説明

粒状洗剤組成物

【課題】炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムを増量しても、固化しにくい粒状洗剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)成分:炭酸水素ナトリウムの粒子又は炭酸水素カリウムの粒子と、(B)成分:バインダーと、(C)成分:ゼオライト及び粘土鉱物から選択される少なくとも1種とを造粒してなる造粒物を含有することよりなる。前記造粒物は、(A)成分が(B)成分及び(C)成分で被覆されていることが好ましく、前記(A)成分は、炭酸水素ナトリウムの粒子であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒状洗剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
粒状洗剤組成物には、通常、洗浄性能の向上や、その他各種性能の付与等を目的として、界面活性剤が配合されている。
近年、洗濯事情の変化、環境負荷に対する意識の高まりから、界面活性剤濃度の低い(30質量%未満)洗剤が主流になっている。界面活性剤濃度の低減に当たっては、無機ビルダー等の増量により、洗浄力の維持・向上が図られている。無機ビルダーとしては、コスト面及び洗浄力の観点から、アルカリ金属の炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等)や炭酸水素塩(炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等)等が好適に用いられる。
【0003】
粒状洗剤組成物、特に衣料用洗剤として用いられる粒状洗剤組成物は、界面活性剤、無機ビルダー等を含有する水性スラリーから噴霧乾燥法によって製造され、その粒子内部に空隙を有する噴霧乾燥粒子からなる洗剤が用いられてきた。
この噴霧乾燥粒子は嵩高いため、1回の洗浄に使用する体積量が多かった。近年では、嵩密度を高めた粒状洗剤組成物、いわゆるコンパクト洗剤が主流となっている。
従来、高嵩密度の粒状洗剤組成物の製造方法としては、界面活性剤と無機ビルダーとを含有するスラリーを調製し、該スラリーを噴霧乾燥して得られる噴霧乾燥粒子をその他の成分と捏和機(ニーダー)等で捏和した後、該捏和物を粉砕する粉砕造粒法が知られている(例えば、特許文献1)。こうして得られた洗剤組成物は、高い嵩密度となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭64−6095号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、粒状洗剤組成物には、界面活性剤のさらなる減量が求められている。特許文献1の発明において、単に炭酸ナトリウムや炭酸カリウムを増量すると、洗剤組成物は固化しやすくなる。また、無機ビルダーとして炭酸水素ナトリウムや炭酸水素カリウムを用いた場合、製造直後の洗剤組成物に固化は見られないものの、経時的に固化が進む傾向にあった。
そこで、本発明は、炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムを増量しても、固化しにくい粒状洗剤組成物を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の粒状洗剤組成物は、(A)成分:炭酸水素ナトリウムの粒子又は炭酸水素カリウムの粒子と、(B)成分:バインダーと、(C)成分:ゼオライト及び粘土鉱物から選択される少なくとも1種とを造粒してなる造粒物を含有することを特徴とする。
前記造粒物は、(A)成分が(B)成分及び(C)成分で被覆されていることが好ましく、前記(A)成分は、炭酸水素ナトリウムの粒子であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の粒状洗剤組成物によれば、炭酸水素ナトリウム又は炭酸水素カリウムを増量しても、固化防止を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(粒状洗剤組成物)
本発明の粒状洗剤組成物は、(A)成分:炭酸水素ナトリウムの粒子又は炭酸水素カリウムの粒子と、(B)成分:バインダーと、(C)成分:ゼオライト及び粘土鉱物から選択される少なくとも1種とを造粒してなる造粒物を含有するものである。
【0009】
粒状洗剤組成物の平均粒子径は、特に限定されないが200〜1500μmであることが好ましく、250〜1000μmであることがより好ましい。平均粒子径が200μm以上であれば、使用時の粉立ちが抑制される。一方、1500μm以下であれば、水への溶解性が向上する。かかる粒子の平均粒子径は、日本薬局方に記載された粒度の試験に準じた篩い分けによる粒度分布から算出される値を示す。
【0010】
平均粒子径は、目開き1680μm、1410μm、1190μm、1000μm、710μm、500μm、350μm、250μm、及び149μmの9段の篩と、受け皿とを用いた分級操作により測定できる。分級操作では、受け皿に、目開きの小さな篩から目開きの大きな篩を順に積み重ね、最上部の1680μmの篩の上から100g/回のサンプルを入れ、蓋をしてロータップ型篩い振盪機(株式会社飯田製作所製、タッピング:156回/分、ローリング:290回/分)に取り付け、10分間振動させる。その後、それぞれの篩及び受け皿上に残留したサンプルを篩目ごとに回収して、サンプルの質量を測定する。そして、受け皿と各篩との質量頻度を積算し、積算の質量頻度が50%以上となる最初の篩の目開きを「aμm」とし、aμmよりも一段大きい篩の目開きを「bμm」とする。また、受け皿からaμmの篩までの質量頻度の積算値を「c%」とし、aμmの篩上の質量頻度を「d%」とする。そして、下記(1)式により平均粒子径(質量50%)を求め、これを試料の平均粒子径とする。
【0011】
【数1】

【0012】
粒状洗剤組成物の嵩密度は、0.3kg/dm以上であることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.2kg/dm、さらに好ましくは0.6〜1.1kg/dmである。嵩密度が0.3kg/dm以上であると、粒状洗剤組成物の保存時に必要なスペース(保存場所)をより少なくできる。一方、1.2kg/dm以下であれば、水への溶解性が良好となる。
なお、嵩密度は、JIS K3362−1998に準じて測定される値を示す。
【0013】
粒状洗剤組成物の水分量は特に限定されないが、溶解性と保存安定性の観点から、4〜10質量%が好ましく、5〜9質量%がより好ましく、6〜8質量%がさらに好ましい。なお、本明細書において水分量は、赤外線水分計(株式会社ケツト科学研究所製)により試料5g、試料表面温度130℃、20分間で測定した値である。
【0014】
<造粒物>
本発明の造粒物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分を造粒してなるものであり、(A)〜(C)成分がほぼ均一に分散した混合粒子や、(A)成分が、その表面を(B)成分及び(C)成分で被覆された被覆粒子等が挙げられ、中でも被覆粒子であることが好ましい。被覆粒子であれば、粒状洗剤組成物の保管中において、粒状洗剤組成物の固化防止効果のさらなる向上が図れる。
【0015】
被覆粒子としては、(A)成分の表面に(B)成分と(C)成分とが混在したもの、(A)成分を(B)成分で被覆した第一の被覆層と、第一の被覆層を(C)成分で被覆した第二の被覆層とが形成されたもの、(A)成分を(C)成分で被覆した第一の被覆層と、第一の被覆層を(B)成分で被覆した第二の被覆層とが形成されたもののいずれであってもよい。被覆粒子は、(B)成分及び(C)成分により、その表面積の70%以上が被覆されていることが好ましく、90%以上被覆されていることがより好ましく、100%被覆されていてもよい。
(A)成分の表面積に対する被覆された面積の割合(被覆率)は、例えば、造粒物をマイクロスコープ(株式会社朝日光学機器製作所製、Handi Scope TM)や、走査電子顕微鏡(例えば、株式会社島津製作所製、SUPERSCAN SS−550)にて表面観察し、画像処理等により確認できる。
【0016】
造粒物の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、200〜1500μmとされる。造粒物の平均粒子径は、前述した粒状洗剤組成物の平均粒子径と同様にして求めることができる。
【0017】
≪(A)成分≫
(A)成分は、炭酸水素ナトリウムの粒子又は炭酸水素カリウムの粒子である。中でも炭酸水素ナトリウムの粒子は、安価かつ溶解性に優れる一方、粒状洗剤組成物の経時的な固化を促進する傾向にある。従って、(A)成分を炭酸水素ナトリウムの粒子とした粒状洗剤組成物において、本発明の効果が顕著である。
【0018】
(A)成分の粒子径は、特に限定されないが、例えば、10〜1000μmが好ましく、50〜500μmがより好ましい。10μm以上であれば、粒状洗剤組成物の製造工程中における粉立ちが抑制されると共に、後述する造粒工程の造粒が容易である。1000μm以下であれば、使用時に水への溶解性が良好である。なお、(A)成分の平均粒子径は、前述した粒状洗剤組成物と同様の方法により求めることができる。ただし、粒子径が149μm未満の場合は、レーザー光散乱法(例えば、粒度分布測定装置(LDSA−3400A(17ch)、東日コンピューターアプリケーションズ株式会社製を使用)によって測定される値であり、体積基準のメジアン径である。
【0019】
粒状洗剤組成物中の(A)成分の配合量は、特に限定されないが、1〜30質量%が好ましく、3〜20質量%がより好ましく、5〜15質量%がさらに好ましい。1質量%以上であれば無機ビルダーとしての機能を十分に発揮し、30質量%以下であれば洗浄力の低下が生じにくい。加えて、粒状洗剤組成物は、(A)成分の配合量が多いほど固化が進む傾向にある。このため、(A)成分の配合量が多い粒状洗剤組成物において、本発明の効果が顕著である。
【0020】
≪(B)成分≫
(B)成分は、バインダーである。バインダーは、(A)成分や(C)成分の種類、製造条件等を勘案して決定でき、例えば、アニオン界面活性剤又はその酸前駆体、ノニオン界面活性剤、水溶性高分子、又はこれらの水溶液等が挙げられ、中でもノニオン界面活性剤又はその水溶液が好ましい。
【0021】
(B)成分に用いるアニオン界面活性剤又はその酸前駆体としては、例えば、炭素数8〜18のアルキル基を有する直鎖のアルキルベンゼンスルホン酸塩、炭素数8〜20のアルキル基を有する高級脂肪酸塩、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)及びブチレンオキサイド(BO)から選ばれる1種以上が平均0.5〜10モル付加した炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル(又はアルケニル)基を有するアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸塩等が挙げられる。
【0022】
(B)成分として用いるノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル、ポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)フェニルエーテル、脂肪酸メチルエステルにEO又はPOが付加した脂肪酸メチルエステルアルコキシレート等が挙げられる。
【0023】
(B)成分として用いるポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテルとしては、炭素数8〜40の飽和又は不飽和のアルコールに、EO、PO及びBOから選ばれる1種以上が付加したものが好ましく、中でも、EOもしくはPOが単独又はこれらが混合して付加したものがより好ましい。加えて、アルキレンオキサイドの平均付加モル数は、3〜35モルが好ましく、5〜30モルがより好ましい。
ポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)フェニルエーテルとしては、炭素数8〜12のアルキルフェノール又はアルケニルフェノールにEO、PO及びBOから選ばれる1種以上が付加したものが好ましく、EOもしくはPOが単独又はこれらが混合して付加したものがより好ましい。加えて、アルキレンオキサイドの平均付加モル数は、5〜25モルが好ましく、8〜20モルがさらに好ましい。
脂肪酸メチルエステルにEO又はPOが付加した脂肪酸メチルエステルアルコキシレートとしては、平均炭素数が8〜40の飽和又は不飽和脂肪酸メチルエステルに、EOもしくはPOが単独又はこれらが混合して付加したものが好ましい。加えて、アルキレンオキサイドの平均付加モル数は、5〜30モルが好ましい。
【0024】
(B)成分として用いる水溶性高分子としては、例えば、ポリエチレングリコール(重量平均分子量200〜20000)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(脂肪酸基の炭素数8〜22、エチレングリコールの重合度(EOの平均付加モル数)5〜25)、デカグリセリン脂肪酸エステル(脂肪酸基の炭素数8〜22)、ソルビタン脂肪酸エステル(脂肪酸基の炭素数8〜22)、ポリアクリル酸塩(重量平均分子量1000〜100000)、アクリル酸マレイン酸共重合体(重量平均分子量1000〜100000)及びその塩等が挙げられる。
【0025】
粒状洗剤組成物中の(B)成分の配合量は、(A)成分及び(C)成分の種類や配合割合を勘案して決定でき、例えば、0.1〜10質量%が好ましく、0.2〜5質量%がより好ましく、0.3〜3質量%がさらに好ましい。0.1質量%未満では、造粒が不十分となりやすく、10質量%超では、ダマ状物の発生、造粒装置内への付着が生じるおそれがある。
【0026】
≪(C)成分≫
(C)成分は、ゼオライト及び粘土鉱物から選択される少なくとも1種である。(C)成分としては、ゼオライトと粘土鉱物との混合物が好ましく、ゼオライトとベントナイトとの混合物がより好ましく、A型ゼオライトとベントナイトとの混合物がさらに好ましい。(C)成分として、ゼオライトと粘土鉱物との混合物を用いる場合、粘土鉱物/ゼオライトで表される質量比は、0.5〜2が好ましい。上記範囲内であれば、粒状洗剤組成物の固化防止効果のさらなる向上が図れる。
(C)成分の平均粒子径は、(A)成分の平均粒子径等を勘案して決定でき、例えば、1〜20μmが好ましい。(C)成分の平均粒子径は、レーザー光散乱法(例えば、粒度分布測定装置(LDSA−3400A(17ch)、東日コンピューターアプリケーションズ株式会社製を使用)によって測定される値であり、体積基準のメジアン径である。
【0027】
(C)成分のゼオライトとしては、A型ゼオライト、P型ゼオライト、X型ゼオライトのいずれも用いることができる。
【0028】
(C)成分の粘土鉱物としては、スメクタイト群に属し、その結晶構造がジオクタヘドラル型3層構造又はトリオクタヘドラル型3層構造をとるものが好ましく使用することができる。このような粘土鉱物は、劈開性を有し、層状構造をしている。粘土鉱物は、ノニオン界面活性剤を、その結晶層間に水素結合による化学吸着を形成し、粘土鉱物の内部に保持する性質を有する。なお、粘土鉱物は、内部にノニオン界面活性剤を保持するに従って、膨潤する性質を有する。
【0029】
このような粘土鉱物の具体例には、例えば、ジオクタヘドラル型3層構造をとる粘土鉱物として、モンモリロナイト(吸油量:50mL/100g、嵩密度:0.3kg/dm)、ノントロナイト(吸油量:40mL/100g、嵩密度:0.5kg/dm)、バイデライト(吸油量:62mL/100g、嵩密度:0.55kg/dm)、パイロフィライト(吸油量:70mL/100g、嵩密度:0.63kg/dm)等が挙げられ、トリオクタヘドラル型3層構造をとる粘土鉱物として、サポナイト(吸油量:73mL/100g、嵩密度:0.15kg/dm)、ヘクトライト(吸油量:72mL/100g、嵩密度:0.7kg/dm)、スチーブンサイト(吸油量:30mL/100g、嵩密度:1.2kg/dm)、タルク(吸油量:70mL/100g、嵩密度:0.1kg/dm)等が挙げられる。これらの粘土鉱物は、一般に天然に産出されたもの、人工的に水熱合成されたものの両方があるが特には限定されない。このような粘土鉱物は、X線分析で10〜20Åに検出される粘土の層の拡がりに由来するピークと4〜5Åに検出される粘土の3層構造に由来するピークが発達したものであれば、特に制限なく使用することができる。また、粘土鉱物は、特に天然物の場合、クォーツ、クリストバライト、カルサイト、オパール長石等の不純物を多く含有することがあり、これら不純物が多いものは本発明には適さず、純度として少なくとも60質量%、さらに好ましくは70質量%以上、最良のものとしては100質量%のものを使用する。特に好ましく使用することのできる粘土鉱物としては、Na型モンモリロナイト、Ca型モンモリロナイト、活性化ベントナイト(Na/Ca型モンモリロナイト)、Na型ヘクトライト、Ca型ヘクトライトが挙げられる。
【0030】
粒状洗剤組成物中の(C)成分の配合量は、(A)成分又は(B)成分の種類や、(A)成分の平均粒子径等を勘案して決定でき、例えば、1〜10質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましく、1〜3質量%がさらに好ましい。1質量%未満では、(C)成分を配合することによる粒状洗剤組成物の固化防止効果が得られにくく、10質量%超では、粒状洗剤組成物の流動性が損なわれるおそれがある。加えて、上記範囲内であれば、造粒物を被覆粒子とする場合において、(A)成分を良好に被覆することができる。
【0031】
<界面活性剤粒子>
本発明の粒状洗剤組成物には、造粒物に加え、界面活性剤、ビルダー等の洗剤成分を含む、造粒物を除く界面活性剤粒子(以下、単に界面活性剤粒子ということがある)を配合することができる。界面活性剤粒子を配合することで、粒状洗剤組成物の洗浄効果の向上を図ることができる。なお、界面活性剤粒子は、粒状洗剤組成物中において、造粒物と独立して配合されていてもよいし、造粒物に含まれていてもよい。粒状洗剤組成物の固化防止効果を向上させる観点から、界面活性剤粒子と造粒物とは、それぞれ独立して配合されていることが好ましい。
【0032】
界面活性剤粒子の平均粒子径は、200〜1500μmが好ましく、250〜1000μmがより好ましく、300〜700μmが特に好ましい。平均粒子径が上記範囲にあると、溶解性に優れるためである。なお、界面活性剤粒子の平均粒子径は、粒状洗剤組成物の平均粒子径と同様の方法で測定できる。
界面活性剤粒子の水分量は、溶解性と保存安定性とを両立させる観点から、4〜10質量%が好ましく、5〜9質量%がより好ましく、5.5〜8.5質量%がさらに好ましい。
【0033】
粒状洗剤組成物中の界面活性剤粒子の配合量の下限は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。60質量%未満であると、洗浄効果の向上が図れないおそれがあるためである。一方、粒状洗剤組成物中の界面活性剤粒子の配合量の上限は、99質量%未満が好ましい。99質量%以上であると、炭酸水素ナトリウムの粒子又は炭酸水素カリウムの粒子の配合量が少なくなり、ビルダーとしての機能を十分に発揮しにくくなる。
【0034】
界面活性剤としては、(B)成分とは別に、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれを配合してもよく、1種又は2種以上を併用することができる。界面活性剤粒子が下記の界面活性剤を含む場合、界面活性剤粒子中の界面活性剤の合計量は10〜90質量%が好ましく、15〜80質量%がより好ましい。
【0035】
≪アニオン界面活性剤≫
界面活性剤粒子に配合するアニオン界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。
(1)炭素数8〜20の飽和又は不飽和α−スルホ脂肪酸のメチル、エチルもしくはプロピルエステル塩。
(2)脂肪酸の平均炭素数が10〜20の高級脂肪酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩。
(3)炭素数8〜18のアルキル基を有する直鎖又は分岐鎖のアルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS又はABS)。
(4)炭素数10〜20のアルカンスルホン酸塩。
(5)炭素数10〜20のα−オレフィンスルホン酸塩(AOS)。
(6)炭素数10〜20のアルキル硫酸塩又はアルケニル硫酸塩(AS)。
(7)炭素数2〜4のアルキレンオキサイドのいずれか、又はエチレンオキサイドとプロピレンオキサイド(モル比EO/PO=0.1/9.9〜9.9/0.1)を、平均0.5〜10モル付加した炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル(又はアルケニル)基を有するアルキル(又はアルケニル)エーテル硫酸塩(AES)。
(8)炭素数2〜4のアルキレンオキサイドのいずれか、又はエチレンオキサイドとプロピレンオキサイド(モル比EO/PO=0.1/9.9〜9.9/0.1)を、平均3〜30モル付加した炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル(又はアルケニル)基を有するアルキル(又はアルケニル)フェニルエーテル硫酸塩。
(9)炭素数2〜4のアルキレンオキサイドのいずれか、又はエチレンオキサイドとプロピレンオキサイド(モル比EO/PO=0.1/9.9〜9.9/0.1)を、平均0.5〜10モル付加した炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル(又はアルケニル)基を有するアルキル(又はアルケニル)エーテルカルボン酸塩。
(10)炭素数10〜20のアルキルグリセリルエーテルスルホン酸のようなアルキル多価アルコールエーテル硫酸塩。
(11)長鎖モノアルキル、ジアルキル又はセスキアルキルリン酸塩。
(12)ポリオキシエチレンモノアルキル、ジアルキル又はセスキアルキルリン酸塩。これらのアニオン界面活性剤は、ナトリウム、カリウムといったアルカリ金属塩や、アミン塩、アンモニウム塩等として用いることができる。これらアニオン界面活性剤は、1種単独又2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0036】
≪ノニオン界面活性剤≫
界面活性剤粒子に配合するノニオン界面活性剤としては、以下のものが挙げられる。
(1)炭素数6〜22、好ましくは8〜18の脂肪族アルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを平均3〜30モル、好ましくは5〜20モル、より好ましくは10〜18モル付加したポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル。中でも、ポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキル(又はアルケニル)エーテルが好適である。ここで使用される脂肪族アルコールとしては、第1級アルコール、第2級アルコールが挙げられる。また、そのアルキル基は、分岐鎖を有していてもよい。脂肪族アルコールとしては、第1級アルコールが好ましい。
(2)ポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)フェニルエーテル。
(3)長鎖脂肪酸アルキルエステルのエステル結合間にアルキレンオキサイドが付加した、例えば下記一般式(I)で表される脂肪酸アルキルエステルアルコキシレート。
【0037】
CO(OA)OR ・・・(I)
【0038】
[式(I)中、RCOは、炭素数6〜22、好ましくは炭素数8〜18の脂肪酸残基を示し、OAは、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の炭素数2〜4、好ましくは2〜3のアルキレンオキサイドの付加単位を示し、mはアルキレンオキサイドの平均付加モル数を示し、一般に3〜30、好ましくは5〜20の数である。Rは炭素数1〜3の置換基を有してもよい低級(炭素数1〜4)アルキル基を示す。]
【0039】
(4)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル。
(5)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル。
(6)ポリオキシエチレン脂肪酸エステル。
(7)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油。
(8)グリセリン脂肪酸エステル。
【0040】
≪カチオン界面活性剤≫
界面活性剤粒子に配合するカチオン界面活性剤としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩。
(2)モノ長鎖アルキルトリ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩。
(3)トリ長鎖アルキルモノ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩。
ただし、上記の「長鎖アルキル」は炭素数12〜26、好ましくは14〜18のアルキル基を示す。「短鎖アルキル」は、フェニル基、ベンジル基、ヒドロキシ基、ヒドロキシアルキル基等の置換基を包含し、炭素間にエーテル結合を有していてもよい。中でも、炭素数1〜4、好ましくは1〜2のアルキル基;ベンジル基;炭素数2〜4、好ましくは2〜3のヒドロキシアルキル基;炭素数2〜4、好ましくは2〜3のポリオキシアルキレン基が好適なものとして挙げられる。
【0041】
≪両性界面活性剤≫
両性界面活性剤としては、例えば、イミダゾリン系の両性界面活性、アミドベタイン系の両性界面活性剤等が挙げられる。具体的には、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタインが好適なものとして挙げられる。
【0042】
≪界面活性剤粒子中のその他の成分≫
界面活性剤粒子には、必要に応じて洗浄性ビルダー、蛍光増白剤、ポリマー類、酵素安定剤、ケーキング防止剤、還元剤、金属イオン捕捉剤、pH調整剤等を配合することができる。
【0043】
洗浄性ビルダーとしては、無機ビルダー及び有機ビルダーが挙げられる。
無機ビルダーとしては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩;結晶性層状珪酸ナトリウム(例えば、クラリアントジャパン社製の商品名「Na−SKS−6」(δ−NaO・2SiO)等の結晶性アルカリ金属珪酸塩)、非晶質アルカリ金属珪酸塩;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム等の硫酸塩;塩化ナトリウム、塩化カリウム等のアルカリ金属塩化物;オルソリン酸塩、ピロリン酸塩、トリポリリン酸塩、メタリン酸塩、ヘキサメタリン酸塩、フィチン酸塩等のリン酸塩;結晶性アルミノ珪酸塩、無定形アルミノ珪酸塩、炭酸ナトリウムと非晶質アルカリ金属珪酸塩の複合体(例えば、ロディア社製のNABION15(商品名))等が挙げられる。
【0044】
有機ビルダーとしては、例えば、ニトリロトリ酢酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸塩、β−アラニンジ酢酸塩、アスパラギン酸ジ酢酸塩、メチルグリシンジ酢酸塩、イミノジコハク酸塩等のアミノカルボン酸塩;セリンジ酢酸塩、ヒドロキシイミノジコハク酸塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸塩、ジヒドロキシエチルグリシン塩等のヒドロキシアミノカルボン酸塩;ヒドロキシ酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩等のヒドロキシカルボン酸塩;ピロメリット酸塩、ベンゾポリカルボン酸塩、シクロペンタンテトラカルボン酸塩等のシクロカルボン酸塩;カルボキシメチルタルトロネート、カルボキシメチルオキシサクシネート、オキシジサクシネート、酒石酸モノ又はジサクシネート等のエーテルカルボン酸塩;ポリアクリル酸塩、アクリル酸−アリルアルコール共重合体の塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体の塩、ポリグリオキシル酸等のポリアセタールカルボン酸の塩;ヒドロキシアクリル酸重合体、多糖類−アクリル酸共重合体等のアクリル酸重合体又は共重合体の塩;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、テトラメチレン1,2−ジカルボン酸、コハク酸、アスパラギン酸等の重合体又は共重合体の塩;デンプン、セルロース、アミロース、ペクチン等の多糖類酸化物、カルボキシメチルセルロース等の多糖類誘導体等が挙げられる。
【0045】
上記洗浄性ビルダーの中でも、洗浄力、洗濯液中での汚れ分散性が向上することから、クエン酸塩、アミノカルボン酸塩、ヒドロキシアミノカルボン酸塩、ポリアクリル酸塩、アクリル酸−マレイン酸共重合体の塩、ポリアセタールカルボン酸の塩等の有機ビルダーと、ゼオライト等の無機ビルダーとを併用することが好ましい。
【0046】
界面活性剤粒子中の洗浄性ビルダーの含有量は、十分な洗浄性能を付与する点から、10〜80質量%が好ましく、20〜75質量%がより好ましい。
【0047】
≪界面活性剤粒子の製造方法≫
界面活性剤粒子の製造方法は、公知の製造方法により製造できる。例えば、界面活性剤や任意成分を水に分散・溶解した後、噴霧乾燥して粉末状の界面活性剤粒子を得ることができる。また例えば、界面活性剤や任意成分を捏和・押出、撹拌造粒、転動造粒等の装置に供して、捏和や造粒、圧縮成形等を施し、さらに必要に応じて粉砕等により所望する形態の界面活性剤粒子を得ることができる。
【0048】
<粒状洗剤組成物中のその他の成分>
本発明の粒状洗剤組成物には、上述した(A)〜(C)成分を含む造粒物、界面活性剤粒子に加えて、必要に応じてその他の成分(洗剤任意成分)を配合してもよい。洗剤任意成分は、(A)〜(C)成分を含む造粒物、界面活性剤粒子と共に粉体混合して、粒状洗剤組成物に配合することができる。
洗剤任意成分としては、衣料用等の洗剤組成物に通常使用されているものが挙げられ、例えば、過炭酸塩、過硼酸塩等の漂白剤、アルカノイルオキシベンゼンスルホン酸塩等の漂白活性化剤、漂白活性化触媒、酵素造粒物、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩、非晶質シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等のケイ酸塩、クエン酸又はその塩、中鎖もしくは長鎖の脂肪酸又はその塩、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウム、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸/塩等の重金属キレート剤、粘土鉱物造粒物、蛍光増白剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、抗菌剤、ウルトラマリンブルー等の顔料、染料等が挙げられる。
【0049】
(粒状洗剤組成物の製造方法)
本発明の粒状洗剤組成物の製造方法は、(A)〜(C)成分を含有する造粒物が得られれば特に限定されない。
例えば、界面活性剤粒子、(A)成分及び(C)成分を造粒装置内で流動させながら(B)成分を添加する造粒方法が挙げられる(以下、一括造粒法ということがある)。
造粒方法としては、従来公知の方法を用いることができ、例えば、攪拌造粒法、流動層造粒法、転動造粒法が挙げられる。
【0050】
(B)成分の添加方法は、(B)成分の種類等に応じて決定でき、例えば、滴下あるいは噴霧による添加方法が挙げられる。(B)成分を噴霧により添加するには、加熱あるいは水溶液として、微粒化できる状態に粘度調整することが好ましい。
(B)成分を加熱する場合には、室温(20℃)〜95℃とすることが好ましい。室温未満であると(B)成分の微細化が不十分となり、95℃超では粘度が下がりすぎて噴霧圧が高くなる場合がある。
また、(B)成分を水溶液として添加する場合には、該水溶液中の(B)成分の含有量を好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上とする。水溶液中の(B)成分の含有量が少ないと、添加する水溶液量を増量することとなり、この増量に伴い、造粒物の水分量が増大し、粒状洗剤組成物の固化防止効果が損なわれるおそれがある。
なお、造粒後、任意で乾燥を行ってもよく、粒度分布を整えるために適宜整粒処理を行ってもよい。
【0051】
一括造粒法においては、界面活性剤粒子/(A)成分/(B)成分/(C)成分で表される質量比を100/1〜30/0.1〜10/1〜10とすることが好ましく、100/3〜20/0.2〜5/1〜5とすることがより好ましい。
【0052】
また、例えば、(A)成分と(C)成分とを造粒装置内で流動させながら、(B)成分を添加して(A)〜(C)成分が分散した混合粒子である造粒物、又は(A)成分が(B)成分及び(C)成分で被覆された被覆粒子である造粒物を得(以下、単独造粒法ということがある)、得られた造粒物と界面活性剤粒子とを混合することで粒状洗剤組成物を得ることができる。単独造粒法としては、例えば、攪拌造粒法、流動層造粒法又は転動造粒法にて、混合粒子又は被覆粒子を製造する方法が挙げられる。中でも、単独造粒法としては、攪拌造粒法が好ましい。
(B)成分の添加方法は、上述した一括造粒法と同様である。
【0053】
単独造粒法においては、(A)成分/(B)成分/(C)成分で表される質量比を1〜30/0.1〜10/1〜10とすることが好ましく、3〜20/0.2〜5/1〜5とすることがより好ましい。
【0054】
なお、混合粒子と被覆粒子とは、(A)成分の粒子径と(C)成分の粒子径との差異、(A)〜(C)成分の配合比、造粒条件を調節することにより、作り分けることができる。例えば、平均粒子径を200〜400μmの(A)成分と、平均粒子径10〜30μmの(C)成分とを、攪拌造粒法、流動層造粒法、転動造粒法により造粒することで、被覆粒子とすることができる。あるいは、平均粒子径10〜30μmの(A)成分と平均粒子径10〜30μmの(C)成分とを、攪拌造粒法、流動層造粒法、転動造粒法により造粒することで、混合粒子とすることができる。
【0055】
混合粒子又は被覆粒子の判別は、造粒物を切断し、その切断面のSEM(走査型電子顕微鏡)観察、及びEDX(エネルギー分散型X線分析装置)での元素分析によって行える。造粒物の内部に(A)成分が存在し、表面が(C)成分により被覆された状態にある場合は被覆粒子であると確認でき、造粒物の内部にも(C)成分が存在している場合には混合粒子であると確認できる。
加えて、造粒物の切断面をオイルレッド等の油溶性色素成分で着色することで、混合粒子又は被覆粒子の判別が行える。切断面を着色すると、(B)成分は着色され、(A)成分は着色されない。このため、着色した切断面を実体顕微鏡で観察し、混合物の内部が着色されず表面が着色されている場合には被覆粒子であると確認でき、造粒物の内部が着色されている場合には混合粒子であると確認できる。
【0056】
(A)成分は、その表面に存在する微量の無水炭酸塩(炭酸ナトリウム、炭酸カリウム)が、(A)成分と複塩を形成することが知られている。この複塩が形成される際に、粒子間架橋が生じることで、粒状洗剤組成物が固化する。加えて、高温多湿の環境下では、炭酸水素ナトリウムからセスキ酸ナトリウム又は炭酸ナトリウムが生じ、炭酸水素カリウムから炭酸カリウムが生じる。このセスキ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムにより、粒状洗剤組成物はその保管中に固化しやすくなる。
本発明によれば、(A)〜(C)成分を造粒することで、(A)成分の露出面積を縮小し上記の複塩の形成を抑制すると共に、(A)成分からセスキ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム又は炭酸カリウムが生じることを抑制できる。この結果、粒状洗剤組成物の固化抑制が図れる。特に、紙製の容器に充填して製品とした場合、輸送中にさらに高嵩密度とされ、その後、高温多湿条件に長期間保管される等の過酷な保管がなされた場合にも、固化が抑制される。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。表1〜2における組成は、特に指定しない限り純分換算された質量%で表され、表3〜5における組成は、各使用原料又は下記の製造例に従って製造された界面活性剤粒子の質量%で表されるものである。
【0058】
(使用原料)
各実施例及び各比較例における使用原料を以下に示す。
<(A)成分>
・A−1:炭酸水素ナトリウム、平均粒子径10μm、関東化学株式会社製
・A−2:エコブラストEB−60(商品名)、平均粒子径0.3mm、旭硝子株式会社製
<(B)成分>
・B−1:ノニオン界面活性剤、ECOROL26(商品名、炭素数12〜16のアルキル基をもつアルコール、ECOGREEN社製)の酸化エチレン平均15モル付加体、純分;90質量%、ライオン株式会社製)
<(C)成分>
・C−1:ベントナイト粉末、ランドロジルDGAパウダー(商品名)、平均粒子径20μm、Na/Ca質量比=2.73、SUD社製
・C−2:A型ゼオライト、平均粒子径3μm、純分;80質量%、水澤化学株式会社製
【0059】
<界面活性剤粒子の原料>
・α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩含有ペースト:ペースト組成;脂肪酸鎖長炭素数;C16/C18=8/2(質量比)、有効成分=63質量%、ノニオン界面活性剤=16質量%、ジ塩及びメチル硫酸塩等の不純物=8質量%、水分=13質量%
・LAS−K:直鎖アルキルベンゼンスルホン酸、ライポンLH−200(AV値(LAS−Hを1g中和するに要する水酸化カリウムのmg数)=180.0)を噴霧乾燥粒子調製用スラリー中で、48質量%水酸化カリウム溶液で中和したもの、ライオン株式会社製(表中の配合量は、LAS−Kとしての質量%を示す)
・ノニオン界面活性剤:B−1と同
・AOS−K:炭素数14〜18のアルキル基を有するα−オレフィンスルホン酸カリウム、純分;53質量%、ライオン株式会社製
・A型ゼオライト:C−2と同
・アクリル酸/マレイン酸コポリマー塩:アクアリックTL−400、純分;40質量%水溶液、株式会社日本触媒製
・炭酸ナトリウム:粒灰、ソーダアッシュジャパン株式会社製
・炭酸カリウム:炭酸カリウム(粉末)、旭硝子株式会社製
・硫酸ナトリウム:中性無水芒硝A0、四国化成株式会社製
・珪酸ナトリウム:珪酸ソーダ2号(純分;40質量%、SiO/NaO比(モル比)=2.5)、富士化学株式会社製
・石鹸:炭素数12〜18の脂肪酸ナトリウム(純分;67質量%、タイター;40〜45℃、脂肪酸組成;C12=11.7質量%、C14=0.4質量%、C16=29.2質量%、C18F0(ステアリン酸)=0.7質量%、C18F1(オレイン酸)=56.8質量%、C18F2(リノール酸)=1.2質量%、分子量;289)、ライオン株式会社製
・過炭酸ナトリウム:SPC−D、平均粒子径750μm、嵩密度0.85kg/dm、三菱瓦斯化学株式会社製
・界面活性剤粒子C:MIZULAN(α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩粉体)、脂肪酸鎖長炭素数;C16/C18=8/2(質量比)、有効成分=75質量%、ゼオライト12質量%、水分5.5%、平均粒子径500μm、ライオンエコケミカルズ社製
【0060】
(固化性の評価)
外側からコートボール紙(坪量:350g/m)、ワックスサンド紙(坪量:30g/m)、クラフトパルプ紙(坪量:70g/m)の3層からなる紙を用いて、長さ15cm×巾9.3cm×高さ18.5cmの箱を作製した。この箱に各例の粒状洗剤組成物1.1kgを入れ、10cmの高さから10回落下させることで粒子同士の接触点を増やす操作を行った。その後、粒状洗剤組成物が入った箱を45℃、85%RH8時間と、25℃、65%RH16時間との繰返し運転の恒温恒湿室中に14日間保存した。恒温恒湿室から取り出した箱を20℃、60%RHで6時間放置した後に、箱中の粒状洗剤組成物を静かに目開き5mmの篩上に移した。篩を穏やかに左右に10回揺動した後、篩上の残分と篩の通過分の質量とを求め、下記(2)式から固化率を算出した。固化率5%以下のものを合格とした。
【0061】
固化率(%)=(篩上の粒状洗剤組成物の質量)÷{(篩上の粒状洗剤組成物の質量)+(篩を通過した粒状洗剤組成物の質量)}×100 ・・・(2)
【0062】
(製造例1)界面活性剤粒子Aの製造
表1の組成に従い、A型ゼオライト2質量%相当分を除く各成分を攪拌機、ジャケットを有する反応装置内に投入し、水に溶解分散させ(ジャケット温度75℃)、固形分濃度60質量%のスラリーを調製した。
次いで、このスラリーを、向流式乾燥塔を用いて以下の条件で噴霧乾燥し、噴霧乾燥塔の下部より噴霧乾燥粒子コート被覆剤としてA型ゼオライトの一部(2質量%)を導入して噴霧乾燥粒子を得た。
・噴霧乾燥装置:向流式、塔径2.0m、有効長5.0m
・微粒化方式:加圧ノズル方式
・噴霧圧力:30kg/cm
・熱風入口温度:250℃
・熱風出口温度:100℃
得られた噴霧乾燥粒子の平均粒子径は300μm、嵩密度は0.3kg/dm、水分含有量は5質量%であった。
【0063】
【表1】

【0064】
得られた噴霧乾燥粒子73.8質量部と、α−スルホ脂肪酸アルキルエステル塩含有ペースト17質量部、ノニオン界面活性剤1.4質量部、水1.3質量部を連続ニーダー(KRC−S4型、株式会社栗本鐵工所製)で捏和(ニーダーの回転数135rpm、ジャケット温度:ジャケット入り口5℃、出口25℃(ジャケットに通水して冷却))して、ドウ状物を調製した。得られたドウ状物の温度は55±15℃であった。
次いで、得られたドウ状物をペレッターダブル(EXD−100型、不二パウダル株式会社製)に投入し、孔径10mm、厚さ10mmのダイスから押し出すと同時に切断し(ペレッター(カッター)のカッター周速は5m/s)、ペレット状成形体(直径約10mm、長さ70mm以下(実質的には5mm以上))を得た。
【0065】
このペレット状成形体93.5質量部に、粉砕助剤としてのA型ゼオライト6.5質量部を添加し、送風共存下で3段直列に配置されたフィッツミル(DKA−6型、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて粉砕して界面活性剤粒子Aを得た。粉砕条件は以下の通りとした。得られた粉体の温度は30±10℃、平均粒子径は350μm、粒子径150μm以下の粒子量は全体の10質量%、嵩密度は0.85kg/dmであった。
・送風温度:15±3℃
・送風量(気/固の比率):2.8±0.25m/kg
・スクリーン径:3段上から6mm、4mm、2mm
・粉砕機回転数:100%=4700rpm(周速約60m/s)
・処理速度:230kg/hr
【0066】
(製造例2)界面活性剤粒子Bの製造
表2の組成に従い、A型ゼオライト2質量%相当分を除く各成分を攪拌機、ジャケットを有する反応装置内に投入し、水に溶解分散させ(ジャケット温度75℃)、固形分濃度60質量%のスラリーを調製した。
次いで、このスラリーを、向流式乾燥塔を用いて以下の条件で噴霧乾燥し、噴霧乾燥塔の下部より噴霧乾燥粒子コート被覆剤としてA型ゼオライトの一部(2質量%)を導入して噴霧乾燥粒子を得た。
・噴霧乾燥装置:向流式、塔径2.0m、有効長5.0m
・微粒化方式:加圧ノズル方式
・噴霧圧力:30kg/cm
・熱風入口温度:250℃
・熱風出口温度:100℃
得られた噴霧乾燥粒子の平均粒子径は280μm、嵩密度は0.28kg/dm、水分含有量は5質量%であった。
【0067】
【表2】

【0068】
得られた噴霧乾燥粒子85.8質量部と、ノニオン界面活性剤6.6質量部、水0.9質量部を連続ニーダー(KRC−S4型、株式会社栗本鐵工所製)で捏和(ニーダーの回転数135rpm、ジャケット温度:ジャケット入り口5℃、出口25℃(ジャケットに通水して冷却))して、ドウ状物を調製した。得られたドウ状物の温度は55±15℃であった。
次いで、得られたドウ状物をペレッターダブル(EXD−100型、不二パウダル株式会社製)に投入し、孔径10mm、厚さ10mmのダイスから押し出すと同時に切断し(ペレッター(カッター)のカッター周速は5m/s)、ペレット状成形体(直径約10mm、長さ70mm以下(実質的には5mm以上))を得た。
【0069】
このペレット状成形体93.3質量部に、粉砕助剤としてのA型ゼオライト6.7質量部を添加し、送風共存下で3段直列に配置されたフィッツミル(DKA−6型、ホソカワミクロン株式会社製)を用いて粉砕して界面活性剤粒子Bを得た。粉砕条件は以下の通りとした。得られた粉体の温度は30±10℃、平均粒子径は400μm、粒子径150μm以下の粒子量は全体の8質量%、嵩密度は0.82kg/dmであった。
・送風温度:15±3℃
・送風量(気/固の比率):2.8±0.25m/kg
・スクリーン径:3段上から6mm、4mm、2mm
・粉砕機回転数:100%=4700rpm(周速約60m/s)
・処理速度:230kg/hr
【0070】
(実施例1〜6、比較例1〜3)
表3の組成に従い、以下の一括造粒法により粒状洗剤組成物を製造した。粒状洗剤組成物の製造には、容器回転式円筒型混合機を用いた。この容器回転式円筒型混合機は、容器が直径0.7m、長さ1.4m、傾斜角3.0°、出口堰高さ0.15m、内部混合羽根が高さ0.1m、長さ1.4mの平羽根を90°毎に4枚取り付けた仕様のものである。また、内部混合羽根の回転数はフルード数Fr=0.2になるように調整した。容器回転式円筒型混合機におけるフルード数(Fr)は、下記(3)式で表すことができる。
【0071】
Fr=V/(R×g)・・・(3)
[ただし、前記(3)式中、Vは、容器回転式円筒型混合機における最外周の周速(m/s)を表す。Rは、容器回転式円筒型混合機における最外周の回転中心からの半径(m)を表す。gは、重力加速度(m/s)を表す。]
【0072】
まず、界面活性剤粒子A、(A)成分及び(C)成分を上記仕様の容器回転式円筒型混合機に15kg/minの速度で投入した。容器を回転させて流動化させた粒子群に対し、予め75℃に調整した(B)成分を噴霧した。(B)成分の噴霧は、空円錐ノズル(K008、株式会社いけうち製)を用い、噴霧圧力0.30〜0.50MPaで所定流量と液滴径(150μm)とした。(B)成分の噴霧は、粒子群が回転方向に沿って広がった領域における上端から2/3以内の範囲に行った。(B)成分の噴霧の際、粒子群の平均温度を35℃とした。こうして得られた粒状洗剤組成物について、固化性の評価を行い、その結果を表3に示す。
【0073】
(実施例7〜11、比較例4)
表4の組成に従い、以下の単独造粒法により造粒物を得、得られた造粒物と界面活性剤粒子Aとを混合して粒状洗剤組成物を製造した。
まず、鋤刃状ショベルを具備し、ショベル−壁面間のクリアランスが5mmのレディゲミキサー(M20型、株式会社マツボー製)に(A)成分を投入し(充填率30容積%)、主軸200rpmで攪拌を開始した(チョッパーは停止)。攪拌開始10分後に(B)成分を30秒間で添加し、その後(C)成分を添加し、造粒した。こうして、被覆粒子である造粒物を得た。
次いで、表4の組成に従い、得られた造粒物と界面活性剤粒子Aとを容器回転式円筒型混合機にて混合し、粒状洗剤組成物を得た。得られた粒状洗剤組成物について、固化性の評価を行い、その結果を表4に示す。
【0074】
なお、各例で造粒された造粒物については、造粒物を切断し、その切断面のSEM観察、及びEDXでの元素分析により、(A)成分の表面が(C)成分により被覆された状態にあることを確認した。
加えて、各例で造粒された混合物の切断面をオイルレッドで着色して、実体顕微鏡で観察することにより、実施例7〜11の造粒物は、(A)成分の表面に(B)成分により被覆された状態にあることを確認した。
【0075】
(実施例12)
(A)成分をA−1とし、チョッパーを1000rpmで回転させた以外は、実施例8と同様にして混合粒子である造粒物を得た。
次いで、表4の組成に従い、得られた造粒物と界面活性剤粒子Aとを容器回転式円筒混合機にて混合し、粒状洗剤組成物を得た。得られた粒状洗剤組成物について、固化性の評価を行い、その結果を表4に示す。
得られた造粒物については、実施例7〜11と同様にして、切断面のSEM観察、EDXでの元素分析及び実体顕微鏡観察により、(A)〜(C)成分がほぼ均一に分散された混合粒子であることを確認した。
【0076】
(実施例13)
界面活性剤粒子Aを界面活性剤粒子Bとし、表5の組成に従った以外は、実施例1と同様の一括造粒法により粒状洗剤組成物を得た。得られた粒状洗剤組成物について、固化性の評価を行い、その結果を表5に示す。
【0077】
(実施例14)
界面活性剤粒子Aを界面活性剤粒子B及びCとし、表5の組成に従った以外は、実施例1と同様の一括造粒法により粒状洗剤組成物を得た。得られた粒状洗剤組成物について、固化性の評価を行い、その結果を表5に示す。
【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
【表5】

【0081】
表3、5に示すように、本発明を適用した実施例1〜6、13〜14は、いずれも固化率が4.8%以下であった。加えて、(C)成分としてゼオライト(C−1)とベントナイト(C−2)とを併用した実施例2〜4は、C−1又はC−2のいずれかを用いた実施例5〜6よりも固化率が低かった。
一方、(B)成分又は(C)成分を配合しない比較例1〜3は、いずれも固化率が5.4%以上であった。
【0082】
表4に示すように、本発明を適用した実施例7〜12はいずれも固化率が2.7%以下であった。加えて、実施例7〜11は、(A)成分の表面が、混在する(B)成分及び(C)成分により完全に被覆されていた。さらに、(C)成分としてC−1とC−2とを併用した実施例7〜9、12は、C−1又はC−2のいずれかを用いた実施例10〜11よりも固化率が低かった。
また、造粒物を混合粒子とした実施例12は、(B)成分と(C)成分とを同じ組成とする実施例3と、実施例8との比較において、一括造粒法を採用した実施例3よりも固化率が低かったが、被覆粒子とした実施例8よりも固化率が高かった。
一方、(B)成分を配合しない比較例4は、固化率が5.2%であった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分:炭酸水素ナトリウムの粒子又は炭酸水素カリウムの粒子と、(B)成分:バインダーと、(C)成分:ゼオライト及び粘土鉱物から選択される少なくとも1種とを造粒してなる造粒物を含有する粒状洗剤組成物。
【請求項2】
前記造粒物は、(A)成分が(B)成分及び(C)成分で被覆されている、請求項1に記載の粒状洗剤組成物。
【請求項3】
前記(A)成分は、炭酸水素ナトリウムの粒子である、請求項1又は2に記載の粒状洗剤組成物。


【公開番号】特開2011−202149(P2011−202149A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30985(P2011−30985)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】