説明

粒子線治療システム

【課題】スポットスキャニング照射で治療精度を容易に向上できる粒子線治療システムを提供する。
【解決手段】粒子線治療システム100は、シンクロトロン200とビーム輸送系300と照射装置500から構成される。制御装置600は、照射装置500に荷電粒子ビームを供給する際には出射装置26に印加する高周波電力をONし、荷電粒子ビームの供給を遮断する際には出射装置26に印加する高周波電力をOFFした後に、シンクロトロン200に設置した電磁石の励磁量を変化させて安定限界を広げ荷電粒子ビームの出射を停止し、次に荷電粒子ビームの供給を再開する前に安定限界を狭め荷電粒子ビームの一部を出射し、該荷電粒子ビームをビーム輸送系300に設置した電磁石で遮断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度な治療照射が可能な粒子線治療システムに係り、特に、スポットスキャニング照射法を用いるのに好適な粒子線治療システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢化社会を反映し、がん治療法の一つとして、低侵襲で体に負担が少なく、治療後の生活の質が高く維持できる放射線治療が注目されている。その中でも、加速器で加速した陽子や炭素などの荷電粒子ビームを用いた粒子線治療システムが、患部への優れた線量集中性のため特に有望視されている。粒子線治療システムは、イオン源で発生したビームを光速近くまで加速するシンクロトロンなどの加速器と、加速器の出射ビームを輸送するビーム輸送系と、患部の位置や形状に合わせてビームを患者に照射する照射装置から構成される。
【0003】
ところで、粒子線治療システムの照射装置では、従来、患部の形状に合わせてビームを照射する際、散乱体でビーム径を拡大したのちコリメータで周辺部を削ってビームを整形していた。ところが、その方法ではビーム利用効率が悪く、不必要な中性子が発生し易いこと、また患部形状との一致度にも限界がある。そこで最近、より高精度な照射方法として、加速器からの細径ビームを電磁石で偏向し患部形状に合わせて走査するスキャニング照射法の市場ニーズが高まっている。
【0004】
スキャニング照射法では、3次元的な患部形状を深さ方向の複数の層に分割し、各層を更に2次元的に分割して複数の照射スポットを設定する。深さ方向には照射ビームのエネルギーを変更して各層を選択的に照射し、各層内では電磁石で照射ビームを2次元的に走査して各照射スポットに所定の線量を与える。照射スポット間を移動中に照射ビームを連続的にONし続ける方法をラスタースキャニングと称し、一方、移動中に照射ビームをOFFする方法をスポットスキャニングと称する。スポットスキャニング法については、例えば、特許文献1に開示されている。
【0005】
スポットスキャニング法ではビーム走査を停止した状態で各照射スポットに所定の線量を照射し、照射ビームをOFFしてから走査電磁石の励磁量を変更して次の照射スポットに移動する。したがって、スポットスキャニング法で高精度な治療照射を実現するためには、照射ビームの位置精度とともに高速ON/OFFが必須である。
【0006】
照射ビームの位置精度の観点から、シンクロトロンからのビーム出射法として、出射用高周波で周回ビームのサイズを増大させて、安定限界を超えた振幅の大きい粒子から出射するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。この方法では、シンクロトロンの出射関連機器の運転パラメータを出射中に一定に設定できるため、出射ビームの軌道安定度が高く、スポットスキャニング法に要求される照射ビームの高い位置精度を達成できる。
【0007】
しかし、各スポットの照射終了時に出射用高周波をOFFしても、ビームの出射が停止するまでには時間がかかるため、この遅延時間中の照射(遅延照射)が生じる。一般に、この遅延照射量は治療精度の観点で、スポットスキャニング法では極力低減すべきものである。そこで、出射用高周波のON/OFFに同期してシンクロトロンに設置した加速空胴の印加高周波電圧(高周波加速電圧)をON/OFFすることで、各スポットの照射線量満了時に出射用高周波をOFFすると同時に加速空胴の印加高周波電圧をOFFし、遅延照射量を低減する方法が特許文献3に開示されている。
【0008】
また、シンクロトロンからのビーム出射法として、シンクロトロンに設置した出射四極電磁石を高速でON/OFFして安定限界の大きさを制御し、安定限界の大きさを縮小することでビームを出射し、安定限界の大きさを広げることでビーム出射を停止する方法が特許文献4に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許3874766号公報
【特許文献2】特許2596292号公報
【特許文献3】特開2009−45170号公報
【特許文献4】特開2005−332794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献3に記載の方法では、出射用高周波のON/OFFに同期してシンクロトロンに設置した加速空胴の印加高周波電圧(高周波加速電圧)をON/OFFすることで、遅延照射量を低減している。しかし、シンクロトロン内でのビームの周回中に高周波加速電圧のON/OFFを長時間にわたり多数回繰り返すと、周回ビームの運動量分散が次第に増大して出射ビームの特性が時間的に変化し、出射ビームが不安定化しやすくなる。この出射ビームの不安定化は、照射ビームをさらに細径化してスキャニング照射による治療精度を向上するとともに線量率を改善する際の障害になり得る。これが従来技術の第1の課題である。
【0011】
この第1の課題の解決策として、特許文献4の技術を利用することが考えられる。すなわち、特許文献4に記載の方法では、出射四極電磁石を高速でON/OFFして安定限界の大きさを広げ、シンクロトロンからのビームの出射を停止しており、特許文献3に記載の方法において、加速空胴の印加高周波電圧(高周波加速電圧)をON/OFFする代わりに、出射装置以外の電磁石を高速でON/OFFし、出射用高周波のOFF時にその四極電磁石をONして安定限界の大きさを広げることでビーム出射を停止し、遅延照射量を低減することができる。この方法によれば、ビームの周回中は高周波加速電圧はONのままとすることができるため、出射ビームを安定化することができる。しかし、この方法には以下の課題がある。
【0012】
まず、ビーム遮断時に安定限界を広げた際に出射されず広がった安定限界に再捕獲された振動振幅の大きなビーム成分は、次のスポット照射開始時に安定限界を狭めた際、出射用高周波の強度とは無関係に急激に出射されスパイク状のビーム波形を生じ得る。さらに、照射スポット間が離れている遠隔スポット照射時には、照射スポット間でシンクロトロンの周回ビームが残留ガスとの散乱で振動振幅が増大する効果が大きくなり、スパイク状ビーム波形がより顕著になり得る。これらの現象は発明者らのシミュレーション解析で初めて明らかになった。スパイク状ビーム波形は制御可能な照射スポット当りの最小線量を制限するため、照射ビームをさらに細径化してスキャニング照射による治療精度を向上する際の障害になりうる。これが従来技術の第2の課題である。
【0013】
また、スパイク状ビーム波形を緩和するため、照射スポット間でシンクロトロンの周回ビームの振動振幅の大きな成分を廃棄する方法が考えられる。ただし、この方法を単純に用いると、廃棄するビーム電荷量が無視できなくなりビーム利用効率が低下する。特に、照射ビームを細径化してスキャニング照射による治療精度を向上する際には、各照射スポットに供給するビーム電荷量が小さくなるためビーム利用効率の低下が大きく、線量率の低下に伴い治療スループットの悪化につながる。これが従来技術の第2の課題の解決の際に付随して発生する第3の課題である。
【0014】
本発明の第1の目的は、出射ビームを安定化したうえで、スポット照射開始時のスパイク状ビーム波形を緩和して制御可能な照射スポット当りの最小線量を十分小さく設定し、照射ビームをさらに細径化して治療精度が向上できる粒子線治療システムを提供することにある。
【0015】
本発明の第2の目的は、第1の目的を達成するために照射スポット間でシンクロトロンの周回ビームの振動振幅の大きな成分を廃棄する場合でも、ビーム利用効率の低下を緩和して線量率の低下に伴う治療スループットの悪化を回避できる粒子線治療システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(1)上記第1の目的を達成するために、本発明は、荷電粒子ビームを所定のエネルギーまで加速し、出射装置に高周波電力を印加して発生させた高周波電磁波で安定限界を超えさせて荷電粒子ビームを出射するシンクロトロンと、前記シンクロトロンから出射された荷電粒子ビームを治療室まで導くビーム輸送系と、前記治療室で患者の患部形状に合わせて荷電粒子ビームを照射する照射装置から構成される粒子線治療システムであって、前記照射装置に荷電粒子ビームを供給する際には前記出射装置に印加する高周波電力をONし、一方、前記照射装置への荷電粒子ビームの供給を遮断する際には前記出射装置に印加する高周波電力をOFFするとともに、前記シンクロトロンに設置した電磁石の励磁量を変化させて前記安定限界を広げ荷電粒子ビームの出射を停止し、次に前記照射装置への荷電粒子ビームの供給を再開する前に、前記シンクロトロンに設置した電磁石の励磁量を変化させて前記安定限界を狭め荷電粒子ビームの一部を出射し、該荷電粒子ビームを前記ビーム輸送系に設置した電磁石で遮断する制御装置を備えるようにしたものである。
【0017】
かかる構成により、照射スポット間でシンクロトロンの周回ビームの振動振幅の大きな成分を廃棄し、スポット照射開始時のスパイク状ビーム波形の発生を防止できる。これにより、制御可能な照射スポット当りの最小線量を十分小さく設定し、照射ビームをさらに細径化して治療精度が向上できる。
【0018】
また、シンクロトロンに設置した電磁石の励磁量を変化させて安定限界を広げて荷電粒子ビームの出射を停止することで遅延照射が防止されるため、遅延照射の防止のためにシンクロトロンに設置した加速空胴の印加高周波電圧をON/OFFする必要がなく、出射ビームを安定化させることができる。
【0019】
(2)また、上記第1の目的を達成するために、本発明は、荷電粒子ビームを所定のエネルギーまで加速し、出射装置に高周波電力を印加して発生させた高周波電磁波で安定限界を超えさせて荷電粒子ビームを出射するシンクロトロンと、前記シンクロトロンから出射された荷電粒子ビームを治療室まで導くビーム輸送系と、前記治療室で患者の患部形状に合わせて荷電粒子ビームを照射する照射装置から構成される粒子線治療システムであって、前記照射装置に荷電粒子ビームを供給する際には前記出射装置に印加する高周波電力をONし、一方、前記照射装置への荷電粒子ビームの供給を遮断する際には予め前もって前記出射装置に印加する高周波電力をOFFした後に、前記シンクロトロンに設置した電磁石の励磁量を変化させて前記安定限界を広げ荷電粒子ビームの出射を停止する制御装置を備えるようにしたものである。
【0020】
かかる構成により、安定限界を広げ荷電粒子ビームの出射を停止する直前のシンクロトロンからの出射ビーム電流を低減できるため、広がった安定限界に再捕獲される振動振幅の大きな成分のビーム電荷量を低減できる。その結果、スパイク状ビーム波形の原因となるビーム電荷量が低減でき、ビーム利用効率の低下を招く照射スポット間でのビーム廃棄を実施せずとも、スポット照射開始時のスパイク状ビーム波形を緩和できる。
【0021】
また、シンクロトロンに設置した電磁石の励磁量を変化させて安定限界を広げて荷電粒子ビームの出射を停止することで遅延照射が防止されるため、遅延照射の防止のためにシンクロトロンに設置した加速空胴の印加高周波電圧をON/OFFする必要がなく、出射ビームを安定化させることができる。
【0022】
(3)上記第2の目的を達成するために、本発明は、上記(1)に記載の粒子線治療システムの構成において、前記制御装置が前記照射装置への荷電粒子ビームの供給を遮断する際に、予め前もって前記出射装置に印加する高周波電力をOFFした後に、前記シンクロトロンに設置した電磁石の励磁量を変化させて前記安定限界を広げ荷電粒子ビームの出射を停止する機能を有するものである。
【0023】
かかる構成により、安定限界を広げ荷電粒子ビームの出射を停止する直前のシンクロトロンからの出射ビーム電流を低減できるため、広がった安定限界に再捕獲される振動振幅の大きな成分のビーム電荷量を低減できる。その結果、スパイク状ビーム波形の原因となるため照射スポット間で廃棄されるビーム電荷量が低減でき、スパイク状ビーム波形の発生を防止したうえで、ビーム利用効率の低下を緩和できる。
【0024】
(4)上記(1)〜(3)において、好ましくは、前記安定限界を調整するために前記シンクロトロンに設置した電磁石が四極磁場成分を発生する収束あるいは発散型電磁石である。
【0025】
(5)上記(1)〜(4)において、スポットスキャニング照射を実施する場合には、前記シンクロトロンで所定のエネルギーまで加速した荷電粒子ビームを、前記照射装置へ断続的に複数回に分けて供給するものである。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、照射ビームを細径化してスポットスキャニング照射による治療精度を容易に向上でき、また、遠隔スポットを含む複雑な患部形状に対しても高精度でかつ線量率を改善した治療照射が可能な粒子線治療システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態による粒子線治療システムの構成を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による粒子線治療システムにおけるシンクロトロンからの荷電粒子ビームの出射方法の説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による粒子線治療システムに用いる照射装置の構成を示す。(A)は正面図であり、(B)は照射ビームを上流側から見た説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による粒子線治療システムによるスポットスキャニング法の動作を示すタイミングチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態による粒子線治療システムによるスポットスキャニング法の動作を示すタイミングチャートである。
【図6】本発明の第3の実施形態による粒子線治療システムによるスポットスキャニング法の動作を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に本発明の幾つかの実施の形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0029】
まず、図1〜図4を用いて、本発明の第1の実施形態による粒子線治療システムの構成及び動作について説明する。
【0030】
図1は、本発明の第1の実施形態による粒子線治療システムの構成を示すシステム構成図である。
【0031】
粒子線治療システム100は、ライナックのような前段加速器11で予備加速した荷電粒子ビームを所定のエネルギーまで加速したのち出射するシンクロトロン200と、シンクロトロン200から出射された荷電粒子ビームを治療室400まで導くビーム輸送系300と、治療室400で患者41の患部形状に合わせて荷電粒子ビームを照射する照射装置500と、制御装置600とから構成される。
【0032】
シンクロトロン200は、前段加速器11で予備加速した荷電粒子ビームを入射する入射装置24と、荷電粒子ビームを偏向し一定の軌道上を周回させる偏向電磁石21と、荷電粒子ビームが広がらないように水平/垂直方向に収束力を与える収束/発散型の四極電磁石22と、高周波加速電圧で荷電粒子ビームを所定のエネルギーまで加速する加速空胴25と、加速空胴25に高周波加速電圧を供給する電源25Aと、周回する荷電粒子ビームの振動振幅に対して安定限界を形成する六極電磁石23と、高周波電磁場で荷電粒子ビームの振動振幅を増大し安定限界を超えさせて外部に取り出す出射装置26と、出射装置26に出射用高周波電力を供給する電源26Aと、荷電粒子ビームを出射するために偏向する出射偏向装置27とから構成される。なお、本実施例の図1では、安定限界の大きさを高速で制御する専用の高速四極電磁石28と、高速四極電磁石28に励磁電流を供給する電源28Aを別途設けているが、前記四極電磁石22を用いて安定限界の大きさを制御することも可能である。
【0033】
ここで、図2を用いて、本実施形態による粒子線治療システムにおけるシンクロトロン200からの荷電粒子ビームの出射方法について説明する。
【0034】
図2は、本発明の第1の実施形態による粒子線治療システムにおけるシンクロトロン200からの荷電粒子ビームの出射方法の説明図である。
【0035】
図2は、シンクロトロン200を周回する荷電粒子ビームの状態を、出射に関係する水平方向の位相空間内に示したものである。横軸は設計軌道からのずれ(位置P)で、縦軸は設計軌道に対する傾き(角度θ)である。図2(A)は、出射開始前の水平方向の位相空間を示している。図2(B)は、出射開始後の出射中の水平方向の位相空間を示している。
【0036】
図2(A)に示すように、荷電粒子ビームを構成する各粒子は、設計軌道を中心にして水平/垂直方向に振動しながら、周回ビームBMとして周回する。ここで、図1に示した六極電磁石23を励磁することで、位相空間内に三角形状の安定領域SAが形成される。安定領域内の粒子はシンクロトロン200内を安定に周回し続ける。
【0037】
このとき、図1に示した出射装置26に出射用高周波を印加すると、図2(B)に示すように周回ビームBMの振幅が増大する。そして、安定領域SAの外に出た粒子は、出射ブランチEBに沿って急激に振動振幅が増大し、最終的に出射偏向装置27の開口部OPに飛び込んで、出射ビームBとしてシンクロトロン200から取り出される。
【0038】
安定領域の大きさは四極電磁石22や六極電磁石23の励磁量で決まる。図2(A)は出射開始前の、図2(B)は出射開始後(出射中)の位相空間を示す。安定領域の大きさを出射開始前の荷電粒子ビームのエミッタンス(位相空間で占める面積)より大きめに設定する。出射開始とともに出射装置26に高周波電力を印加して出射用の高周波電磁場を発生させることで、荷電粒子ビームのエミッタンスを大きくし(粒子の振動振幅を増大させ)、安定限界を超えた粒子から出射する。この状態で出射装置26に印加する高周波電力をON/OFFする(出射用の高周波電磁場をON/OFFする)ことで、出射ビームのON/OFFが制御できる。この出射方法の特長は、出射中に電磁石励磁量が一定で安定領域や出射ブランチが不変なので、出射ビームの位置やサイズが安定でありスキャニング法に好適な照射ビームが得られることである。
【0039】
再び、図1において、ビーム輸送系300は、シンクロトロン200の出射ビームを磁場で偏向して所定の設計軌道に沿って治療室400に導く偏向電磁石31と、輸送中に荷電粒子ビームが広がらないように水平/垂直方向に収束力を与える収束/発散型の四極電磁石32と、治療室内の照射装置500への荷電粒子ビームの供給をON/OFFするビーム遮断用電磁石33と、ビーム遮断用電磁石33の電源33Aと、ビーム遮断用電磁石33で除去したビーム成分を廃棄するビームダンプ34から構成される。
【0040】
なお、ビーム遮断用電磁石33としては、励磁した際の2極磁場で不要ビーム成分を偏向してビームダンプ34で廃棄する方法と、励磁した際の2極磁場で偏向したビーム成分のみ照射装置500に供給する方法がある。前者はビーム輸送系300の調整が簡単であり、後者は機器の異常時に照射装置への荷電粒子ビームの供給が遮断されるので安全性が高い。以下では、前者の場合についてのみ記述している。
【0041】
ここで、図3を用いて、本実施形態による粒子線治療システムに用いる照射装置500の構成について説明する。
【0042】
図3は、本発明の第1の実施形態による粒子線治療システムに用いる照射装置500の構成を示す正面図である。
【0043】
照射装置500は、ビーム輸送系300で導かれた荷電粒子ビームを水平及び垂直方向に偏向し患部42の断面形状に合わせて2次元的に走査する走査電磁石51a,51b(以下51で代表する)と、走査電磁石51の電源500Aと、荷電粒子ビームの位置、サイズ(形状)、線量を監視する各種ビームモニタ52a,52bから構成される。
【0044】
ここで、図3(A),(B)により、スポットスキャニング法について説明する。図3(B)は、照射ビームを上流側から見た説明図である。
【0045】
図3(A)に示すように、患者41の患部42に対して、その患部形状を3次元的な深さ方向の複数の層に分割し、各層を更に2次元的に分割して複数の照射スポットを設定する。深さ方向にはシンクロトロン200の出射ビームのエネルギー変更などで照射ビームのエネルギーを変更して各層を選択的に照射する。各層内では、図3(B)に示すように、走査電磁石51で照射ビームを2次元的に走査して各照射スポットSPに所定の線量を与える。1つの照射スポットSPの線量が満了すると照射ビームを高速で遮断したのち、照射ビームをOFFした状態で次の照射スポットに移動し、同様に照射を進めていくことにより、スポットスキャニングを行える。
【0046】
次に、図4を用いて、本実施形態による粒子線治療システムによるスポットスキャニング法の動作について説明する。
【0047】
図4は、本発明の第1の実施形態による粒子線治療システムによるスポットスキャニング法の動作を示すタイミングチャートである。
【0048】
図4において、横軸は時間tを示している。図4の最上部には、制御装置600が出射期間中に用いるタイミング信号である、スポット照射開始と線量満了(出射停止)信号を示している。図4(A)の縦軸は、制御装置600から走査電磁石51の電源500Aに供給される走査指令信号(図1で(A)と記載)に応じて、電源500Aから走査電磁石51に供給される励磁電流を示している。図4(B)の縦軸は、制御装置600から出射装置26の電源26Aに供給される出射用高周波制御信号(図1で(B)と記載)に応じて、電源26Aから出射装置26に供給される出射用高周波電力を示している。図4(C)の縦軸は、制御装置600から高速四極電磁石28の電源28Aに供給される励磁指令信号(図1で(C)と記載)に応じて、電源28Aから高速四極電磁石28に供給される励磁電流を示している。図4(D)の縦軸は、制御装置600から加速空胴25の電源25Aに供給される高周波加速電圧制御信号(図1で(D)と記載)に応じて、電源25Aから加速空胴25に供給される高周波加速電圧を示している。図4(E)の縦軸は、シンクロトロン200からビーム輸送系300に出射される出射ビーム電流を示している。図4(F)の縦軸は、制御装置600からビーム遮断用電磁石33の電源33Aに供給されるビーム遮断制御信号(図1で(F)と記載)に応じて、電源33Aからビーム遮断用電磁石33に供給される励磁電流のON/OFF状態を示している。図4(G)の縦軸は、照射装置500から照射される照射ビーム電流のON/OFF状態を示している。照射ビームがONのとき、スポットS1,S2,S3,S4が形成される。なお、各照射スポット位置に対して必要な走査電磁石励磁電流に静定した時点でスポット照射開始のタイミング信号が発生し、照射装置500のビームモニタ52からの伝送信号(図1で(H)と記載)に基づき線量を監視し、所定線量に到達した時点でスポット線量満了(出射停止)のタイミング信号が発生する。
【0049】
また、図4(C),(E),(G)において、破線は従来のスポットスキャニング法の動作を示している。ここで、出射ビームの安定化の観点で高周波加速電圧をON/OFFして遅延照射量を低減する方法は好ましくなく、本発明では高周波加速電圧を図4(D)に示すように出射期間中は一定に維持し、高速四極電磁石28のON/OFFで遅延照射量を低減している。
【0050】
図4(A)に示すように、電源500Aから走査電磁石51に供給される走査電磁石電流を増加させることで、照射ビームの照射位置を走査し、電源500Aから走査電磁石51に供給される走査電磁石電流を一定とすることで、照射ビームの照射位置を一定とできる。そして、スポットスキャニング法では、図4(A),(G)に示すように、ビーム走査を停止した状態で各照射スポットS1,S2,S3,S4に所定の線量を照射し、照射ビームをOFFしてから走査電磁石51の励磁量を変更して次の照射スポットに移動する。
【0051】
照射装置500に荷電粒子ビームを供給するスポット照射時には、図4(B)に示すように、出射装置26に印加する高周波電力をONし、照射装置500への荷電粒子ビームの供給を遮断するスポット間移動時には出射装置26に印加する高周波電力をOFFする。照射装置500への荷電粒子ビームの供給を遮断する際には、同時に、図4(C),(F)に示すように、シンクロトロン200に設置した高速四極電磁石28をONすることで、安定限界の大きさを広げてビーム出射を停止し、更にビーム輸送系300に設置したビーム遮断用電磁石33をONして荷電粒子ビームの供給を遮断する。
【0052】
ここで、図4(C)により、電源28Aから高速四極電磁石28に供給される励磁電流について見ると、従来は破線で示すように、照射ビームを遮断すべき照射スポット間では安定限界の大きさを広げた状態で維持するよう一定に設定され、次のスポット照射開始時に安定限界の大きさを狭めるために励磁電流が変更される。このとき、スポット照射開始時に安定限界を狭めた際、図4(E)破線に示すように出射用高周波の強度とは無関係にシンクロトロン200から急激に荷電粒子ビームが出射され、図4(G)破線に示すようにスパイク状の照射ビーム波形を生じる。
【0053】
図2(C),(D)は、この現象の原因を出射に関係する水平方向の位相空間内で説明したものである。すなわち、図2(C)において、ビーム遮断時に高速四極電磁石28をONして安定限界を広げた際に出射されず広がった安定領域SAに再捕獲された振動振幅の大きなビーム成分が、図2(D)において、次のスポット照射開始時に安定限界を狭め図2(B)の出射中と同じ面積の安定領域に戻した際、既に安定限界を超えており、出射用高周波の強度とは無関係に急激に出射されることに起因する。さらに、照射スポット間隔が離れている遠隔スポット照射時には、照射スポット間でシンクロトロン200の周回ビームが残留ガスとの散乱で振動振幅が増大する効果が大きくなり、スパイク状ビーム波形がより顕著になりうる。スパイク状ビーム波形は制御可能な照射スポット当りの最小線量を制限するため、照射ビームをさらに細径化してスキャニング照射による治療精度を向上する際の障害になりうる。
【0054】
それに対して本実施形態では、照射スポット間で次のスポット照射を再開するまでの間に、すなわち、次に照射装置500への荷電粒子ビームの供給を再開する前に、図4(C)の実線で示すように、シンクロトロン200に設置した高速四極電磁石28の励磁量を変化させて安定限界を狭め、図4(E)の実線で示すように、荷電粒子ビームの一部を出射している。ただし、照射スポット間で出射された該荷電粒子ビームは、ビーム輸送系に設置したビーム遮断用電磁石33の図4(F)に示す励磁動作で偏向され遮断される。すなわち、照射スポット間でシンクロトロン200の周回ビームの振動振幅の大きな成分を廃棄し、スポット照射開始時のスパイク状ビーム波形の発生を防止でき、図4(G)の実線で示すような理想的な照射ビーム波形を実現できる。ここで、照射スポット間で高速四極電磁石28の励磁量を変化させて安定限界を狭めるタイミングであるが、例えば、照射スポット間での走査電磁石励磁電流の全変化量の70%に到達した時点に選定し、制御装置600で高速四極電磁石28の電源28Aをタイミング制御すればよい。
【0055】
これを図2に示す水平方向の位相空間内で説明する。照射スポット間で予め図2(D)の状態を形成して出射を再開し、シンクロトロン200からスパイク状ビーム波形の原因となる振動振幅が大きなビーム成分を前もって出射しビーム輸送系で廃棄する。その結果、次のスポット照射開始時には図2(B)の出射中と同様な周回ビームBMの分布を初期状態として、照射装置500への荷電粒子ビームの供給を再開できる。
【0056】
これにより、制御可能な照射スポット当りの最小線量を十分小さく設定でき、照射ビームをさらに細径化して治療精度が向上できる。また、遠隔スポットを含む複雑な患部形状に対しても高精度でかつ線量率を改善した治療照射が可能となる。
【0057】
なお、本実施形態の図4では、高速四極電磁石28の励磁ONで安定限界の大きさを広げてビーム出射を停止する場合を示しているが、高速四極電磁石28の励磁OFFで安定限界の大きさを広げビーム出射を停止する動作論理に設計することも可能である。また、シンクロトロン200に設置した六極電磁石の励磁量の制御で、高速四極電磁石28と同様に安定限界の大きさを制御することも可能である。
【実施例2】
【0058】
次に、図1及び図5を用いて、本発明の第2の実施形態による粒子線治療システムの構成及び動作について説明する。なお、本実施形態による粒子線治療システムの全体構成は、前実施形態の図1に示したものと同様である。
【0059】
図5は、本発明の第2の実施形態による粒子線治療システムによるスポットスキャニング法の動作を示すタイミングチャートである。
【0060】
図5において、横軸は時間tを示している。図5(A)〜(G)の縦軸は、図4(A)〜(G)の縦軸と同じである。
【0061】
前実施形態の図4と同様に、照射装置500に荷電粒子ビームを供給するスポット照射時には、出射装置26に印加する高周波電力をONする。照射装置500への荷電粒子ビームの供給を遮断するスポット間移動時には、出射装置26に印加する高周波電力をOFFする。ここで、前実施形態との相違は、ビーム遮断時に高周波電力をOFFするタイミングである。前実施形態では各照射スポットで所定線量が満了したタイミングで、出射装置26に印加する高周波電力をOFFするとともに、高速四極電磁石28の励磁量を変化させて安定限界を広げビーム出射を停止している。それに対して本実施形態では、図5(B)の実線に示すように、各照射スポットで所定線量に到達する前に予め出射装置26に印加する高周波電力をOFFし、遅延照射の効果で照射スポットへの所定線量が満了したタイミングで、図5(C)に示すように、シンクロトロン200に設置した高速四極電磁石28の励磁量を変化させて安定限界を広げ荷電粒子ビームの出射を停止している。ここで、予め前もって出射装置26に印加する高周波電力をOFFするタイミングであるが、例えば、各照射スポットの所定線量の70%に到達した時点に選定し、制御装置600において照射装置500のビームモニタ52からの伝送信号(図1で(H)と記載)に基づき線量を監視しながら出射装置26の電源26Aをタイミング制御すればよい。
【0062】
本実施形態では、出射装置26に印加する高周波電力(発生する高周波電磁場)を予め前もってOFFする効果で、照射スポットの線量満了時の出射ビーム電流が低減できる。その結果、高速四極電磁石28で安定限界を広げた際に出射されず広がった安定限界に再捕獲される振動振幅の大きな周回ビーム成分が減少し、スパイク状ビーム波形の原因となるため照射スポット間で廃棄されるビーム電荷量が低減できて、ビーム利用効率の低下を緩和できる。即ち、図5(E)に示すように、各照射スポットで所定線量に到達した時点で出射装置26に印加する高周波電力をOFFする場合(破線)に比較して、予め前もって高周波電力をOFFする場合(実線)の方が、照射スポット間で廃棄されるビーム電荷量が低減できている。
【0063】
これにより、治療精度を向上するために照射スポット間でシンクロトロン200の周回ビームの振動振幅の大きな成分を廃棄する場合でも、ビーム利用効率の低下を緩和して線量率の低下に伴う治療スループットの悪化を回避できる。
なお、本実施形態の図5では、高速四極電磁石28の励磁ONで安定限界の大きさを広げてビーム出射を停止する場合を示しているが、高速四極電磁石28の励磁OFFで安定限界の大きさを広げビーム出射を停止する動作論理に設計することも可能である。また、シンクロトロン200に設置した六極電磁石の励磁量の制御で、高速四極電磁石28と同様に安定限界の大きさを制御することも可能である。
【実施例3】
【0064】
次に、図1及び図6を用いて、本発明の第3の実施形態による粒子線治療システムの構成及び動作について説明する。なお、本実施形態による粒子線治療システムの全体構成は、前実施形態の図1に示したものと同様である。
【0065】
図6は、本発明の第3の実施形態による粒子線治療システムによるスポットスキャニング法の動作を示すタイミングチャートである。
【0066】
図6において、横軸は時間tを示している。図6(A)〜(G)の縦軸は、図4(A)〜(G)の縦軸と同じである。
【0067】
前実施形態(実施例1と実施例2)の図4や図5と同様に、照射装置500に荷電粒子ビームを供給するスポット照射時には、出射装置26に印加する高周波電力をONする。照射装置500への荷電粒子ビームの供給を遮断するスポット間移動時には、出射装置26に印加する高周波電力をOFFする。ここで、本実施形態でも実施例2の図5と同様、図6(B)の実線に示すように、各照射スポットで所定線量に到達する前に予め出射装置26に印加する高周波電力をOFFし、遅延照射の効果で照射スポットへの所定線量が満了したタイミングで、図6(C)に示すように、シンクロトロン200に設置した高速四極電磁石28の励磁量を変化させて安定限界を広げ荷電粒子ビームの出射を停止している。ただし、本実施形態では高速四極電磁石28の励磁量は従来と同様に、照射ビームを遮断すべき照射スポット間で安定限界の大きさを広げた状態で維持するよう一定に設定され、次のスポット照射開始時に安定限界の大きさを狭めるために励磁電流が変更される。
【0068】
本実施形態では実施例2と同様に、出射装置26に印加する高周波電力(発生する高周波電磁場)を予め前もってOFFする効果で、照射スポットの線量満了時の出射ビーム電流が低減できる。その結果、高速四極電磁石28で安定限界を広げた際に出射されず広がった安定限界に再捕獲される振動振幅の大きな周回ビーム成分が減少し、スパイク状ビーム波形の原因となるビーム電荷量が低減できる。即ち、図6(E)及び図6(G)に示すように、各照射スポットで所定線量に到達した時点で出射装置26に印加する高周波電力をOFFする場合(破線)に比較して、予め前もって高周波電力をOFFする場合(実線)の方が、次のスポット照射開始時に安定限界を狭めた際のスパイク状ビーム波形が緩和される。また、四極電磁石の励磁量が照射スポット間で安定限界の大きさを広げた状態で維持できるように一定に設定されるため、照射スポット間でのビーム出射が完全に停止しておりビーム遮断用電磁石33で廃棄される出射ビーム成分はない。
【0069】
これにより、前実施形態とは異なり、ビーム利用効率の低下を招く照射スポット間でのビーム廃棄を実施せずとも、スポット照射開始時のスパイク状ビーム波形をある程度緩和できる。したがって、線量率を全く犠牲にせずに線量制御精度の改善で治療精度を向上できる。
【0070】
なお、本実施形態の図6では、高速四極電磁石28の励磁ONで安定限界の大きさを広げてビーム出射を停止する場合を示しているが、高速四極電磁石28の励磁OFFで安定限界の大きさを広げビーム出射を停止する動作論理に設計することも可能である。また、シンクロトロン200に設置した六極電磁石の励磁量の制御で、高速四極電磁石28と同様に安定限界の大きさを制御することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、がん治療等を目的とした粒子線治療システム以外に、シンクロトロンで加速した高エネルギーの荷電粒子ビームを、高精度に且つ所望の強度分布でターゲットに照射する必要性のある物理研究にも適用できる。
【符号の説明】
【0072】
11…前段加速器
21…偏向電磁石(シンクロトロン)
22…収束/発散型四極電磁石(シンクロトロン)
23…六極電磁石
24…入射装置
25…加速空胴
26…出射装置
27…出射偏向装置
28…高速四極電磁石
31…偏向電磁石(ビーム輸送系)
32…収束/発散型四極電磁石(ビーム輸送系)
33…ビーム遮断用電磁石
34…ビームダンプ
41…患者
42…患部
51…走査電磁石
52…ビームモニタ
100…粒子線治療システム
200…シンクロトロン
300…ビーム輸送系
400…治療室
500…照射装置
600…制御装置
25A,26A,28A,33A,500A…電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームを所定のエネルギーまで加速し、出射装置に高周波電力を印加して発生させた高周波電磁波で安定限界を超えさせて荷電粒子ビームを出射するシンクロトロンと、前記シンクロトロンから出射された荷電粒子ビームを治療室まで導くビーム輸送系と、前記治療室で患者の患部形状に合わせて荷電粒子ビームを照射する照射装置から構成される粒子線治療システムであって、前記照射装置に荷電粒子ビームを供給する際には前記出射装置に印加する高周波電力をONし、一方、前記照射装置への荷電粒子ビームの供給を遮断する際には前記出射装置に印加する高周波電力をOFFするとともに、前記シンクロトロンに設置した電磁石の励磁量を変化させて前記安定限界を広げ荷電粒子ビームの出射を停止し、次に前記照射装置への荷電粒子ビームの供給を再開する前に、前記シンクロトロンに設置した電磁石の励磁量を変化させて前記安定限界を狭め荷電粒子ビームの一部を出射し、該荷電粒子ビームを前記ビーム輸送系に設置した電磁石で遮断する制御装置を備えることを特徴とする粒子線治療システム。
【請求項2】
荷電粒子ビームを所定のエネルギーまで加速し、出射装置に高周波電力を印加して発生させた高周波電磁波で安定限界を超えさせて荷電粒子ビームを出射するシンクロトロンと、前記シンクロトロンから出射された荷電粒子ビームを治療室まで導くビーム輸送系と、前記治療室で患者の患部形状に合わせて荷電粒子ビームを照射する照射装置から構成される粒子線治療システムであって、前記照射装置に荷電粒子ビームを供給する際には前記出射装置に印加する高周波電力をONし、一方、前記照射装置への荷電粒子ビームの供給を遮断する際には予め前もって前記出射装置に印加する高周波電力をOFFした後に、前記シンクロトロンに設置した電磁石の励磁量を変化させて前記安定限界を広げ荷電粒子ビームの出射を停止する制御装置を備えることを特徴とする粒子線治療システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記照射装置への荷電粒子ビームの供給を遮断する際に、予め前もって前記出射装置に印加する高周波電力をOFFした後に、前記シンクロトロンに設置した電磁石の励磁量を変化させて前記安定限界を広げ荷電粒子ビームの出射を停止することを特徴とする請求項1記載の粒子線治療システム。
【請求項4】
前記安定限界を調整するために前記シンクロトロンに設置した電磁石が四極磁場成分を発生する収束あるいは発散型電磁石であることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の粒子線治療システム。
【請求項5】
前記シンクロトロンで所定のエネルギーまで加速した荷電粒子ビームを、前記照射装置へ断続的に複数回に分けて供給することを特徴とする請求項1から請求項4の何れか1項に記載の粒子線治療システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−34823(P2011−34823A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−180422(P2009−180422)
【出願日】平成21年8月3日(2009.8.3)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】