説明

粘着テープ

【課題】
狭い波長域で少ない積算光量のエネルギー線でも粘着剤の重合反応が起こり、硬化して剥離性が得られてかつ寿命に優れた半導体部材研磨時の回路保護用粘着テープを提供する。
【解決手段】
上記の硬化のために使用されるエネルギー線は、ピーク強度を示す波長の領域が350〜400nmでピーク強度の半値幅が10〜30nmである光線を含む光源を用いることができ、粘着成分として(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、熱硬化性化合物を含み、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100重量部に対して光重合開始剤を15〜35重量部、かつ重合禁止剤を0.2〜3重量部含み、上述したような光源を用いたとき、積算光量20〜500mJ/cm2で硬化して粘着力が低下し、さらにエネルギー線照射後の粘着力が、エネルギー線照射前の粘着力の10%以下となることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体部材研磨時の回路保護用粘着テープおよび粘着シートに係わり、さらに詳しくはエネルギー線硬化により研磨作業後容易に剥離できる粘着剤層の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ製造の研磨工程で使用される、パターンを形成した回路面側の保護に使用される粘着テープおよび粘着シート(以下両者を総称して本発明では粘着テープという)はICカード、携帯電話、ゲーム機等の普及拡大に対応して重要性が増してきている。この粘着テープの主な構成は基材、粘着剤層から成る。特性では、研磨作業中は、ウエハを確実に粘着力で固定して研磨精度を向上させ、ウエハ表面を汚染せず、研磨作業終了後は速やかに剥離できることと剥離後にウエハ表面に粘着テープの粘着剤の糊が残らないことが優先して要求される。
従来のこの種の粘着テープにおいては、剥離の際に、接着力を低下させるための接着剤の硬化用である照射するエネルギー線として紫外線、電子線等が用いられ、光源としては一般的にメタルハライドや高圧水銀ランプが用いられていた(特許文献1,2)。また、最近ではより生産効率や品質向上を目指した、粘着テープの構成材や研磨方法に関する技術が開示されている(特許文献3,4)。
しかし、いずれの文献においてもこのような剥離の際に照射するエネルギー線の光源は十分な光量を出力するとともに、光の波長が約200〜約1000nmの広い領域で発光してしまうため、熱線などにより半導体部材に被害を与えてしまうという欠点があった。また、低光量での剥離を可能にするには光重合開始剤の量を増やす方法があるが、増やしすぎることで過剰の開始剤がウエハを汚したり、重合反応が起こりやすくなり、保存中(使用前の保管)に重合が進んで粘着力が低下して粘着テープの製品寿命が短くなってしまうという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−298173号公報
【特許文献2】特開平11−26406号公報
【特許文献3】特開2007−70533号公報
【特許文献4】特開2008−60151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
LEDのように、狭い波長域で少ない積算光量のエネルギー線でも粘着テープの粘着剤の重合反応が起こり、硬化して剥離性が得られてかつ寿命に優れた粘着テープを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
基材フィルムの少なくとも片表面にエネルギー線硬化性粘着剤層をもち、エネルギー線を照射することで粘着剤が硬化して粘着力が低下する半導体部材研磨時の回路面保護用粘着テープであって、上記の硬化のために使用されるエネルギー線は、ピーク強度を示す波長の領域が350〜400nmでピーク強度の半値幅が10〜30nmである光線を含む光源を用いることができ、粘着成分として(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、熱硬化性化合物を含み、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100重量部に対して光重合開始剤を15〜35重量部、かつ重合禁止剤を0.2〜3重量部含み、上述したような光源を用いたとき、積算光量20〜500mJ/cm2で硬化して粘着力が低下し、さらにエネルギー線照射後の粘着力が、エネルギー線照射前の粘着力の10%以下となることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の粘着テープはバックグラインドテープとして使用でき、剥離のための光源としてLEDを使っても十分粘着力が低下して、半導体ウエハ製品にダメージを与えずかつ保存性が優れているのでテープ製品寿命が長い。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の粘着テープは、少なくとも基材フィルムと、ウエハや基板に貼付するためのエネルギー線照射硬化型の粘着剤層とを有する。基材フィルムと粘着剤層との間には、樹脂等からなる中間層や非エネルギー線硬化型の粘着剤層や前記エネルギー線照射硬化型の粘着剤層と成分の異なる粘着剤層が設けられていてもよい。本発明の粘着テープの粘着剤層を粘着シート状やラベル状にして使用してもよい。また、必要に応じて粘着剤層上にはセパレータを設けてもよい。
前記粘着テープは、エネルギー線照射前の粘着力が0.5N/10mm以上であり、かつエネルギー線照射後の粘着力が0.4N/10mm未満であることが好ましい。さらに好ましくはエネルギー線照射前の粘着力が0.6N/10mm以上であり、エネルギー線照射後の粘着力が0.35N/10mm以下である。エネルギー線照射前の粘着力が0.5N/10mm未満の場合には、ウエハとの密着性が十分に得られないため、ウエハの裏面研削の際に水が隙間に侵入する傾向にある。そのため、ウエハのパターン面を汚染したり、場合によってはウエハの研削が不安定になり、ウエハの破損が生じる恐れがある。一方、エネルギー線照射後の粘着力が0.4N/10mm以上の場合には、100μm程度の厚みのウエハ等から粘着テープを剥離することが困難となり、剥離不良やウエハ等の破損が生じる恐れがある。
本明細書において、(メタ)アクリレートとはアクリレートおよびメタアクリレートの総称である。(メタ)アクリル酸等の(メタ)を含む化合物名も同様に、名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。
本発明の粘着テープの、粘着剤層を主体に構成部材について説明する。
(粘着剤)
粘着剤は、ベースポリマーの組成、エネルギー線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分の配合比などを適宜に組み合わせて調整することができる。エネルギー線硬化型の粘着剤としては、エネルギー線の照射によって粘着力が低下するものを用いる。エネルギー線としては、例えばX線、電子線、紫外線などが挙げられるが、取り扱いの容易さから紫外線を用いることが好ましい。
粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、及びゴム系粘着剤等の適宜な粘着剤を用いることができる。粘着剤は1種のみ用いてもよく、2種以上を混合して使用してもよい。粘着剤は従来公知のものが使用できる。
例えば、アクリル系ポリマーとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル、イソプロピルエステル、ブチルエステル、イソブチルエステル、s−ブチルエステル、t−ブチルエステル、ペンチルエステル、イソペンチルエステル、ヘキシルエステル、ヘプチルエステル、オクチルエステル、2−エチルヘキシルエステル、イソオクチルエステル、ノニルエステル、デシルエステル、イソデシルエステル、ウンデシルエステル、ドデシルエステル、トリデシルエステル、テトラデシルエステル、ヘキサデシルエステル、オクタデシルエステル、エイコシルエステルなどのアルキル基の炭素数1〜30、特に炭素数4〜18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキルエステルなど)及び(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル(例えば、シクロペンチルエステル、シクロヘキシルエステルなど)の1種又は2種以上を単量体成分として用いたアクリル系ポリマーなどがあげられる。
前記アクリル系ポリマーは接着性、凝集力、及び耐熱性などの改質を目的として、必要に応じ、前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル又はシクロアルキルエステルと共重合可能な他のモノマー成分に対応する単位を含んでいてもよい。
このようなモノマー成分としても公知のものが使用できて、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸などのカルボキシル基含有モノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの酸無水物モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8−ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10−ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12−ヒドロキシラウリル、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)メチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有モノマー;スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有モノマー;2−ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有モノマー;アクリルアミド、アクリロニトリルなどがあげられる。これら共重合可能なモノマー成分は、1種又は2種以上使用できる。
さらに、前記アクリル系ポリマーは、架橋させるために公知の多官能性モノマーも必要に応じて用いることができる。このような多官能性モノマーとして、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリストールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートなどがあげられる。これらの多官能性モノマーも1種又は2種以上用いることができる。
前記アクリル系ポリマーは、架橋構造を有していてもよい。架橋構造は、例えば、上記官能性モノマーを含むモノマー混合物を架橋剤の存在下で重合させることにより形成することができる。架橋構造を有するアクリル系ポリマーを用いることにより、粘着剤層の自己保持性が向上し、それにより粘着シートの変形を防止することができ、平板状態を保持することができる。
前記アクリル系ポリマーは、前記単一モノマー又は2種以上のモノマー混合物を重合することにより得られる。重合は、溶液重合、乳化重合、塊状重合、懸濁重合等の何れの方式で行うこともできる。粘着剤層は半導体ウエハ等の汚染防止等の点から、低分子量物質の含有量が小さいことが好ましい。
エネルギー線硬化性の粘着剤としては、一般的な粘着剤にエネルギー線硬化性のモノマー成分やオリゴマー成分を配合した添加型のエネルギー線硬化性粘着剤の他、ベースポリマーとして、炭素−炭素二重結合をポリマー側鎖、主鎖中、主鎖末端に有するものを用いた内在型のエネルギー線硬化性粘着剤を用いることができる。内在型のエネルギー線硬化性粘着剤は、低分子成分であるオリゴマー成分等を含有する必要がなく、または多くは含まないため、経時的にオリゴマー成分等が粘着剤在中を移動することなく、安定した層構造の粘着剤層を形成することができる。
前記炭素−炭素二重結合を有するベースポリマーは、反応性を有する炭素−炭素二重結合を有し、かつ粘着性を有するものを特に制限なく使用できる。このようなベースポリマーとしては、アクリル系ポリマーを基本骨格とするものが好ましい。アクリル系ポリマーの基本骨格としては、前記例示したアクリル系ポリマーがあげられる。
前記アクリル系ポリマーへの反応性を有する炭素−炭素二重結合の導入法は特に制限されず、様々な方法を採用できるが、ポリマー側鎖に導入する分子設計が容易である。たとえば、予め、アクリル系ポリマーに官能基を有するモノマーを共重合した後、この官能基と反応しうる官能基を有する化合物を、反応性の炭素−炭素二重結合を残したまま、その他の官能基同士を縮合または付加反応させる方法があげられる。
これら官能基の組合せの例としては、カルボン酸基とエポキシ基、カルボン酸基とアジリジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基などがあげられる。これら官能基の組合せのなかでも反応追跡の容易さから、ヒドロキシル基とイソシアネート基との組合せが好適である。また、これら官能基の組み合わせにより、炭素−炭素二重結合を有するアクリル系ポリマーを生成するような組合せであれば、官能基はアクリル系ポリマーと前記化合物のいずれの側にあってもよいが、前記の好ましい組み合わせでは、アクリル系ポリマーがヒドロキシル基を有し、前記化合物がイソシアネート基を有する場合が好適である。
この場合、炭素−炭素二重結合を有するイソシアネート化合物としては、たとえば、メタクリロイルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、m−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネートなどがあげられる。また、アクリル系ポリマーとしては、前記例示のヒドロキシ基含有モノマーや2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングルコールモノビニルエーテルのエーテル系化合物などを共重合したものが用いられる。
前記エネルギー線硬化型粘着剤には、特性を損なわない範囲でエネルギー線硬化型オリゴマーを添加することもできる。エネルギー線硬化型オリゴマーとしては、例えば、ウレタン系、ポリエーテル系、ポリエステル系、ポリカーボネート系、ポリブタジエン系など種々のオリゴマーがあげられる。
前記エネルギー線硬化型粘着剤には、公知の架橋剤、例えば、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、イソシアネート系架橋剤などを添加してもよい。
(光重合開始剤)
前記エネルギー線硬化型粘着剤には、紫外線線等により硬化させる場合には光重合開始剤を含有させる。光重合開始剤としては、例えば、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、α−ヒドロキシ−α,α´−ジメチルアセトフェノン、2−メチル−2−ヒドロキシプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどのα−ケトール系化合物;メトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフエノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)−フェニル]−2−モルホリノプロパン−1などのアセトフェノン系化合物;べンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系化合物;2−ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1−フェノン−1,1―プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;チオキサンソン、2−クロロチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、2,4−ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4−ジクロロチオキサンソン、2,4−ジエチルチオキサンソン、2,4−ジイソプロピルチオキサンソンなどのチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナートなどがあげられる。本発明では、とくに波長帯域が350〜400nmである光線で反応する開始剤が好ましい。
光重合開始剤の配合量は特に限定されないが、光重合開始剤が少ないと、剥離後に粘着剤成分が残留する場合がある。光重合開始剤が過剰だとわずかの光量でも重合が進んで粘着力が低下することになって粘着テープの製品寿命を短縮する。
(禁止剤)
エネルギー線照射で開始される重合反応を停止させる禁止剤は、従来公知のものが使用できる。ヒンダートアミン化合物、ニトロソアミン化合物及びキノン化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む重合禁止剤を使用するのが好ましい。
【0008】
上記ヒンダートアミン化合物としては、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ基を有する化合物が好ましい。具体的には、例えば、ビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステルなどが挙げられる。これらは単独でも複数混合して使用されてもよい。これらの中でも、N−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル基を有するビス(1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジニ−4−イル)セバケートが好ましい。市場で入手可能な2,2,6,6−テトラメチルピペリジニルオキシ基を有するヒンダートアミン化合物からなる重合禁止剤としては、チバ社製の“IRGASTAB UV−10”などが挙げられる。
【0009】
上記キノン化合物としては、アルキル基を有する化合物が好ましい。具体的には、例えば、2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノン、2,6−ジ−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノン、2,5−ジ−tert−アミルベンゾキノン、2−tert−ブチル−1,4−ベンゾキノン、2,5−シクロヘキサジエン−1−オン,2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−(フェニルエチレン)−(9Cl)などが挙げられる。これらは単独でも複数混合して使用されてもよい。これらの中でも、2,5−シクロヘキサジエン−1−オン,2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−(フェニルエチレン)−(9Cl)が好ましい。市場で入手可能な2,5−シクロヘキサジエン−1−オン,2,6−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−(フェニルエチレン)−(9Cl)からなる重合禁止剤としては、チバ社製の“IRGASTAB UV−22”が挙げられる。
【0010】
上記ニトロソアミン化合物としては、例えば、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミン、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンセリウム塩などが挙げられる。これらは単独でも複数混合して使用されてもよい。
(基材)
テープの基材の厚み及び材質は特に限定されず、適宜選択できる。基材の材質としては、例えばエチレンビニルアセテート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン等のポリオレフィン類、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、及びアイオノマー等が挙げられる。これらの材質を2種以上用いてもよい。複数の材質を使用する方法として、混合物、共重合体、積層フィルム等が挙げられる。基材の厚さは、10〜300μmが好ましく、20〜250μmがより好ましい。
(溶剤)
粘着剤はトルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、及びアルコール類等の溶剤を使用することができる。高精度研削を行うためには粘着剤中の溶剤量は5質量%以下とすることが好ましく、無溶剤であることが最も好ましい。粘着剤中の溶剤量を削減することにより、溶剤の蒸発等による粘着剤層の厚み変化が小さい、高精度研削が可能な粘着テープとすることができる。
(粘着テープ)
粘着テープは、基材上に粘着剤層を形成して製造する。基材上に粘着剤層を形成する方法は、特に限定されず、例えば一般的なコンマ塗工、グラビア塗工、ロール塗工、スクリーン塗工などの塗工方式を用いることができる。粘着剤は直接基材上に形成しても良く、表面に剥離処理を行った剥離紙等に粘着剤層を形成した後、基材フィルムに転写しても良い。
粘着剤層の厚みは、5〜2000μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。粘着剤層が薄いと半導体ウエハ上の回路やハンダボール等のバンプ(盛り上がり部)を吸収することができず半導体ウエハ表面にディンプル(窪み)やクラックが発生する場合がある。粘着剤層が過剰に厚いと不経済である。
(エネルギー線)
エネルギー線の光源は特に限定されず、紫外線、α線、β線、γ線、及び電子線等が使用できる。紫外線源として、ブラックライト、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ等が使用できる。最近では、光源の長寿命化や省エネルギーおよびウエハへの負荷低減の観点からLEDの使用が提案されており、今後は有望と考えられる。
粘着剤層に照射するエネルギー線の照射強度は、特に限定されないが0.1〜600mW/cm2が好ましく、1〜500mW/cm2がより好ましい。照射強度が弱いと、粘着剤層を充分に硬化させるために時間がかかる場合がある。照射強度が強く積算光量が大きいと、ウエハの回路側へダメージを与える可能性がある。
本発明の思想の本質は、初期の粘着力は十分にあり、作業後は半導体製品にダメージを与えないような波長域のエネルギー線の照射で、光重合がなされて硬化して半導体ウエハから容易に剥離可能となり、半導体ウエハまたは基板の裏面を加工する工程で使用する、製品寿命が長い粘着テープを提供することである。
以下、実施例に基づき本発明をより具体的に説明する。但し、本発明の思想から逸脱しない限り、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。また、以下において「部」は「重量部」を表す。
【実施例】
【0011】
実施例1
窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた反応容器に窒素を導入して、窒素雰囲気下で、酢酸エチル400g、アクリル酸メチル60g、アクリル酸−2−エチルヘキシル30g、アクリル酸10g、及びAIBN(アゾイソブチルニトリル)0.2gを仕込み、60℃で24時間攪拌した。その後、室温まで冷却して、アクリル系共重合体(重量平均分子量:60万)を含有するアクリル系共重合体溶液を得た。このアクリル系共重合体100重量部に対して、2−メタクロイルオキシエチレンイソシアネート3.5重量部を添加し反応させてアクリル系共重合体の30wt%酢酸エチル溶液を得た。
このアクリル酸エステル共重合体30wt%溶液100部に対して、光重合開始剤として、1,2−オクタジオン−1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)](チバジャパン社製IRGACURE OXE01)(E01と略す)5部、熱硬化性化合物としてポリイソシアネート化合物(日本ポリウレタン社製コロネートL75%酢酸エチル溶液)10部、重合禁止剤としてチバジャパン社製イルガスタブUV−10を0.3部を添加混合した。
この混合液を、離形シートとしてシリコーン離形処理を施したポリエチレンテレフタレートフィルム(38μm)に、乾燥後の塗膜厚みが40μmとなるようにナイフコーターを用いて塗布し、100℃で5分間乾燥させた後に厚さ100μmのポリオレフィン製フィルムに貼り合わせ、40℃で72時間エージング処理を行うことで粘着テープを得た。
実施例2
添加する光重合開始剤(E01)を8部に変更した以外は実施例1と同様の方法で粘着テープを作製した。
実施例3
光重合開始剤をエタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)(チバジャパン社製IRGACURE OXE02)(E02と略す)8部に変更した以外は実施例1と同様の方法で粘着テープを作製した。
実施例4〜6と比較例1〜5は粘着テープの粘着剤の組成比を、表1に示したように変更した以外は実施例1と同様の方法で粘着テープを作製した。光重合開始剤以外の熱硬化性化合物、重合禁止剤等は実施例1と同一の製品を使用した。
【0012】
【表1】

【0013】
作製した粘着テープの粘着剤層について、半導体ウエハの研磨工程で求められる諸特性として初期粘着力、作業後の剥離性の目安になるエネルギー線照射後の粘着力、テープの寿命の尺度としては、保存性に粘着力の維持程度を選んだ。また、重合開始剤は添加した量が完全に溶解しないと重合が不均一になり、残存モノマーがウエハを汚染したり、粘着力を低下させるので必要条件として、系における開始剤の溶解性を観察した。
粘着剤層の主な特性の評価方法を説明する。
<開始剤の溶解性>
各試作例で実施する濃度に調整した開始剤の酢酸エチル溶液50ccをサンプル管に作製したあと超音波処理を5分間行う。24時間静置後にサンプル管の底に目視で開始剤が認められないときを溶解と判断した。
<初期粘着力>
粘着テープのシリコーンセパレート側のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離してJIS Z 0237に準じて測定した。
<エネルギー線照射後の粘着力>
粘着テープのシリコーンセパレート側のポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離して粘着面をシリコンウエハに貼り合わせた後、波長365nmにピークをもつLEDによりUV光(積算光量200mJ/cm2)を照射後、JIS Z 0237に準じて粘着力を測定した。
<保存性試験>
粘着面を、白色蛍光灯(HITACHI製サンライン40W形)2本の下2mの位置に暴露して、1週間後の粘着力をJIS Z 0237に準じて測定した。生産されている現状のシリコンウエハの回路で、凸部が高いレベルの300μmのバンプが存在しても、粘着剤層の厚みが40μm程度でシリコンウエハを固定できる粘着力である2.0N/10mm以上あったものを○、2.0N/10mm未満のものを×とした。
【0014】
表2には、得られた粘着テープの特性の評価結果をまとめた。
【0015】
表からわかるように、本発明にかかる粘着テープはいずれも保存性が良好でしかもエネルギー線照射前の粘着力は大きい。逆にLEDのような少光量の照射後でも十分に粘着剤の硬化が進んでおり、照射後の粘着力は剥離性に有利な値まで低下している。しかも、表には載せてないが粘着テープ剥離後のウエハの表面には粘着剤の残滓はなかった。
【0016】
すなわち、本発明の粘着テープは、初期の粘着力は十分に大きくかつ作業後は、LEDを光源とした積算光量が200mJ/cm2のエネルギー線照射でも硬化して、照射後の粘着力が照射前粘着力の10%以下になって容易な剥離性を有し、保存性も良好な半導体ウエハ製造に使用するバックグラインドテープを提供できる。
【0017】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムの少なくとも片側の表面にエネルギー線硬化性粘着剤層をもち、エネルギー線を照射することで粘着力が低下する半導体部材研削時の回路面保護用粘着テープであって、粘着剤成分として(メタ)アクリル酸エステル系共重合体、熱硬化性化合物を含み、上記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体100重量部に対し光重合開始剤を15〜35重量部と重合禁止剤を0.2〜3.0重量部含むことを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
エネルギー線の光源として、硬化のために使用されるエネルギー線は、ピーク強度を示す波長の領域が350〜400nmであり、かつピーク強度の半値幅が10〜30nmである光線を含む光源であることを特徴とする請求項1記載の粘着テープ。
【請求項3】
請求項2記載の光源を用いたとき、積算光量20〜500mJ/cmの照射で粘着剤が硬化して粘着力が低下することを特徴とする請求項1〜2に記載の粘着テープ。
【請求項4】
エネルギー線照射後の粘着力がエネルギー線照射前の10%以下となることを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載の粘着テープ。

【公開番号】特開2011−105854(P2011−105854A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−262564(P2009−262564)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】