説明

粘土鉱物粒子とその製造方法及びそれを用いたオレフィン重合用触媒

【課題】 粒子表面に凹凸がなく滑らかで、かつ真球状で大きな粒径を従来無かったような高いバランスで同時に実現させた粘土鉱物粒子とその製造方法、すなわち、助触媒兼担体である粘土鉱物粒子の構造、大きさを制御することにより、従来では粒子凝集のため製造できなかったような軟質材料さえも、良好な粒子性状の重合体パウダーとして製造できるオレフィン重合用触媒成分の製造方法を提供する。
【解決手段】 粘土鉱物を酸処理して酸処理粘土鉱物を得る工程(I)、前記酸処理粘土鉱物を粉砕して粉砕粘土鉱物を得る工程(II)および前記粉砕粘土鉱物を造粒して粘土鉱物粒子を得る工程(III)を含むことを特徴とする粘土鉱物粒子の製造方法など。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘土鉱物粒子とその製造方法及びそれを用いたオレフィン重合用触媒に関し、更に詳しくは、粒子表面に凹凸がなく滑らかで、かつ真球状で大きな粒径を従来無かったような高いバランスで同時に実現させた粘土鉱物粒子とその製造方法、及び流動性が良好で、微粉の割合が少なく、パウダー性状の優れたオレフィン重合体パウダーを得ることができる、オレフィン重合用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
粘土または粘土鉱物をオレフィン重合用触媒成分として利用した触媒の存在下に、オレフィンを重合してオレフィン重合体を製造することは公知である(例えば、特許文献1、2参照。)。
また、酸処理や塩類処理を行ったイオン交換性層状化合物を触媒成分として含むオレフィン重合用触媒も知られている(例えば、特許文献3〜8参照。)。
さらに、これらのイオン交換性層状化合物は、助触媒としてのみならず、担体としても作用するため、その粒子構造の制御は、生成する重合体パウダーの粒子の形態に大きく影響し、これは重合体の生産性を左右する重要な要素である。従来は、イオン交換性層状化合物の粒子構造の制御方法として、酸処理、塩処理、アルカリ処理等の化学処理が多く用いられてきた。
しかし、これらの処理技術だけでは、必ずしも良好な粒子構造を持つイオン交換性層状化合物粒子を製造できなかった。
【0003】
近年、メタロセン触媒を用いて軟質な重合体を製造する技術が開発されてきている(例えば、特許文献9、10参照。)。このような軟質な重合体を製造するためには、重合体パウダーの粒径、ひいては触媒の粒径がより大きいものが求められている。その理由は、軟質な重合体は、重合温度によっては表面にべたつき成分がブリードアウトしやすくなり、重合体パウダーの粒子同士が凝集しやすくなるが、重合体パウダーの粒径を大きくすると、重量あたりの粒子表面の外表面積が小さくなるため、表面での粒子同士の凝集を起こりにくくすることができるからである。
また、一方では、触媒粒子の形として球状粒子が求められている。その理由は、オレフィン重合触媒のような消費型触媒においては、触媒粒子の形がパウダー粒子の形とほぼ同様であり(いわゆるレプリカ効果)、球形の重合体パウダーの方が、嵩密度が大きく生産性に優れるとともに、重合体パウダーの流動性、流れ性に優れ、プラントでのパウダーの気力輸送や重力落下移送が容易に行えるためである。
【0004】
さらに、触媒の担体としては、あるレベル以上の粒子強度が求められている。その理由として、粒子強度が強い場合は、重合槽内での撹拌や流動中、粒子が擦れたり壁に当たったりしても、粒子が壊れて微粉状の重合体パウダーが発生したり異形の重合体パウダーが生成したりする問題が無くなるためである。例えば、スメクタイトを化学処理していない状態で噴霧造粒することにより、粒子強度の高い球状粒子の製造法が開示されている(例えば、特許文献11参照。)。しかしながら、このような大粒径粒子を製造するには、特許文献11の比較例のように、酸処理してから造粒する手法を用いるしか無かった。しかし、この比較例の手法では、粒子強度が低い粒子しか製造できていない。
【0005】
また、特許文献12においては、球状でかつ大粒径の粒子の製造法が開示されている。しかしながら、粒子の強度が全く不十分であり、無理やり高い粒子強度を得るために、300℃という高温で焼成する技術が開示されているが(実施例2)、高温焼成することで重合活性が低下するという問題については、解決策が提示されていない。さらに、特許文献12は、プロピレン重合用触媒成分として優れているモンモリロナイトについての大粒径化技術に関しては、十分とは言えず、例えば、その比較例2のように、無理やり大粒径化しようと、噴霧造粒時のスラリー濃度を高くすると、粒径は大きいものの、球形粒子が得られず、逆に、比較例3のように、球形粒子を得るため噴霧造粒時のスラリー濃度を低くすると、小さな粒径のものしか得られていなかった。
さらに、特許文献13においては、一旦造粒した後で酸処理を実施し、その後さらに造粒することにより、大粒径粒子を製造する方法が開示されている。しかしながら、粒子表面は、凹凸が激しく、粒子間の隙間が大きいため、このような表面形状の担体を用いてプロピレン−エチレンブロック共重合体を重合した場合には、エラストマー成分であるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分が表面からブリードアウトし、凝集体を形成することが容易に推察される。
また、特許文献14においては、酸処理した造粒担体を再び造粒する時にバインダーを添加する方法が開示されている。しかし、バインダーにモンモリロナイトを用いて造粒した担体から合成した触媒は、気相重合において微粉が発生し、また、シリカやアルミナをバインダーに用いると、活性が低下する問題があった。
【0006】
また、特許文献15、16においては、粉砕したモンモリロナイトを用いて造粒体を製造することによって、略球形の粒子形状、高い粒子強度を持ったスメクタイト粒子の製造法が開示されている。しかしながら、スラリー粘度が高いために、スラリー濃度は10重量%までしか上げられず、得られる粒子の形状は、扁平状で粒子径も小さく、必要とされる表面が滑らかで真球状の大粒径粒子は、製造できていない。
【0007】
このように、従来の技術だけでは、大きな粒径、真球状の粒子形状、充分な粒子強度の3つを同時に実現させた粘土鉱物粒子は、製造できなかった。特に、近年要求が高まってきている軟質材料(例えば、エラストマー成分であるプロピレン−エチレンランダム共重合体(EPR)含量の高いプロピレン−エチレンブロック共重合体など。)を凝集が無く、微粉の発生も少なく安定的に重合できる技術については、全く無かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−295022号公報
【特許文献2】特開平5−301917号公報
【特許文献3】特開平7−228621号公報
【特許文献4】特開平7−309906号公報
【特許文献5】特開平7−309907号公報
【特許文献6】特開平8−127613号公報
【特許文献7】特開平10−168109号公報
【特許文献8】特開平10−168110号公報
【特許文献9】特開2005−132979号公報
【特許文献10】特開2005−314621号公報
【特許文献11】特開2000−1310号公報
【特許文献12】特開平9−328311号公報
【特許文献13】特開2005−335981号公報
【特許文献14】特開2007−77227号公報
【特許文献15】特開2008−156395号公報
【特許文献16】特開2008−162857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記従来技術の状況や問題点に鑑み、助触媒兼担体である粘土鉱物粒子の構造、大きさを制御することにより、従来では粒子凝集のため製造できなかったような軟質材料さえも、良好な粒子性状の重合体パウダーとして製造できるオレフィン重合用触媒成分の製造方法を提供することにある。具体的には、粒子表面に凹凸がなく滑らかで、かつ真球状で大きな粒径を、従来無かったような高いバランスで同時に実現させた粘土鉱物粒子とその製造方法を提供し、これを用いたオレフィン重合用触媒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、粘土鉱物を酸処理してから、粉砕し微細化することにより、造粒工程での粉砕粘土鉱物スラリーの高濃度化と、造粒工程で得られる造粒体内部の細密な充填ができることから、粒子表面に凹凸がなく滑らかで、かつ真球状で大きな粒径を、従来無かったような高いバランスで同時に実現させた粘土鉱物粒子とその製造方法を見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、粘土鉱物を酸処理して酸処理粘土鉱物を得る工程(I)、前記酸処理粘土鉱物を粉砕して粉砕粘土鉱物を得る工程(II)および前記粉砕粘土鉱物を造粒して粘土鉱物粒子を得る工程(III)を含むことを特徴とする粘土鉱物粒子の製造方法が提供される。
【0012】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記粉砕粘土鉱物は、平均粒径が0.01〜10μmであることを特徴とする粘土鉱物粒子の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、工程(III)の造粒が噴霧造粒法で行われることを特徴とする粘土鉱物粒子の製造方法が提供される。
【0013】
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、前記噴霧造粒法は、前記粉砕粘土鉱物と分散媒とからなる粉砕粘土鉱物スラリーを用いて行われることを特徴とする粘土鉱物粒子の製造方法が提供される。
さらに、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、前記粉砕粘土鉱物スラリーは、B型粘度計で温度30℃、12rpmで測定した粘度が0.1〜200cP(mPa・s)であることを特徴とする粘土鉱物粒子の製造方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明に係る製造方法により得られることを特徴とする粘土鉱物粒子が提供される。
さらに、本発明の第7の発明によれば、第6の発明において、前記粘土鉱物粒子が下記(i)〜(iii)の要件を満たすことを特徴とする粘土鉱物粒子が提供される。
(i)平均粒径が40〜200μmであること
(ii)粒子の球状指数[D(M)/D(L)]の値が0.8〜1.0である粒子の数が全粒子の80〜100%であること
(iii)粒子の細孔容積が0.2〜0.8mL/gであること
【0015】
また、本発明の第8の発明によれば、下記成分[A]と、成分[B]、及び必要に応じて成分[C]を接触させてなることを特徴とするオレフィン重合用触媒が提供される。
成分[A]:第6又は7の発明に係る粘土鉱物粒子
成分[B]:周期律表第4〜6族の遷移金属化合物
成分[C]:有機アルミニウム化合物
【0016】
さらに、本発明の第9の発明によれば、第8の発明に係るオレフィン重合用触媒を用いることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法が提供される。
【0017】
本発明は、上記した如く、粘土鉱物粒子の製造方法などに係るものであるが、その好ましい態様としては、次のものが包含される。
(1)第1の発明において、酸処理に供される前記粘土鉱物は、造粒された粘土鉱物粒子であることを特徴とする粘土鉱物粒子の製造方法。
(2)第1の発明において、酸処理に供される前記粘土鉱物は、イオン交換性層状珪酸塩(好ましくはスメクタイト族珪酸塩、より好ましくはモンモリロナイト)であることを特徴とする粘土鉱物粒子の製造方法。
(3)第1の発明において、工程(I)の酸処理の後に、さらに、塩処理またはインターカレーションを施すことを特徴とする粘土鉱物粒子の製造方法。
(4)第4の発明において、前記粉砕粘土鉱物スラリーは、粉砕粘土鉱物の濃度が4〜70重量%(好ましくは5〜50重量%、より好ましくは7〜45重量%、特に好ましくは10〜40重量%)であることを特徴とする粘土鉱物粒子の製造方法。
(5)第4の発明において、前記分散媒は、水であることを特徴とする粘土鉱物粒子の製造方法。
(6)第4の発明において、前記粉砕粘土鉱物スラリーには、さらに、バインダー成分(例えば、シリカ、アルミナ、フライアッシュ、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、粘土、粘土鉱物、珪酸塩、水ガラス、アルミナゾル、シリカゲル、コロイダルシリカ等)が含まれることを特徴とする粘土鉱物粒子の製造方法。
(7)第8の発明において、成分[B]の遷移金属化合物は、第4族遷移金属のメタロセン化合物であることを特徴とするオレフィン重合用触媒。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、酸処理後に粉砕により微細化した粉砕粘土鉱物の高濃度スラリーを噴霧造粒する手法により、大粒径の粘土鉱物粒子の製造が可能となり、さらに、形状が真球状で表面の凹凸が少ない粘土鉱物粒子を得ることができる。
また、この粘土鉱物粒子をオレフィン重合用触媒成分に用いることにより、良好な粒子性状を有する重合体パウダーの製造が可能なオレフィン重合用触媒を得ることができる。
さらに、このオレフィン重合用触媒を用いることにより、高流動性、高エラストマー成分(例えば、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分など)の保持など、優れた性能を持ったオレフィン重合体を製造することができる。
【0019】
上記の本発明の効果を考察すると、噴霧造粒では、乾燥後の造粒粒子(粘土鉱物粒子)の大きさは、噴霧される液滴一粒中の粘土鉱物量によって決まるため、スラリー濃度を高くする、または噴霧液滴径を大きくすることによって、液滴一粒中の粘土鉱物量を増加することで、乾燥後の造粒粒子(粘土鉱物粒子)を大きくすることが可能である。
しかし、一般に多くの粘土鉱物は、膨潤性を有し、高濃度では、著しくスラリー粘度が増加するため、そのまま高濃度化した場合には、噴霧造粒が困難となり、また、液滴径を大きくした場合には、ある一定の値を超えると、形状を制御することが困難となる。形状悪化の原因は、表面から液滴が乾燥しながら粘土鉱物の膜を形成し、この膜が水の蒸発を阻害するため、一定の厚みに達した時点でも、まだ粒子内部に多量の水が残ったままとなり、この水が一気に気化することにより、形状が悪化すると、本発明者らは、推察している。このため、噴霧造粒が可能なスラリー粘度を維持したまま、スラリー濃度を増加させることが大粒径化のキーポイントである。
【0020】
ところが、多くの場合、粘土鉱物は、層間に水和性の高いイオンや置換基を有しており、水中でこれらが水和し、層間を広げ無限膨潤することで、スラリー粘度が増大する。このため、酸処理や塩処理を行うことにより、水和性のある層間イオンの交換や結晶構造の破壊による層電荷のバランスの崩壊によって、粘土鉱物の膨潤性を抑制することができる。
しかし、スラリー状の粘土鉱物を酸処理する場合、ゲル化が起きたり、酸処理後の洗浄でろ過に膨大な時間がかかり、生産性が著しく低下するなどの問題が発生するため、酸処理される粘土鉱物は、ある程度の大きさを持った粒子であることが必要である。
【0021】
そこで、ある程度の大きさを持った粘土鉱物に、酸処理を行い、これを再スラリー化すれば膨潤性が抑制され、噴霧造粒が可能なスラリー粘度を維持したまま、スラリー濃度を増加することが可能である。
しかしながら、単に酸処理を行った粘土鉱物を用いて造粒体を製造した場合、得られる造粒粒子(粘土鉱物粒子)の強度は低く、それを担体に用いた触媒の粒子強度も低下するため、生成する重合パウダーに割れや微粉が発生するおそれがある。
そこで、酸処理された粘土鉱物同士の接着力を強化するために、酸処理された粘土鉱物を粉砕し、微細化を行った。そうすることにより、酸処理粘土鉱物同士の接着面積が増加し、接着力が向上する。また、得られる造粒粒子の内部を密に充填できるために、粒子強度が増加するとともに、形状が真球状で、表面の凹凸が少ない造粒粒子の製造が可能である。
さらに、微細化された酸処理粉砕粘土鉱物のスラリーに、バインダー成分として接着性を有する微粒子を添加することにより、微細化された酸処理粉砕粘土鉱物同士の隙間が充填され、接着面積がさらに増加し、粒子強度を増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、実施例4で製造された粒子のSEM観察図である。
【図2】図2は、比較例3で製造された粒子のSEM観察図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、粘土鉱物粒子とその製造方法、およびそれを用いたオレフィン重合用触媒に関する。
以下、本発明を、項目毎に詳細に説明する。
【0024】
1.粘土鉱物粒子の製造方法
(1)粘土鉱物
粘土鉱物は、結晶質鉱物と非晶質鉱物とに大別される。結晶質鉱物は、すべてフィロケイ酸塩であり、層状珪酸塩と呼ばれる。本発明において、特に好ましい粘土鉱物は、層状珪酸塩であり、さらに好ましくはイオン交換性層状珪酸塩である。
イオン交換性層状珪酸塩とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物であり、含有されているイオンが交換可能なものをいう。大部分のイオン交換性層状珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出するが、これらイオン交換性層状珪酸塩は、特に、天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。また、これらのイオン交換性層状珪酸塩に後述する化学処理が行われていてもよい。
また、本発明においては、化学処理を加える前段階でイオン交換性を有していれば、該処理によって物理的、化学的な性質が変化し、イオン交換性や層構造がなくなった珪酸塩もイオン交換性層状珪酸塩であるとして取り扱う。
【0025】
層状珪酸塩の具体例としては、例えば、「粘土鉱物学」(白水春雄著、朝倉書店、1995年)等に記載される1:1型構造や2:1型構造をもつ層状珪酸塩が挙げられる。1:1型構造とは、前記「粘土鉱物学」等に記載されているような1層の四面体シートと1層の八面体シートが組み合わさっている1:1層構造の積み重なりを基本とする構造を示し、また、2:1型構造とは、2層の四面体シートが1層の八面体シートを挟み込んでいる2:1層構造の積み重なりを基本とする構造を示す。
【0026】
1:1層が主要な構成層である層状珪酸塩の具体例としては、ディッカイト、ナクライト、カオリナイト、メタハロイサイト、ハロイサイト等のカオリン族珪酸塩、クリソタイル、リザルダイト、アンチゴライト等の蛇紋石族珪酸塩等が挙げられる。
【0027】
2:1層が主要な構成層である層状珪酸塩の具体例としては、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト等のスメクタイト族珪酸塩、バーミキュライト等のバーミキュライト族珪酸塩、雲母、イライト、セリサイト、海緑石等の雲母族珪酸塩、アタパルジャイト、セピオライト、パリゴルスカイト、ベントナイト、パイロフィライト、タルク、緑泥石群等が挙げられる。これらは混合層を形成していてもよい。
【0028】
これらの中では、主成分が2:1型構造を有するイオン交換性層状珪酸塩であるものが好ましい。より好ましくは、主成分がスメクタイト族珪酸塩であり、さらに好ましくは、主成分がモンモリロナイトである。
【0029】
層間カチオン(イオン交換性層状珪酸塩の層間に含有される陽イオン)の種類としては、特に限定されないが、主成分として、リチウム、ナトリウム等の周期律表第1族のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム等の周期律表第2族のアルカリ土類金属、あるいは鉄、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、イリジウム、白金、金等の遷移金属などが、工業原料として比較的容易に入手可能である点で好ましい。
【0030】
(2)粘土鉱物の酸処理工程(I)
(i)酸処理剤
本発明における酸処理の役割は、水和性のある層間イオンの交換や結晶構造の破壊による層電荷のバランスの崩壊により、粘土鉱物の膨潤性を抑制することであるが、それ以外にも、オレフィン重合用触媒として高活性を示す粘土鉱物の構造を形成する活性化処理としての役割も果たす。
酸処理は、表面の不純物を除く、あるいは層間に存在する陽イオンの交換を行うほか、結晶構造の中に取り込まれているAl、Fe、Mg等の陽イオンの一部又は全部を溶出させることによって、表面積を増大させることができる。また、粘土鉱物の酸強度を増大させ、また単位重量当たりの酸点量を増大させることに寄与する。
酸処理で用いられる処理剤としては、無機酸および有機酸が挙げられ、具体例として、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、酢酸、シュウ酸、安息香酸、ステアリン酸、プロピオン酸、アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、などが挙げられる。好ましくは無機酸であり、特に好ましくは硫酸である。
【0031】
(ii)酸処理工程条件
酸処理工程条件は、特には制限されないが、通常、処理温度は、室温〜処理剤溶液の沸点、処理時間は、5分〜24時間の条件を選択し、粘土鉱物を構成している物質の少なくとも一部が除去又は交換される条件で行うことが好ましい。また、酸処理工程における粘土鉱物と酸処理剤との比率は、特に限定されないが、好ましくは粘土鉱物[g]:酸処理剤[mol]=1:0.001〜1:0.1程度である。
上記酸処理工程では、酸処理剤を適当な溶剤に溶解させて酸処理剤溶液として用いてもよいし、処理剤自身を溶媒として用いてもよい。使用できる溶剤としては、水、アルコール類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルデヒド類、フラン類、アミン類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、二硫化炭素、ニトロベンゼン、ピリジン類やこれらのハロゲン化物などが挙げられ、好ましくは親水性の溶剤であり、特に好ましく水である。また、酸処理剤溶液中の酸処理剤濃度は、0.1〜100重量%程度が好ましく、より好ましくは5〜50重量%程度である。処理剤濃度がこの範囲内であれば、処理に要する時間が短くなり、効率的に生産が可能である。
前記したように、スラリー状の粘土鉱物を酸処理する場合、ゲル化が起きたり、酸処理後の洗浄でろ過に膨大な時間がかかり、生産性が著しく低下するなどの問題が発生するため、酸処理される粘土鉱物は、ある程度の大きさを持った粒子であることが好ましい。すなわち、酸処理に供される粘土鉱物は、造粒された粘土鉱物粒子であることが好ましい。
【0032】
上記酸処理を実施した後に、過剰の酸処理剤及び処理により溶出したイオンの除去をすることが可能であり、好ましい。すなわち、洗浄することが好ましい。この際、一般的には、水や有機溶媒などの液体を使用する。洗浄および脱水後は、乾燥を行うが、一般的には、乾燥温度は100〜800℃、好ましくは150〜600℃で実施可能であり、特に好ましくは150〜300℃である。800℃を超えると、粘土鉱物の構造破壊を生じるおそれがあるので、好ましくない。
【0033】
これらの粘土鉱物は、構造破壊されなくとも乾燥温度により特性が変化するために、用途に応じて乾燥温度を変えることが好ましい。乾燥時間は、通常1分〜24時間、好ましくは5分〜4時間であり、雰囲気は、乾燥空気、乾燥窒素、乾燥アルゴン、又は減圧下であることが好ましい。乾燥方法に関しては、特に限定されず各種方法で実施可能である。
【0034】
粘土鉱物には、ゲスト化合物、ピラーなどの形で各種の金属が含まれているが、酸処理後の状態でアルミニウムを含むものが好ましく、Al/Siの原子比として、0.05〜0.4、好ましくは0.05〜0.25のもの、さらには0.07〜0.23の範囲のものがよい。Al/Si原子比は、酸処理の指標となるものとみられる。
【0035】
本発明に係る粘土鉱物は、工程(II)の粉砕前に、酸処理を施していることが必須であって、好ましく、酸処理後に、さらに、塩処理を施すことが特に好ましい。その理由は、その方が高活性の触媒が得られるためである。塩処理により粘土鉱物の層間に金属イオンや有機陽イオン等が入ることで、粘土鉱物の層が有する電荷や層間距離が変化することにより、重合活性点を形成しやすい粘土鉱物の構造になると、本発明者らは、推定している。また、上記酸処理工程または塩処理工程の前後いずれかでインターカレーションを施してもよい。
インターカレーションとは、粘土鉱物が層状物質の場合に導入する化合物を含有する処理剤と粘土鉱物を接触させることにより、層間に別の物質を導入することをいい、導入される物質をゲスト化合物という。
塩処理やインターカレーションでは、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体等を形成し、表面積や層間距離を変えることができる。イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと置換することにより、層間が拡大した状態の層状物質を得ることもできる。すなわち、嵩高いイオンが層状構造を支える支柱的な役割を担っており、ピラーと呼ばれる。
【0036】
以下に、処理剤の具体例を示す。なお、本発明では、以下の塩類及び粘土鉱物の層間にインターカレーションし得る化合物から選ばれる2種以上を組み合わせたものを処理剤として用いてもよい。また、これら塩類及び粘土鉱物の層間にインターカレーションし得る化合物は、それぞれが2種以上の組み合わせであってもよい。さらに、これらの組み合わせは、処理開始時に添加する処理剤について組み合わせて用いてもよいし、処理の途中で添加する処理剤について組み合わせて用いてもよい。
【0037】
(a)塩類
塩類としては、有機陽イオン、無機陽イオン及び金属イオンからなる群から選ばれる陽イオンと、有機陰イオン、無機陰イオン及びハロゲン化物イオンからなる群から選ばれる陰イオンとから構成される塩類が例示される。例えば、周期律表第1〜14族から選択される少なくとも一種の原子を含む陽イオンと、ハロゲンの陰イオン、無機ブレンステッド酸及び有機ブレンステッド酸の陰イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種の陰イオンとから構成される化合物が好ましい例として挙げられる。特に好ましくは、アニオンが無機ブレンステッド酸やハロゲンからなる化合物である。
【0038】
このような塩類の具体例としては、LiCl、LiBr、LiSO4、Li(PO)、LiNO、Li(OOCCH)、NaCl、NaBr、NaSO、Na(PO)、NaNO、Na(OOCCH)、KCl、KBr、KSO、K(PO)、KNO、K(OOCCH)、CaCl、CaSO、Ca(NO、Ca(C、La(OOCH、La(CHCOCHCOCH、La(CO、La(NO、La(ClO、La(C、LaPO、La(SO、LaF、LaCl、LaBr、LaI等が挙げられる。
【0039】
有機陽イオンの例としては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、ドデシルアンモニウム、N,N−ジメチルアニリニウム、N,N−ジエチルアニリニウム、N,N−2,4,5−ペンタメチルアニリニウム、N,N−ジメチルオクタデシルアンモニウム、オクタドデシルアンモニウム、N,N−2,4,5−ペンタメチルアニリニウム、N,N−ジメチル−p−n−ブチルアニリニウム、N,N−ジメチル−p−トリメチルシリルアニリニウム、N,N−ジメチル−1−ナフチルアニリニウム、N,N,2−トリメチルアニリニウム、2,6−ジメチルアニリニウム等のアンモニウム化合物やピリジニウム、キノリニウム、N−メチルピペリジニウム、2,6−ジメチルピリジニウム、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニウム等の含窒素芳香族化合物、ジメチルオキソニウム、ジエチルオキソニウム、ジフェニルオキソニウム、フラニウム、オキソラニウム等のオキソニウム化合物、トリフェニルホスホニウム、トリ−o−トリルホスホニウム、トリ−p−トリルホスホニウム、トリメシチルホスホニウム等のホスホニウム化合物やホスファベンゾニウム、ホスファナフタレニウム等の含リン芳香族化合物等が挙げられる。
【0040】
陰イオンの例としては、上に例示した陰イオン以外にも、ホウ素化合物、リン化合物からなる陰イオン、例えばヘキサフルオロフォスフェート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレート等が挙げられる。
【0041】
(b)インターカレーション用化合物
粘土鉱物の層間にインターカレーションするために用いられるゲスト化合物としては、TiCl、ZrCl等の陽イオン性無機化合物、Ti(OR)、Zr(OR)、PO(OR)、B(OR)[Rはアルキル基、アリール基など]等の金属アルコラート、[Al1(OH)247+、[Zr(OH)142+、[FeO(OCOCH等の金属水酸化物イオン、エチレングリコール、グリセロール、尿素、ヒドラジン等の有機化合物、アルキルアンモニウムイオン等の有機陽イオン等が挙げられる。
【0042】
これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)、Al(OR)、Ge(OR)等の金属アルコラート等を加水分解して得た重合物、SiO等のコロイド状無機化合物等を共存させることもできる。また、ピラーの例としては、上記水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物等が挙げられる。ゲスト化合物の使用法としては、そのまま用いてもよいし、新たに水を添加吸着させ、あるいは加熱脱水処理した後、用いてもよい。また、単独で用いても、上記固体の2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
また、上述した各種処理剤は、前記したように、適当な溶剤に溶解させて処理剤溶液として用いてもよいし、処理剤自身を溶媒として用いてもよい。使用できる溶剤としては、水、アルコール類、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エステル類、エーテル類、ケトン類、アルデヒド類、フラン類、アミン類、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、二硫化炭素、ニトロベンゼン、ピリジン類やこれらのハロゲン化物などが挙げられる。また、処理剤溶液中の処理剤濃度は、0.1〜100重量%程度が好ましく、より好ましくは5〜50重量%程度である。処理剤濃度がこの範囲内であれば、処理に要する時間が短くなり、効率的に生産が可能になるという利点がある。
【0044】
(3)粉砕工程(II)
本発明に係る酸処理粘土鉱物を粉砕する手法としては、特に制限は無いが、酸処理粘土鉱物が小さくなる手法であることが必要である。具体的な粉砕機としては、ジョークラッシャー、ジャイレトリークラッシャー、ロールクラッシャー、エッジランナー、ハンマーミル、ボールミル、ジェットミル等が挙げられる。好ましいのはボールミル、ジェットミルであり、ジェットミルが特に好ましい。また、乾式粉砕、湿式粉砕のいずれでもよい。
粉砕してから造粒すると、酸処理粘土鉱物同士の接着面積が増加し、接着力が向上する。また、得られる粘土鉱物粒子の内部を密に充填できるため、粒子強度が増加するとともに、形状が真球状で表面の凹凸が少ない粘土鉱物粒子の製造が可能である。これにより、触媒の形状が真球状になり、さらに真球状の重合体パウダーが得られ、重合体パウダーの嵩密度が向上するとともに、重合体パウダーの流動性が良くなる。
また、粉砕後の粉砕粘土鉱物の平均粒径は、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.1〜10μm、特に好ましくは0.1〜6μm、さらに好ましくは1〜6μmの範囲である。
粉砕前の酸処理粘土鉱物の形状については、特に制限はなく、天然に産出する形状、人工的に合成した時点の形状でもよいし、また、粉砕、造粒、分級などの操作によって形状を加工した酸処理粘土鉱物を用いてもよい。
【0045】
(4)造粒工程(III)
本発明の粘土鉱物粒子は、造粒されていることを特徴とする。造粒方法としては、特に制限されないが、好ましい造粒手法としては、撹拌造粒法、噴霧造粒法、転動造粒法、ブリケッティング、コンパクティング、押出造粒法、流動層造粒法、乳化造粒法、液中造粒法、圧縮成型造粒法等が挙げられる。特に好ましくは、噴霧造粒法が挙げられる。
【0046】
噴霧造粒を行う場合、原料スラリーの分散媒として、水あるいはメタノール、エタノール、クロロホルム、塩化メチレン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレン等の有機溶媒を用いる。好ましくは水を分散媒として用いる。
【0047】
粘土鉱物は、水の含有量によって力学的性質が著しく変化する。噴霧造粒の原料スラリー液中における粉砕粘土鉱物の濃度とスラリー粘度には相関が見られ、スラリー濃度の増加に伴って、スラリー粘度は、指数関数的に増加する。このため、球状粒子が得られる噴霧造粒の原料スラリー粘度は、0.1〜200cP(mPa・s)であることが好ましく、さらに好ましくは1〜200cP(mPa・s)である。特に水溶媒中では、1〜200cP(mPa・s)が特に好ましい。
尚、本発明においては、スラリー粘度とは、B型粘度計で温度30℃、12rpmで測定した粘度の値を意味する。
【0048】
原料スラリー液中における粉砕粘土鉱物の濃度は、4〜70重量%、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは7〜45重量%、特に好ましくは10〜40重量%である。上記濃度の上限を超えると、球状粒子が得られず、また、上記濃度の下限を下回ると、造粒体の平均粒径が小さくなりすぎる。球状粒子が得られる噴霧造粒の熱風の入口温度は、分散媒により異なるが、水を例にとると、80〜260℃、好ましくは100〜220℃である。
【0049】
また、造粒の際に、有機物、無機溶媒、無機塩、各種バインダーを用いてもよい。無機系のバインダーとしては、シリカ、アルミナ、フライアッシュ、塩化マグネシウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸マグネシウム、粘土、粘土鉱物、珪酸塩、水ガラス、アルミナゾル、シリカゲル、コロイダルシリカが挙げられる。また、有機系バインダーとしては、例えば、砂糖、デキストローズ、コーンシロップ、ゼラチン、グルー、カルボキシメチルセルロース類、ポリビニルアルコール、アルコール類、グリコール、澱粉、カゼイン、ラテックス、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、タール、ピッチ、アラビアゴム、アルギン酸ソーダ等が挙げられる。好ましくは無機系のバインダーであり、特に好ましくは粘土、粘土鉱物、珪酸塩である。また、原料スラリー液中のバインダー濃度は、0.1〜10重量%程度が好ましく、より好ましくは0.5〜5重量%程度である。
【0050】
2.粘土鉱物粒子
本発明の粘土鉱物粒子は、上記1.粘土鉱物粒子の製造方法で説明した手法で得られる粘土鉱物粒子である。この粘土鉱物粒子は、噴霧造粒後に球状の粒子形態を維持していればよく、特に圧縮破壊強度に下限はないが、好ましくは0.1〜50MPa、より好ましくは1〜30MPa、特に好ましくは1〜15MPaの範囲である。なお、酸処理工程での処理時間や処理温度、粘土鉱物:酸処理剤の比などを変えることにより、酸処理の進行度を制御することが可能であり、これにより、後工程の噴霧造粒で得られる粘土鉱物粒子内の粉砕粘土鉱物同士の接着力を制御することが可能であるため、粘土鉱物粒子の強度を制御することが可能である。さらに、予めオレフィンを接触させて少量重合させることからなる予備重合処理を行うことで、粘土鉱物粒子内の細孔をオレフィン重合体で充填し、強度を制御することも可能である。一方、上限を超えると、重合中に重合体パウダーがレプリカ効果で成長せず、ひずみのある重合体パウダーを発生したり、初期活性が低下する問題が生じる。
【0051】
本発明に係る造粒法で得られる粘土鉱物粒子の平均粒径は、好ましくは40〜200μm、より好ましくは50〜200μm、特に好ましくは50〜120μmの範囲である。
好ましい平均粒径の範囲は、重合プロセスに依存する。重合プロセスが気相法である場合、平均粒径が大きい方が付着防止性や流動性が良くなり、好ましい。気相法の場合、好ましくは40μm以上、特に好ましくは50μm以上である。平均粒径が40μm未満であると、得られる重合体パウダーの平均粒径が小さくなり、重合体パウダーの飛散や付着といった問題を生じ、一方、200μmを超えると、触媒導入ライン中で閉塞をしやすく重合反応機への触媒の導入が困難になったり、得られる重合体パウダーの平均粒径が大きくなりすぎ、安定剤等の添加剤を均一に混合することが困難となったりする。
【0052】
本発明に係る造粒法で得られる粘土鉱物粒子の形状は、球状である。具体的には、D(M)/D(L)の値が0.8〜1.0の範囲である粒子の数が、全粒子の80〜100%であることを満たす形状である。ここで、D(L)は、投影図の粒子の最大径の値を、D(M)は、D(L)と直交する径の値を、それぞれ示す。好ましくはD(M)/D(L)の値が0.8〜1.0の範囲である粒子の数が、全粒子の90〜100%、特に好ましくはD(M)/D(L)の値が0.8〜1.0の範囲である粒子の数が、全粒子の95〜100%である。
なお、D(M)/D(L)は、任意の粒子の100個以上を光学顕微鏡で観察し、それを画像処理して求めたときのものである。
【0053】
本発明に係る造粒法で得られる粘土鉱物粒子の細孔容積は、粉砕粘土鉱物そのものがもつ細孔や、造粒後に形成される粉砕粘土鉱物粒子間の細孔も含まれる。
細孔分布は、細孔半径10〜10Åに、極大細孔径を持ち、また、細孔半径が10〜10Åの全細孔容積は、0.2〜0.8ml/gが好ましく、特に好ましくは0.2〜0.6ml/g、さらに好ましくは0.4〜0.6ml/gである。細孔分布、特に造粒後に形成される粉砕粘土鉱物粒子間の細孔の制御は、使用する粉砕粘土鉱物の平均粒径および粒度分布で制御することが可能であり、効果的である。
【0054】
3.オレフィン重合用触媒
(1)触媒成分
本発明のオレフィン重合用触媒は、下記成分[A]、成分[B]及び必要に応じて成分[C]を接触させてなることを特徴とするオレフィン重合用触媒である。
成分[A]:本発明の製造方法によって得られた粘土鉱物粒子
成分[B]:周期律表第4〜6族の遷移金属化合物
成分[C]:有機アルミニウム化合物
【0055】
<成分[A]>
上記2.で説明した粘土鉱物粒子である。触媒成分として使用する際には、粘土鉱物粒子を高温で乾燥することが好ましく、その際、乾燥温度は、100〜800℃、特に好ましくは150〜300℃である。800℃を超えると、粘土鉱物粒子の構造破壊を生じるおそれがあるので好ましくない。
【0056】
<成分[B]>
本発明で使用する成分[B]は、周期律表第4〜6族の遷移金属化合物である。具体的には、下記一般式(1)、(2)、(3)、(4)で表される化合物を挙げることができる。
【0057】
【化1】

【0058】
上記一般式(1)、(2)、(3)、(4)中、AおよびA’は、置換基を有してもよい共役五員環配位子(同一化合物内においてAおよびA’は同一でも異なっていてもよい)を示し、Qは、二つの共役五員環配位子を任意の位置で架橋する結合性基を示し、Zは、窒素原子酸素原子、珪素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子を示し、Q’は、共役五員環配位子の任意の位置とZを架橋する結合性基を示し、Mは、周期律表4〜6族から選ばれる金属原子を示し、XおよびYは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、アルコキシ基、アミノ基、リン含有炭化水素基または珪素含有炭化水素基(同一化合物内においてX及びX’は、同一でも異なっていてもよい。)を示す。
【0059】
AおよびA’としては、例えば、シクロペンタジエニル基を挙げることができる。シクロペンタジエニル基は、水素原子を五個有するもの[C−]であってもよく、また、その誘導体、すなわちその水素原子のいくつかが置換基で置換されているものであってもよい。
この置換基の例としては、炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜30の炭化水素基である。この炭化水素基は、一価の基としてシクロペンタジエニル基と結合していても、また、これが複数存在するときにその内の2個がそれぞれ他端(ω−端)で結合してシクロペンタジエニルの一部と共に環を形成していてもよい。後者の例としては、2個の置換基がそれぞれω−端で結合して該シクロペンタジエニル基中の隣接した2個の炭素原子を共有して縮合六員環を形成しているもの、即ちインデニル基、テトラヒドロインデニル基、フルオレニル基、および縮合七員環を形成しているもの、即ちアズレニル基、テトラヒドロアズレニル基が挙げられる。
【0060】
AおよびA’で示される共役五員環配位子の好ましい具体的例としては、置換または非置換のシクロペンタジエニル基、インデニル基、フルオレニル基、またはアズレニル基等が挙げられる。この中で、特に好ましいものは、置換または非置換のインデニル基、またはアズレニル基である。
シクロペンタジエニル基上の置換基としては、前記の炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜30の炭化水素基に加え、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子基、炭素数1〜12のアルコキシ基、例えば−Si(R)(R)(R)で示される珪素含有炭化水素基、−P(R)(R)で示されるリン含有炭化水素基、または−B(R)(R)で示されるホウ素含有炭化水素基が挙げられる。これらの置換基が複数ある場合、それぞれの置換基は同一でも異なっていてもよい。上述のR、R、Rは、同一でも異なっていてもよく、炭素数1〜24、好ましくは炭素数1〜18のアルキル基を示す。
さらに、シクロペンタジエニル基上の置換基として、少なくとも1つの第15〜16族元素(すなわち、ヘテロ元素)を有しても良い。この場合、ヘテロ元素自身を活性点近傍に、しかも金属と結合、配位することなく存在させて、活性点の性質を向上させようという思想から、第15〜16族元素と共役五員環配位子とを結合する原子数が1以下であるメタロセン錯体がさらに好ましい。
第15〜16族元素の配位子上の位置に、特に制限は無いが、2位の置換基上に有することが好ましい。さらに好ましくは2位の置換基が、5員又は6員環中に酸素原子、硫黄原子、窒素原子、及びリン原子よりなる群から選択されるヘテロ原子を含有する単環式又は多環式であることが好ましい。また、好ましくはケイ素もしくはハロゲンを含んでもよい炭素数4〜20のヘテロ芳香族基であり、ヘテロ芳香族基は、5員環構造が好ましく、ヘテロ原子は、酸素原子、硫黄原子、窒素原子が好ましく、酸素原子、硫黄原子がより好ましく、酸素原子がさらに好ましい。
【0061】
Qは、二つの共役五員環配位子間を任意の位置で架橋する結合性基を、Q’は、共役五員環配位子の任意の位置とZで示される基を架橋する結合性基を表す。
QおよびQ’の具体例としては、次の基が挙げられる。
(イ)メチレン基、エチレン基、イソプロピレン基、フェニルメチルメチレン基、ジフェニルメチレン基、シクロヘキシレン基等のアルキレン基類
(ロ)ジメチルシリレン基、ジエチルシリレン基、ジプロピルシリレン基、ジフェニルシリレン基、メチルエチルシリレン基、メチルフェニルシリレン基、メチル−t−ブチルシリレン基、ジシリレン基、テトラメチルジシリレン基等のシリレン基類
(ハ)ゲルマニウム、リン、窒素、ホウ素あるいはアルミニウムを含む炭化水素基類
さらに、具体的には、(CHGe、(CGe、(CH)P、(C)P、(C)N、(C)N、(C)B、(C)B、(C)Al(CO)Alで示される基等である。好ましいものは、アルキレン基類およびシリレン基類である。
【0062】
Mは、周期律表第4〜6族から選ばれる金属原子遷移金属を、好ましくは周期律表第4属金属原子を示し、具体的にはチタン、ジルコニウム、ハフニウム等である。特に、ジルコニウム、ハフニウムが好ましい。
【0063】
Zは、窒素原子、酸素原子、ケイ素原子、リン原子またはイオウ原子を含む配位子、水素原子、ハロゲン原子又は炭化水素基を示す。好ましい具体例としては、酸素原子、イオウ原子、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12のチオアルコキシ基、炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜18のケイ素含有炭化水素基、炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜18の窒素含有炭化水素基、炭素数1〜40、好ましくは炭素数1〜18のリン含有炭化水素基、水素原子、塩素、臭素、炭素数1〜20の炭化水素基である。
【0064】
XおよびYは、各々水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基、炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜10のアルコキシ基、アミノ基、ジフェニルフォスフィノ基等の炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12のリン含有炭化水素基、またはトリメチルシリル基、ビス(トリメチルシリル)メチル基等の炭素数1〜20、好ましくは炭素数1〜12のケイ素含有炭化水素基である。XとYは同一でも異なってもよい。これらのうちハロゲン原子、炭素数1〜10の炭化水素基、および炭素数1〜12のアミノ基が特に好ましい。
【0065】
一般式(1)で表される化合物としては、例えば、
(1)ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(2)ビス(n−ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(3)ビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(4)ビス(1−n−ブチル−3−メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(5)ビス(1−メチル−3−トリフルオロメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(6)ビス(1−メチル−3−トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(7)ビス(1−メチル−3−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(8)ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、
(9)ビス(テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
(10)ビス(2−メチル−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
等が挙げられる。
【0066】
一般式(2)で表される化合物としては、例えば、
(1)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−イソプロピル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(2)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(3)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(4−フルオロフェニル)−4H−アズレニル}〕ジルコニウムジクロリド、
(4)ジメチルシリレンビス[1−{2−メチル−4−(2,6−ジメチルフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、
(5)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,6−ジイソプロピル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(6)ジフェニルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(7)ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(8)エチレンビス{1−[2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
【0067】
(9)ジメチルシリレンビス{1−[2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(10)ジメチルシリレンビス{1−[2−メチル−4−(2’,6’−ジメチル−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ジルコニウムジクロリド、
(11)ジメチルシリレン{1−[2−メチル−4−(4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}{1−[2−メチル−4−(4−ビフェニリル)インデニル]}ジルコニウムジクロリド、
(12)ジメチルシリレン{1−(2−エチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(13)ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニル−7−フルオロ−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(14)ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−インドリル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(15)ジメチルシリレンビス[1−{2−エチル−4−(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)−4H−アズレニル}]ジルコニウムジクロリド、
(16)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムビス(トリフルオロメタンスルホン酸)、
(17)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(18)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(19)ジメチルシリレンビス〔1−{2−メチル−4−(1−ナフチル)インデニル}〕ジルコニウムジクロリド、
(20)ジメチルシリレンビス{1−(2−メチル−4,6−ジイソプロピルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
【0068】
(21)ジメチルシリレンビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(22)エチレン−1,2−ビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(23)エチレン−1,2−ビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(24)イソプロピリデンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(25)エチレン−1,2−ビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(26)イソプロピリデンビス{1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)}ジルコニウムジクロリド、
(27)ジメチルゲルミレンビス{1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(28)ジメチルゲルミレンビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
(29)フェニルホスフィノビス{1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)}ジルコニウムジクロリド、
【0069】
(30)ジメチルシリレンビス[3−(2−フリル)−2,5−ジメチル−シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(31)ジメチルシリレンビス[2−(2−フリル)−3,5−ジメチル−シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(32)ジメチルシリレンビス[2−(2−フリル)−インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(33)ジメチルシリレンビス[2−(2−(5−メチル)フリル)−4,5−ジメチル−シクロペンタジエニル]ジルコニウムジクロリド、
(34)ジメチルシリレンビス[2−(2−(2−(5−トリメチルシリル)フリル)−4,5−ジメチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(35)ジメチルシリレンビス[2−(2−チエニル)−インデニル]ジルコニウムジクロリド、
(36)ジメチルシリレン[2−(2−(5−メチル)フリル)−4−フェニルインデニル][2−メチル−4−フェニルインデニル]ジルコニウムジクロリド、
(37)ジメチルシリレンビス(2,3,5−トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(38)ジメチルシリレンビス(2,3−ジメチル−5−エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(39)ジメチルシリレンビス(2,5−ジメチル−3−フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
等が挙げられる。
【0070】
一般式(3)で表される化合物としては、例えば、
(1)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスt−ブチルアミド)ジクロリド、
(2)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスイソプロピルアミド)ジクロリド、
(3)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(ビスシクロドデシルアミド)ジクロリド、
(4)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム{ビス(トリメチルシリル)アミド)}ジクロリド、
(5)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)チタニウム{ビス(トリメチルシリル)アミド}ジクロリド、
(6)(2−メチルインデニル)チタニウム(ビスt−ブチルアミド)ジクロリド、
(7)(フルオレニル)チタニウム(ビスt−ブチルアミド)ジクロリド、
(8)(3,6−ジイソプロピルフルオレニル)チタニウム(ビスt−ブチルアミド)ジクロリド、
(9)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(フェノキシド)ジクロリド、
(10)(テトラメチルシクロペンタジエニル)チタニウム(2,6−ジイソプロピルフェノキシド)ジクロリド、
等が挙げられる。
【0071】
一般式(4)で表される化合物としては、例えば、
(1)ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(t−ブチルアミド)チタニウムジクロリド、
(2)ジメチルシランジイル(テトラメチルシクロペンタジエニル)(シクロドデシルアミド)チタニウムジクロリド、
(3)ジメチルシランジイル(2−メチルインデニル)(t−ブチルアミド)チタニウムジクロリド、
(4)ジメチルシランジイル(フルオレニル)(t−ブチルアミド)チタニウムジクロリド、等が挙げられる。
【0072】
本発明で使用する成分[B]としては、一般式(2)で示される化合物が好ましく、さらに、置換基に縮合七員環を形成しているもの、即ちアズレニル基、テトラヒドロアズレニル基を有する化合物が特に好ましい。なお、一般式(1)〜(4)で示される成分[B]は、同一の一般式で示される化合物および/または異なる一般式で表される化合物の二種以上の混合物として用いることができる。
これらの例示化合物のジクロリドは、ジブロマイド、ジフルオライド、ジメチル、ジフェニル、ジベンジル、ビスジメチルアミド、ビスジエチルアミド等に置き換えた化合物、も同様に例示される。さらに、例示化合物中のジルコニウム、チタニウムは、ハフニウムに置き換えた化合物も、同様に、例示される。
【0073】
<成分[C]>
成分[C]としては、一般式:(AlR3−nで表される有機アルミニウム化合物が使用される。式中、Rは、炭素数1〜20のアルキル基を表し、Xは、ハロゲン、水素、アルコキシ基又はアミノ基を表し、nは1〜3の、mは1〜2の整数を各々表す。有機アルミニウム化合物は、単独であるいは複数種を組み合わせて使用することができる。
【0074】
有機アルミニウム化合物の具体例としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルプロピルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウム、トリノルマルデシルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムジメチルアミド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムクロライド等が挙げられる。
これらのうち、好ましくは、m=1、n=3のトリアルキルアルミニウム及びアルキルアルミニウムヒドリドである。さらに好ましくは、Rが炭素数1〜8であるトリアルキルアルミニウムである。
【0075】
(2)オレフィン重合用触媒の調製、予備重合
本発明のオレフィン重合用触媒は、成分[B]と成分[A]及び必要に応じて成分[C]を接触させて、触媒とする。その接触方法は、特に限定されないが、以下のような順序で接触させることができる。また、この接触は、触媒調製時だけでなく、オレフィンによる予備重合時またはオレフィンの重合時に行ってもよい。これらの接触において接触を充分に行うため溶媒を用いてもよい。溶媒としては、脂肪族飽和炭化水素、芳香族炭化水素、脂肪族不飽和炭化水素やこれらのハロゲン化物、また予備重合モノマーなどが例示される。
【0076】
(i)成分[B]と成分[A]を接触させる。
(ii)成分[B]と成分[A]を接触させた後に、成分[C]を添加する。
(iii)成分[B]と成分[C]を接触させた後に、成分[A]を添加する。
(iv)成分[A]と成分[C]を接触させた後に、成分[B]を添加する。
その他、三成分を同時に接触させてもよい。
【0077】
好ましい接触方法は、成分[A]と成分[C]を接触させた後、未反応の成分[C]を洗浄等で除去し、その後再度必要最小限の成分[C]を成分[A]に接触させ、その後、成分[B]を接触させる方法である。この場合のAl/遷移金属のモル比は、0.1〜1,000、好ましくは2〜10、さらに好ましくは4〜6の範囲である。
成分[B]と成分[C]を接触させる(その場合、成分[A]が存在していても良い)温度は、0℃〜100℃が好ましく、さらに好ましくは20〜80℃、特に好ましくは30〜60℃である。この範囲より低い場合は、反応が遅く、また、高い場合は、成分[B]の分解反応が進行するという欠点がある。
また、成分[B]と成分[C]を接触させる(その場合、成分[A]が存在していても良い)場合には、有機溶媒を溶媒として存在させることが好ましい。この場合の成分[B]の有機溶媒中での濃度は、高い方が好ましい。好ましい成分[B]の有機溶媒中での濃度の下限は、好ましくは3mmol/L、より好ましくは4mmol/L、さらに好ましくは6mmol/Lである。下限を超えると、反応が遅く、十分に反応が進行しない恐れがある。
【0078】
成分[A]1gにつき、遷移金属錯体が0.001〜10mmol、好ましくは0.001〜1mmolの範囲である。
【0079】
成分[A]は、酸点を持つことが好ましい。好ましい酸点の量の下限は、成分[A]1gにつきpKa<−8.2以下の強酸点が30μmol、より好ましくは50μmol、さらに好ましくは100μmol、特に好ましくは150μmolである。酸点の量は、特開2000−158707号公報の記載の方法に従い、測定する。
【0080】
これらは、重合槽内で、あるいは重合槽外で接触させ、オレフィンの存在下で予備重合を行ってもよい。オレフィンとは、炭素間二重結合を少なくとも1個含む炭化水素をいい、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチルブテン−1、スチレン、ジビニルベンゼン等が例示されるが、特に種類に制限はなく、これらと他のオレフィンとの混合物を用いてもよい。好ましくは炭素数3以上のオレフィンがよい。
【0081】
本発明の触媒は、粒子性の改良のために、予めオレフィンを接触させて少量重合されることからなる予備重合処理に付すことが好ましい。使用するオレフィンは、特に限定はないが、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロアルカン、スチレンなどを使用することが可能であり、特にプロピレンを使用することが好ましい。オレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。予備重合時間は、特に限定されないが、5分〜24時間の範囲であることが好ましい。また、予備重合量は、予備重合ポリマー量が、成分[A]1gに対し、好ましくは0.01〜100g、さらに好ましくは0.1〜50gである。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行ってもよい。
【0082】
予備重合温度は、特に制限は無いが、0℃〜100℃が好ましく、より好ましくは10〜70℃、特に好ましくは20〜60℃、さらに好ましくは30〜50℃である。この範囲を下回ると、反応速度が低下したり、活性化反応が進行しないという弊害が生じる可能性があり、一方、上回ると、予備重合ポリマーが溶解したり、予備重合速度が速すぎて粒子性状が悪化したり、副反応のため活性点が失活するという弊害が生じる可能性がある。
予備重合時には、有機溶媒等の液体中で実施することもでき、かつこれが好ましい。予備重合時の固体触媒の濃度には、特に制限は無いが、好ましくは50g/L以上、より好ましくは60g/L以上、特に好ましくは70g/L以上である。濃度が高い方がメタロセンの活性化が進行し、高活性触媒となる。
【0083】
さらに、上記各成分の接触の際、もしくは接触の後に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
【0084】
予備重合後に触媒を乾燥してもよい。乾燥方法には、特に制限は無いが、減圧乾燥や加熱乾燥、乾燥ガスを流通させることによる乾燥などが例示され、これらの方法を単独で用いてもよいし、2つ以上の方法を組み合わせて用いてもよい。乾燥工程において触媒を攪拌、振動、流動させてもよいし、静置させてもよい。
【0085】
4.オレフィン重合体の製造方法
前記成分[A]、成分[B]、及び必要に応じて用いられる成分[C]からなるオレフィン重合用触媒を用いて行う重合は、オレフィン単独あるいは該オレフィンと他のコモノマーとを混合接触させることにより、行われる。共重合の場合、反応系中の各モノマーの量比は、経時的に一定である必要はなく、各モノマーを一定の混合比で供給することも可能であるし、供給するモノマーの混合比を経時的に変化させることも可能である。また、共重合反応比を考慮してモノマーのいずれかを分割添加することもできる。
【0086】
重合し得るオレフィンとしては、炭素数2〜20程度のものが好ましく、具体的にはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、スチレン、ジビニルベンゼン、7−メチル−1,7−オクタジエン、シクロペンテン、ノルボルネン、エチリデンノルボルネン等が挙げられる。好ましくは炭素数2〜8のα−オレフィンである。共重合の場合、用いられるコモノマーの種類は、前記オレフィンとして挙げられるものの中から、主成分となるもの以外のオレフィンを選択して用いることができる。
【0087】
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いる方法、溶液重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相法などが採用できる。また、連続重合、回分式重合、又は予備重合を行う方法も適用される。
【0088】
スラリー重合の場合は、重合溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。重合温度は、0〜150℃であり、また、分子量調節剤として補助的に水素を用いることができる。重合圧力は、0〜2000kg/cmG、好ましくは0〜60kg/cmGが適当である。
【実施例】
【0089】
次に、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を逸脱しない限りこれらの実施例によって制約を受けるものではない。
以下の諸例において、出発物質である粘土鉱物として使用したモンモリロナイトは、水澤化学工業社製スプレードライ造粒粘土「ベンクレイSL」であり、分級によって平均粒径を19.3μmにしたものを用いた。
なお、本実施例における各種物性の測定法は、次の通りである。
【0090】
(各種物性測定法)
(1)スラリー粘度の測定:
BROOKFIELD社製、B型粘度計を用い、30℃、12rpmで測定した。
(2)粘土鉱物粒子の粒径分布の測定:
堀場製作所社製レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置LA−920を用い、分散溶媒をエタノール、屈折率1.0、形状係数1.0の条件で測定し、メジアン径の値を平均粒径とした。
(3)圧縮破壊強度の測定:
島津製作所(株)製、圧壊試験器「MCTM−500」を用いて、任意に選んだ10個以上の粒子の圧壊強度を測定し、その平均値を採用した。
(4)D(M)/D(L)が0.8〜1.0を満たす粒子の割合の測定:
任意の粒子100個以上を光学顕微鏡で観察し、(株)ニレコ社製、リアルタイム画像処理解析装置「LUZEX FS」を用いて、画像処理して求めた。ここで、D(L)は、投影図の粒子の最大径の値を、D(M)は、D(L)と直交する径の値をそれぞれ示す。
(5)比表面積の測定:
カンタークローム社製オートソーブ3Bを用い、BET多点法により測定した。200℃、真空下で2時間、前処理をしたサンプルを、吸着質を窒素ガスとして吸着等温線を測定した。吸着等温線からBETプロットを作製し、この勾配と切片から単分子吸着量を求め、比表面積を算出した。
(6)MFR(メルトマスフローレート):
タカラ社製メルトインデクサーを用い、JIS K7210の「プラスチック―熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレート(MFR)及びメルトボリュームフローレート(MVR)の試験方法」の試験条件:230℃、2.16kg荷重に準拠して、測定した。
(7)重合体パウダーの嵩密度(パウダーBD):
重合体パウダーの嵩密度をASTM D1895−69に準ずる装置を使用し、測定した。
(8)重合体パウダーの平均粒径:
レッチェテクノロジー社製、サンプルパウダー20gを、粒度分布測定装置カムサイザーを使用して、DIN66141のQ3(0.5)(質量基準による累積分布Q3(x)のX=0.5の値)の粒子径を平均粒径とした。
(9)微粉量:
粒度分布測定装置カムサイザーを使用した粒度分布測定結果から、微粉量として、粒径500μm以下の粒子の割合を求めた。
(10)粒子形状(パウダー形状):
実態顕微鏡、走査型電子顕微鏡を用い、観察した。
【0091】
[実施例1]
(a)粘土鉱物の酸処理および塩処理
撹拌翼と還流装置を取り付けた3Lセパラブルフラスコに、純水2264gを投入し、98%硫酸667.6gを滴下し、内部温度を90℃にした。そこへ、さらに市販のモンモリロナイト(水澤化学社製、ベンクレイSL)を400g添加後、撹拌した。
その後、90℃で3.5時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、さらに得られた固体を3Lの純水でスラリー化し、濾過するという操作を3回繰り返した。
この固体を、5Lビーカー内において硫酸リチウム1水和物432gを純水1924mlに溶解させた水溶液に加えて室温で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて濾過し、3Lの純水で3回洗浄してケーキを回収し、これを120℃で終夜乾燥して、酸処理粘土鉱物を得た。これを目開き74μmの篩にて篩い分けし、篩上分を除去した。
【0092】
(b)酸処理および塩処理した粘土鉱物のカウンタージェットミル粉砕
上記酸処理および塩処理した粘土鉱物を、下記の運転条件のホソカワミクロン社製カウンタージェットミル100AFGに、2.0kg/hの速度で供給した。
すなわち、1hかけて2.0kgの酸処理粘土鉱物を供給し、1.97kgの粉砕粘土鉱物を得た。
粉砕粘土鉱物の平均粒径は、5.5μmであった。また、粉砕機残量は、0.03kgであった。
(運転条件):
圧縮空気量:0.69[Nm/min]
空気圧力:0.6MPa
ノズル径:φ1.9×3本
分級機形式:50ATP
回転速度:9000rpm
ローターリンシング空気圧:0.1[MPa]
ベアリングリンシング空気圧:0.1[MPa]
【0093】
(c)粉砕粘土鉱物の噴霧造粒
上記粉砕粘土鉱物の25重量%蒸留水スラリーを作製し、噴霧造粒装置(大川原化工機社「L−8」)を使用し、次の条件下で上記の粉砕粘土鉱物スラリーの噴霧造粒を行った。
噴霧造粒の結果、平均粒径70.5μmの粘土鉱物粒子を噴霧造粒装置本体下から回収した。圧壊強度は、0.3MPaであった。
(噴霧造粒条件):
アトマイザー形式:Mtype、ロータリーディスク
アトマイザー回転数:10000rpm
サイクロン差圧:0.8kPa
スラリー供給速度:1.0kg/h
入り口温度:170℃
出口温度:129℃
【0094】
[実施例2]
(a)粘土鉱物の酸処理および塩処理
実施例1の(a)で製造した酸処理および塩処理した粘土鉱物を用いた。
【0095】
(b)酸処理および塩処理した粘土鉱物のカウンタージェットミル粉砕
実施例1の(a)で製造した酸処理および塩処理した粘土鉱物を、下記の運転条件のホソカワミクロン社製カウンタージェットミル100AFGに、0.3kg/hの速度で供給した。
すなわち、20hかけて6.0kgの酸処理粘土鉱物を供給し、5.43kgの粉砕粘土鉱物を得た。うちサイクロン捕集品は、3.17kgで平均粒径が3.7μm、P−Bag捕集品は、2.26kgで平均粒径が3.1μmであった。また、粉砕機残量は0.57kgであった。
(運転条件):
圧縮空気量:0.69[Nm/min]
空気圧力:0.6MPa
ノズル径:φ1.9×3本
分級機形式:50ATP
回転速度:17800rpm
ローターリンシング空気圧:0.1[MPa]
ベアリングリンシング空気圧:0.1[MPa]
【0096】
(c)粉砕粘土鉱物の噴霧造粒
上記粉砕粘土鉱物のサイクロン捕集品(平均粒径:3.7μm)を用いて25重量%蒸留水スラリーを作製し、噴霧造粒装置(大川原化工機社「L−8」)を使用し、次の条件下で上記の粉砕粘土鉱物スラリーの噴霧造粒を行った。
噴霧造粒の結果、平均粒径64.4μmの粘土鉱物粒子を噴霧造粒装置本体下から回収した。圧壊強度は、1.7MPaであった。
(噴霧造粒条件):
アトマイザー形式:Mtype、ロータリーディスク
アトマイザー回転数:10000rpm
サイクロン差圧:0.8kPa
スラリー供給速度:1.0kg/h
入り口温度:200℃
出口温度:154℃
【0097】
[実施例3]
(噴霧造粒):
実施例2の(b)で製造した粉砕粘土鉱物(サイクロン捕集品、平均粒径:3.7μm)の30重量%蒸留水スラリーを用いた以外は、実施例2と同様に、噴霧造粒した。
平均粒径78.7μmの粘土鉱物粒子を装置本体下から回収した。圧壊強度は、2.9MPaであった。
【0098】
[実施例4]
(噴霧造粒):
実施例2の(b)で製造した粉砕粘土鉱物(P−Bag捕集品、平均粒径:3.1μm)の33重量%蒸留水スラリーとアトマイザー回転数を7000rpmに変えた以外は、実施例2と同様に、噴霧造粒した。
平均粒径93.5μmの造粒品(図1参照)を装置本体下から回収した。圧壊強度は、4.0MPaであった。
【0099】
[実施例5]
(噴霧造粒):
実施例2の(b)で製造した粉砕粘土鉱物(サイクロン捕集品、平均粒径:3.7μm)に、バインダーとして、市販のモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL)の5.6重量%蒸留水スラリー(粉砕品に対して5重量%)を添加し、25重量%蒸留水スラリーとする以外は、実施例2と同様に、噴霧造粒した。
平均粒径59.0μmの粘土鉱物粒子を装置本体下から回収した。圧壊強度は、2.4MPaであった。
【0100】
[比較例1]
(噴霧造粒):
実施例2の(b)で製造した粉砕粘土鉱物(P−Bag捕集品、平均粒径:3.1μm)の38重量%蒸留水スラリーを作製しようとしたが、粉砕粘土鉱物が固体状のままであり、噴霧造粒ができなかった。
【0101】
[比較例2]
(噴霧造粒):
実施例2の(b)で製造した粉砕粘土鉱物の替わりに、市販のモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL)を用いて5.6重量%蒸留水スラリーを作製した以外は、実施例2と同様に、噴霧造粒した。
平均粒径38.6μmの造粒品を装置本体下から回収した。圧壊強度は、15MPaであった。また、粒子径は小さく、扁平状な粒子しか得ることができなかった。
【0102】
[比較例3]
(a)微粒子の造粒(第1段目造粒工程)
4.5リットルの金属製容器に蒸留水2850ミリリットル、市販のモンモリロナイト(水澤化学社製ベンクレイSL)150gを徐々に添加し、数時間撹拌させた後に、ポリトロンを10分間使用して均一化処理した。
平均粒径を測定したところ、モンモリロナイト水スラリーでは0.63μmであった。このスラリーを、大川原化工機社製噴霧造粒装置(LT−8)を用いて、噴霧造粒を実施した。スラリー物性および運転条件は、以下の通りである。
スラリー物性:pH=9.6、スラリー粘度=3500cP
運転条件:アトマイザー回転数30000rpm、給液量=0.7L/h、入り口温度=200℃、出口温度=140℃、サイクロン差圧=80mmH
その結果、90gの造粒微粒子を回収した。平均粒径は、10.1μmであった。形状は、球形であった。
【0103】
(b)酸処理
1.0リットルの撹拌翼の付いたガラス製フラスコに、蒸留水510ミリリットル、続いて濃硫酸(96%)150gをゆっくりと添加し、さらに、前記造粒した微粒子を80g分散させ、90℃で2時間加熱処理した。冷却後、このスラリーを減圧ろ過し、ケーキを回収した。このケーキに蒸留水を0.5〜0.6リットル加え、再スラリー化後、ろ過した。この洗浄操作を4回繰り返した。
回収したケーキを110℃で終夜乾燥した。乾燥後の重量は67.5gであった。
【0104】
(c)再造粒
このようにして得られた酸処理微粒子50gを、蒸留水150ミリリットル中に徐々に添加し、攪拌した。このスラリーを、大川原化工機社製噴霧造粒装置(LT−8)を用いて噴霧造粒を実施した。スラリー物性および運転条件は、以下の通り。
スラリー物性:pH=5.7、スラリー粘度=150cP
運転条件:アトマイザー回転数10000rpm、給液量=0.7L/h、入り口温度=130℃、出口温度=110℃、サイクロン差圧=80mmH
その結果、45gの造粒粒子を回収した。平均粒径は、69.3μmであった。形状を測定すると、D(M)/D(L)が0.8〜1.0の範囲の粒子は92%であった。また、圧壊強度は、3.6MPaであった。粒子径は、比較的大きいものの、表面の凹凸が激しく、隙間が多数見られる構造の粒子であり、目的とする平滑な表面を持った真球状の粒子からは程遠い形状であった(図2参照。)。
【0105】
[比較例4]
比較例3の(a)、(b)で製造した酸処理微粒子50gを、蒸留水150ミリリットル中に徐々に添加し、攪拌した。バインダーとして、モンモリロナイトの5重量%微粒子スラリー50gを添加し、さらに攪拌した。このモンモリロナイト微粒子の平均粒径は、0.6μm、バインダー添加量は5.0重量%であった。
このスラリーを、大川原化工機社製噴霧造粒装置(LT−8)を用いて、噴霧造粒を実施した。スラリー物性および運転条件は、以下の通り。
スラリー物性:pH=5.7、スラリー粘度=180cP
運転条件:アトマイザー回転数10000rpm、給液量=0.7L/h、入り口温度=130℃、出口温度=110℃、サイクロン差圧=80mmH
その結果、48gの造粒粒子を回収した。平均粒径は、75.2μmであった。形状を測定すると、D(M)/D(L)が0.8〜1.0の範囲の粒子は94%であった。また、圧壊強度は、7.2MPaであった。粒子径は比較的大きいものの、表面の凹凸が激しく、隙間が多数見られる構造の粒子であり、目的とする平滑な表面を持った真球状の粒子からは程遠い形状であった。
【0106】
[比較例5]
(a)モンモリロナイトの噴霧造粒体である「ベンクレイSL」のカウンタージェットミル粉砕
水澤化学社製噴霧造粒粘土「ベンクレイSL」を、下記の運転条件のホソカワミクロン社製カウンタージェットミル200AFGに、1.5kg/hの速度で供給した。
すなわち、10hかけて15.41kgのモンモリロナイトの造粒体を供給し、11.05kgの粉砕品を得た。粉砕機残量は4.36kgであった。
(運転条件):
圧縮空気量:3.0[Nm/min]
空気圧力:0.6MPa
ノズル径:φ3.0×3本
分級機形式:100ATP
回転速度:11500rpm
ローターリンシング空気量:0.6[Nm/min]
ローターリンシング空気圧:0.2[MPa]
ベアリングリンシング空気量:0.09[Nm/min]
ベアリングリンシング空気圧:0.2[MPa]
【0107】
(b)粉砕したモンモリロナイトの噴霧造粒
上記粉砕モンモリロナイトの10重量%蒸留水スラリーを作製し、一日静置させた。スラリーの粘度は20.3cPであった。噴霧造粒装置(大川原化工機社「L−8」)を使用し、次の条件下で上記のモンモリロナイトスラリーの噴霧造粒を行った。
噴霧造粒の結果、平均粒径46μmの造粒品を装置本体下から回収した。
粒子形状を走査型電子顕微鏡で観察したところ、球状指数D(M)/D(L)値は、80%であり、球状であった。また、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置で測定した平均粒径の1/5以下の粒径の粒子の割合は3.0%、圧壊強度は17MPaであった。粒子径は小さく、略球状の粒子しか得ることができなかった。
(噴霧造粒条件):
アトマイザー形式:Mtype、ロータリーディスク
アトマイザー回転数:6000rpm
サイクロン差圧:0.60KPa
スラリー供給速度:0.8kg/h
入り口温度:170℃
出口温度:130℃
【0108】
[比較例6]
(a)モンモリロナイトの噴霧造粒体である「ベンクレイSL」のカウンタージェットミル粉砕
噴霧造粒粘土「ベンクレイSL」をφ25のスクリューフィーダーから下記の運転条件のホソカワミクロン社製カウンタージェットミル100AFGに供給した。94分かけて0.57kgのモンモリロナイトの造粒体を供給し、0.36kgの粉砕品を得た。反応器残量は0.21kgであった。
(運転条件):
供給条件:φ25SFの供給機の変速機目盛り0.1
圧縮空気量:0.5[Nm/min]
空気圧力:0.39MPa
ノズル径:φ1.9
分級機形式:50ATP
回転速度:22000rpm
ローターリンシング空気量:0.31[Nm/min]
ローターリンシング空気圧:0.098[MPa]
ベアリングリンシング空気量:0.15[Nm/min]
ベアリングリンシング空気圧:0.098[MPa]
【0109】
(b)粉砕したモンモリロナイトの噴霧造粒
1900gの蒸留水に上記粉砕モンモリロナイト100gを加え、2時間攪拌してスラリーとし一日静置させた。スラリーの粘度は2.0cPであった。噴霧造粒装置(大川原化工機社「L−8」)を使用し、次の条件下で上記のモンモリロナイトスラリーの噴霧造粒を行った。
噴霧造粒の結果、平均粒径26.2μm、表面積124m/gの造粒品を84.3g回収した。粒子形状を走査型電子顕微鏡で観察したところ、ほぼ真球状の粒子であったが、粒子径は非常に小さく、目的の粒径には程遠かった。
(噴霧造粒条件):
アトマイザー回転数:10000rpm
サイクロン差圧:0.60KPa
スラリー供給速度:900mL/h
入り口温度:170℃
出口温度:124℃
【0110】
[実施例6]
(i)担体の乾燥
実施例3で噴霧造粒した粘土鉱物粒子を容積200mLのフラスコに入れ、200℃で減圧乾燥させ、ガスの発生が収まってから、さらに2時間減圧乾燥した。
【0111】
(ii)粘土鉱物粒子の有機アルミニウム処理
内容積1000mLのフラスコに上記(i)で得た乾燥粘土鉱物粒子10gを秤量し、ヘプタン65ml、トリイソブチルアルミニウム(TiBA)のヘプタン溶液35ml(25.5mmol)を加え、室温で1時間撹拌した。その後、ヘプタンで残液率1/100まで洗浄し、最後にスラリー量を50mLに調製した。
【0112】
(iii)プロピレンによる予備重合
上記(ii)で調整したトリイソブチルアルミニウム処理した粘土鉱物粒子のヘプタンスラリーに、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液1.64mL(1192μmol)を加えた。ここに、別のフラスコ(容積200mL)中で、(r)−ジクロロ[1,1´−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムジクロリド362mg(299μmol)にヘプタン(30mL)を加えたスラリーを加えて、60℃で60分間撹拌した。
次に、上記粘土鉱物粒子のヘプタンスラリーに、さらにヘプタン170mLを追加して全量を250mLに調整し、充分に窒素置換を行った内容積1Lの撹拌式オートクレーブに導入した。オートクレーブ内の温度が40℃に安定したところでプロピレンを5g/時間の速度で供給し、温度を維持した。4時間後プロピレンの供給を停止し、さらに1時間、40℃を維持した。
その後、残存モノマーをパージして予備重合触媒スラリーをオートクレーブより回収した。回収した予備重合触媒スラリーを静置し、上澄み液を抜き出した。続いてトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液8.24mL(5.99mmol)を室温にて加え、その後、減圧乾燥して固体触媒を32.09g回収した。予備重合倍率(予備重合ポリマー量を固体触媒量で除した値)は2.09であった。
【0113】
(iv)気相重合
内容積3リットルの撹拌式オートクレーブ内に分散媒としてすでに製造されたプロピレン重合体200gを導入し、十分に過熱乾燥させ窒素で十分置換した後に、内温を40℃に設定し、トリイソブチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液2.76ml(2.02mmol)を加え5分攪拌した後、常圧下で先に実施した予備重合触媒をノルマルヘプタンにスラリー化し、触媒として(予備重合ポリマーの重量は除く)120mgを投入した。水素25ml導入した後、プロピレンを段階的に導入しながら昇温昇圧を行い、75℃、プロピレン圧力が2.5MPaに達した所から重合開始とした。槽内温度を75℃に保ち、圧力は2.5MPaとなるようにプロピレンをフィードした。60分後、エタノール5mlを加え、残ガスをパージして得られたポリマーを回収した。
その結果、572gのポリマーが得られた。触媒活性は、4710g−PP/g−触媒・時であった。パウダーBD=0.50g/cc、MFR=0.65dg/分であった。重合体パウダーの平均粒径は、1.2mmで、球形であり、粒径が500μm以下の微粉量は、0.10重量%であった。
【0114】
[比較例7]
比較例3で調製した造粒粒子を用い、上記実施例6と同様の方法で、触媒の調製、予備重合、重合評価を実施した。
その結果、200gのポリマーが得られた。触媒活性は、4510g−PP/g−触媒・時であった。パウダーBD=0.32g/cc、MFR=1.45dg/分であった。重合体パウダーの平均粒径は、1.0mmであり、破砕した粒子が多く、粒径が500μm以下の微粉が24重量%も発生した。
【0115】
[比較例8]
比較例4で調製した造粒粒子を用い、実施例6と同様の方法で、触媒の調製、予備重合、重合評価を実施した。
その結果、210gのポリマーが得られた。触媒活性は、5020g−PP/g−触媒・時であった。パウダーBD=0.36g/cc、MFR=1.04dg/分であった。重合体パウダーの平均粒径は、1.1mmであり、破砕した粒子が多く、粒径が500μm以下の微粉が20重量%も発生した。
【0116】
上記実施例1〜5と比較例1〜6の評価結果を表1に示し、また、実施例6と比較例7、8の評価結果を表2に示す。
【0117】
【表1】

【0118】
【表2】

【0119】
表1、2から明らかなように、実施例1〜5及び比較例1〜6を対比すると、本発明(実施例1〜5)の粘土鉱物粒子の製造方法で得られた造粒体である粘土鉱物粒子は、例えば、実施例4で製造された粘土鉱物粒子のSEM観察図である図1に示すように、形状が真球状で、表面の凹凸が少ない粒子であり、また、大粒径であることがわかる。
一方、比較例1〜6では、造粒が不可であるか、或いは、例えば、比較例3で製造された粘度鉱物粒子のSEM観察図である図2に示すように、粒子形状が房状または扁平状であるか、或いは、ほぼ真球状の粒子であるものの、粒子径が非常に小さいものであることがわかる。
また、実施例6では、実施例3の噴霧造粒した粘土鉱物粒子を用いた触媒を使用して、プロピレンを重合したものであるが、得られた重合体は、例えば、微粉率が非常に少ないという良好な粒子性状のポリマー粒子であることがわかる。
一方、比較例7、8では、比較例3、4の噴霧造粒した粘土鉱物粒子を用いた触媒を使用して、プロピレンを重合したものであるが、得られた重合体は、例えば、微粉率が20〜24重量%と非常に多いという粒子性状のポリマー粒子であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の粘土鉱物粒子の製造方法で得られた粘土鉱物粒子は、粒子表面に凹凸がなく滑らかで、かつ真球状で大きな粒径を従来無かったような高いバランスで同時に実現させている。これをオレフィン重合用触媒成分として利用すると、近年要求が高まってきている軟質材料(例えば、エラストマー成分であるプロピレン−エチレンランダム共重合体(EPR)含量の高いプロピレン−エチレンブロック共重合体など。)を粒子凝集が無く、微粉の発生も少なくて安定的に重合でき、また、粒子性状が良好で、高嵩密度のポリオレフィンパウダーを得ることができるので、産業上、利用可能性が高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘土鉱物を酸処理して酸処理粘土鉱物を得る工程(I)、前記酸処理粘土鉱物を粉砕して粉砕粘土鉱物を得る工程(II)および前記粉砕粘土鉱物を造粒して粘土鉱物粒子を得る工程(III)を含むことを特徴とする粘土鉱物粒子の製造方法。
【請求項2】
前記粉砕粘土鉱物は、平均粒径が0.01〜10μmであることを特徴とする請求項1に記載の粘土鉱物粒子の製造方法。
【請求項3】
工程(III)の造粒が噴霧造粒法で行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の粘土鉱物粒子の製造方法。
【請求項4】
前記噴霧造粒法は、前記粉砕粘土鉱物と分散媒とからなる粉砕粘土鉱物スラリーを用いて行われることを特徴とする請求項3に記載の粘土鉱物粒子の製造方法。
【請求項5】
前記粉砕粘土鉱物スラリーは、B型粘度計で温度30℃、12rpmで測定した粘度が0.1〜200cP(mPa・s)であることを特徴とする請求項4に記載の粘土鉱物粒子の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法により得られることを特徴とする粘土鉱物粒子。
【請求項7】
前記粘土鉱物粒子が下記(i)〜(iii)の要件を満たすことを特徴とする請求項6に記載の粘土鉱物粒子。
(i)平均粒径が40〜200μmであること
(ii)粒子の球状指数[D(M)/D(L)]の値が0.8〜1.0である粒子の数が全粒子の80〜100%であること
(iii)粒子の細孔容積が0.2〜0.8mL/gであること
【請求項8】
下記成分[A]と、成分[B]、及び必要に応じて成分[C]を接触させてなることを特徴とするオレフィン重合用触媒。
成分[A]:請求項6又は7に記載の粘土鉱物粒子
成分[B]:周期律表第4〜6族の遷移金属化合物
成分[C]:有機アルミニウム化合物
【請求項9】
請求項8に記載のオレフィン重合用触媒を用いることを特徴とするオレフィン重合体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−126084(P2012−126084A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281578(P2010−281578)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】