説明

粘着シート

【課題】耐溶剤性に優れ、絶縁障害を起こさず、耐熱性、気密性に優れゴム弾性を有する粘着シートを提供する。
【解決手段】支持層3に、フッ素樹脂ゲルからなる粘着層2を有する粘着シート1であって、前記フッ素樹脂ゲルが、少なくとも、(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物、(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物、(C)ヒドロシリル化反応触媒、(D)1分子中に1個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有するポリフルオロモノアルケニル化合物、及び(E)直鎖状ポリフルオロ化合物を含有する硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物からなるものであることを特徴とする粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートに関し、特に各種機械、電気・電子部品、あるいはプラスチック成形品等を固定したり、それらの製造時や検査時に、各種部品等を仮固定したり、建築材料、看板、輸送機等に塗料を乗せる場合のマスキング材等として使用するのに好適な粘着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
通常粘着シートは、支持層と粘着層とからなり、支持層には、従来、不織布かプラスチィックフィルム等が主に用いられ、粘着層には、天然ゴム等を主成分とするゴム系粘着剤、ポリジメチルシロキサンゴム等を主成分とするシリコーン系粘着剤(シリコーンゲルを含む。以下、同様)、あるいはn−ブチルアクリレート等を主成分とするアクリル系粘着剤が主に用いられている。また、粘着シートの応力緩和特性および追従性を向上させるために、ゴム状弾性と柔軟性を付与した粘着シートも知られており、そのような粘着シートの支持層には、シリコーンゴム等のゴムが用いられ、粘着層には、シリコーンゲルが用いられている。
【0003】
しかしながら、従来の粘着シートの粘着層に用いられているゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、およびアクリル系粘着剤は、いずれも粘着力を発生させるため、主成分である分子鎖の分子量が小さく、架橋密度も低くなっている。また、これら粘着剤は有機溶剤との親和性が有る場合が多いため、上記粘着剤からなる粘着層は有機溶剤が存在すると有機溶剤を吸収して膨潤しやすい。そして、膨潤した結果、粘着層の粘着力の低下を招いていた。すなわち、従来の粘着シートの粘着層に用いられている粘着剤は耐溶剤性がなかった。
【0004】
上記粘着剤のうち、特にアクリル粘着剤は、粘着剤に含まれる未反応のモノマーが貼り付ける基材によっては移行しやすい。また、硬化された粘着剤にはTgが存在するので、熱がかかると変形したり、粘着力が落ちたりする不具合が起きる(特許文献1)。すなわち、アクリル粘着剤は特に耐熱性がなかった。
【0005】
また、上記粘着剤のうち、シリコーン系粘着剤は、低分子シロキサンやシリコーンオイルを多量に含んでいる(特許文献2)。そのため、シリコーン系粘着剤を用いた粘着シート付近に、電気的接続状態がON・OFFを繰り返す部分、例えば、モーター内部のコイル部分、リレーの接点、スイッチの接点等が存在すると、シリコーン系粘着剤に含まれる低分子シロキサンやシリコーンオイルが酸化ケイ素となってコイル部分等の各部分に析出し、その結果、絶縁障害が生じうる。すなわち、シリコーン系粘着剤は特に耐絶縁障害性がなかった。
【0006】
さらに、半導体製造工程やコネクター製造工程にシリコーン系粘着剤を用いた粘着シートを使用する場合は、その粘着シートをはがした部分付近に、シリコーン系粘着剤に含まれるシリコーンオイルが滲出し、その結果、粘着強度が低下する。また、最悪の場合には、脱落が起こりうるというシリコーン系粘着剤特有の問題を有していた。特にICパッケージ内部で弾性体として粘着シートを用いる場合、半導体製造工程内の接点ボンディング時に、このような脱落等の問題が起こる可能性が高くなる。またシリコーンは気体透過性が大きいため、気密性を必要とする用途では使用できない場合が有る。すなわち、シリコーン系粘着剤は特に気密性がなかった。
【0007】
このような問題を解決するために、上記シリコーン系粘着剤でもアクリル系粘着剤でもないフッ素系エラストマーを積層した粘着ゴムも提案されてはいるが、フィルム上に粘着剤を積層しているため弾性を得ることが出来ず(特許文献3)、また、粘着力の違うフッ素ゴムを積層している記述があるが、詳細な有効な構造特定までは提示されておらず、また耐溶剤性を要する用途や気密性を要する用途への使用には言及されていない(特許文献4)。
【0008】
また、フッ素樹脂フィルムに各種別の粘着剤を積層することも提案されている(特許文献5〜8)。さらに、各種樹脂にアクリル系含フッ素共重合体型粘着剤を積層することも提案されている(特許文献9)。
【0009】
しかしながら、これら粘着シートによっても、変形に対しての弾性変化や耐溶剤粘着力、耐熱性は不十分であった。そのため、有機溶剤に接触しても粘着力が低下しない耐溶剤性を有し、電気的接続状態がON・OFFを繰り返す接点部分付近に使用しても絶縁障害を起こさない耐絶縁障害性を有し、熱がかかる部分付近に使用しても変形や粘着性が低下しない耐熱性を有し、良好な気密性を有し、ゴム弾性を有する粘着シートの開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−37514号公報
【特許文献2】特開2004−025516号公報
【特許文献3】特開2004−292529号公報
【特許文献4】特開2009−013313号公報
【特許文献5】特開平07−238264号公報
【特許文献6】特開平09−062188号公報
【特許文献7】特開2001−354924号公報
【特許文献8】特開2010−121066号公報
【特許文献9】特開2004−292529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、有機溶剤に接触しても粘着力が低下しない耐溶剤性を有し、電気的接続状態がON・OFFを繰り返す接点部分付近に使用しても絶縁障害を起こさない耐絶縁障害性を有し、熱がかかる部分付近に使用しても変形や粘着性が低下しない耐熱性を有し、良好な気密性を有し、ゴム弾性を有する粘着シートを提供することを目的とする。特に、このような特性を有する粘着シートは各種機械、電気・電子部品、あるいはプラスチック成形品等を固定したり、それらの製造時や検査時に、各種部品等を仮固定したり、建築材料、看板、輸送機等に塗料を乗せる場合のマスキング材として使用するのに好適に用いることができる粘着シートとなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明では、支持層の片面もしくは両面に、フッ素樹脂ゲルからなる粘着層を有する粘着シートであって、前記フッ素樹脂ゲルが、少なくとも、
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物:30〜90質量部、
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物:硬化有効量、
(C)ヒドロシリル化反応触媒:触媒量、
(D)1分子中に1個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有するポリフルオロモノアルケニル化合物:10〜70質量部((A)及び(D)成分の合計が100質量部となる量)、及び
(E)直鎖状ポリフルオロ化合物:0〜100質量部を含有する硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物からなるものであることを特徴とする粘着シートを提供する。
【0013】
このように、支持層の片面もしくは両面に、フッ素樹脂ゲルからなる粘着層を有する粘着シートであって、前記フッ素樹脂ゲルが少なくとも上記(A)〜(E)成分を所定量含有する硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物からなるものであれば、有機溶剤に接触しても粘着力が低下しない耐溶剤性を有し、電気的接続状態がON・OFFを繰り返す接点部分付近に使用しても絶縁障害を起こさない耐絶縁障害性を有し、熱がかかる部分付近に使用しても変形や粘着性が低下しない耐熱性を有し、良好な気密性を有し、ゴム弾性を有する粘着シートとなる。
【0014】
また、前記(A)成分が、下記一般式(1)で表される直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物であることが好ましい。
【化1】

[式中、Xは−CH−、−CHO−、−CHOCH−、及び−Y−NR−CO−(但し、Yは−CH−又は下記構造式(Z)で示される基であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基、及びアリル基のいずれかである。)のいずれかの基である。X’は−CH−、−OCH−、−CHOCH−、及び−CO−NR−Y’−(但し、Y’は−CH−又は下記構造式(Z’)で示される基であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基、及びアリル基のいずれかである。)のいずれかの基である。pは独立に0又は1であり、rは2〜6の整数であり、m、nはそれぞれ0〜600の整数であり、かつmとnの和が50〜600となる整数である。
【化2】

(上記構造式(Z)はo,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基である。)
【化3】

(上記構造式(Z’)はo,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基である。)]
【0015】
このように、前記(A)成分が、上記一般式(1)で表される直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物であれば、耐溶剤性、耐絶縁障害性、耐熱性、気密性、ゴム弾性を有する上、各種有機溶剤に対する膨潤がより小さくなり、粘度が低く、作業性に優れ実用性に優れる粘着シートとなるため好ましい。
【0016】
さらに、前記(D)成分が、下記一般式(2)で表されるポリフルオロモノアルケニル化合物であることが好ましい。
Rf−(X’)−CH=CH (2)
[式中、X’は−CH−、−OCH−、−CHOCH−、及び−CO−NR−Y’−(但し、Y’は−CH−又は下記構造式(Z’)で示される基であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基、及びアリル基のいずれかである。)のいずれかの基である。
【化4】

(上記構造式(Z’)はo,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基である。)
pは0又は1であり、Rfは下記一般式で表わされる基である。
F−[CF(CF)CFO]−CF(CF)−
(式中、wは1〜500の整数である。)]
【0017】
このように、前記(D)成分が、上記一般式(2)で表されるポリフルオロモノアルケニル化合物であれば、より優れた耐溶剤性、耐絶縁障害性、耐熱性、気密性を有する粘着シートとなるため好ましい。
【0018】
また、前記粘着層が、前記硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物を付加架橋して得た三次元網目状構造の前記フッ素樹脂ゲルからなるものであって、該フッ素樹脂ゲルのJIS―K 2220に準拠した針入度が30〜200°であることが好ましい。
【0019】
このように、前記針入度が200°付近の柔らかめである場合は、粘着層の被着物への密着性がよく、針入度が30°付近の硬めの場合は、フッ素樹脂ゲル自身に強度があるため、粘着強度が高い。また、針入度が200°以下であれば、フッ素樹脂ゲル自身の強度がなくなってしまうことを抑制でき、一旦、被着物に接着させてはがしても、被着物に粘着層の一部分が取られてしまうことを抑制できるため好ましい。また、30°以上であれば、被着物への粘着性が低下することを抑制できるため好ましい。
【0020】
さらに、前記支持層が、フッ素ゴムからなるものであることが好ましい。
【0021】
このように、前記支持層が、フッ素ゴムからなるものであれば、前記支持層も耐溶剤性、耐絶縁障害性、耐熱性、気密性を有する上、より優れた弾性と耐溶剤性を有する粘着シートとなるため好ましい。
【0022】
また、前記フッ素ゴムが、少なくとも、
(a)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に
−C2aO−
(式中、aは1〜6の整数である。)
で表わされる繰り返し単位を含むパーフルオロポリエーテル構造を有する数平均分子量3,000〜100,000の直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物:100質量部、
(b)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する含フッ素有機ケイ素化合物:(a)成分中のアルケニル基に対する(b)成分中のSiH基のモル比が0.4〜5.0となる量、
(c)ヒドロシリル化反応触媒:触媒量、及び
(d)シリカ系充填材:1〜100質量部、
を含む含フッ素硬化性組成物を付加架橋して得られるものであることが好ましい。
【0023】
このように、前記フッ素ゴムが、少なくとも、上記(a)〜(d)成分を所定量含む含フッ素硬化性組成物を付加架橋して得られるものであれば、より耐溶剤性、耐絶縁障害性、耐熱性、気密性、及び弾性に優れた支持層を有する粘着シートとなるため好ましい。
【0024】
さらに、前記(a)成分が、下記一般式(3)で表されるパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物であることが好ましい。
【化5】

(式中、aは1〜6の整数であり、qは20〜600の整数である。)
【0025】
このように、前記(a)成分が、上記一般式(3)で表されるパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物であれば、耐溶剤性、耐絶縁障害性、耐熱性、気密性、及び弾性を有する上、各種有機溶剤に対する膨潤がより小さい支持層を有する粘着シートとなるため好ましい。
【0026】
また、前記(a)成分が、下記一般式(4)で表される直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物であることが好ましい。
【化6】

[式中、Xは−CH−、−CHO−、−CHOCH−、及び−Y−NR−CO−(但し、Yは−CH−又は下記構造式(Z)で示される基であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基、及びアリル基のいずれかである。)のいずれかである。X’は−CH−、−OCH−、−CHOCH−、及び−CO−NR−Y’−(但し、Y’は−CH−又は下記構造式(Z’)で示される基であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基、及びアリル基のいずれかである。)のいずれかである。pは独立に0又は1であり、rは2〜6の整数であり、m、nはそれぞれ0〜600の整数であり、かつmとnの和が20〜600となる整数である。]
【化7】

(上記構造式(Z)はo,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基である。)
【化8】

(上記構造式(Z’)はo,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基である。)
【0027】
このように、前記(a)成分が、上記一般式(4)で表される直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物であれば、耐溶剤性、耐絶縁障害性、耐熱性、気密性、及び弾性を有する上、各種有機溶剤に対する膨潤がより小さい支持層を有する粘着シートとなるため好ましい。
【0028】
さらに、前記(b)成分が、少なくとも1分子中に1個以上の一価のパーフルオロ基、一価のパーフルオロオキシ基、二価のパーフルオロ基、及び二価のパーフルオロオキシ基のいずれか一つを有し、かつケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する含フッ素有機ケイ素化合物であることが好ましい。
【0029】
このような前記(b)成分であれば、(a)成分との相溶性、分散性、硬化後の均一性を高めることができるため好ましい。
【0030】
また、前記(d)成分が、BET比表面積30m/g以上で表面が疎水化処理されたシリカ系充填材であることが好ましい。
【0031】
このように、前記(d)成分が、BET比表面積30m/g以上であれば機械的強度を向上させることができ、表面が疎水化処理されたシリカ系充填材であれば、十分な機械的強度をえることができ、含フッ素硬化性組成物の粘度が異常に高くなるなどの弊害を抑制できるため好ましい。
【0032】
さらに、前記フッ素ゴムのゴム硬度が、JIS K 6253[デュロメータA]に準拠したデュロメータ タイプAで10〜80の範囲であることが好ましい。
【0033】
このように、前記硬度が10以上であれば強度が十分であるため好ましく、80以下であればフレキシブル性や弾性が良好な粘着シートとなり、特に仮固定等に用いることに適した粘着シートとなるため好ましい。
【0034】
また、前記フッ素樹脂ゲルのガラスに対する粘着力が、0.5〜5N/25mmの範囲であることが好ましい。
【0035】
このように、前記フッ素樹脂ゲルのガラスに対する粘着力が、0.5〜5N/25mmの範囲であれば、リワーク性、再剥離性の観点から好ましく、特に0.5N/25mm以上であれば粘着力が低すぎることなく、使用中に剥離することを抑制できるため好ましく、5N/25mm以下であれば再剥離が必要な際に剥がす事が容易となり、作業性がよくなるため好ましい。
【発明の効果】
【0036】
以上説明したように、前記フッ素樹脂ゲルからなる粘着層を有する本発明の粘着シートは、耐溶剤性、耐絶縁障害性、耐熱性、気密性を有し、粘着シートとして必要な柔軟性(ゴム弾性)を保持しつつ、従来の粘着シートではその使用が困難であった場合においても使用することができる。
【0037】
すなわち、本発明の粘着シートは、例えば、有機溶剤等と接触するおそれのある塗料用マスキング、ICパッケージ等の表面実装の工程時、あるいは、ICパッケージ内部における基板と半導体チップのボンディング工程時において使用しても、電気電子部品洗浄工程等における有機溶剤の吸収、膨潤による粘着力の低下を心配することなく使用することができ(耐溶剤性)、低分子シロキサンやシリコーンオイルまたは低分子モノマーなどのフリー成分をほとんど含んでいないため、電気的接続状態がON・OFFを繰り返す部分、リレーの接点、スイッチの接点、あるいはICが実装された部分付近にも、絶縁障害を心配することなく使用することができ(耐絶縁障害性)、熱がかかる部分付近に使用しても変形や粘着性が低下することなく使用することができ(耐熱性)、気密性が必要な部分に使用することができ(気密性)、さらに、貼り付け後の経時での粘着安定性を有し、リワークのために剥離した場合にもゲル材料が貼り付け部分に残存することなく再貼り付けの際にも支障なく使用することができる(リワーク性、再剥離性)。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の粘着シートの一実施態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の粘着シートについて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
前述のように、耐溶剤性、耐絶縁障害性、耐熱性を有し、良好な気密性、ゴム弾性を有する粘着シートの開発が望まれていた。
【0040】
すなわち、本発明者は、上記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、耐溶剤性が高く、低分子シロキサンやシリコーンオイルをほとんど含有しないフッ素樹脂ゲルを粘着層に用いた粘着シートであれば耐溶剤性、耐絶縁障害性、耐熱性を有し、良好な気密性、ゴム弾性を有するシートとなることを見いだし、この知見に基づき粘着シートの材料構造、成分配合等について検討を重ねた結果、支持層の片面もしくは両面に、フッ素樹脂ゲルからなる粘着層を有する粘着シートであって、前記フッ素樹脂ゲルが、少なくとも、前記(A)〜(D)成分を所定量含有する組成物からなるものであれば、耐溶剤性、耐絶縁障害性、耐熱性を有し、良好な気密性、ゴム弾性を有する粘着シートとなることを見出し、本発明を完成させた。
【0041】
本発明は、支持層の片面もしくは両面に、フッ素樹脂ゲルからなる粘着層を有する粘着シートであって、前記フッ素樹脂ゲルが、少なくとも、
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物:30〜90質量部、
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物:硬化有効量、
(C)ヒドロシリル化反応触媒:触媒量、
(D)1分子中に1個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有するポリフルオロモノアルケニル化合物:10〜70質量部((A)及び(D)成分の合計が100質量部となる量)、及び
(E)直鎖状ポリフルオロ化合物:0〜100質量部を含有する硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物からなるものであることを特徴とする粘着シートを提供する。
【0042】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の粘着シートの一実施態様を示す断面図であり、1は本発明に係る粘着シート、2は粘着層、3は支持層を示す。図1に示すように、本発明の粘着シート1は、支持層3の表面に粘着層2を設けたものである。粘着層2は、本発明に係る硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物を低架橋密度により三次元網目状構造にしたフッ素樹脂ゲルからなる層である。
【0043】
[フッ素樹脂ゲル]
本発明の粘着シートの粘着層は前記(A)〜(E)成分を含有する硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物からなるフッ素樹脂ゲルからなる。
【0044】
<(A)成分>
本発明の(A)成分は、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造、好ましくは二価のパーフルオロアルキルエーテル構造を有する直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物である。
【0045】
ここで、前記パーフルオロアルキルエーテル構造としては、−C2aO−(式中、各単位のaは独立に1〜6の整数である。)の多数の繰り返し単位を含むものが例示され、例えば下記一般式(5)で示されるものなどが挙げられる。
(C2aO) (5)
(式中、aは1〜6の整数であり、qは50〜600、好ましくは50〜400、より好ましくは50〜200の整数である。)
【0046】
上記式(5)中に含まれる繰り返し単位−C2aO−としては、例えば下記の単位等が挙げられる。なお、上記パーフルオロアルキルエーテル構造は、これらの繰り返し単位の1種単独で構成されていてもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
−CFO−
−CFCFO−
−CFCFCFO−
−CF(CF)CFO−
−CFCFCFCFO−
−CFCFCFCFCFCFO−
−C(CFO−
これらの中では、特に下記繰り返し単位が好適である。
−CFO−
−CFCFO−
−CFCFCFO−
−CF(CF)CFO−
【0047】
この(A)成分の直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物は、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する。該アルケニル基としては、炭素数2〜8、特に炭素数2〜6で、かつ末端にCH=CH−構造を有する基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等の末端にCH=CH−構造を有する基、特にビニル基、アリル基等が好ましい。このアルケニル基は、直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物の主鎖の端部に直接結合していてもよいし、二価の連結基、例えば、−CH−、−CHO−、−CHOCH−、及び−Y−NR−CO−(但し、Yは−CH−又は下記構造式(Z)で示される基であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基、及びアリル基のいずれかである。)のいずれかの基等を介して結合していてもよい。特に、前記アルケニル基は直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物の両端部にそれぞれ結合していることが好ましい。
【化9】

(上記構造式(Z)はo,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基である。)
【0048】
このような(A)成分の直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物としては、例えば下記一般式(6)又は(7)で表されるポリフルオロジアルケニル化合物を挙げることができる。
CH=CH−(X)−Rf−(X’)−CH=CH (6)
CH=CH−(X)−Q−Rf−Q−(X’)−CH=CH (7)
[式中、Xは−CH−、−CHO−、−CHOCH−、及び−Y−NR−CO−(但し、Yは−CH−又は下記構造式(Z)で示される基であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基、及びアリル基のいずれかである。)のいずれかの基である。X’は−CH−、−OCH−、−CHOCH−、及び−CO−NR−Y’−(但し、Y’は−CH−又は下記構造式(Z’)で示される基であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基、及びアリル基のいずれかである。)のいずれかの基である。
【化10】

(上記構造式(Z)はo,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基である。)
【化11】

(上記構造式(Z’)はo,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基である。)
Rfは二価のパーフルオロポリエーテル構造を示し、上記式(5)、即ち(C2aO)で示されるものが好ましい。Qは炭素数1〜15の二価の炭化水素基であり、エーテル結合を含んでいてもよく、具体的にはアルキレン基、エーテル結合を含んでいてもよいアルキレン基である。pは独立に0又は1である。]
【0049】
このような(A)成分の直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物としては、下記一般式(1)で表される直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物であることが好ましい。
【化12】

[式中、Xは−CH−、−CHO−、−CHOCH−、及び−Y−NR−CO−(但し、Yは−CH−又は下記構造式(Z)で示される基であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基、及びアリル基のいずれかである。)のいずれかの基である。X’は−CH−、−OCH−、−CHOCH−、及び−CO−NR−Y’−(但し、Y’は−CH−又は下記構造式(Z’)で示される基であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基、及びアリル基のいずれかである。)のいずれかの基である。pは独立に0又は1であり、rは2〜6の整数であり、m、nはそれぞれ0〜600の整数であり、かつmとnの和が50〜600となる整数である。
【化13】

(上記構造式(Z)はo,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基である。)
【化14】

(上記構造式(Z’)はo,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基である。)]
【0050】
このように、前記(A)成分が、上記一般式(1)で表される直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物であれば、耐溶剤性、耐絶縁障害性、耐熱性、気密性を有する上、各種有機溶剤に対する膨潤がより小さくなり、粘度が低く、作業性に優れ実用性に優れる粘着シートとなるため好ましい。
【0051】
上記一般式(1)で表わされる直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリエチレン換算重量平均分子量が10,000〜100,000、特に10,000〜50,000であることが望ましい。前記重量平均分子量が10,000以上の場合は、ガソリンや各種有機溶剤に対する膨潤が小さくなるため好ましく、特に、トルエンに対する膨潤が6%未満となり、耐トルエン性が要求される部材としての特性を満足することができる。また、前記重量平均分子量が100,000以下の場合は、粘度が低く、作業性に優れ実用性に優れるため好ましい。
【0052】
上記一般式(1)で表される直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物の具体例としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化15】

【化16】

【化17】

(式中、m、nはそれぞれ0〜600の整数であり、かつmとnの和が50〜600となる整数である。m、nはそれぞれ0〜200の整数であることが好ましく、またmとnの和が50〜200となる整数であることが好ましい。)
【0053】
更に、本発明では、上記一般式(1)で表わされる直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物を目的に応じた所望の重量平均分子量に調節するため、予め上記したような直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物を、分子内にSiH基を2個含有する有機ケイ素化合物と通常の方法及び条件でヒドロシリル化反応させ、鎖長延長することができる。このようにして合成した生成物を(A)成分として使用することも可能である。
【0054】
本発明の(A)成分は、耐溶剤性、耐絶縁障害性、耐熱性、気密性、及び弾性を有する粘着シートを得るため硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物に30〜90質量部含まれる。
【0055】
<(B)成分>
本発明の(B)成分は、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物である。該(B)成分は、(A)成分の架橋剤、鎖長延長剤として作用するものである。但し、(A)成分又は後述する(C)、(D)成分との相溶性、分散性、硬化後の均一性等の観点から、(B)成分は少なくとも1分子中に1個以上の一価のパーフルオロアルキル基、一価のパーフルオロオキシアルキル基、一価のパーフルオロポリエーテル基、二価のパーフルオロアルキレン基及び二価のパーフルオロオキシアルキレン基のいずれか一つを有しているものを使用することが好ましい。
【0056】
前記(B)成分としては、例えば特許第2990646号公報又は特開2000−248166号公報に記載の公知の有機ケイ素化合物が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0057】
本発明の(B)成分の有機ケイ素化合物としては、特に下記一般式(8)で示されるものが有用である。
【化18】

(式中、Rfは一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロポリエーテル基、Rは炭素数1〜20の一価炭化水素基、Rは炭素数2〜20の二価炭化水素基であり、エーテル結合、アミド結合、カルボニル結合、又はエステル結合を含んでもよい二価の連結基である。kは2以上の整数であり、lは1〜6の整数であり、かつkとlの和が3〜10となる整数である。)
【0058】
前記一般式(8)中のRfの一価のパーフルオロアルキル基又は一価のパーフルオロポリエーテル基としては、下記一般式で示される基を例示することができる。
一価のパーフルオロアルキル基:
2b+1
(但し、bは1〜20、好ましくは2〜10の整数である。)
一価のパーフルオロポリエーテル基:
【化19】

(式中、nは2〜200、好ましくは2〜100の整数である。)
【0059】
前記一般式(8)中のRは炭素数1〜20、特に好ましくは炭素数1〜12の一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられるが、好ましくは脂肪族不飽和結合を有さないものが好ましい。
【0060】
また、前記一般式(8)中のRは炭素数2〜20の二価炭化水素基であり、エーテル結合、アミド結合、カルボニル結合、又はエステル結合を含んでもよい二価の連結基である。かかる連結基としては、アルキレン基、アリーレン基やこれらの組み合わせでも、或いはこれらにエーテル結合酸素原子(−O−)、アミド結合(−NRCO−)、カルボニル結合(−CO−)、エステル結合(−COO−)の1種又は2種以上を介在するものであってもよく、炭素数2〜12のものが好ましく、下記の基等が挙げられる。なお、−NRCO−基におけるRは水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又はフェニル基である。
−CHCH
−CHCHCH
−CHCHCHOCH
−CHCHCH−NH−CO−
−CHCHCH−N(Ph)−CO−
(但し、Phはフェニル基である。)
−CHCHCH−N(CH)−CO−
−CHCHCH−O−CO−
【0061】
上記(B)成分の配合量は、(A)成分及び後述の(D)成分を硬化する硬化有効量である。該硬化有効量としては、硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物中の上記(A)成分及び後述の(D)成分が有するアルケニル基1モルに対し、(B)成分のヒドロシリル基(Si−H)が0.2〜2モルとなる量が好ましく、より好ましくは0.5〜1.5モルとなる量である。(B)成分のヒドロシリル基(Si−H)が0.2モル以上であれば、架橋度合が十分となり、効率よく硬化物が得られるため好ましい。また、2モル以下であれば硬化時に発泡してしまうことを抑制できるため好ましい。
【0062】
<(C)成分>
本発明の(C)成分のヒドロシリル化反応触媒は、前記(A)成分及び後述の(D)成分中のアルケニル基と、(B)成分中のヒドロシリル基との付加反応を促進する触媒である。このヒドロシリル化反応触媒は、一般に貴金属の化合物であり、高価格であることから、比較的入手しやすい白金又は白金化合物がよく用いられる。
【0063】
前記白金化合物としては、例えば塩化白金酸又は塩化白金酸とエチレン等のオレフィンとの錯体、アルコールやビニルシロキサンとの錯体、シリカ、アルミナ、カーボン等を担持した金属白金等を挙げることができる。また、前記(C)成分のヒドロシリル化反応触媒としては、前記白金化合物以外の白金族金属触媒も用いることができる。前記白金化合物以外の白金族金属触媒としては、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム系化合物が知られており、例えばRhCl(PPh、RhCl(CO)(PPh、Ru(CO)12、IrCl(CO)(PPh、Pd(PPh等を例示することができる。
【0064】
(C)成分のヒドロシリル化反応触媒の配合量は触媒量である。該触媒量としては、通常(A)、(B)及び(D)成分の合計量100質量部に対して0.1〜100ppm(白金換算)の割合で配合することが好ましい。
【0065】
<(D)成分>
本発明の(D)成分は、1分子中に1個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有するポリフルオロモノアルケニル化合物である。特に、下記式(2)のポリフルオロモノアルケニル化合物が好ましい。
Rf−(X’)−CH=CH (2)
[式中、X’は−CH−、−OCH−、−CHOCH−、及び−CO−NR−Y’−(但し、Y’は−CH−又は下記構造式(Z’)で示される基であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基、及びアリル基のいずれかである。)のいずれかの基である。
【化20】

(上記構造式(Z’)はo,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基である。)
pは0又は1であり、Rfは下記一般式で表わされる基である。
F−[CF(CF)CFO]−CF(CF)−
(式中、wは1〜500の整数であり、好ましくは2〜200の整数である。)]
【0066】
このように、前記(D)成分が、上記一般式(2)で表されるポリフルオロモノアルケニル化合物であれば、より優れた耐溶剤性、耐絶縁障害性、耐熱性、気密性を有する粘着シートとなるため好ましい。
【0067】
上記一般式(2)で表されるポリフルオロモノアルケニル化合物の具体例としては、例えば、下記のものが挙げられる。
【化21】

(上記式において、mは1〜200の整数、特に好ましくは2〜100の整数である。)
【0068】
前記硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物における、上記式(2)で表わされるポリフルオロモノアルケニル化合物の配合量は10〜70質量部((A)成分と(D)成分の合計が100質量部となる量)である。
【0069】
<(E)成分>
更に本発明の(E)成分は直鎖状ポリフルオロ化合物である。(E)成分としては、下記一般式(9)〜(11)が例示される。
【化22】

[式(9)中、Aは式:C2e+1−(eは1〜3の整数である)で表される基であり、dは1〜500の整数である。]
【化23】

(式(10)中、Aは上記と同じであり、f及びhはそれぞれ1〜300の整数である。
【化24】

(式(11)中、Aは上記と同じであり、i及びjはそれぞれ1〜300の整数である。)
【0070】
前記(E)成分の配合量は、硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物において異なるが、前記(A)成分及び(D)成分(直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物とポリフルオロモノアルケニル化合物の合計量)100質量部に対して0〜100質量部の割合である。そのため、(E)成分は含まないこともできる。また、硬化性パーフルオロポリエーテルゴム組成物においては、前記(A)成分100質量部に対して、(E)成分は10〜50質量部の割合であることが好ましい。(E)成分は、1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【0071】
[粘着層]
本発明の粘着シートは、支持層の片面もしくは両面に、前記フッ素樹脂ゲルからなる粘着層を有する。粘着層の基本構造は、一般のエラストマーと非常に似通っているが、架橋密度は著しく低い。そのため、粘着層は、外力によって容易に変形するが、流動性はない。粘着層が粘着性を発現する原理は、粘着シートを貼り付ける際に加える圧力により、フッ素樹脂ゲルが被接着物の微細な凹凸に合わせて変形し、両者の接触面積が増大することによる。
【0072】
また、従来の粘着シートに使用されていたゲル状の粘着剤は、架橋密度が低いため、有機溶剤等を吸収して非常に膨潤しやすい。しかしながら、本発明で用いるフッ素樹脂ゲルからなる粘着層は、他のゲル状の粘着剤とは異なり、フッ素樹脂ゲルが側鎖にフッ素原子を有するため、有機溶剤等により膨潤されにくいという特徴がある。このことを明らかにするため、粘着剤として用いられるシリコーンゲルのうち、最も耐溶剤性があるフロロシリコーンゲル(シリコーン側鎖のメチル基をγ−トリフロロプロピル基で50%程度置換したもの)と比較しても上記構造のフッ素樹脂ゲルは、トルエン等の溶剤において膨潤試験を行ってもその膨潤性の数値は1桁低く、著しく高い耐溶剤性を有する物である。
【0073】
前記粘着層は、前記硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物を付加架橋して得た三次元網目状構造の前記フッ素樹脂ゲルからなるものであって、該フッ素樹脂ゲルのJIS―K 2220に準拠した針入度が30〜200°であることが好ましい。このように、粘着層が、ちょう度試験方法(JISK2220に準じる)の貯蔵ちょう度による測定で針入度200°付近の柔らかめである場合は粘着層の被着物への密着性がよく、針入度30°付近の硬めの場合はフッ素樹脂ゲル自身に強度があるため粘着強度が高い。針入度が200°以下であれば、フッ素樹脂ゲル自身の強度がなくなってしまうことを抑制でき、一旦、被着物に接着させてはがしても、被着物に粘着層の一部分が取られてしまうことを抑制できるため好ましい。また、30°以上であれば、被着物への粘着性が低下することを抑制できるため好ましい。
【0074】
前記粘着層を構成する前記フッ素樹脂ゲルのガラスに対する粘着力が、180度ピール試験で剥離スピードを300mm/分としたときの接着力で0.5〜5N/25mmの範囲であることが好ましい。特には、1〜4N/25mmで有ることがリワーク性、再剥離性の観点から好ましい。0.5N/25mm以上であれば粘着力が低すぎることなく、使用中に剥離することを抑制できるため好ましい。5N/25mm以下であれば再剥離が必要な際に剥がす事が容易となり、作業性がよくなるため好ましい。
【0075】
前記粘着層の厚さは、1〜500μm程度が好ましく、特には、5〜50μmが被着物への粘着力の点から好ましい。厚さが1μm以上であれば、厚さが薄過ぎることなく、加工が容易であり、また十分な粘着力が得られるため好ましい。また、500μm以下であれば、フッ素樹脂ゲルの引裂き強度が低すぎることなく、フッ素樹脂ゲルが破壊されにくくなるため好ましい。
【0076】
[支持層]
本発明の粘着シートは、支持層を有する。支持層は、フッ素を含む樹脂フィルムであることが好ましい。前記支持層は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体(ETFE)、三フッ化塩化エチレン(PCTFE)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、フッ化ビニル樹脂(PVF)、再生セルロースフィルム、ジアセテートセルロースフィルム、トリアセテートセルロースフィルム、テトラアセチルセルロースフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアリレートフィルム、シクロオレフィンポリマーフィルム、ノルボルネン樹脂フィルム、ポリスチレンフィルム、塩酸ゴムフィルム、ナイロンフィルム、ポリアクリレートフィルム等からなるフィルムであっても良い。
【0077】
しかし、弾性と耐溶剤性を有するフッ素ゴムが支持層として特に好ましい。
【0078】
このように、前記支持層が、フッ素ゴムからなるものであれば、耐溶剤性、耐絶縁障害性、耐熱性、気密性を有する上、より優れた弾性と耐溶剤性を有する粘着シートとなるため好ましい。
【0079】
前記支持層を構成するフッ素ゴムとしては、少なくとも、
(a)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に
−C2aO−
(式中、aは1〜6の整数である。)
で表わされる繰り返し単位を含むパーフルオロポリエーテル構造を有する数平均分子量3,000〜100,000の直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物:100質量部、
(b)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する含フッ素有機ケイ素化合物:(a)成分中のアルケニル基に対する(b)成分中のSiH基のモル比が0.4〜5.0となる量、
(c)ヒドロシリル化反応触媒:触媒量、及び
(d)シリカ系充填材:1〜100質量部、
を含む含フッ素硬化性組成物を付加架橋して得られるフッ素ゴムであることが好ましい。
【0080】
このように、前記フッ素ゴムが、少なくとも、上記(a)〜(d)成分を所定量含む含フッ素硬化性組成物を付加架橋して得られるものであれば、より耐溶剤性、耐絶縁障害性、耐熱性、気密性、及びゴム弾性に優れる支持層を有する粘着シートとなるため好ましい。
【0081】
<(a)成分>
前記(a)成分は、1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に
−C2aO−
(式中、aは1〜6の整数である。)
で表わされる繰り返し単位を含むパーフルオロポリエーテル構造を有する数平均分子量3,000〜100,000の直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物である。
【0082】
ここで、前記(a)成分のパーフルオロポリエーテル構造としては、例えば下記一般式(3)で示されるものが好ましい。
【化25】

(式中、aは1〜6の整数であり、qは20〜600の整数である。qは、好ましくは30〜400、より好ましくは30〜200の整数である。)
【0083】
このように、前記(a)成分が、上記一般式(3)で表されるパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物であれば、耐溶剤性、耐絶縁障害性、耐熱性、気密性、及び弾性を有する上、各種有機溶剤に対する膨潤がより小さい支持層を有する粘着シートとなるため好ましい。
【0084】
上記式−C2aO−で示される繰り返し単位としては、例えば下記の単位等が挙げられる。なお、上記(a)成分のパーフルオロポリエーテル構造は、下記繰り返し単位等の1種単独で構成されていてもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
−CFO−
−CFCFO−
−CFCFCFO−
−CF(CF)CFO−
−CFCFCFCFO−
−CFCFCFCFCFCFO−
−C(CFO−
これらの中では、特に下記単位が好適である。
−CFO−
−CFCFO−
−CFCFCFO−
−CF(CF)CFO−
【0085】
前記(a)成分の直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物は1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有する。該アルケニル基としては、炭素数2〜8、特に2〜6で、かつ末端にCH=CH−構造を有するものが好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等の末端にCH=CH−構造を有する基、特にビニル基、アリル基等が好ましい。
【0086】
前記(a)成分としては、下記一般式(12)又は(13)で表される化合物を挙げることができる。
CH=CH−(X)−Rf−(X’)−CH=CH (12)
CH=CH−(X)−Q−Rf−Q−(X’)−CH=CH (13)
[式中、Xは−CH−、−CHO−、−CHOCH−、及び−Y−NR−CO−(但し、Yは−CH−又は下記構造式(Z)で示される基であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基、及びアリル基のいずれかである。)のいずれかである。X’は−CH−、−OCH−、−CHOCH−、及び−CO−NR−Y’−(但し、Y’は−CH−又は下記構造式(Z’)で示される基であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基、及びアリル基のいずれかである。)のいずれかである。
【化26】

(上記構造式(Z)はo,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基である。)
【化27】

(上記構造式(Z’)はo,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基である。)
Rfは二価のパーフルオロポリエーテル構造であり、上記式(3)、即ち−(C2aO)−で示される繰り返し単位を含むものが好ましい。Qは炭素数1〜15の二価の炭化水素基であり、エーテル結合を含んでいてもよく、具体的にはアルキレン基、エーテル結合を含んでいてもよいアルキレン基である。pは独立に0又は1である。]
【0087】
このような(a)成分の直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物としては、特に下記一般式(4)で示されるものが好適である。
【化28】

[式中、Xは−CH−、−CHO−、−CHOCH−、及び−Y−NR−CO−(但し、Yは−CH−又は下記構造式(Z)で示される基であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基、及びアリル基のいずれかである。)のいずれかである。X’は−CH−、−OCH−、−CHOCH−、及び−CO−NR−Y’−(但し、Y’は−CH−又は下記構造式(Z’)で示される基であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基、及びアリル基のいずれかである。)のいずれかである。pは独立に0又は1であり、rは2〜6の整数であり、m、nはそれぞれ0〜600の整数であり、かつmとnの和が20〜600となる整数である。]
【化29】

(上記構造式(Z)はo,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基である。)
【化30】

(上記構造式(Z’)はo,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基である。)
【0088】
このように、前記(a)成分が、上記一般式(4)で表される直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物であれば、耐溶剤性、耐絶縁障害性、耐熱性、気密性、及び弾性を有する上、各種有機溶剤に対する膨潤がより小さい支持層を有する粘着シートとなるため好ましい。
【0089】
上記式(4)の直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)による数平均分子量が3,000〜100,000であり、特に3,000〜30,000であることが望ましい。数平均分子量が3,000以上であれば、必要とされる耐薬品性を満たすことができるため好ましく、数平均分子量が100,000以下であれば、他成分との相溶性が良いため好ましい。
【0090】
上記一般式(4)で表される直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物の具体例としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【化31】

【0091】
【化32】

【0092】
【化33】

(式中、m及びnはそれぞれ0〜600の整数であり、かつmとnの和が20〜600を満足する整数を示す。)
【0093】
更に本発明では、上記式(4)で表わされる直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物を目的に応じた所望の数平均分子量に調節するため、予め上記したような直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物を、分子内にSiH基を2個含有する有機ケイ素化合物と通常の方法及び条件でヒドロシリル化反応させ、鎖長延長することができる。このようにして合成した生成物を(a)成分として使用することも可能である。これらの直鎖状フルオロポリエーテル化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。前記(a)成分の配合量は100質量部である。
【0094】
<(b)成分>
前記(b)成分は、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する含フッ素有機ケイ素化合物である。該(b)成分は上記(a)成分の架橋剤、鎖長延長剤として作用するものである。(a)成分との相溶性、分散性、硬化後の均一性を考慮して、前記(b)成分が、少なくとも1分子中に1個以上の一価のパーフルオロ基、一価のパーフルオロオキシ基、二価のパーフルオロ基、及び二価のパーフルオロオキシ基のいずれか一つを有していることが好ましい。また、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を3個以上有する含フッ素有機ケイ素化合物であることが好ましい。
【0095】
上記一価又は二価のパーフルオロ基、パーフルオロオキシ基としては、下記一般式で示される基を例示することができる。
2g+1
(式中、gは1〜20、好ましくは2〜10の整数である。)
−C2g
(式中、gは1〜20、好ましくは2〜10の整数である。)
【化34】

(式中、fは2〜200、好ましくは2〜100、hは1〜3の整数である。)
【化35】

(式中、i及びjは1以上の整数、かつiとjの和が2〜200、好ましくは2〜100を満たす整数である。)
−(CFO)−(CFCFO)−CF
(但し、c及びdはそれぞれ1〜50の整数である。)
【0096】
また、これらの一価又は二価のパーフルオロアルキル基、パーフルオロオキシ基は、ケイ素原子に直接結合していてもよいが、ケイ素原子と二価の連結基を介して結合していてもよい。ここで、二価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基やこれらの組み合わせでも、あるいはこれらにエ一テル結合酸素原子やアミド結合、カルボニル結合等を介在するものであってもよく、例えば炭素数2〜12のものが好ましく、下記の基等が挙げられる。
−CHCH
−CHCHCH
−CHCHCHOCH
−CHCHCH−NH−CO−
−CHCHCH−N(Ph)−CO−(但し、Phはフェニル基である。)
−CHCHCH−N(CH)−CO−
−CHCHCH−O−CO−
【0097】
また、この(b)成分の有機ケイ素化合物における上記一価又は二価のパーフルオロアルキル基、パーフルオロオキシ基(含フッ素置換基)以外のケイ素原子に結合した一価の置換基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基:あるいはこれらの基の水素原子の一部が塩素原子、シアノ基等で置換された例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、シアノエチル基等の炭素数1〜20の非置換又は置換炭化水素基が挙げられる。
【0098】
前記(b)成分の含フッ素有機ケイ素化合物は、環状でも鎖状でもよく、更に三次元網状でもよい。更に、この含フッ素有機ケイ素化合物における分子中のケイ素原子数は特に制限されないが、通常2〜60、特に3〜30程度が好ましい。
【0099】
この様な(b)成分の含フッ素有機ケイ素化合物としては、例えば下記のような化合物が挙げられ、これらの化合物は単独で使用しても、2種類以上を併用してもよい。なお、下記式でMeはメチル基、Phはフェニル基を示す。
【0100】
【化36】

【0101】
【化37】

【0102】
【化38】

【0103】
【化39】

【0104】
【化40】

【0105】
【化41】

【0106】
【化42】

(式中、n、mは、n=1〜50、m=1〜50、かつn+m=2〜50を満たす整数である。)
【0107】
【化43】

(式中、n、mは、n=1〜50、m=1〜50、かつn+m=2〜50を満たす整数である。)
【0108】
【化44】

【0109】
【化45】

【0110】
【化46】

【0111】
【化47】

(式中、n、mは、n=1〜50、m=1〜50、かつn+m=2〜50を満たす整数である。)
【0112】
【化48】

【0113】
【化49】

【0114】
【化50】

【0115】
【化51】

【0116】
前記(b)成分の配合量は、通常前記(a)成分中に含まれるビニル基、アリル基、シクロアルケニル基等のアルケニル基1モルに対して、(b)成分中のヒドロシリル基、即ちSiH基が0.4〜5.0モルとなる量である。前記(b)成分の配合量は、より好ましくは0.8〜3.0モルとなる量である。(b)成分の配合量が、前記(a)成分中に含まれるアルケニル基1モルに対して(b)成分のSiH基が0.4モル以上となる量であれば、付加架橋して得られるフッ素ゴムの架橋度合いは十分で、硬化物の強度が十分となるため好ましい。また、(b)成分の配合量が、前記(a)成分中に含まれるアルケニル基1モルに対して(b)成分のSiH基が5.0モル以下となる量であれば、(b)成分過多による硬化物の強度低下を抑制できるため好ましい。また、この(b)成分は1種単独で使用してもいいし、2種以上のものを併用してもよい。
【0117】
<(c)成分>
前記(c)成分はヒドロシリル化反応触媒である。該ヒドロシリル化反応触媒としては、遷移金属、例えばPt、Rh、Pd等の白金族金属やこれら遷移金属の化合物などが好ましく使用される。本発明では、これら化合物が一般に貴金属の化合物で高価格であることから、比較的入手しやすい白金化合物が好適に用いられる。白金化合物としては、具体的に塩化白金酸又は塩化白金酸とエチレン等のオレフィンとの錯体、アルコールやビニルシロキサンとの錯体、白金/シリカ、アルミナ又はカーボン等を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0118】
白金化合物以外の白金族金属化合物としては、ロジウム、ルテニウム、イリジウム、パラジウム系化合物等が知られており、例えばRhCl(PPh、RhCl(CO)(PPh、RhC1(C、Ru(CO)12、IrCl(CO)(PPh、Pd(PPh等が挙げられる(なお、Phはフェニル基を示す)。これらの触媒の使用量は触媒量であれば特に制限されない。通常の触媒量で所望とする硬化速度を得ることができるが、経済的見地又は良好な硬化物を得るためには該触媒量は組成物全量に対して0.1〜1,000ppm(白金族金属換算)、より好ましくは0.1〜500ppm(同上)程度の範囲とするのがよい。
【0119】
<(d)成分>
前記(d)成分はシリカ系充填材である。該シリカ系充填材としては、石英やガラスを粉砕した粉砕シリカ、一旦溶融してから球粒状に成形する溶融シリカ、ケイ酸ソーダに鉱酸を加えて製造される湿式シリカ、シラン化合物を燃焼させて製造される乾式シリカなどが挙げられるが、機械的強度を向上させる観点から、BET比表面積が30m/g以上のシリカ系充填材が好ましく、湿式シリカ、乾式シリカがこれに該当するが、吸着水分が少ない乾式シリカが好適である。さらに、ポリマー成分との濡れ性を考慮すると、シリカ系充填材表面が疎水化処理されたものが好ましい。シリカ系充填材表面の疎水化処理が施されていれば、十分な機械的強度をえることができ、含フッ素硬化性組成物の粘度が異常に高くなるなどの弊害を抑制できるため好ましい。特に、前記(d)成分が、BET比表面積30m/g以上で表面が疎水化処理されたシリカ系充填材であることが好ましい。
【0120】
前記(d)成分の配合量は、(a)成分100質量部に対して1〜100質量部である。1質量部以上であれば(d)成分のシリカ系充填材の補強性効果が十分に得られるため好ましく、100質量部以下であれば含フッ素硬化性組成物の粘度が高くなり過ぎず、作業性が良好であるため好ましい。
【0121】
仮固定用や伸びが必要な用途の粘着シートの場合には、粘着シートにゴム状弾性を付与する必要がある。その場合、粘着層より強度があるゴム弾性を有する支持層を有することが必要となる。
【0122】
前記支持層の前記フッ素ゴムのゴム硬度が、JIS K 6253[デュロメータA]に準拠したデュロメータ タイプAで10〜80の範囲であることが好ましい。硬度が10以上であれば強度が十分であるため好ましく、80以下であればフレキシブル性や弾性が良好な粘着シートとなり、特に仮固定等に用いることに適した粘着シートとなるため好ましい。
【0123】
前記支持層の厚さは、10〜2,000μm、特には、30〜500μmが被着物への追従性の点から好ましい。10μm以上であればゴム弾性を付与すること容易であるため好ましく、500μm以下であれば重過ぎず作業性が良好となり、コスト的にも好ましい。
【0124】
[任意成分]
前記粘着層、前記支持層双方に、上記した成分以外に、導電性、熱伝導性、静電気防止性、耐熱性等を付与するために目的に応じて各種の添加剤、例えば酸化チタン、酸化鉄、酸化セリウム、酸化バナジウム、酸化コバルト、酸化クロム、酸化マンガン等の金属酸化物及びその複合物、石英粉末、珪藻土、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、カーボン等の無機充填剤を添加することができ、また目的とする特性を損なわない限り顔料、耐熱剤、難燃剤、可塑剤、反応制御剤等を添加しても良い。なお、これら任意成分の添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で通常量とすることができる。
【0125】
[粘着シートの製造方法]
次に、本発明の粘着シートの製造方法の具体例について説明する。本発明の粘着シートを製造する方法はこれに限られるものではない。成型方法は、モールディングをする場合、注入成型、圧縮成型、射出成型、押出成型、トランスファー成型等が挙げられる。シーティングをする場合、カレンダー成型、押出成型、コーティング成型等が挙げられる。コーティングの場合、バーコーター、ブレードコーター、スピンコーター、ロールコーター、グラビアコーター、フローコーター、ダイコーター、スプレー、スクリーン印刷等により支持体上に塗布し、乾燥することにより作製することができる。平面状に加工する場合は、カレンダー成型でシート化し、その後所要の大きさに打ち抜くことが好ましい。薄膜性を要求される場合は、コーティング方法を選択すれはよい。その他状況に合わせて所要の形状を得るために上記成型方法から選択して成型を行うことができる。
【0126】
<支持層の作製>
まず、未加硫のフッ素ゴムを所定の厚さに加熱成型し支持層のシートを得る。所望する形状、大きさの支持層のシートの表面に、適宜、表面処理を施す。好ましくは、粘着層との接触面積を増やすために、ブラスト処理を施すのがよい。支持層が鏡面のように平らであると、粘着層の被着物との接触面積が、支持層との接触面積より大きくなる。その結果、粘着シートを被着物に貼って、その後、はがす場合、粘着層と支持層とが剥離する可能性が高くなる。
【0127】
<粘着層の作製>
次に、常温の条件下、流動性がある未架橋状態のフッ素樹脂ゲルを、支持層のシートの片面上に塗布した後、加熱することにより、ゲル化させる。このように、支持層にフッ素樹脂を塗布した後、ゲル化させることで粘着層と支持層との接触面積を増やすことができる。ゲル化後、粘着層上に、シリコーン等からなる剥離剤を塗布したポリエステル等のプラスチックフィルムを貼り付ける。支持層のシートの両面に粘着層が必要な用途の場合は、支持層の他方の面に、上記と同様の条件でフッ素樹脂を塗布してゲル化させる。ゲル化後、上記同様プラスチックフィルムを貼り付けることにより、3層構造の両面粘着シートを得る事が可能となる。
【0128】
以上、本発明によれば、有機溶剤に接触しても粘着力が低下しない耐溶剤性を有し、電気的接続状態がON・OFFを繰り返す接点部分付近に使用しても絶縁障害を起こさない耐絶縁障害性を有し、熱がかかる部分付近に使用しても変形や粘着性が低下しない耐熱性を有し、良好な気密性を有し、ゴム弾性を有する粘着シートを提供することができる。特に、これらの特性を有する粘着シートは各種機械、電気・電子部品、あるいはプラスチック成形品等を固定したり、それらの製造時や検査時に、各種部品等を仮固定したり、建築材料、看板、輸送機等に塗料を乗せる場合のマスキング材として使用するのに好適に用いることができるものとなる。
【0129】
以下、本発明の粘着シートの実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例】
【0130】
[実施例1]
<支持層の作製>
支持層は、下記式(14)
【化52】

で表されるポリマー((a)成分に相当、粘度5,500mm/s、数平均分子量15,700、ビニル基量0.012モル/100g)100質量部、比表面積300m/gの乾式シリカ系充填材の表面をヘキサメチルジシラザンで処理したシリカ系充填材((d)成分に相当)50質量部をニーダー中で175℃/2時間混合した。その後、プラネタリーミキサーでシリカ系充填材の配合量が16.7質量部になるように、式(14)のポリマー200質量部添加して調製し、3本ロールミル処理を施した。以上調製した組成物116.7質量部に、下記式(15)で表される含フッ素有機ケイ素化合物((b)成分に相当)2.9質量部、
【化53】

塩化白金酸をCH=CHSiMeOSiMeCH=CHで変性した触媒のトルエン溶液((c)成分に相当、白金濃度0.5質量%)0.2質量部及びエチニルシクロヘキサノールの50%トルエン溶液0.3質量部を加え、プラネタリーミキサーで混合し、含フッ素硬化性組成物を得た。この含フッ素硬化性組成物を150℃、10分のプレス架橋(一次架橋)を行って硬化シート(170mm×130mm×0.1mm及び130mm×130mm×2mm)状の支持層を形成した。
【0131】
得られた2mm厚の硬化シート状の支持層の物性はJIS K6253、JIS K6251に準拠して測定した。硬さ(デュロメータータイプA)=40、引張強さ=8.3MPa、切断時伸び=410%であった。
【0132】
<粘着層の作製>
次に、粘着層に用いるフッ素樹脂ゲルは、下記式(16)で示されるポリマー((A)成分に相当)72.5質量部と下記式(17)で示されるポリマー((D)成分に相当、粘度1000cSt)27.5質量部に、式(18)で示されるポリマー((E)成分に相当)33質量部、エチニルシクロヘキサノールの50%トルエン溶液0.15質量部、塩化白金酸のビニルシロキサン錯体のエタノール溶液((C)成分に相当、白金金属濃度3.0質量%)0.015質量部、下記式(19)で示される化合物((B)成分に相当)26.5質量部を加え、混合して硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物(I)を調製した。調製した硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物(I)を硬化させ、フッ素樹脂ゲルとした時の針浸入度は70°であった。
【化54】

【化55】

【化56】

【0133】
その調製した硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物(I)を上記支持層上(0.1mm厚シート)に0.02mmの厚さに印刷し、その後、150℃、1時間の条件でゲル化させて、支持層の片面に粘着層を形成した。ゲル化後、粘着層上にシリコーン剥離剤を塗布してあるポリエステルフィルムを貼り付けた。下記評価を行う時にフィルムを剥離し測定した。その粘着シートの各評価項目の結果を表1に示す。
【0134】
[実施例2]
支持層を実施例1と同様とし、粘着層のフッ素樹脂ゲルを下記の硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物(II)から作製した以外は、実施例1同様にして粘着シートを作製した。その粘着シートの各評価項目の結果を表1に示す。
【0135】
実施例2では、上記式(16)で示されるポリマー((A)成分に相当)84.0質量部と上記式(17)で示されるポリマー((D)成分に相当、粘度1000cSt)16.0質量部に、式(18)で示されるポリマー((E)成分に相当)33質量部、上記式(19)で示される化合物((B)成分に相当)22.6質量部、その他成分は実施例1と同量のものを加え、混合して硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物(II)を調製した。調製した硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物(II)を硬化させた時の針浸入度は35°であった。
【0136】
[実施例3]
支持層を実施例1と同様とし、粘着層のフッ素樹脂ゲルを下記の硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物(III)から作製した以外は、実施例1同様にして積層粘着シートを作製した。その積層粘着シートの各評価項目の結果を表1に示す。
【0137】
実施例3では、上記式(16)で示されるポリマー((A)成分に相当)69.6質量部と上記式(17)で示されるポリマー((D)成分に相当、粘度1000cSt)30.4質量部に、式(18)で示されるポリマー((E)成分に相当)33質量部、上記式(19)で示される化合物((B)成分に相当)26.0質量部、その他成分は実施例1と同量のものを加え、混合して硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物(III)を調製した。調製した硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物(III)を硬化させた時の針浸入度は100°であった。
【0138】
[比較例1]
硬度40度(タイプA)の未加硫のジメチルシリコーン型ミラブルゴム(信越化学工業(株)製KE941)を0.1mmの厚さに分出しして、一次加硫を170℃で10分、支持層を形成した。次に針入度が80°のジメチルシリコーン型ゲル(信越化学工業(株)製KE1051)を上記支持層上に0.02mmの厚さに印刷し、その後、150℃、1時間の条件でゲル化させて、粘着層を形成することで、粘着シートを作製した。ゲル化後、粘着層上にシリコーン剥離剤を塗布してあるポリエステルフィルムを貼り付けた。下記評価を行う時にフィルムを剥離し測定した。その評価の結果を表1に示す。
【0139】
[比較例2]
メタアクリル酸系アルキルエステル(アクリル酸n−ブチル/アクリル酸/アクリル酸2−ヒドロキシメチル=95/4/1)とイソシアネート化合物(東洋インキ製13HS8515)の共重合体を主成分とする樹脂組成物を0.1mmの厚さのPET上に0.1mmの厚さで形成し養生した粘着シートを作製した。その評価の結果を表1に示す。
【0140】
<各評価項目>
・粘着層粘着力測定
実施例及び比較例で作製した粘着シートを幅25mm、長さ10cmに切断し、4mmの厚さのガラス基板上に粘着層側を貼り付けて、室温にて0.3m/分の速度にて180°ピールでガラス基板と粘着シートの粘着層とを剥離しその粘着力を測定した。
【0141】
・耐溶剤性
実施例及び比較例で作製した粘着シートをトルエン中に溶剤浸漬し、1hr後の上記粘着力の低下率(%)を上記同様に測定した。
【0142】
・膨潤性
実施例及び比較例で作製した粘着シートをトルエン中に溶剤浸漬し、その体積膨張変化率(%)を測定した。
【0143】
・長期貼り付け安定性
実施例及び比較例で作製した粘着シートを幅25mm、長さ10cmに切断し、4mmの厚さのガラス基板上に粘着層側を貼り付けて、室温50%RHの湿度で1ヶ月保存した後、室温にて180°ピールでガラス基板と粘着層とを剥離し、その粘着力を測定しその変化率(%)を測定した。
【0144】
・再剥離性
実施例及び比較例で作製した粘着シートを幅25mm、長さ10cmに切断し、4mmの厚さのガラス基板上に粘着層側を貼り付けて、室温50%RHの湿度で1ヶ月保存した後、室温にて180°ピールでガラス基板と粘着層とを剥離し、ガラス面に粘着成分が移行したかどうかを確認。移行しない物は○、粘着成分の移行する物は×とした。
【0145】
・気密性
実施例及び比較例で作製した粘着シートの25℃での酸素の気体透過率を理化精機工業(株)製の気体透過率測定装置(K−315N−02)により測定した。数値は天然ゴムを100とした場合の各値を示した。
【0146】
・変形に対する弾力性
実施例及び比較例で作製した粘着シートを180度に曲げたときに、粘着シートに対するダメージの有無を確認した。変化のない物は○、亀裂変形のある物を×とした。
【0147】
・耐熱後の粘着性
実施例及び比較例で作製した粘着シートを幅25mm、長さ10cmに切断し、4mmの厚さのガラス基板上に粘着層側を貼り付け、180℃で100時間エージングした後、シートが室温になってから、180°ピールでガラス基板と粘着層とを剥離し、その粘着力を測定し、変化の状態、成分の移行、粘着層の状態を確認した。
【0148】
・耐絶縁障害性
実施例及び比較例で作製した粘着シートを幅25mm、長さ10cmに切断し、コイルに粘着層側を貼り付けて、室温50%RHの湿度で1ヶ月保存した後、導通がとれるかを評価し絶縁障害を起こしているかを検出した。絶縁障害を起こしていれば×、起こしていなければ○とした。
【0149】
【表1】

【0150】
・粘着シートに含まれるシロキサン量の検出
さらに、支持層にシリコーンゴム、粘着層にシリコーンゲルを用いた比較例1ではD20までの低分子シロキサンの量が100ppm以上検出された。これと比較して、実施例1〜3に係る粘着シートでは、低分子シロキサンの量は0.01ppm以下しか検出されなかった。これにより、実施例1〜3に係る粘着シートは、ほとんど低分子シロキサンおよびシリコーンオイル分を含まないことが明らかとなった。
【0151】
以上から示されるように、比較例1及び2では耐溶剤性、膨潤性、長期貼り付け安定性、再剥離性、気密性、変形弾力性、耐熱後の粘着性、及び耐絶縁障害性が悪いことが明らかとなった。一方で本発明の粘着シートによれば粘着力に優れるだけでなく、耐溶剤性、膨潤性、長期貼り付け安定性、再剥離性、気密性、変形弾力性、耐熱後の粘着性、及び耐絶縁障害性に優れる粘着シートとなることが明らかとなった。
【0152】
すなわち本発明によれば、有機溶剤に接触しても粘着力が低下しない耐溶剤性を有し、電気的接続状態がON・OFFを繰り返す接点部分付近に使用しても絶縁障害を起こさない耐絶縁障害性を有し、熱がかかる部分付近に使用しても変形や粘着性が低下しない耐熱性を有し、良好な気密性を有し、ゴム弾性を有する粘着シートを提供することができることが示された。特に、これらの特性を有する粘着シートは各種機械、電気・電子部品、あるいはプラスチック成形品等を固定したり、それらの製造時や検査時に、各種部品等を仮固定したり、建築材料、看板、輸送機等に塗料を乗せる場合のマスキング材として使用するのに好適に用いることができるものとなる。
【符号の説明】
【0153】
1…粘着シート、 2…粘着層、 3…支持層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層の片面もしくは両面に、フッ素樹脂ゲルからなる粘着層を有する粘着シートであって、前記フッ素樹脂ゲルが、少なくとも、
(A)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物:30〜90質量部、
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する有機ケイ素化合物:硬化有効量、
(C)ヒドロシリル化反応触媒:触媒量、
(D)1分子中に1個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有するポリフルオロモノアルケニル化合物:10〜70質量部((A)及び(D)成分の合計が100質量部となる量)、及び
(E)直鎖状ポリフルオロ化合物:0〜100質量部を含有する硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物からなるものであることを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記(A)成分が、下記一般式(1)で表される直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物であることを特徴とする請求項1に記載の粘着シート。
【化1】

[式中、Xは−CH−、−CHO−、−CHOCH−、及び−Y−NR−CO−(但し、Yは−CH−又は下記構造式(Z)で示される基であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基、及びアリル基のいずれかである。)のいずれかの基である。X’は−CH−、−OCH−、−CHOCH−、及び−CO−NR−Y’−(但し、Y’は−CH−又は下記構造式(Z’)で示される基であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基、及びアリル基のいずれかである。)のいずれかの基である。pは独立に0又は1であり、rは2〜6の整数であり、m、nはそれぞれ0〜600の整数であり、かつmとnの和が50〜600となる整数である。
【化2】

(上記構造式(Z)はo,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基である。)
【化3】

(上記構造式(Z’)はo,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基である。)]
【請求項3】
前記(D)成分が、下記一般式(2)で表されるポリフルオロモノアルケニル化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の粘着シート。
Rf−(X’)−CH=CH (2)
[式中、X’は−CH−、−OCH−、−CHOCH−、及び−CO−NR−Y’−(但し、Y’は−CH−又は下記構造式(Z’)で示される基であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基、及びアリル基のいずれかである。)のいずれかの基である。
【化4】

(上記構造式(Z’)はo,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基である。)
pは0又は1であり、Rfは下記一般式で表わされる基である。
F−[CF(CF)CFO]−CF(CF)−
(式中、wは1〜500の整数である。)]
【請求項4】
前記粘着層が、前記硬化性パーフルオロポリエーテルゲル組成物を付加架橋して得た三次元網目状構造の前記フッ素樹脂ゲルからなるものであって、該フッ素樹脂ゲルのJIS―K 2220に準拠した針入度が30〜200°であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記支持層が、フッ素ゴムからなるものであることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記フッ素ゴムが、少なくとも、
(a)1分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有し、かつ主鎖中に
−C2aO−
(式中、aは1〜6の整数である。)
で表わされる繰り返し単位を含むパーフルオロポリエーテル構造を有する数平均分子量3,000〜100,000の直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物:100質量部、
(b)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する含フッ素有機ケイ素化合物:(a)成分中のアルケニル基に対する(b)成分中のSiH基のモル比が0.4〜5.0となる量、
(c)ヒドロシリル化反応触媒:触媒量、及び
(d)シリカ系充填材:1〜100質量部、
を含む含フッ素硬化性組成物を付加架橋して得られるものであることを特徴とする請求項5に記載の粘着シート。
【請求項7】
前記(a)成分が、下記一般式(3)で表されるパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物であることを特徴とする請求項6に記載の粘着シート。
【化5】

(式中、aは1〜6の整数であり、qは20〜600の整数である。)
【請求項8】
前記(a)成分が、下記一般式(4)で表される直鎖状パーフルオロポリエーテル化合物であることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の粘着シート。
【化6】

[式中、Xは−CH−、−CHO−、−CHOCH−、及び−Y−NR−CO−(但し、Yは−CH−又は下記構造式(Z)で示される基であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基、及びアリル基のいずれかである。)のいずれかである。X’は−CH−、−OCH−、−CHOCH−、及び−CO−NR−Y’−(但し、Y’は−CH−又は下記構造式(Z’)で示される基であり、Rは水素原子、メチル基、フェニル基、及びアリル基のいずれかである。)のいずれかである。pは独立に0又は1であり、rは2〜6の整数であり、m、nはそれぞれ0〜600の整数であり、かつmとnの和が20〜600となる整数である。]
【化7】

(上記構造式(Z)はo,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基である。)
【化8】

(上記構造式(Z’)はo,m又はp位で示されるジメチルフェニルシリレン基である。)
【請求項9】
前記(b)成分が、少なくとも1分子中に1個以上の一価のパーフルオロ基、一価のパーフルオロオキシ基、二価のパーフルオロ基、及び二価のパーフルオロオキシ基のいずれか一つを有し、かつケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する含フッ素有機ケイ素化合物であることを特徴とする請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項10】
前記(d)成分が、BET比表面積30m/g以上で表面が疎水化処理されたシリカ系充填材であることを特徴とする請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項11】
前記フッ素ゴムのゴム硬度が、JIS K 6253[デュロメータA]に準拠したデュロメータ タイプAで10〜80の範囲であることを特徴とする請求項5乃至請求項10のいずれか1項に記載の粘着シート。
【請求項12】
前記フッ素樹脂ゲルのガラスに対する粘着力が、0.5〜5N/25mmの範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項11のいずれか1項に記載の粘着シート。

【図1】
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【公開番号】特開2012−122024(P2012−122024A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−275112(P2010−275112)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】