説明

粘着剤組成物の製造方法、粘着フィルムの製造方法、粘着剤用原料組成物及び粘着フィルム

【課題】オーブンを使用して高温・高湿度での環境条件下における耐久試験を行った時およびオーブンから取り出した後でも粘着剤層の白濁や被着体からの浮き及び剥がれがない粘着剤組成物及び粘着フィルムを提供する。
【解決手段】官能基としてヒドロキシル基を含有するアクリル系ポリマーを含む粘着剤組成物の製造方法であって、(1)アクリル系モノマーの少なくとも1種類を含有する混合溶媒液を用いて主剤ポリマーを得た後、(2)前記主剤ポリマーと、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類と、光重合開始剤と、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる量の2官能性の架橋剤とを含有する粘着剤用原料組成物を調製し、(3)前記粘着剤用原料組成物を用い、光照射による重合反応及び養生による架橋反応をさせて粘着剤組成物を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着剤組成物の製造方法、粘着フィルムの製造方法、粘着剤用原料組成物及び粘着フィルムに関し、さらに詳細には、オーブンを使用しての高温・高湿度での環境条件下における耐久試験を行った時およびオーブンから取り出した後でも粘着剤層の白濁や被着体からの浮き及び剥がれが生じない優れた性能を有する粘着剤組成物の製造方法、粘着フィルムの製造方法、粘着剤用原料組成物及び粘着フィルムに関するものである。
また、本発明の粘着剤組成物及び粘着フィルムは、ディスプレイの前面に各種の光学フィルム及び保護板を貼り合せる場合や、ガラス同士を貼り合せて合わせガラスを作製する場合に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、PDP(プラズマディスプレイ)、液晶パネル、有機ELパネルなどの各種ディスプレイにおいては、ディスプレイ前面に各種光学フィルムや保護板が貼り付けられている。
例えば、PDPにおいては、電磁波のシールドフィルム以外に、近赤外線の波長領域を使用している各種のリモコンスイッチの誤作動を防ぐための近赤外線吸収フィルム、その近赤外線吸収フィルムに使用されている近赤外線吸収剤の経時劣化を防ぐための紫外線吸収フィルム、さらには可視光領域の色調調整のためのネオン光カットフィルム、光学フィルターの表面に外光が映り込むのを防ぐための反射防止フィルム等が、ディスプレイ前面に貼り付けられている。これらのフィルムをディスプレイ用光学フィルターとして用いることにより画像の映り具合の改善が図られている。
【0003】
また、液晶パネルが表示ディスプレイとして使用されている携帯電話では、液晶パネルの前面に衝撃吸収用の保護板が、液晶パネルの割れ防止のために空気層を介して取り付けられている。しかし、最近では、軽量化と薄型化、及び視認性の向上を図るため、携帯電話の液晶パネルの前面に空気層を設けないで、粘着剤層を用いて直接に薄い保護板を貼り合せることが行なわれている。
また、PDPでも、軽量化と薄型化、及び視認性の向上を図るため、PDPパネルに直接光学フィルター用のフィルムを貼合することがダイレクトカラーフィルター方式として検討がされている。
【0004】
上記の光学フィルムや保護板は、粘着剤層を使用してディスプレイの前面に貼り合せられているが、粘着剤層を使用して各種の光学フィルムや保護板をディスプレイに貼り合せる時に、気泡を巻き込んでしまい粘着剤層と被着体との界面に微小気泡が生じるという問題があった。
また、ディスプレイ表示装置の出荷前に行なわれるディスプレイの性能試験では、オーブンを使用して行われる高温・高湿度での環境条件下における耐久試験に合格する必要がある。オーブンから取り出した後、粘着剤層が白濁してしまうことがある。片側にフィルムを貼合している場合はその白濁は数時間でなくなり透明になるが、ガラス同士やガラス/アクリル板など硬いもの同士を貼合すると白濁は数日以上残る場合があり、ディスプレイの商品価値を損なうという問題があった。
【0005】
このように、粘着テープを使用して光学フィルムや保護板をディスプレイに貼り合せた時に粘着剤層に微小気泡が生じるという問題や、また、ディスプレイをオーブンを使用して高温・高湿度の環境条件下で耐久性試験を行った時、およびオーブンから取り出した後に、粘着剤層に白濁が生じるという問題を解決するために、従来から様々な取り組みが行なわれている。
【0006】
例えば、特許文献1には、粘着剤層の表面に窪みが生じた場合の修復性能を改善して気泡の巻き込みを防止する、粘着剤層を用いた粘着型光学フィルムが開示されている。
具体的には、アルキル基の炭素数が7〜18のアルキル(メタ)アクリレートと水酸基含有モノマーとの重量比率が100:0.01〜5で含有するポリマー及び水酸基と反応する官能基を2つ以上有する化合物を含有する組成物の架橋物により形成された粘着剤層である。この粘着剤層を用いた光学フィルムをガラスに貼り合せた後、50℃×0.05MPa雰囲気下に5分間放置し、粘着剤層での微小気泡の発生の有無を目視にて確認する方法により気泡の有無を検査しているが、微小気泡の発生が防止できているとしている。
【0007】
また、特許文献2には、画像表示装置等の保護に必要な衝撃吸収のための、アクリル酸系誘導体、アクリル酸系誘導体ポリマー、及び高分子量架橋剤を含有した樹脂組成物が開示されている。画像表示用パネルの割れ防止あるいは応力及び衝撃の緩和に有用で透明性に優れているとしている。
吸湿試験として、樹脂シートを60℃、90%RHの高温高湿試験槽に50時間入れることで行い、目視観察で評価を行なう方法で確認した結果、この樹脂組成物であれば発泡が少なく透明性に優れているとしている。
【0008】
また、特許文献3には、優れた耐湿熱性を有する電子ディスプレイ用粘着剤層が開示されている。具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと、カルボキシル基含有モノマーとの共重合体および/または混合物を含む電子ディスプレイ用粘着剤組成物であって、さらに、アルキレンオキシ基を有するモノマー、および、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステルモノマーを含むことを特徴とする電子ディスプレイ用粘着剤組成物である。
吸湿試験として、樹脂フィルムに積層した粘着剤層介してガラス板に貼り合せた積層体を60℃、90%RHの環境下に120時間放置した後、常温(25℃)下で30分間放置した後、ヘイズ値を測定して積層体の透明性を判定している。この粘着剤組成物によれば、高温高湿下で放置された後でも、発泡が少なくて高い透明性を維持できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−262729号公報
【特許文献2】特開2008−248221号公報
【特許文献3】特開2008−001739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
以上に示した特許文献1〜3に記載の粘着剤組成物及び粘着剤層では、高温高湿の環境条件として、高々60℃、90%RHの環境下で行うものである。
ところで、特許文献3に関しては、供試用の粘着剤層を60℃、90%RHの環境下のオーブンにて試験し、およびそこから取り出した後、常温(25℃)下で30分間放置するという試験方法を採用している。つまり、特許文献3の試験方法は、粘着剤層の白濁はオーブンから取り出した直後から数分の間に白濁が始まり、30分後には目立たなくなる場合にも合格と判定される可能性がある。実際、特許文献2に関しては、吸湿試験後も白濁を維持した実施例19と違い、作製直後は若干の濁りが観察されたという実施例18もA(吸湿試験で白濁は認められない)と評価され、作製直後の濁りは考慮されていない。
この場合、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの薄い樹脂フィルムを片側もしくは両面に貼合する場合はあまり目立たない現象であるが、アクリル板とガラス、ガラス同士などガスバリア性の高い材料を貼合した場合、60℃、90%RHの環境下にあるオーブンから取り出した直後から数分の間に白濁が始まり、その白濁が数時間以上に渡って残ってしまうという現象が生じ、この粘着剤層を使用する環境によっては大きな問題となる。
また、近年、ディスプレイの用途が拡大していることに伴い、従来の環境試験条件に比較して、更に厳しい環境条件下での耐久性能が求められている。例えば、車載用のディスプレイに使用される光学フィルムを貼り合せる粘着テープでは、85℃、95%RHの環境条件下においても粘着剤層の白濁や被着体からの浮き及び剥がれが生じない粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着テープが必要とされている。
【0011】
しかし、特許文献1に記載の粘着剤組成物は、アクリル系ポリマーの骨格となるアルキル基の炭素数が7〜18のアルキル(メタ)アクリレート(A)と、アクリル系ポリマーに水酸基を付与するための水酸基含有モノマー(B)との共重合ポリマーを形成した後、水酸基と反応する官能基を2つ以上有する化合物を含有する組成物(架橋剤)を添加して、架橋反応を行わせて得られる粘着剤組成物であるが、(A)に対する(B)の重量比が100:0.01〜5であり、(B)の添加量がわずかであることから水分の保持に寄与し高温高湿での環境試験においての発泡防止に有効と考えられる水酸基の絶対量が少な過ぎる。さらに、共重合ポリマーに付与された水酸基は架橋反応で消費されてしまい、架橋反応後に残存している水酸基の数量が限られてしまう。
従って、過酷な高温高湿の環境条件下では、粘着層が厚い視認性向上用粘着テープとして使用すると、水分に起因する粘着剤層の白濁や高温環境下にさらされたことによる被着体の変形による被着体からの浮き及び剥がれを防止できないという問題があった。
【0012】
また、特許文献2に記載の粘着剤組成物は、アルキル基の炭素数が4〜18であるアルキルアクリレート(A)及びヒドロキシル基含有アクリレート(B)の混合物を重合して得られるコポリマーと、前記(A)及び(B)のモノマー混合物と、高分子量架橋剤とを加えた後、架橋反応させて得られる粘着剤組成物である。特許文献2の場合、85℃、95%RHの環境条件下においても粘着層の白濁が生じない粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着テープであることは明言されておらず、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを過剰に導入しているため、実施例のように型枠に樹脂を流し込んで、ガラスで紫外線を弱めて長時間照射する必要があるなどの設備の工夫が必要である。また、60℃、90%RHの環境条件下においても粘着層の白濁が生じない粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着テープであると明言されているが、弱い紫外線を長時間照射する必要があるため生産性が悪い。
【0013】
また、特許文献3に記載の粘着剤組成物は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと、カルボキシル基含有モノマーとの共重合体が使用されている。
また特許文献3の場合も特許文献2と同様に85℃、95%RHの環境条件下においても粘着層の白濁が生じない粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着テープであることは明言されておらず、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーを過剰に導入しているため、実施例のように紫外線硬化時に可能な限り弱い紫外線を長時間照射する必要がある。また、60℃、90%RHの環境条件下においても粘着層の白濁が生じない粘着剤組成物、及びそれを用いた粘着テープであると明言されているが、弱い紫外線を長時間照射する必要があるため生産性が悪い。
【0014】
このように、従来技術においては、著しく過酷な高温高湿の環境条件である、例えば、車載用のディスプレイに適用される、85℃、95%RHの環境条件下においても粘着剤層の白濁や被着体からの浮き及び剥がれが生じず、かつ生産性よく安価に提供される技術ではなかった。
【0015】
すなわち本発明の目的は、オーブンを使用して(60℃、90%RH)や(85℃、95%RH)などの高温・高湿度での環境条件下における耐久試験を行った時およびオーブンから取り出した後でも粘着剤層の白濁や被着体からの浮き及び剥がれがない粘着剤組成物の製造方法及び粘着剤組成物、それを用いた粘着フィルムを生産性よく提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
急激的な外的環境の変化による水分子を凝集させずに粘着剤層の白濁を防止するため、本発明では、ヒドロキシル基を有するアクリル系ポリマーの製造に際し、ヒドロキシル基を有しないモノマーをできる限り単体でポリマー化することにより水分子が目に見えない程度に分散した状態で存在する粘着剤組成物を得ることを技術思想としている。
さらに、被着体からの浮き及び剥がれを防止するため、粘着剤を架橋して耐熱性を付与するとともに、高温環境下にさらされて被着体に変形が生じても架橋した粘着剤が被着体の変形に追従できるようにする。
【0017】
本発明では、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類を重合反応させて得られるヒドロキシル基を有するポリマーを粘着剤層に導入して、水分子の凝集防止に関与させる。
そこで、本発明では、上記問題点を解決するために、主剤となるアクリル系ポリマーをあらかじめ重合させておき、これをヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類を溶解させたシロップ、もしくは有機溶媒液に溶解して得られた溶剤系アクリル樹脂に、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる量の2官能性の架橋剤と、光重合開始剤を加えて粘着剤塗布液(粘着剤層の前駆体となる粘着剤用原料組成物)を調製し、この塗布液を基材に塗布・乾燥・光照射・養生して、水分子の凝集防止に関与するヒドロキシル基を含有し、かつ被着体の変形に追従できる程度に架橋された粘着剤組成物を得る。これにより、ヒドロキシル基を有するアクリル系ポリマーを効率良く作製し、かつ均一に混ざりにくいポリマー同士を問題なく混合することができ、光学特性に優れた粘着剤組成物を得る。さらに、あらかじめ重合させておいた主剤となるアクリル系ポリマーに対するモノマーの添加量を従来技術と比較して少なくできるため、生産性の高い粘着フィルムを提供できる。
【0018】
前記課題を解決するため、本発明は、官能基としてヒドロキシル基を含有するアクリル系ポリマーを含む粘着剤組成物の製造方法であって、
少なくとも次の工程(1)〜(3)
(1)アクリル系モノマーの少なくとも1種類を含有する混合溶媒液を用いて、主剤ポリマーを得るポリマー製造工程、
(2)前記主剤ポリマーと、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類と、光重合開始剤と、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる量の2官能性の架橋剤とを含有する粘着剤用原料組成物を調製する工程、
(3)前記粘着剤用原料組成物を用い、光照射による重合反応及び養生による架橋反応をさせて粘着剤組成物を得る工程、
を有することを特徴とする粘着剤組成物の製造方法を提供する。
【0019】
また、本発明は、官能基としてヒドロキシル基を含有するアクリル系ポリマーを含む粘着剤層を備えた粘着フィルムの製造方法であって、
少なくとも次の工程(1)〜(4)
(1)アクリル系モノマーの少なくとも1種類を含有する混合溶媒液を用いて、主剤ポリマーを得るポリマー製造工程、
(2)前記主剤ポリマーと、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類と、光重合開始剤と、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる量の2官能性の架橋剤とを含有する粘着剤用原料組成物を調製する工程、
(3)前記粘着剤用原料組成物を、粘着フィルムの基材またはセパレーター上に塗布及び乾燥して粘着剤塗布膜を形成する工程、
(4)前記粘着剤塗布膜への光照射による重合反応及び養生による架橋反応をさせて粘着剤層を得る工程、
を有することを特徴とする粘着フィルムの製造方法を提供する。
【0020】
また、本発明は、
(A)エステル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が85〜95重量部と、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が5〜15重量部とを含有するモノマーから重合された主剤ポリマー:100重量部と、
(B)ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類:5〜20重量部と、
(C)光重合開始剤:0.01〜0.5重量部と、
(D)2官能性の架橋剤を、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる1.0〜3.0重量部と、
を含有し、かつ前記主剤ポリマーの分子量分布が、数平均分子量(Mn)で7万以上、重量平均分子量(Mw)で100万以上であることを特徴とする粘着剤用原料組成物を提供する。
【0021】
また、本発明は、
(A)エステル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が85〜95重量部と、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が5〜15重量部とを含有するモノマーから重合された主剤ポリマー:100重量部と、
(B)ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類:5〜20重量部と、
(C)光重合開始剤:0.01〜0.5重量部と、
(D)2官能性の架橋剤を、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる1.0〜3.0重量部と、
を含有し、かつ前記主剤ポリマーの分子量分布が、数平均分子量(Mn)で7万以上、重量平均分子量(Mw)で100万以上であることを特徴とする粘着剤用原料組成物を基材またはセパレーター上に塗布した後、光照射による重合反応及び養生による架橋反応をさせて得られる厚みが0.05〜3mmの粘着剤層を備えた粘着フィルムを提供する。
【0022】
本発明は、前記粘着剤層は、その粘着面を被着体に貼合後23℃、50%RH環境下に1時間放置後、剥離速度300mm/minで剥離したときのガラスおよびアクリル樹脂に対する粘着力が10N/25mm以上であることが好ましい。このような高い粘着力を得るためには、粘着剤層を構成する粘着剤の23℃、1Hzでの貯蔵弾性率(G′)が1×10Pa以上かつ1×10Pa未満であることが好ましい。
本発明は、例えばディスプレイに部材を貼り合わせる用途の粘着テープに好適である。
【発明の効果】
【0023】
上記の本発明によれば、アクリル系ポリマーの架橋反応を最小限度に抑えることで、ポリマーに導入したヒドロキシル基の数量が消費されて減少するのを抑えると共に、水分子を吸着させるヒドロキシル基が可能な限り分散した状態で必要な数量で存在する粘着剤組成物を提供することにより、高温高湿度環境条件下における水分をヒドロキシル基含有ポリマーに吸着できて、緩衝性を高めるために粘着剤層を厚くしても、吸収した水分子の凝集に起因する白濁の発生を防ぐことができる。
また、粘着剤塗布液の流動性を適切に調整することによって基材への塗布厚みを厚くすることが可能であり、厚みのある粘着剤テープを形成して緩衝性を高めることができる。
さらに、架橋剤の量及び種類を、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる量の2官能性の架橋剤とすることにより、高温環境下にさらされたことによる被着体の変形に追従できる程度に粘着剤を架橋して耐熱性が付与され、被着体からの浮き及び剥がれを防止することができる。
【0024】
請求項1に係る発明によれば、緩衝性を高めるために粘着剤層の厚みを厚くしても、高温・高湿度での環境条件下およびそれより取り出した後における水分子の凝集に起因する粘着剤層の白濁や被着体からの浮き及び剥がれが生じない粘着剤組成物の製造方法を提供できる。
請求項2に係る発明によれば、緩衝性を高めるために粘着剤層の厚みを厚くしても、高温・高湿度での環境条件下およびそれより取り出した後における水分子の凝集に起因する粘着剤層の白濁や被着体からの浮き及び剥がれが生じない粘着フィルムの製造方法を提供できる。
【0025】
請求項3に係る発明によれば、緩衝性を高めるために粘着剤層を厚くしても、高温・高湿度での環境条件下およびそれより取り出した後における水分子の凝集に起因する粘着剤層の白濁や被着体からの浮き及び剥がれが生じない粘着剤塗布液(粘着剤用原料組成物)を提供できる。
請求項4〜6に係る発明によれば、緩衝性を高めるために粘着剤層を厚くしても、高温・高湿度での環境条件下およびそれより取り出した後における水分子の凝集に起因する粘着剤層の白濁や被着体からの浮き及び剥がれが生じない粘着フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)は本発明の粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を有する片面粘着テープの一例を模式的に示す断面図であり、(b)は本発明の粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層を有するトランスファーテープの一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の粘着フィルムの製造方法の一例を模式的に示す説明図である。
【図3】(a)は実施例6及び比較例2について、高温高湿度試験オーブンから取り出した直後からのヘイズ値の変化を示すグラフであり、(b)は(a)を時間が0〜40分の範囲で拡大したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
本発明の粘着剤用原料組成物は、少なくとも1種類のヒドロキシル基含有モノマー(モノマーB)を、そのモノマーBを重合させるための重合開始剤、主剤ポリマー(ポリマーA)および主剤ポリマーを架橋するための架橋剤に混合したものである。この粘着剤用原料組成物は、エネルギー線により重合する光重合性化合物として、少なくとも1種類のヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートを含有する。(メタ)アクリレートのモノマーは、光重合開始剤とラジカル重合可能なビニル基である(メタ)アクリル基を有する重合性化合物であって、例えば、300nm〜400nmの範囲内の紫外線に対して硬化性を有する紫外線硬化性樹脂材料である。
なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
【0028】
ポリマーAは、粘着剤の主剤となり、かつ、ヒドロキシル基を含有したアクリル系モノマー(モノマーB)が分散しやすいものであれば良い。
モノマーBが分散しやすいためにはアクリル系ポリマーであることが好ましく、さらには親水性モノマーを共重合していることが好ましい。これはモノマーBがアクリル系であることとヒドロキシル基を含有しているためである。また、本発明の粘着剤用原料組成物は光学用途に使用されることから透明性を有することが必要であり、かつ粘着力の強弱を制御することが簡便であることからも、ポリマーAは、アクリル系ポリマーが好ましい。
【0029】
本発明の粘着剤用原料組成物を用いて、基材(またはセパレーターでも良い。)に塗布・乾燥させた後、光照射して重合させると、粘着フィルムが得られる。また、本発明の粘着剤用原料組成物は、ポリマーを架橋するための架橋剤を含有するが、架橋剤の含有量はポリマーの架橋点に対して1当量未満(好ましくは、例えば0.5当量以下)とされる。これにより、架橋剤がイソシアネート化合物のようにポリマーBのヒドロキシル基と架橋反応し得るものであっても、ポリマーBのヒドロキシル基の少なくとも一部が架橋されず、その未架橋のヒドロキシル基が分散して存在することによって水分の吸着能に優れた粘着剤層が得られる。
さらに、本発明においては、架橋剤の量及び種類をポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる量の2官能性の架橋剤とすることにより、被着体の変形に追従できる程度に粘着剤を架橋して耐熱性が付与され、被着体からの浮き及び剥がれを防止することができる。
【0030】
なお、本明細書において、粘着フィルムとは、幅による区別を特に必要とするものではなく、JIS Z 0109に規定する粘着テープ及び粘着シートをいずれも包含する。その具体例としては、基材の片面に粘着剤層を有する片面粘着テープ(または片面粘着シート)、基材の両面に粘着剤層を有する両面粘着テープ(または両面粘着シート)、及び、基材を有しないで粘着剤層がフィルム状に形成されたトランスファーテープ(転写テープ)が挙げられる。粘着シートは、大面積化も可能で、その幅が広いまま使用しても良いし、テープ状に細く切断して粘着テープとして使用しても良い。特に、ロール状に巻いた粘着シートや粘着テープは、ディスプレイに部材を貼り合わせる用途に好適である。
【0031】
図1(a)に、本発明の粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層2を有する片面粘着テープ5の一例を模式的に示す。この片面粘着テープ5は、粘着剤層2の支持体となる基材1の片面に粘着剤層2が形成され、粘着剤層2の粘着面がセパレーター3で保護されている。使用時には、セパレーター3を剥離して粘着面を露出し、粘着剤層2の裏面に基材1が積層されたまま、被着体に貼り合わされる。
基材を有する両面粘着テープの構造については特に図示しないが、基材の両面に粘着剤層が形成され、それぞれの粘着剤層の粘着面がセパレーターで保護された構造を有する。
【0032】
図1(b)に、本発明の粘着剤組成物を用いて形成された粘着剤層2を有するトランスファーテープ6の一例を模式的に示す。このトランスファーテープ6は、粘着剤層2の両面にセパレーター3,3が設けられている。使用時には、一方のセパレーター3を剥離して片方の粘着面を露出して被着体に貼り合わされる。さらに他方のセパレーター3を剥離することで、フィルム状の粘着剤層2のみを被着体に転写(トランスファー)することができる。他方のセパレーター3を剥離した後には、新たな粘着面にも他の被着体を貼り合わせることができる。
本発明における、高温・高湿度での環境条件下における白濁の発生を防止できる改善効果については、トランスファーテープの形態で貼り合わせるガラス(無機ガラス)やアクリル樹脂(アクリルガラス)などの水分の透過性が悪いものの場合に、特に著しい効果が得られる。これは次の理由による。
水分子の透過性の良い樹脂フィルムを貼合する場合は、粘着テープ層に分散している水分子が樹脂フィルムの場合は簡単に透過して通り抜けることができるため、水分子の凝集する確率が減ることと、仮に水分子が凝集したとしてもすぐに樹脂フィルムを通して抜けていくため、白濁している時間が短いことになる。しかし、水分子の透過性の悪い材料を貼合する場合は、水分子が凝集し白濁してしまうと、粘着テープの周辺端に水分子が拡散した後に抜けるため、長時間に渡り白濁が続くことになるからである。
【0033】
本発明では、ポリマーAの原料となるモノマーとして、エステル基(−COO−)を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類と、カルボキシル基(−COOH)を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類とを含有することが好ましく、その他、種々の化合物を用いることができる。エステル基(−COO−)を有するアクリル系モノマーとしては、例えば、一般式CH=CR−COOR(式中、Rは水素又はメチル基、Rは炭素数1〜14のアルキル基を示す。)で表わされるアルキル(メタ)アクリレートや、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0034】
一般式CH=CR−COOR(式中、Rは水素又はメチル基、Rは炭素数1〜14のアルキル基を示す。)で表わされるアルキル(メタ)アクリレートとしては、具体的には、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、イソペンチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ、これらを単独で又は二種以上を併用して使用することができる。このうち2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
アルキル(メタ)アクリレートは、粘着力の観点から、アルキル基Rの炭素数が1〜14とされる。アルキル基の炭素数が15以上であると、粘着力が低下する可能性があるので好ましくない。このアルキル基Rは、炭素数が1〜12であることが好ましく、炭素数が4〜12であることが好ましく、炭素数が4〜8であることがより好ましい。
また、アルキル基Rの炭素数が1〜14のアルキル(メタ)アクリレートのうち、アルキル基Rの炭素数が1〜3または13〜14のアルキル(メタ)アクリレートをモノマーの一部分として用いても良いが、アルキル基Rの炭素数が4〜12のアルキル(メタ)アクリレートを必須として(例えば50〜100モル%)用いることが好ましい。
なお、これらのアルキル基Rは、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。
【0035】
また、ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、カルボキシル基を含有するアクリル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、2−アクリロイルエチル琥珀酸などが挙げられる。
【0036】
エステル基を有するアクリル系モノマーとカルボキシル基を有するアクリル系モノマーとの混合比は、被着体の変形に追従できる程度に粘着剤を架橋して耐熱性を付与し、被着体からの浮き及び剥がれを防止するためには、エステル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が85〜95重量部、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が5〜15重量部の混合比であることが好ましい。
【0037】
ポリマーAの原料モノマーには、他のモノマーを添加することもできる。例えば、カルボキシル基、アルコキシシリル基、アミノ基、ヒドロキシル基、スルホン酸基などの親水基を持つモノマーを選定して使用することができる。
ポリマーAを構成するモノマーのうち、アルキル(メタ)アクリレートと親水基を有するモノマーとの配合比は、粘着剤に求められる特性やモノマーの種類、1分子中に親水基が占める重量比などによっても異なるが、例えば5〜50重量%が親水基を有するモノマーであり、95〜50重量%がアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0038】
また、アルコキシシリル基を含有するアクリル系モノマーとしては、例えば、γ−トリメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、γ−メチルジメトキシシリルプロピル(メタ)アクリレート、γ−トリエトキシシリルプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
また、アルコキシシリル基を含有する非アクリル系モノマーとしては、例えば、ビニルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが挙げられる。
また、アミノ基を含有するアクリル系モノマーとしては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モノメチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基を含有する(メタ)アクリレートのほか、(メタ)アクリル酸アミド、イタコン酸アミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0039】
ポリマーAは、その大部分(例えば50重量%以上、より好ましくは80重量%以上)がアクリル系モノマー(アルキル(メタ)アクリレートおよび親水基を有するアクリル系モノマー)から構成されることが好ましいが、本発明の効果を損ねない程度に、アクリル系モノマー以外のモノマー(非アクリル系モノマー)を併用することもできる。
ポリマーAを構成するアクリル系モノマー及び任意に配合される非アクリル系モノマーを重合させるには、溶液重合、塊状重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の方法により行うことができるが、除熱の容易な溶液重合が好適に用いられる。溶液重合反応において使用される有機溶媒としては、具体的には、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素類、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素類等が挙げられるが、上記重合反応を阻害しなければ、特に限定されない。これらの溶媒は、1種類のみを用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。溶媒の使用量は、適宜に決定すればよい。
一般的に、溶液重合反応においては、重合温度が高くなるに従い、生成されるポリマーの分子量は低下する。重合反応を溶媒の還流温度で行わせるに当たり、重合反応に適した沸点温度を有する溶媒を使用することにより、重合反応熱を除去しながらポリマーを得ることができる。
【0040】
ポリマーAの分子量分布は、数平均分子量(Mn)で7万以上、かつ重量平均分子量(Mw)で100万以上であることが好ましい。さらに、重量平均分子量(Mw)が1200万以上であることがより好ましい。このようにポリマーAの分子量が大きいと、耐熱性および耐候性がより優れたものとなる。
分子量が大きすぎると粘度が高すぎて加工適性が悪くなる。塗料の温度を上げるなど塗工方法を工夫することでこの上限はさらに広げられると考えられるが、室温で塗工をする場合、例えば、Mw500万未満の材料が好ましいと考えられる。
【0041】
また、本発明の粘着剤用原料組成物は、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマー(モノマーB)の少なくとも1種類を含有する。
本発明の粘着剤用原料組成物の一つの好ましい実施態様においては、ヒドロキシル基を含有しないアルキル(メタ)アクリレート及びアクリル酸のモノマーを重合させて得られたアクリル系ポリマーと、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーとが、共重合しないで別々に分散した混合状態で存在する。また、別の好ましい実施態様においては、親水性モノマーを含むモノマーを重合させて得られたポリマーAと、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーとが、粘着剤用原料組成物中に含まれる。
【0042】
モノマーBの含有量(モノマーBが2種類以上である場合にはその合計量)は、主剤ポリマー(ポリマーA)100重量部に対して、5〜20重量部であることが好ましく、85℃95%RH環境下での試験を行うなど高耐久性を必要とする場合、5〜15重量部であることがより好ましい。
なお、公知のヒドロキシル基を含有するアクリル系ポリマーからなる粘着剤組成物において、未反応モノマーとしてヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレートのモノマーを若干含有することがあるが、その含有率は、本発明の粘着剤用原料組成物におけるヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートの含有率に比べると、著しく低いものに過ぎない。
【0043】
本発明の粘着剤用原料組成物は、主剤ポリマーと、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーと、光重合開始剤と、架橋剤とを含有したアクリルシロップの状態、もしくは塗布及びヒドロキシル基含有モノマーの均一な分散のため、上記アクリルシロップが有機溶媒に溶解している樹脂溶液として調製される。
【0044】
ヒドロキシル基含有モノマーを前記主剤ポリマーに溶解させてアクリルシロップを得る工程においては、ヒドロキシル基含有モノマーを主剤ポリマーに溶解させる前に、重合反応で用いた有機溶媒を除去して、得られた液状の主剤ポリマーを分離し、必要に応じて水や有機溶媒等で洗浄することが好ましい。これにより、主剤ポリマーの重合反応を完全に停止させ、また、主剤ポリマーから未反応のアクリル系モノマーを除去することができる。また、主剤ポリマーの重量をより正確に定量して、次工程で用いるヒドロキシル基含有モノマー、架橋剤及び光重合開始剤の含有量をより適切に調整されたアクリルシロップが作製できる。アクリルシロップを作製する場合、主剤ポリマーにヒドロキシル基含有モノマーを溶解させた後に上記の重合反応に用いた有機溶媒の除去作業を行ってもかまわない。
また、アクリルシロップに光重合開始剤を添加した後は、室内光や太陽光に含まれる紫外光がアクリルシロップに作用すると重合反応が進行するおそれがあり、管理が難しくなるため、光重合開始剤は、後工程である塗布工程のなるべく直前に添加することが好ましい。これは、アクリルシロップが有機溶媒に溶解している樹脂溶液でも同様の扱いで、注意すべきは光開始剤が何らかの外的要因で塗布・製膜前に反応を開始してしまうことを防ぐことである。
【0045】
本発明の粘着剤用原料組成物は、基材への塗布に適した流動性を付与するため、適量の有機溶媒を配合した粘着剤塗布液とすることが好ましい。粘着剤塗布液において使用される有機溶媒としては、具体的には、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、酢酸エチル、酢酸ブチル等の脂肪族エステル類、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素類、ヘキサン、ペンタン等の脂肪族炭化水素類等が挙げられるが、上記塗布及び分散の目的を達することができるものであれば、特に限定されない。
【0046】
粘着剤塗布液を調製する際、主剤ポリマー、ヒドロキシル基含有モノマー、光重合開始剤、架橋剤の4種が互いに適切な配合比で有機溶媒に溶解した有機溶媒液が得られれば良く、その溶解させる順序は特に限定されない。例えば、主剤ポリマーを重合して得られるアクリルシロップに直接、ヒドロキシル基含有モノマー、光重合開始剤、架橋剤を投入したり、ヒドロキシル基含有モノマー、光重合開始剤、架橋剤を適量の有機溶媒に溶解した液を投入したりしても良い。
【0047】
本発明でモノマーBとして使用されるヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーは、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシルブチル(メタ)アクリレート、5−ヒドロキシルペンチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシルヘキシル(メタ)アクリレート、7−ヒドロキシルヘプチル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシルオクチル(メタ)アクリレート、7−メチル−8−ヒドロキシルオクチル(メタ)アクリレート、2−メチル−8−ヒドロキシルオクチル(メタ)アクリレート、9−ヒドロキシルノニル(メタ)アクリレート、10−ヒドロキシルデシル(メタ)アクリレート、12−ヒドロキシルラウリル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらを、1種のみ用いてもよいし2種以上を併用してもよい。特に、2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシルブチル(メタ)アクリレートが好適に使用される。
ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートとしては、二価アルコール(ジオール化合物)の有する2つのヒドロキシル基のうち一つのヒドロキシル基を、アクリル酸またはメタクリル酸でエステル化して得られ、1分子にヒドロキシル基及びビニル基を1つずつ有する、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが好適に用いられる。
【0048】
本発明で使用するモノマー(ポリマーAを構成するモノマー、およびモノマーB)の種類は、必要とされる粘着テープの粘着力、貯蔵弾性率によって変わるが、リワーク性を有する粘着テープにする場合、貯蔵弾性率が高くて固い粘着剤組成物でも良いため、モノマーのおおよその指針としてはTgが室温以上のものが好ましい。強粘着力を必要とする場合や貯蔵弾性率を低くしたい場合は、その逆でTgが室温より低く、好ましくはTgがマイナス温度となるモノマーが必要となる。
【0049】
光重合開始剤(重合触媒)としては、特に限定されないが、例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤、チオキサントン系光重合開始剤等が挙げられる。
アセトフェノン系光重合開始剤としては、アセトフェノン、p−(tert−ブチル)1’,1’,1’−トリクロロアセトフェノン、クロロアセトフェノン、2’,2’−ジエトキシアセトフェノン、ヒドロキシルアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2’−フェニルアセトフェノン、2−アミノアセトフェノン、ジアルキルアミノアセトフェノン等が挙げられる。
ベンゾイン系光重合開始剤としては、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、1−ヒドロキシルシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシル2−メチル−1−フェニル−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシル2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
ベンゾフェノン系光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、メチル−o−ベンゾイルベンゾエート、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシルベンゾフェノン、ヒドロキシルプロピルベンゾフェノン、アクリルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
チオキサントン系光重合開始剤としては、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ジメチルチオキサントン等が挙げられる。
その他の光重合開始剤としては、α−アシルオキシムエステル、ベンジル−(o−エトキシカルボニル)−α−モノオキシム、アシルホスフィンオキサイド、グリオキシエステル、3−ケトクマリン、2−エチルアンスラキノン、カンファーキノン、テトラメチルチウラムスルフィド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジアルキルペルオキシド、tert−ブチルペルオキシピバレート等が挙げられる。
【0050】
これらの光重合開始剤は、1種類のみを用いてもよく、また、2種類以上を併用してもよい。光重合開始剤の含有量は、重合性化合物(本発明の場合は、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレート)の全量を100質量%とする重量百分率において、0.02〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%であることが特に好ましい。光重合開始剤の含有量が0.02質量%以上であれば、重合性化合物を短時間に重合でき、10質量%以下であれば、光重合開始剤の残渣が硬化物中に残存しにくい。
また、上述したように、主剤ポリマー100重量部に対して、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマー(2種類以上用いる場合は合計量)は5〜20重量部であることが好ましく、85℃95%RH環境下での試験を行うなど高耐久性を必要とする場合、5〜15重量部であることがより好ましいので、主剤ポリマー100重量部を基準とした光重合開始剤の含有量は、0.01〜0.5重量部が好ましい。
【0051】
本発明においては、光重合後の粘着剤組成物において、モノマーのうち、40〜80重量%、好ましくは50〜75重量%の範囲で重合させることが望ましい。つまり、60〜20重量%、好ましくは50〜25重量%の範囲で未反応モノマーを残すことが望ましい。重合率が40重量%に満たない場合には、得られた重合体に充分な粘着性が付与されず、また、80重量%を超える量の重合率では凝集力の低下が見られ、粘着剤層を剥離除去した時に糊残り現象を生じることがある。
【0052】
2官能性の架橋剤としては、架橋反応する官能基を1分子中に2つ有する化合物であれば、特に限定されない。このような2官能性の架橋剤としては、例えば、2官能性エポキシ化合物、2官能性イソシアネート等が挙げられる。
2官能性エポキシ化合物としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等の脂肪族の2官能性エポキシ化合物や、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、レゾルシンジグリシジルエーテル等の芳香族の2官能性エポキシ化合物が挙げられる。2官能性エポキシ化合物のエポキシ基は、ポリマーのカルボキシル基と架橋反応することができる。
2官能性イソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネートやイソホロンジイソシアネート(IPDI)等の脂肪族の2官能性イソシアネートや、トリレンジイソシアネートやジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族の2官能性イソシアネートが挙げられる。2官能性イソシアネートのNCO基は、ポリマーのカルボキシル基やヒドロキシル基と架橋反応することができる。
2官能性の架橋剤の含有量は、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる範囲で、例えば、主剤ポリマー100重量部に対して1.0〜3.0重量部が好ましい。
【0053】
ここで、粘着剤用原料組成物を塗布して粘着フィルムを形成するときに用いる基材の材質は、透明性、耐熱性を有していて、及び紫外線硬化性樹脂組成物の硬化を阻害する350nm〜400nm近傍の紫外線領域に散乱・吸収が小さいものが好ましい。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリスチレン、ポリアクリル酸塩、ポリエーテルエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリアミド、ナイロン、ポリイミド、トリアセチルセルロース(三酢酸セルロース)、二酢酸セルロース、ポリ(メタ)アクリル酸アルキルエステル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレンやポリトリフルオロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル―酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、セロファン、セルロース系フィルムなどを挙げることができる。これら材料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
特に前記基材のうち、耐熱性、紫外線透過性、及び価格の面から、ポリエチレンテレフタレートを用いることが好ましい。
なお、基材の厚みは16μm〜200μmを有することが好ましく、50μm〜188μmを有することが更に好ましい。基材の厚みが薄過ぎるとハンドリング性が悪く、また、基材の厚みが厚過ぎると、コスト面、ハンドリング性で不利である。
【0054】
粘着剤用原料組成物を基材に塗布する塗布装置は、基材上に粘着剤用原料組成物を均質に供給して塗布する手段を備えるものであればどういった装置でも良いが、連続的に粘着剤用原料組成物を基材上に供給して塗布できるよう、粘着剤用原料組成物を貯蔵するタンク、送液ポンプ、配管、異物除去フィルター、コーターヘッドからなる構成を持つ装置が好ましい(図示なし)。コーターヘッドは、例えばダイコーターなどが好適である。
塗布装置により、基材の片面に粘着剤用原料組成物の薄膜層(塗布膜)が形成される。塗布装置で塗布した直後の粘着剤用原料組成物は、未硬化でかつ液状であり、塗布に適した流動性を有する。
【0055】
粘着剤用原料組成物がシロップタイプの場合、塗布膜の厚みは、0.05〜3mmの間にあることが好ましく、更に好ましくは0.1〜2mmである。塗布膜の厚みは、光重合によって得られる粘着剤層の厚さにほぼ等しい。よって、本発明の粘着フィルムにおける粘着剤層の厚さも0.05〜3mmの間にあることが好ましく、更に好ましくは0.1〜2mmである。
粘着剤用原料組成物が溶液タイプの場合は、乾燥前の塗布膜の厚みはシロップタイプより厚くなり、上記の塗布膜の厚みを濃度で割った数字となる。乾燥後の塗布膜の厚みはシロップタイプと同様である。
塗布膜が薄すぎると、粘着剤層の厚さも薄くなるので、衝撃吸収性能が悪くなる。また、塗布膜が厚過ぎるとコストが上昇する点で不利である。
【0056】
図2に、本発明の粘着フィルムの製造方法の一例を模式的に示す。図2に示す装置において、粘着剤用原料組成物は、ダイコーター21から基材11上に供給され、塗布膜12を形成する。符号22は、ダイコーター21に対向して配置され、基材11を支持するバックアップロール22である。塗布膜12が形成された基材11は、その長手方向に沿って搬送され、乾燥室23で塗布膜12中の溶媒を除去するように乾燥される。乾燥後の塗布膜12の上には、セパレーター供給手段24からセパレーター13が塗布膜12上に供給され、ニップロール25によって貼合される。
【0057】
乾燥室23内の温度は、塗布膜12中の溶媒が十分に揮発する温度であれば良く、重合性化合物が熱重合しない温度に保たれることが望ましい。
セパレーター供給手段24は、セパレーター13が巻き取られたロール体と、そのロール体を保持する軸等から構成される。
ニップロール25は、塗布膜12が形成された基材11と、セパレーター13とを挟み込む1対のロールからなり、両者を貼合する装置である。貼合のための加圧手段を備えることが好ましく、また、フィルムに対して均一な圧力をかけ易いよう、少なくとも一方のロールがゴム製であることが好ましい。
【0058】
セパレーターとしては、例えば、ポリカーボネートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエステルフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリオレフィンフィルム、ノルボルネン系フィルム、フェノキシエーテル型重合体フィルム、有機耐透気性フィルムをはじめとする単層または複層プラスチックフィルムにシリコーン系剥離剤等による剥離処理を施して少なくとも片面が剥離性を有する剥離フィルム;紙にシリコーン系剥離剤等による剥離処理を施して少なくとも片面が剥離性を有する剥離紙;フッ素系樹脂フィルムやある種のポリオレフィン系フィルムなどフィルム自体が剥離性を有するフィルム;剥離剤を内添して製膜したフィルムなどが挙げられる。セパレーターの厚さに限定はないが、通常は5〜500μm、好ましくは10〜100μmとすることが多い。セパレーターは、使用する粘着剤や使用用途(剥離強度)に合わせて選ばれるものとする。
【0059】
紫外線照射装置26は、紫外線を発生させる光源部と、光源で発生する熱を除去する冷却装置を備える。光源部は、塗布膜12中の重合性化合物を十分に硬化させる紫外線照射量を得られるものであれば高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等のランプ光源や、紫外線領域の発光ピークを持つ発光ダイオードなど自由に選択できる。
塗布膜12は、塗布膜12中の重合性化合物が適度な光照射により重合することで、凝集力を高め、粘着性を発現する。
【0060】
また、本発明の粘着フィルムとしてトランスファーテープのように支持体のない両面粘着フィルムを製造する場合は、この場合、セパレーター13のみならず、搬送用の基材11としてもセパレーターが供給され、粘着剤層をセパレーター上に形成する。
また、本発明の粘着フィルムとして支持体の両面に粘着剤層を有する両面粘着フィルムを製造する場合は、それぞれの面で同時に、または逐次に、塗布液の塗布・乾燥と塗布膜の光重合を行なうことができる。
【0061】
光重合反応のための光照射後には、架橋反応のための養生を行う。養生の方法は特に限定されないが、例えばロールに巻き取った粘着フィルムを、所定の温度及び時間条件で放置する。養生の温度は、架橋剤の種類等にもよるが、必要に応じて加温(例えば40〜80℃)することが好ましい。
【0062】
得られた粘着剤層は、その粘着面を被着体に貼合後23℃、50%RH環境下に1時間放置後、剥離速度300mm/minで剥離したときのガラスおよびアクリル樹脂に対する粘着力が10N/25mm以上であることが好ましい。このような高い粘着力を得るためには、粘着剤層を構成する粘着剤の23℃、1Hzでの貯蔵弾性率(G′)が1×10Pa以上かつ1×10Pa未満であることが好ましく、85℃95%RH環境下での試験を行うなど高耐久性を必要とする場合、5×10Pa以上かつ5×10Pa以下であることがより好ましい。貯蔵弾性率が低いと粘着剤層が柔らかく変形しやすいため、貼合しやすい。貯蔵弾性率が上記範囲内であると、2つの部材(例えばガラス板やアクリル板などの硬いもの)を貼り合せるときの貼合性、貼合後の耐久性、さらに粘着力等を兼ね備えたものとなる。
【0063】
本発明の粘着フィルムは、PDP(プラズマディスプレイ)、液晶パネル、有機ELパネルなどの各種ディスプレイに部材を貼り合わせる用途の粘着テープとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0064】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
〈トランスファーテープの作製〉
下記の表1に示す配合の粘着剤原料組成物を用いて、下記の製造方法により実施例1〜15および比較例1〜5のトランスファーテープを作製した。また、各主剤ポリマーの数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は、下記の(分子量測定方法)に示す方法により測定した。
【0065】
【表1】

【0066】
なお、表1において、「2EHA」は2−エチルヘキシルアクリレートを表し、「AA」はアクリル酸を表し、「HEA」は2−ヒドロキシルエチルアクリレートを表し、「4HBA」は4−ヒドロキシルブチルアクリレートを表し、「Irg651」はIrgacure(登録商標)651を表す。また、架橋剤の種類は、それぞれ下記の製造方法中に挙げる製品名を用いて示した。
ここで、製品名:Irgacure(登録商標)651の光重合開始剤は、ベンジルジメチルケタールを有効成分とするものである。
製品名:EX−830の2官能性エポキシ架橋剤のエポキシ当量(g/エポキシ基1mol)は268である。また、製品名:EX−931の2官能性エポキシ架橋剤のエポキシ当量は172である。
架橋剤の当量は、エポキシ化合物ではカルボキシル基を架橋点とし、イソシアネートではカルボキシル基及びヒドロキシル基を架橋点として計算した。
【0067】
(分子量測定方法)
各主剤ポリマーについて濃度2%に希釈し、移動相をテトラヒドロフラン(THF)、流速0.5ml/minでGPC分析装置(ウォーターズ社;装置名 Alliance2695−2414RI検出器)により測定を行い、ポリスチレン換算により分子量を算出した。
【0068】
(実施例1)
2−エチルヘキシルアクリレート(2EHA)90重量部と、アクリル酸(AA)10重量部とを、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。この主剤ポリマーの数平均分子量は7万、重量平均分子量126万であった。
次に、モノマーBとして、4−ヒドロキシルブチルアクリレート(大阪有機材料工業株式会社;4HBA)を15.0重量部と、2官能性のエポキシ系架橋剤として、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社;製品名:EX−830)を2.0重量部、アルキルフェノン系の光重合開始剤(チバ・ジャパン株式会社製;製品名:Irgacure(登録商標)651)を0.10重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.05当量である。
その粘着剤原料組成物を、基材として用いたセパレーター(東洋紡績株式会社製;製品名:K1504、厚み75μm)の上面に、アプリケーターを用いて、乾燥後における粘着剤層の厚みが200μmとなるように塗布した後、乾燥させて粘着剤層の積層体を作製した。
次に、得られた積層体の粘着剤層の上面に、セパレーター(三菱樹脂株式会社製;製品名;MRF、厚み38μm)を貼合し、粘着剤の積層フィルムを作製した。
その後、基材を搬送しながら高圧水銀ランプで照射する連続UV照射装置を用いて、照射量約200mJ(波長300nm〜400nm)となるように、基材である粘着剤の積層フィルムの搬送スピード、UV照射の光量などを調整しながらUV照射を行い、光重合開始剤を用いて光重合反応を行わせ、40℃で7日間以上養生し、最終的に粘着剤層が形成されたトランスファーテープを作製した。
【0069】
(実施例2)
2EHAを87重量部と、AAを13重量部とを、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。この主剤ポリマーの数平均分子量は11万、重量平均分子量253万であった。
次に、4HBAを15.0重量部と、EX−830を1.0重量部、Irgacure(登録商標)651を0.10重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.02当量である。
それ以外は、実施例1と同様にしてトランスファーテープを作製した。
【0070】
(実施例3)
EX−830を2.0重量部として粘着剤原料組成物を調合した以外は、実施例2と同様にしてトランスファーテープを作製した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.04当量である。
(実施例4)
4HBAを10.0重量部と、EX−830を2.0重量部として粘着剤原料組成物を調合した以外は、実施例2と同様にしてトランスファーテープを作製した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.04当量である。
【0071】
(実施例5)
2EHAを87重量部と、AAを13重量部とを、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。この主剤ポリマーの数平均分子量は12万、重量平均分子量453万であった。
次に、4HBAを5.0重量部と、EX−830を1.5重量部、Irgacure(登録商標)651を0.05重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.03当量である。
それ以外は、実施例1と同様にしてトランスファーテープを作製した。
【0072】
(実施例6)
4HBAを10.0重量部と、EX−830を2.0重量部とする以外は実施例5と同様にしてトランスファーテープを作製した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.04当量である。
(実施例7)
4HBAを15.0重量部と、EX−830を2.5重量部とする以外は実施例5と同様にしてトランスファーテープを作製した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.05当量である。
【0073】
(実施例8)
2EHAを87重量部と、AAを13重量部とを、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。この主剤ポリマーの数平均分子量は14万、重量平均分子量143万であった。
次に、4HBAを5.0重量部と、EX−830を1.5重量部、Irgacure(登録商標)651を0.10重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.03当量である。
それ以外は、実施例1と同様にしてトランスファーテープを作製した。
【0074】
(実施例9)
4HBAを10.0重量部と、EX−830を2.0重量部とした以外は実施例8と同様にしてトランスファーテープを作製した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.04当量である。
(実施例10)
4HBAを15.0重量部と、EX−830を2.5重量部とした以外は実施例8と同様にしてトランスファーテープを作製した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.05当量である。
【0075】
(実施例11)
架橋剤をポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(ナガセケムテックス株式会社;製品名 EX−931)を2.0重量部とした以外は実施例7と同様にしてトランスファーテープを作製した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.02当量である。
【0076】
(実施例12)
2EHAを86.5重量部と、AAを13重量部と、2−ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)0.5重量部、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。
次に、4HBAを15.0重量部と、架橋剤としてイソホロンジイソシアネート(三井化学ポリウレタン株式会社;製品名:A−45N)を1.5重量部、Irgacure(登録商標)651を0.05重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基およびHEAと4HBAのヒドロキシル基)に対して0.05当量である。
それ以外は、実施例1と同様にしてトランスファーテープを作製した。
【0077】
(実施例13)
A−45Nを2.5重量部、Irgacure(登録商標)651を0.10重量部にした以外は実施例12と同様にしてトランスファーテープを作製した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基およびHEAと4HBAのヒドロキシル基)に対して0.08当量である。
なお、実施例12,13において、ポリマーAの架橋点(AAのカルボキシル基およびHEAのヒドロキシル基)とポリマーBの架橋点(4HBAのヒドロキシル基)とのモル比は1:0.56であり、前者が後者より多い比率になっている。
【0078】
(実施例14)
2EHAを92重量部と、AAを8重量部とを、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。この主剤ポリマーの数平均分子量は9万、重量平均分子量126万であった。
次に、4HBAを17.2重量部と、EX−830を1.7重量部、Irgacure(登録商標)651を0.06重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.06当量である。
それ以外は、実施例1と同様にしてトランスファーテープを作製した。
【0079】
(実施例15)
2EHAを95重量部と、AAを5重量部とを、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。この主剤ポリマーの数平均分子量は30万、重量平均分子量144万であった。
次に、4HBAを10.0重量部と、EX−830を1.5重量部、Irgacure(登録商標)651を0.05重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.08当量である。
それ以外は、実施例1と同様にしてトランスファーテープを作製した。
【0080】
(比較例1)
2EHAを87重量部と、AAを13重量部とを、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。この主剤ポリマーの数平均分子量は12万、重量平均分子量453万であった。
次に、4HBAを10.0重量部と、Irgacure(登録商標)651を0.05重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。この場合、架橋剤は添加されていない。
それ以外は、実施例1と同様にしてトランスファーテープを作製した。
【0081】
(比較例2)
2EHAを87重量部と、AAを13重量部とを、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。この主剤ポリマーの数平均分子量は12万、重量平均分子量453万であった。
次に、4HBAを10.0重量部と、EX−830を2.0重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.04当量である。
それ以外は、実施例1と同様にしてトランスファーテープを作製した。
【0082】
(比較例3)
2EHAを87重量部と、AAを13重量部とを、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。この主剤ポリマーの数平均分子量は12万、重量平均分子量453万であった。
次に、EX−830を2.0重量部と、Irgacure(登録商標)651を0.05重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。この場合、モノマーBは添加されていない。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.04当量である。
それ以外は、実施例1と同様にしてトランスファーテープを作製した。
【0083】
(比較例4)
2EHAを87重量部と、AAを13重量部とを、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。この主剤ポリマーの数平均分子量は12万、重量平均分子量453万であった。
次に、4HBAを10重量部と、EX−830を7.5重量部、Irgacure(登録商標)651を0.05重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.16当量である。
それ以外は、実施例1と同様にしてトランスファーテープを作製した。
【0084】
(比較例5)
2EHAを80重量部と、AAを20重量部とを、有機溶媒として用いた酢酸エチルに溶解させた混合溶媒液を調製した。この混合溶媒液を用い、有機溶媒を沸点において還流させながら溶液重合反応を行なわせて、主剤ポリマーを作製した。
次に、4HBAを15重量部と、EX−830を2.0重量部と、Irgacure(登録商標)651を0.10重量部とを、溶媒として用いた酢酸エチルに溶解した溶媒液に、前記作製済みの主剤ポリマーを加えて粘着剤原料組成物を調合した。
架橋剤の添加量は、ポリマーの架橋点(AAのカルボキシル基)に対して0.03当量である。
それ以外は、実施例1と同様にしてトランスファーテープを作製した。
【0085】
〈粘着テープの試験方法〉
上記の実施例1〜15及び比較例1〜5の粘着テープ(トランスファーテープ)を用いて、貼合サンプルを作製して、貼合後の気泡確認試験、白濁確認試験、耐久性試験、粘着力測定、貯蔵弾性率測定を行なった。
【0086】
(貼合後の気泡確認試験)
貼合装置(株式会社クライムプロダクツ;製品名 SE320)を使用し、75mm×100mmサイズの2mm厚のガラス板に50mm×50mmの粘着テープを貼合し、その後、粘着テープの反対面にアクリル板を貼合した。アクリル板の側から貼合後の外観を目視にて確認し、気泡が確認できるものを(×)、確認できないものを(○)と評価した。
【0087】
(白濁確認試験)
気泡確認試験で作製した貼合品を85℃×95%RHの環境下へ投入し、12時間後に取り出した。その後23℃50%RH環境下に放置し外観変化を目視にて確認した。白濁したものを(×)、白濁が確認できないものを(○)と評価した。
また、実施例6及び比較例2により得られた粘着テープを、耐熱耐湿環境試験条件として、85℃×95%RHの条件に調整したオーブンへ投入して、12時間保持後に取り出した。供試したサンプルのヘイズ値を、オーブンから取り出した直後から180分経過まで測定し、得られた高温高湿度試験から取り出した後のヘイズ値の変化を図3に示す。
なお、ヘイズ値の測定は、ヘイズメータ(製造者:日本電色株式会社、型式:Haze Meter、NDH2000)を用いて行った。
【0088】
(耐久性試験・真空下貼合)
75mm×100mmサイズの2mm厚のガラス板に50mm×50mmの粘着テープを貼合し、その後、粘着テープの反対面に0.8mm厚のアクリル板(三菱樹脂製;製品名:MR−200)を真空環境下で貼合した。貼合条件は真空度が1.0×10Paに到達した時点で、押圧力3.0MPa、時間20秒で押圧する条件とした。この時点では気泡無くきれいに貼合ができていることを確認した。次に、オートクレーブ処理を60℃×0.5MPa×30分間実施し、貼合品のサンプルを完成した。
耐久性試験は、作製した貼合品のサンプルを、85℃dry、60℃×90%RH、85℃×95%RHの高温高湿度環境に投入し、12時間経過時点で取り出し、目視による確認を実施し、浮き・剥がれのあるものは(×)と評価した。この時点で浮き・剥がれの無いサンプルに関してはさらに500時間投入し、取り出した後で目視による確認を実施し、浮き・剥がれのあるものは(×)、無いものを(○)と評価した。
【0089】
(耐久性試験・大気圧貼合)
75mm×100mmサイズの2mm厚のガラス板に50mm×50mmの粘着テープを貼合し、その後、粘着テープの反対面に0.8mm厚のガラス板を大気圧下で貼合を行った。貼合にはクライムプロダクツ製のSE320を使用した。この時点で気泡無くきれいに貼合ができていることを確認できたサンプルについてオートクレーブ処理を60℃×0.5MPa×30分間実施し、貼合品のサンプルを完成した。
耐久性試験は、作製した貼合品のサンプルを、85℃×95%RHの高温高湿度環境に投入し、12時間経過時点で取り出し、目視による確認を実施し、浮き・剥がれのあるものは(×)と評価した。この時点で浮き・剥がれの無いサンプルに関してはさらに500時間投入し、取り出した後で目視による確認を実施し、浮き・剥がれのあるものは(×)、無いものを(○)と評価した。
【0090】
(貯蔵弾性率測定)
複数枚の粘着テープを重ねて貼合し、60℃×0.5MPa×30分間のオートクレーブを実施し、厚み1mmの動的粘弾性試験用サンプルを作製した。このサンプルをせん断型レオメーター(AntonPaar社;装置名 MCR301)にて線形領域内、周波数1Hzの条件で動的粘弾性試験を行なった。貯蔵弾性率の測定は、−40℃〜+150℃の温度範囲で、昇温速度3m/minの条件により、室温23℃における値を読み取った。
【0091】
(粘着力測定)
粘着テープ(ここではトランスファーテープ)の一方のセパレーターを剥離して粘着剤層の片面を厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに貼合し、さらに他方のセパレーターを剥離して粘着剤層の逆面を被着体(ガラス板またはアクリル板)に貼合後23℃、50%RH環境下に1時間放置後、剥離速度300mm/minで剥離させ、その180°剥離強度を測定した。
【0092】
〈試験結果〉
上記試験の結果を表2に示す。
【0093】
【表2】

【0094】
(貼合後の気泡確認試験の結果)
実施例1〜15については、気泡無く貼合ができることが確認できた。比較例1〜4では気泡無く貼合ができることが確認できた。比較例5では気泡が確認された。これは比較例5では主剤ポリマー中のAAの割合が多く、樹脂が硬くなり、被着体への追従性が悪くなっているためであると考えられる。
【0095】
(粘着テープの白濁確認試験の結果)
実施例1〜15については、白濁は確認できなかった。比較例1、4、5においても白濁は確認できなかった。比較例2、3においては白濁が確認された。
比較例2は光重合開始剤が導入されていないため、UV照射を行ってもモノマーBが重合しない。比較例2では白濁改善効果のある粘着剤になっていないことから、モノマーBを重合させることが白濁改善に効果があることが確認できた。
また、比較例3ではモノマーBが存在しないため、UV照射を行うことで光開始剤が反応はするものの、白濁改善効果のあるモノマーBの重合物が生成しない。比較例3では白濁してしまうことから、モノマーBの重合品の存在が重要であることが確認できた。
また、図3の高温高湿度試験から取り出した後のヘイズ値の変化を示すグラフにおいて、本発明の粘着テープに係わる実施例6は、高温高湿度試験のオーブンから取り出した直後、及びオーブンから取り出して60分経過しても、全くヘイズ値が変化しておらず、優れた白濁防止性能を有することが分かる。
一方、比較例2においては、高温高湿度試験のオーブンから取り出した直後から数分でヘイズ値が最大値として約11%に上昇した後、放置時間の経過と共に、徐々にヘイズ値が低下する傾向を示すが、白濁した状態が120分以上も継続することが分かる。
本評価は、セパレーター同士もしくはポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂フィルム同士で実施した場合に起こる変化であるが、ガス透過性の悪いガラス同士やアクリル板とガラスなどのサンプルでは白濁するタイミングは同じであるが、白濁が消滅する状況は数日かかることもある。
なお、耐熱耐湿環境試験において発生した、いずれの白濁も室温において数時間放置することにより、白濁は消滅して透明となった。
【0096】
(耐久性試験の結果)
85℃dryや60℃×90%RHの条件の場合、アクリル板を被着体とした大気圧貼合においても、ガラス板を被着体とした真空下貼合においても、実施例1〜15においては、目視による浮き・剥がれは確認できなかった。比較例2においても、目視による浮き・剥がれは確認できなかった。比較例1、3〜5においては目視による浮き・剥がれが確認できた。
85℃×95%RHの条件の場合、アクリル板を被着体とした大気圧貼合においても、ガラス板を被着体とした真空下貼合においても、実施例1〜13においては、目視による浮き・剥がれは確認できなかった。比較例1〜5においては目視による浮き・剥がれが確認できた。
比較例1は架橋剤が無いため架橋が不十分であり、耐熱性を付与できていないと考えられる。
比較例2はモノマーBが重合していないことが問題となっていると考えられる。
比較例3は光重合開始剤が問題になっていると考えられる。
比較例4は架橋剤の量が過剰すぎるため、粘着テープとして硬くなりすぎ、被着体の変形に追従できずに剥がれてしまうと考えられる。
比較例5はアクリル酸の量が多すぎて粘着テープが硬すぎるため、アクリル板の変形に追従できずに剥がれてしまったと考えられる。また、大気圧貼合の場合には、気泡が入ってしまうため(上記貼合後の気泡確認試験を参照)、それがオートクレーブで一時的に消滅するが、環境試験験投入により再凝集して発泡してしまうことも考えられる。
【0097】
(分子量分布測定の結果)
光学用途の粘着テープの分子量は高分子量であるほうが好ましいといわれている。分子量が大きいと耐熱性が良くなる傾向や耐候性試験においても良い方向に進むと言われているためである。
実施例1からは、主剤のモノマー比が2EHA/AA=90/10の場合はMwが100万以上で良好と思われる。実施例2〜11、比較例6の結果の対比から、主剤のモノマー比が2EHA/AA=87/13の場合もMwが100万以上の材料であればより好ましい範囲と思われる。実施例14の2EHA/AA=92/8、実施例15の2EHA/AA=95/5の場合もMwが100万以上の材料である。よって、主剤中のモノマー比によらず好ましい範囲はMwが100万以上、より好ましくは120万を超える範囲であると考えられる。
分子量が大きすぎると粘度が高すぎて加工適性が悪くなる。塗料の温度を上げるなど塗工方法を工夫することでこの上限はさらに広げられると考えられるが、室温で塗工をする場合、実施例1〜11、14、15で使用したMw500万未満の材料が好ましいと考えられる。
【0098】
(貯蔵弾性率測定の結果)
85℃dryや60℃×90%RHの耐久性を満足するには、実施例1〜15のとおり粘着テープの弾性率(単位Pa)は10〜10オーダーであれば良いと思われる。しかし、アクリル板の変形が大きくなる85℃×95%RH環境下では、実施例1〜13のとおり弾性率は10オーダーが好ましいことが分かる。
実施例14、15のように10オーダーで粘着テープを柔らかくすると、被着体への貼合性は良くなるが、主剤のアクリル酸の量を減らす必要がある。アクリル酸の量が減ると被着体に対する粘着力が下がってしまい85℃×95%RH環境下では浮き・剥がれが発生したと考えられる。剥がれる場所がガラスと粘着テープの界面になるため、対ガラスの粘着力が低いことが問題になると考えられる。
逆に比較例5のように貯蔵弾性率が10オーダーになると被着体への貼合性は悪くなる。
このことから、貼合後の気泡については、弾性率は10オーダー以下が好ましく、耐久性からすると85℃dry、60℃×90%RHであれば10〜10オーダー、85℃×95%RHの高耐久が必要であれば、10オーダーであることが好ましく、より好ましくは10オーダー前半であると考えられる。
貯蔵弾性率(G′)は、主剤の組成、特にアクリル酸の配合比によるところが多いが架橋剤の添加量でも大きく変化する可能性はある。しかし、本発明による架橋剤の配合割合であれば同じモノマー組成の場合、オーダーが変わるほどではないため、実測値の無い部分(表1に「(推定)」と表示した部分)は同組成品と同じオーダーの弾性率、例えば実施例1,6や比較例5を参照すれば1×10〜2×10程度であり、そうでないとしても、少なくとも5×10〜5×10の範囲には収まっている、と考えられる。
【0099】
(粘着力測定の結果)
粘着力がある程度高くなければ耐久試験時の被着体であるガラス板やアクリル板の変形により剥がれてしまう。実施例1〜15の結果から、対ガラスでは10N/25mm以上、対アクリル板に対しては10N/25mm以上あると、耐久性で良好と判断できることが分かる。
【0100】
以上の結果より、粘着剤層の主成分であるポリマーAのモノマー比、モノマーBの添加量、架橋剤の官能基の数および添加量、光重合開始剤の量を本発明の請求項に示す範囲にすることで、高温高湿度環境下に投入および取り出した際の白濁を防止できると共に、ガラス同士やガラス/アクリル板など硬いもの同士を貼合しやすく、かつ高温、高温高湿度環境下でも浮き・剥がれなど外観欠点の無い高耐久性の粘着フィルムを作製することができる。
【符号の説明】
【0101】
1…基材、2…粘着剤層、3…セパレーター、5…片面粘着テープ、6…トランスファーテープ、11…搬送される基材またはセパレーター、12…塗布膜、13…セパレーター、21…ダイコーター、22…バックアップロール、23…乾燥室、24…セパレーター供給手段、25…ニップロール、26…紫外線照射装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能基としてヒドロキシル基を含有するアクリル系ポリマーを含む粘着剤組成物の製造方法であって、
少なくとも次の工程(1)〜(3)
(1)アクリル系モノマーの少なくとも1種類を含有する混合溶媒液を用いて、主剤ポリマーを得るポリマー製造工程、
(2)前記主剤ポリマーと、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類と、光重合開始剤と、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる量の2官能性の架橋剤とを含有する粘着剤用原料組成物を調製する工程、
(3)前記粘着剤用原料組成物を用い、光照射による重合反応及び養生による架橋反応をさせて粘着剤組成物を得る工程、
を有することを特徴とする粘着剤組成物の製造方法。
【請求項2】
官能基としてヒドロキシル基を含有するアクリル系ポリマーを含む粘着剤層を備えた粘着フィルムの製造方法であって、
少なくとも次の工程(1)〜(4)
(1)アクリル系モノマーの少なくとも1種類を含有する混合溶媒液を用いて、主剤ポリマーを得るポリマー製造工程、
(2)前記主剤ポリマーと、ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類と、光重合開始剤と、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる量の2官能性の架橋剤とを含有する粘着剤用原料組成物を調製する工程、
(3)前記粘着剤用原料組成物を、粘着フィルムの基材またはセパレーター上に塗布及び乾燥して粘着剤塗布膜を形成する工程、
(4)前記粘着剤塗布膜への光照射による重合反応及び養生による架橋反応をさせて粘着剤層を得る工程、
を有することを特徴とする粘着フィルムの製造方法。
【請求項3】
(A)エステル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が85〜95重量部と、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が5〜15重量部とを含有するモノマーから重合された主剤ポリマー:100重量部と、
(B)ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類:5〜20重量部と、
(C)光重合開始剤:0.01〜0.5重量部と、
(D)2官能性の架橋剤を、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる1.0〜3.0重量部と、
を含有し、かつ前記主剤ポリマーの分子量分布が、数平均分子量(Mn)で7万以上、重量平均分子量(Mw)で100万以上であることを特徴とする粘着剤用原料組成物。
【請求項4】
(A)エステル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が85〜95重量部と、カルボキシル基を有するアクリル系モノマーの少なくとも1種類が5〜15重量部とを含有するモノマーから重合された主剤ポリマー:100重量部と、
(B)ヒドロキシル基含有の(メタ)アクリレートのモノマーの少なくとも1種類:5〜20重量部と、
(C)光重合開始剤:0.01〜0.5重量部と、
(D)2官能性の架橋剤を、ポリマーの架橋点に対して0.1当量以下となる1.0〜3.0重量部と、
を含有し、かつ前記主剤ポリマーの分子量分布が、数平均分子量(Mn)で7万以上、重量平均分子量(Mw)で100万以上であることを特徴とする粘着剤用原料組成物を基材またはセパレーター上に塗布した後、光照射による重合反応及び養生による架橋反応をさせて得られる厚みが0.05〜3mmの粘着剤層を備えた粘着フィルム。
【請求項5】
前記粘着剤層は、その粘着面を被着体に貼合後23℃、50%RH環境下に1時間放置後、剥離速度300mm/minで剥離したときのガラスおよびアクリル樹脂に対する粘着力が10N/25mm以上であり、かつ前記粘着剤層を構成する粘着剤の23℃、1Hzでの貯蔵弾性率(G′)が1×10Pa以上かつ1×10Pa未満であることを特徴とする請求項4に記載の粘着フィルム。
【請求項6】
ディスプレイに部材を貼り合わせる用途の粘着テープである請求項4または5に記載の粘着フィルム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−79931(P2011−79931A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232551(P2009−232551)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000224101)藤森工業株式会社 (292)
【Fターム(参考)】