説明

粒状キラル分離材料

キラル粒状材料およびそれを製造する方法を提供する。該材料は、ナノスケールキラル細孔またはチャンネルを含む多層キラル構造に組織化され、場合により架橋した繊維状タンパク質またはキラル合成ポリペプチドを包含する。それら粒子は、クロマトグラフィー用途を含めたキラル分離を行うのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2005年12月19日発行の米国仮出願第60/751,545号および2006年3月24日発行の米国仮出願第60/785,669号への優先権を主張する。本出願は、更に、これと同日に発行の“Production of Chiral Materials Using Crystallization Inhibitors”という表題の、米国仮出願第60/751,545号および同第60/785,669号への優先権も主張する米国特許出願に関する。これら全三件の出願の内容は、本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
背景
分野
本分野は、キラル材料およびそれらの製造方法に関する。具体的には、本分野は、キラル分離に用いるためのキラルポリマー材料に関する。
【0003】
関連技術の要旨
キラル分子は、ポリマー、特殊化学薬品、フレーバーおよび芳香剤、および医薬品を含めたいろいろな産業に用途を有する。これら産業における多数の用途は、キラル化合物の単一キラル異性体(鏡像異性体)の単離および使用を必要とする。いくつかの方法が、キラル化合物の単一鏡像異性体を得るのに一般的に用いられている。一つの方法は、キラルプール合成であるが、それは、目的の新しい分子を生じるキラル出発分子のライブラリーの使用と同時に、それらのキラル中心を保存しようと試みることを必要とする。許容可能な鏡像異性体純度の製品を提供するのに、しばしば、「ポリッシング(polishing)」キラル分割または分離工程が必要とされる。第二の方法は、キラル触媒反応であるが、それは、キラル触媒を用いて、鏡像異性的に純粋な化合物を生じる。しかしながら、触媒と標的分子を適合させることは、難しいことがありうる。第三の方法は、キラル結晶化である。いくつかの場合、ラセミ体は、所望の鏡像異性体を選択する別のキラル化合物と錯体形成していて、それら二つの鏡像異性体の間に、一方を晶出させる化学的相違を生じる。その他の場合、溶液にキラル結晶を播種して、所望の鏡像異性体を選択的に晶出させる。しかしながら、このアプローチは、異なったエナンチオピュア(enantiopure)な微結晶へと結晶化する既知の化合物の約10%にしか有効ではない。第四の方法は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などのキラルクロマトグラフィーであるが、それは、模擬移動床(simulated moving bed)(SMB)と称される連続クロマトグラフィー法またはバッチ様式で用いられる。SMBは、カラム内部の固体床の動きを模擬するパターンで開閉されるカラムに沿った流体入口および出口バルブを有する、平行して疑似連続的に運転される多数の大型キラルHPLCカラムを必要とする。これら方法は全て、拡張可能性の点で課題があり、薬物発見から半調製、実験および生産規模への拡大を通して一般的に応用可能な方法はない。
【0004】
一般的な問題として、鏡像異性体のキラル認識および選択は、大部分の他の形の化学的相互作用および認識よりも要求されている。鏡像異性体は、位相的に同一であるが、微妙な「鏡像」対称の存在によってそれらの三次元配置だけが異なるので、それらは、分離し難い。したがって、それらの化学および分離用挙動の側面は全て、キラル環境の存在下におけるプローブまたはリガンドの存在を除いて、同一と考えられる。広く支持される理論は、キラル特異的リガンドまたは結合相互作用について、鏡像異性体間の相違の三次元性状を区別するために、1分子につき3個の別々の部位が必要とされるということを示唆している。実際に、大部分の一般的なキラルセレクター技術は、鏡像異性被検体と、例えば、キラルリガンドとの間の多点相互作用に頼っている。
【0005】
キラルクロマトグラフィーの基本的な方法は、HPLC、SFC(超臨界流体クロマトグラフィー)およびSMBであり、模擬移動床方法は、開発中でもある超臨界流体移動相を用いている。これらクロマトグラフィー分離方法はいずれも、分取分離用に、すなわち、エナンチオ濃縮された(enantioenriched)またはキラル的に純粋な画分を出発混合物から分別し且つ回収するのに用いることができる。SFCは、HPLCおよびSMBと一緒に、移動相または移動相成分として超臨界ガスでHPLCおよびSMBアプローチを可能にするのに、ある程度の追加の工学的設計を必要とする技術として考えることができる。HPLC、SMBに用いられるキラルクロマトグラフィー用材料およびそれらの超臨界流体類似体は、多くの場合に同じである。HPLCは、高度に設計されていて且つ緩慢で、低容量および低処理量である傾向があり、弱く選択的で極めて化学的に特異的な基材の極めて小さい粒子を用いている。SMBは、より高い処理量を与えるが、なお高度に設計されていて且つ高価である傾向があり、SMB装置は、典型的に、製造規模で分離される医薬分子各々について具体的に設計されている。
【0006】
クロマトグラフィーの場合、カラムまたは収着剤の変更は、そのシステムが異なった分子を分離することを可能にする。非キラルクロマトグラフィーには、同じクロマトグラフィー用材料、そしてしばしば、同一カラムを用いて分離される多くの分子および試料混合物に向けることができる一般的なカラムタイプおよび材料が存在する。例えば、逆相「C18」カラムは、非キラルクロマトグラフィー分離を必要とする分子の大多数に向けられている。これら非キラルアプローチの場合、移動相組成の変化は、典型的に、異なった分子タイプの分離に向けるのに十分である。対照的に、キラルクロマトグラフィー分離は、極めて多数のキラル固定相またはキラル材料を用い、その場合、各々のキラル材料タイプは、それが分離しうるキラル分子タイプに、はるかに高い特異性およびより低い一般性を有する。特定のキラル固定相によって対応される分子のクラス内でさえも、十分に分離されうる分子、僅かに分離されうる分子、そして全く分離できない分子がそれぞれ存在し、具体的な分離の成功または失敗について単純な合理的根拠は与えられていない。ある一定の種々の化合物を分離することができるキラルHPLCには、「汎用」固定相がいくつか存在する。しかしながら、特殊な固定相は、酸、遊離アミン、芳香族アルコール、塩基、およびある種の炭化水素化合物を含めた多数の一般的な化学クラス(更には、それらクラス内の具体的な化合物)のために要求される。
【0007】
更に、いくつかの固定相だけが、“結合”基材として利用可能であるが、ここにおいて、キラルセレクターは、シリカに共有結合している。多くの利用可能な固定相において、キラルセレクターは、弱いファンデルワールス相互作用によってシリカ表面に単に吸着しているにすぎないので、適合的な溶媒は、非結合キラルセレクターを溶解除去することがないものに限定される。更に、キラルセレクターの結合は、その性能に影響を与えることがあり、例えば、キラル認識に基づく分割に用いられる部位の形状を変化させることがありうる。したがって、クロマトグラフィー固定相に用いられる材料について、改善されたキラル選択性、及び、いろいろなキラル被検体タイプにおよぶ幅広い利用可能性が求められる。
【0008】
キラルキャビティの形状は、鏡像異性体を能動的に結合するよりもむしろ受動的に含有することにより、鏡像異性体について選択的でありうるという間接的証拠がある。これらデータの大部分は、ポリマーまたは分子インプリンティング(imprinting)についての研究に由来する。これら研究では、鏡像異性体を、ポリマーマトリックス中に溶解後、それを凝固させる。鏡像異性体「ゲスト」は、引き抜かれて、その自由体積でキラルキャビティに偏りがあるポリマーを残留させる。これら「分子インプリンティング済み(molecularly imprinted)」材料は、それらを生じるのに用いられるキラル化合物の鏡像異性体についておよび密接に関連するキラル分子について選択的であることが判明した。選択性は、インプリンティングが、低分子ゲストとホストマトリックスとの間の強い化学相互作用を包含する場合に向上する。ゲストとホストとの間の強い化学相互作用の不存在下でのインプリンティング済みポリマー材料の弱く且つ特異的な選択性は、ポリマー鎖の限られた柔軟性およびそのポリマー内の非キラル自由体積のためであると考えられ、それが、鏡像異性体ゲスト種によって導入されるキラル体積の作用を弱める。強い化学相互作用が導入された時、その状態は、事実上、キラル分子を認識するのに十分な小さい体積中で3個またはそれを超える結合部位が利用可能である状態であり、選択の機構は、多くのリガンド機能付加キラル基材に用いられる機構へと還元される。
【0009】
別のキラル選択法において、キラル選択的リガンドは、閉じ込められたキラル環境に置かれて、エナンチオ選択的方式で結合を偏らせる。ここで考えられるキラル選択的相互作用は化学的であり、そして二次元環境を生じる(すなわち、表面上のキラルリガンドまたはキラル表面上のリガンドによって鏡像異性体を結合する)。クレーを基材とするキラルセレクターは、クレー鉱物の部分剥脱層の間のキラル選択的分子の閉じ込めに基づいて提案されている。硬質表面上の銅のキラル配置の薄膜蒸着も提案されている。このような材料を用いたキラル選択は、標的被検体分子を結合する化学リガンドでのキラル銅表面の更なる機能付加を必要とすることがありうる。
【0010】
若干の場合、十分に画成されたキラル体積、例えば、ポリマー分子の絡み合ったらせんから形成される分子スケールのチューブ、または膜に組織化されうるキラルカーボンナノチューブを生じた。キラル“ゼオタイプ(zeotypes)”(ゼオライトのような)、および酵素ポケットのような形状に基づく機構も、キラルセレクターとして提案されている。これらの場合の全てにおけるキラル選択性は、結合相互作用を必要とするキラル被検体とキラルセレクターキャビティとの間の密接した適合状態に依存している。典型的なキラル配位子に基づく選択性について指定された3個またはそれを超える結合部位の個別のセットは、極めて多数の一層弱い、特異性の少ないファンデルワールス相互作用で置き換えられる。キラル被検体とセレクターキャビティとの間の緊密な“適合性(fit)”および明確に規定されたキラル体積を必要とするこれら技術は、所与のセレクター材料中のキャビティ中に適合する化学物質の範囲によって制限され、したがって、広範囲の被検体にわたる多数の異なったタイプのセレクターを必要とする。
【0011】
キラル分離において潜在的に有用なキラル選択性材料は、疎水性液と親水性液との間の界面でのキラルヒドロゲルの形成を可能にするテンプレーティング法を用いてタンパク質溶液から製造される(本明細書中に援用されるWO2004/041845号“Templated Native Silk Smectic Gels”を参照されたい)。このようにして形成されたヒドロゲルは、ねじれた分子の配列によって生じる材料の超構造を有することがあり得、層および/またはナノスケールチャンネルを含めた長距離秩序構造を示すことがあり得る。これらヒドロゲルおよびそれから得られる乾燥固体のキラル構造は、キラルセレクターとしてのそれらの潜在的使用が可能になる。これらの材料の場合、キラル選択性は材料の形態に関連していて、キラル選択性の顕著な相違は、その材料の構造が変化した時に認められる。
【0012】
更に、これらゲルを形成するのに用いられるテンプレーティング法は、煩雑で且つ労力を要することがありうるし、しかも束縛された環境における環境的に不利な又は毒性の有機溶媒の使用を必要とすることがありうる。テンプレーティングは、テンプレーティング液に収容できる容器の中で行われ、そして静止している、安定で且つ凝集性の液−液界面の形成を包含する。したがって、テンプレーティング材料の形状および形式は制限され、大規模な加工は難しい。更に、テンプレーティング法の界面性状は、比較的平らなチャンネルを有する構造を生じることがあり、それが、キラル選択性に影響することがありうる。更に、テンプレーティング済み材料は、界面における“コア/スキン”効果による不均一性を示す。バリヤー層は、界面上のスキンとして形成され、そして次に、テンプレーティングによりバルクのヒドロゲルであるポリマー溶液となる。異なった性質を有する二つの異なった層の存在は、界面およびバルク内における材料特性に相違を生じることがありうる。界面からの距離で異なる材料構造で生じる“勾配”キラル構造が生じることがありうる。テンプレーティング済み材料は、更に、化学安定性、水性溶媒中の膨潤度、および/またはある種の用途について改善されうる純度のレベルを示すことがありうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
キラル材料およびキラル分離性能の更なる改善が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
要旨
本明細書中において、安定な且つ極めて選択性を有するキラル材料を製造するための材料および方法を開示する。それらの材料には、限定するものではないが、キラルクロマトグラフィーに用いるのに十分に適している実質的に一様な円形キラル粒状物が包含される。更に、キラル分離に用いられる様々な化学的環境においてそれらのキラル選択的構造を安定化するようにキラル材料を加工する方法を提供する。更に開示されるのは、キラル選択性材料を、例えば、その湿潤性および化学親和特性を変更するように、したがって、キラル分離におけるその用途特異的性能を改善するように化学的に機能付加する方法である。これら材料および方法を適用すると、液体クロマトグラフィーによって分割することが難しいまたは不可能であると従来考えられていた化合物について、キラル分離が達成される。
【0015】
一つの側面は、キラル粒状材料を製造する方法を提供する。その方法は、繊維状タンパク質またはキラル合成ポリマーを、その繊維状タンパク質またはキラル合成ポリマーを膨潤させる膨潤剤を含有する水溶液に暴露することを包含する。膨潤した繊維状タンパク質またはキラル合成ポリマーを、その水溶液中でアニーリングすることにより、液晶性秩序固体が得られるが、それは、キラルな細孔またはチャンネルを含む層間領域を規定する多層構造を有する。膨潤剤を除去し、そしてキラル粒状材料を回収する。
【0016】
ある種の態様において、キラルな細孔またはチャンネルは、約5nm〜約50nmの直径を有する。いくつかの態様において、繊維状タンパク質またはキラル合成ポリマーは、約3:1より大のアスペクト比を有する。いくつかの態様において、キラル粒状材料は、約2:1〜約1:1のアスペクト比を有する。ある場合には、アニーリングは、少なくとも約4時間、または約1時間〜約6時間行う。ある場合には、キラル粒状材料を硬化させて、その材料の構造を安定化する。例えば、ある場合には、硬化は、膨潤剤を実質的に不含の水溶液またはアルコール溶液中で粒状材料を少なくとも約3時間加熱することを包含する。ある場合には、硬化は、約3時間〜約48時間行う。特定の態様において、キラル粒状材料は架橋している。いくつかの態様において、キラル材料の内部中の水性溶媒を、第二溶媒と交換する。ある場合には、触媒を、キラル材料の内部中に導入する。
【0017】
別の側面は、多層構造を有する繊維状タンパク質液晶性秩序固体の密な充填粒子を含有するキラル分離カラムを提供する。多層構造の各々の層は、分子配向した繊維状タンパク質を包含し、そしてそれら層は、キラルな細孔またはチャンネルを含めた層間領域を規定する。それらキラルな細孔またはチャンネルは、一つのキラル配向に選択的であり且つ約5nm〜約50nmの直径を有する。
【0018】
いくつかの態様において、粒子は、実質的に一様な円形粒子である。ある場合には、それら粒子は、約5ミクロン〜約25ミクロンのサイズを有する。特定の態様において、カラムは、約10%EEより大の分離効率を与える。いくつかの態様において、粒子は架橋されている。若干の場合、それら粒子は、溶媒中で膨潤している。
【0019】
別の側面は、多層構造を有する繊維状タンパク質液晶性秩序固体の実質的に一様な円形粒子を包含するキラル粒状材料を提供する。多層構造の各々の層は、分子配向した繊維状タンパク質を包含し、そしてそれら層は、約5nm〜約50nmの直径を有するキラルな細孔またはチャンネルを含む層間領域を規定する。
【0020】
いくつかの態様において、材料は架橋されている。特定の態様において、架橋結合は、約1重量%〜約20重量%、例えば、約5重量%のキラル材料を含む。ある場合には、架橋結合密度は、水中の粒状材料の膨潤を減少させるように選択される。特定の態様において、材料の接触可能表面積は、キラルサブミクロンテキスチャーを有する。その材料の粒子を含有する分離カラムも提供する。
【0021】
さらに別の側面は、キラルHPLCカラムであって、一つまたはそれを超える2−ヘプタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−ペンタノール、2−ブタノール、2−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−1−ペンタノール、3−ブチン−2−オール、フェランドレン、フルオキセチン(fluoxetine)、サリドマイド、アルカロイド類およびテルペン類の鏡像異性体のためのベースライン分割クロマトグラフを製造することができるキラルHPLCカラムを提供する。若干の態様において、カラムは、このような化合物の構造異性体および/またはジアステレオマーを分割することができる。いくつかの態様において、カラムは、多重キラル中心を有する鏡像異性体を分割することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
詳細な説明
本明細書中において、キラル選択性材料、これら材料を製造する方法、およびそれらを用いてキラル分離を行う方法を開示する。ある種の態様は、広範囲のキラル分子をクロマトグラフィーおよび他の用途において分離するのに有用である極めてキラル選択的な分離基材を提供する。一つまたはそれを超える態様によるキラル材料は、現在利用可能な基材および材料の約10,000倍〜100,000倍キラル選択的である。典型的な既存の基材は、弱いキラル選択性しか与えない。対照的に、本明細書中の一つまたはそれを超える態様による基材および材料は、1分離段階につき少なくとも約15%の鏡像異性体過剰率(EE)を与える。鏡像異性体過剰率は、鏡像異性体AおよびBを含有する試料について、試料中に存在する二つの鏡像異性体のモル数の差の絶対値を、試料中の双方の鏡像異性体の全モル数で除したもの、すなわち、(|モルA−モルB|/(モルA+モルB))×100%で示すことができる。
【0023】
キラル選択的粒状材料
一つの側面は、キラルクロマトグラフィーまたはバッチ収着剤分離などのキラル分離に用いるのに適する粒状材料を提供する。ある種の態様において、キラル選択的材料は、キラル合成ポリマーまたは繊維状タンパク質などのポリマー、例えば、繊維またはフィブリルを形成するタンパク質または合成ポリマーから製造される実質的に一様な円形粒子の形で提供される。少なくともいくつかの態様において、円形粒子は、より大きい材料の塊から粉砕されるのとは反対に、材料を製造する加工法によって直接的に形成される。少なくともいくつかの場合、これら直接的に形成される粒子の実質的に一様な円形性状は、機械的粉砕方法によって生じる一層多分散の、不均一なまたは非対称の粒子からそれらを区別する。実質的に一様な円形粒子を含有する粉末は、クロマトグラフィーカラムを製造するのに、例えば、キラルHPLC分離に用いるのに十分に適する良好な充填性および流動性を与える。
【0024】
少なくともいくつかの態様において、本明細書中に記載のキラル材料は、それらが、キラル二次構造(例えば、らせん)を結晶相中に形成することになる、他のキラル相と溶液中で相互作用することになる、そしてキラルドメインを形成するのに十分な配向を有することになる十分な量のキラルサブユニットまたはモノマーを有する、一方の鏡像異性体について豊富化されたポリマーから製造される。特定の態様において、そのポリマーは、少なくとも約30%、例えば、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、または実質的に100%の、単一配向を有するキラルモノマーを包含する。
【0025】
本キラル材料を製造するのに適した原料には、天然繊維状タンパク質、このようなタンパク質に由来するタンパク質およびポリペプチド、およびこのようなタンパク質に由来する配列を有する生合成物質が含まれるが、これらに限定されるわけではない。好適な繊維状タンパク質には、下に更に詳細に記載されるような、コラーゲン、ケラチン、コリオン、アクチン、フィブリノーゲン、フィブロネクチンおよびシルクが含まれるが、これに制限されるわけではない。糖類、セルロース誘導体および他のらせんまたは簡単なキラル剛性分子構造などの他の生体ポリマーも、キラルチャンネルを生じる相互貫入性(interpenetrating)キラル積層相を形成すると考えられる。更に有用な原料には、本明細書中に援用される“Self-Assembling Polymers and Material Fabricated Therefrom”と称されるWO03/056297号に記載のようなアミノ酸パターンを有する合成ポリペプチドおよびペプチドが含まれる。
【0026】
いくつかの態様において、原料には、「エラストマータンパク質」の一般的なクラスが含まれる。これらタンパク質は、脊椎動物の筋肉、結合組織および血管に、二枚貝軟体動物に付着タンパク質として、クモおよび昆虫シルクに、そしてコムギ種子に存在する。それらは、規則的構造などの多数の共通の様相(例えば、支配的二次構造モチーフ、二次構造の超分子らせん配置、分子、または組織中の繊維、細胞外物質、生物外物質または細胞内構造物質)を示す。有用な原料の非制限的な例には、繊維状タンパク質コラーゲン、FACTTコラーゲン、哺乳動物コラーゲン、無脊椎動物コラーゲン、海綿動物コラーゲン、ナマココラーゲン、エラスチン、レシリンおよびケラチンが含まれる。このような繊維状タンパク質配列およびパターンを包含する合成分子も有用である。
【0027】
繊維状タンパク質の中は、細胞外マトリックスタンパク質として存在し、または生物、例えば、無脊椎動物の外部にも見出されるので、それらの単離および加工が容易になされるものがある。好適な細胞外タンパク質の非制限的な例には、シルク、コラーゲン、レシリン、ケラチンおよびエラスチンが含まれる。特定の態様において、無脊椎動物から抽出されるコラーゲン、エラスチンおよびレシリンなどのタンパク質に加えて、シルクなどの細胞外タンパク質は、例えば、繭、卵外被、ドラグライン(dragline)またはクモの巣から得られる。天然シルクタイプの例には、クモドラグラインシルク、クモカプチャー(capture)シルク、クモクリベレート(cribbelate)シルク、クモアンカー(anchor)シルク、クモの巣シルク、昆虫繭シルク、および昆虫およびクモの卵外被シルクが、制限されることなく含まれる。主なシルク生産性生物には、クモ、シロアリモドキ(embiids)(エンビイディナ(embiidina))、ガおよびチョウの幼虫(膜翅目(Hymenoptera)および鱗翅目(Lepidoptera))、ハエ、ミツバチおよびスズメバチ(wasps)が含まれる。
【0028】
いくつかの態様において、いろいろなシルク、コラーゲン、および9種類のクモ類(Arachnida)からの他の繊維状タンパク質を用いる。有用な量で入手可能な多数の形のシルクを有するArachnida の非制限的な例には、以下のもの、すなわち、ジャンピングスパイダー(jumping spider)(ハエトリグモ科(Salticidae)、時々、ハエトリグモ(salticids)と称される)、カニグモ(例えば、ミスメノイデス(Misumenoides))、ゴールデンシルクスパイダー(golden silk spider)(ネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes))、スパイニーオーブウィーバー(spiny orb-weaver)(ガステラカンタ・カンクリホルミス(Gasteracantha cancriformis))、アルギオペスパイダー(argiope spider)(例えば、アルギオペ・アウランティア(Argiope aurantia))、グリーンリンクススパイダー(green lynx spider)(ポーセチア・ビリダンス(Peucetia viridans))、ドクグモ(ドクグモ科(Lycosidae)、例えば、リコサ・カロリネンシス(Lycosa carolinensis))、ロングジョーオーブウィーバー(long-jawed orb-weavers)(アシナガグモ属(Tetragnatha))が含まれる。
【0029】
シルク生産性の属、科および具体的な生物の追加の非制限的な例には、以下のもの、すなわち、アラネア(Aranea)、ジョロウグモ(Nephila)、アンテレア(Antherea)、カイコガ(Bombyx)、アルジェミア(Argemia)、ゴノメタ(Gonometa)、ボロセラ(Borocera)、アナフェ(Anaphe)、テトラグナチデエ(Tetragnathidae)、アジェレニデエ(Agelenidae)、ホルシデエ(Pholcidae)、テリジイデエ(Theridiidae)、ダイノピデエ(Deinopidae)、メテオリネエ(Meteorinae)(Hymenoptera、コマユバチ科(Braconidae))、Embiidina、トロピカル・タルサル・シルクウォーム・アンテレエ(Tropical Tarsar Silkworm Anthereae)、エリ・シルクウォーム(Eri Silkworm)、サミア・レシニ(Samia recini)、フィロサミア・レシニ(Philosamia recini)、アンテライア・アッサマ(Antheraea assama)、ナング・ライ(Nang-Lai)、ヤママユガ科(Saturniidae)、アンテライア・ペリヤ(Antheraea periya)、B.マンダリナ(B. mandarina)、アンテライア・ミリッタ(Antheraea mylitta)(ドーリ(Doory))、アンテライア・アサメンシス・ヘルファ(Antheraea Asamensis Helfer)、寄生性スズメバチコテシア(アパンテレス)グロメラタ(Cotesia(Apanteles)glomerata)の繭、アンテライア・ヤママイ(Antheraea yamamai)、カロサミア(Callosamia)(Saturniidae)、ヘミロイカ・グロタイ(Hemileuca grotei)(Saturniidae)、アニソタ(Anisota)(Saturniidae)、シニア(Schinia)、ヘミロイカ(Hemileuca)(Lepidoptera、Saturniidae)、アクチアス(Actias)属、シテロニア(Citheronia)(Saturniidae)およびユーテリイネエ(Euteliinae)亜科(ノクツイデエ(Noctuidae))、ヘミロイカ・マイア(Hemileuca maia)複合種(Saturniidae)、アルセヌリネエ(Arsenurinae)(Saturniidae)、アガペマ(Agapema)(Lepidoptera、Saturniidae)、アタクス・マクムレニ(Attacus mcmulleni)(Saturniidae)、ラシオカムピデエ(Lasiocampidae)(Lepidoptera)、アタクス・カエサル(Attacus Caesar)、アニソタ・ロイコスチグマ(Anisota leucostygma)、クリクラ・トリフェネストラタ(Cricula trifenestrata)、ナトロノモナス・ファラオニス(Natronomonas pharaonis)、スフィンジカンパ・モンタナ(Sphingicampa Montana)、ピガルクティア・ロセイカピティス(Pygarctia roseicapitis)、ロイカノプシス・ルリダ(Leucanopsis lurida)、ヘミロイカ・フアラパイ(Hemileuca hualapai)、ヘミヒアレア・エドワルジ(Hemihyalea edwardsi)、グラミア・ジェニュラ(Grammia geneura)、ユーパカルジア・カレタ(Eupackardia calleta)(野生カイコガ)、オートメリス・パタゴニエンシス(Automeris patagoniensis)、オートメリス・セクロプス・パミナ(Automeris cecrops pamina)およびアンテレア・オクレア(Antherea oculea)が含まれる。
【0030】
本明細書中の態様の多くは、繊維状タンパク質に関して記載され、具体的には、シルクを基材とするタンパク質に関して説明されているが、本明細書中に記載の方法および組成物は、そのように制限されることはなく、繊維状タンパク質または合成ポリマーを含めた他の原料に関して適用可能である。原料ポリマーのキラル性状は、本明細書中に記載のように製造されて得られたキラル材料の分子立体配置および分子上部構造にある役割を果たしている。そのポリマーから形成されるキラル材料は、キラル選択性である、すなわち、同一化合物の二つの鏡像異性体を区別し且つその一方と選択的に相互作用することができる。対照的に、原料ポリマーは、キラル分子を含有するが、典型的に、測定可能なキラル選択性を示さないし、または不十分にしか選択性でない。一つまたはそれを超える態様によるキラル材料の物理的および光学的性質のこれらおよび他の特徴は、本明細書中に記載のポリマーを加工する際に生じる材料の固体状態配置の変化に反映する。
【0031】
いくつかの態様において、キラル選択性粒状材料は、約25μm未満、例えば、約5μm〜約25μm、または約10μm〜約25μmの範囲内のサイズを有する粒子を包含する。粒子サイズは、例えば、電子顕微鏡または篩分け分析よって決定される。いくつかの態様において、それら粒子は、実質的に一様な円形粒子である。このような粒子は、例えば、充填クロマトグラフィーカラムに有用である。しかしながら、いろいろな態様において、それら粒子は、長球状、細長いまたは針状、ドーナツ形、ローブ、正方形または台形を含めた様々な形状を有する。アスペクト比は、典型的に、(当然ながら、例えば、約3より大のアスペクト比を有する外観構造(aspected structure)を仮定することができる)原料ポリマーの場合より小さい、例えば、約2:1〜約1:1である。ある場合、多孔度は、原料ポリマーと比較して増加する。一つまたはそれを超える態様において、それら粒子は、巻かれたシートまたは丸められたシートから成る。それらシートは、キラル表面テキスチャーを有し、ある場合には連続している。
【0032】
キラル選択性材料構造
一つまたはそれを超える態様において、キラル選択性材料を提供するが、その構造は、キラル合成ポリマーまたは繊維状タンパク質のキラル液晶層に基づいている。このようなポリマーは、分子の層が形成される濃厚溶液中でキラル液晶を形成する。それら分子の層は、ねじれようとし、そしてそれら層内の分子自体、別の層中の長距離秩序と適合しない方式で同時にねじれる。その結果は、ねじれたポリマー層および溶媒が充填した細孔またはチャンネルの相互貫入性ネットワークである。この相互貫入性ネットワークは、構成成分であるポリマーがキラルであるので、キラルねじれを包含する。得られた材料は、キラルな細孔またはチャンネルから成る高い内部表面積を有し、そしてキラル分離に良好なキラル選択性を与える。
【0033】
特定の態様において、実質的に一様な低アスペクトサイズのタンパク質およびポリマーの粒子は、タンパク質層の不連続な積重ねから作られる。これら層のしわ及び穿孔は、層がねじれる傾向を生じるキラル相互作用と組み合わされて、規則的マイクロスケールパターン表面テキスチャーを生じる。繊維状タンパク質(およびそれらの構造上に設計された合成ポリマー)は、通常、大きいキラル自己二次加工性単位と、より小さい可溶化機能性末端から成る。その分子全体の熱力学的に好ましい状態は、自己二次加工性ブロックの熱力学的に好ましい状態に似ている。タンパク質繊維は、スメクチックまたはヘキサチック(hexatic)液晶様相で配列する傾向がある。
【0034】
スメクチック相形成性自己二次加工性ブロックの間の相互作用が支配的な分子充填性幾何学的形において、末端鎖(「末端ブロック」)を含有する領域中の局部充填は、それらの末端ブロックの理想的な熱力学的に好ましい幾何学的形が自己二次加工性ブロックに好都合な充填と適合性ではないので、しばしば、高度に緊張した状態にある。それらの末端ブロックは、それらの局部的な熱力学的理想状態からほど遠い状態を強制され、「フラストレート(frustrated)」している。フラストレートしたスメクチック秩序固体が生じるが、ここにおいて、層間領域中の密度および相互作用挙動は、同一組成の塊状物質または非フラストレート表面に対して大きく乱される。
【0035】
一つまたはそれを態様において、それらの材料は、キラルな細孔またはチャンネルから成る高い内部表面積を有する。キラルチャンネルまたはキラル連続細孔セット内では、対流、毛管現象、拡散または別の機構によってチャンネルを介して輸送される分子は、チャンネルまたは連続細孔システムの壁と頻繁に相互作用するであろう。チャンネルまたは連続細孔システムの直径が、該分子と同等である場合(1x〜2x)、該分子と固体壁との間の相互作用は、一部の分子運動を妨げ、そして分子の拡散を有効に妨げるか、又は細孔間はチャンネルからそれを排除する。チャンネル直径または細孔直径が、分子よりはるかに大きい場合(>50x〜100x)、それらの壁の化学および形状は、細孔システム又はチャンネル内の分子輸送に極めてわずかに寄与する。しかしながら、分子の数倍〜およそそれより大きいオーダーの直径を有する(4x〜60x)細孔またはチャンネルについては通常、拡散に対する顕著な障壁をもたずに、チャンネルまたは細孔の壁と分子との間に有意な相互作用が存在する。この範囲内の細孔およびチャンネルサイズ(すなわち、直径)では、多くのキラル相互作用は、溶質といずれかのキラル分子との間に、数オングストロームおきの拡散について材料表面内に空孔または構造体を生じる。更に、細孔またはチャンネル壁の曲率およびその曲率のキラル特性は、例えば、角運動量の移動、壁付近の被検体の立体配置エントロピー、および他の同様の相互作用を伴う壁と被検体との間の物理的相互作用が、異なったキラル対称を有する分子について重要であり、有意に異なった状態になるような長さスケールである。いずれか特定の理論によって拘束されるわけではないが、非特異的相互作用でさえも、材料の細孔またはチャンネル構築物を通過する鏡像異性体の拡散にキラル選択的であると考えられる。相互作用について材料ナノ構造によって与えられる大きい表面積は高い選択性を与える。そして、主にエントロピーによって推進される拡散および相互作用プロセスが可能であることは、分離が特定の十分に適合した溶質−末端ブロック対に特異的でないということを確実にする。このタイプの機構に関する更なる詳細については、援用されるWO2004/041845号を参照されたい。
【0036】
特定の態様において、本明細書中に記載のように製造されるキラル材料は、一つまたはそれを超える次の特徴を包含する。少なくとも若干の場合、それらキラル材料は、強いスメクチック層形成を有する。分子は、キラルスメクチックまたはヘキサチック相中に局部的に配列している。分子は、長手方向を有し、そして材料の小局部中の分子の長手方向は、同一方向に配向している(スメクチックで且つ非等方である)。配向の分布は、ネマチック、コレステリック、または「青色相」液晶中よりも広くない。キラル材料は、更に、層または二重層中に局部的に配列している分子を包含する。規則的な充填は層内に局部的に存在しうるが、流動性または可塑性は維持される。少なくともいくつかの場合には、機能性ブロックは、層間領域中に溶質を局在化させるのに用いられる(エンタルピーまたはエントロピーに関して)。キラル機能性ブロックは、高い相互作用表面積を与えるナノスケールキラル細孔またはチャンネルを形成する。その材料中には、非特異的拡散を妨げるのに十分な構造および密度が存在する(スメクチックまたは一層高い秩序、およびホモポリマーに匹敵しうる又はそれを超える密度)。特定の態様において、キラル材料は、溶質、およびその溶質の溶媒との化学的適合性を示す。少なくともいくつかの場合、その材料は、溶媒中で膨潤して、溶媒拡散を促進するが、溶解することはない。膨潤は、典型的に、エンドブロックの体積の約50%未満の増加に制限される(例えば、エンドブロックが、材料の20%を構成している場合、膨潤は、約10%以下である)。
【0037】
キラル分離の機構
本明細書中に記載のように製造されるキラル選択性材料は、湿潤形または乾燥形のキラルセレクターとして用いるのに適している。一つまたはそれを超える態様によって製造される材料は、分離されている鏡像異性体の化学とは無関係であるような、キラル分離に一般的な機構を提供する(溶媒湿潤および溶質分配などの典型的な分離物理化学的ファクターは別として)。典型的に、慣用的なキラル材料は、選択されている分子と類似したサイズスケールのキラル表面、キャビティまたは体積に、更には、分離を行う多重接触点にあるセレクターマトリックスとキラル分子との間の密接な接触および特異的相互作用に頼っているので、一定範囲の被検体にのみ適用可能である。対照的に、キラル選択性は、リガンド相互作用、他の結合相互作用、またはキラルな細孔またはチャンネルを含有する材料への化学親和性さえ存在しない場合でも、一つまたはそれを超える態様によるキラル選択的材料において認められる。
【0038】
特定の態様において、本明細書中に記載のように製造される材料は、化学的官能基化によって修飾される。少なくともいくつかの場合、それら材料は、非キラル部分で官能基化された場合でも、それらのキラル選択性を保持し、キラル選択機構は、典型的な化学的/分子レベル相互作用よりもむしろ、材料構造に基づいているということが再度示される。キラル選択機構に加えて、追加された非キラル部分に基づく化学的相互作用が機能する。
【0039】
いずれか特定の理論によって拘束されることはないが、本明細書中の一つまたはそれを超える態様によって製造される材料は、キラル排除機構によるキラル分離を行うことができるが、ここにおいて、ある選択されたキラル配向の分子は、キラル選択性材料の内部キラル体積から排除される。キラル選別(sorting)は、キラル材料の連続細孔およびチャンネル中への及び連続細孔およびチャンネルを介する選択的拡散およびエントロピーによって推進される。少なくともいくつかの態様において、材料のミクロ構造は、高表面積、材料の制御されたサイズ分布の特徴、および拡散を容易にする高連続性を提供する。超分子レベルで規定される材料のミクロ構造およびナノ構造の形状は、一方の鏡像異性体が、対応する反対側の左右像を有する鏡像異性体と比較して、細孔およびチャンネル中に容易に入り且つ長時間を費やすことを可能にする。したがって、一方の鏡像異性体は、キラルな細孔またはチャンネル中に選択的に保持されるが、反対側の左右像を有する鏡像異性体は、その材料を一層速やかに通過する。少なくともいくつかの場合、キラルな細孔またはチャンネルは十分に規定され、そしてその材料は、非キラル分子が接近可能な有意の自由体積を欠くことにより、選択性を向上させる。キラル排除を示すキラル選択性材料の傾向は、カラムクロマトグラフィー、抽出および濾過の過程に利用することができる。
【0040】
分離される分子の鏡像異性体の形状およびサイズと、分離用材料中のキラルな細孔またはチャンネルのそれとの間に、正確な又は厳密な適合状態は不要である。むしろ、分離用材料のキラルな細孔またはチャンネルは、分離される鏡像異性体よりもある程度大きくてよい。形状およびサイズの極めて厳密な適合性がないとしても、細孔またはチャンネルと同一のキラリティーを有する分子は、細孔またはチャンネルを選択的に探り、そして統計的に、反対側のキラリティーを有する分子よりも、分離用材料を通過するのに長時間をかける。しかしながら、キラル細孔またはチャンネルは、キラル分子の通過にキラリティーの意味が全く失われる程には大きくはない。特定の態様において、分離されるキラル分子のサイズの約50倍より小さい直径を有するキラルな細孔またはチャンネルが利用される。例えば、それら細孔またはチャンネルは、分離されるキラル分子のサイズの約40倍、約30倍、約20倍、約10倍または約5倍より小さい。一方の鏡像異性体のもう一方からの分離を可能にする、キラル分子と相互作用するのに十分なサイズの体積を有するこのようなキラルな細孔またはチャンネルを、本明細書中において「キラル体積」と称する。特定の態様において、それら細孔またはチャンネルは、分離されるキラル分子のサイズの約4〜約60倍、例えば、約20〜約50倍の直径を有する。若干の態様において、キラルな細孔またはチャンネルのサイズ(すなわち、直径)は、約5nm〜約50nm、例えば、約5nm〜約30nmであるが、分離される多くの鏡像異性体は、約1nmより小さい。細孔またはチャンネルの直径は、電界放射走査電子顕微鏡(SEM)検査によって決定することができる。
【0041】
キラル選択性材料の製造
特定の態様において、キラル選択性材料の粒子は、膨潤剤または軟化剤を含有する水溶液中で繊維状タンパク質を熱アニーリングすることによって製造する。特定の態様において、微細粒子が形成されるような条件を選択する。少なくともいくつかの態様において、一様な円形粒子を提供する。原料を湿潤させるのに十分な膨潤用溶液を与えるが;しかしながら、タンパク質の添加量は臨界的でない。天然繊維の膨潤は、繊維状タンパク質ナノ構造中の分子の再配置を可能にするが、多くの場合、それは既に、キラル選択的材料に望ましい構造に近い分子配置である。したがって、タンパク質分子の僅かな再配置が、所望の立体配置を達成する。下記のような適当なアニーリング温度および膨潤剤を用いると、タンパク質繊維中の秩序ドメインは、キラル分離用材料に適するキラル構造中へと推進される。繊維状タンパク質は、それらの隣接分子と整列しているタンパク質分子と一緒に、十分な秩序分子構造を形成して、安定な材料を生じる。しかしながら、繊維状タンパク質は、水溶液中でしか膨潤しないので、タンパク質が完全に溶解する場合のように、元のタンパク質立体配置が完全に失われることはない。
【0042】
膨潤剤の非制限的な例には、I族金属、例えば、Li、NaおよびK;II族金属、例えば、MgおよびCaの簡単な塩;およびアンモニウム塩が含まれる。簡単な塩には、塩化物、ヨウ化物、臭化物、硝酸塩(NO)、炭酸塩、重炭酸塩および酢酸塩が含まれるが、これらには制限されない。適当な濃度のこれら塩または他の膨潤剤は、塩水溶液を、繊維状タンパク質にとっての「不良溶媒」に変えるので、ポリマーは、完全に溶解することなく膨潤する。代表的な膨潤剤濃度は、約2M以下である。しかしながら、用いられる量は、具体的な膨潤剤およびタンパク質系に依存して異なる。少なくともいくつかの態様において、膨潤用溶液は、(ポリマー科学の当業者によって理解されるような)「不良溶媒」である。しかしながら、ある場合には、膨潤剤を更に加えることが、水溶液を、タンパク質溶液が得られるような「良好な溶媒」へと変化させる。
【0043】
アニーリング用混合物を、周囲温度より高いが、タンパク質が変性する温度より低い温度に加熱する(またはポリマーについては、ガラス転移温度または融点に達しさせる)。繊維状タンパク質に典型的なアニーリング温度は、約90〜95℃までである。アニーリングは、既存の分子立体配置(典型的には、結晶性βシート)を破壊するように十分にタンパク質構造を膨潤させる十分な時間行われるので、再配置は起こりうる。典型的なアニーリング時間は、約1時間〜約24時間、例えば、約2時間〜約12時間である、または約4時間またはそれを超える。
【0044】
膨潤したポリマーを加熱することにより、キラル選択性材料の望ましい立体配置が形成される。加熱後、その材料を冷却し、そしてポリマーをロックして、典型的に粒子を形成する所望の立体配置にする。いずれか特定の理論によって拘束されるわけではないが、ポリマーは、長距離にわたって生じうる秩序ナノドメインの消失を回避しようとするため、冷却後には、円形のまたは他の低アスペクト粒子形状が(原料物質と更に一致したフィブリルの代わりに)形成されると考えられる。粒子の形成は、当然ながら、ナノドメインを制限し、所望のキラルなの構造を保持する。
【0045】
特定の態様において、添加剤、例えば、ポリマー結晶化度を減少させる可塑剤、または沈殿剤は、組み立て法に影響する水溶液中に包含される。一つまたはそれを超える態様において、酸性添加剤を加えて、過度の結晶化を妨げ且つ繊維状タンパク質の溶媒和を促進する。代表的な酸性添加剤には、酢酸、ギ酸、塩酸、リン酸、トリフルオロ酢酸、硫酸、硝酸、およびAlClおよびFeClなどのルイス酸が含まれるが、これらには制限されない。いずれか特定の理論によって拘束されることなく、酸性添加剤は、水素結合の形成を妨げる傾向があり、それによって、結晶化を妨げると考えられる。
【0046】
いろいろな態様において、製造されるキラル材料の形態学およびミクロ構造は、膨潤剤の選択肢および濃度;温度および湿度などの環境因子;および/または溶媒への修飾、例えば、膨潤用溶液へのエーテル、アルコールおよび/または酸の添加によって制御される。これらパラメーターを変更することは、得られたキラル材料の透過性、分子配向および表面トポグラフィーに影響を与える。
【0047】
一つまたはそれを超える態様において、清浄シルク繊維を、水中に浸漬し、そして例えば、90〜95℃に加熱する。NaClなどの膨潤剤を加えて、それら繊維を軟化させるまたは膨潤させる。繊維は、膨潤用溶液中に約1時間〜約6時間、例えば、少なくとも約4時間保持する。次に、ポリマーをすすぎ洗浄して、塩溶液を除去し、そして乾燥させて、粒状材料を与える。乾燥は、典型的に、自然乾燥、真空下の乾燥、凍結乾燥またはそれらの組合せなどの慣用法を用いて行われる。乾燥温度は、残留する水分の関数である。水分が減少すると、キラル材料の粒子は、より高温で安定である。
【0048】
キラル選択性材料の追加の加工
一つまたはそれを超える態様において、キラル材料の粒子を洗浄して、膨潤剤を除去後、硬化用溶媒中で硬化させて、粒子構造を安定化し且つキラル選択性を増加させる。硬化は、少なくとも約1時間、例えば、少なくとも約3時間、少なくとも約6時間、または約3日を超えるまで行う。硬化は、典型的に、塩溶液の除去後に、水性または有機溶媒中において僅かに高い温で、例えば、約15℃〜約30℃で行われる。一つまたはそれを超える態様において、硬化用溶媒は、粒状材料を湿潤させるよう選択される。いくつかの態様において、溶媒はアルコールである。代表的な溶媒には、水、エタノール、メタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、エーテル、アセトン、テトラヒドロフラン、クエン酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、水性スクロース、水性グルコース、水性フルクトース、水性マンノース、水性デキストロース、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、オクタンおよびアセトニトリルが含まれるが、これらに制限されない。
【0049】
硬化は、通常、図1に示されるような一つまたはそれを超える目的を達成するように行われる。プロセスボックス100は、上記のようなポリマー繊維のアニーリングである。ある場合には、次に、プロセスボックス102に示されるように、繊維を水中で数時間または数日間硬化させて、アニーリング中に繊維から形成される構造を改良又は完成させる。この硬化は、アニーリングの延長として、散在する不純物分子を除去し且つ欠点を減少させるのに役立つ。或いは、または更に、プロセスボックス104に示されるように、上に列挙したようなアルコール中で繊維を硬化させる。アルコールは、タンパク質を十分に溶媒和することがなく、局在βシート形成などの局在結晶化を促進することができる。得られた一層密接なポリマー鎖内または鎖間相互作用の局在化領域は、有効な物理的架橋剤として役立ち、それは、材料ナノ構造をロックインし且つ安定化させる。
【0050】
ある場合には、プロセス102または104にしたがって加工されたキラル材料を、更に処理して、典型的には、追加の化学修飾のための製造において、構造内部中の溶媒を交換するか、又はキラル分離に用いるための材料を製造する(プロセスボックス106を参照されたい)。その材料の固有の化学的性質は、湿潤、収着、化学分配および毛管現象を推進し、そして化学的官能基化によって改質することができる。これらの公知の化学的相互作用および作用は、その材料のキラル体積によって与えられるキラル選択機構とは無関係に働くことができる。非制限的な例として、いろいろな態様において、化学的官能基化は、特定の化合物との化学的適合性、化学またはキラル選択的リガンド、特定の吸着性または機械的、熱的または化学的安定性を導入するのに、または細孔またはチャンネル構造またはサイズを変更するのに用いられる。例えば、ある場合には、化学改質剤を用いて、材料を疎水性にする、材料をハロゲンまたは硫黄に引きつけさせる、又は材料をシラン化合物でコーティングする。代表的な化学改質には、ポリマーの化学架橋、触媒の付加(例えば、有機反応の導電性キラル触媒について)、表面コーティングの付加(例えば、ヘキサメチルジシラン(HMDS)シリコニゼーション(siliconization)、または表面収着性を変化させる他のコーティング)、またはキラルまたはアキラルリガンドの付加が含まれるが、これらには制限されない。好適な化学改質剤には、シラン化剤、架橋剤、疎水性コーティング剤、カップリング剤等が含まれるが、これに制限されるわけではない。ある場合には、化学改質剤は、インキュベーター中において溶媒の存在下で加える。少なくともいくつかの態様において、キラル選択性材料は、化学改質剤と一緒に、化学改質剤との反応を促進する温度でインキュベートする。典型的に、インキュベーション温度は、約70℃を超えない。インキュベーション後、少なくともいくつかの態様において、その材料を、水、アルコールまたは別の溶媒中で洗浄して、過剰の化学改質剤を除去する。
【0051】
一つまたはそれを超える態様において、キラル材料は、物理的または化学的架橋結合を用いて安定化させる。架橋は、材料ナノ構造を安定化させ且つ水または他の溶媒中におけるキラル材料の膨潤度を制御する傾向がある。タンパク質を基材とするキラル材料について、反応性基には、OH、NHおよびCOOHが含まれる。これら基は、縮重合を可能に可能にし、グリシジルエーテルの形成に包含する。縮合について、無水物;二官能性、三官能性および多官能性酸;二官能性、三官能性および多官能性アミン;アミノアルコール;ジオール;グリコール;二官能性、三官能性および多官能性グリシジルエーテル;二官能性、三官能性および多官能性エポキシドおよびスルホキシド;および2個またはそれを超える反応性官能基の組合せを有する分子は、全て有用な架橋剤である。架橋は、二官能性基に制限されない。ある場合には、三官能性および四官能性架橋剤も用いられる。可能な架橋性基の数が多いほど、架橋結合密度は高く、しばしば、他の領域に相対して「硬度」を有する領域を与える。ある場合には、二官能性または多官能性架橋剤中で、活性部分の間の架橋が異なる。若干の態様において、非対称性架橋剤は、例えば、一方の端にグリシジルエーテルおよびもう一方にアクリレート、またはもう一方の端で縮合しうる官能基を有するモノアクリレートが用いられる。非対称性材料がアクリレートで選択される場合、付加重合を可能にする。いくつかの態様において、架橋反応には関与していないが、キラル材料の表面化学を変化させる分子に、官能基を結合させる。例えば、二官能性、三官能性または多官能性グリシジルエーテル官能基を有する分子は、架橋性ジグリシジルエーテル官能基を連結しているアルカン配列も有することができ、それは、その分子がいったん表面上に架橋すると、キラル材料表面に疎水性アルケン特性を与える。同様に、側鎖または側基として存在するが、架橋剤に結合した原子に両末端のところで取り付けられていないペンダントアルカンまたは他の官能基は、疎水性C8、C18または他の典型的な「逆相」HPLC化学を、キラル材料表面に与えるのに用いることができる。いくつかの態様において、無機架橋剤、例えばホウ酸、リン化合物および硫黄化合物などを用いる。
【0052】
いくつかの態様において、キラル材料の内部体積は、分離されるキラル分子の特定のタイプとの好ましい相互作用を促進する物質でコーティングされる。
用途
本明細書中の一つまたはそれを超える態様に従って製造されるキラル材料は、湿潤、乾燥または液晶の形式のキラルセレクターとして有用である。キラル分離用途には、キラル収着剤、クロマトグラフィー基材、フィルターおよびセンサーが含まれるが、これらに限定されない。特定の態様において、キラル鏡像異性体は、鏡像異性体混合物を、溶液中のキラル選択性材料中に拡散させることによって分離される。一つの鏡像異性体は、材料の内部を選択的に探索するが、別の鏡像異性体は、材料から排除される傾向がある。その材料を、溶液から取り出し、そしてすすぎ洗浄して、排除された鏡像異性体を材料表面から除去する。材料の内部を選択的に探索する鏡像異性体は、溶媒抽出によって除去する。ある場合には、キラル選択性材料は、一つの鏡像異性体を「吸い取る(sponge up)」のに用いられて、別の鏡像異性体を取り残す。ある場合には、キラル選択性材料は、フィルター中に形成されるが、それは、一つの鏡像異性体を通過させるが、別の鏡像異性体を保持する。
【0053】
いくつかの態様において、本明細書中に記載のように製造されるキラル選択性材料は、単一分離工程において約10%を上回るEEを与える。約20%、約30%、約40%および約50%を上回る鏡像異性体過剰率は、単一分離工程において認められた。高いEEも認められた。ある場合には、以下の実施例4に記載のキラル選択性試験において少なくとも約50%EEのスコアの材料は、キラルHPLC分離に有用であると判明した。
【0054】
本明細書中の一つまたはそれを超える態様に記載のように製造される材料は、低速〜中速液体クロマトグラフィー(LC)、フラッシュLC、アフィニティーLCおよびHPLCを含めたいろいろなクロマトグラフィー用途において有用である。超臨界流体分離も、可能にする。特定の態様において、実質的に一様な円形粒状キラル選択的材料は、クロマトグラフィーカラムに用いるための良好な流動性および充填性を与える。いろいろな態様において、クロマトグラフィーカラムは、均一濃度、勾配、逆相またはイオンアフィニティー様式で操作される。それらカラムは、水性および非水性溶媒での使用に適している。
【0055】
一つまたはそれを超える態様によるキラル選択性材料は、実質的に一様な円形粒子の形で製造されるが、それは、クロマトグラフィーカラム中に充填するのに十分に適している。以下の実施例で示されるように、その材料を充填したカラムは、十分に機能し、そしてHPLC分離は、従来、液体クロマトグラフィーによってアドレス不能と考えられた化学クラスについて認められた。概して、300未満の分子量を有する小さい化合物;強アミン基を有する分子;および立体障害のあるまたは脂肪の側鎖の後に「埋もれた」キラル中心を有する分子は、従来、液体クロマトグラフィーによって分離することが難しいか又は不可能であった。従来、HPLC分離が得られなかったと考えられる化合物の例には、sec−ブチルアセテート、3−ブチン−2−オール、1−ヘキシン−3−オールおよび2−メチルブタノールが含まれる。現在は、これら化合物のキラル分離が示された。
【0056】
本明細書中の一つまたはそれを超える態様に従ってキラル選択性材料から製造されるHPLCカラムは、優れた選択性、純度、収率および処理量を与える。これらキラルHPLCカラムは、更に、現在利用可能なHPLCカラムと比較して改善された能力を都合よく与える。この改善されたキラル性能に基づき、本明細書中の一つまたはそれを超える態様に従って製造されるキラル材料は、自動化組合せ薬物発見およびスクリーニング装置の組み込み部品として鏡像異性体を生じる組合せ化学システムのフィルターカートリッジ中で用いるのに適している。
【0057】
いくつかの態様において、キラル選択性粒状材料の粉末を、HPLCカラム中に充填する。HPLCのための溶媒系は、当業者に知られている標準的方法にしたがって、被検体に基づいて選択される。ある場合には、その材料を、充填する前に架橋して、水安定性を促進する。ある場合には、その材料を、疎水性層(例えば、ヘキサメチルジシラン(HMDS)などのシランカップリング剤)でコーティングして、水による膨潤に対する安定性を与え且つ疎水性逆相相互作用を促進する。
【0058】
いくつかの態様において、HPLCカラムは、約5μm〜約25μmであるキラル選択性基材の粒子、または約25μmまたはそれより小さい粒子(限界微細粒子ではない)が充填される。非制限的な例として、特定の態様において、カラムは以下のようにして充填される。キラル選択性材料を、イソプロパノールおよび/またはヘキサンを用いてスラリーにする。そのスラリーを、カラム中にまたはプレカラムレザバー中にポンプ輸送後、それを、空のカラムケーシングに連結する。いくつかの態様において、カラムは、約2.5cm〜約25cm長さ、および約0.5mm〜約2cm直径(内径)である。カラム充填時にエアギャップが生じる場合、ある場合には、それを放置するが(例えば、水性系中で用いるために)、他の場合には、それを追加のキラル選択的材料で満たして、密に充填する(例えば、非水性系で用いるために)。カラムが満たされたら、それを、例えば、順相HPLCで用いるために密封する。特定の態様において、使用済みカラムからのキラル選択性基材は、膨潤させることによって再生し、洗浄後、再使用のためにそれを解膨潤する。
【0059】
クロマトグラフィーシステムは、分離において移動相として用いられる溶媒系に応じて、キラル化合物のどちらかの鏡像異性体を溶離させるように調整可能である。材料を膨潤させる溶媒は、しばしば、材料を膨潤させない溶媒と比較して、溶離順序を逆転させる。強い極性相互作用および静電化学相互作用は、非膨潤性溶媒中で有効にスクリーニングされて、形状相互作用がキラル選択性を支配することを可能にする。対照的に、膨潤性溶媒中では形状相互作用は弱くなるが、その場合、極性相互作用、静電相互作用および水素結合相互作用は、一層強く且つ支配的になる傾向がある。溶媒に基づく溶離順序逆転は、材料によって与えられる一つまたは複数のキラル選択機構の一般性ゆえに可能である。
【0060】
本明細書中に記載の材料を用いたキラルクロマトグラフィー分離は、一定範囲の溶媒および溶媒系にわたって得ることができるので、溶媒組成を変更することは、様々なキラル選択性挙動が得られる。標準的なキラル分離に加えて、それら系は、化学的分離;アキラル立体異性体の分離;および多重キラル異性体およびそれらの鏡像異性体および/またはアキラル立体異性体および/または化学的に近縁の種の同時分割を含めた多成分分離を行うのに適している。特定の態様において、カラムは、異性体の混合物として各々存在するいくつか異なった化合物を同時に分離するのに用いられる。各々の化合物の鏡像異性体および/または立体異性体は各々、別々に溶離する。典型的に、ある化合物の異性体が別個に溶離した後、別の化合物の異性体が溶離する。本明細書中の一つまたはそれを超える態様に記載のように製造されるキラル選択性材料を用いたクロマトグラフィー分離は、概して、グラムまたはミリグラムスケールの被検体で実施される。
【0061】
いくつかの態様において、溶媒系を調整することよりもむしろ(またはそれに加えて)、キラル材料自体を化学的に官能基化して、いろいろな分離様式に適応させるおよび/または分離される具体的なキラル分子との相互作用を改善する。化学的官能基化の例は、すでに記載されている。例えば、少なくともいくつかの場合に、キラル材料には、イオン性基が含まれる。したがって、非イオン性条件下で分離を行うことが望まれる場合、イオン性基をキラル材料表面から反応除去させるか、又は、その材料を、イオン化を支持しない溶媒条件下で用いる。
【0062】
他の態様において、キラル材料の膨潤形か又は乾燥形の微粒子は、塗料またはポリマー性材料中の添加剤または充填剤として用いられる。キラル材料の粒子は、それらポリマーおよび塗料をキラル選択性にする。例えば、特定の態様において、キラル選択的な充填剤入りポリマーを生じる。ある場合には、キラル材料の粒子を膨潤させるが、それらを溶解しない溶媒中に溶解するポリマーを選択する。或いは、キラル材料の粒子を湿潤させるが、それらを実質的に膨潤させない溶媒中に溶解するポリマーを用いる。そのポリマーは、キラル材料の粒子のキラルな細孔またはチャンネルを実質的にブロックするには大きすぎるという点で十分に高い分子量を有する。典型的に、ポリマーは、キラル材料の粒子の細孔またはチャンネル直径の約50%より大の回転半径を有する。回転半径は、用いられる溶媒について、公表された値かまたは、動的光散乱および静的光散乱 Zimm プロット、ゲル浸透クロマトグラフィー、または高周波低歪動的機械的レオロジー測定などの十分に普及した実験方法を用いて決定する。ポリマー長さ(分子量)、ポリマー化学および溶媒の関数としてのポリマー回転半径の統計的測度は、当該技術分野において周知であり、例えば、Polymer Handbook(Brandup, Immergut, and Grulke, Eds., John Wiley & Sons (4th Ed., 1999))に見出されうる。
【0063】
いくつかの態様において、塗料用途について、キラル材料の粒子サイズは、約25ミクロン未満、例えば、約10ミクロン未満、または約5ミクロン未満である。しかしながら、ある場合には、キラル充填剤入り材料中には、より大きい又はより小さい粒子を用いる。
【0064】
特定の態様において、キラル選択性ポリマー系材料の粒子を、膨潤性溶媒中で膨潤させ、それによって、細孔またはチャンネルサイズを増加させる。材料中の膨潤度は、その内部の溶媒の浸透圧および化学ポテンシャルによって制御される。膨潤した材料中の細孔またはチャンネルの開放フレーム構造は、キラル材料の内部中への、有機金属触媒および生体酵素などの大きい分子の拡散を可能にする。したがって、特定の態様において、拡散は、材料中に触媒分子を担持するために用いられる。所望の触媒分子濃度に達したら、細孔またはチャンネルを、材料を乾燥させる又は膨潤性溶媒を変化させることによって減少させて、内部の触媒分子を有効に閉じ込める。材料からの触媒分子の拡散を制限するのに十分な細孔またはチャンネルサイズは、触媒分子の幾何学的形状を乱さないくらいの十分な大きさである。
【0065】
重合のためのキラル酵素またはキラル触媒は、反応物の拡散様式および再配向様式に関してキラル的に区別された束縛のために、キラル選択性材料内部のキラル環境において強化されたキラル選択性を示すことがありうる。反応物の異なった活性状態およびキラル触媒の異なったコンホメーション状態は、より対称な環境と比較した場合、分子の長さスケール上のキラルな物理的様相を有する環境において選択的に安定化されると期待される。そのキラル環境は、更に、化学的アキラル触媒分子に、キラル偏向した触媒活性を示させることがありうる。
【0066】
特定の態様によるキラル材料内部のキラル体積は、更に、ミクロスケールおよびナノスケールの反応性および非反応性加工体積として用いるのに適しているが、その場合、その材料を通過する、異なる化学種の流速はプロセスおよび/または反応の速度論支配を与える。速度論的「フロースルー」支配は、キラル体積が大きすぎる場合、又は、曲率が小さすぎる場合でも、加工および性能上の利点をもたらし、反応のキラリティーを有意に偏向させる。
【0067】
本明細書中の一つまたはそれを超える態様に従って製造されるキラル材料は、更に、三次元の逆マスク構造で、オキシドなどの新しい材料を生じるマスクまたは型として有用である。元のキラル材料をマスクまたは型として用いて製造されるこれら新しい材料は、元の材料が多孔質であった場合は常に固体であり、そして元の材料が固体であった場合は常に多孔質である。それらの新しい材料は、制御された形状を有するキラルなナノ構造および/またはミクロ構造を有する。多くの場合、キラル特性は、低分子の数桁の範囲内にある。この方法により得られる新しい材料は、材料に基づくキラルセレクターおよび反応環境として有用である。
【実施例】
【0068】
以下の非制限的な実施例は、特定の態様を更に詳細に説明する。
実施例1:Bombyx シルクからのキラル選択性粉末の製造
Bombyxシルクからのセリシン不含シルクを、0.2M NaCO中において100℃で加熱するような慣用の方法を用いて入手した。セリシン不含シルク繊維(67g)を、1340mlの水道水中の40.2mlの5N HClおよび67gのNaClと混合した。その混合物を、混合中に約80℃に加熱後、その温度を90〜95℃で保持した。繊維は、溶液の表面上に置いた後、湿潤し始めた。繊維が湿潤するにつれて、それらは沈み始め、そしてこの時点で撹拌を開始した。混合物を、高速で1時間撹拌した。1時間後、混合物を室温に冷却した。
【0069】
冷却した混合物は、必要ならば、最初に、1000μm篩によって濾過して、大きい粒状物を除去後、150μm篩によって濾過して、より小さい汚れ粒子をタンパク質粒子から分離した。膨潤用溶液を、10%NaCO溶液で、pHが6〜7に達するまで中和した後、粒子を水で洗浄した。この手順において、1gのシルクタンパク質を25mlの水で洗浄した。この混合物を、室温で5分間撹拌し、濾過した後、新たな洗浄水を、更に撹拌しながら加えた。撹拌、濾過および洗浄の工程を、水の導電率が600mHo(水道水の導電率)へと低下し且つ安定化するまで、3回繰り返した。次に、追加の洗浄サイクルを、水道水の場合と同じシルク対水の比率で脱イオン(DI)水を用いて行った。洗浄は、洗浄後の洗浄水の導電率が約25〜50mHo(DI水の導電率)になるまで続け、典型的には、3回の洗浄サイクルを行った。最終洗浄工程は、2−プロパノールで行った。
【0070】
キラル材料を、濾過し、再使用可能皿に入れ、室温で一晩乾燥させた後、真空オーブン中において55℃で1時間乾燥させた。その材料を、デシケーター中において室温で一晩冷却後、篩いにかけて粒子を分類した。
【0071】
実施例2:Antheraea シルクからのキラル選択性粉末の製造
Antheraea シルクからのセリシン不含シルク繊維を、0.2M NaCO中において100℃で加熱するような慣用の方法を用いて入手した。セリシン不含シルク(67g)を、670mlの水道水中の40.2mlの5N HClおよび67gのNaClと、80℃で混合した。次に、その温度を90〜95℃で保持した。繊維は、溶液の表面上に置いた後、湿潤し始めた。繊維が湿潤するにつれて、それらは沈み始め、そしてこの時点で撹拌を開始した。混合物を、高速で1時間撹拌した。1時間後、混合物を室温に冷却した。
【0072】
冷却した混合物は、必要ならば、最初に、1000μm篩によって濾過して、大きい粒状物を除去後、150μm篩によって濾過して、より小さい汚れ粒子をタンパク質粒子から分離した。膨潤用溶液を、10%NaCO溶液で、pHが6〜7に達するまで中和した後、粒子を水で洗浄した。この手順において、1gのシルクタンパク質を25mlの水で洗浄した。この混合物を、室温で5分間撹拌し、濾過した後、新たな洗浄水を、更に撹拌しながら加えた。撹拌、濾過および洗浄の工程を、水の導電率が600mHo(水道水の導電率)へと低下し且つ安定化するまで、3回繰り返した。次に、追加の洗浄サイクルを、水道水の場合と同じシルク対水の比率でDI水を用いて行った。洗浄は、洗浄後の洗浄水の導電率が約25〜50mHo(DI水の導電率)になるまで行い、典型的には、3回の洗浄サイクルを行った。最終洗浄工程は、キラル溶媒である2−プロパノールで行った。
【0073】
キラル材料を、濾過し、再使用可能皿に入れ、室温で一晩乾燥させた後、真空オーブン中において55℃で1時間乾燥させた。その材料を、デシケーター中において室温で一晩冷却後、篩いにかけて粒子を分類した。
【0074】
実施例3:いろいろな溶媒およびpH範囲におけるキラルシルク材料の安定性
材料は、実施例1により、次の修飾を伴って、ボンビクス・モリ(Bombyx mori)シルクから製造した。そのシルク材料を、水道水で、洗浄水導電率が600mHoで安定化するまで洗浄した。次に、洗浄を、DI水で、洗浄水の導電率が約25〜50mHoになるまで続けた。次に、材料を、新鮮なEtOHで洗浄し、乾燥させた。
【0075】
安定性試験を行って、このようにして形成された材料が、いろいろな共通溶媒中で分解し始めるpHを決定した。材料は、キラルポリマー(シルク)から製造されたので、ベースラインより上の回転シグナルを用いて、分解をアッセイした。材料は、各々3分間撹拌後の2回測定した。僅かな回転アーティファクト(artifacts)が認められたが、それらは、溶媒中の浮遊粒状物に帰属された。異なる溶媒は、異なる結果を与えた。
【0076】
それらの結果は、図2に示されるプロットで報告されているが、材料は、100%水中で極めて安定であったが、混合溶媒系(25:75のエタノール:水)中で安定なほどではないということを示している。洗浄を、極めて透明な洗液が得られるまで行った場合、水安定性が改善された。材料は、水中において2〜8.5のpH範囲にわたって安定であるということが認められた。材料は、アルコールおよび水の混合溶媒系においてこの範囲にわたって安定ではなかった。安定なpH範囲は、この溶媒系において5〜8.5だけであった。
【0077】
実施例4:キラル選択性を試験する方法
キラル材料の安定性を評価し、そしてその材料を、二つ以上の鏡像異性体を含有する試験試料に対するそのキラル安定性について調べる。試験試料は、ラセミ混合物かまたは、100%未満の鏡像異性体過剰率(EE)の一つの鏡像異性体を有する混合物である。
【0078】
最初に、キラル材料の安定性を、材料への暴露の前後に自発的に旋光性を示さない清浄な非キラル溶媒の回転を測定することによって決定する。材料は、キラル材料への暴露後に溶媒の旋光度が不変である場合、安定であると決定する(材料から溶媒中へのキラル分子または粒子の実質的な溶出がない)。
【0079】
次に、キラル材料を、試験試料について調べる。試験試料を、例えば、キラル材料が安定であるpH条件下においてキラル材料と接触させる。キラル材料は、典型的に、試験試料と3〜10分間接触させる。キラル材料は、乾燥粉末である、または溶液中である。試験試料は、鏡像異性体混合物を含有するニートの液体、油状物または溶液である。
【0080】
代表的な試験試料は、DL−リシンを含有する。安定性試験後、キラル材料を、ラセミDL−リシンに対して調べ、そして溶液中に残留するリシンの鏡像異性体過剰率を、溶液中のリシンの出発濃度、実測の旋光度、およびリシンの標準旋光度から算出する。
【0081】
実施例5:架橋タンパク質キラル粉末の製造
キラル材料の粉末を、実施例1に従って製造した。2−プロパノールを、最終洗浄工程に用いた。次に、その材料を、架橋剤としてポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル(PGDE,CL−1)またはクエン酸(CL−2)を用いて架橋した。12gの乾燥キラル材料、3.43gのNaCl、0.6gのポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル(PGDE)またはクエン酸(5重量%添加量の化学架橋剤)および171.6mlのエタノール(EtOH)(またはDI水)を、60℃で1時間撹拌しながら反応させた。その材料を、濾過し、再使用可能な皿の中に入れ、そしてフード中において室温で一晩乾燥させた。次に、その材料を、真空オーブン中において55℃で1時間乾燥させ、デシケーター中で室温に冷却した。粉末を、乾燥時に篩いにかけて、粒子サイズ画分を得た。
【0082】
実施例6:安定性への架橋の作用
一連の架橋キラルタンパク質粉末を、架橋剤PGDE(CL−1)を(キラル材料の重量と比較して)5重量%〜12重量%の比率で加えたことを除いて、実施例5に記載のように製造した。それらの結果を、表1および図3に示す。キラル選択性は、実施例4に記載のように、試験試料としてDL−リシンを用いて決定した。
【0083】
【表1】

【0084】
表1および図3のデータを比較すると、PGDE架橋剤の添加量が7%を上回る場合、曲線は平らに見える。したがって、上記データは、5%を上回る架橋剤添加量において、更なる安定化は得られないこと、そして高いキラル選択性は、12%の架橋剤でも得ることができるということを示唆している。
【0085】
表2および図4は、異なった架橋剤添加割合を用いて製造された材料のpH安定性を比較し、そして12%の架橋剤添加量において、その材料は、4〜8.5のpH範囲にわたって安定であるということを示している。
【0086】
【表2】

【0087】
実施例7:分子構造への架橋の効果
材料構造への架橋の効果を測定するために、フーリエ変換赤外(FTIR)分光法を用いて、架橋剤PGDE(CL−1)をいろいろな添加量で加えながら、化学組成の変化を調べた。図5は、5%(505)、10%(510)、15%(515)および20%(520)の架橋剤添加量を有するキラル材料、および架橋剤不含の対照試料(500)のFTIRスペクトルを示す。
【0088】
FTIRは、分子構造の変化、更には、化学変化を同定することができる。FTIRバンドの分子構造依存性シフトは、ポリマー中のコンホメーションを判断するのに用いることができるし、タンパク質およびポリペプチドについて十分に証明されている。架橋実験において、キラル選択性材料の分子の二次構造は、1619、1512および3281の波数における持続した強いバンドが示すように、不変であった。しかしながら、架橋結合の導入で、スペクトルの最低振動数領域が変化し、そして架橋を結合させる官能基のために、アミドAバンドの最高振動数に若干の構造損失があった。これら結果は、その材料が、材料構造の大規模破壊を伴うことなく架橋することができるということを示している。
【0089】
実施例8:アンテラエア・ペルニイ(Antheraea pernyii)シルクから製造されたキラル選択性粉末
キラル材料を、シルクが、Antheraea pernyii 由来であり、そして3種類の異なった製造について加えられた塩が、1.0N HCl(A1)、20%CaCO/1N HCl(A2)および9.3M LBr/5.0N HCl(A3)であったことを除いて、実施例1に記載と同様に製造した。得られた粉末を、キラル選択性について調べた。実験は、1:1のエタノール:水中において、4−ヒドロキシマンデル酸一水和物(HMA)を用いて行った。それらの結果を表3に示す。
【0090】
【表3】

【0091】
旋光試験は、Antheraea pernyii シルクから製造されたキラル材料を含む溶液中においてラセミDL−メトキシマンデル酸(MMA)を用いて行った。そのシルクは、塩を加え、そしてタンパク質繊維を徐々に加熱して、粉末が形成されるまでそれらを軟化させることによって製造した。それら塩を、A1〜A3と称した。示された材料変形は全て、MMAに対するキラル選択性を示した。A2での3種類の製造についての結果を表4に示す。
【0092】
【表4】

【0093】
実施例9:原料シルク繊維および加工済みキラル粉末のキラル選択性比較
本明細書中に記載のように製造された材料において観察された高キラル選択性は、それらを製造するのに用いられたキラル分子およびキラル材料の化学または天然構造よりもむしろ、超分子構造に基づく。これを調べるために、高キラル選択性のキラル材料を製造するのに用いられた原料B.Mori シルク繊維を、キラル選択性について、最終キラル選択的材料の場合と同じ試験手順を用いて調べた。
【0094】
追加の対照試料として、タンパク質粉末を、可溶化したシルク繊維から、最も選択的なテンプレーティング済み材料を生じると考えられる可溶化法を用いて、強沈殿剤を加え且つ得られた沈殿物を集めることによって沈殿させた。この追加の対照試料は、シルク繊維原料と同じ分子(化学)、および本明細書中に記載の高選択性キラル材料と同じ分子(化学)から製造されたにもかかわらず、特殊な形態または構造を伴わない材料を生じた。沈殿物は、開示された方法を用いて製造された高選択性キラル材料粉末と同様の粒子サイズを有する粉末であった。粉末対粒子の比較は、稠密な低表面積繊維を、より低い密度で且つより高い表面積の粉末粒子と比較するよりも有効であると期待された。
【0095】
実験は、加工する前に行って、受け取った状態の清浄なB.Mori 繊維の選択性を調べた。追加の実験を行って、溶液からの半結晶性および非晶質のタンパク質沈殿物の選択性を調べた。開示された方法を用いて製造されたキラル選択性材料は、高キラル選択性およびリシンへの親和性を有するので、選択性プローブとしてラセミリシンを用いたが、その親和性は分子化学に基づく。基礎にある分子および化学は、3種類全てのタイプの材料(高キラル選択性粉末、沈殿物粉末および繊維)について同じであったので、3種類は全て、リシンへの極めて類似した親和性を有すると考えられた。しかしながら、キラル選択性が、実際に、本開示に記載のような材料中に誘導されたミクロスケールおよびナノスケール形状に基づいている場合、それら3種類の異なった材料は、異なったキラル選択的なリシン取込みを示すと考えられる。
【0096】
2mlの純水中の0.06gのラセミリシンを用いて、溶液を調製した。ベースラインは、試験材料への暴露前のリシン溶液の旋光度を測定することによって決定した。試験試料は、0.3gの試験シルク材料を清浄なガラスバイアル中に入れることによって調製した。各々の試験について、0.3gの試験材料を清浄なガラスバイアル中に入れることによって調製した対照試料を、平行して実験した。2mlのラセミリシン溶液(回転ベースラインが得られた)を、試験バイアル中に導入した。2mlの溶媒(純水)を、対照試料中に導入した。次に、試験材料および対照試料双方のバイアルを密封し且つ撹拌させた。
【0097】
キラルリシン取込みを調べるために、各々のバイアルから、振とう時間後に液体を取り出し、遠心分離して粒状物を全て沈降させた。微細粒状物の遠心分離で、キラル材料は、測定中に光路を通過し、また偽のキラルシグナルを生じることがなかったということを確認した。透明な遠心分離済みリシン溶液を、透明対照溶液と同様に、旋光分析で測定した。これら値は、各々の材料への暴露から1分後、10分後、30分後及び1日後に得た。
【0098】
沈殿物および細断繊維双方について観察された試験材料および対照試料のシグナルは、計測器のノイズレベル未満であり、材料外部のリシン中のほぼ0%のEEと、リシン取込みにおける極めて低い(測定不能)キラル選択性を示した。対照的に、本開示に記載のとおりに製造された、同一の化学および分子組成を有するキラル選択性材料は、これらの試験材料による極めて高い旋光度を有するリシン溶液を生じた。対照データは、繊維および沈殿物の実施例と同様であった。高キラル選択性粉末(沈殿しなかった)は、リシンの(−)またはD異性体を優先的に排除し且つL−リシンを容易に吸収して、対照実験の最後に、材料外部のD−リシンの40〜100%EEの溶液を生じた。
【0099】
実施例10:分離カラム中へのキラルタンパク質粉末の充填
実施例1で製造されたような材料を、イソプロパノールまたはヘキサンを用いてスラリーにし、そしてプレカラムレザバー中に4000〜8000psiでポンプ輸送した。それらカラムに、異なったサイズの、例えば、5〜25ミクロンまたは25ミクロンおよびそれより小さい粒子を充填した。そのレザバーを、5〜25cm長さおよび0.3〜2cm直径(内径)の空のカラムケーシングに連結した。カラムが満たされた時点で、密封カラムは、典型的に、順相HPLCで使用できる。材料を処理して(例えば、ヘキサメチルジシラン(HMDS)で、例えば、架橋するまたは疎水性表面コーティングすることにより)、水による膨潤に対してそれを安定化させた時点で、10%までの水を、HPLC分析および精製に使用できる。水性溶媒中でカラムを用いるために、粒子は、水中で予め膨潤させた後、充填することができる。
【0100】
一実施態様において、5%PGDE(CL−1)架橋剤を用いて実施例5に記載のように製造され且つ25μm未満の粒子サイズを有するキラルタンパク質粉末を用いて、HPLCカラムを製造した。Lab Alliance Model CPカラム充填計測器を、スラリー充填で用いた。それらカラムは、4.6mm(内径)×25cm(長さ)のステンレス鋼製であった。エタノールを、充填用溶媒として用いた。3.0gの粉末を、20mlのエタノールで希釈して、スラリーを形成した。ポンプは、12ml/分の流速限界および500psiの圧力に設定した。5分後、圧力を1000psiへと増加させ、5分間保持した。その圧力を、500psiずつ3000psiまで漸増させた後、同じ間隔で減少させた。このカラムをHPLCに装着した場合、得られた圧力は、1.0ml/分の100%エタノール移動相を流した時に353psiであった。90:10のヘキサン:エタノールの移動相でのカラムの圧力は、104psiであった。
【0101】
カラムは、サリドマイドを用いて調べたが、二つの鏡像異性体の有効な分離を示した。代表的な溶離を、図6に示す。
実施例11:HPLC分離
HPLC分離を、従来、液体クロマトグラフィーによって分割することが難しいか又は不可能であると考えられた化学物質のクラスについて行った。
【0102】
4.6mmx250mmのHPLCカラムに、実施例1に記載のとおりに製造された粉末を充填した。88:10:2のヘキサン:テトラヒドロフラン:イソプロパノールの溶媒系を、0.5ml/分の流速、14barの圧力および30分の運転時間で用いた。
【0103】
sec−ブチルアセテート、2−メチル−1−ブタノール、2−ヘプタノール、2−メチルブタノール、クレンブテロールおよびα−メチルベンジルアミン化合物の分離を、それぞれ、図7〜12に示す。
【0104】
実施例12:ショウノウのキラルHPLC
25cmx1cm(0.5cm内径)のHPLCカラムに、実施例1にしたがって製造されたキラル材料を充填した。その材料は、5重量%の添加量のPGDEを用いて架橋した。それら粒子を、音波処理シフターを用いて分類して、5〜25ミクロンのサイズ画分を得た。粉末は、イソプロパノールを用いてスラリーを生じて、4000psiでカラム中にスラリー充填した。分析スケールでのキラル分離に適した順相カラムを得た。目的の化合物が、溶媒屈折率および試料中の僅かな不純物によるノイズより上の強い吸収を有する場合の波長を見つけるために、いろいろなUV波長を用いて分離を検出した。
【0105】
ショウノウ試料の分離は、90:10のヘキサン:エタノールの移動相、0.5ml/分の流速、75barの圧力、20分の運転時間および5μlの注入容量を用いて得た。UVモニタリングは、210nm、230nm、254nmおよび280nmで行った。
【0106】
実施例13:架橋カラムおよび非架橋カラムの比較
カラムに、25ミクロン未満のサイズのキラル選択性材料の粒子を充填した。5重量%の架橋剤で架橋された材料の粒子を、非架橋材料の粒子と比較した。非架橋材料は、図13に示されるように、圧縮性の少ないスラリーを形成した。双方の粒子設定において、最小粒子(5ミクロン未満)を画分から除去することは困難であった。架橋試料および非架橋試料中のこれらの小粒子の異なった量および分布は、観察された圧縮率の差に寄与していた可能性がある。
【0107】
実施例14:HPLCおよび超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)のカラムの選択性
25cm×1cm(0.5cm内径)のHPLCカラムに、中国産 Bombyx シルクを用いて実施例1にしたがって製造されたキラル材料の粒子を充填した。その材料は、5重量%の添加量のPGDEを用いて架橋させた。粒子は、音波処理シフターを用いて選別して、5〜25ミクロンのサイズ画分を得た。その粉末を、イソプロパノールを用いてスラリーを生じて、4000psiでカラム中にスラリー充填した。分析スケールでキラル分離するのに適した順相カラムを得た。
【0108】
多数の被検体を、カラム上でスクリーニングして(ベースライン分離の方法を開発することなしに、分離の証拠として)選択性を決定した。HPLCの結果を最初に得、そして次に、カラムをSFCに切り換えた。SFC試験を完了した後、カラムをHPLCに戻して切り換え、HPLC溶媒で十分にすすぎ洗浄して、再平衡させた。
【0109】
選択性試験の結果は、クレンブテロール塩酸塩、イオノン、サルブタノール(salbutanol)、HMMA(ヒドロキシメチルマンデル酸)、カテキン、Troger's Base、トリプトファン、2−ペンタノール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノールおよび3−ブチン−2−オールについて、HPLCを用いて得た。選択性試験の結果は、DL−ヒスチジン、DL−リシン、DL−α−イオノン、バニルメンデル酸、DL−フェニルグリシン塩酸塩、サリドマイド、ヒドロキシマンデル酸(HMA)、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、カンフルおよび2−ブタノールについて、SFCを用いて得た。SFCでの分離は、DL−トリプトファンおよびDL−フェニルアラニンについて得た。前の実験のカラムについては、ベースライン分離を生じる方法を開発した。
【0110】
カラムを、HPLCおよびSFC双方で試験した後、HPLCのために再平衡させてから、ベースライン分離法での化合物をカラム上で再試験した。分離または他のカラム性能ファクター(圧力、流速、ベースライン安定性)において、分解は認められなかった。それら結果を表5に示す。
【0111】
【表5】

【0112】
実施例15:プロパルギルアルコールの低速液体クロマトグラフィー
キラル選択性材料を、蠕動ポンプおよび Shodex(登録商標)OR−1旋光検出器と連結したガラス製低速LCカラム中に充填した。1:1のエタノール:水を移動相として、希釈したDL−HMMA(ヒドロキシメトキシマンデル酸)を被検体として用いた。カラムを出た流体の旋光を、インライン Shodex(登録商標)OR−1検出器を用いて測定した。この実験による22画分を、オフラインで検討のために収集した。約7分後、その旋光検出器ではまだ何も観測されなかったが、UV分光計では、該当する収集された画分から有意のシグナルが認められた。OR−1検出器と収集出口との間に、約1.2mlの遅延を計算した。
【0113】
次に、希釈した3−ブチン−2−オールおよび1−ヘキシン−3−オールを、このカラムにおける被検体として用い、そして画分を収集した。図14は、双方の被検体についてインライン Shodex(登録商標)検出器で観測された時間に対する旋光を示している。オフライン分析のために、これら実験から15画分を収集した。これら画分を希釈し、そしてオフライン旋光計で再確認した。旋光度は、OR−1検出器において現場で観測されたが、オフライン旋光計では、おそらくは、希釈された画分中の被検体の極めて低い濃度のために、旋光は認められなかった。
【0114】
実施例16:α−メチルベンジルアミンのバッチ収着剤分離
α−メチルベンジルアミン(0.0049g)を、エタノール、DI水、および/またはpH5緩衝液(DI水中のリン酸塩)を含めた3mlの溶媒系中で調製した。最初の旋光測定は、α−メチルベンジルアミンを、その溶媒系中に完全に溶解させた後に行った。0.2gのキラル選択性粉末を、α−メチルベンジルアミンを含有する溶液に加え、3分間撹拌し、その後、試料を30分間遠心分離した。遠心分離後、上澄み液の旋光を、再度測定した(第二旋光)。第三旋光を、撹拌後に得、そして遠心分離工程を繰り返した。pHは、溶媒混合物中において同じpH値に達するように調節した。キラル材料は、4〜9のpH範囲にわたって安定であった。したがって、純粋なα−メチルベンジルアミンはかなり塩基性であるので(pH=14)、溶液は、9未満のpH値で調製した。
【0115】
水対エタノールのいろいろな比率を用いて得られたEE%のプロットを、図15に示す。図15に示されるように、81.3%EEは、50:50の水:EtOH溶媒系中での最初の撹拌サイクル後に得た。33%水溶媒系の場合、97.96%EEは、第二撹拌サイクル後に得た。100%水を用いた場合、正の旋光が観測され、材料のキラル選択性の転換が示唆された。
【0116】
実験を、pH5緩衝溶液中で繰り返した。結果を図16に示す。緩衝化溶液のEE降下を示している。
100%EEを得るために必要なバッチ収着剤分離段数を決定するために、一連のバッチ収着剤実験を、各々の段階後、すなわち、撹拌、遠心分離および濾過工程の各々の反復後に加えられた新しいキラル選択性材料で行った。98.7%EEは、第二バッチ収着剤段階後に得、100%EEは、第三段階後に得た。追加の撹拌時間は、1段階当たりのEEを増加させた。それら結果を図17に示す。
【0117】
これらの研究は、α−メチルベンジルアミンが、バッチ収着剤として用いられたキラル選択性材料によって容易に分離されたということ、および水およびエタノールは、この目的に良好な溶媒系であったが、そのpH5溶液は、この場合のキラル分離に良好ではなかったということを示した。更に、100%キラル分離は、ほぼ3回の収着剤段階で得られることが分かった。より長い撹拌時間では、2回の収着剤段階だけを必要とした。
【0118】
実施例17:3−ブチン−2−オールのバッチ収着剤分離
バッチ収着剤分離を、3−ブチン−2−オール(CHCHOHCCH)について行った。いろいろな溶媒比のエタノール:水を調べた。Pernyii シルクを出発材料として用いて、キラル選択性粉末を製造した(B.mori シルクは、バッチ収着剤分離について、この化合物に作用しないことが確かめられた)。
【0119】
図18に示す結果は、溶媒系中により多くの水が用いられた場合、3−ブチン−2−オールのより良好なキラル分離が得られたことを示している。最高の旋光度は、100%水中で得た。
【0120】
本開示の解釈により当業者に明らかであろうように、本発明は、上に具体的に開示されたもの以外の形で具体化することができる。上記の具体的な態様は、したがって、例示するものとして解釈されるべきであり、制限するものではない。本発明の範囲は、前述の説明に含まれた実施例に制限されるよりもむしろ、請求の範囲に示される通りである。
【図面の簡単な説明】
【0121】
次の図面は、単に例示の目的のために与えられ、制限するためのものではない。
【図1】図1は、一つまたはそれを超える態様によるキラル材料の処理を示すフローチャートである。
【図2】図2は、キラルシルク材料についての、旋光対pHのプロットである。
【図3】図3は、いろいろな添加割合のポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル(PGDE,CL−1)架橋剤を含むキラルシルク材料についての旋光のプロットである。
【図4】図4は、いろいろな添加量の架橋剤を用いて異なったpH条件下で製造されたキラル材料についての、旋光対pHのプロットである。
【図5】図5は、0重量%、5重量%、10重量%、15重量%および20重量%の架橋剤を用いて製造されたキラル材料のフーリエ変換赤外(FTIR)スペクトルを示す。
【図6】図6は、一つまたはそれを超える態様によるキラルタンパク質粉末を用いた分離カラムを使用した、サリドマイドについてのHPLC溶離トレースである。鏡像異性体の分離が明瞭に示されている。
【図7】図7は、一つまたはそれを超える態様によるキラルタンパク質粉末を用いた分離カラムを用いた、sec−ブチルアセテートについてのHPLC溶離トレースである。鏡像異性体の分離が明瞭に示されている。
【図8】図8は、一つまたはそれを超える態様によるキラルタンパク質粉末を用いた分離カラムを用いた、2−メチル−1−ブタノールについてのHPLC溶離トレースである。鏡像異性体の分離が明瞭に示されている。
【図9】図9は、一つまたはそれを超える態様によるキラルタンパク質粉末を用いた分離カラムを使用した、2−ヘプタノールについてのHPLC溶離トレースである。鏡像異性体の分離が明瞭に示されている。
【図10】図10は、一つまたはそれを超える態様によるキラルタンパク質粉末を用いた分離カラムを使用した、2−メチルブタノールについてのHPLC溶離トレースである。鏡像異性体の分離が明瞭に示されている。
【図11】図11は、一つまたはそれを超える態様によるキラルタンパク質粉末を用いた分離カラムを使用した、クレンブテロールについてのHPLC溶離トレースである。鏡像異性体の分離が明瞭に示されている。
【図12】図12は、一つまたはそれを超える態様によるキラルタンパク質粉末を用いた分離カラムを使用した、α−メチルベンジルアミンについてのHPLC溶離トレースである。鏡像異性体の分離が明瞭に示されている。
【図13】図13は、5重量%架橋と、非架橋のキラル選択性材料の25ミクロンより小さい粒子を充填したカラムとを比較した、カラム圧力対流速のプロットである。
【図14】図14は、3−ブチン−2−オールおよび1−ヘキシン−3−オールの分離についての、旋光対時間のプロットである。
【図15】図15は、α−メチルベンジルアミンのバッチ収着剤分離についての、溶媒系中の水対エタノールのいろいろな割合を用いて得られる鏡像異性体過剰率(EE)%のプロットである。
【図16】図16は、α−メチルベンジルアミンのバッチ収着剤分離への、溶媒系中の緩衝剤の効果を示すプロットである。
【図17】図17は、バッチ収着剤分離より得られたα−メチルベンジルアミンの鏡像異性体純度への多重段階の効果を示すプロットである。
【図18】図18は、3−ブチン−2−オールのバッチ分離へのエタノール/水溶液の水分の効果を示すプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キラル粒状材料を製造する方法であって、
(a)繊維状タンパク質またはキラル合成ポリマーを、該繊維状タンパク質またはキラル合成ポリマーを膨潤させる膨潤剤を含有する水溶液に暴露すること;
(b)膨潤した繊維状タンパク質またはキラル合成ポリマーを、該水溶液中でアニーリングして、キラルな細孔またはチャンネルを含む層間領域を規定する多層構造を生じる液晶性秩序固体を得ること;
(c)膨潤剤を除去すること;及び
(d)キラル粒状材料を回収すること
を含む方法。
【請求項2】
キラルな細孔またはチャンネルが、約5nm〜約50nmの直径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
繊維状タンパク質またはキラル合成ポリマーが、約3:1より大のアスペクト比を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
キラル粒状材料が、約2:1〜約1:1のアスペクト比を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
アニーリングを、少なくとも約4時間行う、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
アニーリングを、約1時間〜約6時間行う、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
キラル粒状材料を硬化させて、該材料の構造を安定化することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
硬化が、膨潤剤を実質的に含有しない水溶液中で該粒状材料を少なくとも約3時間加熱することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
硬化を、約3時間〜約48時間行う、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
硬化が、膨潤剤を実質的に含有しないアルコール溶液中で該粒状材料を少なくとも約3時間加熱することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
キラル粒状材料を架橋させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
キラル材料の内部中の水性溶媒を第二溶媒と交換することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
キラル材料の内部中に触媒を導入することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
多層構造を有する繊維状タンパク質液晶性秩序固体の密に充填された粒子を含むキラル分離カラムであって、ここにおいて、各々の層は、分子配向した繊維状タンパク質を含み、そしてここにおいて、前記層は、キラルな細孔またはチャンネルであって、一つのキラル配向に選択的であり且つ約5nm〜約50nmの直径を有するキラルな細孔またはチャンネルを含めた層間領域を規定する、キラル分離カラム。
【請求項15】
粒子が、実質的に一様な円形粒子である、請求項14に記載のカラム。
【請求項16】
粒子が、約5ミクロン〜約25ミクロンのサイズを有する、請求項14に記載のカラム。
【請求項17】
カラムが、約10%EEより大の分離効率を与える、請求項14に記載のカラム。
【請求項18】
粒子が架橋されている、請求項14に記載のカラム。
【請求項19】
粒子が、溶媒中で膨潤している、請求項14に記載のカラム。
【請求項20】
多層構造を有する繊維状タンパク質液晶性秩序固体の実質的に一様な円形粒子を含むキラル粒状材料であって、ここにおいて、各々の層は、分子配向した繊維状タンパク質を含み、そしてここにおいて、前記層は、約5nm〜約50nmの直径を有するキラルな細孔またはチャンネルを含めた層間領域を規定する、キラル粒状材料。
【請求項21】
材料が架橋されている、請求項20に記載の材料。
【請求項22】
架橋が、キラル材料の約1重量%〜約20重量%を構成する、請求項21に記載の材料。
【請求項23】
架橋が、キラル材料の約5重量%を構成する、請求項21に記載の材料。
【請求項24】
架橋密度が、水中での粒状材料の膨潤を減少させるように選択される、請求項21に記載の材料。
【請求項25】
材料の接触可能表面積が、キラルなサブミクロンテキスチャーを有する、請求項20に記載の材料。
【請求項26】
請求項20に記載の材料の粒子を含有する分離カラム。
【請求項27】
キラルHPLCカラムであって、2−ヘプタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−ペンタノール、2−ブタノール、2−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−1−ペンタノール、3−ブチン−2−オール、フェランドレン、フルオキセチン(fluoxetine)、サリドマイド、アルカロイド類およびテルペン類の中の一種類又はそれ以上の化合物の鏡像異性体についてベースライン分割クロマトグラフを得ることができるキラルHPLCカラム。
【請求項28】
2−ヘプタノール、2−メチル−1−ブタノール、2−ペンタノール、2−ブタノール、2−アミノ−1−ブタノール、2−アミノ−1−ペンタノール、3−ブチン−2−オール、フェランドレン、フルオキセチン、サリドマイド、アルカロイド類およびテルペン類の中の一種類またはそれ以上の化合物の構造異性体および/またはジアステレオマーを分割することができる、請求項27に記載のカラム。
【請求項29】
多重キラル中心を有する鏡像異性体を分割することができる、請求項27に記載のカラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2009−520869(P2009−520869A)
【公表日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547411(P2008−547411)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【国際出願番号】PCT/US2006/048311
【国際公開番号】WO2007/075608
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(508185144)エボルブド・ナノマテリアル・サイエンシズ・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】