説明

粘着テープ

【課題】 粘着剤の効果を損なうことなく、鮮明な印字が高速で行うことができると共に、多品種少ロットの個別印刷を容易に製造することができる粘着テープを提供する。
【解決手段】 基材である透明プラスチックフィルム10の片面に濃色インキ層11を構成し、該濃色インキ層11上に順次白色又は淡色インキ層12、粘着剤層13を構成した粘着テープであって、上記基材10側からレーザービームを照射し、基材10及び濃色インキ層11を除去し、白色又は淡色インキ層12を露出させた印字部14を形成したことを特徴とする粘着テープA。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鮮明な印字が高速で行うことができると共に、多品種少ロットの個別印刷を簡単に製造することができる粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、通常市販されている粘着テープにおいて、粘着剤の基材である透明プラスチックフィルムにはグラビア印刷が多く利用されており、製品の寸法は限定されないが、一般的には幅15〜20mm、長さ100〜200mが標準である。
一般的なグラビア印刷の場合、フィルム幅、長さは共に長いほうがコスト面で有利であり、その後の粘着加工も同様であるが、多品種少ロットの個別印刷には適していないものである。
【0003】
多品種少ロットの個別印刷を実施するにあたり、個別にレーザー印字器による刻印をすることによって少ロットに対応した印字方法が知られている。
例えば、上層にレーザー光を吸収する塗料を、その下層にレーザー光を反射する白系統などの塗料を基材の表面に塗布し、レーザービームを所望の部分にのみ照射することにより、上記基材上に塗布した上層の塗料のみを除去するようにしたことを特徴とするレーザーマーキング方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術は、半導体装置に使われるマーキング方法である。通常、粘着テープの場合、レーザービームを照射する塗料上に粘着剤層を付与させた構造が考えられるが、上記特許文献1の方法を利用した場合、粘着剤層に直接レーザービームを照射させ印字を施すとレーザービームを照射した周辺の粘着剤が熱により変質し、粘着テープとしての効果を発揮することができなくなる点に課題がある。また、粘着剤に影響を及ぼさないレーザービームに出力を調整すると十分な印字を提供することができなくなる点に課題がある。
【特許文献1】特開昭62−203691号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来の課題に鑑み、これを解消しようとするものであり、粘着剤の効果を損なうことなく、鮮明な印字が高速で行うことができると共に、多品種少ロットの個別印刷を簡単に製造することができる粘着テープを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記従来技術の課題等について鋭意検討した結果、基材である透明プラスチックフィルムの片面に濃色インキ層を構成し、該濃色インキ層上に順次白色又は淡色インキ層、粘着剤層を構成した粘着テープにおいて、上記基材側から特定の方法等で印字効果を付与した印字部を形成することにより、上記目的の粘着テープが得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0007】
すなわち、本発明は、次の(1)及び(2)に存する。
(1) 基材である透明プラスチックフィルムの片面に濃色インキ層を構成し、該濃色インキ層上に順次白色又は淡色インキ層、粘着剤層を構成した粘着テープであって、上記基材側からレーザービームを照射し、基材及び濃色インキ層を除去し、白色又は淡色インキ層を露出させた印字部を形成したことを特徴とする粘着テープ。
(2) レーザービームに固体レーザービームを使用した上記(1)に記載の粘着テープ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、粘着剤の効果を損なうことなく、鮮明な印字が高速で行うことができると共に、多品種少ロットの個別印刷を簡単に製造することができる粘着テープが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
図1(a)〜(c)は、本発明の粘着テープの実施形態の一例を示すものであり、(a)は粘着テープの加工前の縦断面図、(b)はレーザービーム処理の状態を示す縦断面図、(c)製造工程の概略図、図2は本発明の粘着テープの一例を示す平面図である。
本実施形態の粘着テープAは、加工前は、図1(a)に示すように、基材である透明プラスチックフィルム10の片面に濃色インキ層11を構成し、該濃色インキ層11上に順次白色又は淡色インキ層12、粘着剤層13を構成したものであり、上記基材側から図1(b)及び(c)に示すように、レーザー印字装置20によりレーザービーム21を照射し、基材10及び濃色インキ層11を除去し、白色又は淡色インキ層12を露出させた印字部14を形成したものである。
【0010】
本発明で用いる基材となる透明プラスチックフィルム10としては、粘着テープに用いられるものであれば、特に限定されず、例えば、OPPフィルム、CPPフィルム、PETフィルム、セロファンフィルムなどを用いることができる。この基材となる透明プラスチックフィルム10の厚さとしては、粘着テープの用途に変動するものであり、例えば、野菜や果物などの結束用(以下、野菜等結束用という)であれば、10〜100μmである。
【0011】
本発明における濃色インキ層11は、濃色(例えば、紫色、緑色、黒色等)となる層を構成でき、透明プラスチックフィルム10に密着するものであれば、特に限定されず、例えば、グラビア印刷用の濃色インキなどを用いて構成することができる。この濃色インキ層11の厚さとしては、粘着テープの用途に変動するものであり、例えば、野菜等結束用であれば、0.1〜5μmである。
また、本発明における白色又は淡色インキ層12は、白色又は淡色(例えば、白色、淡無彩色、淡い有彩色等)となる層を構成でき、濃色インキ層11と粘着剤層13に密着するものであれば、特に限定されず、例えば、グラビア印刷用の白色又は淡色インキなどを用いて構成することができる。この白色又は淡色インキ層11の厚さとしては、粘着テープの用途に変動するものであり、例えば、野菜等結束用であれば、0.1〜5μmである。
【0012】
本発明で用いる粘着剤層13としては、粘着テープに用いられるものであれば、特に限定されず、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤などを用いて構成することができる。この粘着剤層13の厚さとしては、粘着テープの用途に変動するものであり、例えば、野菜等結束用であれば、5〜60μmである。
【0013】
本発明の粘着テープの製造として、例えば、上述の基材である透明プラスチックフィルム10の片面に濃色インキ層11を構成し、該濃色インキ層11上に順次白色又は淡色インキ層12、粘着剤層13を構成した粘着テープ体に、グラビア印刷等の共通印刷を行い、粘着加工を施した加工ロール22を、図1(c)に示すようにロール体23にセットする。この状態では、任意のサイズに加工されていなため、任意のサイズにするため、テープ幅を調整したスリット加工を行う。基材10側から図1(b)及び(c)に示すように、レーザー印字装置20によりレーザービーム21を照射し、個別印字となる印字部、具体的には、基材10及び濃色インキ層11を除去し、白色又は淡色インキ層12を露出させた印字部14を形成する。
印字が行われた後、カッター部24により規定の長さに調整し、最後に加工ロールとは別に設けた製品巻取りロール25,25により製品巻取り工程を得ることで、目的の多品種少ロットとなる個別印刷に対応した粘着テープが得られることとなる。
なお、上記共通印刷、粘着加工を施した加工ロール21の長さは、流れ方向で特に限定されないが1000〜8000m、幅方向は500〜1500mmであり、得られる個別印字される1巻当たりの粘着テープの寸法は、特に限定されないが、通常、幅5〜50mm、長さ50〜500m程度である。
【0014】
本発明において、レーザー印字装置20によるレーザービーム21としては、基材10及び濃色インキ層11を除去し、白色又は淡色インキ層12を露出させた印字部14を形成できるものであれば、特に限定されず、例えば、YAGレーザー、ルビーレーザーなどの固体レーザー、炭酸ガスレーザー、エキシマレーザー、アルゴンレーザーなどのガスレーザー、半導体レーザー、液体レーザーなどを用いることができる。好ましくは、鮮明な印字、個別印刷に対応した好適な粘着テープを得る点から、YAGレーザー、ルビーレーザーなどの固体レーザービームを使用したものが望ましく、特に好ましくは、鮮明な印字、発振波長、汎用性などの点から、YAGレーザーが望ましい。
【0015】
また、本発明において、レーザー照射条件は、基材10側からレーザー印字装置20によりレーザービーム21を照射し、基材10及び濃色インキ層11を除去し、白色又は淡色インキ層12を露出させた印字部14を形成できるものであれば、特に限定されるものではなく、粘着テープの原材料種、大きさ、形状等により変動するものであるが、YAGレーザーなどを用いた場合、波長1064nm、10〜15Wの間での出力調整、レーザースキャン速度の調整、レーザーパルス幅の調整、焦点距離によるレーザースポット径若しくはエネルギー密度の調整(およそ、1.3×105〜1.9×105W/cm2)、レーザー照射パターンの調整等の任意の条件調整を好適に行うことで、個別印刷に対応できる印字部14を形成した目的の粘着テープが得られることとなる。
【0016】
図2は、上述の製造法により得られた本発明となる粘着テープの一例を示す平面図であり、三種(三巻)の野菜等結束用粘着テープを示すものである。
この粘着テープAは、図2に示すように、「新鮮野菜」と印刷された部分15、15…が、共通印刷部分であり、個別印字となる生産者名を示す「山田」、「中村」、「鈴木」の部分が、基材側10からレーザービーム21を照射し、基材10及び濃色インキ層11を除去し、白色又は淡色インキ層13を露出させた印字部14である。
本発明では、個別印刷となる印字部14をレーザービーム21の照射で形成できるので、照射態様を変更するだけで、印字部14の内容(生産物の内容、注意書き文字、絵柄表示等)を簡単に変更することもできる。
【0017】
このように構成される本発明の粘着テープでは、レーザービームを粘着テープの基材及び濃色インキ層まで照射し、除去することで、グラビア印刷と同様な抜け文字印刷が可能となり、粘着剤の効果を損なうことなく、鮮明な印字が高速で行うことができると共に、多品種少ロットの個別印刷を簡単に製造することができる粘着テープが得られるものとなる。
【0018】
本発明の粘着テープは、上記実施形態に限定されることなく、本発明の技術思想の範囲内で種々変更することができる。
例えば、基材10のプラスチックフィルムの表面には、テープ同士の固着を防ぐために、剥離剤を塗布することもでき、また、粘着剤層13の白色又は淡色インキ層12に対する密着性を向上させるため、及びレーザービーム21による印字後の文字をより鮮明にするために、白又は淡色インキ層12と粘着剤層13の間にプライマー層を粘着剤層13の上に塗布することもできる。
また、上記実施形態では、野菜等結束用として説明したが、接ぎ木止めなどの園芸用、医療用、その他結束用、梱包用などの粘着テープに使用してもよいものである。
更に、粘着テープ自体にミシン目などを設けて手切れ性を付与したり、粘着テープ自体を通気性を備えたものとしてもよいものである。
【実施例】
【0019】
次に、本発明を実施例により更に詳述するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0020】
〔実施例1〕
加工前の粘着テープ体として下記の構成のものを用いた。
基材となる透明プラスチックフィルム:OPPフィルム(厚さ40μm)
濃色インキ層:グラビア印刷用インキ(DICカラーR607紫)(厚さ1μm)
白色インキ層:グラビア印刷用インキ(DICカラーF795白)(厚さ1μm)
粘着剤層:ゴム系粘着剤(厚さ30μm)
得られた粘着テープ体(幅600mm×長さ2000mm)に、YAGレーザー装置(商品名「FAYbレーザマーカ」、SUNX社製、以下同様)を用いて、室温空気雰囲気下で、出力10W、パルス幅50μsの条件で基材側からレーザービーム処理を行い、基材及び濃色インキ層を除去し、白色インキ層を露出させた生産者名となる「鈴木」の印字部を形成した。形成後スリット加工を施し、幅20mm、長さ100mの粘着テープを得た。得られた粘着テープは、粘着剤の効果を損なうことなく、鮮明な印字であることが判った。
【0021】
〔実施例2〕
加工前の粘着テープ体として下記の構成のものを用いた。
基材となる透明プラスチックフィルム:PET(厚さ38μm)
濃色インキ層:DICカラーR500草(厚さ1μm)
淡色インキ層:DICカラーR4008青黄(厚さ1μm)
粘着剤層:アクリル系粘着剤(厚さ30μm)
得られた粘着テープ体(幅600mm×長さ2000mm)に、YAGレーザー装置を用いて、室温空気雰囲気下で、出力12W、パルス幅50μsの条件で基材側からレーザービーム処理を行い、基材及び濃色インキ層を除去し、淡色インキ層を露出させた生産者No.となる「K−0123」の印字部を形成した。上記実施例1と同様に得られた粘着テープは、粘着剤の効果を損なうことなく、鮮明な印字であることが判った。
【0022】
〔実施例3〕
加工前の粘着テープ体として下記の構成のものを用いた。
基材となる透明プラスチックフィルム:OPPフィルム(厚さ60μm)
濃色インキ層:DICカラーR607紫(厚さ1μm)
淡色インキ層:DICカラーF795白(厚さ1μm)
プライマー層:ウレタン系プライマー(厚さ2μm)
粘着剤層:ゴム系粘着剤(厚さ30μm)
得られた粘着テープ体(幅600mm×長さ2000mm)に、YAGレーザー装置を用いて、室温空気雰囲気下で、出力15W、パルス幅50μsの条件で基材側からレーザービーム処理を行い、基材及び濃色インキ層を除去し、白色インキ層を露出させた生産者名となる「鈴木」の印字部を形成した。上記実施例1と同様に得られた粘着テープは、粘着剤の効果を損なうことなく、鮮明な印字であることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の粘着テープの実施形態の一例を示すものであり、(a)は粘着テープの加工前の縦断面図、(b)はレーザービーム処理の状態を示す縦断面図、(c)製造工程の概略図である。
【図2】本発明の粘着テープの一例を示す平面図である。
【符号の説明】
【0024】
A 粘着テープ
10 基材(透明プラスチックフィルム)
11 濃色インキ層
12 白色又は淡色インキ層
13 粘着剤層
14 印字部
20 レーザー印字装置
21 レーザービーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材である透明プラスチックフィルムの片面に濃色インキ層を構成し、該濃色インキ層上に順次白色又は淡色インキ層、粘着剤層を構成した粘着テープであって、上記基材側からレーザービームを照射し、基材及び濃色インキ層を除去し、白色又は淡色インキ層を露出させた印字部を形成したことを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
レーザービームに固体レーザービームを使用した請求項1に記載の粘着テープ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−63520(P2008−63520A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245397(P2006−245397)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)
【Fターム(参考)】