説明

粘着テープ

【課題】基材と粘着剤から成る粘着テープにおいて、粘着剤の温度が粘着テープを貼合した対象物あるいは環境の温度変化に追従しない粘着テープを提供する。
【解決手段】基材と、基材上に塗布された粘着層とを備え、粘着テープの厚さ方向における非接着面部の粘着剤に潜熱蓄熱材を添加することで、初期接着力を確保し、粘着テープを貼合した対象物の温度が変化しても、接着力の低下等を起こすことのない粘着テープとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着テープに関し、さらに詳しくは、粘着テープを貼合した対象物温度が変化しても粘着性能が変化しない粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
粘着テープは、粘着剤を紙、布、フィルム、金属箔等の基材に塗布し、対象物の接着、固定、空隙充填、表面保護等に使用される。
ところで、粘着テープを貼合した対象物の温度が変化した場合、粘着剤の性状が変質し、接着力の低下等を起こすことがある。また、特開2001−303006に開示のある、蓄熱性粒子を粘着剤に分散する考案があるが、蓄熱性粒子は非粘着性材料であり、混入によって初期の接着力が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−303006
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、粘着テープを貼合した対象物の温度が一定時間変化しても、粘着剤の性状が変質することなく、接着力の低下等を起こさない粘着テープを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の粘着テープは、基材と、基材上に塗布された粘着層とを備え、粘着層に使用される粘着剤には、粘着テープの厚さ方向において、非接着面部に潜熱蓄熱材が添加されている。
潜熱蓄熱材は、材料の融点、凝固点(相変化温度)において、融解あるいは凝固が完了するまでの間、温度が一定となる(この時の吸熱、発熱エネルギーを潜熱という)。したがって、潜熱蓄熱材を含む系の温度は、相変化温度を跨いで変化した場合、一定時間相変化温度に固定される。この相変化温度を、粘着剤の性状が変質しない温度範囲に設定することで、粘着テープを貼合した対象物の温度が一定時間変化しても、粘着剤の性状が変質することのない粘着テープを提供することができる。
また、潜熱蓄熱材は粘着テープの粘着層が対象物と接着する表面には存在しないため、非粘着性である潜熱蓄熱材によって、初期の接着力を阻害することはない。
潜熱蓄熱材は、ノルマルパラフィンやステアリン酸等の有機系蓄熱材と、酢酸ナトリウムや塩化カルシウム六水和物等の無機系蓄熱材に大別されるが、いずれも材料を選定することで、相変化温度による所望の固定温度が得られる。また、潜熱蓄熱材をマイクロカプセル化することで、融解しても粘着剤に影響を与えない構成とすることが可能である。
粘着剤への潜熱蓄熱材の添加量は、相変化温度での熱容量や添加量が多い程、固定温度が長時間安定に得られ、粘着力維持効果が持続するが、過大量の添加は粘着層内での粘着剤構造破壊を起こすため、上限が存在する。
潜熱蓄熱材の添加量は、粘着テープの用途を考慮して決定する必要がある。
【発明を実施するための形態】
【0006】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図に基づいて説明する。
発明の実施の形態
潜熱蓄熱材は、温度が変化する環境下で、一定温度を維持できる効果がある。例えば水を考えた場合、水の凝固点、氷の融点(固液相変化温度)は0℃であり、0℃以上から0℃以下への温度変化に対して、含まれる水が全て凝固して氷になるまで、温度は0℃に固定される。つまり、固有の相変化温度をもつ潜熱蓄熱材を系内に含めば、この相変化温度を跨いだ温度変化に対して、潜熱蓄熱材が全て凝固あるいは融解する期間、系の温度は一定に保たれる(蓄熱)。また、凝固、融解で出入りのある熱エネルギーの総量を潜熱といい、この潜熱が大きい程、系の温度を一定に保つ能力が大きい材料となる。
潜熱蓄熱材は、添加される粘着剤の特性と粘着テープ用途に応じて選定すればよく、例えばn-テトラデカン(相変化温度5℃)、n-ペンタデカン(相変化温度9℃)、n-ヘキサデカン(相変化温度18℃)、n-ヘプタデカン(相変化温度22℃)、n-オクタデカン(相変化温度28℃)、n-ノナデカン(相変化温度32℃)、n-イコサン(相変化温度36℃)、セチルアルコール(相変化温度51℃)、ステアリン酸(相変化温度71℃)、水(相変化温度0℃)、酢酸ナトリウム三水塩(相変化温度58℃)、塩化カルシウム六水塩(相変化温度27℃)、炭酸ナトリウム(相変化温度-3℃)、炭酸水素カリウム水溶液(相変化温度-6℃)、塩化カリウム水溶液(相変化温度-11℃)、塩化アンモニウム水溶液(相変化温度-16℃)、塩化ナトリウム水溶液(相変化温度-21℃)等があげられる。
潜熱蓄熱材は、溶解状態での粘度や粘着剤との相溶性等によっては、粘着層からブリードアウトする可能性があり、その場合潜熱蓄熱材をマイクロカプセル化することが好ましい。
潜熱蓄熱材の添加量は、多い程粘着テープの潜熱が大きくなり、相変化温度で一定に保つ能力が増すが、潜熱蓄熱材あるいはマイクロカプセル化した潜熱蓄熱材は、非粘着性であるため、粘着層への均一分散では、添加量に伴い粘着テープの初期接着力は低下する。この添加された潜熱蓄熱材が、粘着テープの厚さ方向における接着面側に存在しない、あるいは微量であれば、潜熱蓄熱材が粘着剤を阻害することがなく、初期接着力の低下は改善する。そこで、図1に示すように、基材上に潜熱蓄熱材あるいはマイクロカプセル化した潜熱蓄熱材を分散した粘着剤を塗布し、乾燥後に潜熱蓄熱材を含まない粘着剤をさらに塗布して、2層構造の粘着テープとした。また、図2に示すように、セパレータ基材上に潜熱蓄熱材を含まない粘着剤、潜熱蓄熱材あるいはマイクロカプセル化した潜熱蓄熱材を分散した粘着剤、潜熱蓄熱材を含まない粘着剤を塗布した3層構造の基材レス両面粘着テープとした。
以下、本発明に係る粘着テープの実施例について詳細に説明する。また、実施例の比較対照となる比較例についても説明する。
実施例1
PETフィルム上に、マイクロカプセル化した潜熱蓄熱材をアクリル系粘着剤に分散した塗料を塗布、乾燥して100μmの粘着層を形成し、次に潜熱蓄熱材を含まないアクリル系粘着剤塗料を塗布、乾燥して20μmの粘着層を重ねた2層構造の粘着テープとした。この粘着テープの一部をSUSの平滑面に貼合し、粘着テープに加重1kgを加えながらSUSの温度を一定速度で変化、保持して、粘着テープがはがれるまでの時間を評価した。また、比較のために潜熱蓄熱材を含まないアクリル系粘着剤150μm単層の粘着テープも同条件で評価した。

潜熱蓄熱材、温度変化条件、はがれ時間を表1にまとめた。この結果より、潜熱蓄熱材を粘着テープの厚さ方向における非接着面層の粘着剤に添加することで、接着対象物の温度変化に対して接着力の低下が抑えられた粘着テープとなることが確認できた。

【0007】

実施例2
離型剤をコートしたPETフィルム上に、潜熱蓄熱材を含まないアクリル系粘着剤塗料を塗布、乾燥して20μmの粘着層を形成し、次にマイクロカプセル化した潜熱蓄熱材をアクリル系粘着剤に分散した塗料を塗布、乾燥して200μmの粘着層を積層し、さらに潜熱蓄熱材を含まないアクリル系粘着剤塗料を塗布、乾燥して20μmの粘着層を積層した3層構造の基材レス両面粘着テープとした。この両面粘着テープで自重1kgのSUS板の平滑面を貼合し、片側のSUS板を支持しながらSUSの温度を一定速度で変化、保持して、粘着テープがはがれるまでの時間を評価した。また、比較のために潜熱蓄熱材を含まないアクリル系粘着剤250μm単層の粘着テープも同条件で評価した。
潜熱蓄熱材、温度変化条件、はがれ時間を表2にまとめた。この結果より、潜熱蓄熱材を粘着テープの厚さ方向における非接着面層の粘着剤に添加することで、接着対象物の温度変化に対して接着力の低下が抑えられた基材レス両面粘着テープとなることが確認できた。






【0008】

比較例
PETフィルム上に、実施例1と同様のマイクロカプセル化した潜熱蓄熱材をアクリル系粘着剤に分散した塗料を塗布、乾燥して150μm単層の粘着テープとした。この粘着テープを、実施例1と同条件で加重1kgを加えたところ、室温でずれが発生し、接着力が劣ることが確認できた。

【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】2層構造粘着テープの断面模式図
【図2】3層構造基材レス両面粘着テープの断面模式図
【符号の説明】
【0010】
1…2層構造粘着テープ、11…PETフィルム、121,221…アクリル系粘着剤、
12,22…マイクロカプセル化した潜熱蓄熱材、2…3層構造基材レス両面粘着テープ、
21…離型剤コートPETフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と粘着剤から成る粘着テープにおいて、粘着剤の温度が粘着テープを貼合した対象物あるいは環境の温度変化に追従しないことを特徴とする粘着テープ。
【請求項2】
請求項1記載の粘着剤が、基材から剥離可能であることを特徴とする粘着テープ。
【請求項3】
請求項1、2記載の粘着剤が、厚さ方向に潜熱蓄熱材を含む層と潜熱蓄熱材を含まない層とで構成されていることを特徴とする粘着テープ。
【請求項4】
請求項1、2記載の粘着剤が、厚さ方向に潜熱蓄熱材の含有量が変化することを特徴とする粘着テープ。
【請求項5】
請求項3、4記載の粘着テープにおいて、対象物との接着面側の粘着層に潜熱蓄熱材を含まないことを特徴とする粘着テープ
【請求項6】
請求項3、4記載の潜熱蓄熱材が、マイクロカプセルに封入され、粘着剤中に分散していることを特徴とする粘着テープ。
【請求項7】
請求項5記載の潜熱蓄熱材の相変化温度が、-40℃以上100℃以下で固液相変化をすることを特徴とする粘着テープ

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−131904(P2012−131904A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285222(P2010−285222)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】