説明

粘着フィルム

【課題】粘着フィルムの帯電を防止して、被着体から剥離する時の剥離帯電を有効に防止することができるとともに、基材と粘着剤層との密着力の向上を図ることのできる、粘着フィルムを提供すること。
【解決手段】基材1の上に、有機金属化合物を含む下塗り層2を形成し、次いで、基材1の上に、下塗り層2を介して、粘着剤層3を形成して、粘着フィルムを得る。この粘着フィルムは、被着体から剥離する時の剥離帯電を有効に防止することができ、かつ、基材1と粘着剤層3との密着力の高い粘着フィルムとして、各種産業分野に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着フィルムに関し、詳しくは、電気・電子、半導体、または、光学などの各種産業分野で使用される粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電気・電子または半導体分野などの部品を生産する際に、そのダイシング工程やグラインド工程において、部品を保護するために、基材の上に粘着剤層を設けた粘着フィルムを、部品に貼着することが知られている。そして、この粘着フィルムは、部品の保護が終了すれば、通常剥離されている。
しかし、粘着フィルムが部品から剥離される時に、粘着フィルムと部品との間に静電気(いわゆる剥離帯電)が発生して、部品の回路に悪影響を与えたり、塵やゴミが付着するという障害を生じる。
【0003】
また従来より、光学分野などの部品を生産する際に、その製造工程において、部品を保護するために、粘着フィルムを、部品に貼着することが知られている。そして、この粘着フィルムは、例えば、液晶ディスプレイ(LCD)に貼り合わされた後、通常剥離されている。
しかし、粘着フィルムが液晶ディスプレイから剥離される時に、剥離帯電が発生して、液晶配列が乱され、画像が乱れるという障害を生じる。
【0004】
そのため、上記した剥離帯電を防止することのできる、粘着型光学フィルムを含む粘着フィルムとして、例えば、基材フィルムと、前記基材フィルムの一方の主面に形成され、酸化錫系、酸化インジウム系、酸化亜鉛系などの導電性フィラーおよび有機系バインダーからなる帯電防止層と、前記帯電防止層の表面に形成された粘着剤層とを有する帯電防止粘着フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平8−245932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1で提案される帯電防止粘着フィルムでは、基材フィルムと粘着剤層との密着力を十分に確保することが困難となる。
本発明の目的は、粘着フィルムの帯電を防止して、被着体から剥離する時の剥離帯電を有効に防止することができるとともに、基材と粘着剤層との密着力の向上を図ることのできる、粘着フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の粘着フィルムは、基材と、前記基材の片面または両面に積層された粘着剤層と、前記基材および前記粘着剤層の間に介在され、有機金属化合物を含む下塗り層とを備えていることを特徴としている。
また、本発明の粘着フィルムでは、前記下塗り層が、樹脂を含むことが好適である。
また、本発明の粘着フィルムでは、前記有機金属化合物が、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物および有機アルミニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好適である。
【0007】
また、本発明の粘着フィルムでは、前記粘着剤層が、反応性官能基を有することが好適である。
また、本発明の粘着フィルムでは、前記樹脂が、反応性官能基を有することが好適である。
また、本発明の粘着フィルムでは、前記粘着剤層が、水分散型アクリル系粘着剤であることが好適である。
【0008】
また、本発明の粘着フィルムでは、前記基材が、光学フィルムであることが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の粘着フィルムでは、下塗り層が有機金属化合物を含んでいるので、帯電しにくく、しかも、基材と粘着剤層との密着力を高めることができる。そのため、本発明の粘着フィルムは、被着体から剥離する時の剥離帯電を有効に防止でき、かつ、基材と粘着剤層との密着力の高い粘着フィルムとして、各種産業分野に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の粘着フィルムは、基材と、基材の片面または両面に積層された粘着剤層と、基材および粘着剤層の間に介在され、有機金属化合物を含む下塗り層とを備えている。
本発明において、粘着剤層に用いられる粘着剤としては、粘着剤層に通常使用される粘着剤が挙げられ、例えば、アクリル系粘着剤、天然ゴムラテックス系粘着剤などが挙げられる。好ましくは、アクリル系粘着剤が挙げられ、さらに好ましくは、水分散型アクリル系粘着剤が挙げられる。
【0011】
アクリル系粘着剤は、主成分として、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、それ以外の成分として、反応性官能基を有する反応性官能基含有ビニルモノマーと、上記モノマー((メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび反応性官能基含有ビニルモノマー)と共重合可能な共重合性ビニルモノマーとを含有するビニルモノマー混合物を重合することにより得ることができる。
【0012】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、メタクリル酸アルキルエステルおよび/またはアクリル酸アルキルエステルであって、例えば、下記の一般式(1)で表される。
【0013】
【化1】

【0014】
(一般式(1)中、Rは、水素原子またはメチル基を、Rは、炭素数4〜18の直鎖または分岐のアルキル基を示す。)
としては、例えば、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、2−エチルへキシル基、イソオクチル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基などが挙げられる。
【0015】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸へプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシルなどの(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数4〜18の直鎖または分岐アルキル)エステルなどが挙げられる。これら(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独または併用して用いられる。
【0016】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの配合割合は、ビニルモノマー混合物の総量100重量部に対して、60〜99.5重量部、好ましくは、80〜99重量部、さらに好ましくは、80〜98重量部である。
反応性官能基含有ビニルモノマーが含有する反応性官能基としては、例えば、カルボキシル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、アミド基、アミノ基、シアノ基、イミド基、スルホン酸基、イソシアネート基などが挙げられる。好ましくは、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基が挙げられ、さらに好ましくは、カルボキシル基が挙げられる。
【0017】
反応性官能基含有ビニルモノマーとしては、具体的には、カルボキシル基含有ビニルモノマーとして、例えば、(メタ)アクリル酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、ケイ皮酸などの不飽和カルボン酸、例えば、無水フマル酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和ジカルボン酸無水物、例えば、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノブチル、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸などの不飽和ジカルボン酸モノエステル、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルトリメリット酸、2−メタクリロイルオキシエチルピロメリット酸などの不飽和トリカルボン酸モノエステル、例えば、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレートなどのカルボキシアルキルアクリレートなどが挙げられる。
【0018】
また、反応性官能基含有ビニルモノマーとしては、上記したカルボキシル基含有ビニルモノマーの他に、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸メチルグリシジルなどのエポキシ基含有ビニルモノマー、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシブチルなどの1価のヒドロキシル基含有ビニルモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸エチレングリコール、(メタ)アクリル酸プロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシプロピレングリコールなどの2価のヒドロキシル基含有ビニルモノマー、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メチロールプロパン(メタ)アクリルアミド、N−ビニルカルボン酸アミドなどのアミド基含有ビニルモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどのアミノ基含有ビニルモノマー、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアノ基含有ビニルモノマー、例えば、N−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−ラウリルマレイミド、N−フェニルマレイミドなどのマレイミド系のイミド基含有ビニルモノマー、例えば、N−メチルイタコンイミド、N−エチルイタコンイミド、N−ブチルイタコンイミド、N−オクチルイタコンイミド、N−2−エチルヘキシルイタコンイミド、N−シクロヘキシルイタコンイミド、N−ラウリルイタコンイミドなどのイタコンイミド系のイミド基ビニル含有モノマー、例えば、N−(メタ)アクリロイルオキシメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−6−オキシヘキサメチレンスクシンイミド、N−(メタ)アクリロイル−8−オキシオクタメチレンスクシンイミドなどのスクシンイミド系のイミド基含有ビニルモノマー、例えば、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸などのスルホン酸基含有ビニルモノマー、例えば、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基含有ビニルモノマーなどが挙げられる。
【0019】
これら反応性官能基含有ビニルモノマーのうち、好ましくは、カルボキシル基含有ビニルモノマー、ヒドロキシル基含有ビニルモノマー、アミノ基含有ビニルモノマーが挙げられ、さらに好ましくは、カルボキシル基含有ビニルモノマーが挙げられる。
反応性官能基含有ビニルモノマーの配合割合は、ビニルモノマー混合物の総量100重量部に対して、0.5〜15重量部、好ましくは、0.5〜10重量部、さらに好ましくは、1〜10重量部である。
【0020】
共重合性ビニルモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類、例えば、エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレンなどのオレフィン系モノマー、例えば、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロペンチル、(メタ)アクリル酸ボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの(メタ)アクリル酸脂環式炭化水素エステル、例えば、(メタ)アクリル酸フェニルなどの(メタ)アクリル酸アリールエステル、例えば、スチレン、ビニルトルエンなどの芳香族系ビニルモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピルなどの(メタ)アクリル酸アルキル(炭素数1〜3の直鎖または分岐アルキル)エステル、例えば、(メタ)アクリロイルモルホリン、(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N−ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸t−ブチルアミノエチルなどの窒素原子含有ビニルモノマー、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチルなどのアルコキシ基含有ビニルモノマー、例えば、ビニルエーテルなどのビニルエーテル系モノマー、例えば、塩化ビニルなどのハロゲン原子含有モノマー、例えば、N−ビニルピロリドン、N−(1−メチルビニル)ピロリドン、N−ビニルピリジン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルピリミジン、N−ビニルピペラジン、N−ビニルピラジン、N−ビニルピロール、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルオキサゾール、N−ビニルモルホリン、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルなどのビニル基含有複素環化合物、例えば、ハロゲン原子を含有するアクリル酸エステル系モノマーなどが挙げられる。
【0021】
また、共重合性ビニルモノマーとしては、多官能性モノマーが挙げられる。
多官能性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの(モノまたはポリ)アルキレンポリオールポリ(メタ)アクリレートや、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。また、多官能性モノマーとして、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレートなども挙げられる。
【0022】
さらにまた、共重合性ビニルモノマーとしては、アルコキシシリル基含有ビニルモノマーが挙げられる。
アルコキシシリル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、シリコーン系(メタ)アクリレートモノマーやシリコーン系ビニルモノマーなどが挙げられる。
シリコーン系(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−トリエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−トリブトキシシラン、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−トリメトキシシラン、10−(メタ)アクリロイルオキシデシル−トリエトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキル−トリアルコキシシラン、例えば、(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチル−メチルジエトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジメトキシシラン、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−メチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−メチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジイソプロポキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−エチルジブトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル−プロピルジエトキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキル−アルキルジアルコキシシランや、これらに対応する(メタ)アクリロイルオキシアルキル−ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどの(メタ)アクリロイルオキシアルキルシラン誘導体が挙げられる。
【0023】
シリコーン系ビニルモノマーとしては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリブトキシシランなどのビニルトリアルコキシシラン、および、これらに対応するビニルアルキルジアルコキシシランやビニルジアルキルアルコキシシラン、例えば、ビニルメチルトリメトキシシラン、ビニルメチルトリエトキシシラン、β−ビニルエチルトリメトキシシラン、β−ビニルエチルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリメトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリエトキシシラン、γ−ビニルプロピルトリプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリイソプロポキシシラン、γ−ビニルプロピルトリブトキシシラン、4−ビニルブチルトリメトキシシラン、4−ビニルブチルトリエトキシシラン、8−ビニルオクチルトリメトキシシラン、8−ビニルオクチルトリエトキシシランなどのビニルアルキルトリアルコキシシラン、および、これらに対応する(ビニルアルキル)アルキルジアルコキシシランや(ビニルアルキル)ジアルキル(モノ)アルコキシシランなどが挙げられる。
【0024】
これら共重合性ビニルモノマーは、単独または併用して用いられる。
これら共重合性ビニルモノマーのうち、好ましくは、アルコキシシリル基含有ビニルモノマーが挙げられる。アルコキシシリル基含有ビニルモノマーを用いることにより、共重合体にアルコキシシリル基が導入され、それら同士の反応により架橋構造を形成することができる。水分散型アクリル系粘着剤では、後述する架橋剤では不均一な架橋構造となるが、アルコキシシリル基含有ビニルモノマーを用いると、均一な架橋構造を形成することができる。
【0025】
共重合性ビニルモノマーの配合割合は、ビニルモノマー混合物の総量100重量部に対して、例えば、39.5重量部以下、好ましくは、19重量部以下、さらに好ましくは、18重量部以下である。
共重合性ビニルモノマーとして、アルコキシシリル基含有ビニルモノマーを配合する場合には、その配合割合は、ビニルモノマー混合物の総量100重量部に対して、例えば、0.001〜1重量部、好ましくは、0.01〜0.1重量部である。
【0026】
アクリル系粘着剤は、上記したビニルモノマー混合物を、重合することにより、得ることができる。
上記したビニルモノマー混合物を重合するには、例えば、乳化重合などの公知の重合方法が用いられる。
乳化重合では、例えば、上記したビニルモノマー混合物とともに、乳化剤、重合開始剤、必要に応じて連鎖移動剤などを、水中において適宜配合して共重合する。より具体的には、例えば、一括仕込み法(一括重合法)、モノマー滴下法、モノマーエマルション滴下法またはこれらを併用するなど、公知の乳化重合法を採用することができる。なお、モノマー滴下法やモノマーエマルション滴下法では、連続滴下または分割滴下が適宜選択される。反応条件などは、重合開始剤の種類などに応じて適宜選択されるが、重合温度は、例えば、20〜90℃である。
【0027】
乳化剤としては、特に制限されず、乳化重合に通常使用される公知の乳化剤が用いられる。例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのアニオン系乳化剤、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどのノニオン系乳化剤などが挙げられる。
【0028】
また、これらアニオン系乳化剤やノニオン系乳化剤に、プロペニル基やアリルエーテル基などのラジカル重合性官能基(ラジカル反応性基)が導入されたラジカル重合性(反応性)乳化剤(例えば、アクアロンHS−10、第一工業製薬(株)製)なども挙げられる。
これら乳化剤は、単独または併用して用いられる。
【0029】
乳化剤の配合割合は、ビニルモノマー混合物の総量100重量部に対して、例えば、0.2〜10重量部、好ましくは、0.5〜5重量部程度である。
重合開始剤としては、特に制限されず、乳化重合に通常使用される重合開始剤が用いられる。例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二硫酸塩、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチルアミジン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩などのアゾ系開始剤、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩系開始剤、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過酸化水素などの過酸化物系開始剤、例えば、フェニル置換エタンなどの置換エタン系開始剤、例えば、芳香族カルボニル化合物などのカルボニル系開始剤、例えば、過硫酸塩と亜硫酸水素ナトリウムとの組合せ、過酸化物とアスコルビン酸ナトリウムとの組合せなどのレドックス系開始剤(過酸化物と還元剤との組合せ)などが挙げられる。
【0030】
重合開始剤は、水溶性または油溶性のどちらであってもよく、これら重合開始剤は、単独または併用して用いられる。
重合開始剤の配合割合は、ビニルモノマー混合物の総量100重量部に対して、例えば、0.005〜1重量部である。
なお、上記したビニルモノマー混合物に、重合開始剤を配合する前、または配合しながら、窒素置換によって、ビニルモノマー混合物中の溶存酸素濃度を低減してもよい。
【0031】
連鎖移動剤は、必要により配合され、アクリル系粘着剤の分子量を調節するものであって、乳化重合に通常使用される連鎖移動剤が用いられる。例えば、1−ドデカンチオール、メルカプト酢酸、2−メルカプトエタノール、チオグリコール酸2−エチルへキシル、2,3−ジメチルカプト−1−プロパノールなどのメルカプタン類などが挙げられる。
これら連鎖移動剤は、単独または併用して用いられる。
【0032】
連鎖移動剤の配合割合は、ビニルモノマー混合物の総量100重量部に対して、例えば、0.001〜0.5重量部程度である。
このような乳化重合によって、得られたアクリル系粘着剤を、水分散型アクリル系粘着剤、すなわち、エマルション(水分散液)として、調製することができる。
調製されたアクリル系粘着剤の固形分濃度は、例えば、10〜80重量%、好ましくは、20〜60重量%である。
【0033】
なお、アクリル系粘着剤は、例えば、上記したビニルモノマー混合物を、乳化重合以外の有機溶剤を使用しない方法(例えば、懸濁重合など)によって重合した後に、必要に応じて上記した乳化剤により、水分散型アクリル系粘着剤、すなわち、エマルション(水分散液)として、調製することができる。
また、アクリル系粘着剤のエマルション粒子の平均粒子径は、例えば、0.05〜10μm、好ましくは、0.1〜1μm程度である。
【0034】
また、アクリル系粘着剤には、その目的および用途に応じて、必要により、架橋剤を配合してもよい。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤などが挙げられる。なお、これら架橋剤は、特に制限されず、油溶性または水溶性の架橋剤が用いられる。これら架橋剤は、単独または併用して用いられ、その配合割合は、アクリル系粘着剤の固形分100重量部に対して、例えば、0.1〜10重量部である。
【0035】
また、エマルションの安定性を向上する目的で、例えば、アンモニア水などにより、例えば、pH7〜9、好ましくは、pH7〜8に調整される。
さらに、粘着剤には、粘度調整剤、必要に応じて、剥離調整剤、可塑剤、軟化剤、充填剤、着色剤(顔料、染料など)、老化防止剤、界面活性剤など、アクリル系粘着剤に通常添加される添加剤を、適宜、添加してもよい。これら添加剤の配合割合は、特に制限されず、適宜、選択することができる。
【0036】
粘度調整剤としては、特に制限されず、例えば、アクリル系増粘剤などが挙げられる。
このような水分散型アクリル系粘着剤は、その固形分のゲル分率が、例えば、50〜100重量%、好ましくは、70〜100重量%である。ゲル分率が上記した値より低いと、この水分散型アクリル系粘着剤を粘着型光学フィルムに適用して、高温高湿の雰囲気下で使用したときに、発泡や剥がれを生じる場合がある。
【0037】
本発明において、下塗り層は、有機金属化合物を含んでいる。
有機金属化合物は、例えば、ポリマー架橋剤として用いられる、金属アルコキシド、金属キレート、有機金属塩、有機金属酸化物などであって、金属の種類により、例えば、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物などが挙げられる。
有機ジルコニウム化合物としては、例えば、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムキレート、ジルコニウムアシレートなどが挙げられる。
【0038】
有機チタン化合物としては、例えば、チタンアルコキシド、チタンキレート、チタンアシレートなどが挙げられる。
有機アルミニウム化合物としては、例えば、アルミニウムアルコキシド、アルミニウムキレート、アルミニウムアシレートなどが挙げられる。
このような有機金属化合物は、通常、その金属含有割合が、0.1〜20重量%、好ましくは、1〜15重量%となるように、有機溶剤や水などに溶解または分散して調製されている。
【0039】
また、本発明の粘着フィルムでは、下塗り層は、好ましくは、樹脂を含んでいる。
樹脂としては、特に制限されず、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂などが挙げられ、好ましくは、これらの樹脂を反応性官能基で変性した樹脂などが挙げられる。
反応性官能基としては、例えば、カルボキシル基、ヒドロキシル基、オキサゾリン基、アミノ基、好ましくは、オキサゾリン基、アミノ基などが挙げられる。
【0040】
オキサゾリン基としては、例えば、2−オキサゾリン基、3−オキサゾリン基、4−オキサゾリン基などが挙げられ、好ましくは、2−オキサゾリン基が挙げられる。
2−オキサゾリン基としては、一般に、下記一般式(2)で表される。
【0041】
【化2】

【0042】
(一般式(2)中、R11、R12、R13、R14は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、フェニル基または置換フェニル基を示す。)
アミノ基としては、例えば、1級アミノ基、2級アミノ基などが挙げられる。
反応性官能基で変性した樹脂として、より具体的には、例えば、反応性官能基がオキサゾリン基である場合には、アクリル骨格またはスチレン骨格からなる主鎖を含み、その主鎖の側鎖にオキサゾリン基を有しているものであって、好ましくは、アクリル骨格からなる主鎖を含み、その主鎖の側鎖にオキサゾリン基を有しているオキサゾリン基含有アクリル系ポリマーが挙げられ、例えば、反応性官能基がアミノ基である場合には、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、その他に、アクリル骨格からなる主鎖を含み、その主鎖の側鎖に、下記一般式(3)で表されるポリエチレンイミン鎖や下記一般式(4)で表されるポリアリルアミン鎖が変性された、エチレンイミン変性アクリル系樹脂やアリルアミン変性アクリル系樹脂などが挙げられる。
【0043】
【化3】

【0044】
(一般式(3)中、xおよびyは、ポリエチレンイミン鎖の重合度を示す。)
【0045】
【化4】

【0046】
(一般式(4)中、zは、ポリアリルアミン鎖の重合度を示す。)
このような樹脂は、通常、その固形分の配合割合が、0.01〜15重量%、好ましくは、0.05〜5重量%となるように、有機溶剤や水などに溶解または分散して調製されている。
このような樹脂は、単独または併用して用いられる。
【0047】
下塗り層が有機金属化合物を含むことにより、基材と粘着剤層との密着力を高めることができる。また、このような反応性官能基は、有機金属化合物と反応するため、下塗り層の樹脂同士が架橋され、強靱な下塗り層を形成することができる。さらにまた、下塗り層の樹脂と粘着剤層のアクリル系粘着剤との間も架橋され、基材と粘着剤層との密着力を高めることができる。
【0048】
本発明の粘着フィルムにおいて、基材としては、特に制限されず、粘着フィルムに通常使用される基材が用いられる。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどのポリエステルフィルム、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンなどのプラスチックフィルム類、例えば、クラフト紙などの紙類、例えば、綿布、スフ布などの布類、例えば、ポリエステル不織布、ビニロン不織布などの不織布類、例えば、金属箔などが挙げられる。
【0049】
なお、基材において、下塗り層が塗工される表面には、コロナ処理、UV処理、プラズマ処理などの活性化処理を施しておいてもよい。
基材として、粘着フィルムを光学材料の表面保護に用いる場合には、好ましくは、光学特性を有する、光学フィルムが挙げられる。
光学フィルムとしては、光学特性を有するものであれば特に制限されず、例えば、偏光フィルム、位相差フィルム、輝度向上フィルム、視野角拡大フィルムなどが挙げられる。
【0050】
偏光フィルムとしては、偏光子の片面または両面に、透明保護フィルムが設けられたものが用いられる。
偏光子としては、特に制限されず、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料などの二色性物質で染色し一軸延伸したものや、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物などポリエン系配向フィルムなどが挙げられる。好ましくは、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色して一軸延伸した偏光子が挙げられる。
【0051】
透明保護フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系ポリマーフィルム、ジアセチルセルロースやトリアセチルセルロースなどのセルロース系ポリマーフィルム、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル系ポリマーフィルム、ポリスチレンやアクリロニトリル・スチレン共重合体(AS樹脂)などのスチレン系ポリマーフィルム、ポリカーボネート系ポリマーフィルムなど挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、シクロまたはノルボルネン構造を有するポリオレフィン、エチレン・プロピレン共重合体などのポリオレフィン系ポリマーフィルム、塩化ビニル系ポリマーフィルム、ナイロン、芳香族ポリアミドなどのアミド系ポリマーフィルム、イミド系ポリマーフィルム、スルホン系ポリマーフィルム、ポリエーテルスルホン系ポリマーフィルム、ポリエーテルエーテルケトン系ポリマーフィルム、ポリフェニレンスルフィド系ポリマーフィルム、ビニルアルコール系ポリマーフィルム、塩化ビニリデン系ポリマーフィルム、ビニルブチラール系ポリマーフィルム、アリレート系ポリマーフィルム、ポリオキシメチレン系ポリマーフィルム、エポキシ系ポリマーフィルム、または上記したポリマーのブレンド物のフィルムなども挙げられる。
【0052】
透明保護フィルムは、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系などの熱硬化型、紫外線硬化型の樹脂の硬化層として形成することもできる。
透明保護フィルムとしては、好ましくは、セルロース系ポリマーが挙げられる。透明保護フィルムの厚さは、特に制限されず、例えば、500μm以下、好ましくは、1〜300μm、さらに好ましくは、5〜200μmである。
【0053】
偏光子と透明保護フィルムとを接着処理するには、例えば、イソシアネート系接着剤、ポリビニルアルコール系接着剤、ゼラチン系接着剤、ビニル系接着剤、ラテックス系接着剤、水系ポリエステル接着剤などを用いて接着する。
位相差フィルムとしては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどが挙げられる。位相差フィルムの厚さは、特に制限されず、例えば、20〜150μmである。
【0054】
高分子素材としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリメチルビニルエーテル、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルファイド、ポリフェニレンオキサイド、ポリアリルスルホン、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、セルロース系重合体、またはこれらの二元系、三元系各種共重合体、グラフト共重合体、ブレンド物などが挙げられる。これら高分子素材は、延伸などにより配向物(延伸フィルム)となる。
【0055】
液晶性ポリマーとしては、例えば、液晶配向性を付与する共役性の直線状原子団(メソゲン)がポリマーの主鎖や側鎖に導入された主鎖型や側鎖型の各種のものなどが挙げられる。主鎖型の液晶性ポリマーとしては、例えば、屈曲性を付与するスペーサ部でメソゲン基を結合した構造であり、具体的には、ネマチック配向性のポリエステル系液晶性ポリマー、ディスコティックポリマーやコレステリックポリマーなどが挙げられる。側鎖型の液晶性ポリマーとしては、例えば、ポリシロキサン、ポリアクリレート、ポリメタクリレートまたはポリマロネートを主鎖骨格とし、側鎖として共役性の原子団からなるスペーサ部を介してネマチック配向付与性のパラ置換環状化合物単位からなるメソゲン部を有するものなどが挙げられる。これら液晶性ポリマーは、例えば、ガラス板上に形成したポリイミドやポリビニルアルコールなどの薄膜の表面をラビング処理したもの、酸化珪素を斜方蒸着したものなどの配向処理面上に液晶性ポリマーの溶液を展開して熱処理することにより得られる。
【0056】
また、位相差フィルムは、例えば、各種波長フィルムや液晶層の複屈折による着色や視野角などの拡大を目的としたもの、その他使用目的に応じて、適宜、位相差を有するものであってよく、2種以上の位相差フィルムを積層して位相差などの光学特性を制御したものなどであってもよい。
輝度向上フィルムとしては、例えば、誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体など、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すもの、コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したものなど、左回りまたは右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどが挙げられる。
【0057】
視野角拡大フィルムは、液晶ディスプレイの画面を、画面に垂直でなくやや斜めの方向から見た場合でも、画像が比較的鮮明にみえるように視野角を広げるためのフィルムであり、例えば、位相差フィルム、液晶ポリマーなどの配向フィルムや透明基材上に液晶ポリマーなどの配向層を支持したものなどが挙げられる。視野角拡大フィルムとして用いられる位相差フィルムには、面方向に二軸に延伸された複屈折を有するポリマーフィルムや、面方向に一軸に延伸され厚さ方向にも延伸された厚さ方向の屈折率を制御した複屈折を有するポリマーや傾斜配向フィルムのような二方向延伸フィルムなどが用いられる。
【0058】
以下、図1を参照して、本発明の粘着フィルムの製造方法の一実施形態について説明する。
図1に示す粘着フィルムを得るには、まず、基材1を用意する。
基材1の厚みは、例えば、10〜1000μm、好ましくは、50〜500μmである。
【0059】
そして、この基材1の片面に、下塗り層2を積層する。
下塗り層2を設けるには、例えば、基材1に、上記した有機金属化合物と必要により樹脂とを含む下塗り液(溶液または分散液)を、コーティング法、ディッピング法、スプレー法などの公知の塗布方法により、直接塗布して乾燥する方法が挙げられる。
下塗り層2の厚みは、乾燥前の厚みが、例えば、1〜500μm、好ましくは、10〜100μm、さらに好ましくは、20〜50μmで、乾燥後の厚みが、例えば、1〜1000nm、好ましくは、10〜500nm、さらに好ましくは、20〜400nmとなるように設定する。上記した厚みの範囲内であれば、粘着フィルムおよび被着体の帯電を有効に防止することができる。
【0060】
次いで、基材1の片面に、下塗り層2を介して、粘着剤層3を設ける。
粘着剤層3を設けるには、例えば、上記した下塗り層2に、粘着剤層3が形成された離型シートから、粘着剤層3を転写する方法が挙げられる。
離型シートとしては、紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートなどの合成樹脂フィルム、ゴムシート、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、またこれら積層シート体などが挙げられる。離型シートの表面には、粘着剤層3からの離型性を高めるため、必要に応じて、シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理などの処理がなされていてもよい。
【0061】
粘着剤層3が形成された離型シートは、離型シートに、ロール、グラビア、バー、ナイフ、コンマ、ダイなどのコーターにより、アクリル系粘着剤を直接塗布し、これを乾燥して粘着剤層3を形成することにより、形成することができる。また、粘着剤層3を転写するには、粘着剤層3が形成された離型シートを、下塗り層2が設けられた基材1に、下塗り層2と粘着剤層3とが接触するように、貼り合わせた後、粘着剤層3から離型シートを引き剥がす。
【0062】
また、粘着剤層3を設けるには、例えば、上記した下塗り層2に、アクリル系粘着剤を、ロール、グラビア、バー、ナイフ、コンマ、ダイなどのコーターにより、直接塗布して、これを乾燥することにより形成することもできる。
粘着剤層3の厚み(乾燥後厚み)は、例えば、1〜100μm、好ましくは、5〜50μm、さらに好ましくは、10〜40μmの範囲に設定される。
【0063】
このようにして、基材1と、基材1の片面に積層された粘着剤層3と、基材1および粘着剤層3の間に介在される下塗り層2とを備えている粘着フィルムを得ることができる。
このようにして得られる粘着フィルムは、基材1および粘着剤層3の間に介在され、有機金属化合物を含む下塗り層2を備えているので、帯電しにくく、しかも、基材1と粘着剤層3との密着力を高めることができる。そのため、粘着フィルムは、被着体から剥離する時の剥離帯電を有効に防止でき、かつ、基材1と粘着剤層3との密着力の高い粘着フィルムとして、電気・電子、半導体、光学などの各種産業分野に用いることができる。
【0064】
この粘着フィルムは、上記した粘着フィルムの他に、例えば、粘着シート、粘着テープなどとしても用いられる。この粘着フィルムは、好ましくは、基材1として、光学フィルムを用いる粘着型光学フィルムとして用いられる。
なお、上記した説明において、下塗り層2および粘着剤層3は、基材1の片面に設けられるが、基材1の両面に設けることもできる。
【実施例】
【0065】
以下に実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の実施例および比較例に何ら制限されるものではない。なお、以下の説明において、「部」および「%」は、特に明記のない限り、重量基準である。
合成例1
(アクリル系粘着剤の調製)
容器に、アクリル酸ブチル100部、アクリル酸5部、3−メタクリロイルオキシプロピル−トリメトキシシラン(KBM−503、信越化学(株)製)0.015部を加えて混合し、ビニルモノマー混合物を調製した。次いで、調製したビニルモノマー混合物627gに、反応性乳化剤としてアクアロンHS−10(第一工業製薬(株)製)13g、イオン交換水360gを加え、ホモジナイザー(特殊機化(株)製)を用いて、5分間、6000(1/min)で、攪拌し強制乳化して、モノマープレエマルションを調製した。
【0066】
次いで、冷却管、窒素導入管、温度計および攪拌機を備えた反応容器に、上記で調製したモノマープレエマルションのうちの200g、イオン交換水330gを仕込み、次いで、反応容器を窒素置換し、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]水和物(VA−057、和光純薬工業(株)製)0.2gを添加して、撹拌しながら60℃で、1時間重合した。次いで、残りのモノマープレエマルションのうちの800gを、反応容器を60℃に保ったまま反応容器に3時間かけて滴下して、その後、3時間重合させ、固形分48%の水分散型アクリル系粘着剤のエマルションを得た。次いで、これを室温まで冷却し、10%アンモニア水を添加して、pHを8に調整した。
【0067】
(粘着剤層の形成)
調製した水分散型アクリル系粘着剤を、離型フィルム(ポリエチレンテレフタレート基材、ダイヤホイルMRF38、三菱化学ポリエステル(株)製)上に、乾燥後の厚みが21μmとなるように、塗布し、その後、熱風循環式オーブンにより、100℃で2分間加熱処理して、離型フィルム上に直接粘着剤層を形成した。
【0068】
(光学フィルムの調製)
ポリビニルアルコールフィルム(厚み80μm)を、40℃のヨウ素水溶液中で、元長の5倍に延伸し、その後、ポリビニルアルコールフィルムをヨウ素水溶液から引き上げ、50℃で、4分間乾燥させて、偏光子を得た。この偏光子の両側に、ポリビニルアルコール型接着剤を用いて、透明保護フィルムとしてトリアセチルセルロースフィルムを接着して、光学フィルムを得た。
【0069】
実施例1
(下塗り層の形成)
ベイコート20(炭酸ジルコニウムアンモニウム、(NH[Zr(CO(OH)]、ZrO含有割合20%、日本軽金属(株)製)をZrO含有割合が2%(Zr含有割合、1.48%)となるように、水/エタノール(重量比1:1)混合溶液で希釈し、下塗り液を調製した。この下塗り液を、ワイヤーバー♯5を用いて、上記光学フィルムの片面に塗布し、40℃で2分間乾燥して、下塗り層を形成した。
【0070】
(粘着フィルムの作製)
光学フィルムの下塗り層を形成した面に、下塗り層と粘着剤層とが接触するように、合成例1の離型フィルムを重ね合わせて、粘着フィルムを作製した。
実施例2
実施例1の下塗り層の形成において、下塗り液のZrO含有割合2%(Zr含有割合、1.48%)を、ZrO含有割合5%(Zr含有割合、3.70%)に変更した以外は、実施例1と同様にして、下塗り層を形成し、次いで、粘着フィルムを作製した。
【0071】
実施例3
実施例1の下塗り層の形成において、ベイコート20(炭酸ジルコニウムアンモニウム、(NH[Zr(CO(OH)]、ZrO含有割合20%、日本軽金属(株)製)を、オルガチックスZB−120(塩化ジルコニウム化合物、ZrO含有割合15%、松本製薬工業(株)製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、下塗り層を形成し、次いで、粘着フィルムを作製した。
【0072】
実施例4
実施例3の下塗り層の形成において、下塗り液のZrO含有割合2%(Zr含有割合、1.48%)を、ZrO含有割合5%(Zr含有割合、3.70%)に変更した以外は、実施例3と同様にして、下塗り層を形成し、次いで、粘着フィルムを作製した。
実施例5
実施例3の下塗り層の形成において、下塗り液のZrO含有割合2%(Zr含有割合、1.48%)を、ZrO含有割合10%(Zr含有割合、7.40%)に変更した以外は、実施例3と同様にして、下塗り層を形成し、次いで、粘着フィルムを作製した。
【0073】
実施例6
実施例1の下塗り層の形成において、ベイコート20(炭酸ジルコニウムアンモニウム、(NH[Zr(CO(OH)]、ZrO含有割合20%、日本軽金属(株)製)を、オルガチックスZB−125(塩化ジルコニウム化合物、ZrO含有割合15%、松本製薬工業(株)製)に変更した以外は、実施例1と同様にして、下塗り層を形成し、次いで、粘着フィルムを作製した。
【0074】
実施例7
実施例6の下塗り層の形成において、下塗り液のZrO含有割合2%(Zr含有割合、1.48%)を、ZrO含有割合5%(Zr含有割合、3.70%)に変更した以外は、実施例6と同様にして、下塗り層を形成し、次いで、粘着フィルムを作製した。
実施例8
実施例6の下塗り層の形成において、下塗り液のZrO含有割合2%(Zr含有割合、1.48%)を、ZrO含有割合10%(Zr含有割合、7.40%)に変更した以外は、実施例6と同様にして、下塗り層を形成し、次いで、粘着フィルムを作製した。
【0075】
実施例9
実施例1の下塗り層の形成において、ベイコート20(炭酸ジルコニウムアンモニウム、(NH[Zr(CO(OH)]、ZrO含有割合20%、日本軽金属(株)製)を、オルガチックスTC−310(チタンラクテート、(OH)Ti(C、Ti含有割合8%、松本製薬工業(株)製)に変更し、下塗り液のTi含有割合を2%になるように調製した以外は、実施例1と同様にして、下塗り層を形成し、次いで、粘着フィルムを作製した。
【0076】
実施例10
実施例9の下塗り層の形成において、下塗り液のTi含有割合2%を、Ti含有割合5%に変更した以外は、実施例9と同様にして、下塗り層を形成し、次いで、粘着フィルムを作製した。
実施例11
実施例9の下塗り層の形成において、下塗り液のTi含有割合2%を、Ti含有割合7%に変更した以外は、実施例9と同様にして、下塗り層を形成し、次いで、粘着フィルムを作製した。
【0077】
実施例12
実施例1の下塗り層の形成において、ベイコート20(炭酸ジルコニウムアンモニウム、(NH[Zr(CO(OH)]、ZrO含有割合20%、日本軽金属(株)製)を、オルガチックスTC−400((ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、(CO)Ti(C14N)、Ti含有割合8%、松本製薬工業(株)製)に変更し、下塗り液のTi含有割合を2%になるように調製した以外は、実施例1と同様にして、下塗り層を形成し、次いで、粘着フィルムを作製した。
【0078】
実施例13
実施例12の下塗り層の形成において、下塗り液のTi含有割合2%を、Ti含有割合5%に変更した以外は、実施例12と同様にして、下塗り層を形成し、次いで、粘着フィルムを作製した。
実施例14
(下塗り層の形成)
ベイコート20(炭酸ジルコニウムアンモニウム、(NH[Zr(CO(OH)]、ZrO含有割合20%、日本軽金属(株)製)をZrO含有割合が2%(Zr含有割合、1.48%)となるように、さらに、ポリメントSK−1000(エチレンイミン変性アクリル系樹脂、固形分38%、(株)日本触媒製)の固形分が2%となるように、水で希釈し、下塗り液を調製した。この下塗り液を、ワイヤーバー♯5を用いて、上記光学フィルムの片面に塗布し、40℃で2分間乾燥して、下塗り層を形成した。
【0079】
(粘着フィルムの作製)
光学フィルムの下塗り層を形成した面に、下塗り層と粘着剤層とが接触するように、合成例1の離型フィルムを重ね合わせて、粘着フィルムを作製した。
実施例15
実施例14の下塗り層の形成において、ZrO含有割合2%(Zr含有割合、1.48%)を、ZrO含有割合5%(Zr含有割合、3.70%)に変更した以外は、実施例14と同様にして、下塗り層を形成し、次いで、粘着フィルムを作製した。
【0080】
実施例16
実施例14の下塗り層の形成において、ZrO含有割合2%(Zr含有割合、1.48%)を、ZrO含有割合10%(Zr含有割合、7.40%)に変更した以外は、実施例14と同様にして、下塗り層を形成し、次いで、粘着フィルムを作製した。
実施例17
実施例14の下塗り層の形成において、ベイコート20(炭酸ジルコニウムアンモニウム、(NH[Zr(CO(OH)]、ZrO含有割合20%、日本軽金属(株)製)を、オルガチックスZB−125(塩化ジルコニウム化合物、ZrO含有割合15%、松本製薬工業(株)製)に変更した以外は、実施例14と同様にして、下塗り層を形成し、次いで、粘着フィルムを作製した。
【0081】
実施例18
実施例17の下塗り層の形成において、ZrO含有割合2%(Zr含有割合、1.48%)を、ZrO含有割合5%(Zr含有割合、3.70%)に変更した以外は、実施例17と同様にして、下塗り層を形成し、次いで、粘着フィルムを作製した。
実施例19
実施例14の下塗り層の形成において、ベイコート20(炭酸ジルコニウムアンモニウム、(NH[Zr(CO(OH)]、ZrO含有割合20%、日本軽金属(株)製)を、オルガチックスTC−400((ジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネート)、(CO)Ti(C14N)、Ti含有割合8%、松本製薬工業(株)製)に変更し、下塗り液のTi含有割合を2%になるように調製した以外は、実施例14と同様にして、下塗り層を形成し、次いで、粘着フィルムを作製した。
【0082】
実施例20
実施例19の下塗り層の形成において、Ti含有割合2%を、Ti含有割合5%に変更した以外は、実施例19と同様にして、下塗り層を形成し、次いで、粘着フィルムを作製した。
実施例21
(下塗り層の形成)
オルガチックスZB−120(塩化ジルコニウム化合物、ZrO含有割合15%、松本製薬工業(株)製)をZrO含有割合が5%となるように、さらに、ボンコート5030(アクリル/ウレタンハイブリッドエマルション、固形分50%、大日本インキ(株)製)の固形分が2%となるように、水で希釈し、下塗り液を調製した。この下塗り液を、ワイヤーバー♯5を用いて、上記光学フィルムの片面に塗布し、40℃で2分間乾燥して、下塗り層を形成した。
【0083】
(粘着フィルムの作製)
光学フィルムの下塗り層を形成した面に、下塗り層と粘着剤層とが接触するように、合成例1の離型フィルムを重ね合わせて、粘着フィルムを作製した。
実施例22
(下塗り層の形成)
オルガチックスTC−310(チタンラクテート、(OH)Ti(C、Ti含有割合8%、松本製薬工業(株)製)をTi含有割合が5%となるように、さらに、ボンコート5030(アクリル/ウレタンハイブリッドエマルション、固形分50%、大日本インキ(株)製)の固形分が2%となるように、水で希釈し、下塗り液を調製した。この下塗り液を、ワイヤーバー♯5を用いて、上記光学フィルムの片面に塗布し、40℃で2分間乾燥して、下塗り層を形成した。
【0084】
(粘着フィルムの作製)
光学フィルムの下塗り層を形成した面に、下塗り層と粘着剤層とが接触するように、合成例1の離型フィルムを重ね合わせて、粘着フィルムを作製した。
実施例23
実施例4の粘着フィルムの作製において、光学フィルムを、ポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーS−10♯50、東レ(株)製)に変更した以外は、実施例4と同様にして、粘着フィルムを作製した。
【0085】
実施例24
実施例17の粘着フィルムの作製において、光学フィルムを、ポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーS−10♯50、東レ(株)製)に変更した以外は、実施例17と同様にして、粘着フィルムを作製した。
実施例25
実施例21の粘着フィルムの作製において、光学フィルムを、ポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーS−10♯50、東レ(株)製)に変更した以外は、実施例21と同様にして、粘着フィルムを作製した。
【0086】
実施例26
実施例22の粘着フィルムの作製において、光学フィルムを、ポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーS−10♯50、東レ(株)製)に変更した以外は、実施例22と同様にして、粘着フィルムを作製した。
実施例27
(下塗り層の形成)
オルガチックスZB−125(塩化ジルコニウム化合物、ZrO含有割合15%、松本製薬工業(株)製)をZrO含有割合が2%(Zr含有割合、1.48%)となるように、さらに、エポクロスWS−700(オキサゾリン基含有アクリル系樹脂、固形分25%、(株)日本触媒製))の固形分が2%となるように、水で希釈し、下塗り液を調製した。この下塗り液を、ワイヤーバー♯5を用いて、上記光学フィルムの片面に塗布し、40℃で2分間乾燥して、下塗り層を形成した。
【0087】
(粘着フィルムの作製)
光学フィルムの下塗り層を形成した面に、下塗り層と粘着剤層とが接触するように、合成例1の離型フィルムを重ね合わせて、粘着フィルムを作製した。
実施例28
(下塗り層の形成)
オルガチックスZB−125(塩化ジルコニウム化合物、ZrO含有割合15%、松本製薬工業(株)製)をZrO含有割合が2%(Zr含有割合、1.48%)となるように、さらに、ポリメントSK−1000(エチレンイミン変性アクリル系樹脂、固形分38%、(株)日本触媒製)の固形分が1.9%となるように、さらにまた、エポクロスWS−700(オキサゾリン基含有アクリル系樹脂、固形分25%、(株)日本触媒製))の固形分が0.1%となるように、水で希釈し、下塗り液を調製した。この下塗り液を、ワイヤーバー♯5を用いて、上記光学フィルムの片面に塗布し、40℃で2分間乾燥して、下塗り層を形成した。
【0088】
(粘着フィルムの作製)
光学フィルムの下塗り層を形成した面に、下塗り層と粘着剤層とが接触するように、合成例1の離型フィルムを重ね合わせて、粘着フィルムを作製した。
比較例1
上記光学フィルムの片面に、合成例1の離型フィルムを重ね合わせて、粘着フィルムを作製した。
【0089】
比較例2
ポリエチレンテレフタレートフィルム(ルミラーS−10♯50、東レ(株)製)の片面に、合成例1の離型フィルムを重ね合わせて、粘着フィルムを作製した。
(評価)
1)光学フィルムの表面抵抗
各実施例および各比較例において、抵抗率計(Hiresta−Up MCP−HT450、(株)ダイアインスツルメンツ製)により、USRプローブを用い、印加電圧500Vで、光学フィルムの下塗り層を形成した面の表面抵抗を測定した。その結果を表1に示す。
【0090】
2)粘着剤層の表面抵抗
各実施例および各比較例において、粘着フィルムの離型フィルムを剥離した。次いで、抵抗率計(Hiresta−Up MCP−HT450、(株)ダイアインスツルメンツ製)により、USRプローブを用い、印加電圧500Vで、剥離した粘着剤層の表面抵抗を測定した。その結果を表1に示す。
【0091】
3)基材と粘着剤層との初期密着力
各実施例および各比較例の粘着フィルムを、25×120mmの大きさに切断し、これをサンプルとした。このサンプルの離型フィルムを剥離し、サンプルの粘着面にポリプロピレン多孔質膜を貼着し、このポリプロピレン多孔質膜上に粘着テープ(No.31B、日東電工(株)製)を貼着して補強した後、24時間以上、23℃、60%RHの雰囲気下で放置した。その後、放置後の粘着フィルムの背面(粘着フィルムの光学フィルム側の面)に、SUS304鋼板を両面テープを用いて貼り付け、引張試験機により180°方向に300mm/minの速度で、ポリプロピレン多孔質膜と、サンプルとの界面で剥離し、粘着剤層がポリプロピレン多孔質膜側に付着していることを確認した後、剥離応力を測定した。その結果を表1に示す。
【0092】
4)基材と粘着剤層との経時密着力
各実施例および各比較例の粘着フィルムを、25×120mmの大きさに切断し、これをサンプルとした。このサンプルを、50℃の雰囲気下で、それぞれ7日間エージングした。エージング後、サンプルの離型フィルムを剥離し、サンプルの粘着面にポリプロピレン多孔質膜を貼着し、このポリプロピレン多孔質膜上に粘着テープ(No.31B、日東電工(株)製)を貼着して補強した後、24時間以上、23℃、60%RHの雰囲気下で放置した。その後、放置後の粘着フィルムの背面(粘着フィルムの光学フィルム側の面)に、SUS304鋼板を両面テープを用いて貼り付け、引張試験機により180°方向に300mm/minの速度で、ポリプロピレン多孔質膜と、サンプルとの界面で剥離し、粘着剤層がポリプロピレン多孔質膜側に付着していることを確認した後、剥離応力を測定した。その結果を表1に示す。
【0093】
表1から分かるように、下塗り層が有機金属化合物を含むことにより、帯電を防止でき、密着力が高くなることが分かる。また、下塗り層が樹脂を含むことにより、密着力がより高くなることが分かる。粘着フィルムは、エージングにより、密着力がさらに高くなることが分かる。
【0094】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明の粘着フィルムの一実施形態である粘着型光学フィルムの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0096】
1 基材
2 下塗り層
3 粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の片面または両面に積層された粘着剤層と、
前記基材および前記粘着剤層の間に介在され、有機金属化合物を含む下塗り層と
を備えていることを特徴とする、粘着フィルム。
【請求項2】
前記下塗り層が、樹脂を含むことを特徴とする、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項3】
前記有機金属化合物が、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物および有機アルミニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする、請求項1または2に記載の粘着フィルム。
【請求項4】
前記粘着剤層が、反応性官能基を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の粘着フィルム。
【請求項5】
前記樹脂が、反応性官能基を有することを特徴とする、請求項2〜4のいずれかに記載の粘着フィルム。
【請求項6】
前記粘着剤層が、水分散型アクリル系粘着剤であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の粘着フィルム。
【請求項7】
前記基材が、光学フィルムであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の粘着フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2007−70611(P2007−70611A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213778(P2006−213778)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】