説明

粘着フィルム

【課題】主波長1.0μm〜1.1μmの短波長レーザで切断される用途に適した粘着フィルムを提供する。
【解決手段】本発明に係る粘着フィルム1は、基材としての樹脂フィルム10と、樹脂フィルム10の少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層20とを備える。基材10は、波長1000nm〜1100nmの範囲におけるレーザ光吸収率が20%以上であって、上記レーザ光の吸収率を高めるレーザ光吸収剤402を備えたレーザ光吸収層42を包含する。レーザ光吸収剤402としては、金属粉末および金属化合物粉末から選択される少なくとも一種を好ましく使用し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上に粘着剤が支持された粘着フィルムに関し、詳しくは、特定波長域のレーザ光で切断される用途に好適な粘着フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光による加工技術は、各種材料の切断や孔あけ等に広く用いられている。加工に使用するレーザの代表例として、炭酸ガスレーザが挙げられる。かかるレーザ加工の一態様として、補助材料としての粘着シートをワークのレーザ光照射面に貼り付けておき、その粘着フィルムの上からレーザ光を照射して、該粘着フィルムごと上記ワークをレーザ加工する態様が例示される。例えば、特許文献1には、銅張板の銅箔面に補助シートの粘着面を圧着し、該補助シートの上から炭酸ガスレーザを照射して上記銅張板に孔をあけることにより孔信頼性や作業性等を向上させる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−235194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、短波長のレーザ光を用いた加工技術に対する関心が高まっている。例えば、炭酸ガスレーザ(主波長9.3μm〜10.6μm程度)に代えて、主波長1.0μm〜1.1μm程度の短波長レーザを用いてレーザ加工を行いたいとの要請がある。しかし、かかる短波長のレーザ光を用いたレーザ加工において、これまで炭酸ガスレーザによるレーザ加工に利用されてきた粘着フィルムをそのまま転用すると、該粘着フィルムを高品質に切断することができず、レーザ加工の効率や精度が不足しがちとなる場合があった。本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであって、主波長1.0μm〜1.1μmの短波長レーザで切断される用途に適した粘着フィルムを提供することを目的とする。なお、ここに開示されるレーザ光を用いた加工技術は、レーザアブレーションとは異なり、パルス幅が長い(より具体的には、μsオーダーから連続出力の)YAGレーザを用いる切断等の、通常のレーザ加工に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によると、基材としての樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備えた粘着フィルムが提供される。前記基材は、波長1000nm〜1100nmの範囲におけるレーザ光吸収率が20%以上である。前記基材は、前記レーザ光吸収率を高めるレーザ光吸収剤を備えたレーザ光吸収層を包含する。
【0006】
かかる構成の粘着フィルムは、波長1000nm〜1100nmの範囲(以下「特定波長域」ともいう。)におけるレーザ光吸収率が少なくとも20%(典型的には20%〜95%)と高い基材を具備するので、主波長が上記特定波長域にあるレーザ光(以下「特定レーザ光」ともいう。)を効率よく吸収することができる。したがって、上記吸収された特定レーザ光のエネルギーを利用して上記粘着フィルムを効果的に切断する(典型的には、上記特定レーザ光が照射された箇所の粘着フィルムを分解して消失させることで上記粘着フィルムを切断する)ことができる。
【0007】
なお、本明細書において「レーザ光吸収率」とは、分光光度計(例えば、株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計、型式「U−4100」またはその相当品)を用いて測定されるサンプルの透過率T(%)および反射率R(%)から、以下の式(I)により算出される値をいうものとする。
吸収率A(%)=100(%)−T(%)−R(%) (I)
また、「波長1000nm〜1100nmの範囲におけるレーザ光吸収率」とは、当該波長範囲における最小のレーザ光吸収率(以下、「Amin(1000,
1100)」と表すこともある。)を指すものとする。本明細書において「レーザ光吸収剤」とは、当該レーザ光吸収剤を用いない場合に比べてレーザ光吸収率Amin(1000, 1100)を上昇させる作用を発揮し得る材料をいう。
【0008】
前記レーザ光吸収層は、前記レーザ光吸収剤として、金属粉末および金属化合物粉末から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。かかるレーザ光吸収剤は、概して熱安定性に優れるので、上記粘着フィルムが上記特定レーザ光により加熱されて切断されるまで(典型的には、前記粘着フィルムを構成する樹脂成分が熱により分解・消失するまで)の間、該特定レーザ光を吸収する機能を適切に維持することができる。
【0009】
ここに開示される技術の好ましい一態様では、前記基材が、以下の条件(1)および(2)を満たすレーザ光吸収層を包含する。
(1)前記レーザ光吸収剤を0.01〜5質量%含む樹脂組成物からなる。
(2)前記レーザ光吸収率が20%以上80%以下である。
かかるレーザ光吸収層を有する基材、および該基材を備えた粘着フィルムは、前記特定レーザ光で切断した際に、その切断残渣(典型的には、主としてレーザ光吸収剤に由来する残渣)が周囲(ワーク、レーザ加工に使用する機器、作業環境等)を汚染しにくいので好ましい。前記レーザ光吸収剤としては、一種または二種以上の金属粉末を好ましく使用することができる。なかでもアルミニウム粉末の使用が好ましい。
【0010】
前記レーザ光吸収層は、前記レーザ光吸収剤が配合された樹脂組成物であり得る。かかる樹脂組成物の好適例として、ポリオレフィン樹脂組成物およびポリエステル樹脂組成物が挙げられる。ここで、ポリオレフィン樹脂組成物とは、該組成物を構成するポリマー成分のうち50質量%を超える分量(例えば70質量%以上)がポリオレフィンである組成物をいう。同様に、ポリエステル樹脂組成物とは、該組成物を構成するポリマー成分のうち50質量%を超える分量(例えば70質量%以上)がポリエステルである組成物をいう。かかる樹脂組成物からなるレーザ光吸収層を有する基材、および該基材を備えた粘着フィルムは、前記特定レーザ光で切断した際に、切断幅を制御しやすく、かつ形状精度のよい切断端面を形成しやすいので好ましい。
【0011】
好ましい一態様では、前記レーザ光吸収層が、前記レーザ光吸収剤として0.01〜5質量%の金属粉末(典型的にはアルミニウム粉末)を含む樹脂組成物からなる。金属粉末は熱安定性に優れるので、上記粘着フィルムが上記特定レーザ光により加熱されて切断されるまでの間、該特定レーザ光を吸収する機能を適切に維持することができる。
【0012】
ここに開示される粘着フィルムは、上述のように主波長1000nm〜1100nmのレーザ光で切断されることを含む態様での使用に適した性質を備える。したがって、本発明の他の側面として、ここに開示されるいずれかの粘着フィルムからなり、主波長1000nm〜1100nmのレーザ光で切断して用いられるレーザ切断用粘着フィルムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る粘着フィルムの一構成例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明に係る粘着フィルムの他の一構成例を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明に係る粘着フィルムの他の一構成例を模式的に示す断面図である。
【図4】粘着フィルムがレーザ光によって適切に切断された状態の一典型例を模式的に示す断面図である。
【図5】粘着フィルムがレーザ光によって適切に切断されなかった状態の一典型例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。また、以下の図面において、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付して説明し、重複する説明は省略または簡略化することがある。
【0015】
ここに開示される粘着フィルムは、基材としての樹脂フィルムの少なくとも一方の面に粘着剤層を有する。上記基材の一方の面のみに粘着剤層を有する片面粘着フィルム(片面接着性の粘着フィルム)の形態であってもよく、上記基材の一方の面および他方の面にそれぞれ粘着剤層を有する両面粘着フィルム(両面接着性の粘着フィルム)の形態であってもよい。以下、片面粘着フィルムに適用する場合を主な例として本発明をより具体的に説明するが、ここに開示される技術の適用対象を限定する意図ではない。
【0016】
本発明により提供される粘着フィルムの典型的な構成例を図1に模式的に示す。この粘着フィルム1は、基材としての樹脂フィルム10と、その一方の面(片面)10Aに設けられた粘着剤層20とを備え、該粘着剤層20を被着体に貼り付けて使用される。好ましい一態様では、樹脂フィルム10の背面(粘着剤層20が設けられる面とは反対側の面)10Bが剥離性を有する表面(剥離面)となっている。使用前(すなわち、被着体への貼付前)の粘着フィルム1は、粘着剤層20の表面(粘着面)20Aが樹脂フィルム10の背面10Bに当接するようにロール状に巻回され、これにより表面20Aが保護された形態であり得る。あるいは、図2に示す粘着フィルム1のように、粘着剤層20の表面20Aが、少なくとも粘着剤層20側が剥離面となっている剥離ライナー30により保護された形態であってもよい。
【0017】
樹脂フィルム10は、レーザ光吸収剤402を備えたレーザ光吸収層42を有する。レーザ光吸収層42は、典型的には、レーザ光吸収剤402を含有する樹脂組成物からなる層である。図1、2に示す例では、樹脂フィルム10がレーザ光吸収層42からなる単層構造であるが、樹脂フィルム10の構造は単層構造に限定されない。例えば図3に示す粘着フィルム2のように、樹脂フィルム10が複数の層(ここでは、粘着剤層20側に配置された第一層42およびその背面側に配置された第二層44)を含む積層体であって、それらのうち少なくとも一つがレーザ光吸収層42であってもよい。図3に示す例では、第一層42はレーザ光吸収剤402を含む樹脂組成物からなる層(レーザ光吸収層)であり、第二層44はレーザ光吸収剤を含まない樹脂組成物からなる層である。
【0018】
ここに開示される技術における基材としての樹脂フィルム(以下「基材フィルム」ともいう。)は、波長1000nm〜1100nmの範囲におけるレーザ光吸収率Amin(1000, 1100)が20%以上であることによって特徴づけられる。このAmin(1000, 1100)は、基材フィルムに照射された特定レーザ光のうち、実際に基材フィルムに吸収されるレーザ光の割合を意味する。基材フィルムのAmin(1000, 1100)が20%に満たないと、特定レーザ光の照射による加熱効率が低く、基材フィルムおよび該基材フィルムを備えた粘着フィルムを適切に分解消失させることができない。このため粘着フィルムを切断することができず、あるいは一応の切断はできたとしても高い切断品質を安定して実現することは困難である。
【0019】
このことを図4、図5に示す模式図を用いて説明する。図5に示すように、レーザ光吸収剤を含まずAmin(1000, 1100)が20%よりも小さい樹脂フィルム110を用いてなる粘着フィルム100は、該粘着フィルム100の粘着面20Aを被着体に貼り付けてその背面から特定レーザ光LBを照射しても、レーザ光LBの照射範囲に対応する箇所の粘着フィルム100を十分に加熱して分解消失させることができない。このため、粘着フィルム100を特定レーザ光LBにより切断することができないか、一応の切断はできても主に被着体からの伝熱により粘着フィルム100が溶融変形することによる切断なので、例えば図5に示すように、切断端面100Eおよび照射境界部(レーザ光が照射された部分と照射されない部分との境界付近)100Fの形状や切断幅等の精度を高めることができない。
【0020】
これに対して、図4に示すように、Amin(1000, 1100)が20%以上である樹脂フィルム10を備えた粘着フィルム1を被着体に貼り付けてその背面から特定レーザ光LBを照射する場合には、該樹脂フィルム10が特定レーザ光LBを効率よく吸収して発熱するので、粘着フィルム1を効果的に分解消失させて切断することができる。したがって、特定レーザ光LBの照射幅に応じて粘着フィルム1の切断幅(レーザ光の照射により形成された隙間の幅)Wを精度よくコントロールすることができる。典型的には、図4に示すように、特定レーザ光LBの照射幅と同等またはそれ以上の切断幅Wにて粘着フィルム1を切断することができる。また、切断端面1Eおよび照射境界部1Fの形状精度に優れた高い切断品質を実現することができる。
【0021】
レーザ光吸収剤としては、Amin(1000, 1100)を上昇させる作用を発揮し得る各種の材料を、単独で、あるいは適宜組み合わせて用いることができる。切断端面の外観品質等の観点から、炭素粉末(カーボン粉末)以外のレーザ光吸収剤を用いることが好ましい。ここに開示される技術におけるレーザ光吸収剤の好適例として、金属および金属化合物が挙げられる。上記金属の例としては、アルミニウム、ステンレス、チタン、ニッケル、ジルコニウム、タングステン、銅、銀、金、亜鉛、モリブデン、クロムおよびこれらを主成分とする合金等が挙げられる。金属化合物の例としては、上記金属の酸化物、窒化物、炭化物等が挙げられる。このような金属および金属化合物は、典型的には粉末の形態で、レーザ光吸収剤として好ましく用いられる。レーザ光吸収剤の他の例として、特定レーザ光を吸収する性質を有する有機化合物が挙げられる。かかる有機化合物は、例えば、フタロシアニン系化合物、シアニン系化合物、アミニウム系化合物、ナフタロシアニン系化合物、ナフトキノン系化合物、ジイモニウム系化合物、アントラキノン系化合物、芳香族ジチオール系金属錯体(例えばニッケル錯体)等であり得る。
【0022】
ここに開示される技術の好ましい一態様では、上記レーザ光吸収層が、レーザ光吸収剤として、上記金属粉末および金属化合物粉末の少なくとも一方を含む。かかるレーザ光吸収剤は、特定レーザ光の吸収に伴う発熱に耐えて該特定レーザ光を吸収する性質を適切に維持し得るので好ましい。例えば、樹脂組成物中にレーザ光吸収剤を含むレーザ光吸収層において、レーザ光吸収層を構成する樹脂成分よりも熱分解温度の高いレーザ光吸収剤を採用することが好ましい。ここに開示される技術は、レーザ光吸収層がレーザ光吸収剤としての上記有機化合物を実質的に含有しない態様でも好ましく実施され得る。あるいは、レーザ光吸収層が、上記金属粉末および金属化合物粉末の一方または両方に加えて、更に上記有機化合物を含有してもよい。
【0023】
ここに開示される技術は、レーザ光吸収層が、レーザ光吸収剤として少なくとも金属粉末を含む態様で特に好ましく実施され得る。好ましい金属粉末として、アルミニウム粉末、金粉末、銀粉末、銅粉末、ニッケル粉末、亜鉛粉末等が例示される。かかる金属粉末は比較的硬度が低いので、該金属粉末を配合した樹脂組成物をフィルム状に成形(成膜)する際に成形機を傷めにくい。また、レーザ光による切断残渣が生じにくいという利点もある。金属製のワークの表面に粘着フィルムを貼り付けて該粘着フィルムとともに上記ワークを切断する態様で用いられる粘着フィルムにおいては、ワークと同質の金属からなる金属粉末をレーザ光吸収剤として好ましく採用し得る。
【0024】
ここに開示される技術は、上記レーザ光吸収層がレーザ光吸収剤としての炭素粉末(例えばカーボンブラック)を実質的に含有しない(例えば、炭素粉末の含有量が0.005質量%以下、好ましくはゼロである)態様で好ましく実施され得る。レーザ光吸収剤として炭素粉末を用いたレーザ光吸収層(ひいては該レーザ光吸収層を有する基材フィルムおよび粘着フィルム)は、レーザ切断断面が黒ずんだり、レーザ切断残渣が目立ちやすくなったりしがちである。同様の理由から、黒色または濃色の金属化合物粉末についても、レーザ光吸収剤として使用しないか、あるいは他のレーザ光吸収剤(例えば金属粉末)と併用することでその使用量を抑えることが好ましい。
【0025】
粉末状のレーザ光吸収剤(レーザ光吸収剤粉末)を用いる場合、該粉末を構成する粒子の形状は特に限定されず、例えば薄片状、球状、針状、多面体状、不規則形状等であり得る。通常は、薄片状、球状または針状のレーザ光吸収剤粉末を好ましく採用し得る。かかるレーザ光吸収剤粉末の平均粒径は特に限定されない。例えば、平均粒径0.01μm以上20μm以下(好ましくは0.1μm以上10μm以下、例えば0.5μm以上5μm以下)のレーザ光吸収剤粉末を用いることができる。ここに開示される技術において好ましく使用し得るレーザ光吸収剤の一例として、平均粒径が1μmを超えて5μm以下の金属粉末(薄片状アルミニウム粉末等)が挙げられる。なお、本明細書中における「平均粒径」とは、特記しない限り、レーザ散乱・回折法に基づく粒度分布測定装置に基づいて測定した粒度分布における積算値50%での粒径(50%体積平均粒子径;以下、D50と略記する場合もある。)を指す。
【0026】
ここに開示される技術における基材フィルムのレーザ光吸収率Amin(1000, 1100)は、少なくとも20%であり、30%以上であってもよい。粘着フィルム全体としてのレーザ光吸収率Amin(1000, 1100)もまた、20%以上(例えば30%以上)であることが好ましい。Amin(1000, 1100)が低すぎると、特定レーザ光の照射によって基材フィルム(ひいては該基材フィルムを備える粘着フィルム)を切断することが困難となり、あるいは高い切断品質が実現されにくくなる。基材フィルムのAmin(1000, 1100)は、100%であってもよいが、通常は95%以下である。粘着フィルムの切断残渣(典型的には、主としてレーザ光吸収剤に由来する残渣)を少なくするという観点からは、基材フィルムのAmin(1000,1100)は80%以下が好ましく、より好ましくは70%以下(例えば60%以下)であり、50%以下であってもよい。レーザ光吸収層を含む複数の層からなる基材フィルムでは、上記レーザ光吸収層のレーザ光吸収率Amin(1000, 1100)が20%以上(例えば30%以上)であることが好ましい。また、上記レーザ光吸収層のAmin(1000, 1100)は、80%以下(より好ましくは70%以下、例えば60%以下)であることが好ましく、50%以下であってもよい。
【0027】
上記基材フィルムの透過率および反射率は特に限定されず、ここに開示される好ましいレーザ光吸収率Amin(1000, 1100)を実現し得る値であればよい。通常は、上記レーザ光吸収率が最小となった波長(換言すれば、Amin(1000, 1100)に対応する波長)における特定レーザ光の透過率T(Amin)が50%未満である基材フィルムが好ましい。また、上記レーザ光吸収率が最小となった波長における特定レーザ光の反射率R(Amin)が50%未満(より好ましくは40%未満)である基材フィルムが好ましい。上記T(Amin)およびR(Amin)の少なくとも一方(好ましくは両方)を満たす基材フィルムは、ここに開示される好ましいレーザ光吸収率Amin(1000, 1100)を有するものとなりやすいためである。
【0028】
なお、粉末状のレーザ光吸収剤(例えば金属粉末)を用いる場合、一般に、レーザ光吸収剤粉末の使用量(例えば、レーザ光吸収層を形成する樹脂組成物におけるレーザ光吸収剤粉末の配合割合)を多くすると、透過率は低くなるが反射率は高くなる傾向にある(例えば、後述する例11、例15)。したがって、かかる傾向に留意しつつ、ここに開示される好ましいレーザ光吸収率Amin(1000, 1100)を実現し得るように、レーザ光吸収剤の種類(材質、形状等)および使用量を設定することが望ましい。
【0029】
レーザ光吸収剤を含む樹脂組成物からなるレーザ光吸収層(レーザ光吸収剤含有樹脂層)を有する基材フィルムにおいて、該樹脂層を構成する樹脂成分として使用し得る材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリプロピレン−ポリエチレンブレンド樹脂等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;その他、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリアミド系樹脂等が例示される。かかる樹脂材料にレーザ光吸収剤を配合してなる樹脂組成物を、典型的にはフィルム状に成形することにより、レーザ光吸収剤含有樹脂層を形成することができる。成形方法は特に限定されず、従来公知の押出成形法(例えば、インフレーション押出成形法)、キャスト成形法等を適宜採用することができる。レーザ光吸収剤含有樹脂層を含む複数の樹脂層を備える基材フィルムは、各樹脂層に対応する樹脂組成物を同時に(例えば、多層インフレーション成形法により)成形する方法、各々の層を成形した後に貼り合わせる方法、先に成形した層の上に他の層をキャストする方法等を、単独で、あるいは適宜組み合わせて採用することにより得ることができる。なお、レーザ光吸収剤含有樹脂層以外の樹脂層を構成する樹脂成分は、レーザ光吸収剤含有樹脂層に使用し得る樹脂成分として例示したものと同様のものから適宜採用することができる。
【0030】
上記レーザ光吸収剤含有樹脂層におけるレーザ光吸収剤(典型的には粉末状のレーザ光吸収剤、例えば金属粉末)の含有割合は、例えば0.01質量%以上とすることができ、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上である。好ましい一態様では、上記レーザ光吸収剤含有樹脂層が0.1質量%を超える割合でレーザ光吸収剤を含む。また、上記レーザ光吸収剤含有樹脂層におけるレーザ光吸収剤の配合割合が多すぎると、反射率が高くなって所望のレーザ光吸収率が実現されにくくなったり、レーザ切断残渣が目立ちやすくなったりすることがあり得る。したがって、通常は、上記レーザ光吸収剤含有樹脂層におけるレーザ光吸収剤の配合割合を10質量%以下とすることが適当であり、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下(典型的には3質量%未満)である。好ましい一態様では、上記レーザ光吸収剤含有樹脂層におけるレーザ光吸収剤の配合割合が2質量%以下(典型的には2質量%未満)である。
【0031】
なお、ここに開示される技術におけるレーザ光吸収層は、上述のようにレーザ光吸収剤が配合された樹脂組成物からなる層(レーザ光吸収剤含有樹脂層)に限定されず、例えば、実質的にレーザ光吸収剤のみからなる層(レーザ光吸収剤層)であってもよい。かかるレーザ光吸収剤層は、例えば、蒸着、スパッタ、塗布(例えば、粉末状のレーザ光吸収剤が溶媒に分散した分散液を塗布し、溶媒を除去して該レーザ光分散剤粉末の層を設ける)等の手法により形成することができる。ここに開示される技術における基材フィルムは、例えば、レーザ光吸収剤を含まない樹脂層の表面にレーザ光吸収剤含有樹脂層が配置された構成であってもよく、レーザ光吸収剤含有樹脂層の表面にレーザ光吸収剤層がさらに配置された構成であってもよい。
【0032】
上記基材フィルムには、必要に応じて任意の添加剤を配合することができる。かかる添加剤の例としては、難燃剤、帯電防止剤、着色剤(顔料、染料等)、光安定剤(ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤等)、酸化防止剤等が挙げられる。
【0033】
上記基材フィルムの表面には、必要に応じて、隣接する材料に対する密着性を高め、あるいは離型性を向上させるための適宜の表面処理が施されていてもよい。密着性を高めるための表面処理としては、コロナ放電処理、酸処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、下塗剤(プライマー)塗布等が例示される。かかる表面処理は、基材フィルムの一方の面(すなわち、粘着剤層が設けられる側の表面)および他方の面のいずれにも好ましく適用され得る。離型性を向上させるための表面処理は、一般的なシリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系等の剥離処理剤を用いて実施することができる。かかる表面処理は、基材フィルムの他方の面(背面)に好ましく適用され得る。
【0034】
上記基材フィルムの厚みは、通常、10μm〜150μm程度とすることが適当である。10μmよりも薄すぎる場合、または150μmより厚すぎる場合には、基材フィルムまたは該基材フィルムを備えた粘着フィルムのハンドリング性が低下しやすくなることがある。好ましい一態様では、基材フィルムの厚みが20μm〜110μm(より好ましくは40μm〜100μm)である。レーザ光吸収剤を配合した樹脂組成物からなるレーザ光吸収層(レーザ光吸収剤含有樹脂層)を備えた基材フィルムでは、該レーザ光吸収層の厚みが3μm以上であることが好ましく、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。また、基材フィルム全体の厚みのうち、レーザ光吸収層(換言すれば、レーザ光吸収剤が配置された箇所)の厚みが20%以上(例えば50%以上)であることが好ましく、70%以上(さらには90%以上)であることがより好ましい。なお、単一のレーザ光吸収剤含有樹脂層または複数の光吸収剤含有樹脂層のみからなる基材フィルムでは、該基材フィルム全体の厚みのうちレーザ光吸収層の厚みが100%である。
【0035】
ここに開示される技術における粘着剤層を構成する粘着剤は特に限定されず、例えば、公知のアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等を用いることができる。粘着性能やコストの観点から、ゴム系粘着剤またはアクリル系粘着剤を好ましく採用し得る。上記粘着剤層は、単層構造であってもよく、組成の異なる二以上の層を有する積層構造であってもよい。
【0036】
アクリル系粘着剤としては、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートを主成分とし、これに必要に応じて該アルキル(メタ)アクリレートと共重合可能な改質用モノマーを加えたモノマー組成を有するアクリル系ポリマーをベースポリマー(ポリマー成分のなかの主成分)とするものを好ましく用いることができる。上記改質用モノマーの例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー;スチレン等のスチレン系モノマー;酢酸ビニル等のビニルエステル類;等が挙げられる。かかるアクリル系粘着剤は、溶液重合法、エマルション重合法、紫外線(UV)重合法等の慣用の重合法により得ることができる。
【0037】
ゴム系粘着剤の例としては、天然ゴム系粘着剤、合成ゴム系粘着剤等が挙げられる。合成ゴム系粘着剤のベースポリマーたるゴム系ポリマーの具体例としては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブチルゴム、ポリイソブチレン、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体等のスチレン系エラストマー;スチレン−エチレンブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−エチレンブチレンランダム共重合体、等のスチレン系エラストマー;その他、エチレンプロピレンゴム、プロピレンブテンゴム、エチレンプロピレンブテンゴム等が挙げられる。
【0038】
上記粘着剤層(複数の層からなる粘着剤層では、それらのうち少なくとも一つの層)には、レーザ光吸収剤を含有させることができる。粘着剤層に含有させるレーザ光吸収剤は、基材フィルムを構成するレーザ光吸収剤含有樹脂層に使用し得るレーザ光吸収剤として上記で例示したものと同様のものから一種または二種以上を適宜選択することができる。粘着剤層におけるレーザ光吸収剤の含有割合は、5質量%以下とすることが適当であり、好ましくは3質量%以下(例えば1質量%以下)である。レーザ光吸収剤の含有割合が多すぎると、粘着性能が損なわれることがあり得る。ここに開示される技術は、粘着剤層がレーザ光吸収剤を実質的に含有しない態様でも好ましく実施され得る。
【0039】
上記粘着剤層には、必要に応じて任意の添加剤を配合することができる。かかる添加剤の例としては、架橋剤、粘着付与剤、軟化剤、難燃剤、帯電防止剤、着色剤(顔料、染料等)、光安定剤(ラジカル捕捉剤、紫外線吸収剤等)、酸化防止剤等が挙げられる。
【0040】
粘着剤層の厚さは、粘着フィルムの用途に応じて適切な粘着性能が得られるように適宜設定することができる。通常は、粘着剤層の厚さを0.5μm〜50μmとすることが適当であり、1μm〜20μm(例えば2μm〜15μm)とすることが好ましい。
【0041】
基材フィルム上に粘着剤層を設ける方法は特に限定されない。例えば、粘着剤層形成成分が有機溶媒に溶解した溶液または水性溶媒に分散した分散液を基材フィルムに塗布して乾燥させることにより基材フィルム表面に直接粘着剤層を形成する方法、剥離性を有する表面上に形成した粘着剤層を基材フィルムに移着する方法、粘着剤層形成成分と基材フィルム形成用の樹脂組成物とを共押出(多層押出)する方法、等の公知の方法を適宜採用することができる。
【0042】
ここに開示される粘着フィルムは、主波長1000nm〜1100nmのレーザ光(特定レーザ光)で切断して用いられる粘着フィルム(レーザ切断用粘着フィルム)として好適である。該粘着フィルムが特定レーザ光で切断される時期は、被着体への貼り付け前であってもよく、貼り付け後であってもよい。粘着フィルムが被着体への貼り付け前に特定レーザ光で切断される態様としては、例えば図2に示すように粘着剤層20の表面が剥離ライナー30で保護された状態で、粘着フィルム1の背面(樹脂フィルム10の背面10B)から特定レーザ光を照射することにより剥離ライナー30を残して粘着フィルム1のみを切断する態様、あるいは剥離ライナー30とともに粘着フィルム1を切断する態様が例示される。これにより所望の形状に切断された粘着フィルムは、その後、任意の被着体に貼り付けられて、該被着体の表面保護、装飾、表示、他の被着体との接着等の機能を果たし得る。粘着フィルムが被着体への貼り付け後に特定レーザ光で切断される態様としては、ワークの表面に粘着フィルムを貼り付け、その粘着フィルムの背面から特定レーザ光を照射して上記ワークのレーザ加工(切断、孔開け、切削等)を行う態様が例示される。かかる態様において、粘着フィルムは、レーザ加工の前後あるいはレーザ加工中にワークの表面を保護する保護フィルムとしての機能を果たし得る。
【0043】
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる具体例に示すものに限定することを意図したものではない。なお、以下の説明中の「部」および「%」は、特に断りがない限り質量基準である。
【0044】
<例1>
平均粒径2μmの薄片状アルミニウム粉末0.13%と、低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製、商品名「ペトロセン186R」)99.87%とを、2軸押出し機(東芝機械株式会社製)にて樹脂温度180℃で造粒し、基材用ペレットを得た。得られたペレットをインフレーション成形法によりダイス温度180℃で成膜して、厚さ90μmの樹脂フィルムF1を得た。
【0045】
<例2>
上記アルミニウム粉末0.18%と低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製、商品名「ペトロセン186R」)99.82%とを、上記押出し機にて樹脂温度180℃で造粒し、基材用ペレットを得た。得られたペレットをインフレーション成形法によりダイス温度180℃で成膜して、厚さ90μmの樹脂フィルムF2を得た。
【0046】
<例3>
上記アルミニウム粉末0.25%と低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製、商品名「ペトロセン186R」)99.75%とを、上記押出し機にて樹脂温度180℃で造粒し、基材用ペレットを得た。得られたペレットをインフレーション成形法によりダイス温度180℃で成膜して、厚さ90μmの樹脂フィルムF3を得た。
【0047】
<例4>
上記アルミニウム粉末0.50%と低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製、商品名「ペトロセン186R」)99.50%とを、上記押出し機にて樹脂温度180℃で造粒し基材用ペレットを得た。得られたペレットをインフレーション成形法によりダイス温度180℃で成膜して、厚さ90μmの樹脂フィルムF4を得た。
【0048】
<例5>
上記アルミニウム粉末1.50%と低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製、商品名「ペトロセン186R」)98.50%とを、上記押出し機にて樹脂温度180℃で造粒し、基材用ペレットを得た。得られたペレットをインフレーション成形法によりダイス温度180℃で成膜して、厚さ90μmの樹脂フィルムF5を得た。
【0049】
<例6>
例4で作製した樹脂フィルムF4の片面にコロナ放電処理を施した。そのコロナ放電処理面に下記粘着剤組成物P1を、乾燥後の厚みが4μmとなるように塗布して乾燥させた。このようにして、基材の片面にアクリル系粘着剤層を有する粘着フィルムF6を得た。
(粘着剤組成物P1)
2−エチルヘキシルアクリレート/酢酸ビニル/アクリル酸を100/80/5の質量比で含むモノマー混合物を、ベンゾイルパーオキサイド(重合開始剤)を用いてトルエン中で重合させ、重量平均分子量60×10のアクリル系ポリマーを得た。このアクリル系ポリマー100部に対し、エポキシ系架橋剤(三菱瓦斯化学株式会社製、商品名「テトラッドC」)2部を加えて混合したものを、アクリル系粘着剤組成物P1とした。
【0050】
<例7>
例4で作製した樹脂フィルムF4の片面にコロナ放電処理を施した。そのコロナ放電処理面に下記粘着剤組成物P2を、乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布して乾燥させた。このようにして、基材の片面にゴム系粘着剤層を有する粘着フィルムF7を得た。
(粘着剤組成物P2)
天然ゴム100部に対し、粘着付与剤(日本ゼオン株式会社製、商品名「Quintone A100」)70部、老化防止剤(大内新興化学工業株式会社製、商品名「ノクラックNS−5」)2部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業株式会社製、商品名「コロネートL」)3部およびトルエンを加えて混合したものを、ゴム系粘着剤組成物P2とした。
【0051】
<例8>
上記アルミニウム粉末0.60%とランダムポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製、商品名「プライムポリプロF−744NP」)99.40%とを、上記押出し機にて樹脂温度230℃で造粒し、基材用ペレットを得た。得られたペレットをTダイ法によりダイス温度230℃で成膜して、厚さ40μmの樹脂フィルムF8を得た。
【0052】
<例9>
上記アルミニウム粉末0.60%とポリブチレンテレフタレート(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、商品名「ノバデュラン5505S」)99.40%とを、上記押出し機にて樹脂温度245℃で造粒し、基材用ペレットを得た。得られたペレットをTダイ法によりダイス温度245℃で成膜して、厚さ40μmの樹脂フィルムF9を得た。
【0053】
<例10>
低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製、商品名「ペトロセン186R」)をインフレーション成形法によりダイス温度180℃で成膜して、厚さ60μmの樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムの片面にコロナ放電処理を施し、上記粘着剤組成物P1を乾燥後の厚みが4μmとなるように塗布して乾燥させた。このようにして、基材の片面にアクリル系粘着剤層を有する粘着フィルムF10を得た。
【0054】
<例11>
平均粒径0.2μmの酸化チタン(TiO)粉末3.00%と低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製、商品名「ペトロセン186R」)97.00%とを、上記押出し機にて樹脂温度180℃で造粒し、基材用ペレットを得た。得られたペレットをインフレーション成形法によりダイス温度180℃で成膜して、厚さ100μmの樹脂フィルムを得た。この樹脂フィルムの片面にコロナ放電処理を施し、上記粘着剤組成物P2を乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布して乾燥させた。このようにして、基材の片面にゴム系粘着剤層を有する粘着フィルムF11を得た。
【0055】
<例12>
上記アルミニウム粉末0.10%と低密度ポリエチレン(東ソー株式会社製、商品名「ペトロセン186R」)99.90%とを、上記押出し機にて樹脂温度180℃で造粒し、基材用ペレットを得た。得られたペレットをインフレーション成形法によりダイス温度180℃で成膜して、厚さ90μmの樹脂フィルムF12を得た。
【0056】
<例13>
ランダムポリプロピレン(株式会社プライムポリマー製、商品名「プライムポリプロF−744NP」)をTダイ法によりダイス温度230℃で成膜して、厚さ40μmの樹脂フィルムF13を得た。
【0057】
<例14>
ポリブチレンテレフタレート(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、商品名「ノバデュラン5505S」)をTダイ法によりダイス温度245℃で成膜して、厚さ40μmの樹脂フィルムF14を得た。
【0058】
<例15>
平均粒径0.7μmの硫酸バリウム(BaSO)粉末20%とポリブチレンテレフタレート(三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社製、商品名「ノバデュラン5505S」)80%とを、上記押出し機にて樹脂温度245℃で造粒し、基材用ペレットを得た。得られたペレットをTダイ法によりダイス温度245℃で成膜して、厚さ40μmの樹脂フィルムF15を得た。
【0059】
<性能評価>
上記で作製した樹脂フィルムまたは粘着フィルムF1〜F15から適切なサイズのサンプルを切り出し、以下の項目を評価した。
【0060】
(1)透過率
測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計、型式「U−4100」
測定条件:測定モード応用計測、データモード%T、スキャンスピード750nm/min、サンプリング間隔1nm、スリット自動制御、ホトマル電圧自動1、光量制御モード固定、高分解能測定OFF、減光板未使用、PbS感度1、セル長10mm
測定方法:
(i).測定装置の電源を入れ、装置を安定させるために2時間以上待機した。その後、サンプルをセットせずにベースラインを測定した。
(ii).次いで、測定装置の透過率測定部分にサンプルをセット(粘着フィルムの場合は、粘着フィルム背面より入光するようにセット)し、上記測定条件にて1000nm〜1100nmの波長範囲の透過率を測定した。
【0061】
(2)反射率
測定装置:株式会社日立ハイテクノロジーズ製の分光光度計、型式「U−4100」
測定条件:測定モード応用計測、データモード%R、スキャンスピード750nm/min、サンプリング間隔1nm、スリット自動制御、ホトマル電圧自動1、光量制御モード固定、高分解能測定OFF、減光板未使用、PbS感度1、セル長10mm
測定方法:
(i).測定装置の電源を入れ、装置を安定させるために2時間以上待機した。その後、反射率測定部分に白色標準板をセットし(サンプルはセットしない。)、ベースラインを測定した。
(ii).次いで、反射率測定部分にサンプルをセットした。このとき、サンプルを透過した光の反射を防止するため、サンプルの入光面と反対側に日東樹脂工業株式会社製の樹脂板、商品名「クラレックス(登録商標)」(黒色、1mm厚)を置いた。サンプルが粘着フィルムの場合には、上記樹脂板に該粘着フィルムを貼り合わせた(貼り合わせ条件:2kgローラー1往復)。そして、上記測定条件にて1000nm〜1100nmの波長範囲の反射率を測定した。
【0062】
(3)吸収率
上記透過率T(%)および反射率R(%)から、次式:100(%)−T(%)−R(%);により、1000nm〜1100nmの波長範囲における最小の吸収率Amin(1000, 1100)を算出した。その結果を、上記最小吸収率の波長における透過率T(Amin)および反射率R(Amin)の値とともに、表1に示す。
【0063】
(4)レーザ切断
(4-1)レーザ切断(i)
各サンプル(1mm厚のSUS304 2B板に粘着フィルムを貼った状態のもの、樹脂フィルムの場合は、その端部を粘着テープで固定した状態のもの)をレーザ溶接機(アマダ社製の型式「YLM−500P」を使用した。)の加工台上にセットし、以下の条件で所定の切断ラインに沿ってレーザ光を照射した。
使用レーザ:YAGレーザ(波長1064nm、出力500W)
照射条件:移動速度10m/min
(4-2)レーザ切断(ii)
各サンプル(1mm厚のSUS304 2B板に粘着フィルムを貼った状態のもの、樹脂フィルムの場合は、その端部を粘着テープで固定した状態のもの)をレーザ溶接機(オムロンレーザーフロント社製の型式「M802E」を使用した。)の加工台上にセットし、以下の条件で所定の切断ラインに沿ってレーザ光を照射した。
使用レーザ:YAGレーザ(波長1.06μm、出力200W)
照射条件:移動速度5m/min
上記レーザ切断(i)およびレーザ切断(ii)の各々について、照射後のサンプルを光学顕微鏡(倍率 100倍)により観察し、以下の2水準でレーザ切断性を評価した。
○:レーザ照射径以上の幅でサンプル(粘着フィルムのみ、または樹脂フィルムのみ)を切断できた(レーザ切断性良)。
×:サンプル(粘着フィルムのみ、または樹脂フィルムのみ)を切断できなかったか、切断幅がレーザ照射径未満であった(レーザ切断性不良)。
【0064】
【表1】

【0065】
表1に示されるように、レーザ光吸収率Amin(1000, 1100)が20%以上(より詳しくは、20%以上80%以下)である例1〜9のサンプルは、いずれも良好なレーザ切断性を示した。なかでも、Amin(1000, 1100)が60%以下である例1〜4および例6〜9のサンプルによると、例5のサンプルに比べてレーザ切断残渣がより少なく、より外観品質に優れた切断が実現された。一方、レーザ光吸収率Amin(1000, 1100)が20%に満たない例10〜15のサンプルは、いずれもレーザ切断性が不良であった。
なお、アルミニウムは波長1000nm〜1100nmのレーザ光を吸収し得るが、アルミニウム箔やアルミニウム膜(典型的には、蒸着膜等の連続膜)は、表面が平滑で反射率が高いため、上記特定レーザ光との関係では、一般にアルミニウムは反射材として認識されている。ここに開示される技術の好ましい一態様によると、アルミニウムを粉末状(より具体的には、薄片状粉末)として樹脂に配合することにより、反射率が抑えられ、該粉末状アルミニウムをレーザ光吸収剤として好適に用いることができる。このことは、上記例1〜9の結果によっても裏付けられている。
【0066】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0067】
また、この明細書により開示される事項には以下のものが含まれる。
(1)波長1000nm〜1100nmの範囲におけるレーザ光吸収率が20%以上であり、前記レーザ光吸収率を高めるレーザ光吸収剤を備えたレーザ光吸収層を包含する、樹脂フィルム。
(2)前記レーザ光吸収層は、前記レーザ光吸収剤として、金属粉末および金属化合物粉末から選択される少なくとも一種を含む、上記(1)に記載の樹脂フィルム。
(3)前記レーザ光吸収層は、以下の条件:
前記レーザ光吸収剤を0.01〜5質量%含む樹脂組成物(例えば、ポリオレフィン樹脂組成物またはポリエステル樹脂組成物)からなる;および、
前記レーザ光吸収率が20%以上80%以下である;
を満たす、上記(1)または(2)に記載の樹脂フィルム。
(4)前記レーザ光吸収層は、前記レーザ光吸収剤として0.01〜5質量%の金属粉末(例えば、アルミニウム粉末)を含む樹脂組成物(例えば、ポリオレフィン樹脂組成物またはポリエステル樹脂組成物)からなる、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂フィルム。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂フィルムからなり、主波長1000nm〜1100nmのレーザ光で切断して用いられる、レーザ切断用樹脂フィルム。
上記(1)〜(5)のいずれかに係る樹脂フィルムは、ここに開示されるいずれかの粘着フィルムの基材として好適に利用され得る。
【符号の説明】
【0068】
1,2:粘着フィルム
10:樹脂フィルム(基材、基材フィルム)
20:粘着剤層
30:剥離ライナー
42:レーザ光吸収層(第一層)
100:粘着フィルム
110:樹脂フィルム(基材、基材フィルム)
120:基板(被着体)
402:レーザ光吸収剤
LB:レーザ光
W:切断幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材としての樹脂フィルムと、該樹脂フィルムの少なくとも一方の面に設けられた粘着剤層とを備え、
前記基材は、波長1000nm〜1100nmの範囲におけるレーザ光吸収率が20%以上であり、
前記基材は、前記レーザ光吸収率を高めるレーザ光吸収剤を備えたレーザ光吸収層を包含する、粘着フィルム。
【請求項2】
前記レーザ光吸収層は、前記レーザ光吸収剤として、金属粉末および金属化合物粉末から選択される少なくとも一種を含む、請求項1に記載の粘着フィルム。
【請求項3】
前記レーザ光吸収層は、以下の条件:
前記レーザ光吸収剤を0.01〜5質量%含む樹脂組成物からなる;および、
前記レーザ光吸収率が20%以上80%以下である;
を満たす、請求項1または2に記載の粘着フィルム。
【請求項4】
前記樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂組成物またはポリエステル樹脂組成物である、請求項3に記載の粘着フィルム。
【請求項5】
前記レーザ光吸収層は、前記レーザ光吸収剤として0.01〜5質量%の金属粉末を含む樹脂組成物からなる、請求項1から4のいずれか一項に記載の粘着フィルム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の粘着フィルムからなり、主波長1000nm〜1100nmのレーザ光で切断して用いられる、レーザ切断用粘着フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−18963(P2013−18963A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−114796(P2012−114796)
【出願日】平成24年5月18日(2012.5.18)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】