説明

粘着シート、その製造方法、光学フィルタ及びプラズマディスプレイパネル

本発明は、粘着シート、その製造方法、光学フィルタ及びプラズマディスプレイパネルに関するものである。本発明では、コロナ処理により基材フィルムに導入されたヒドロキシ基と粘着剤層に含まれるイソシアネート系化合物とを通して、優れた基材密着性を有する粘着シートを提供することができる。これにより、本発明では高いガラス転移温度を有するカルボキシル基含有アクリル系共重合体を用いて、粘着シートの高温安定性を改善しながらも、優れた基材密着性を有する粘着シートを提供することができる。また、本発明の粘着シートは、必要に応じて、シロキサン系化合物を含み、初期剥離力の上昇を防止できる。これにより、本発明では優れた基材密着性、高温安定性、ガラスに対する接着性及び再作業性を有する粘着シート、その製造方法、該粘着シーと含む光学フィルタ及びプラズマディスプレイパネルを提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温安定性、基材密着性、ガラスに対する接着性及び再作業性に優れた粘着シート、その製造方法、該粘着シートを含む光学フィルタ及びプラズマディスプレイパネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、デジタルテレビをはじめとする高品位、大画面の表示装置に対する要求が高まっており、これに伴い、陰極線管(CRT)、液晶表示装置(LCD)又はプラズマディスプレイパネル(PDP)などの各分野で開発が活発に進められている。
【0003】
今まで、テレビなどに広く使われてきた陰極線管は解像度及び画質の面では優れているが、画面上の大きさに応じて長さ及び重量が大きくなる短所により、40インチ以上の大画面には適していない。一方、プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel)の場合には、大画面具現が可能であるという長所があり、現在、既に100インチ程度の製品も開発されている状況下で、LCDとともに大画面ディスプレイ系の先頭に立っている。しかし、PDP製品の場合、製造後、船舶などを用いた輸送時にコンテナー内部の高温により、PDPフィルタがガラスから離れる現象などが生じる問題が提起されている。このような離れる現象は粘着剤が低すぎるガラス転移温度(Tg)を有するか、又はガラスとの接着力が低下された場合に生じている。前記のような現象を防止するためには、接着剤のガラス転移温度を高めて高温安定性を確保し、ガラスとの接着力を高めなければならない。PDP用フィルタに、主に用いられるアクリル系粘着剤に前記のような高いガラス転移温度及び接着力を付与するためには、カルボキシル基を含む極性単量体を使用しなければならない。しかし、カルボキシル基は粘着剤のガラス転移温度を高める効果はあるが、基材密着性を低下させ、初期剥離力を高めて、再作業時に粘着剤の跡などを残す短所を有している。また、前記のような粘着剤層は、ガラス界面との接着力が非常に高く、特に高速剥離時に、高い剥離力上昇により再作業性が大きく劣るという問題がある。
【0004】
前記のような問題点を解決するために、特許文献1はイソシアネート基を含有するアクリル系共重合体を含む粘着剤組成物を開示している。しかし、前記技術では、イソシアネート基含有アクリル系共重合体及びイソシアネート基を有しないアクリル系共重合体を2液型として使用しなければならなく、これにより、使用前に両者を混合するする面倒な工程が必要とされている。また、前記技術では、含まれるイソシアネート基がガラスとの反応が生じて、ガラス界面との接着力が過度に高まる問題点がある。
【0005】
一方、特許文献2は、ポリエステル系基材フィルム及びアクリル系粘着剤の密着性を高めるために、ポリエステル系基材フィルムに反応性官能基を有する樹脂でプライマー層を形成する技術を開示している。しかし、前記技術は、処理過程が非常に複雑になり、製造コストが大きく増大するという短所を有する。また、特許文献3は、ヒドロキシ基含有アクリル共重合体に、メタクリレートを含有させて、基材との密着性を高める方法を開示している。しかし、前記技術は、カルボキシル基含有単量体を使用する場合に比べて、ガラス転移温度の上昇効果が大きくない。前記技術でガラス転移温度の上昇幅を高めるためには、重合時に過量のメタクリレート単量体を添加しなければならなく、この場合には樹脂の分子量を多量にすることができないため、耐久信頼性が落ちる問題が生じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−263963号
【特許文献2】特開2006−143915号
【特許文献3】特開2006−290993号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述した従来技術の問題点を考慮してなされたものであり、優れた基材密着性、高温安定性、ガラスに対する接着性及び再作業性を有する粘着シート、その製造方法、該粘着シートを含む光学フィルタ及びプラズマディスプレイパネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
一面又は両面にコロナ処理層を有する基材フィルム;及び
前記基材フィルムのコロナ処理層上に形成され、アクリル系共重合体及び多官能性イソシアネート系化合物を含有する粘着剤層;を含む粘着シートを提供する。
【0009】
本発明は、前記課題を解決するための別の手段として、基材フィルムの一面又は両面にコロナ放電処理を遂行してヒドロキシ基を導入する第1ステップ;及び
コロナ放電処理が遂行された基材フィルム上に粘着剤層を形成する第2ステップ;を含む本発明に係る粘着シートの製造方法を提供する。
【0010】
本発明は、前記課題を解決するためのさらに別の手段として、前述した本発明に係る粘着シート;及び
前記粘着フィルムの一面又は両面に形成された機能性フィルム;を含む光学フィルタを提供する。
【0011】
本発明は、前記課題を解決するためのさらに別の手段として、前述した本発明に係る光学フィルタがパネル前面に接着されているプラズマディスプレイパネルを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、コロナ処理を通して基材フィルムに導入されたヒドロキシ基と粘着剤層に含まれるイソシアネート系化合物とによって、優れた基材密着性を有する粘着シートを提供することができる。これにより、本発明では、高いガラス転移温度を有するカルボキシル基含有アクリル系共重合体を用いて、粘着シートの高温安定性を改善しながらも、優れた基材密着性を有する粘着シートを提供することができる。また、本発明に係る粘着シートは、必要に応じて、シロキサン系化合物を含んでいてもよく、それにより、初期剥離力の上昇を防止することができる。従って、本発明では優れた基材密着性、高温安定性、ガラスに対する接着性及び再作業性を有する粘着シート、その製造方法、該粘着シートを含む光学フィルタ及びプラズマディスプレイパネルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、一面又は両面にコロナ(corona)処理層を有する基材フィルム;及び
前記基材フィルムのコロナ処理層上に形成され、アクリル系共重合体及び多官能性イソシアネート系化合物を含有する粘着剤層;を含む粘着シートに関するものである。本発明では、基材フィルムのコロナ処理層に存在するヒドロキシ基と粘着剤層に含まれるイソシアネート系化合物との反応によって高い基材密着性を具現できる。
【0014】
以下、本発明の粘着シートを詳細に説明する。
【0015】
本発明の粘着シートを構成する基材フィルムの種類は特に制限されなく、この分野の一般的な素材をいずれも使用することができる。このような素材の例としては、プラスチックフィルム又はガラスなどが挙げられる。PDP用フィルタに用いられる粘着シートの場合には、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムのようなポリエステルフィルムが最も広く用いられている。
【0016】
本発明では、前記のような基材フィルムの一面又は両面にコロナ処理層が形成されていることを特徴とする。本発明で使用する用語「コロナ処理層」とは、基材フィルム上のコロナ処理が遂行されている層であって、前記処理を通してヒドロキシ基が導入されている領域を意味する。この時、コロナ処理は、被処理基材にコロナ放電の照射を通して、特定官能基(ヒドロキシ基)を導入することによって、表面のぬれ性が増加するように改質させる処理方法である。本発明では、このように基材フィルムの一面又は両面にヒドロキシ基を含むコロナ処理層を形成させて、前記ヒドロキシ基及び粘着剤層のイソシアネート系化合物との反応を誘導できる。本発明で、基材フィルム上にコロナ処理層を形成する方法は特に制限されなく、この分野で一般的に適用される方法を採用することができる。
【0017】
本発明で、前記コロナ処理層上に形成される粘着剤層は、アクリル系共重合体及び多官能性イソシアネート系化合物を含む。
【0018】
本発明の一態様において、前記アクリル系共重合体は、カルボキシル基含有アクリル系共重合体であってもよい。このように、共重合体がカルボキシル基を含有することによって、粘着剤層が高いガラス転移温度(Tg)を有することができ、これにより、優れた高温安定性を示すことができる。前記アクリル系共重合体のカルボキシル基はカルボキシル基を含有する単量体を使用して導入していてもよい。
【0019】
本発明で用いられるアクリル系共重合体は、重量平均分子量が500,000〜3,000,000が好ましい。前記分子量が500,000未満のとき粘着剤の弾性率が低下し、高温耐久性が悪化するおそれがあり、3,000,000を超えると長期間使用時にコーティング性が低下するか、又は層間剥離現象が生じるおそれがある。
【0020】
本発明の一態様において、前記アクリル系共重合体は炭素数1〜12の炭化水素基(例えば、アルキル基)を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体85〜99.9重量部及びカルボキシル基含有単量体0.1〜15重量部を含むことが好ましい。この時、用いられる(メタ)アクリル酸エステル系単量体の具体的な例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレートよりなる群から選択された一つ以上が挙げられるが、これに制限されるものではない。前記のような単量体はアクリル系共重合体内に85〜99.9重量部の量で含まれることが好ましい。前記含量が85重量部未満のとき粘着剤層の初期接着力が低下されるおそれがあり、99.9重量部を超えると凝集力低下による耐久性問題が生じるおそれがある。
【0021】
本発明に係るアクリル系共重合体に含まれるカルボキシル基含有単量体は前述同様であり、粘着剤に高温安定性を付与し、後述するエポキシ系又はアジリジン系硬化剤と反応して、粘着剤に架橋構造を付与する役割を果たしている。このような単量体の具体的な種類は特に制限されなく、例えば、(無水)(メタ)アクリル酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸及びカルボキシルアルキル(メタ)アクリレート[例えば、カルボキシルエチル(メタ)アクリレート又はカルボキシルプロピル(メタ)アクリレート]よりなる群から選択された一つ以上が挙げられる。このようなカルボキシル基含有単量体は、アクリル系共重合体内に0.1〜15重量部の量で含まれることが好ましい。前記含量が0.1重量部未満のとき目的とするガラス転移温度(Tg)上昇効果が得られないおそれがあり、15重量部を超えると剥離力が大きく増大し、再作業(rework)時に作業性が劣るおそれがある。
【0022】
また、本発明に係るアクリル系共重合体は、前述した単量体に、さらに多官能性イソシアネート系化合物と架橋反応しうるヒドロキシ基含有単量体を5重量部以下の量で含んでいてもよい。このようなヒドロキシ基含有単量体の種類は特に制限されなく、その例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートよりなる群から選択された一つ以上が挙げられる。前記のような単量体は本発明のアクリル系共重合体に5重量部以下の量で含まれることが好ましく、2重量部以下の量で含まれることがさらに好ましい。前記含量が5重量部を超えると樹脂にゲル化現象が生じるおそれがあり、また基材フィルムのヒドロキシ基(コロナ処理層)と反応しうるイソシアネート系化合物の量が相対的に減るおそれがある。
【0023】
以上のような成分を含むアクリル系共重合体は、この分野の一般的な方法を通して製造することができ、前記方法には溶液重合、光重合、バルク重合、サスペンション重合又はエマルジョン重合方法が挙げられる。
【0024】
前記のようなアクリル系共重合体とともに粘着剤層に含まれる多官能性イソシアネート系化合物は、基材フィルム上にコロナ処理により導入されたヒドロキシ基と反応して、基材密着性を向上させる作用をする。このような多官能性イソシアネート系化合物の具体的な例としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート及び前記のいずれか一つのポリオール(例えば、トリメチルロールプロパン)との反応物よりなる群から選択された一つ以上が挙げられるが、これに制限されるものではない。このようなイソシアネート系化合物は、アクリル系共重合体100重量部に対して0.01〜10重量部の量で含まれることが好ましい。前記含量が0.01重量部未満のとき基材密着性改善効果が落ちるおそれがあり、10重量部を超えると粘着樹脂のポットライフ(pot life)が低下され、コーティング性が落ちるおそれがある。
【0025】
また、本発明に係る粘着剤層は0.01〜15重量部の硬化剤をさらに含んでいてもよい。前記のような硬化剤は、アクリル系共重合体のカルボキシル基と反応して架橋構造を付与する役割を果たす。このような硬化剤は、この分野の通常のものを使用することができ、その例としては、エポキシ系硬化剤又はアジリジン系硬化剤が挙げられる。具体的には、エチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチルロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N’,N’−テトラグリシジルエチレンジアミン、グリセリンジグリシジルエーテル、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソプロタロイル−1−(2−メチルアジリジン)及びトリ−1−アジリジニルホスフィンオキシドよりなる群から選択された一つ以上が挙げられるが、これに制限されるものではない。前記のような硬化剤は粘着剤層に0.01〜15重量部の量で含まれることが好ましい。前記含量が0.01重量部未満のとき架橋構造が不充分になり耐久性が低下するおそれがあり、15重量部を超えると過度に高い架橋度によって基材の熱膨張又は収縮による応力を粘着剤が緩和させられないか、又は室温で粘着性(tacky)が落ちて接着不良が誘発されるおそれがある。
【0026】
また、本発明に係る粘着剤は0.01重量部以下のシロキサン系化合物を、さらに含んでいてもよい。粘着剤層の構成時に、高いガラス転移温度の具現のために、カルボキシル基含有共重合体を用いると、粘着剤層の初期剥離力が過度に高まり、再作業時に粘着剤の跡が残るおそれがある。しかし、本発明では、前記シロキサン系化合物(界面活性剤)を適宜添加することによって、初期剥離力上昇(build up)の問題を解決し、粘着シートに優れた再作業性を付与することができる。特に制限されないが、本発明では前記シロキサン系化合物としてポリアルキレンオキシド−変性ポリジメチルシロキサンを使用することが好ましく、具体的には下記式(1)で示される化合物を使用できる。
【0027】
【化1】

【0028】
[式中、
xは0以上の整数を表し、
yは1以上の整数を表し、
Aは−CHCHCHO(EO)(PO)Z(ここで、EOはエチレンオキシドを表し、POはプロピレンオキシドを表し、Zは水素、アミン又はアルキルを表し、m+nは1以上である(但し、n≠0))を表す。]
【0029】
前記のようなシロキサン系化合物の具体的な例としては、Silwet社から販売されている、L series商品(例えば、Silwet L−7200、Silwet L−7210、Silwet L−7220、Silwet L−7230、Silwet L−7280、Silwet L−7550、Silwet L−7607、Silwet L−7608、Silwet L−8610など)が挙げられる。
【0030】
前記のようなシロキサン系化合物は、前述したアクリル系共重合体100重量部に対して、0.01重量部以下の量で含まれていてもよい。前記含量が0.01重量部を超えると初期剥離力が過度に減少して接着不良が生じるか、又は離型フィルムとの剥離力が上昇して接着時に離型フィルムとの剥離不良が生じるおそれがある。本発明で前記シロキサン系化合物が含まれる場合、その含量の下限は特に制限されなく、目的する用途に応じて適宜調節することができる。本発明では、例えば、前記シロキサン系化合物の含量がアクリル系共重合体100重量部に対して、0.001重量部以上の範囲で適切に調節され得る。
【0031】
また、本発明に係る粘着剤層は、接着耐久性向上の観点から、0.01〜10重量部のシランカップリング剤をさらに含んでいてもよい。このようなシランカップリング剤は時間の経過又は熱により粘着力を上昇させ、高温及び/又は高湿状態で気泡発生及び剥離現象を予防し、耐久信頼性を増強する役割を果たす。本発明で用いられる前記カップリング剤の種類は特に制限されなく、例えば、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン及びγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランよりなる群から選択された一つ以上のような一般的なカップリング剤を使用することができる。前記カップリング剤の含量が0.01重量部未満のとき粘着力増加効果が不十分になるおそれがあり、10重量部を超えるとカップリング剤の過量使用による気泡又は剥離が生じるなど耐久信頼性がむしろ低下されるおそれがある。
【0032】
また、本発明に係る粘着剤層は、粘着性能調節の観点から、1〜100重量部の粘着性付与樹脂をさらに含んでいてもよい。このような粘着性付与樹脂の例としては、(水素化)ヒドロカーボン系樹脂、(水素化)ロジン樹脂、(水素化)ロジンエステル樹脂、(水素化)テルペン樹脂、(水素化)テルペンフェノール樹脂、重合ロジン樹脂及び重合ロジンエステル樹脂よりなる群から選択された一つ以上が挙げられる。前記のような粘着性付与樹脂の含量が1重量部未満のとき添加効果が不十分になるおそれがあり、100重量部を超えると相溶性又は凝集力向上効果がむしろ低下されるおそれがある。
【0033】
また、本発明に係る粘着剤層は、発明の効果に影響を及ぼさない範囲で、近赤外線吸収剤、エポキシ樹脂、硬化剤、可塑剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、調色剤、補強剤及び充填剤よりなる群から選択された一つ以上の添加剤が適宜含まれていてもよい。
【0034】
以上のような成分を適宜含む本発明に係る粘着剤層は架橋密度が1〜95%が好ましい。前記架橋密度が1%未満のとき高温状態で耐久性が落ちるおそれがあり、95%を超えると応力緩和効果が低下されるか、又は層間剥離現象が生じるおそれがある。
【0035】
さらに、本発明は、基材フィルムの一面又は両面にコロナ放電処理を遂行してヒドロキシ基を導入する第1ステップ;及び
コロナ放電処理が遂行された基材フィルム上に粘着剤層を形成する第2ステップ;を含む粘着シートの製造方法を提供する。
【0036】
本発明の第1ステップでは、基材フィルムの一面又は両面にコロナ放電処理を遂行して、粘着剤層のイソシアネート系化合物と反応するヒドロキシ基を導入する。前記コロナ放電処理は、高周波数の電気放電により被処理基材表面のぬれ性(wettability)を増大する方法である。このようなコロナ放電処理は、2個の電極間に高周波の高電圧を印加して発生したコロナを基材に照射することによって遂行することができ、これにより、基材フィルムの表面に官能基(ヒドロキシ基)を導入することができる。本発明で、このようなコロナ放電処理を遂行する方法は特に制限されなく、この分野の一般的な方法を制限なく使用することができる。
【0037】
本発明の第2ステップでは、前記のようなコロナ処理でヒドロキシ基が導入された基材フィルムに粘着剤層を形成する。この時、粘着剤層を形成する方法は特に制限されない。即ち、本発明では、この分野の一般的な工法を使用して、前述したそれぞれの成分を含む粘着剤組成物を製造した後、これを基材フィルムに塗布して粘着剤層を形成することができる。この時、コーティング性向上の観点から、前記組成物を適切な有機溶媒に希釈して塗布することが好ましい。また、前記粘着剤組成物にシロキサン系化合物が含まれる場合には、前記化合物を10倍〜50倍に希釈し、アクリル系共重合体と混合した後、その他成分(例えば、硬化剤など)を混合する工程で組成物を製造することが好ましいが、これあに制限されるものではない。
【0038】
前記のような粘着剤層の製造方法で、粘着剤組成物を硬化させる方法は特に制限されない。本発明では、例えば、この分野で公知されている一般的な熱硬化又はUV又は電子線(EB)などを用いた光硬化方法を使用することができる。
【0039】
また、本発明は、前述した本発明に係る粘着シート;及び
前記粘着フィルムの一面又は両面に形成された機能性フィルム;を含む光学フィルタに関するものである。光学フィルタは、プラズマディスプレイパネルなどの表示装置の前面(視聴者側)に接着されて、電磁波及び近赤外線の遮蔽及び乱反射防止などの作用を遂行する機能性フィルタである。
【0040】
前記のような光学フィルタは、ガラス又はプラスチックフィルム、及び各種機能性フィルムが互いに積層されて構成される。この時、機能性フィルムの例としては、リモコンの誤作動を誘発しうる近赤外線を遮断するNIRカットフィルム(Near-Infrared Cut film);ディスプレイ装置がより優れた色相を表現できるようにする色補正フィルム(Color compensation film);モジュールから放出される有害電磁波を遮断する電磁波(EMI)遮蔽フィルム(EMI shielding film);及び外部光源からの眩しさを防止するARフィルム(Anti-reflection film)などが挙げられる。本発明では光学フィルタが適用される用途に応じて前記機能性フィルムの1種又は2種以上が使用されていてもよい。
【0041】
また、本発明は、前記本発明に係る光学フィルタがパネル前面に接着されたプラズマディスプレイパネル(PDP)に関するものである。前記で「パネル前面」とはプラズマディスプレイパネルの視聴者側又は視聴者側の面を意味する。
【0042】
プラズマディスプレイパネルは、気体放電現象(プラズマ現象)を用いた表示装置であり、PDPモジュール及び光学フィルタなどで構成される。本発明のプラズマディスプレイパネルでは、パネルの前面又はパネル前面に積層されたある層の前面に本発明に係る光学フィルタを接着して使用することができる。また、本発明では前記光学フィルタをパネル前面に接着させるための粘着シートであり本発明に係る粘着シートを使用することができる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明に係る実施例及び比較例を参照して詳細に説明するが、本発明の範囲が下記提示された実施例により制限されるものではない。
【0044】
製造例1
アクリル系共重合体の製造
窒素ガスが還流され温度調節が容易なように冷却装置を付けた1Lの反応器に、n−ブチルアクリレート(BA)95重量部及びアクリル酸5重量部の単量体混合物を加え、溶剤として酢酸エチル100重量部を加えた。次いで、酸素除去のために窒素ガスを20分間パージした後、60℃に保持した。混合物を均一にした後、反応開始剤として酢酸エチルに50%の濃度で希釈したアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.03重量部を加え、混合物を8時間反応した。ポリスチレン標準サンプルを用いて測定した分子量が1500Kのアクリル系共重合体(A1)を製造した。
【0045】
実施例1
下記表1で示された組成で粘着剤組成物を製造した。コーティング性を考慮して、前記組成物を適正濃度に希釈し、均一に混合した後、38μm厚さの離型フィルムにコーティングし、乾燥して、25μm厚さの均一な粘着剤層を製造した。次いで、製造された粘着剤層をコロナ処理されたPDP用電磁波遮蔽フィルムのPET界面に積層し、再びNIRフィルムと積層した後、40℃及び4atmの状態のオートクレーブで30分間処理して、PDPフィルタを得た。この時、基材フィルムに遂行されたコロナ処理方法は後述した。
【0046】
【表1】

【0047】
コロナ処理
PDP用フィルタのPET基材に、ロール回転速度10cycle/minで5回繰り返し、コロナ処理を遂行した。この時、放電時の電圧は約300Vであった。
【0048】
実施例2
下記表2で示された組成の組成物を用いたことを除いては、実施例1と同様にしてPDP用フィルタを製造した。
【0049】
【表2】

【0050】
実施例3
下記表3で示された組成の組成物を用いたことを除いては、実施例1と同様にしてPDP用フィルタを製造した。
【0051】
【表3】

【0052】
比較例1
下記表4で示される組成の組成物を用いて、PETフィルムにコロナ放電処理を遂行しないことを除いては、実施例1と同様にしてPDP用フィルタを製造した。
【0053】
【表4】

【0054】
比較例2
下記表5で示される組成の組成物を用いたことを除いては、比較例1と同様にしてPDP用フィルタを製造した。
【0055】
【表5】

【0056】
比較例3
下記表6で示される組成の組成物を用いたことを除いては、比較例1と同様にしてPDPフィルタを製造した。
【0057】
【表6】

【0058】
比較例4
下記表7で示される組成の組成物を用いたことを除いては、前記実施例1と同様にしてPDP用フィルタを製造した。
【0059】
【表7】

【0060】
上記のように製造された実施例及び比較例のPDP用光学フィルタに対して、下記提示された方法により、基材密着性及びガラスに対する接着力を測定し、その結果を下記表8に示した。
【0061】
1.基材密着性
PDP用フィルタの基材フィルムのPETの界面に製造された粘着剤を塗布した後、指で擦ったときの粘着剤が付くか否かを下記基準で評価した。
○:粘着剤と基材と間で粘着剤の浮きや剥がれがない
×:粘着剤と基材と間で粘着剤が浮きや剥がれが発生
【0062】
2.ガラスとの接着力
PDP用フィルタの基材フィルムのPET界面に製造された粘着剤を塗布した後、2.5cm×12cmの大きさで切断して試片を製造した。前記試片をよく拭いたガラスに積層し、70℃の高温で1時間保管した後、室温で30分間冷却して、ガラスとの接着力を測定した。測定機器はテクスチャーアナライザー(SMS(Stable Micro System社製))を用いた。180゜剥離試験方法(peel test method)で測定しており、の時の剥離速度は0.3M/min(低速剥離力)及び2.4M/min(高速剥離力)であった。
【0063】
【表8】

【0064】
前記表8の結果から明らかなように、コロナ処理を遂行してヒドロキシ基が導入されたPET界面にイソシアネート系化合物を含む粘着剤層を形成した場合、優れた基材密着性を示した。反面、イソシアネート系化合物を含んでいるが、コロナ処理が遂行されていない比較例1〜3及びコロナ処理を遂行し、イソシアネート系化合物を使用しない比較例4の場合には、基材密着性が非常に劣ることを示した。さらに、ポリアルキレンオキシド−変性ポリジメチルシロキサンなどのシロキサン系化合物を含む場合、粘着剤層の高速剥離力の上昇が十分に防止されていることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面又は両面にコロナ処理層を有する基材フィルム;及び
前記基材フィルムのコロナ処理層上に形成され、アクリル系共重合体及び多官能性イソシアネート系化合物を含有する粘着剤層を含む粘着シート。
【請求項2】
基材フィルムがポリエステルフィルムである、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
アクリル系共重合体はカルボキシル基含有アクリル系共重合体である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項4】
アクリル系共重合体は、炭素数1〜12の炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体85重量部〜99.9重量部;及びカルボキシル基含有単量体0.1重量部〜15重量部を含む、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項5】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体が、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、2−エチルブチル(メタ)アクリレート及びベンジル(メタ)アクリレートよりなる群から選択された一つ以上である、請求項4に記載の粘着シート。
【請求項6】
カルボキシル基含有単量体が、(メタ)アクリル酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、フマル酸及びカルボキシルアルキル(メタ)アクリレートよりなる群から選択された一つ以上である、請求項4に記載の粘着シート。
【請求項7】
アクリル系共重合体が5重量部以下のヒドロキシ基含有単量体を、さらに含む、請求項4に記載の粘着シート。
【請求項8】
多官能性イソシアネート系化合物が、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート及びイソシアネート化合物とポリオールとの反応物よりなる群から選択された一つ以上である、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項9】
多官能性イソシアネート系化合物は、アクリル系共重合体100重量部に対して0.01重量部〜10重量部の量で含まれる、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項10】
粘着剤層がアクリル系共重合体100重量部に対して、0.01重量部〜15重量部の硬化剤を、さらに含む、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項11】
硬化剤がエポキシ系硬化剤又はアジリジン系硬化剤である、請求項10に記載の粘着シート。
【請求項12】
粘着剤層がアクリル系共重合体100重量部に対して、0.01重量部以下のシロキサン系化合物を、さらに含む、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項13】
シロキサン系化合物は下記式(1)で示される化合物である、請求項12に記載の粘着シート:
【化1】

[式中、
xは0以上の整数を表し、
yは1以上の整数を表し、
Aは−CHCHCHO(EO)(PO)Z(ここで、EOはエチレンオキシドを表し、POはプロピレンオキシドを表し、Zは水素、アミン又はアルキルを表し、m+nは1以上である(但し、n≠0))を表す]。
【請求項14】
粘着剤層がアクリル系共重合体100重量部に対して、0.01重量部〜10重量部のシランカップリング剤を、さらに含む、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項15】
粘着剤層がアクリル系共重合体100重量部に対して1重量部〜100重量部の粘着性付与樹脂を、さらに含む、請求項1に記載の粘着シート。
【請求項16】
基材フィルムの一面又は両面にコロナ放電処理を遂行してヒドロキシ基を導入する第1ステップ;及び
コロナ放電処理が遂行された基材フィルム上に粘着剤層を形成する第2ステップを含む粘着シートの製造方法。
【請求項17】
請求項1に記載の粘着シート;及び
前記粘着フィルムの一面又は両面に形成された機能性フィルムを含む光学フィルタ。
【請求項18】
機能性フィルムがNIRカットフィルム、色補正フィルム、電磁波遮蔽フィルム及びARフィルムよりなる群から選択された一つ以上である、請求項17に記載の光学フィルタ。
【請求項19】
請求項17に記載の光学フィルタがパネル前面に接着されているプラズマディスプレイパネル。

【公表番号】特表2011−522905(P2011−522905A)
【公表日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−507341(P2011−507341)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【国際出願番号】PCT/KR2009/002194
【国際公開番号】WO2009/134043
【国際公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】