説明

粘着剤、粘着シート及びその製造方法

【課題】屋外暴露後や高温保存後における経時においても、糊残りや剥離不良の発生を防止でき、良好な接着性を有する粘着剤、前記粘着剤を用いた粘着シート、前記粘着シートを表面保護用途に使用した粘着シート及びそれら粘着シートの製造方法を提供すること。
【解決手段】プロピレン、炭素数4〜12のα−オレフィンおよびエチレンを共重合成分として含む結晶性プロピレン系共重合体を含有してなる粘着剤であって、前記プロピレン系共重合体が、示差走査熱量計(DSC)での0〜200℃の温度範囲における測定において、1.1〜24.0J/gの吸熱ピークを有することを特徴とする粘着剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤、粘着シート及びその製造方法に関する。本発明の粘着剤を用いた粘着シートは、金属板、塗装した金属板、アルミサッシ、樹脂板、化粧鋼板、塩化ビニルラミネート鋼板、ガラス板、光学フィルム等を運搬、加工、養生する際に、その表面保護のために貼り付けられる等の用途を有する粘着シート(表面保護用途の粘着シート、即ち、表面保護シートを含む。)として有用である。
【背景技術】
【0002】
粘着シート(表面保護シート)に必要な特性としては、被着体に貼り付けた後に粘着シートの浮きや剥がれがなく、剥離除去に際して粘着剤が被着体へ残留しないことが要求される。特に、被着体に貼り付けてから剥離するまでの間に、高温下や屋外暴露等の過酷な条件下におかれる場合には、上記の特性にもより一層高度なものが求められる。
【0003】
このため、従来、一般に用いられてきた粘着シート(表面保護シート)の粘着剤層を形成する粘着剤としては、アクリル系共重合体を、接着性(粘着性)を失わない程度に、イソシアネート化合物やメチロール化合物で架橋三次元化して凝集力を高めたものや、天然ゴムまたは変性天然ゴムに適量の粘着付与剤等を配合したものが使用されている。
【0004】
このような粘着剤層を有する粘着シート(表面保護シート)は、 屋内での使用に関しては特に問題はない。しかしながら、粘着剤が、天然ゴムや変性天然ゴムを主成分とした場合や、粘着付与剤等を配合した組成物の場合には、前記粘着剤が不飽和二重結合を有する成分によって構成されているため、屋外暴露された際に、紫外線により前記成分の分子切断が引き起こされ、粘着シートを剥離する際に被着体に粘着剤が残留する場合があった。そのため、耐候性の良好な粘着シートが望まれていた。
【0005】
上記問題点を解決するために、特許文献1において、基材フィルム上に、水添されたスチレン系共重合体により粘着剤層を形成した耐候性に優れた表面保護シートが開示されている。前記水添されたスチレン系共重合体を含有する粘着剤層を用いた表面保護シートは、これを表面が荒れた(粗面)金属板や樹脂板等の被着体に貼り付ける場合には問題が発生しないが、平滑な金属板や極性の高いアクリル樹脂板、ポリカーボネイト樹脂板やアクリル系、ポリエステル系の塗装鋼板等に貼付した場合に、剥離不良を引き起こすなどの問題を生じる場合があった。そのため、剥離性が良好となるような添加剤を用いる必要があるため、汚染や経時での接着性が安定しないという問題が生じている。
【0006】
また、特許文献2及び特許文献3において、基材フィルム上に、炭素数2〜12のα−オレフィン共重合体から構成される粘着剤層を積層した表面保護シートが開示されているしかしながら、前記表面保護シートは、α−オレフィン共重合体単独での接着性(粘着性)は良好ではなく、冬場の屋外で使用する際に全く接着性を示さず、実際には、スチレン系共重合体を添加する必要がある。
【0007】
また、特許文献4には、α−オレフィン共重合体とスチレン系共重合体から構成される粘着剤層を用いた表面保護シートが開示されている。しかし、前記表面保護シートでは、粘着剤中にスチレン系共重合体を含むため、剥離性が良好ではなく、作業性を低下させる問題が生じている。
【0008】
さらに、特許文献5には、粘着剤にα−オレフィン共重合体を用いた接着性が良好な表面保護シートが開示されている。しかし、前記表面保護シートにおいて開示されているα−オレフィン共重合体は結晶部分を全く有していない非晶性α−オレフィン共重合体であるため、凝集力に乏しく、糊残りが発生するなど、問題を生じている。凝集力を改善するため、粘着剤成分の分子量を大きくすることが考えられるが、一方で、溶剤塗布型方式を用いた場合に、溶液粘度が高くなったり、共押出方式によって表面保護シートを製造する場合に、加工性が著しく低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−1958号公報
【特許文献2】特開平7−233354号公報
【特許文献3】特開平11−21519号公報
【特許文献4】特開平6−240215号公報
【特許文献5】特開2002−302659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで本発明は、屋外暴露後や高温保存後における経時においても、糊残りや剥離不良の発生を防止でき、良好な接着性を有する粘着剤、前記粘着剤を用いた粘着シート、前記粘着シートを表面保護用途に使用した粘着シート(表面保護シート)及びこれら粘着シートの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、以下に示す粘着剤を見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の粘着剤は、プロピレン、炭素数4〜12のα−オレフィンおよびエチレンを共重合成分として含む結晶性プロピレン系共重合体を含有してなる粘着剤であって、前記プロピレン系共重合体が、示差走査熱量計(DSC)での0〜200℃の温度範囲における測定において、1.1〜24.0J/gの吸熱ピークを有することを特徴とする。
【0013】
本発明の粘着シートは、前記粘着剤からなる粘着剤層が、基材の少なくとも片面に形成されていることが好ましい。
【0014】
本発明の粘着シートは、表面保護用途に使用されることが好ましい。
【0015】
また、本発明の粘着シートは、粘着剤層、及び、1層以上の基材からなる粘着シートであって、前記基材が、少なくとも、炭素数が8〜30の脂肪族基を有する重量平均分子量1万〜100万の離型剤、及び、ポリオレフィン系樹脂からなる層を含み、前記粘着剤層が、プロピレン、炭素数4〜12のα−オレフィンおよびエチレンを共重合成分として含む結晶性プロピレン系共重合体を含有してなる粘着剤からなり、前記プロピレン系共重合体が、示差走査熱量計(DSC)での0〜200℃の温度範囲における測定において、1.1〜24.0J/gの吸熱ピークを有することが好ましい。
【0016】
本発明の粘着シートは、JIS Z0237(2000)における低速及び/又は高速巻き戻し力が、1.0N/20mm以下であることが好ましい。
【0017】
また、本発明は、共押出し法により形成されている粘着シートの製造方法に関する。
【0018】
上記本発明者らは、金属板や塗装鋼板等への剥離不良が、スチレン系A−B−A型ブロックポリマーのスチレンブロック部分の影響によるものであることを解明し、粘着剤として、スチレンブロックを含有しないα−オレフィン系共重合体を検討した。さらに、本発明者らの検討により、接着性の点から、プロピレン成分に対して、エチレン、炭素数4〜12のα−オレフィン成分を共重合する必要があり、低温接着性の観点から、エチレン成分が必要であることを究明した。しかしながら、これらの重合成分を重合した場合に、特許文献5に開示されているように、非晶構造を有してしまうと、凝集力が低下してしまうため、結晶性を有する粘着剤として、前記結晶性プロピレン系共重合体を見出したものである。
【0019】
また、本発明の粘着シートとしては、基材に所定の離型剤及びポリオレフィン系樹脂を含有することにより、基材に背面処理効果が付与され、所定範囲の巻戻し力を有する粘着シートを得ることができ、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の粘着シートをSUS3048BA仕上げ板に、気泡部と皺部を設けた状態で貼付した図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の粘着剤のベースポリマーに用いられるプロピレン系共重合体は、プロピレン、炭素数4〜12のα−オレフィンおよびエチレンを共重合成分として含む共重合体である。前記共重合体を含む粘着剤は、金属板、塗装鋼板等に対して、良好な初期接着性を示す。
【0022】
また、前記プロピレン系共重合体は、結晶性プロピレン系共重合体である。前記共重合体が、構造中に結晶構造を有するため、粘着剤の流動による接着面積の上昇を抑制することができ、経時後においても、良好な剥離性を有し、有効である。
【0023】
炭素数4〜12のα−オレフィンの具体例としては、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、ノネン−1、デセン−1、ドデセン−1、4−メチル−ペンテン−1、4−メチル−へキセン−1等が挙げられるが、本発明のα−オレフィンは上記化合物に限定されるものではない。これらの中でもブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチル−ペンテン−1が好ましい。これら炭素数4〜12のα−オレフィンは1種または2種以上を組み合わせて使用できる。
【0024】
前記結晶性プロピレン系共重合体を構成する各成分の割合は特に制限されないが、本発明の粘着剤は、粘着シート(表面保護シート)として用いるため、結晶性プロピレン系共重合体中のプロピレンの含有量が、モノマー組成のモル比で60〜95モル%が好ましく、さらに好ましくは65〜90モル%、特に70〜85モル%であることが好ましい。また、低温接着性の観点から、結晶性プロピレン系共重合体中のプロピレン以外のモノマー成分であるエチレンの割合は、5〜20モル%の範囲で含有されることが好ましい。
【0025】
前記結晶性プロピレン系共重合体の重合法は特に制限されず、前記プロピレン、炭素数4〜12のα−オレフィンおよびエチレンを溶液重合、スラリー重合、気相重合により得ることができる。より具体的には、たとえば、特開2003−321582号公報に開示されている製造方法によって、重合することができる。
【0026】
本発明で用いられる粘着剤は、前記結晶性プロピレン系共重合体を主成分としてなり、通常、前記プロピレン系共重合体を80重量%以上、より好ましくは90重量%以上含有してなるが、前記プロピレン系共重合体に加えて、接着性の向上を目的として、本発明の目的を損なわない範囲で、スチレン−エチレン・ブチレン共重合体−スチレン(SEBS)や、スチレン−エチレン・プロピレン系共重合体−スチレン(SEPS)のような水添スチレン系A−B−A型ブロックポリマー、スチレン−エチレン・ブチレン共重合体(SEB)やスチレン−エチレン・プロピレン系共重合体(SEP)のような水添スチレン系A−B型ブロックポリマー、スチレン−エチレン・ブチレン共重合体−オレフィン結晶ブロックポリマー(SEBC)のような水添スチレン系A−B−C型ブロックポリマー、オレフィン結晶−エチレン・ブチレン共重合体−オレフィン結晶ブロックポリマー(CEBC)のような水添オレフィン系A−B−A型ブロックポリマー、スチレンとジエン系炭化水素とからなるランダム共重合体の水素添加物などを添加することができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を併用することができる。これらスチレン成分を有するブロックポリマーの使用割合は適宜に決定しうるが、使用割合が多くなると、接着上昇性などに影響を及ぼすことから、結晶性プロピレン系共重合体全体に対して20重量%以下が好ましく、より好ましくは10重量%以下である。
【0027】
前記結晶性プロピレン系共重合体は、示差走査熱量計(DSC)での0〜200℃の温度範囲における測定において、1.1〜24.0J/gの吸熱ピークを有するものであり、好ましくは3〜20J/g、より好ましくは5〜20J/gの吸熱ピークを有するものである。前記範囲内にある場合には、接着性や凝集力が所望の範囲に入り、有効である。
【0028】
なお、前記結晶性プロピレン系共重合体が、示差走査熱量計(DSC)での0℃〜200℃の温度範囲における測定において、1.1〜24.0J/gの吸熱ピークを有するものであるとは、実施例で示す方法(条件)で結晶性プロピレン系共重合体のDSC分析を行った場合に、0℃〜200℃の温度範囲において、結晶の融解に基づくと考えられる1.1〜24.0J/gの吸熱ピークが確認されることをいう。
【0029】
前記結晶性プロピレン系共重合体の重量平均分子量については、特に限定されるものではないが、高温ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)法におけるポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)が1.0×10〜1.0×10、より好ましくは1.5×10〜8.0×10、さらに好ましくは2.0×10〜8.0×10程度のものである。重量平均分子量が前記範囲内にあると、凝集力が良好であり、糊残りなく良好に剥離を行うことができ、更に、プロピレン系共重合体を含む粘着剤を押出し成形する場合の成形性も良好である。
【0030】
また、前記結晶性プロピレン系共重合体のJIS−K6301におけるJIS A硬度は、特に限定されないが50〜100が好ましく、より好ましくは55〜95、さらに好ましくは60〜90である。JIS A硬度が前記範囲のものは柔らかく、初期接着性の点が良好である。
【0031】
また、本発明の粘着剤には、接着(粘着)特性の制御等を目的に必要に応じて、例えば、オレフィンポリマー、シリコーン系ポリマー、アクリル系共重合体、界面活性剤、軟化剤、粘着付与剤や老化防止剤や、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線吸収剤、その他例えば、酸化カルシウムや酸化マグネシウム、シリカや酸化亜鉛、酸化チタンの如き充填剤や顔料などの適宜な添加剤を配合することができる。また、それ以外に接着性の制御や汚染防止等の目的で粘着剤層の表面にコロナ処理、紫外線処理等の適切な表面改質処理を施すこともできる。
【0032】
前記軟化剤の配合は通例、接着力の向上に有効である。軟化剤としては、例えば、低分子量のポリイソブチレン、水添ポリイソプレン、水添ポリブタジエン、プロピレンやα−オレフィンからなる液状オレフィンポリマーや、それらの誘導体を用いることができる。結晶性プロピレン系共重合体100重量部に対して、0〜40重量部とするのが好ましく、さらには0〜20重量部、特に0〜10重量部がより好ましい。配合量が40重量部を超えると高温や屋外暴露時での糊残りが顕著となる。
【0033】
また、軟化剤の分子量は適宣設定することができるが、数平均分子量が5000〜10万程度、特に1万〜5万のものが好ましい。分子量が5000以下であると被着体への物質移行や重剥離化等の原因となり、10万以上では接着力の向上効果が乏しくなる。
【0034】
他方、粘着付与剤の配合も通例、接着力の向上に有効であり、その配合量は凝集力の低下による糊残り問題の発生を回避した接着力の向上などの点より、結晶性プロピレン系共重合体100重量部に対して、50重量部以下とするのが好ましく、さらには30重量部以下、特に0〜20重量部とするのがより好ましい。粘着付与剤としては、例えば、脂肪族系や芳香族系、脂肪族・芳香族共重合体系や脂環式系等の石油系樹脂、クマロンインデン系樹脂やテルペン系樹脂、テルペンフェノール系樹脂や重合ロジン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂やキシレン系樹脂、あるいはそれらの水添系樹脂などの粘着剤で公知のものを適宜に選択し、その1種または2種以上用いることができる。剥離性や耐候性などの点から水添された粘着付与剤が好ましい。また、粘着付与剤とオレフィン樹脂とのブレンド物も市販されており、これらを使用しても構わない。
【0035】
形成する粘着剤層の厚さは接着力などに応じて適宜に決定される。一般には1〜50μm、さらには3〜40μm、特に5〜35μmとするのが好ましい。粘着剤層は必要に応じて、実用に供されるまでの間、セパレ−タなどを仮着して保護することもできる。
【0036】
粘着剤層を付設する基材としては、特に限定されないが、たとえば、ポリエステル、ポリアミド、単独系(ホモポリプロピレン)やエチレン成分を共重合成分とするブロック系、ランダム系、グラフト系等のプロピレン系ポリマー、低密度や高密度やリニア低密度、超低密度等のエチレン系ポリマー、エチレン・プロピレン系共重合体などのオレフィン系ポリマーの1種または2種以上を用いてなる各種プラスチックフィルム、紙、金属フィルム、不織布等が用いられる。
【0037】
前記基材(基材層)に、プラスチックフィルムを使用する場合には、劣化防止等を目的に、例えば、酸化防止剤や紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤等の光安定剤や帯電防止剤、その他、例えばカーボンブラック、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタンの如き充填剤や顔料等の適宜な添加剤も配合することができる。
【0038】
また、上記添加剤の中でも、耐候性向上の観点から、基材(基材層)に特に酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤等を添加することができる。
【0039】
酸化防止剤としてはヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系加工熱安定剤、ラクトン系加工熱安定剤、イオウ系耐熱安定剤などの公知の酸化防止剤を使用することができ、その配合割合は、基材層のベース樹脂(基材層がブレンド物の場合にはそのブレンド物がベース樹脂である)100重量部に対して、5重量部以下が好ましく、より好ましくは3重量部以下、さらに好ましくは0.1〜0.5重量部程度とされる。
【0040】
紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤やトリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤など公知の紫外線吸収剤を使用することができ、その配合割合は、基材層を形成するベース樹脂100重量部に対して、5重量部以下が好ましく、より好ましくは3重量部以下、さらに好ましくは0.1〜1重量部程度とされる。
【0041】
また、光安定剤としてはヒンダードアミン系光安定剤やベンゾエート系光安定剤など公知の光安定剤を使用することができ、基材層のベース樹脂100重量部に対して、5重量部以下が好ましく、より好ましくは3重量部以下、さらに好ましくは0.1〜1重量部程度とされる。
【0042】
充填剤としては、特に無機系充填剤を用いることができ、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛等が好ましく用いられる。配合割合は基材層のベース樹脂100重量部に対して、20重量部以下が好ましく、より好ましくは1〜20重量部、さらに好ましくは5〜15重量部程度とされる。なお、上記酸化防止剤や無機系充填剤等の添加剤は、併用することもできる。
【0043】
上記基材以外に、本発明の粘着シートに用いられる基材は、1層以上の基材(層)からなり、少なくとも、炭素数が8〜30の脂肪族基を有する重量平均分子量1万〜100万の離型剤、及び、ポリオレフィン系樹脂からなる層を含む。
【0044】
なお、前記基材が、複数の基材(層)からなる場合には、全ての基材に前記離型剤を含んでいてもよいし、その一部の基材(層)だけが、前記離型剤を含んでいてもよく、つまり、離型剤を含まない基材(層)を含んでいても構わない。更に、粘着剤層と反対側の最外層にのみ離型剤を含んだ基材を用いてもよい。このように離型剤を基材が含むことにより、基材に背面処理効果を付与することができ、有効である。
【0045】
前記離型剤としては、ポリマー側鎖に炭素数8〜30の脂肪族基を有する重量平均分子量1万〜100万の離型剤であり、具体的には完全ケン化もしくは部分ケン化されたエチレン・ビニルアルコール共重合体やポリビニルアルコールに、炭素数8〜30の脂肪族基を有する化合物と、イソシアネート反応やエステル反応などを用いた反応物などを例示することができる。
【0046】
前記離型剤の合成は、完全ケン化もしくは部分ケン化されたエチレン・ビニルアルコール共重合体やポリビニルアルコールに対して、オクチルイソシアネート、デシルイソシアネート、ラウリルイソシアネート、ステアリルイソシアネート等を用いて、イソシアネート反応させたり、ラウリン酸、ステアリン酸などを用いて、エステル反応させることで、容易に合成することができる。特にポリオレフィン系樹脂(オレフィンポリマー)との相溶性の観点から、エチレン・ビニルアルコール共重合体とイソシアネート化合物からなる反応物が、より好ましいと考えられる。
【0047】
前記エチレン−ビニルアルコール共重合体の構造は、特に限定されないが、好ましくはビニルアルコール構造単位の含有量が40〜80モル%であり、より好ましくは40〜70モル%のものである。エチレン−ビニルアルコール共重合体のビニルアルコール構造単位の含有量が40モル%未満の場合は、これを用いて得られた反応生成物は離型剤としての用途において、十分な離型性能を発現しない可能性があり、一方、80モル%を超えると、これを用いて得られた反応生成物を離型剤として用いる場合、他の樹脂との相溶性が悪く、結果として良好な離型性能を示さなくなる可能性がある。また、エチレン−ビニルアルコール共重合体は、重合度やビニルアルコール構造単位の含有量の異なるものを2種以上混合して用いても良い。
【0048】
また、前記イソシアネート化合物としては、剥離性、耐熱性の観点からステアリルイソシアネートを用いることが好ましい。
【0049】
さらに、上記反応の際に生じる副反応物や反応残渣などは、被着体に対する汚染、接着性低下、製造時のライン汚れ、発煙などを引き起こすため、極力少なくしなくてはならない。具体的にはGPC分析におけるポリスチレン換算重量平均分子量において、副反応物や反応残渣物量を離型剤に対して、1.0面積%以下としたものが好ましく、より好ましくは、0.6面積%以下と考えられる。
【0050】
前記ポリオレフィン系樹脂は、オレフィンモノマーの単独重合体、及び/又は、オレフィンモノマーと極性モノマーの共重合体を含有することが好ましい。より具体的に説明すると、単独重合体としては、ホモポリプロピレン等が挙げられ、共重合体としては、エチレン成分を共重合成分とするブロック系、ランダム系、グラフト系等のプロピレン系ポリマー、リアクターTPO、低密度や高密度やリニア低密度、超低密度等のエチレン系ポリマー、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体などが挙げられ、これらの1種または2種以上を含有することが好ましい。
【0051】
前記基材に含有される離型剤の含有割合としては、基材を構成するポリオレフィン系樹脂及び離型剤の合計100重量部に対して、離型剤が0.1〜20重量部が好ましく、0.5〜20重量部がより好ましい。前記離型剤の割合が0.1重量部未満の場合は、十分に離型性能が発現されず、一方、20重量部を超える場合は、性能的に飽和しているため、経済的に不利となるだけでなく、離型剤の増加により、ポリオレフィン系樹脂との相溶性が低下することにより、成形加工性を低下させるため、好ましくない。
【0052】
粘着剤層を付設する基材の紫外線透過率としては、波長365nmにおける透過率が5%以下、特に1%以下にすることが好ましい。
【0053】
前記基材(基材層)の厚さとしては、5〜300μm程度であり、好ましくは20〜150μmであるが、これに限定されるものではない。
【0054】
粘着剤層の形成は、たとえば、粘着剤の溶剤による溶液や熱溶融液を基材に塗布する方法や、それに準じセパレータ状に塗布、形成した粘着剤層を移着する方法、粘着剤層形成材を基材上に押出し形成塗布する方法、基材と粘着剤層を二層または多層にて押出しする方法、基材上に粘着剤層を単層ラミネートする方法またはラミネート層とともに粘着剤層を二層ラミネートする方法、粘着剤層とフィルムやラミネート層等の基材形成材とを二層または多層ラミネートする方法などの、公知の粘着シートの製造方法に準じて行うことができる。これら粘着シートの製造方法のなかでも、熱可塑性樹脂からなる基材層とともに粘着剤層を、インフレーション法やTダイ法による二層又は多層による共押出し成形する方法が、生産性及びコストの点から好ましく用いうる。
【0055】
なお、基材(基材層)の粘着剤層を付設しない面に対しては、巻戻しが容易な巻回体の形成などを目的として、例えば、基材に、脂肪酸アミドやポリエチレンイミン等を添加して離型処理を行ったり、シリコーン系、長鎖アルキル系、フッ素系などの適宜な剥離剤からなるコート層を設けることもできる。
【0056】
本発明の粘着シートは、JIS Z0237(2000)における低速及び高速巻き戻し力が、1.0N/20mm以下であることが好ましい。ここで、本発明における低速とは、巻戻し速度が0.3m/分を意味し、高速とは、巻戻し速度が30m/分を意味する。また、本発明の粘着シートは、粘着シート(粘着テープ)をロール状に巻回させた巻回体を、巻戻し速度0.3m/分(低速巻戻し)、30m/分(高速巻戻し)で、巻戻した時の巻戻し力が、いずれの巻戻し速度においても、より好ましくは0.7N/20mm以下である。巻戻し力が1.0N/20mmを超えると粘着シート(粘着テープ)を巻戻す際に、粘着シート(粘着テープ)の裂け現象が発生し易くなり好ましくない。本発明においては、粘着シート(粘着テープ)巻回体の低速域から高速域における巻戻し力を上記範囲内にすることによって、基材に切れ目を形成させた粘着シート(粘着テープ)の巻戻し時における裂け現象を効果的に防止することが可能となり、さらに貼り付け時の作業性を維持することができるようになる。本発明において粘着シートの巻戻し力は、粘着剤層を構成する粘着剤の種類やその厚み、基材(層)を構成する離型剤の種類や配合量等により調整することができる。
【0057】
また、本発明における粘着シートの巻戻し力は、JIS Z0237(2000)に基づき、ロール状に巻回した幅20mmの粘着シートを試験試料とし、測定雰囲気温度23℃下、巻戻し力測定装置を使用して、巻戻し速度0.3m/分(低速巻戻し)、30m/分(高速巻戻し)の各条件下において測定される。また、本発明における巻戻し力とは、上記のようにして測定された巻戻し力の最大値のことをいう。
【0058】
本発明の粘着シートは、再剥離性や仮貼り性を要求される用途に好ましく使用することができ、特に金属板や塗装した金属板、アルミサッシ、樹脂板や化粧鋼板、塩化ビニルラミネート鋼板、ガラス板等を運搬、加工、養生する際に、その表面保護のために貼り付けられる等の用途を有する粘着シート(表面保護シート)として好適に使用することができる。
【実施例】
【0059】
以下に、本発明の実施例を挙げて、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に制限されるものではない。
【0060】
(結晶性プロピレン系共重合体)
使用したプロピレン系共重合体の組成比及び特性値を表1に示す。
【0061】
示差走査熱量計(DSC)測定は、示差走査熱量計(装置名 DSC;SIIナノテクノロジー社製 DSC6220)を用い、測定条件として、温度;0〜200℃、雰囲気ガス;窒素(200ml/分)、昇温速度;10℃/分にて測定したものである。測定時の昇温及び降温過程は10℃/分で行った。なお、融解ピーク温度、融解熱(融解ピーク面積)は、JIS K7122に準じて、算出した。
【0062】
【表1】


(注)表1中、P:B:Eはプロピレン:ブテン−1:エチレンを示す。なお、重量平均分子量(Mw)は、高温GPC法(カラム:東ソー製、TSKgel GMHHR−H(20)×3、溶媒:1,2,4−トリクロロベンゼン、ポリスチレン換算)により、流量1.0ml/分、濃度1.0mg/ml、カラム温度140℃にて、測定した値である。
【0063】
<実施例1>
粘着剤層の形成材として、表1中の結晶性プロピレン系共重合体(1)を用い、基材層の形成材として、低密度ポリエチレン(東ソー社製、ペトロセン172)を用い、それぞれをインフレーション成形法によりダイス温度180℃にて共押出しし、粘着シートを得た。なお、粘着剤層の厚さは6μm、基材層の厚さは50μmとなるように調整した。
【0064】
<実施例2>
粘着剤層の形成材として、表1中の結晶性プロピレン系共重合体(2)を用い、基材層の形成材として、ポリプロピレン(日本ポリプロ社製、ノバテックPP FY6C)を用い、それぞれをインフレーション成形法によりダイス温度220℃にて共押出しし、粘着シートを得た。なお、粘着剤層の厚さは10μm、基材層の厚さは40μmとなるように調整した。
【0065】
<実施例3>
粘着剤層の形成材として、表1中の結晶性プロピレン系共重合体(3)を用い、結晶性プロピレン系共重合体(3)100重量部に対して、水添石油系粘着付与樹脂(荒川化学社製、アルコンP−100)10重量部を使用した以外は、実施例1に準じて、調整した。なお、粘着剤層の厚さは6μm、基材層の厚さは50μmとなるように調整した。
【0066】
<実施例4>
まず、離型剤を以下の方法により、調製した。
【0067】
前記離型剤は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(クラレ社製、エバール E−171B、エチレン構造単位:44モル%)100重量部と、オクタデシルイソシアネート(保土谷化学工業社製、ミリオネートO)310重量部をトルエン2000重量部に分散し、2時間還流しながら、途中、還流装置から水分を分離除去した。その後、40℃まで冷却して、ジメチルスルホキシドを300重量部加えて、エチレン−ビニルアルコール共重合体の水酸基に対するイソシアネート基の当量比が0.7当量となるようにオクタデシルイソシアネート(保土谷化学工業社製、商品名「ミリオネートO」)を撹拌しながら滴下し、120℃で4時間反応させた。この間に系中の残存イソシアネート基を赤外線分光光度計で定量(2260cm−1付近)し、その残存分が消失した時点をもって終点とした。
【0068】
反応終了後、反応液に340重量部の水を加えて、反応液を分液した。トルエン層である反応液を110℃で1時間共沸脱水した後、この反応液を、密閉型加圧濾過機(東洋製作所製、滅菌濾過機)を用いて、30℃で加圧濾過した。得られた濾液を5000重量部のメタノール中に注ぎ、白色沈殿物を析出させた。この沈殿物を濾別後、メタノールで洗浄し、遠心分離し、乾燥粉砕して、目的の離型剤363重量部を得た。
【0069】
前記離型剤中に含まれる不純物の合計含量は0.4重量%で、重量平均分子量は1.13×10であった。なお、離型剤中に含まれる不純物の合計含量(重量%)、及び、離型剤の重量平均分子量の算出方法については、以下に詳細に説明する。
【0070】
前記離型剤中に含まれる不純物の合計含量は、GPC法を用いて、評価を行った。装置は東ソー社製「TSKgel」(溶媒:テトラヒドロフラン、温度:40℃、流量:0.6ml/分、濃度1.0mg/ml、カラム:SuperHZM−H/HZ4000/HZ3000/HZ2000、検出器:RI(装置内蔵))を使用し、得られた分子量分布図において、全ピーク面積に対するポリスチレン換算分子量が3.0×10付近にあるピークバレー(極小値)以下の成分のピーク面積の割合を百分率で表した値とした。
【0071】
また、離型剤の重量平均分子量は、前記離型剤中に含まれる不純物の合計含量と同様にして得られた分子量分布図において、ポリスチレン換算分子量が3.0×10付近にあるピークバレー(極小値)よりも高分子量成分についての重量平均分子量である。
【0072】
粘着剤層の形成材として、表1中の結晶性プロピレン系共重合体(1)を用い、基材層は、基材層(A)及び(B)からなり、基材層(A)の形成材として、低密度ポリエチレン(東ソー社製、ペトロセン172)を用い、粘着剤層と反対側であり、基材層(A)に接する基材層(B)の形成材として、低密度ポリエチレン(住友化学社製、スミカセンL−705)100重量部に対して、上記離型剤を5重量部混合したものを用い、それぞれをインフレーション成形法によりダイス温度180℃にて共押出しし、粘着シートを得た。なお、粘着剤層の厚さは6μm、基材層(A)の厚さを45μm、基材層(B)の厚さを5μmとなるように調整した。
【0073】
<実施例5>
基材層(B)の形成材として、低密度ポリエチレン(住友化学社製、スミカセンL−705)100重量部に対して、ポリプロピレン(日本ポリプロ社製、ウィンテック WFX4T)10重量部、上記実施例4で使用する離型剤を7重量部混合したものを用いたこと以外は、実施例4と同様の方法により、粘着シートを得た。なお、粘着剤層の厚さは6μm、基材層(A)の厚さを45μm、基材層(B)の厚さを5μmとなるように調整した。
【0074】
<比較例1>
実施例1において、粘着剤層の形成材として、エチレン/オクテン二元共重合体(デュポン社製、アフィニティーPF−1140)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。なお、粘着剤層の形成材として用いた前記エチレン/オクテン二元共重合体は前記測定条件において吸熱ピーク95.7℃(40.5J/g)を有していた。なお、粘着剤層の厚さは6μm、基材層の厚さは50μmとなるように調整した。
【0075】
<比較例2>
粘着剤層の形成材として、非晶性エチレン/プロピレン/ブテン三元共重合体(P:E:B=80:6:14、Mw=5.7×10)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。粘着剤層の厚さは6μm、基材層の厚さは50μmとなるように調整した。なお、粘着剤層の形成材として用いた前記非晶性エチレン/プロピレン/ブテン三元共重合体は、前記測定条件において吸熱ピークを示さなかった。
【0076】
<比較例3>
粘着剤として、SEBS(旭化成社製、タフテックH1221)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、粘着シートを得た。粘着剤層の厚さは10μm、基材層の厚さは50μmとなるように調整した。なお、粘着剤の形成材として用いた前記SEBSは、前記測定条件において、吸熱ピークを示さなかった。
【0077】
<比較例4>
粘着剤層の形成材として、プロピレン/α−オレフィン二元共重合体(三井化学社製、タフマーXR107L)100重量部に対して、水添石油系粘着付与樹脂(荒川化学社製、アルコンP−100)10重量部を使用した以外は、実施例2に準じて、調整した。なお、粘着剤層の厚さは10μm、基材層の厚さは60μmとなるように調整した。また、粘着剤層の形成材として用いた前記プロピレン/α−オレフィン二元共重合体は前記測定条件において吸熱ピーク108.3℃(24.1J/g)を有していた。
【0078】
<比較例5>
水添石油系粘着付与樹脂を60重量部使用以外は、実施例2と同様にして、粘着シートを得た。なお、粘着剤層の厚さは6μm、基材層の厚さは50μmとなるように調整した。
【0079】
実施例および比較例で得られた粘着シート(表面保護シート)について以下の評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0080】
(初期接着力)
得られた粘着シートを、SUS304BA仕上げ板(日新製鋼社製、DNA−SUS、SUS304BA仕上げ)に、2kgローラーの2往復圧着により貼り付けた後、23℃で1時間放置後の接着力(N/20mm)を測定した。測定条件:23℃×65%RH、剥離速度300mm/分、180度ピール。
【0081】
(経時接着力)
得られた粘着シートを、SUS304BA仕上げ板に、2kgローラーの2往復圧着により貼り付けた後、50℃で30日間放置後の接着力(N/20mm)を測定した。測定条件:23℃×65%RH、剥離速度300mm/分、180度ピール。
【0082】
(接着上昇率)
接着上昇率(%)=100×(経持接着力−初期接着力)/(初期接着力)
【0083】
(粗面接着力)
得られた粘着シートを、SUS304HL仕上げ板(日新製鋼社製、DNA−SUS、SUS304HL仕上げ)に、2kgローラーの2往復圧着により貼り付けた後、23℃で1時間放置後の接着力(N/20mm)を測定した。測定条件:23℃×65%RH、剥離速度300mm/分、180度ピール。
【0084】
(凝集力試験)
得られた粘着シートを、図1に示すように、SUS304BA仕上げ板上に、気泡部、皺部を設けた状態で貼付して、80℃×30日間放置した後、前記気泡部と皺部における糊残り性を目視にて、確認した。糊残りが確認されたものを凝集力×とし、確認されなかったものを凝集力○と判断した。
【0085】
(巻戻し力)
JIS Z0237(2000)に基づき、ロール状に巻回した幅20mmの粘着シートを試験試料とし、測定雰囲気温度23℃下、巻戻し力測定装置を使用して、巻戻し速度0.3m/分(低速巻戻し)、30m/分(高速巻戻し)の各条件下における巻戻し力(N/20mm)を測定した。なお、巻戻し力は、出力された巻戻し力の最大値を巻戻し力とした。また、粘着シートの巻戻しを行っている際に粘着シートが裂けていないか確認した。
【0086】
【表2】


(注)表2中の粗面接着力における(−)は接着力不足のため、接着(固定)されなかったことを示す。また、巻戻し力の空欄部分、及び、実施例4及び5の空欄部分については、評価していないことを示す。
【0087】
表2より、実施例では初期接着力に対して、高温経時での接着力の上昇も小さく、経時的に安定した接着力を有し、高温での凝集性についても優れていることが確認できた。
【0088】
また、実施例4及び5においては、複数の基材からなり、基材の最外層に所定の離型剤及びポリオレフィン系樹脂を含有することにより、背面処理効果が付与され、所定範囲の巻戻し力が得られることが確認できた。
【符号の説明】
【0089】
A:気泡部
B:皺部
C:SUS304BA仕上げ板
PSAS:粘着シート(表面保護シート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレン、炭素数4〜12のα−オレフィンおよびエチレンを共重合成分として含む結晶性プロピレン系共重合体を含有してなる粘着剤であって、
前記プロピレン系共重合体が、示差走査熱量計(DSC)での0〜200℃の温度範囲における測定において、1.1〜24.0J/gの吸熱ピークを有することを特徴とする粘着剤。
【請求項2】
請求項1記載の粘着剤からなる粘着剤層が、基材の少なくとも片面に形成されていることを特徴とする粘着シート。
【請求項3】
表面保護用途に使用されることを特徴とする請求項2記載の粘着シート。
【請求項4】
請求項2又は3記載の粘着シートが、共押出し法により形成されていることを特徴とする粘着シートの製造方法。
【請求項5】
粘着剤層、及び、1層以上の基材からなる粘着シートであって、
前記基材が、少なくとも、炭素数が8〜30の脂肪族基を有する重量平均分子量1万〜100万の離型剤、及び、ポリオレフィン系樹脂からなる層を含み、
前記粘着剤層が、プロピレン、炭素数4〜12のα−オレフィンおよびエチレンを共重合成分として含む結晶性プロピレン系共重合体を含有してなる粘着剤からなり、
前記プロピレン系共重合体が、示差走査熱量計(DSC)での0〜200℃の温度範囲における測定において、1.1〜24.0J/gの吸熱ピークを有することを特徴とする粘着シート。
【請求項6】
JIS Z0237(2000)における低速及び高速巻き戻し力が、1.0N/20mm以下であることを特徴とする請求項5記載の粘着シート。
【請求項7】
請求項5又は6記載の粘着シートが、共押出し法により形成されていることを特徴とする粘着シートの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−275209(P2009−275209A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38261(P2009−38261)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】