説明

粘着テープ

【課題】 高度な難燃性と優れた粘着特性を有する粘着テープを提供することを課題とする。
【解決手段】 テープ基材と、該テープ基材に積層された粘着剤層とを備えた粘着テープであって、前記テープ基材は、難燃剤が配合されており、前記粘着剤層は、粘着剤ベースポリマー100質量部に対して、難燃剤が10質量部以上20質量部未満配合されている粘着テープによる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ基材とテープ基材に積層された粘着剤層とを備えた粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子製品やそれらを構成する材料等においては、難燃性が求められている。それに伴って、用いられる粘着テープに関しても、UL510燃焼試験等の各種試験に合格する高い難燃性が求められている。
【0003】
この種の粘着テープとして、テープ基材と粘着剤層とを有し、且つ粘着剤層を形成する粘着剤に、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの金属水和物系難燃剤を配合したものが提案されている(特許文献1)。また、金属水和物系難燃剤以外の難燃剤として、リン系難燃剤も提案されている(特許文献2、特許文献3)。しかしながら、このような粘着テープは、高度な難燃性を得るには、金属水和物系難燃剤やリン系難燃剤を粘着剤に大量に配合しなければならず、粘着剤が硬くなり、粘着力が低下するという問題があった。
【特許文献1】特開2003−96417号公報
【特許文献2】特開2006−219564号公報
【特許文献3】特開2006−219565号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、上記従来の問題点に鑑み、本発明は、高度な難燃性と優れた粘着特性とを有する粘着テープを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく、本発明は、テープ基材と、該テープ基材に積層された粘着剤層とを備えた粘着テープであって、
前記テープ基材は、難燃剤が配合されており、
前記粘着剤層は、粘着剤ベースポリマー100質量部に対して、難燃剤が10質量部以上20質量部未満配合されていることを特徴とする粘着テープを提供する。
斯かる粘着テープに於いては、粘着剤層に配合する難燃剤を従来よりも少ない量に抑えることにより、粘着力の低下を防ぎ、優れた粘着特性を得ることができる。また、テープ基材に難燃剤を配合することにより、粘着剤層の難燃剤が少ないことによる難燃性の低下を補い、高度な難燃性を得ることができる。
【0006】
本発明において、前記テープ基材に配合される前記難燃剤及び前記粘着剤層に配合される前記難燃剤として、リン系難燃剤が用いられていることが好ましい。
斯かる難燃剤が用いられることにより、少なくともハロゲン系難燃剤の使用量を低減又は無くすることができ、ダイオキシンの問題等の原因となる虞が低減される。
【0007】
本発明において、前記テープ基材に配合される前記難燃剤として、リン酸エステル系難燃剤が用いられていることが好ましい。
斯かる難燃剤が用いられることにより、従来の基材と変わらぬ風合い、物理的特性、加工性を保持し得る。
【0008】
本発明において、前記粘着剤層に配合される前記難燃剤として、窒素含有リン酸塩化合物難燃剤又はリン酸エステル系難燃剤が用いられていることが好ましい。
斯かる難燃剤が用いられることにより、少なくともハロゲン系難燃剤の使用量を低減又は無くすることができ、ダイオキシンの問題等の原因となる虞が低減される。
【0009】
本発明において、前記テープ基材に配合される前記難燃剤の配合量が、5質量%以上40質量%以下であることが好ましい。
前記テープ基材に配合される前記難燃剤の配合量が、5質量%以上であることにより、高度な難燃性が得られ、40質量%以下であることにより、物理的特性、加工性を保持することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の粘着テープは、高度な難燃性と優れた粘着特性とを有するという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明に係る粘着テープの実施形態について説明する。
【0012】
本実施形態の粘着テープは、テープ基材と、該テープ基材に積層された粘着剤層とを備え、前記テープ基材及び前記粘着剤層には、難燃剤が配合されている。
前記テープ基材の厚みは、好ましくは100〜300μmであるが、さらに好ましくは、120〜250μmである。
前記粘着剤層の厚みは、好ましくは10〜80μmであるが、さらに好ましくは、20〜70μmである。
【0013】
前記テープ基材に配合される前記難燃剤の配合量は、好ましくは、5質量%以上40質量%以下、さらに好ましくは、10質量%以上35質量%以下である。
前記テープ基材に配合される前記難燃剤の配合量は、5質量%以上であることにより、高度な難燃性が得られ、40質量%以下であることにより、物理的特性、加工性を保持することができる。
【0014】
前記粘着剤層に配合される前記難燃剤の配合割合は、粘着剤ベースポリマー100質量部に対して、10質量部以上20質量部未満である。
前記粘着剤層に配合される前記難燃剤の配合割合は、粘着剤ベースポリマー100質量部に対して、10質量部以上であることにより、高度な難燃性得られ、20質量部未満であることにより、優れた粘着特性が得られる。
【0015】
前記テープ基材に配合される前記難燃剤及び前記粘着剤層に配合される前記難燃剤は、リン系難燃剤が好ましい。
リン系難燃剤としては、窒素含有リン酸塩化合物系難燃剤と、脂肪族リン酸エステル、芳香族リン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル等のリン酸エステル系難燃剤等とが挙げられる。
窒素含有リン酸塩化合物系難燃剤としては、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、リン酸ジメラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレム、ポリリン酸メロン、リン酸エステルアミド、リン酸グアニジン等が挙げられる。
脂肪族リン酸エステルとしては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が挙げられる。
芳香族リン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、クレジル2,6キシレニルホスフェート、トリス(tブチル化フェニル)ホスフェート、トリス(イソプロピル化フェニル)ホスフェート、リン酸トリアリールイソプロピル化物等が挙げられる。
芳香族縮合リン酸エステルとしては、レゾルシノールビスジフェニルホスフェート、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)、レゾルシノールビスジキシレニルホスフェート等が挙げられる。
これらのリン系難燃剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いても構わない。
また、前記テープ基材に配合される前記難燃剤は、さらに好ましくは、リン酸エステル系難燃剤である。
【0016】
前記粘着剤層に配合される前記難燃剤としては、さらに好ましくは、窒素含有リン酸塩化合物系難燃剤又はリン酸エステル系難燃剤が用いられている。また、前記粘着剤層に配合される前記難燃剤には、粘着性を損なわない範囲で、金属水和物系難燃剤を併用しても構わない。金属水和物系難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等が挙げられる。金属水和物系難燃剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いても構わない。
【0017】
前記テープ基材は、例えば、上記の如く難燃剤が配合されたポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリアミド、ポリアセテート、ポリエーテルエーテルケトン等のフィルム基材や、ガラスクロス、アセテートクロス等の布基材や、芳香族ポリイミド不織布や、ペーパー基材等を例示することができる。これらの単体、又は2種以上を組み合わせたものを使用することができる。又、これらに、必要に応じて、紙、布、不織布等を粘着剤や接着剤等で積層したテープ基材が用いられる。特に、粘着テープが自動車のワイヤーハーネス等の結束テープとして用いられるものにおいては、テープ基材としては、セルロースアセテートクロスが好ましい。
【0018】
本実施形態における粘着テープは、テープ基材上に、粘着剤組成物を塗工して粘着剤層を形成することにより、製造される。
【0019】
前記テープ基材は、例えば、以下の方法により製造される。
本実施形態において、テープ基材として、例えば、セルロースアセテートクロスは、公知の乾式紡糸方法によって得られる。例えば、セルロースアセテートをアセトン、塩化メチレン等の単独溶剤又は塩化メチレン/メタノール等の混合溶剤に溶解し、セルロースアセテート濃度15〜35質量%、好ましくは18〜30質量%とした紡糸原液を調整する。該紡糸原液に非ハロゲン系縮合リン酸エステルを添加混合するか、又は非ハロゲン系縮合リン酸エステルをアセトン、塩化メチレン、メタノール等の単独溶液若しくは塩化メチレン/メタノール等の混合溶剤に溶解した溶液を前記紡糸原液に添加、混合し、非ハロゲン縮合リン酸エステルを所定濃度に調整する。
紡糸は、紡糸原液を紡糸口金装置に供給し、紡糸ノズルより高温雰囲気中に吐出する。また、紡糸の際、紡糸原液として非ハロゲン系縮合リン酸エステルの無添加紡糸原液や添加量の異なる紡糸原液、又は置換度が異なるアセテート紡糸原液や固形分濃度の異なる紡糸原液などを併用し、芯鞘型に複合紡糸してもよい。また、繊維の断面形状は円形、異型のいずれであってもよい。
【0020】
前記粘着剤は、特に限定されないが、一般的に用いられている公知のアクリル系粘着剤やゴム系粘着剤が粘着剤ベースポリマーとして用いられている。
アクリル系粘着剤としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル等の(メタ)アクリルエステルモノマーを主成分とし、これに(メタ)アクリル酸、クロトン酸、フマル酸、イタコン酸、(無水)マレイン酸等の官能基を含むモノマーや酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、2−メチロールエチルアクリルアミド等を必要に応じて共重合させることにより得られる公知のアクリル系粘着剤を用いることができる。
ゴム系粘着剤としては、特に限定されないが、例えば、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム、ブチルゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、及びスチレン・イソプレンブロックコポリマー等のエラストマー成分を1種、又は2種以上の組み合わせに対して、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、脂環属系石油樹脂、クマロン・インデン樹脂、ピュア・モノマー系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン樹脂等を混合した公知のゴム系粘着剤を用いることができる。
【0021】
前記粘着剤には、本発明の難燃効果を損なわない範囲で、必要に応じて、酸化防止剤、耐候剤、軟化剤、安定剤、充填剤、増量剤、補強剤等の各種添加剤を1種、又は2種以上を組み合わせて加えることができる。
【0022】
本実施形態における難燃剤の粘着剤ベースポリマーへの分散方法としては、特に限定されないが、一般的に知られる機械的混練分散法の他に、必要に応じて溶剤分散法、超音波分散法等の公知の方法を用いることができる。
【0023】
本実施形態における粘着剤組成物のテープ基材への塗工方法は、特に限定されないが、例えば、ロールコーターやリバースコーター等で前記テープ基材の少なくとも片面に1層、又は2層以上塗布され、必要に応じて加熱することにより本発明の粘着テープが得られる。
【実施例】
【0024】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0025】
実施例1
(テープ基材の作製)
水酸基の80%が酢酸化されているセルロースアセテートを塩化メチレンとメタノールとの混合溶剤に溶解し、セルロースアセテートの濃度が22.1質量%の溶液(以下、アセテート溶液)を調製した。前記アセテート溶液に、全体の固形分に対する縮合リン酸エステルの含有率が28質量%となるように、非ハロゲン系縮合リン酸エステル(商品名:ノンネンR039−16、丸菱油化工業(株)社製)を混合撹拌し、紡糸原液を作製した。前記紡糸原液を用い、乾式紡糸で、紡速500m/分で巻き取り、アセテートセルロースクロスを得、該アセテートセルロースクロスを製織して、84dtex/20フィラメント、縦の糸密度73本/cm、横の糸密度25本/cm、厚さ180μmのテープ基材を得た。
(粘着剤の調製)
2−エチルヘキシルアクリレート95質量部、アクリル酸5質量部、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド0.15質量部を酢酸エチルに溶解し、窒素雰囲気下、62℃で5時間反応させ、固形分を32質量%に希釈し、重量平均分子量約140万のアクリル酸エステル共重合体液体(以下、アクリル系粘着剤)を調製した。
(粘着テープの作製)
前記アクリル系粘着剤の固形分100質量部に対して、窒素含有リン酸塩化合物系難燃剤(商品名:ノンネンPN−600、丸菱油化工業(株)社製)15質量部添加し、混合・混練機(商品名:T.K.HOMODISPER、特殊機化工業(株)社製)で練り込み、充分に分散させて得た粘着剤組成物にポリイソシアネート系架橋剤を2.5質量部、及び適量の有機溶剤を加えて均一になるまで充分に撹拌して得られた粘着剤層塗布液を、乾燥後の粘着剤層の厚みが25〜35μmになるように前記テープ基材に塗布・乾燥して、粘着テープを作製した。
【0026】
実施例2
前記アクリル系粘着剤の固形分100質量部に対する、窒素含有リン酸塩化合物系難燃剤(商品名:ノンネンPN−600、丸菱油化工業(株)社製)の添加量を15質量部に代えて10質量部とした以外は実施例1と同様に粘着テープを作製した。
【0027】
実施例3
前記アクリル系粘着剤の固形分100質量部に対する、窒素含有リン酸塩化合物系難燃剤(商品名:ノンネンPN−600、丸菱油化工業(株)社製)の添加量を15質量部に代えて19質量部とした以外は実施例1と同様に粘着テープを作製した。
【0028】
実施例4
実施例1の窒素含有リン酸塩化合物系難燃剤(商品名:ノンネンPN−600、丸菱油化工業(株)社製)の代わりに、リン酸エステル系難燃剤(商品名:PX−200、大八化学工業(株)社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様に粘着テープを作製した。
【0029】
比較例1
前記アクリル系粘着剤の固形分100質量部に対する、窒素含有リン酸塩化合物系難燃剤(商品名:ノンネンPN−600、丸菱油化工業(株)社製)の添加量を15質量部に代えて30質量部とした以外は実施例1と同様に粘着テープを作製した。
【0030】
比較例2
前記アクリル系粘着剤の固形分100質量部に対する、窒素含有リン酸塩化合物系難燃剤(商品名:ノンネンPN−600、丸菱油化工業(株)社製)の添加量を15質量部に代えて5質量部とした以外は実施例1と同様に粘着テープを作製した。
【0031】
比較例3
前記アセテート溶液に、非ハロゲン系縮合リン酸エステルを添加しなかったこと以外は、実施例1と同様に粘着テープを作製した。
【0032】
試験例
各実施例、比較例の粘着テープを用いて下記試験に供した。
【0033】
(粘着力)
JIS Z 0237に準じて、測定した。
【0034】
(燃焼試験)
UL510(電気絶縁用テープ規格)燃焼試験に準じて、測定した。
【0035】
各実施例、比較例の粘着テープを用いた上記試験の結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1に示すように、各実施例の粘着テープは、粘着力が高い値を示し、且つUL510燃焼試験の合格基準を満たした。一方、比較例1の粘着テープは、粘着力が低い値を示した。また、比較例2、3の粘着テープは、UL510燃焼試験が合格基準を満たさなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープ基材と、該テープ基材に積層された粘着剤層とを備えた粘着テープであって、
前記テープ基材は、難燃剤が配合されており、
前記粘着剤層は、粘着剤ベースポリマー100質量部に対して、難燃剤が10質量部以上20質量部未満配合されていることを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
前記テープ基材に配合される前記難燃剤及び前記粘着剤層に配合される前記難燃剤として、リン系難燃剤が用いられていることを特徴とする請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
前記テープ基材に配合される前記難燃剤として、リン酸エステル系難燃剤が用いられていることを特徴とする請求項1又は2記載の粘着テープ。
【請求項4】
前記粘着剤層に配合される前記難燃剤として、窒素含有リン酸塩化合物系難燃剤又はリン酸エステル系難燃剤が用いられていることを特徴とする請求項1〜3何れかに記載の粘着テープ。
【請求項5】
前記テープ基材に配合される前記難燃剤の配合量が、5質量%以上40質量%以下であることを特徴とする請求項1〜4何れかに記載の粘着テープ。

【公開番号】特開2009−114373(P2009−114373A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290695(P2007−290695)
【出願日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(000190611)日東シンコー株式会社 (104)
【Fターム(参考)】