説明

粘着シート

【課題】電子ディスプレイ用の粘着シートとして、加工時における粘着剤のはみ出しがない優れた粘着シートを提供する。
【解決手段】基材と、前記基材の少なくとも一方の面に形成された粘着層とからなる粘着シートであって、前記粘着層が、アクリル系ポリマーを主成分として含み、温度23℃、湿度50%の条件下で、一対の前記粘着シートの前記粘着層同士を25mm角の貼合面積となるように互いに貼合し、一方の前記粘着シートに対して貼合面平行方向に1kgの荷重を900秒間付加した後に生じる貼合面の相対的移動量が0.10mm以下である、粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の表面に粘着層が形成された粘着シートに関し、特に電子ディスプレイ用の光学フィルムとして用いられる粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、ブラウン管(CRT)、または有機ELディスプレイ等の電子ディスプレイでは、高機能化、および軽量化のために、粘着層を有する粘着シートの形態で供給される各種光学フィルムが積層されている。例えば、PDPでは、人体や他の機器に対して有害な電磁波、リモコン等のワイヤレス機器を誤動作させる近赤外線、赤色濃度を低下させるオレンジ色のネオン光等が発生するため、電磁波、近赤外線、ネオン光をカットする機能を持つ各種光学フィルムが粘着シートの形態で供給され、粘着層を介して積層されている。さらには、画面への外光の映り込みを防止するため、粘着シートである反射防止(AR)用の光学フィルムが最表面に貼着されている。
【0003】
粘着シート化された上記各種光学フィルムは、スリット加工、打抜き加工、シート断裁加工等の加工工程を経て電子ディスプレイに組み込まれる。このとき断裁面に粘着剤のはみ出しがあると、粘着シートを積み重ねた際、断裁面にはみ出した粘着剤が粘着シート表面に付着し、各光学フィルム特性の低下や視覚的障害がおこる。さらには、電子ディスプレイ内部部品への粘着剤付着により、製品機能が低下するおそれがある。また、加工工程での断裁刃にも粘着剤が付着する恐れがあるため、除去する必要が生じ、除去作業により生産性も低下する。
【0004】
粘着シートの代表的な実用特性として、1)粘着力、2)タック(粘着性)、3)保持力が挙げられる。粘着シートの保持力の測定方法とし、一般的には、JIS Z 0237−13に規定する方法による測定方法が挙げられ、粘着シートのタックの測定方法として、一般的には、JIS Z 0237−14に規定する傾斜式ボールタックによる測定方法が挙げられる。また、特許文献1には、JIS Z 0237−13に規定する保持力の測定方法とは異なる粘着シートの保持力の測定方法が開示されている。
【特許文献1】特開2004-212757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者は、各種加工工程において、粘着剤のはみ出しがなく、特に電子ディスプレイの構成要素として有用な粘着シートを提供することを目的とする。しかしながら、粘着シートの特性を測定する従来の測定方法によっても、電子ディスプレイ用の粘着シートにおいて粘着剤のはみ出しがないか否かを判定するのに十分に有用な指標が得られなかった。すなわち、従来の測定方法により優れた特性を有すると判定される粘着シートであっても、電子ディスプレイに適用した場合、粘着剤のはみ出しが生じることがあった。したがって、従来の粘着シートは、従来の指標に基づいて判定を行っていたため、電子ディスプレイ用の粘着シートとして十分に優れたものではなかった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、従来の測定方法により得られる指標では、電子ディスプレイ用の粘着シートの特性を判定するために有用でない原因を検討したところ、一般の粘着シート、および粘着ラベル等は粘着剤の主成分の分子量が数万程度であるのに対して、電子ディスプレイ用の粘着シートは粘着剤の主成分の分子量が30万〜200万であるため、一般の粘着シート、および粘着ラベルと比較して硬くベタツキのない構造であり、従来の測定方法では差異が生じにくかったと解される。また、粘着剤のはみ出しの程度は、上記した粘着シートの実用特性である粘着力、タック、保持力とは異なる特性であり、粘着剤のはみ出し程度を判定する有用な指標を得るためには、従来とは異なる他の測定方法を開発する必要があると考えた。以上の考察に基づき、種々の測定方法を検討したところ、加工時における粘着剤のはみ出しと高い相関性を有する新規な指標が得られる測定方法を見出した。したがって、電子ディスプレイ用の粘着シートとして、加工時における粘着剤のはみ出しがない優れた粘着シートを提供することができるようになった。
【0007】
なお、特許文献1では、電子ディスプレイ用の粘着シートの特性を測定しているものの、測定時に粘着シートを貼り付ける被着体としてガラス板を用いており、この被着体との相性によって変動してしまう測定値が得られるため、粘着シートにおける粘着剤のはみ出しを判定する指標を得るための測定方法としては十分なものとは言い難かった。
【0008】
すなわち、本発明は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に形成された粘着層とからなる粘着シートであって、前記粘着層が、アクリル系ポリマーを主成分として含み、温度23℃、湿度50%の条件下で、一対の前記粘着シートの前記粘着層同士を25mm角の貼合面積となるように互いに貼合し、一方の前記粘着シートに対して貼合面平行方向に1kgの荷重を900秒間付加した後に生じる貼合面の相対的移動量が0.10mm以下である、粘着シートである。
【0009】
前記アクリル系ポリマーは、好ましくは、少なくとも第1モノマーユニットと第2モノマーユニットとからなる共重合体であり、第1モノマーユニットが、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、第2モノマーユニットが、アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、不飽和脂肪族カルボン酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される。なお、前記粘着層は、好ましくは、架橋剤により凝集性が調整されている。この場合、前記粘着層に含まれるアクリル系ポリマーを固形分換算で100重量部とすると、架橋剤を固形分換算で0.05〜15重量部含むことが好ましい。
【0010】
粘着シートの一形態は、電子ディスプレイ用の光学フィルムである。
【0011】
また、本発明は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に形成された粘着層とからなり、前記粘着層が、アクリル系ポリマーを主成分として含む粘着シートの加工適性評価方法であって、温度23℃、湿度50%の条件下で、一対の前記粘着シートの前記粘着層同士を25mm角の貼合面積となるように互いに貼合し、一方の前記粘着シートに対して貼合面平行方向に1kgの荷重を900秒間付加した後に生じる貼合面の相対的移動量を測定し、前記相対移動量が0.10mm以下である場合に優れた加工適性を有すると評価する、粘着シートの加工適性評価方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、スリット加工、打ち抜き加工、シート断裁加工等の加工工程において、粘着剤のはみ出しが十分に抑制され、優れた加工適性を有する粘着シートを提供することができる。また、本発明によると、電子ディスプレイ用の粘着シートの特性を評価するのに有用な評価方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の粘着シートは、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に形成された粘着層とからなり、前記粘着層が、アクリル系ポリマーを主成分として含み、温度23℃、湿度50%の条件下で、一対の前記粘着シートの前記粘着層同士を25mm角の貼合面積となるように互いに貼合し、一方の前記粘着シートに対して貼合面平行方向に1kgの荷重を900秒間付加した後に生じる貼合面の相対的移動量が0.10mm以下である。
【0014】
基材としては、例えば、PDP、LCD、CRT、有機ELディスプレイ等の電子ディスプレイの形成に用いられるものが使用され、その種類は特に制限されない。基材として、例えば、基材層と、一層以上の光学機能層とからなる光学フィルムが用いられる。光学機能層としては、例えば、反射防止層、電磁波遮蔽層、近赤外線カット層、ネオン光カット層、偏光層、位相差層、光学補償層、輝度向上層、防眩層等が挙げられる。
【0015】
基材層としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリアリレート、ポリイミド、ポリエーテル、ポリカーボネート、シクロオレフィン系樹脂、ノルボルネン樹脂等の公知の透明な樹脂フィルムを好適に使用することができる。粘着シートを、電子ディスプレイ用の光学フィルムとする場合、基材には透明性に優れたPET、TACが特に好ましく用いられる。基材層には、光学機能層等の他の層との密着性を向上させるために、コロナ処理、アルカリ処理、プラズマ処理、易接着樹脂層コート処理等の表面処理を施すことが好ましい。
【0016】
光学機能層としては、例えば偏光フィルムを用いることができる。偏光フィルムとして、例えば、偏光子の片面または両面に透明保護フィルムを有するものを用いることができる。ここでの偏光子は特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質を吸着させて一軸延伸したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等があげられる。透明保護フィルムとしては、偏光特性や耐久性などの点より、トリアセチルセルロース等のセルロース系ポリマーが好ましい。偏光子と透明保護フィルムとの接着処理には、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系ラテックス、水系ポリエステル等が用いられる。
【0017】
粘着層を形成するために用いる粘着剤は、アクリル系ポリマーと架橋剤とを含有してなるものを好ましく用いる。アクリル系ポリマーとして、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、およびこれらの組み合わせよりなる群から選択されるモノマーユニット(「第1モノマーユニット」ともいう)を骨格の主成分とするポリマーを用いる。第1のモノマーユニットは、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、n−オクチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソノニルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される。特に低温でも粘着力をもつ、ガラス転移点(Tg)の低いn−ブチルアクリレート(Tg=−55℃)、2−エチルヘキシルアクリレート(Tg=−70℃)が好ましい。
【0018】
アクリル系ポリマーは、上述の骨格の主成分であるモノマーユニットと、架橋剤と反応しうる官能基を有するモノマーユニット(「第2モノマーユニット」ともいう)との共重合体であることが好ましい。
【0019】
官能基を有するモノマーユニットとしては、アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、不飽和脂肪族カルボン酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択されることが好ましい。第2モノマーユニットは、例えば、アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルである2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、および4−ヒドロキシブチルアクリレート、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステルである2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、および4−ヒドロキシブチルメタクリレート、不飽和脂肪族カルボン酸であるアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸およびイタコン酸、およびこれらの組み合わせよりなる群から選択される。特に2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸のうち1種以上使用することが前記n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートとの重合による凝集効果が高く、好ましい。
【0020】
アクリル系ポリマーが共重合体である場合、共重合体のモノマー単位として、第1モノマーユニットが90〜99.5重量%、第2モノマーユニットが0.5〜10重量%であることが好ましい。第2モノマーユニットが計0.5重量%未満では粘着剤の凝集性が低く、10重量%を超えると凝集性が強く粘着層の形成が困難になる。
【0021】
アクリル系ポリマーの重量平均分子量(Mw)は特に制限されないが、好ましくは300,000〜2,000,000、特に好ましくは800,000〜1,300,000である。本明細書において、重重量平均分子量(Mw)はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC法)により測定した、ポリスチレン換算の値とする。
【0022】
前記アクリル系ポリマーの製造は、各種公知の方法により製造することができ、例えば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法等のラジカル重合法を適宜選択することができる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系、過酸化物系の各種公知のものを使用できる。前記製造方法のうち、溶液重合法が好ましく、上記手法により製造したアクリル系ポリマーをトルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン等の極性溶媒に溶解させアクリル系ポリマー溶液を調製する。
【0023】
架橋剤は、前記アクリル系ポリマーと架橋しうる架橋剤を使用し、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、ジフェニルメタントリイソシアネート等のイソシアネート系化合物;ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、エチレングリコールグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等のエポキシ系化合物;ヘキサメチレンジアミン、トリエチルジアミン、ポリエチレンイミン等のアミン系化合物;アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、スズ、チタン、ニッケル等の多価金属がアセチルアセトンやアセト酢酸エチルに配位した金属キレート化合物;N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキサイド)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキサミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル−1−(2−メチルアジリジン)、トリ−1−アジリジニルホスフィンオキサイド等のアジリジン系化合物のうち、1種類以上を好適に使用することができる。特に、トリメチロールプロパントリレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネート、グリセリンジグリシジルエーテル、1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンのうち1種以上使用することが粘着剤のベタツキを抑え、高温状態で黄色に変色することなく、好ましい。架橋剤は、アクリル系ポリマーを分子間架橋することにより、粘着性能を付与する。架橋剤は、アクリル系ポリマーを固形分換算で100重量部とすると、固形分換算で0.05〜15重量部、特に0.1〜5重量部、さらには0.2〜3重量部添加することが好ましい。0.05重量部未満では、粘着剤が軟らかいため加工時に粘着剤のはみ出しが発生しやすく、15重量部を超えると粘着力不足により意図しない剥離、ハガレが発生しやすく、高温状態で変色しやすくなる。架橋剤を、例えばアクリル系ポリマー溶液に添加し粘着剤溶液を調製する。なお、アクリル系ポリマーの固形成分および架橋剤の固形成分については、添加した量がそのまま粘着層に含有されるとみなすことができる。
【0024】
さらに、前記粘着剤溶液には、必要に応じて、粘着付与剤、可塑剤、充填剤、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の添加剤を適宜添加してもよい。
【0025】
粘着層の形成方法は特に限定されることなく、例えば上記粘着剤溶液を、グラビア印刷法、スプレー法、ディッピング法、ロールコータ法、ダイコーター法等公知の方法により基材の表面に塗工し乾燥して粘着層を形成する。または、後述する剥離シートに粘着層を設け、これを基材へ転写する方法により粘着層を形成してもよい。この場合、2枚の剥離シートにより粘着層を保護した、いわゆるノンキャリアタイプの粘着層シートを用いて、このシートの一方の剥離シートを剥がし露出した面を基材の表面に貼合して、粘着層を形成してもよい。粘着層の厚みは特に限定されないが、好ましくは5〜150μm、さらに好ましくは10〜90μmとする。5μm未満では粘着力不足により意図しない剥離、ハガレが発生しやすく、150μmを超えると粘着剤が過剰となり、光透過性の低下、また加工時に粘着剤のはみ出しが発生しやすくなる。
【0026】
粘着層は基材の片面のみに設けてもよいし、両面に設けてもよい。粘着層の表面には剥離シートを設け粘着層を保護するようにしてもよい。剥離シートとしては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂フィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シート、金属箔、又はこれらのラミネート体等からなる適当な薄葉体を用いることができる。剥離シートの表面には、粘着層からの剥離性を高めるため、必要に応じてシリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の剥離処理が施されていてもよい。
【0027】
本発明の粘着シートは、以下に示すズレ量測定試験によるズレ量が0.10mm以下である粘着シートである。
【0028】
(ズレ量測定試験)
図1は、ズレ量測定試験の様子を模式的に示す正面図(a)および側面図(b)である。粘着シートを切断して、30mm×50mmmの粘着シート1と25mm×100mmの粘着シート2とを用意する。粘着シート1,2は、それぞれ基材1a,2aと、粘着層1b,2bとが積層されている。これらの粘着シート1,2を温度23℃、湿度50%の条件下に2時間放置する。以下のステップもすべて温度23℃、湿度50%の条件下で行う。その後、粘着シート1,2の粘着層1b,2b同士を貼合面積25mm×25mmとなるように貼合し、粘着部を粘着シート1の基材1a側から重量2kgのゴムローラを一往復させて試験片とする。粘着層1b,2bの表面に剥離シートが貼着されている場合は、これを剥がしてから、二枚の粘着シート1,2を貼合する。30分後、粘着シート1が上方となるようにして試験片を垂直に吊るす治具に粘着シート1を固定し、下方の粘着シート2の末端部分に重さ1kgのおもり3を吊るし、900秒後の2枚の粘着シートの相対的移動量(ズレ量)をレーザー寸法測定器(商品名;LS−3036、キーエンス社製)にて1/100mmまで測定する。
【実施例】
【0029】
以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0030】
(実施例1)
1.粘着剤の調製
重量平均分子量(Mw)が1,000,000のアクリル系ポリマー(n−ブチルアクリレート99重量%、および2−ヒドロキシエチルアクリレート1重量%による共重合体)30重量部を溶媒70重量部(トルエン30重量部と酢酸エチル40重量部を混合した溶媒)へ溶解させ、固形分30重量%のアクリル系ポリマー溶液を得た。アクリル系ポリマー溶液の固形分を100重量部とすると、この溶液に架橋剤としてトリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネートを固形分換算で0.50重量部加えたものを粘着剤溶液とした。
【0031】
2.粘着シートの作成
片面にシリコーン樹脂を塗布した厚さ75μmのPETフィルム(商品名;MRF75、三菱化学ポリエステルフィルム社製)からなる剥離シートのシリコーン樹脂塗布面上に上記で調製した粘着剤溶液を塗布し100℃にて1分間乾燥処理し、乾燥後の厚さが25μmの粘着層を有するシートを得た。厚さ100μmのPETフィルム(商品名;A−4300、東洋紡社製)の表面を反射防止(AR)処理後、処理面の反対面と上記粘着層を有するシートとを貼着させ、常温で1週間エージングした。このようにして実施例1の粘着シートを得た。
【0032】
(実施例2)
1.粘着剤の調製
重量平均分子量(Mw)が1,000,000のアクリル系ポリマー(n−ブチルアクリレート76.5重量%、メチルアクリレート20重量%、およびアクリル酸3.5重量%による共重合体)30重量部を溶媒70重量部(酢酸エチル60重量部とメチルエチルケトン10重量部を混合した溶媒)へ溶解させ、固形分30重量%のアクリル系ポリマー溶液を得た。アクリル系ポリマー溶液の固形分を100重量部とすると、この溶液に架橋剤としてトリメチロールプロパントリレンジイソシアネートを固形分換算で0.30重量部、及び1,3−ビス(N,N−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンを固形分換算で0.10重量部加えたものを粘着剤溶液とした。
【0033】
2.粘着シートの作成
粘着剤溶液が異なる点以外、実施例1と同様の方法で実施例2の粘着シートを得た。
【0034】
(実施例3)
1.粘着剤の調製
重量平均分子量(Mw)が1,300,000のアクリル系ポリマー(n−ブチルアクリレート96重量%、2−ヒドロキシエチルアクリレート1重量%、およびアクリル酸3重量%による共重合体)30重量部を溶媒70重量部(トルエン40重量部と酢酸エチル30重量部を混合した溶媒)へ溶解させ、固形分30重量%のアクリル系ポリマー溶液を得た。アクリル系ポリマー溶液の固形分を100重量部とすると、架橋剤としてトリメチロールプロパントリレンジイソシアネートを固形分換算で0.70重量部加えたものを粘着剤溶液とした。
【0035】
2.粘着シートの作成
粘着剤溶液が異なる点以外、実施例1と同様の方法で実施例3の粘着シートを得た。
【0036】
(実施例4)
1.粘着剤の調製
重量平均分子量(Mw)が1,000,000のアクリル系ポリマー(n−ブチルアクリレート98重量%、および4−ヒドロキシブチルアクリレート2重量%による共重合体)30重量部を溶媒70重量部(トルエン50重量部と酢酸エチル20重量部を混合した溶媒)へ溶解させ、固形分30重量%のアクリル系ポリマー溶液を得た。アクリル系ポリマー溶液の固形分を100重量部とすると、架橋剤としてトリメチロールプロパントリレンジイソシアネートを固形分換算で0.3重量部加えたものを粘着剤溶液とした。
【0037】
2.粘着シートの作成
粘着剤溶液が異なる点以外、実施例1と同様の方法で実施例4の粘着シートを得た。
【0038】
(比較例1)
1.粘着剤の調製
実施例1と同様に調製したアクリル系ポリマー溶液の固形分を100重量部とすると、この溶液に架橋剤としてトリメチロールプロパンキシリレンジイソシアネートを固形分換算で0.125重量部加えたものを粘着剤溶液とした。
【0039】
2.粘着シートの作成
粘着剤溶液が異なる点以外、実施例1と同様の方法で比較例1の粘着シートを得た。
【0040】
(比較例2)
従来品のARフィルム粘着シートを比較例2の粘着シートとした。
【0041】
実施例1〜4、比較例1、2について上述のズレ量測定試験、及び以下に示す各試験を行った。その結果を表1に示す。
【0042】
(スリット加工適性評価試験)
粘着シートをスリッター機(商品名;AUTO SLITTER S−300、三和技研社製)で500mスリット加工した際、スリット刃への粘着剤の付着および粘着シートの端部からの粘着剤のモレの有無を目視により評価した。粘着剤の付着や粘着剤のモレが認められない場合を○、粘着剤の付着や粘着剤のモレが認められた場合を×として評価した。
【0043】
(打抜き加工適性評価試験)
粘着シートを打抜き機(商品名;S1600B、坂本造機社製)で17インチ画面サイズに100枚打抜き加工した際、打抜き刃への粘着剤の付着および粘着シートの端部からの粘着剤のモレの有無を目視により評価した。粘着剤の付着や粘着剤のモレが認められない場合を○、粘着剤の付着や粘着剤のモレが認められた場合を×として評価した。
【0044】
(ボールタック評価試験)
JIS Z 0237−14に準じて、傾斜角度30度の傾斜式ボールタックを測定した。
【0045】
(保持力評価試験)
JIS Z 0237−13に準じて、1kgのおもりをつけて、17時間後のズレを測定した。ズレの有無を目視にて評価し、ズレが無い場合を「NC」とした。
【0046】
【表1】

表1に示す結果からわかるように、ズレ量試験におけるズレ量が0.10mm以下である実施例1〜4の粘着シートは、スリット加工時および打ち抜き加工時において粘着剤の付着および粘着剤のモレが認められず、電子ディスプレイ等に有用である。一方、ズレ量が0.11mm以上である比較例1、2の粘着シートは、スリット加工時及び打ち抜き加工時における粘着剤の付着および粘着剤のモレが認められ、電子ディスプレイ等に適用した場合に、不都合が生じる場合がある。また、表1に示す結果からわかるように、このような実施例1〜4の特性と、比較例1,2の特性との差は、ボールタック評価試験や保持力評価試験から見出すことはできない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の粘着シートは、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、ブラウン管(CRT)、有機ELディスプレイ等の電子ディスプレイに用いられる光学フィルムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】ズレ量測定試験の様子を模式的に示す正面図(a)および側面図(b)。
【符号の説明】
【0049】
1,2 粘着シート
1a,2a 基材
1b,2b 粘着層
3 おもり

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも一方の面に形成された粘着層とからなる粘着シートであって、
前記粘着層が、アクリル系ポリマーを主成分として含み、
温度23℃、湿度50%の条件下で、一対の前記粘着シートの前記粘着層同士を25mm角の貼合面積となるように互いに貼合し、一方の前記粘着シートに対して貼合面平行方向に1kgの荷重を900秒間付加した後に生じる貼合面の相対的移動量が0.10mm以下である、
粘着シート。
【請求項2】
前記アクリル系ポリマーは、少なくとも第1モノマーユニットと第2モノマーユニットとからなる共重合体であり、
第1モノマーユニットが、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、およびこれらの組み合わせからなる群から選択され、
第2モノマーユニットが、アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、メタクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、不飽和脂肪族カルボン酸、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、
請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記粘着層が、架橋剤を含み、前記アクリル系ポリマーの重量を固形分換算で100重量部とすると、前記架橋剤を固形分換算で0.05〜15重量部含む、請求項1または2に記載の粘着シート。



【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−269860(P2007−269860A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−94081(P2006−94081)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】