説明

粒径の大きなソルビトール系透明化剤を配合したポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法

【課題】ジベンジリデンソルビトール化合物が微粉化することなくポリプロピレン系樹脂に配合されているにもかかわらず、優れた透明性及び物性を有するポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法を提供すること。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂100質量部に、粒径においてd97 が30μm以上、かつ、200μm以下である下記一般式(I)で表されるジベンジリデンソルビトール化合物0.05〜2質量部を配合した混合物を、二軸押し出し機を用いて押出温度220〜250℃で混練することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の加工条件を選択することで、従来はポリプロピレン系樹脂の加工時での添加に適さないとされていた粒径の大きなジベンジリデンソルビトール系透明化剤を配合し得るようにした、透明性に優れたポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロピレン単独重合体やエチレン−プロピレン共重合体などのポリプロピレン系樹脂は、自動車、家電、建築資材、家具、包装容器、玩具、日用雑貨など幅広く用いられている。しかし、ポリプロピレン系樹脂は、透明性においてポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレンなどに劣るため、安息香酸金属塩、芳香族リン酸エステル金属塩、脂肪族環状化合物の金属塩やジベンジリデンソルビトール類、アミド化合物などの各種の造核剤、透明化剤を配合することが従来より提案され実用化されている。
【0003】
なかでも、ジベンジリデンソルビトール類は透明性の改良効果に優れるものの臭気が強かったり、融点が高く加工温度での樹脂中への均一分散が困難であるなどの短所がある。加工温度を融点以上にすることで均一分散は可能であるが、本発明で用いられる一般式(I)で表される化合物は融点が260℃以上と高く、融点以上での加工はポリプロピレンの顕著な劣化を引き起こすため好ましくない。融点以下での樹脂への分散性を向上させるため、粉砕により粒径を小さくしたり、予め他の成分と溶融混合して融点を低下させるなどの様々な処理が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ジベンジリデンソルビトール類を、d97 が30μm以下の粉末とすることで性能を発現させることが提案されている。このジベンジリデンソルビトール類は、透明性の改良効果には優れるものの、微粉とすることで二次凝集しやすくなり、ブロッキングすることで計量、仕込みなどの取り扱い性が低下するほか、期待した分散性が得られないなどの問題がある。また、無機物や表面処理剤などでブロッキングを防止すると、製造コストが嵩む上に、樹脂に不要な成分を混合することになる。
【0005】
特許文献2には、異なる構造のジベンジリデンソルビトール化合物の混合物を用いることで性能を向上させることが提案されている。類似構造物の混合物とすることで融点降下が起きるため、樹脂への分散性が向上する。しかし、ジベンジリデンソルビトール類のなかで特に効果に優れる化合物に敢て他の構造の透明化剤を加えるものであり、透明化効果が低下するなどして十分な解決策とはなっていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−145431号公報
【特許文献2】特開平02−206627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、ジベンジリデンソルビトール化合物が微粉化することなくポリプロピレン系樹脂に配合されているにもかかわらず、優れた透明性及び物性を有するポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく種々検討した結果、特定の加工条件を選択することで、粒径の大きなジベンジリデンソルビトール化合物をポリプロピレン系樹脂に配合しても、優れた透明性及び物性を有するポリプロピレン系樹脂組成物が得られることを知見した。
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、ポリプロピレン系樹脂100質量部に、粒径においてd97 が30μm以上、かつ、200μm以下である下記一般式(I)で表されるジベンジリデンソルビトール化合物0.05〜2質量部を配合した混合物を、二軸押し出し機を用いて押出温度220〜250℃で混練することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0009】
【化1】

【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ジベンジリデンソルビトール化合物が微粉化することなくポリプロピレン系樹脂に配合されているにもかかわらず、優れた透明性及び物性を有するポリプロピレン系樹脂組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に用いられるポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンホモポリマー、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、プロピレンと他のα−オレフィン(例えば、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンなど)少量(1〜10質量%)との共重合体、プロピレンとエチレンプロピレンとの共重合体(TPO)などがあげられる。
【0012】
上記のポリプロピレン系樹脂は、重合触媒・助触媒の種類や有無、立体規則性、平均分子量、分子量分布、特定の分子量成分の有無や比率、比重、粘度、各種溶媒への溶解度、伸び率、衝撃強度、結晶化度、X線回折、不飽和カルボン酸(マレイン酸、イタコン酸、フマル酸など)およびその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステルなど)や有機過酸化物またはエネルギー線の照射およびこれら処理の組合せによる変性・架橋処理の有無などによらず用いることができる。
【0013】
本発明に用いられる一般式(I)で表されるジベンジリデンソルビトール化合物は、その製造方法に特に限定されず、公知のいずれの方法によるものでもよい。
【0014】
本発明に用いられる一般式(I)で表されるジベンジリデンソルビトール化合物の粒径はd97 が30μm以上、200μm以下であり、d97 が40μm以上、150μm以下が特に好ましい。d97 が30μm未満に粉砕するには粉砕コストが高くなる上に、ブロッキングが発生して取り扱い性が低下するので好ましくない。d97 が200μmより大きいと透明性が不十分であったり、フィルムなどに成形した場合にフィッシュアイが増加するなどの問題がある。なお、本発明におけるd97 とは、ある粒径より小さい粒子量の全粒子量に対する百分率が97である粒径である。
【0015】
上記の一般式(I)で表されるジベンジリデンソルビトール化合物の配合量は、上記のポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、0.05〜2質量部、好ましくは0.1〜1質量部である。ジベンジリデンソルビトール化合物の配合量が0.05質量部未満であると、添加効果が不充分であり、また2質量部を超えて添加しても、効果の向上は見られない。
【0016】
上記のポリプロピレン系樹脂に上記の一般式(I)で表されるジベンジリデンソルビトール化合物を配合した混合物を混練する二軸押し出し機としては、樹脂投入部からダイスまで少なくとも3つの温度管理領域を有するものが好ましく、例えば、株式会社池貝製の二軸押し出し機PCM−30(商品名)、株式会社日本製鋼所製の二軸押し出し機TEX−28V(商品名)などを好適に用いることができる。
【0017】
上記二軸押し出し機による混合物の混練は、押出温度220〜250℃、好ましくは230〜250℃で行う。二軸押し出し機の温度設定は、二軸押し出し機の樹脂投入部からダイスまでの領域において、樹脂投入部以外で、かつ、ダイス以外の部分の温度が、220〜250℃になるように設定すればよい。
押出温度が220℃未満であると、分散性が悪く効果が出づらく、また250℃超であると、ポリプロピレン系樹脂の劣化を引き起こすため好ましくない。
【0018】
上記のポリプロピレン系樹脂に上記の一般式(I)で表されるジベンジリデンソルビトール化合物を配合した混合物には、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の使用条件や要求特性に応じて、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン化合物、難燃剤、難燃助剤、他の造核剤、帯電防止剤、重金属不活性化剤、可塑剤、軟化剤、滑剤、ハイドロタルサイト、脂肪酸金属塩、顔料、赤外線吸収剤、防曇剤、防霧剤、充填剤、抗菌・抗カビ剤などの汎用の樹脂添加剤を添加することが好ましい。
【0019】
フェノール系酸化防止剤としては、2,6−ジ第三ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、2−メチル−4,6−ビス(オクチルチオメチル)フェノール、ジステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4' −チオビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2' −メチレンビス(4 −メチル−6 −第三ブチルフェノール)、2,2' −メチレンビス(4 −エチル−6 −第三ブチルフェノール)、4,4' −ブチリデンビス(6−第三ブチル−m−クレゾール)、2,2' −エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェノール)、2,2' −エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第三ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第三ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、ステアリル(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2−第三ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第三ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、テトラキス〔3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5.5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕などがあげられ、樹脂100重量部に対して、好ましくは0.001〜10重量部、より好ましくは0.05〜5重量部が用いられる。
【0020】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ホスファイト、トリス〔2−第三ブチル−4−(3−第三ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフィト、ビス(2,4,6−トリ第三ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4' −n −ブチリデンビス(2−第三ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第三ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2' −メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2' −メチレンビス(4,6−第三ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2' −エチリデンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第三ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第三ブチルフェノールのホスファイトなどがあげられる。
【0021】
硫黄系酸化防止剤としては、ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、ジパルミチルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、テトラキス(3−ラウリルチオジプロピオン酸メチル)メタン、ビス(2−メチル−4−(アルキル(C 〜C18の単独または混合)チオプロピオニルオキシ)−5−第三ブチルフェニル)スルフィド、2−メルカプトベンズイミダゾールおよびその亜鉛塩などがあげられる。
【0022】
紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5' −メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)などの2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2' −ヒドロキシ−5' −メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2' −ヒドロキシ−3' ,5' −ジ第三ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2' −ヒドロキシ−3' −第三ブチル−5' −メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2' −ヒドロキシ−5' −第三オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2' −ヒドロキシ−3' ,5' −ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2' −メチレンビス(4−第三オクチル−6−ベンゾトリアゾリル)フェノール、2−(2' −ヒドロキシ−3' −第三ブチル−5' −カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾールなどの2−(2' −ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第三ブチルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第三アミルフェニル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどのベンゾエート類;2−エチル−2' −エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4' −ドデシルオキザニリドなどの置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β,β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレートなどのシアノアクリレート類;2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシ−5−メチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第三ブチルフェニル)−s−トリアジンなどのトリアリールトリアジン類があげられる。
【0023】
ヒンダードアミン化合物としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−ウンデシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)カーボネート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノール/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/ジブロモエタン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第三オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イルアミノウンデカンなどのヒンダードアミン化合物があげられる。
【0024】
難燃剤としては、デカブロモジフェニルエーテルやテトラブロモビスフェノールAなどのハロゲン系難燃剤、トリフェニルホスフェイト、レゾルシノールやビスフェノールAなどの多価フェノールとフェノールや2,6−キシレノールなどの1価フェノールの縮合リン酸エステル;赤燐、リン酸メラミンなどの無機リン化合物;メラミンシアヌレートなどの含窒素難燃剤;水酸化マグネシウムや水酸化アルミニウムなどの無機系難燃剤;酸化アンチモンや酸化ジルコニウムなどの難燃助剤;ポリテトラフルオロエチレンなどのドリップ防止剤などが用いられる。
【0025】
難燃助剤としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、(メタ)アクリル変性PTFEなどのフッ素樹脂やシリコン樹脂などがあげられる。
【0026】
他の造核剤としては、安息香酸ナトリウム、アルミニウム−p−tert−ブチルベンゾエート、リチウム−p−tert−ブチルベンゾエートなどの安息香酸類の金属塩;2,2−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)リン酸エステルナトリウムなどのリン酸エステル金属塩;ジベンジリデンソルビトール、ビス(4−メチルベンジリデン)ソルビトール、ビス(4−エチルベンジリデン)ソルビトールなどの他のベンジリデンソルビトール類;グリセリン亜鉛などの金属アルコラート類;グルタミン酸亜鉛などのアミノ酸金属塩;ビシクロヘプタンジカルボン酸またはその塩などのビシクロ構造を有する脂肪族二塩基酸およびその金属塩、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸リチウムなどの芳香族スルホン酸金属塩などがあげられる。
本発明は、透明性付与に特に優れた一般式(I)のジベンジリデンソルビトール化合物を微粉砕せずに使用しても微粉砕品と同等の効果が得られるものであり、他のジベンジリデンソルビトール類を併用することは添加量に比べて透明性の向上効果が小さくなるので本発明の効果が低下することになる。2,2−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)リン酸エステルナトリウムなどのリン酸エステル金属塩などの金属塩系化合物のように透明性だけでなく、ポリプロピレン系樹脂のガラス転移温度を向上する造核剤との併用は本発明のみでは得られない効果が期待できるので好ましい。
【0027】
重金属不活性化剤としては、例えば、2−ヒドロキシベンズアミド−N−1H−1,2,4−トリアゾール−3−イルやドデカンジオイックアシッドビス[ 2−(2−ヒドロキシベンゾイル)ヒドラジド] などがあげられる。
【0028】
ハイドロタルサイト化合物としては、下記一般式(II)で表される、マグネシウムおよびアルミニウムからなる複塩化合物またはマグネシウム、亜鉛およびアルミニウムからなる複塩化合物が好ましく用いられ、また、結晶水を脱水したものであってもよい。
【0029】
Mgx1Znx2Al ・(OH)2(x1+x2)+4・(CO)1−y1/2 ・mHO (II)
(式中、x1、x2及びy1は各々下記式で表される条件を満足する数を示し、mは0又は任意の整数を示す。
0≦x2/x1≦10、2≦x1+x2<20、0≦y1≦2)
【0030】
上記ハイドロタルサイト化合物は、天然物であってもよく、合成品であってもよい。該合成品の合成方法としては、特公昭46−2280号公報、特公昭50−30039号公報、特公昭51−29129号公報、特公平3−36839号公報、特開昭61−174270号公報、特開2001−164042号公報、特開2002−53722号公報などに記載の公知の合成方法を例示することができる。また、本発明のおいては、上記ハイドロタルサイト化合物は、その結晶構造、結晶粒子径などに制限されることなく使用することが可能で、原料中に含まれる鉄などの重金属分の残存量は精製コストが実用的な範囲で少ないことが好ましい。
【0031】
また、上記ハイドロタルサイト化合物としては、その表面をステアリン酸のごとき高級脂肪酸、オレイン酸アルカリ金属のごとき高級脂肪酸金属塩、ドデシルベンゼンスルホン酸アルカリ金属塩のごとき有機スルホン酸金属塩、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸エステルまたはワックスなどで被覆したものも使用できる。
【0032】
本発明に係るポリプロピレン系樹脂組成物は、その成形方法、用途などは特に制限されず、押出成形、射出成形、ブロー、カレンダー、プレス成形、真空成形など公知の成形加工技術を用いて、フィルム、シート、成形品などとして、自動車の内外装材、家電製品、建築資材、包装資材、農業用資材、雑貨、医療用器具などに用いられ、使用形態は、単独または他の樹脂や金属などとと直接または接着剤層を介して張り合わせるなどして用いることできる。
【実施例】
【0033】
合成例(一般式(I)で表されるジベンジリデンソルビトール化合物の合成)
反応用四口フラスコに3,4−ジメチルベンズアルデヒド44g(0.42mol)、ソルビトール38g(0.21mol)、触媒として50%硫酸5g、溶媒としてシクロヘキサン700mlおよびメタノール70mlを添加し、メタノール還流温度にて攪拌する。揮発するメタノール量と同量のメタノールを随時滴下し、反応5時間にて塊状物を取得する。
取得した塊状物をイソプロピルアルコール/水=1/1(容積比)にて洗浄し、濾過物を90℃にて減圧乾燥する。
【0034】
得られた塊を粉砕機で粉砕して、表1に記載のd97 を有するジベンジリデンソルビトール粉末(表1ではソルビトールと略記)をそれぞれ得た。ジベンジリデンソルビトール粉末のd97 はレーザー光散乱により測定した。また、得られたジベンジリデンソルビトール粉末についてパウダーテスターによる安息角測定によりブロッキング性を評価した。各ジベンジリデンソルビトール粉末の安息角を表1に示した。安息角が大きいものほど流動性に乏しいことを示す。
【0035】
実施例1〜3および比較例1〜5
ランダムポリプロピレン(MFI=8〜10g/10分:MG3:日本ポリプロ(株)製)100質量部に、テトラキス [3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル] メタン0.1質量部、トリス(2,4−ジ−第三ブチルフェニル)ホスファイト0.05質量部、カルシウムステアレート0.05質量部と、合成例で得られた表1記載のd97 を有するジベンジリデンソルビトール粉末0.2質量部を配合し、ヘンシェルミキサーで混合して、表1記載の押し出し機を用い表1記載の押出温度で押し出し成形してペレットを得た。得られたペレットを250℃で射出成形して厚さ1mmの試験片を作製した。
【0036】
得られたペレットをメルトインデクサー(東洋精機(株)製)を用い、JIS K 7210に従って230℃で2.16kg荷重でのメルトフローインデックス(MFI)を測定し、樹脂物性の低下の有無を評価した。MFIが大きいものほど樹脂の物性変化が大きく好ましくない。また、JIS K 7361−1に従って、試験片の霞度(Haze)を測定して透明性向上効果を測定した。Hazeは値が小さいものほど透明性に優れるので好ましい。これらの結果を表1に示した。
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示す結果から次のことが明らかである。実施例1と比較例2との対比から、同一組成でも単軸押し出し機では透明性の改善効果が小さく、二軸押し出し機を用いることで初めて本発明の効果が奏されることが明らかである。また、比較例4および5から、加工温度を上げて分散性を向上しようとしても透明性、物性の安定性において好ましくない結果となり、温度と加工機を選択して初めて本発明の効果が奏されることが明らかである。実施例1および3と比較例1との対比から、本発明の加工条件とすることで流動性に優れる粒径の大きなジベンジリデンソルビトール化合物が、従来劣るとされた透明性や物性の安定性において微分化したものと同等の性能を示すことが明らかである。なお、比較例3から、d97 が300μmに近い値のジベンジリデンソルビトール化合物を用いた場合は、本発明の加工条件であっても透明性が劣るため、ジベンジリデンソルビトール化合物のd97 を200μm以下にして用いることが必要となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂100質量部に、粒径においてd97 が30μm以上、かつ、200μm以下である下記一般式(I)で表されるジベンジリデンソルビトール化合物0.05〜2質量部を配合した混合物を、二軸押し出し機を用いて押出温度220〜250℃で混練することを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
【化1】

【請求項2】
一般式(I)で表されるジベンジリデンソルビトール化合物のd97 が40μm以上、かつ、150μm以下である請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
二軸押し出し機として、樹脂投入部からダイスまで少なくとも3つの温度管理領域を有する二軸押し出し機を用い、樹脂投入部以外で、かつ、ダイス以外の部分の温度設定を、220〜250℃とする請求項1または2記載のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法により得られたポリプロピレン系樹脂組成物。

【公開番号】特開2011−207992(P2011−207992A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−76183(P2010−76183)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(000000387)株式会社ADEKA (987)
【Fターム(参考)】