説明

粗紡機の運転制御方法及びその運転制御装置

【課題】粗糸口出し作業を適切かつ容易に実施することができる粗紡機の運転制御方法及びその運転制御装置の提供にある。
【解決手段】ドラフトローラ12〜15を有するドラフト機構11と、フライヤ22を回転させるフライヤ回転機構21と、ボビンBを回転させるボビン回転機構31と、ボビンレール32を昇降させるボビンレール昇降機構41とを有し、少なくとも、ドラフト機構11がフライヤ回転機構21、ボビン回転機構31、ボビンレール昇降機構41と独立して作動可能な粗紡機10の運転制御方法において、粗糸口出しのときにドラフト機構11のみを作動させて粗糸Rをドラフトローラ12〜15から送り出し、予め設定した長さの粗糸Rを送り出した後、ドラフトローラ12〜15の回転を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は粗紡機の運転制御方法及びその運転制御装置に関し、特に、通常紡出運転前の準備段階でドラフト機構から粗糸を送り出す粗紡機の運転制御方法及びその運転制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粗紡機による通常の紡出運転を行う場合、予め紡出運転のための準備作業が必要である。
紡出準備の作業としては、ドラフト機構から所定長さの粗糸を送り出しておき、送り出した粗糸をフライヤからプレッサを経て、ボビンを臨むプレッサパドルの先端に達するように通す必要がある。
このとき、ドラフト機構から粗糸を必要な長さだけ送り出す作業を「粗糸口出し」と称する。
【0003】
従来、粗糸口出し作業では、オペレータが粗紡機に備えられているインチングスイッチを操作し、ドラフト機構からの粗糸の送り出しを実施することが一般的である。
インチングスイッチを押し続けることによりドラフト機構が備えるドラフトローラの作動を継続させることができる。
【0004】
例えば、特許文献1に示されるように、この粗糸口出しにおいては、オペレータがインチングスイッチをオンすることにより粗糸が送り出されると共に、オペレータの感覚で十分な長さの粗糸が送り出された判断した時点でインチングスイッチがオフされ、粗糸の送り出しが停止される。
【特許文献1】特開昭61−75831号公報(第1−4頁、第1図−第5図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される技術では、粗糸口出しの際にドラフトローラから送り出される粗糸の長さは、インチングスイッチを操作するオペレータの判断に左右される。このため、送り出された粗糸の長さが短い場合には、インチングスイッチの操作を再び実施しなければならず、逆に粗糸の長さが長い場合には余分な粗糸を切断して処分する場合がある。また、特許文献1に記載された従来の技術では、ドラフト機構の作動と連動してフライヤ機構、ボビン回転機構、ボビンレール昇降機構が作動する。したがって、フライヤのプレッサパドルと空ボビンの巻き付け部との位置がずれてしまって粗糸巻付け作業が困難になったり、粗糸のない状態でプレッサパドルが空ボビンの巻き付け部に摺接されて巻き付け部が損傷するおそれがあった。
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、粗糸口出し作業を適切かつ容易に実施することができる粗紡機の運転制御方法及びその運転制御装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、本発明は、ドラフトローラを有するドラフト機構と、フライヤを回転させるフライヤ回転機構と、ボビンを回転させるボビン回転機構と、ボビンレールを昇降させるボビンレール昇降機構とを有し、少なくとも、前記ドラフト機構が前記フライヤ回転機構、前記ボビン回転機構及び前記ボビンレール昇降機構とは独立して作動可能な粗紡機の運転制御方法において、粗糸口出しのときに前記ドラフト機構のみを作動させて粗糸を前記ドラフトローラから送り出し、予め設定した長さの前記粗糸を送り出した後、前記ドラフトローラの回転を停止させることを特徴とする。
【0008】
本発明では、粗糸口出しのとき、ドラフト機構のみを作動させ、ドラフトローラを回転させ、予め設定した長さの粗糸がドラフト機構から送り出されるとドラフトローラの回転を停止させる。
ドラフトローラが回転するとき、フライヤ回転機構、ボビン回転機構、ボビンレール昇降機構は作動されない。
従って、粗糸口出しにおいて、オペレータの感覚に左右されることなく予め設定した適切な長さの粗糸をドラフト機構から送り出すことができる。また、粗糸口出し作業中には、フライヤ、ボビンレール、ボビンホイールは作動されないので、フライヤのプレッサパドルと空ボビンの巻付け部との位置がずれたり、粗糸が存在しない状態でプレッサパドルが空ボビンに摺接されるということがない。
【0009】
また、本発明は、上記の粗紡機の運転制御方法において、粗糸口出しにおける前記ドラフト機構のみの作動は、通常紡出時には実施不可とするようにしてもよい。
【0010】
この場合、粗糸口出しにおけるドラフト機構のみの作動による粗糸の送り出しは、通常紡出時には実施不可とされるから、通常紡出時において誤操作が生じても、ドラフト機構のみの作動による粗糸の送り出しが通常紡出時に実施されることはなく、粗紡機の運転異常を招くことがない。
【0011】
また、本発明は、ドラフトローラを有するドラフト機構と、フライヤを回転させるフライヤ回転機構と、ボビンを回転させるボビン回転機構と、ボビンレールを昇降させるボビンレール昇降機構とを有し、少なくとも、前記ドラフト機構が独立して作動される粗紡機の運転制御装置において、粗糸口出しのための粗糸の送り出し動作を開始する口出し開始スイッチと、前記口出し開始スイッチの操作後に紡出される粗糸の長さを検知する粗糸長さ検知手段と、前記粗糸口出し時の前記粗糸の送り出し長さを設定する口出し長さ設定手段とを設け、該口出し開始スイッチの操作により、前記ドラフト機構のみが作動されて前記粗糸が前記ドラフトローラから送り出され、前記粗糸長さ設定手段により予め設定した長さの前記粗糸の送り出しが前記粗糸長さ検知手段により検知された後、前記ドラフトローラの回転が停止されることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、粗糸口出しのとき、オペレータが口出し開始スイッチを操作するだけでドラフト機構のみが作動され、予め設定した長さの粗糸がドラフト機構から送り出される。
ドラフトローラが回転するとき、フライヤ回転機構、ボビン回転機構、ボビンレール回転機構は作動されない。
従って、粗糸口出しにおいて、オペレータの感覚に左右されることなく予め設定した適切な長さの粗糸をドラフト機構から送り出すことができる。また、粗糸口出し作業中には、フライヤ、ボビンレール、ボビンホイールは作動されないので、フライヤのプレッサパドルと空ボビンの巻付け部との位置がずれたり、粗糸が存在しない状態でプレッサパドルが空ボビンに摺接されることがない。
【0013】
また、本発明は、上記の粗紡機の運転制御装置において、前記口出し開始スイッチの操作による粗糸の送り出しを、任意のタイミングで停止させる口出し停止スイッチが設けられてもよい。
【0014】
この場合、粗糸口出しにおいて、口出し開始スイッチの操作により予め設定した長さの粗糸がドラフトローラから送り出されるが、その粗糸の送り出しの最中に口出し停止スイッチを操作するとドラフトローラの回転が停止され、粗糸の送り出しが停止される。
従って、粗糸口出しの粗糸の送り出しを途中で止める必要があるとき、口出し停止スイッチを操作することにより粗糸の送り出しを直ちに停止することができる。
【0015】
また、本発明は、上記の粗紡機の運転制御装置において、操作が継続している間前記ドラフト機構のみを作動させる口出しインチングスイッチが設けられてもよい。
【0016】
この場合、粗糸口出しにおいて口出しインチングスイッチが操作し続けられている間は、ドラフトローラが回転され、操作が解除されるとドラフトローラの回転は停止される。
従って、口出し開始スイッチの操作により予め設定した長さの粗糸がドラフトローラから送り出された後、口出しインチングスイッチの操作により粗糸をさらにドラフト機構から送り出すことができる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、粗糸口出し作業を適切かつ容易に実施することができる粗紡機の運転制御方法及びその運転制御装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る粗紡機の運転制御装置とその運転制御方法について図面に基づき説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る粗紡機の要部を示す概略図である。
粗紡機10は、複数のドラフトローラ12〜15を有するドラフト機構11、フライヤ22を有するフライヤ回転機構21、ボビンBを回転させるボビン回転機構31及びボビンレール32を昇降させるボビンレール昇降機構41とを有し、駆動系であるこれらの機構11、21、31、41はそれぞれ単独で駆動される構成となっている。
【0019】
図1に示すように、ドラフト機構11には複数のドラフトローラ12〜15が備えられている。
これらのドラフトローラ12〜15は粗紡機10の正面側(図1では左)からフロントローラ12、セカンドローラ13、サードローラ14、バックローラ15の順に配設されている。
各ドラフトローラ12〜15は上下一対のローラを有し、下側のローラがボトムローラ、上側がトップローラである。
【0020】
ドラフト機構11はドラフト用モータ16により駆動される。
ドラフト用モータ16と、ドラフト機構11の間には、複数の歯車列(図示せず)を有する歯車機構17が介在されている。
歯車機構17は、ドラフト機構11が備える被動歯車(図示せず)に対して、ドラフトローラ12〜15への回転を図るための回転力を伝達する。
この実施形態におけるドラフト用モータ16はサーボアンプ19により制御されるサーボモータである。
ドラフト機構11はドラフト用モータ16の駆動により歯車機構17を介して独立して作動する機構となっている。
【0021】
フライヤ回転機構21は、スピンドル22cを備えたフライヤ22と、フライヤ22の上部に設けた被動歯車24を有する。
被動歯車24はスピンドル22cを軸心として一体回転可能にフライヤ22に固定されている。
被動歯車24は、回転軸25に取り付けられた駆動歯車26と噛合していることから、駆動歯車26を介してフライヤ22とともに回転する。
【0022】
フライヤ回転機構21は、フライヤ回転用モータ27により駆動される。
フライヤ回転用モータ27と駆動歯車26との間にはベルト伝動機構29が介在されている。
フライヤ回転用モータ27の回転はベルト伝動機構29を介して回転軸25に伝達される。
この実施形態におけるフライヤ回転用モータ27はインバータ30により制御されるインダクションモータである。
【0023】
ボビン回転機構31は、ボビンレール32上に設けられた回転自在のボビンホイール33と、ボビンホイール33の軸心を同一として固定された被動歯車34と、被動歯車34に噛合する駆動歯車35と、駆動歯車35が固定される回転軸36とを有する。
回転軸36には、巻取用モータ37による回転力とフライヤ回転用モータ27による回転力が差動歯車機構38により合成されて伝達されるようになっている。
【0024】
巻取用モータ37はサーボアンプ39により駆動制御されるサーボモータである。
ボビン回転機構31を駆動する巻取用モータ37は、粗糸巻層の増加に対応してボビンホイール33に装着されたボビンBの回転速度を減少させるように変速制御される。
【0025】
この実施形態に係るボビンレール昇降機構41は、リフターラック42、ピニオンギヤ43、回転軸44を有する。
ボビンレール32にはリフターラック42が固定されている。
リフターラック42と噛合するピニオンギヤ43は回転軸44に固定されている。
ボビンレール昇降機構41は昇降用モータ45により昇降される。
昇降用モータ45の回転は、歯車機構47を介して回転軸44へ伝達される。
この実施形態におけるサーボアンプ48により制御される昇降用モータ45はサーボモータである。
【0026】
そして、昇降用モータ45の正回転・逆回転の切り換えにより回転軸44の回転方向すなわちボビンレール32の昇降方向が変更されるようになっている。
回転軸44の端部にはボビンレール32の移動方向及び移動量を検知するロータリエンコーダ49が接続されている。
昇降用モータ45と回転軸44との間には、歯車列を含む歯車機構47を介在されているが、両者44、45を一体回転可能となるように連結してもよい。
また、ロータリエンコーダ49は、昇降用モータ45に付属したレゾルバ又はエンコーダであってもよい。
【0027】
ドラフト機構11には粗糸長さ検知手段としてのフロントローラ12の回転数を検出するためのセンサ50が配設されている。
又、被動歯車24の近傍にはフライヤ22の回転数を検出するためのセンサ51が配設されている。
フロントローラ12から送り出された粗糸Rは、フライヤトップ22aから導糸管を通ってフライヤレッグ22bに導かれ、さらにフライヤレッグ22bの下部からプレッサ52を介してボビンBに導かれる。
この実施形態のプレッサ52は、プレッサパドル53にガイド孔54と、ガイド孔54に粗糸Rを案内するガイド溝55とが形成された構成のものが使用されている。
【0028】
ドラフト用モータ16、フライヤ回転用モータ27、巻取用モータ37、昇降用モータ45は夫々に対応するインバータ30、サーボアンプ19、39、48を介して制御手段56により制御される。
制御手段56は、CPU(中央処理部)57、プログラムメモリ58、作業用メモリ59及び入力インターフェース60、出力インターフェース61、入力装置62を有する。
CPU57はプログラムメモリ58に記憶された所定のプログラムを実行し、出力インターフェース61、インバータ30、サーボアンプ19、39、48を介して対応する各モータ16、27、37、45を制御する。
ロータリエンコーダ49及びセンサ50、51からの出力信号は、入力インターフェース60を介してCPU57に入力されるようになっている。
【0029】
プログラムメモリ58は読み出し専用メモリ(ROM)よりなり、プログラムメモリ58にはプログラムとその実行に必要な各種データが記憶されている。
プログラムとしては粗糸巻き取り運転中のフライヤ回転用モータ27、巻取用モータ37の制御プログラム、玉揚げ停止時の制御プログラム、粗糸口出しのためのフロントローラ12からの粗糸Rの送り出しのプログラム等が存在する。
各種データとしては、例えば、紡出運転時のボビンレール32の移動速度と、粗糸巻の巻径と、ボビンホイール33の回転速度との対応データがある。
【0030】
玉揚げのための運転停止時の制御プログラムは、機台の運転を停止させる工程と、その後、玉揚げ位置までボビンレール32を下降させる工程とを備えている。
【0031】
作業用メモリ59は読み出し及び書き換え可能なメモリ(RAM)よりなり、作業用メモリ59には入力装置62により入力されたデータやCPU57における演算処理結果等を記憶する。
作業用メモリ59はバックアップ電源(図示せず)を備えている。
【0032】
入力装置62は制御手段56に一体に組み込まれており、タッチパネル方式の操作パネル62aを有する。
入力装置62における操作パネル62aには、通常紡出運転に必要な紡出粗糸重量(ゲレン)、繊維種、撚数等の紡出条件のほか、粗糸口出し紡出準備における粗糸の送り出しに必要な粗糸の長さを予め設定することができる。入力装置62は口出し長さ設定手段を構成する。
【0033】
予め設定される粗糸口出しにおける粗糸Rの送り出しの長さは、ドラフト機構11におけるフロントローラ12からフライヤレッグ22bの出口までの距離相当分と、プレッサ52の巻き付け長さ相当分、ボビンBへの粗糸Rの押し付けに必要な長さとを加算した長さである。
操作パネル62aは、表示手段として各種情報を表示することができる表示画面を有するほか、画面内に表示された各種操作スイッチを操作することにより、作業の目的に応じた画面の切り換えが可能である。
【0034】
図2は、粗糸口出しの粗糸Rの送り出しを行うための画面が表示された操作パネル62aの拡大図であり、図2では中央に3つのスイッチTB1〜TB3が並列に配置されている。
TB1は口出し開始スイッチであり、口出し開始スイッチTB1を操作(押圧)することによりドラフト機構11のみを作動させ、予め設定した長さの粗糸Rをドラフトローラ12〜15から送り出し、粗糸Rを送り出した後にドラフトローラ12〜15の回転を自動的に停止するようにする。
【0035】
TB2は口出し停止スイッチであり、口出し開始スイッチTB1の操作(押圧)による粗糸Rの送り出しを途中で停止させる。
口出し停止スイッチTB2を押すと、粗糸口出しにおいて送り出されている粗糸Rの送り出しを途中で停止する。
【0036】
TB3は口出しインチングスイッチであり、例えば、口出し開始スイッチTB1の操作による粗糸Rの送り出しの後に、粗糸Rをさらに送り出したい場合に用いるスイッチである。
この口出しインチングスイッチTB3は、押している間だけ、粗糸Rを送り出すことができる。
【0037】
次に、粗紡機10における粗糸の口出しの作業について説明する。
粗紡機10による通常の紡出運転を行うためには、予め紡出のための準備作業(紡出準備)を行う。
紡出準備としては、まず、紡出粗糸重量(ゲレン)、繊維種、撚数等紡出条件を入力装置62に入力するほか、粗糸口出しにおいて必要な粗糸Rの長さを入力する。
入力された各データは作業用メモリ59に格納される
【0038】
図3(a)に示すように、粗糸口出し前に粗紡機10の背面からスライバをドラフト機構11へ通す。なお、予めボビンレール32に空ボビンBを装着しておき、プレッサパドル53から垂れる粗糸Rの端部がボビンBの巻付け部(図示せず)に係着されやすいように、空ボビンBの巻付け部とプレッサパドル53が合う位置にボビンレール32の高さが設定される。
粗糸口出しにおける粗糸Rの送り出し作業では、図2に示す口出し開始スイッチTB1を操作パネル62aに表示させ、表示画面から口出し開始スイッチTB1を操作する。
【0039】
口出し開始スイッチTB1が一回操作(押圧)されると、ドラフト用モータ16が駆動され、ドラフトローラ12〜15が回転される。なお口出し開始スイッチTB1を押し続けなくとも、ドラフト用モータ16の駆動は継続される。
ドラフトローラ12〜15は、予め設定された回転数で以って回転される。
このときのドラフトローラ12〜15の回転は、通常の紡出運転時と比較して低速である。
ドラフト機構11から送り出される粗糸Rは、図3(b)に示すように、予め設定した長さの粗糸RがフライヤレールFR上に貯溜される。
【0040】
なお、粗糸Rの送り出しの途中で作業を止めたい場合には、口出し停止スイッチTB2を操作(押圧)すればよく、口出し停止スイッチTB2を操作することにより、ドラフト用モータ16の駆動が停止される。
また、粗糸Rの送り出しが完了した後に、粗糸Rの長さをさらに長くする場合には、口出しインチングスイッチTB3を操作すればよい。
口出しインチングスイッチTB3を押し続けた分だけドラフト機構11から粗糸Rが送り出される。
【0041】
粗糸口出しにおける粗糸Rの送り出しの作業が終わると、図3(c)に示すように、手で撚りをかけた粗糸Rをフライヤ22内の導糸管に通して、プレッサ52に巻き付け、プレッサパドル53から粗糸Rの端部を空ボビンBに臨ませるようにする。
この時点で粗紡機10は、図3(d)に示すように粗糸口出しが完了の状態にある。
【0042】
次に、操作パネル62aを操作して、通常の紡出運転を行うための画面に切り換える。
切り換えた後の操作パネル62aにおいて通常紡出運転に必要な操作を行い、粗紡機10の紡出運転を開始する。
粗紡機10の運転開始により、紡出条件に基づいてドラフト用モータ16、フライヤ回転用モータ27、巻取用モータ37及び昇降用モータ45が所定の回転速度で同期して駆動される。
【0043】
ドラフト用モータ16、フライヤ回転用モータ27の駆動により、フロントローラ12とフライヤ22は所定回転比を以ってそれぞれ一定速度で回転される。
ボビンホイール33は巻取用モータ37駆動とフライヤ回転用モータ27の駆動が差動歯車機構38により合成されて回転され、各時点におけるボビンBに対する粗糸Rの巻径に応じた速度で変速駆動される。
【0044】
一方、ボビンレール32は昇降用モータ45の駆動により歯車機構47を介して昇降される。
そして、フロントローラ12から紡出された粗糸RがボビンBに巻き取られていく。紡出運転中はセンサ50の出力信号に基づくカウント数がCPU57より計数される。
紡出運転中は運転状況を各種情報が操作パネル62aに表示される。
【0045】
因みに、紡出運転中は、粗糸口出しに実施されるドラフト機構11のみによる粗糸Rの送り出しは実行できない仕組みとなっている。
具体的には操作を行う各スイッチTB1〜TB3を表示する画面を表示しない仕組み、あるいは画面が表示されても各スイッチTB1、TB3を押してもドラフト機構11のみによる粗糸Rの送り出しが実行されない仕組みとなっている。
これらの仕組みはプログラムメモリ58に格納されているプログラムにより実現されている。
【0046】
通常の紡出運転が継続され、センサ50の検出信号に基づくカウント数が紡出粗糸重量から求められた粗糸長と対応する値に達すると、粗糸巻が満管に達したと判断され、CPU57は玉揚げ時の停止制御を開始する。
玉揚げ停止制御では、機台の運転を停止させる工程と、その後、玉揚げ位置までボビンレール32を下降させる工程を経て、粗糸切断動作が完了する。
【0047】
なお、繊維種や太さ等の紡出条件が変更される場合は、上記した粗糸口出しを変更の都度実施する必要がある。
あるいは、粗紡機10に対する保守作業の後に、粗糸口出しを実施する場合がある。
【0048】
この実施形態によれば以下の効果を奏する。
(1)粗糸口出しのとき、ドラフト機構11のみを作動させ、ドラフトローラ12〜15を回転させ、予め設定した長さの粗糸Rがドラフト機構11から送り出されるから、ドラフトローラ12〜15が回転するとき、フライヤ回転機構21、ボビン回転機構31、ボビンレール昇降機構41は作動されず、ドラフト機構11のみで粗糸Rの送り出しを完結することができる。従って、粗糸口出しにおいて、オペレータの感覚に左右されることなく、予め設定した適切な長さの粗糸Rをドラフト機構11から送り出すことができる。また、粗糸口出し作業中には、フライヤ22、ボビンレール32、ボビンホイール33は作動されないので、フライヤ22のプレッサパドル53と空ボビンBの巻付け部との位置がずれたり、粗糸Rが存在しない状態でプレッサパドル53が空ボビンBに摺接されるということがない。
【0049】
(2)粗糸口出しにおける粗糸Rの送り出しは、通常紡出時に実施不可となるから、例えば、通常紡出時において誤操作が生じても、ドラフト機構11のみの作動による粗糸Rの送り出しが通常紡出時に実施されることはなく、粗紡機10の運転異常を招くことはない。
【0050】
(3)粗糸口出しのとき、オペレータが口出し開始スイッチTB1を投入するだけでドラフト機構11のみが作動され、予め設定した長さの粗糸Rがドラフト機構11から送り出されるから、粗糸口出しにおける粗糸Rの送り出しを口出し開始スイッチTB1の操作だけで完結することができる。
【0051】
(4)粗糸口出しにおいて、口出し開始スイッチTB1の操作により予め設定した長さの粗糸Rがドラフトローラ12〜15から送り出されるが、その粗糸Rの送り出しの最中に口出し停止スイッチTB2を操作するとドラフトローラ12〜15の回転が停止され、粗糸Rの送り出しが停止される。従って、粗糸口出しの粗糸Rの送り出しを途中で止める必要があるとき、口出し停止スイッチTB1を操作することにより粗糸Rの送り出しを直ちに停止することができる。
【0052】
(5)粗糸口出しにおいて口出しインチングスイッチTB3が操作し続けられている間は、ドラフトローラ12〜15が回転され、口出しインチングスイッチTB3の操作が解除されるとドラフトローラ12〜15の回転は停止される。従って、口出し開始スイッチTB1の操作により予め設定した長さの粗糸がドラフトローラ12〜15から送り出された後、口出しインチングスイッチTB3の操作により粗糸Rをさらにドラフト機構11から送り出すことができる。
【0053】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
○上記の実施形態では、ドラフト機構11、フライヤ回転機構21、ボビン回転機構31、ボビンレール昇降機構41が夫々独立したモータにより駆動される構成の粗紡機10としたが、少なくともドラフト機構11が独立して駆動される粗紡機であればよい。例えば、ドラフト機構11とフライヤ回転機構21とが単一のモータで駆動されるような構成であれば、このモータとフライヤ回転機構21との間にクラッチを設け、ドラフト機構11のみを作動させるような粗紡機にも本発明を提供することができる。
○上記の実施形態では、各スイッチTB1〜TB3をタッチパネル式の操作パネル62aに表示するようにしたが、特に限定される趣旨ではなく、各スイッチの種類や形式は自由である。
○上記の実施形態では、粗糸口出しにおける粗糸Rの送り出しの際、必要な粗糸Rの長さを入力するとしたが、紡出条件等に応じた複数の粗糸Rの長さを粗糸長さデータとして予め登録しておき、作業の都度、登録されている適切な粗糸長さデータを選択設定するようにしてもよい。また、送り出す粗糸Rの長さを設定する際、粗糸Rの縮率の多寡に応じた補正係数を用いて粗糸Rの送り出しの長さを求めるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態に係る粗紡機の要部を示す構成図である。
【図2】本発明の実施形態に係る入力装置の要部を示す拡大図である。
【図3】粗糸口出しの作業を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
10 粗紡機
11 ドラフト機構
12〜15 ドラフトローラ
16 ドラフト用モータ
21 フライヤ回転機構
22 フライヤ
27 フライヤ回転用モータ
31 ボビン回転機構
32 ボビンレール
37 巻取用モータ
41 ボビンレール昇降機構
45 昇降用モータ
50、粗糸長さ検知手段としてのセンサ、51 センサ
56 制御手段
62 口出し長さ設定手段としての入力装置
62a 操作パネル
TB1 口出し開始スイッチ
TB2 口出し停止スイッチ
TB3 口出しインチングスイッチ
R 粗糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラフトローラを有するドラフト機構と、フライヤを回転させるフライヤ回転機構と、ボビンを回転させるボビン回転機構と、ボビンレールを昇降させるボビンレール昇降機構とを有し、少なくとも、前記ドラフト機構が前記フライヤ回転機構、前記ボビン回転機構及び前記ボビンレール昇降機構とは独立して作動可能な粗紡機の運転制御方法において、
粗糸口出しのときに前記ドラフト機構のみを作動させて粗糸を前記ドラフトローラから送り出し、
予め設定した長さの前記粗糸を送り出した後、前記ドラフトローラの回転を停止させることを特徴とする粗紡機の運転制御方法。
【請求項2】
前記粗糸口出し時における前記ドラフト機構のみの作動は、通常紡出時には実施不可とすることを特徴とする請求項1記載の粗紡機の運転制御方法。
【請求項3】
ドラフトローラを有するドラフト機構と、フライヤを回転させるフライヤ回転機構と、ボビンを回転させるボビン回転機構と、ボビンレールを昇降させるボビンレール昇降機構とを有し、少なくとも、前記ドラフト機構が独立して作動される粗紡機の運転制御装置において、
粗糸口出しのための粗糸の送り出し動作を開始する口出し開始スイッチと、
前記口出し開始スイッチの操作後に紡出される粗糸の長さを検知する粗糸長さ検知手段と、
前記粗糸口出し時の前記粗糸の送り出し長さを設定する口出し長さ設定手段とを設け、
該口出し開始スイッチの操作により、前記ドラフト機構のみが作動されて前記粗糸が前記ドラフトローラから送り出され、前記粗糸長さ設定手段により予め設定した長さの前記粗糸の送り出しが前記粗糸長さ検知手段により検知された後、前記ドラフトローラの回転が停止されることを特徴とする粗紡機の運転制御装置。
【請求項4】
前記口出し開始スイッチ操作による粗糸の送り出しを、任意のタイミングで停止させる口出し停止スイッチが設けられたことを特徴とする請求項3記載の粗紡機の運転制御装置。
【請求項5】
操作が継続している間前記ドラフト機構のみを作動させる口出しインチングスイッチが設けられたことを特徴とする請求項3又は4記載の粗紡機の運転制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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