説明

粘着テープ用基布

【課題】 高密度ポリエチレンの延伸糸を用いて、織物に織成するとき、経糸と緯糸の縦割れが防止できる、高密度ポリエチレンからなる延伸糸を提供する。
【解決手段】 高密度ポリエチレンの延伸糸からなる織布の少なくとも片面に低密度ポリエチレン層を積層してなる積層体であって、高密度ポリエチレンの密度が0.950g/cm、メルトフローレートが0.30〜1.0g/10分、溶融張力が0.5〜5g、流動比が10〜60の範囲内のものをインフレーション成形し、スリットして延伸して得られた延伸糸を用いることにより、フイルムの成形性及び延伸性を改良して、フラットヤーンにしたときに縦割れしにくい延伸糸を得ることができ、織物に織成するとき、経糸と緯糸の縦割れが防止できる、粘着テープ用基布である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高密度ポリエチレンフラットヤーンの延伸糸を経緯糸に用いた織布からなる粘着テープ用基布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリオレフィンからなるモノフィラメントやフラットヤーンの延伸糸を経緯糸に用いた織布の少なくとも片面にポリオレフィン層を積層してなる粘着テープ用基布は広く知られている。
例えば、モノフィラメントの延伸糸としては、例えば、経糸が、メルトフローレートが5−50g/10分、密度が0.951g/cm以上の高密度ポリエチレンから作られたモノフィラメント(特許文献1)やメルトフローレートが2−50g/10分の高密度ポリエチレン50−95重量%及びメルトフローレートが2−50g/10分の低密度ポリエチレン5−50重量%を含む組成物から作られたモノフィラメント(特許文献2)などが挙げられる。
また、フラットヤーンの延伸糸としては、高密度ポリエチレンを用いてインフレーション法によりフィルムを成形し、冷却後細幅にスリットし、加熱延伸して得られるフラットヤーンなどが挙げられる(特許文献3〜5)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−78630号公報
【特許文献2】特開平5−148459号公報
【特許文献3】特開平7−238266号公報
【特許文献4】2000−178521号公報
【特許文献5】2002−371250号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高密度ポリエチレンからなるフラットヤーンの延伸糸は、織物に織成するとき、経糸と緯糸が縦割れやすく、得られた織物は、表面に凹凸やシワができたり、目隙など織りムラが生じやすいという問題があった。
本発明は、従来技術の上記問題点を解消するためになされたもので、高密度ポリエチレンの延伸糸を用いて、織物に織成するとき、経糸と緯糸の縦割れが防止できる、高密度ポリエチレンからなる延伸糸を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、従来技術の上記問題点を改善すべく、鋭意検討を行なった結果、特定の高密度ポリエチレンを用いて、フイルムの成形性及び延伸性を改良して、縦割れしにくい延伸糸を得ることにより、上記問題点が改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨は、高密度ポリエチレンの延伸糸からなる織布の少なくとも片面に低密度ポリエチレン層を積層してなる積層体であって、高密度ポリエチレンの密度が0.950g/cm以上、メルトフローレートが0.30〜1.2g/10分、溶融張力が0.3〜5g、流動比が10〜60の範囲内のものをインフレーション成形し、スリットして延伸して得られた延伸糸を用いることを特徴とする粘着テープ用基布、に存する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の粘着テープ用基布は、高密度ポリエチレンの延伸糸からなる織布の少なくとも片面に低密度ポリエチレン層を積層してなる積層体であって、高密度ポリエチレンの密度が0.950g/cm以上、メルトフローレートが0.30〜1.2g/10分、溶融張力が0.3〜5g、流動比が10〜60の範囲内のものをインフレーション成形し、スリットして延伸して得られた延伸糸を用いることにより、フイルムの成形性及び延伸性を改良して、フラットヤーンにしたときに縦割れしにくい延伸糸を得ることができ、織物に織成するとき、経糸と緯糸の縦割れが防止できる。

【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において延伸糸として使用されるポリエチレン樹脂としては、その密度が0.950g/cm以上、メルトフローレートが0.30〜1.2g/10分、流動比が10〜60、溶融張力が0.3〜5gの範囲内の高密度ポリエチレンが用いられる。特に、その密度が0.950〜0.960g/cm、メルトフローレートが0.50〜1.0g/10分、流動比が20〜50、溶融張力が0.5〜3gの範囲内の高密度ポリエチレンが成形性、強度及び延伸性のバランスの点から好ましい。
【0008】
上記密度は、JIS K 7112に準拠して測定した値であり、該密度が下限より小さいと、フイルムの強度が不十分となり、またモジュラスが低くなるため手切れ性が悪くなる。
上記メルトフローレートは、JIS K 7210のメルトフローレートの測定法に準拠し、190℃、荷重21.18Nで測定した値であり、該メルトフローレートが下限より小さいと押出機のモーターの負荷がかかりすぎ、生産性が悪く、また上限より大きいとバブルが不安定となり成形性が悪化する。
上記流動比は、JIS K 7210のメルトフローレートの測定法に準拠し、190℃、荷重211.82Nで測定した押出量に対する190℃、荷重21.18Nで測定した押出量の比、すなわち、荷重211.82Nでの押出量/荷重21.18Nで測定した押出量によって求めた値である。この流動比は分子量分布の目安であり、流動比の値が下限より小さいと分子配向が起こりにくく良好な強度のフイルムが得難く、また上限より大きいとフイルムの延伸性が悪く、フラットヤーンにしたとき縦割れやすくなる。
上記溶融張力は、樹脂をJIS K 7210のメルトフローレートの測定法において使用するノズルから160℃、0.25g/分で押出し、1.52m/分の速度で引張つたときのノイズから25cm離れたところで測定した張力であり、該溶融張力が下限より低いとフイルム成形時にバブルが不安定となり成形性が悪化し、また上限より大きいとフイルムの延伸性が悪く、フラットヤーンにしたとき縦割れやすくなる。
さらに、(メルトフローレート)×(溶融張力)が0.25〜5の範囲、好ましくは0.5〜3の範囲であるのが成形性、強度及び延伸性のバランスの点から望ましい。
【0009】
本発明に用いられる織布の少なくとも経糸、好ましくは経糸と緯糸に該高密度ポリエチレンを使用することが必須となるが、該高密度ポリエチレンに少量、例えば、20重量%以下、好ましくは10重量%以下の他のポリオレフィンを配合することができる。ポリオレフィンとしては、例えば、分岐状低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体等が挙げられる。
【0010】
上記高密度ポリエチレンからなる延伸糸は、上記高密度ポリエチレンを用いて、インフレーション法によりフィルムを成形し、冷却後細幅にスリットし、加熱延伸して得られるフラットヤーンが使用される。経糸のフラットヤーンの太さは、50〜150デシテクス(以下、dtと略記)の範囲であり、好ましくは80〜120dtの範囲である。また、厚みは10〜60μmの範囲であり、好ましくは20〜50μmの範囲である。太さが50dt未満、厚みが10μm未満では、引張強力が弱くなり、粘着テープとして実用上問題となる。太さが150dtを超え、厚みが60μmを超えると、後述するラミネート時の熱劣化による強力低下効果が十分でなく、その結果、幅方向の手切れ性が低下する。また、緯糸のフラットヤーンの太さは、200〜800dtの範囲であり、好ましくは300〜400dtの範囲である。
【0011】
上記フラットヤーンを経緯糸として用いる織布としては、打込密度として好ましくは経糸として30〜60本/2.54cm、緯糸として10〜30本/2.54cmの範囲であり、経糸/緯糸の比率としては3/1〜2/1の範囲が好ましい。また、織布の織組織としては、平織、綾織、絡み織、模紗織など種々の組織が使用される。
【0012】
このようにして得られた織布の少なくとも片面にポリエチレン層を積層して粘着テープ用基布とする。ポリエチレン層を積層する方法としては、押出ラミネート法による熱溶着法が好ましい。その理由は、熱溶着の際に加えられた熱により、経糸であるフラットヤーンに熱劣化を生じさせて強力を低下させ、幅方向の手切れ性を良好にするためである。
【0013】
上記織布の少なくとも片面に積層されるポリエチレンとしては、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンー酢酸ビニル共重合体、エチレンーアクリル酸アルキル共重合体などが使用される。
【0014】
ポリエチレン層の厚みは、20〜80μmの範囲であり、好ましくは30〜50μmの範囲である。厚みが20μm未満ではラミネート時に経糸に加える熱量が少なく熱劣化による強力低下が不十分となり、80μmを超えると熱量が多くなりすぎて熱劣化による強力低下が過剰となり好ましくない。
【0015】
ラミネート時の押出温度は200〜340℃の範囲内である。押出温度が200℃未満では、経糸への熱劣化が不十分となると共に、ポリエチレン層と織布との接着性が不十分となり、340℃を超えると織布の収縮が増加する。
【0016】
粘着テープ用基布において手切れ性を向上させるためには織布とポリオレフィン層との接着性が良好であることが重要で、織布とポリオレフィン層が堅固に接着し、手切れ応力が作用したときに経糸の逃げがなく、経糸1本ずつ順次に手切れ応力が作用することにより最も良好な手切れ性が得られる。
【0017】
経糸に用いられる該高密度ポリエチレンの延伸糸には、無機フィラーを混練すると、さらに手切れ性に優れたものが得られる。無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、クレー、タルク、シリカ、アルミナ、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム等があげられる。該無機フィラーの添加量は、0.5〜20%が好ましい範囲である。
【0018】
実施例1:
高密度ポリエチレン(MFR:0.75g/10分、密度:0.956g/cm、流動比:45、溶融張力:0.80g)を用いて、インフレーション法を用いてフィルムに押出し、延伸倍率7倍で単糸繊度90dt、厚み16μmのフラットヤーンを形成し経糸用延伸糸とした。フィルム成形時にバブルは安定であり、得られた経糸用延伸糸の縦割れは見られなかった。また、上記高密度ポリエチレンを用いて、延伸倍率8倍で単糸繊度370dt、厚み30μmのフラットヤーンを形成し緯糸用延伸糸とした。これらの経糸用延伸糸および緯糸用延伸糸を用いて、打込密度が経糸46本/2.54cm×緯糸17本/2.54cmで平織の織布を形成した。織成時に経糸および緯糸の縦割れはなく、得られた織布に表面の凹凸やシワの発生は見られなかった。
【0019】
次に、ポリエチレン層として、低密度ポリエチレン(MFR=8.0g/10分、密度=0.917g/cm)を用いて、上記織布の両面に厚さ各30μmのポリエチレン層を押出温度300℃で押出ラミネート法で積層した粘着テープ用基布を得た。
この粘着テープ用基布を用いて感圧接着剤を塗布して粘着テープを得た。
【0020】
実施例2:
高密度ポリエチレン(MFR:0.90g/10分、密度=0.950g/cm、流動比:40、溶融張力:0.85g)を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。その結果、フィルム成形時にバブルは安定であり、得られた延伸糸の縦割れは見られなかった。また、織成時に経糸および緯糸の縦割れはなく、得られた織布に表面の凹凸やシワの発生は見られなかった。
【0021】
比較例1:
高密度ポリエチレン(MFR=0.7g/10分、密度=0.957g/cm、流動比:90、溶融張力:8.0g)を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。その結果、フィルム成形時にバブルは安定であったが、フィルムの延伸性が悪く、得られた延伸糸は縦割れしやすかった。また、織成時に経糸および緯糸は縦割れしやすく、得られた織布に表面の凹凸やシワの発生は見られた。
【0022】
比較例2:
高密度ポリエチレン(MFR=2.0g/10分、密度=0.957g/cm、流動比:30、溶融張力:0.10g)を用いたこと以外は実施例1と同様に行った。その結果、フィルム成形時にバブルが不安定であり、フィルムの成形性が悪かった。また、織成時に経糸および緯糸が縦割れしやすく、織布に表面にシワの発生が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度ポリエチレンの延伸糸からなる織布の少なくとも片面に低密度ポリエチレン層を積層してなる積層体であって、高密度ポリエチレンの密度が0.950g/cm以上、メルトフローレートが0.30〜1.2g/10分、溶融張力が0.3〜5g、流動比が10〜60の範囲内のものをインフレーション成形し、スリットして延伸して得られた延伸糸を用いることを特徴とする粘着テープ用基布。
【請求項2】
高密度ポリエチレンの(メルトフローレート)×(溶融張力)の積が0.25〜5の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の粘着テープ用基布。

【公開番号】特開2007−23179(P2007−23179A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−208534(P2005−208534)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000234122)萩原工業株式会社 (47)
【Fターム(参考)】