面左端から順に350℃、352℃、353℃、352℃、350℃であり、全て5℃以内の範囲に収まっていた。
ストランド状に引き取ったポリマーを、カッターでペレット状にカットしたところ、得られたペレットは、平均長さ3.0mmで、真円換算平均直径は2.9mmであった。そして、大きさがいずれかの平均値から0.1mmより乖離したペレットの比率は10%であった。
なお大きさの測定に使用したペレットの個数は1000個である。
【0028】
(比較例1)
ポリマーとしてポリカーボネートを使用し、熱電対の配置以外は、図1に示したようなダイヘッドを有する造粒装置を使用して、重合完了後のポリカーボネート(粘度平均分子量(Mv)=26000)を、大きさが500mm×120mmで、孔径φ7mm、孔数40個のダイヘッドプレートよりストランド状に押出しながら水冷されたストランド冷却シュート(ストランド冷却装置)に落下させた。このときの引き取り速度は150m/minであった。
また、このときの出口部における溶融ポリマーの温度は、熱電対を均等な間隔でダイヘッド上部に横並びに5箇所設置して測定を行った。
出口温度の制御は特に行わなかった。
その結果、測定された出口温度は、ダイヘッドの前面左端から順に345℃、349℃、352℃、348℃、344℃であり、5℃以内の範囲に収まっておらず、最低温度か
ら最高温度まで8℃の差があった。
ストランド状に引き取ったポリマーを、カッターでペレット状にカットしたところ、得られたペレットは、平均長さ3.1mmで、真円換算平均直径は2.85mmであった。そして、大きさがいずれかの平均値から0.1mmより乖離したペレットの比率は20%であった。
なお大きさの測定に使用したペレットの個数は1000個である。
【符号の説明】
【0029】
11…ダイヘッド、12…ダイヘッド11の突起部、13…ダイヘッドプレート、14a,14b,14c…熱電対、15a,15b,15c,16a,16b,17a,17b,17c,18a,18b…加熱器、19…孔、20…ストランド冷却装置、30…カッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融ポリマーを複数の孔を有するダイヘッドを通してストランドを得、当該ストランドを切断して粒子状のポリマーを製造する粒子状ポリマーの製造方法であって、
前記溶融ポリマーを水平方向から前記ダイヘッドに供給し、当該ダイヘッド下部より押出し、
前記溶融ポリマーの前記ダイヘッドにおける出口温度の最高値と最低値との差を5℃以内に制御することを特徴とする粒子状ポリマーの製造方法。
【請求項2】
前記ストランドの引き取り速度が、50m/min〜250m/minであることを特徴とする請求項1に記載の粒子状ポリマーの製造方法。
【請求項3】
前記溶融ポリマーは、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとのエステル交換反応により溶融重縮合して得られるポリカーボネートであることを特徴とする請求項1または2に記載の粒子状ポリマーの製造方法。
【請求項4】
前記ダイヘッドにおける出口温度が250℃〜370℃であることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の粒子状ポリマーの製造方法。
【請求項5】
溶融ポリマーを複数の孔を有するダイヘッドを通して得られたストランドをカットする粒子状ポリマーの造粒装置であって、
前記ダイヘッド周囲に設置され、当該ダイヘッドを加熱する加熱器と、
前記ダイヘッドの出口部における前記溶融ポリマーの温度を測定する複数の温度測定器と、
前記温度測定器により測定された前記溶融ポリマーの温度により前記加熱器を制御する制御部とを有し、
前記溶融ポリマーは、水平方向から前記ダイヘッドに供給され、当該ダイヘッド下部より押出され、
前記制御部は、前記溶融ポリマーの前記ダイヘッドにおける出口温度の最高値と最低値との差を5℃以内に制御することを特徴とする粒子状ポリマーの造粒装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−148579(P2012−148579A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−115038(P2012−115038)
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【分割の表示】特願2007−86877(P2007−86877)の分割
【原出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】