説明

粒状物および化粧料

【課題】 パール光沢を有し、無臭無香の粒状物および化粧料を提供する。
【解決手段】 結晶性熱可塑性樹脂からなる厚み0.05〜0.5μmの第1の層と、第1の層の結晶性熱可塑性樹脂とは異なる融点の結晶性熱可塑性樹脂からなる厚み0.05〜0.5μmの第2の層が11層以上交互に配置された多層積層体を粉砕して得られる粒状物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パール状の光沢を有する粒状物および化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧料には、種々の顔料や色材とともパール光沢顔料が配合されている場合が多く、きれいな色調とつややかな輝きを消費者に提供している。従来から、天然の高級魚鱗箔を配合した化粧料があり、このものは、上品で均一性のあるパール光沢を有している。このような高級魚鱗箔は魚体から採取されるグアニンを主成分とし極めて高価であり、かつ天然物であるがゆえ品質が安定しないといった欠点があった。
【0003】
一方で、安価で安全性にも問題ない雲母・チタン系パール顔料は要求されるパール光沢に応じて広く化粧品に配合されているが、粒径分布が広く、光沢や均一性に満足のゆくものではなかった。
【0004】
上記のような欠点を解消するような材料として、多層状の板状ポリマーの粒状物を配合した化粧料が、特開昭58−159404号公報にて提案されている。しかしながら、上記公報にて用いられている粒状物は、ポリマーの屈折率差を大きくするために屈折率の高いポリエステルと屈折率の低いアクリル樹脂を積層体の層に用いており、アクリル樹脂の臭いから使用される場面が限られる。さらに、層間密着性が乏しいことから、長径100um以下の極めて小さい粒状物にした場合に層間剥離により粒状物が凝集してしまうといった問題点がある。
【0005】
なお、多層延伸フィルムの各層の屈折率差は、各層を構成する樹脂の屈折率差に由来する。このため、例えば、特開昭56−99307号公報に記載されているように、屈折率の高い層には、ポリエチレンテレフタレートを使用し、屈折率の低い層には、ポリメタクリレートのような屈折率の低い樹脂を用いるのが通常である。
【0006】
【特許文献1】特開昭58−159404号公報
【特許文献2】特開昭56−99307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来の多層積層体粒状物が有する上述の問題を解消し、無臭無香の化粧料用に好適に用いることのできる粒状物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、結晶性熱可塑性樹脂からなる厚み0.05〜0.5μmの第1の層と、第1の層の結晶性熱可塑性樹脂とは融点の異なる結晶性熱可塑性樹脂からなる厚み0.05〜0.5μmの第2の層が11層以上交互に配置された多層積層体を粉砕して得られる粒状物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、各層を構成する樹脂の組合せとして従来から層間の屈折率差を発現させ難いとされていた極めて組成の近い樹脂の組合せを採用して、多層積層体に十分な強度と層間の密着性を具備させながら、驚くべきことに層間の屈折率差も十分に具備させた多層積層体の粒状物であり、無臭無香の多層積層体粒状物およびそれを使用した化粧料を提供するこができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、発明を詳細に説明する。
[多層積層体]
本発明に用いられる多層積層体は、融点の異なる少なくとも2種の結晶性樹脂のうち、どちらか一方の樹脂のみを融解させ、屈折率差を付与しかつ層間の密着性を向上されたものであることに最大の特徴がある。第2の層を構成する結晶性熱可塑性樹脂が、第1の層を構成する結晶性熱可塑性樹脂よりも融点が15℃以上低く、かつ多層積層体が得られるものであれば、結晶性ポリエステル樹脂に限らず、あるゆる結晶性熱可塑性樹脂に同様の考え方は採用できる。初めから屈折率の異なる結晶性熱可塑性樹脂同士の組み合わせによっても、さらなる屈折率差の付与および層間密着性の向上の効果が得られる。
【0011】
多層積層体に使用する熱可塑性樹脂の組み合わせとしては、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートとイソフタル酸共重合をしたポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートと2,6−ナフタレンジカルボン酸共重合をしたポリエチレンテレフタレート、結晶質ナイロンMXD6と結晶質ナイロン6、結晶質ナイロンMXD6と結晶質ナイロン6共重合MXD6、ポリエチレンテレフタレートと結晶性ポリ乳酸樹脂、ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレートと結晶性ポリ乳酸樹脂という組み合わせが好ましい。
【0012】
本発明に使用する多層積層体は、層を構成する第1の層および第2の層において、層間の光干渉によって選択的に光を反射するために、それぞれ1層ごとの厚みは0.05〜0.5μmの範囲である必要がある。本発明における多層積層体は、特定の波長の光を反射する選択反射特性を示し、選択反射される光は、紫外光、可視光、近赤外光の範囲において、適宜、多層積層体における各層の層厚を調整することによりコントロールすることができる。それぞれの1層厚みが0.05μm未満であるとその反射光はフィルム構成成分の吸収によって反射性能が得られなくなり、0.5μmを超えると層間の光干渉によって選択的に反射する光が赤外光の領域に達し、光学的特性としての有用性が得られなくなる。
【0013】
本発明に使用する多層積層体は第1の層と第2の層とを交互に少なくとも総層数で11層積層されたものであり、その上限は、生産性などの観点から通常は高々501層である。
【0014】
本発明に使用する多層積層体は、波長350〜2000nmの光に対する反射率曲線に、反射率のベースラインよりも、20%以上、さらには30%以上、特に50%以上高い最大反射率のピークを有する多層積層体であることが好ましい。最大反射率のピークが20%未満であると視認される干渉色の色相が薄くはっきりせず、好ましくない。
【0015】
多層積層体としては、未延伸の多層積層シート、延伸した多層積層フィルムのいずれを用いていもよいが、好ましくは延伸した多層積層フィルムを用いる。
【0016】
[粒状物の形状および配合量]
本発明の粒状物は、粒径が小さいほど化粧料への配合時の手触りがよいため、長径または短径が好ましくは300μm以下、さらに好ましくは150μm以下、特に好ましくは100μm以下である。粒状物は立体であるが、その投影時の形態として、例えば円形、楕円形、角形のものを挙げることができるが、いずれでもよい。
【0017】
本発明の粒状物を化粧料基材中に配合することにより、パール状の光沢を持った化粧料を得ることができる。配合の方法としては、化粧料粉末のひとつの成分として例えばパール顔料を配合する方法を適用することができる。配合量は従来のパール顔料と同様任意に配合できるが、一般的には、化粧料全体の0.5〜50重量%である。
【実施例】
【0018】
実施例中の物性や特性は、下記の方法にて測定または評価した。
(1)ポリエステル樹脂の融点
ポリエステル樹脂試料を10mgサンプリングし、示差走査熱量測定装置(TAインスツルメンツ社製、商品名:DSC2920)を用い、20℃/min.の昇温速度で、融点を測定した。
【0019】
(2)各層の厚み
サンプルフィルムを三角形に切り出し、包埋カプセルに固定後、エポキシ樹脂にて包埋する。そして、包埋されたサンプルをミクロトーム(ULTRACUT−S、製造元:ライヘルト社)で製膜方向と厚み方向に沿って切断し、厚さ50nmの薄膜切片にした。得られた薄膜切片を、透過型電子顕微鏡(製造元:日本電子(株)、商品名:JEM2010)を用いて、加速電圧100kVにて観察・撮影し、写真から各層の厚みを測定した。
【0020】
(3)反射率および反射波長
サンプルフィルムについて、分光光度計(島津製作所製、MPC−3100)を用い、各波長でのアルミ蒸着したミラーとの相対鏡面反射率を波長350nmから2000nmの範囲で測定した。その測定された反射率の中で最大のものを、最大反射率としその波長を反射波長とした。
【0021】
(4)平均粒径および凝集
サンプル粒状物について、それぞれデジタル顕微鏡((株)ハイロックス製 KH−2700パワーハイスコープ)で1000倍にて観察し、その長径および短径を測定した。それぞれ、サンプル粒状物50個について測定し、その平均を平均長径、平均短径とした。凝集状態については、以下の基準で評価した。
○:観察中した全サンプルにおいて、凝集はみられなかった。
×:観察中においていずれかのサンプル凝集が見られた。
【0022】
(5)色相
サンプル粒状物(10g)をそれぞれ黒色の印刷紙の上に載せ、30ルクスの照明の下、目視にてサンプル内の反射色の色の状態を評価した。
そして、透過色および反射色の色の状態を、以下の評価基準で判断した。
○:サンプルに視認できる色の斑がなく、鮮やかな色相が確認できる。
△:サンプルは色相が確認できるが、一部凝集による白っぽい部分が見られる。
×:サンプルに色相が確認できない。
【0023】
(6)分散状態評価
サンプル粒状物(10g)を1mlのオイル(日清オイリコ(株)製 サラコスDT−38)中に分散させ、分散液を肌に塗布した時の手触りを評価した。
○:手触りに違和感なく、滑らかな手触りである。
×:手触りに多少違和感が感じられる。
【0024】
以下、実施例をもって詳細に説明する。
[実施例1]
固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.62のポリエチレンテレフタレートを第1の層用ポリエステルとし、第2の層用ポリエステルとしてイソフタル酸を12mol%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.65の共重合ポリエチレンテレフタレートに真球状シリカ粒子(平均粒径:1.5μm、長径と短径の比:1.02、粒径の平均偏差:0.1)を0.10wt%添加したものを準備した。そして、第1の層用ポリエステルおよび第2の層用ポリエステルを、それぞれ170℃で3時間乾燥後、押出し機に供給し、280℃まで加熱して溶融状態とし、第1の層用ポリエステルを101層、第2の層用ポリエステルを100層に分岐させた後、第1の層と第2の層が交互に積層するような多層フィードブロック装置を使用して、その積層状態を保持したままダイへと導き、キャスティングドラム上にキャストして各層の厚みが等しくなるように第1の層と第2の層が交互に積層された総数201層の未延伸多層積層体を作成した。このとき第1の層と第2の層の押出し量が1:1になるように調整し、かつ、両端層が第1の層になるように積層した。この多層未延伸フィルムを90℃の温度で製膜方向に3.6倍延伸し、更に95℃の温度で幅方向に3.9倍に延伸し、230℃で3秒間熱固定処理を行い、厚み16.5μmの多層積層体を得た。この多層積層体をギロチン加工により、100μm角に裁断し、多層積層体粒状物を得た。表2に製造条件および得られた多層積層体および多層積層体粒状物の特性を示す。
【0025】
この多層積層体粒状物を用いて、表1記載の配合量に従って、アイシャドウ用化粧料を作成した。まず、1)〜4)をスクワランの一部と10)を加え、コロイドミルで処理し、顔料とした。さらに他の成分を混合し、加熱溶解させ、これに顔料部を加えホモミキサーで均一に分散した。分散後、型に流し込み急冷し、均一な安定性の良い優れたパール光沢をもち、使用感にも優れたアイシャドウを得た。
【0026】
【表1】

【0027】
[比較例1]
使用する樹脂および製造条件を表2に示したように変更し、PETとPMMAの無延伸多層積層体を得た。この多層積層体をギロチン加工により、100μm角に裁断し、多層積層体粒状物を得た。表2に得られた多層積層体および多層積層体粒状物の特性を示す。
【0028】
この多層積層体粒状物を用いて実施例1と同様にしてアイシャドウ用化粧料を得た。しかしながら、得られた化粧料はパール光沢にも劣り、塗布時の使用感に異物感のあるものであった。
【0029】
【表2】

【0030】
表において各記号は以下の意味を表わす。
PET:
固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.63のポリエチレンテレフタレート
IA12PET:
イソフタル酸を12モル%共重合した固有粘度(オルトクロロフェノール、35℃)0.61のポリエチレンテレフタレート
PMMA:
メタクリル樹脂(旭化成製の商品名「デルペット 80N」)
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の粒状物は、化粧料に配合することにより、パール光沢を有する化粧料を提供することができる。本発明によって提供される化粧料としては、ファウンデイデョン、口紅、ほほ紅、アイライナー、マスカラ、アイシャドウ、まゆずみ、美爪料、おしろいなどのメイクアップ化粧料をはじめ、その他頭髪化粧料など多岐にわたり、応用可能であり、均一性のある優れた光沢性をもち、安全性が高く、使用感に優れ、かつ物理特性の優れた化粧料を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性熱可塑性樹脂からなる厚み0.05〜0.5μmの第1の層と、第1の層の結晶性熱可塑性樹脂とは融点の異なる結晶性熱可塑性樹脂からなる厚み0.05〜0.5μmの第2の層が11層以上交互に配置された多層積層体を粉砕して得られる粒状物。
【請求項2】
第2の層の結晶性熱可塑性樹脂の融点が、第1の層の結晶性熱可塑性樹脂の融点より15℃以上低い、請求項1記載の粒状物。
【請求項3】
第1の層と第2の層の結晶性熱可塑性樹脂が、いずれも結晶性ポリエステルである、請求項2記載の粒状物。
【請求項4】
粒状物の長径および短径のいずれかが300μm以下である請求項1〜3記載の粒状物。
【請求項5】
多層積層体が、波長350〜2000nmの光に対する反射率曲線において反射率のベースラインよりも20%以上高い最大反射率ピークを示す多層積層体である、請求項1〜4記載の粒状物。
【請求項6】
請求項1〜5記載の粒状物を含有する化粧料。

【公開番号】特開2006−36836(P2006−36836A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−215498(P2004−215498)
【出願日】平成16年7月23日(2004.7.23)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】