説明

粘着壁紙

【課題】 既設壁紙の上に重ねて貼着しても接着不良もなく、既設壁紙の形状が表面に現れず、突きつけ貼りを行ったとしても継ぎ目の盛り上がりや隙間が空かず、環境変化の影響を受けず美しい状態を保つことができ、天井面への貼着作業も楽に行える壁紙を提供すること。
【解決手段】 化粧層及びその裏面側に設けられた裏打ち紙層からなる壁紙本体と、前記壁紙本体の裏面側に設けられた粘着層とを備えてなる粘着壁紙であって、絶対湿度が1.9g/m3〜27.3g/m3のとき前記裏打ち紙層の含水率が、0.1重量%〜2.5重量%で、前記裏打ち紙層を構成する裏打ち紙の密度が0.1g/cm3〜0.8g/cm3であることを特徴とする粘着壁紙とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着壁紙に関し、より詳しくは、既に貼られている壁紙(以下、既設壁紙と称する)の上に重ねて貼着しても環境変化の影響を受けず美しい状態を保つことができ、さらに貼着位置の微調整が可能で、突きつけ貼りによる継ぎ目を美しい状態で保つことができ、天井面への貼着作業も楽に行える粘着壁紙に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一般住宅、オフィス等の内装の仕上げには、壁紙が広く用いられている。この壁紙は、一般に、装飾性を有する化粧層、その裏面側に設けられた裏打ち紙層、及びその裏面側には、必要に応じて、接着層が設けられ、壁面のみならず天井面にも使用される。
従来の壁紙では裏打ち紙層にはパルプを主原料とする紙が使用されている(特許文献1)。また、接着層(粘着層)には、例えば、でんぷん系の接着剤、セルロース系接着剤等、再湿糊(乾燥状態の糊)、粘着剤等が用いられている。接着層に未乾燥状態の生糊を用いる場合、壁紙に塗布して養生してから壁面等へ貼着する。再湿糊タイプの壁紙の場合は、使用の際に水をつけて糊を戻す必要がある。粘着剤タイプの壁紙の場合は、接着層が粘着剤からなるので、水を必要とせず、離型紙を剥がすと、直ちに壁面等への貼着が可能となる等、接着層には色々な貼着剤が使用されている。
【0003】
壁紙を壁面又は天井面に貼着する際、まず、壁面又は天井面の被貼着面を平滑になるように調整する。次に壁面又は天井面の貼着対象の寸法を測定し、壁紙を貼着対象に合わせて裁断する。壁面に壁紙を貼着する場合、壁面の上端から下端方向にかけて連続的に貼着できるような大きさに壁紙を裁断する。天井面に壁紙を貼着する場合、天井面の長手方向に連続的に貼着できるような大きさに壁紙を裁断する。
【0004】
壁面又は天井面の壁紙を貼り替える場合は、壁紙の全層又は既設壁紙の化粧層のみを剥がした後、その剥がした面を平滑になるように調整を施してからその壁面に新たな壁紙を貼着する。
しかしながら、壁面又は天井面の壁紙を貼り替える場合は、次のような問題がある。
壁面の材質の種類、既設壁紙の貼着に使用されている接着剤の種類、既設壁紙の材質の種類如何によっては、壁紙剥離時に壁紙裏面の裏打ち紙の剥がし残しができることがある。このような状態のまま新たに壁紙を貼着すると、壁面の素地と紙層のまだらな面上に壁紙を貼着することになるので、貼着後において、剥がし残した裏打ち紙の形状が新しい壁紙の表面に現れ、新しい壁紙の表面に本来の形状(意匠)を発現できないことがある。
したがって、裏打ち紙を剥がし残した場合には、これに壁紙剥がし液等を用いて剥がさなければならない。また、既設壁紙の種類(化粧層の発泡具合等)によっては、剥がそうとする際に壁紙がちぎれ易いものがある。このような壁紙では、何度も手で壁紙をめくるか、スクレーパー等で削ぎ落とさなければならず、非常に多くの手間と時間がかかる。
【0005】
一方、既設壁紙の上に直接新しい壁紙を貼ろうとすると、既設壁紙表面側には、意匠の面からエンボス加工(凹凸加工)や、発泡加工、プリントが施されている場合が殆どであり、このことは壁紙の重ね貼着を一層困難なものとしている。つまり、壁紙表面にエンボス加工や発泡加工が施されている場合、その上に重ねる壁紙との接着は点接触もしくは線接触で行われるため、接着面積が小さくなる。その結果、上に重ねた壁紙が容易に剥がれたり、あるいは接着不良によって壁紙同士の境界に空隙が生じ壁紙に膨れが起きたりする可能性が高い。また、エンボス加工や発泡加工が施されている既設壁紙の上に新たに壁紙を貼着する場合、既設壁紙の凹凸形状が上に重ねる壁紙の形状に影響し、上に重ねる壁紙の表面(化粧層)が平坦もしくは凹凸模様の深さが浅い場合には、その表面形状が変化して本来の形状(意匠)をそのまま発現できない可能性がある。
【0006】
壁紙と壁紙との継ぎ目(境目)の処理として、重ね突きつけ貼りや、突きつけ貼りが挙げられる。重ね突きつけ貼りとは、壁紙の端部同士を、少し重ね合わせて貼着した後、上側に貼着された方の、重ねあわされた部分の中心付近を裁断して切り取る方法である。一方、突きつけ貼りとは、壁紙と壁紙との端部を突き合わせて接合し、接合部に隙間ができないようにする方法である。
突きつけ貼りでは、貼着後、壁紙を裁断する必要がないので、重ね突きつけ貼りよりも比較的行いやすく、壁紙の貼着作業に不慣れな素人は、特にこの方法を採用することが多い。また、壁紙に模様が施されている場合も、この方法が採用され、継ぎ目における模様の調整がなされる。
【0007】
しかしながら、従来の壁紙では、湿度が高い環境におかれると、空気中の水分を吸収して、壁紙が伸びてしまい、逆に湿度が低くなると、壁紙が縮んでしまう。また、接着層(粘着層)に粘着剤が用いられている粘着剤タイプの壁紙では、湿気及び乾燥の影響による壁紙の伸縮を抑えることができない。
したがって、突きつけ貼りによって壁面又は天井面に壁紙を貼着する場合、粘着剤タイプの従来の壁紙では、突きつけ貼りされた壁紙と壁紙との継ぎ目が盛り上がったり、隙間が空いたりして、仕上がり外観が悪くなるという問題が生じる。
【0008】
また、上記粘着剤は、壁紙の貼着時当初から強い粘着力を発揮するため、壁紙を壁面等に貼着した後に貼着位置を修正したい場合、壁紙を剥がすのにある程度の力が必要となる。力を入れすぎると、壁紙が破れることがある。破らずにうまく剥がせた場合でも、一度剥がしたものを再度貼着すれば、粘着力が低下しているので、粘着不良を起こしてしまう。このように、粘着剤タイプの従来の壁紙では、貼着位置の調整が難しいという問題がある。
【0009】
これに対し、接着層に未乾燥状態の生糊が用いられている生糊タイプの壁紙では、接着剤が乾燥するまで、壁紙を容易に剥がすことができ、貼り直しもできるので、貼着位置の調整が容易である。
しかしながら、天井面に壁紙を貼着する場合、作業者は脚立に乗り、足元が不安定な状況の下、頭部より高い位置に手を伸ばして作業しなければならないが、未乾燥状態の生糊を用いたタイプの壁紙は、壁紙自体が重くて作業しにくいという問題がある。また、糊が乾燥するまで接着力は十分発揮されないため、壁紙が自重によって天井面から剥がれ落ち、作業が極めて困難なものとなる。特に壁紙の貼着作業に不慣れな素人一人では、未乾燥状態の生糊を用いたタイプの従来の壁紙をうまく天井面に貼着することは困難である。
【0010】
【特許文献1】特開平06−270313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、既設壁紙の上に重ねて貼着しても接着不良もなく、既設壁紙の形状が表面に現れず、突きつけ貼りを行ったとしても継ぎ目の盛り上がりや隙間が空かず、環境変化の影響を受けず美しい状態を保つことができ、天井面への貼着作業も楽に行える壁紙を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に係る発明は、化粧層及びその裏面側に設けられた裏打ち紙層からなる壁紙本体と、前記壁紙本体の裏面側に設けられた粘着層とを備えてなる粘着壁紙であって、絶対湿度が1.9g/m3〜27.3g/m3のとき前記裏打ち紙層の含水率が、0.1重量%〜2.5重量%で、前記裏打ち紙層を構成する裏打ち紙の密度が0.1g/cm3〜0.8g/cm3であることを特徴とする粘着壁紙に関する。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記裏打ち紙層は、合成繊維を含有することを特徴とする請求項1に記載の粘着壁紙に関する。
【0014】
請求項3に係る発明は、前記合成繊維がポリエステル繊維を含有することを特徴とする請求項2に記載の粘着壁紙に関する。
【0015】
請求項4に係る発明は、前記裏打ち紙層に対して20〜80重量%の合成繊維を含有することを特徴とする請求項2又は3に記載の粘着壁紙に関する。
【0016】
請求項5に係る発明は、前記粘着層が、アクリル樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粘着壁紙に関する。
【0017】
請求項6に係る発明は、前記粘着層は粘着層の裏面側に離型紙を備え、前記離型紙には加湿処理が施されることを特徴とする請求項5に記載の粘着壁紙に関する。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によれば、化粧層及びその裏面側に設けられた裏打ち紙層からなる壁紙本体と、前記壁紙本体の裏面側に設けられた粘着層とを備えてなる粘着壁紙であって、絶対湿度が1.9g/m3〜27.3g/m3のとき前記裏打ち紙層の含水率が、0.1重量%〜2.5重量%で、前記裏打ち紙層を構成する裏打ち紙の密度が0.1g/cm3〜0.8g/cm3であることを特徴とする粘着壁紙とすることから、既設壁紙の上に重ねて貼着しても接着不良もなく、既設壁紙の形状が表面に現れず、環境変化の影響を受けず美しい状態を保つことができる。さらに貼着位置の微調整が可能で、突きつけ貼りによる継ぎ目を美しい状態で保つことができ、天井面への貼着作業も楽に行える壁紙とすることができる。
【0019】
請求項2に係る発明によれば、裏打ち紙層は合成繊維を含有することから、裏打ち紙層が一般紙(天然繊維)からなる一般の壁紙と比べて、空気中の水分の影響を受けにくいため貼着後の寸法変化が起きにくく、突きつけ貼りを行ったとしても膨らみが生じず仕上がり時の美しい状態を保つことができる。
さらに合成繊維を含有すると、裏打ち紙の密度が一般の壁紙と比べて小さくなることから、裏打ち紙の各繊維間に空間が多くなり、空気中の湿度の変化により伸縮しても緩衝作用によって壁紙全体の寸法変化がおきにくく、剥がれ、膨らみが生じず仕上がり時の美しい状態を保つことができる。
加えて裏打ち紙層が一般紙(天然繊維)からなる一般の壁紙と比べて、壁紙の強度が強くなり、施工時に所定の力を加えても破れにくく、施工性に優れる。
【0020】
請求項3に係る発明によれば、裏打ち紙層を構成する合成繊維は、ポリエステル繊維を含有することから、壁紙の水分による伸びを極めて小さくすることができ、貼着後の寸法変化がおきにくく、剥がれ、膨らみが生じず仕上がり時の美しい状態を保つことができる。
また、該繊維は、パルプに比べ強度があり、所定の力を加えても破れにくい性質を有することから、所定の引張力を加えても、破れることがなく、貼着位置の調整が可能となり、施工性に優れる。
【0021】
請求項4に係る発明によれば、裏打ち紙層に対して20〜80重量%の合成繊維を含有することから、合成繊維の配合による効果を十分に発揮させることができる。
【0022】
請求項5に係る発明によれば、粘着層は、アクリル樹脂を含有することから、生糊等を粘着層に用いる従来の壁紙と比較して、重量を小さくすることができ、貼着作業が楽となる。また、アクリル樹脂は、貼着対象への粘着力が強いため、粘着壁紙が直ちに天井面に粘着し、天井面に対する作業において壁紙が落下する心配もなく、貼着作業に不慣れな素人が一人でも、粘着壁紙をうまく天井に貼着することができる。
【0023】
請求項6に係る発明によれば、粘着層は、裏面側に設けられた離型紙を有し、離型紙には加湿処理が施されることから、離型紙にある程度の水分が保持され、過乾燥とならず、離型紙によって壁紙の水分が奪われることを防ぐことができる。これによって、壁紙の水分状態を一定に保つことができ、良好な粘着状態を保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明に係る粘着壁紙の断面図である。図2及び3は、本発明の他の実施形態に係る粘着壁紙の断面図である。粘着壁紙(1)は、化粧層(3)、及びその裏面側に設けられた裏打ち紙層(2)からなる壁紙本体(10)と、この壁紙本体(10)の裏面側に設けられた粘着層(4)とを備えてなり、粘着層(4)の裏面側には必要に応じて離型紙(6)が設けられる。
【0025】
粘着壁紙(1)の厚みとしては、特に限定はしないが、0.3mm〜1.5mmが良い。粘着壁紙の厚みが0.3mm未満だと既設壁紙の上に貼る場合、通常、壁紙は意匠性の面からエンボス加工(凹凸加工)や、発泡加工が施されているので、既設壁紙の凹凸の影響を受けて上から貼る粘着壁紙の形状(意匠)が変形し本来の形状(意匠)を発現しない可能性があるからである。また、突きつけで貼る場合にも突合せがしにくくきれいに仕上がりにくい。
一方、粘着壁紙(1)の厚みが1.5mmを超えると、突きつけ貼りは可能であるが、厚みが厚くなりすぎて粘着壁紙の意匠が限定されるからである。
【0026】
化粧層(3)の材質は、通常壁紙として使用されている材質のものであれば特に限定されず、合成樹脂、紙、織物、アルミニウム等の金属箔、木質、雲母等の無機質、ケナフ、ポリエステル(再生ポリエステル)、綿、再生紙、ガラス、ビール粕、竹等の繊維、珪藻土、炭酸カルシウム等の素材等から構成されるものが採用される。
【0027】
上記の合成樹脂としては、当業者が通常用いるものであれば特に限定されないが、例えば、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル樹脂またはこれらの合成樹脂を混合した合成樹脂ペースト、またはアクリル樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、酢酸ビニル樹脂などの合成樹脂エマルション等が挙げられる。これらの合成樹脂には必要に応じて、可塑剤、安定剤、発泡剤、膨張剤、充填剤、印刷適性改良剤、増粘剤、減粘剤、防カビ剤、消泡剤、着色剤などの各種添加剤を添加してもよい。
【0028】
化粧層(3)の表面は合成樹脂ペーストや合成樹脂エマルションを裏打ち紙層(2)の上に印刷した後、エンボス(凹凸)加工および/または発泡加工が施されていることが好ましい。なお、化粧層は、単層であっても複層であっても良い。また、本発明における化粧層は、上記の合成樹脂ペーストや合成樹脂エマルション等で調製した化粧層上に通常の印刷インキを用いて絵柄や模様などを印刷したものであってもよい。
【0029】
例えば化粧層(3)に意匠を施す手段としては、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ロータリースクリーン印刷法、凸版印刷法など公知の手段にて、上記の合成樹脂ペーストや合成樹脂エマルション等を裏打ち層紙の上に印刷し、発泡、エンボス加工(凹凸加工)させることにより得られる。
【0030】
化粧層(3)の表面は、既設壁紙の表面に形成された凹凸が化粧層(3)の表面に現れない程度の深い凹凸加工及び/又は高発泡加工が施されていることが好ましい。この凹凸加工を施す場合には、凹部底面と凸部上面間の段差は、0.01〜0.5mmとされることが好ましい。
【0031】
化粧層(3)の表面には、図1に示すように、表面フィルム(5)を積層してもよい。この表面フィルム(5)は、化粧層(3)の表面の汚れを防ぐとともに、化粧層(3)を補強して破れにくくすることができる。
【0032】
表面フィルム(5)の材質としては、その目的を達成できるものならば特に限定されないが、例えばエチレンビニルアルコール共重合体フィルム、ポリアクリルフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等が挙げられる。
【0033】
裏打ち紙層(2)は、化粧層(3)の裏面側に設けられている。この裏打ち紙層(2)は、粘着層(4)を安定して定着させるとともに、壁下地が透けて化粧層(3)に影響を与えないようにする(隠蔽性を向上させる)ために設けられる。
【0034】
裏打ち紙層(2)としては、当業者が一般的に用いるものであれば特に限定されないが、例えば、不織布、パルプ等の天然繊維、ガラス繊維、金属繊維、カーボン繊維、セラミック繊維、アルミナ繊維、ケイ酸マグネシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、シリカ繊維等の無機繊維、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等の合成繊維、または天然繊維にガラス繊維、金属繊維、カーボン繊維等の無機繊維、合成繊維等を混抄した不織布が挙げられる。
【0035】
裏打ち紙層(2)は絶対湿度(1mの空気に含まれる水蒸気量)が1.9g/m〜27.3g/mのときに、裏打ち紙層(2)の含水率は0.1重量%〜2.5重量%であることを要し、0.2重量%〜1.8重量%が好ましく、0.3重量%〜1.5重量%がより好ましい。裏打ち紙層の含水率が0.1重量%未満または2.5重量%を超えると多湿、乾燥等の湿度の変化が生じると、裏打ち紙が水分を吸収または放出することにより裏打ち紙層が伸縮し、貼着時の粘着力との関係により壁紙の膨れ、剥がれ、捲れ等により美しい状態を維持できなくなるからである。
上記含水率とは、裏打ち紙が空気中の水分を取り込んで含有する水分量のことである。尚、上記含水率の値は、下記(数1)の通り、上記絶対湿度における裏打ち紙の蒸発し得る水分の質量を裏打ち紙の乾燥重量で割った値で表現される。
【0036】
【数1】

【0037】
さらに裏打ち紙層(2)の密度が0.1g/cm〜0.8g/cmであることを要し、0.2g/cm〜0.7g/cmが好ましく、0.3g/cm〜0.6g/cmがより好ましい。裏打ち紙層(2)の密度が0.1g/cm未満であると裏打ち紙層(2)を構成する繊維の間隔が広すぎるため、裏打ち紙が脆くなり壁紙の強度が低下し、貼着後に貼り付け位置の調整および/または貼り直しが出来ないため、また、裏打ち紙層(2)の密度が0.8g/cmを超えると繊維の間隔が狭すぎるため柔軟性がなくなり、裏打ち紙層(2)が剛直である場合は貼着作業性が著しく低下するため、いずれの場合も好ましくない。
【0038】
裏打ち紙層(2)の密度が0.1g/cm〜0.8g/cmであると、裏打ち紙層(2)の繊維同士に空隙がある(ポーラス状態)。それにより本発明の壁紙は適度な柔軟性と強度を有しており(ゴム様態)、貼着時に貼り付け位置の調整または貼り直しが可能である。また裏打ち紙層(2)の密度が0.1g/cm〜0.8g/cmであると、裏打ち紙層(2)がポーラス状態であるので各繊維の伸縮が他の繊維に波及しにくく裏打ち紙層(2)の伸び縮みを抑えられる。したがって、本発明の粘着壁紙を貼り付けた場合において、湿気の多い環境(多湿)では湿気を吸収しにくく、膨潤しにくい。また、湿気の低い環境(乾燥)では縮みにくいことから、壁紙を突きつけた継ぎ目が盛り上がったり、隙間が空いたりすることなく、既設壁紙の上から貼っても仕上がり時の美しい状態を保つことができる。
【0039】
また、通常、突きつけ貼りで壁紙を壁面等に貼着する際、突合せ箇所が目立たないように貼着位置を微修正することが多い。従来の粘着壁紙を突きつけ貼りで貼着したものを微修正する場合、一度貼着した粘着壁紙を全部剥がしてもう一度貼り直さなければならない。本発明の粘着壁紙は上記で記載のように一般の壁紙と比べて裏打ち紙がポーラス状になっているので、引っ張るとわずかながらゴム様態に伸びる。そのため、壁紙を微修正する際に全部剥がす必要はなく、修正部分(特に突合せ部分)のみ引っ張りながら調整することによって突きつけ箇所を容易に修正することができる。
加えて既設壁紙の上に貼る際においても、裏打ち紙を構成する繊維同士に空隙があるので既設壁紙の表面の凹凸を吸収し、上から重ねて貼る壁紙の表面に影響を及ぼさず意匠性を損なわない。
【0040】
裏打ち紙層(2)の厚みとしては、特に限定はしないが、0.1mm〜1.5mmが好ましく、0.5mm〜1.5mmがさらに好ましく、1mm〜1.5mmが最も好ましい。裏打ち紙層(2)の厚みが0.1mm以下だと既設壁紙の上に貼る場合、通常、壁紙は意匠性の面からエンボス加工(凹凸加工)や、発泡加工が施されているので、既設壁紙の凹凸の影響を受けて上から貼る粘着壁紙の形状(意匠)が変形し本来の形状(意匠)を発現せず、また隠蔽性も低下するからである。一方、粘着壁紙の厚みが1.5mmを超えると、突きつけ貼りは可能であるが、厚みが厚くなりすぎて粘着壁紙の意匠が限定されてしまうからである。
【0041】
湿度の影響を受けず裏打ち紙層(2)の伸縮が生じにくい(寸法安定性が良い)、および壁紙の強度が増すという理由から、裏打ち紙層(2)は合成繊維を含有することが好ましい。また、上記裏打ち紙層(2)としては寸法安定性が良く、強度が増し、および既設壁紙の柄を透過しにくい(隠蔽性が高い)という理由から天然繊維と合成繊維とを混抄した不織布がさらに好ましい。上記合成繊維は、裏打ち紙層(2)の一定体積の重量を基準として20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%、さらに好ましくは30〜60重量%を含有することが好ましい。合成繊維が20重量%未満であると空気中の水分の吸収により裏打ち紙層が伸び易く、化粧層の伸びとの差により壁紙がカールし、剥がれ、捲れ、膨れ等が生じ、外観を損なう。また、強度が弱くなるため貼着時に貼り直しをすると破れる。一方、合成繊維が80重量%を超えると既設壁紙の柄を透過し易く(隠蔽性が低い)、外観を損なう、あるいは天然繊維に比べると静電気が発生しやすく帯電した静電気により壁紙が汚れやすくなる。さらに合成繊維が80重量%を超えると壁紙のコスト高を招く。
【0042】
上記天然繊維としては、特にパルプが好ましい。パルプは合成繊維に比べて隠蔽性が高いからである。壁紙において特に既設壁紙の上に壁紙を貼る場合、既設壁紙は印刷が施されている場合が多いので隠蔽性を高めておく必要がある。
また、パルプは水分を含有しやすいので、該水分により、壁紙の加工時及び貼着後において静電気が発生するのを防止することができ、静電気による壁紙への汚れの吸着を防止することができるからである。
【0043】
裏打ち紙層(2)に用いられる合成繊維としては、当業者が一般的に用いるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリ乳酸繊維等が挙げられる。
【0044】
空気中の水分の吸収による伸縮が小さく、および強度が増すことから、合成繊維としてはポリエステル繊維を含有することが好ましい。パルプのみを裏打ち紙層に用いる従来の壁紙やポリエステル繊維以外の他の合成繊維と比べ、ポリエステル繊維は、吸湿性の指標である公定水分率が低いので、水分による伸縮は極めて小さく、本発明の粘着壁紙を壁面等に貼着した後、空気中の水分の影響を受けにくいからである。なお、公定水分率とは、温度20℃で、相対湿度が60%における吸湿率に基づいて定められた値である。
また、ポリエステル繊維は、パルプに比べ強度がある。これによって、本発明の粘着壁紙を壁面等に貼着した後、所定の引張力を加えても、破れず、貼着位置の調整が容易となる。
【0045】
上記裏打ち紙の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば、通常の裏打ち紙の製法(叩解工程、抄造工程、乾燥工程を経て製造)、また、不織布の製法で用いられる湿式法、乾式法等を例示することができ、中でも湿式法が好適に使用される。
【0046】
粘着層(4)は、裏打ち紙層(2)の裏面側、すなわち化粧層(3)とは反対側の面に備えられる。粘着層(4)は裏打ち紙層(2)の裏面側にハケ、塗工機等により塗工して備えてもよく、また壁紙を貼着する既設壁紙または下地材等にハケ、ローラー等で塗工してその後裏打ち紙層を貼着して備えてもよい。粘着層(4)を裏打ち紙層(2)の裏面側に塗工する場合には、粘着層(4)を備える時期はいつでもよく、例えば本発明の粘着壁紙の製造時でもよく、壁紙を製造し養生した後でもよく、既設壁紙または下地材等に貼着する直前でもよい。また、上記粘着層(4)としては、当業者が粘着層として一般的に用いるものであれば特に限定されないが、例えば、でんぷん系接着剤、セルロース系接着剤等の接着剤、再湿糊(乾燥状態の糊)、でんぷん糊等の天然成分および/または合成樹脂を配合した粘着剤等が挙げられる。
本発明において使用される合成樹脂としては、一般的に当業者が粘着剤として用いるものであれば特に限定されないが、例えば、アクリル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、スチレンブタジエン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリルスチレン樹脂、酢酸ビニルアクリル樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、特にアクリル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、スチレンブタジエン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリルスチレン樹脂、酢酸ビニルアクリル樹脂、ウレタン樹脂からなる群より選択される1種又は2種以上の合成樹脂から構成されるものが採用されることが好ましい。
【0047】
既設壁紙は、可塑剤を含む塩化ビニル樹脂から構成される場合が多く、この上から貼着すると、既設壁紙の塩化ビニル樹脂中の可塑剤がブリードして粘着層に悪影響を与えてしまう。既設壁紙の上に重ねて貼着する場合には既設壁紙から溶出する成分(可塑剤等)の影響によるブリードを抑制するという理由から、粘着剤にアクリル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、ウレタン樹脂からなる群より選択される1種または2種以上の合成樹脂を含有することがさらに好ましい。天井等の貼着作業が困難な場所へ貼着する場合には、粘着力が高く自重による落下、貼り付け位置のズレ等が生じにくいという理由から粘着剤はアクリル樹脂を含有することが最も好ましい。
【0048】
次いで粘着層(4)の裏面側、すなわち裏打ち紙層(2)とは反対側の面には、必要に応じて離型紙(6)が貼着されている。この離型紙(6)は、粘着壁紙(1)を巻回状態で保存する際に、粘着剤が化粧層(3)や表面フィルム(5)に接触して付着するのを防止するためのものである。
【0049】
必要に応じて備える離型紙(6)の種類としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンラミネート紙、シリコン塗工紙、グラシン紙、未延伸ポリプロピレン(CPP)、延伸ポリプロピレン(OPP)、LDPE(低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)、ONY(延伸ナイロン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PC(ポリカーボネート)、PVA(ポリビニルアルコール)、EVOH(エチレンビニルアルコール共重体)、PT(セロファン)等からなるものや、これらの素材を二層以上積層したもの、例えば、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)とONY(延伸ナイロン)からなるKON(二層フィルム)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)とPT(セロファン)からなるKT(二層フィルム)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)と二軸延伸ポリプロピレンからなるKOP(二層フィルム)、PVDC(ポリ塩化ビニリデン)とPET(ポリエチレンテレフタレート)からなるKPET(二層フィルム)を採用することができる。さらにこの他にも、セラミックスをPET(ポリエチレンテレフタレート)に蒸着させてなるセラミックス蒸着フィルム、アルミをPET(ポリエチレンテレフタレート)に蒸着させてなるアルミ蒸着フィルムを採用することもできる。ポリエチレンラミネート紙、シリコン塗工紙からなる場合、粘着層(4)に貼り合わせる前に、加湿処理が施されることが好ましい。これによって、壁紙層の水分状態を一定に保つことができる。
【0050】
また離型紙(6)には加湿処理を施すことが好ましい。加湿処理を施すことで壁紙の水分量を適度な量に調整できる。つまり、化粧層、裏打ち紙層、粘着層および離型紙等の構成によっては離型紙の加湿処理の有無および加湿量を調整し、離型紙の水分量を適度な量に保つことが好ましい。上記水分量が適度な量でないと、離型紙が過乾燥な状態となり、備えた離型紙が壁紙の水分を吸収し、壁紙の含水量が低下する。そのため、貼着後に壁紙が吸湿して、膨らみが生じる可能性があるからである。
【0051】
本発明の粘着壁紙(1)は、化粧層(3)の裏面側に、裏打ち紙層(2)を直接設けた構成であるが、本発明に係る粘着壁紙(1)はこれに限定されない。本発明の粘着壁紙(1)は、化粧層(3)と裏打ち紙層(2)との間に不透水フィルム、難燃紙・不燃紙等の織布、不織布等を積層しても良く、積層する位置は、化粧層と裏打ち紙層との間であっても裏打ち紙層と粘着層との間であっても良く、あるいは複数の裏打ち紙層の間に挟み込んだ構成をしても良い。例えば、図2に示すように、粘着壁紙(1)は、化粧層(3)と裏打ち紙層(2)の間に不透水性フィルム層(8)を介在させた構造であってもよい。また、不透水性フィルム層(8)をもつ粘着壁紙(1)は、前記した構成に限定されず、図3の通り、化粧層(3)の裏面側に裏打ち紙層(2)を設けるとともに、この裏打ち紙層(2)の裏面側に不透水性フィルム層(8)を設け、この不透水性フィルム層(8)の裏面側にさらに裏打ち紙層(2)を設け、この裏打ち紙層(2)の裏面側に粘着層(4)を塗布した構成としてもよい。
【0052】
不透水性フィルム層の材質は、特に限定されるものではないが、例えば、PE、CPP、OPP、PET、PVC、EVA、PVDC、PVA、EVOH、PC、PS(ポリスチレン)、PAN(ポリアクリロニトリル)、LDPE、MDPE(中密度ポリエチレン)、HDPE、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)等を挙げることができる。
【0053】
不透水性フィルム層の形成方法は、特に限定されるものではないが、例えば、Tダイ法,丸ダイ法等の共押出成形ラミネート、ウェットラミネート、ホットメルトラミネート、シングル,サンドイッチ,タンデム等の押出ラミネート、ドライラミネート、ノンソルベントラミネート、サーマルラミネート等を挙げることができ、中でもTダイ法が好適に使用される。
【実施例】
【0054】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例)
重さ85g/mの不織布の裏打ち紙で構成される裏打ち紙層に、重さ220g/mの塩化ビニル樹脂からなる化粧層を配設し、壁紙本体を構成した。不織布は、ポリエステル繊維が20重量%、アクリル繊維が10重量%、パルプが70重量%からなり(ポリエステル繊維:アクリル繊維の配合率は1:2)、叩解工程、抄造工程、乾燥工程を経て、製造された。壁紙本体の裏打ち紙層の裏面側に、重さ45g/mのアクリル樹脂系接着剤を含む粘着剤(例えば、2液架橋型アクリル系粘着剤)を塗布して粘着層を形成し、重さ92g/mの離型紙を貼着して壁紙を構成した。該離型紙は加湿処理した後、粘着層の裏面側に貼着した。
【0055】
(比較例1)
重さ70g/mのパルプからなる一般紙(中越パルプ製、品番CP65TWS)で構成される裏打ち紙層に、重さ220g/mの塩化ビニル樹脂からなる化粧層を配設し、裏打ち紙層に重さ40g/mのアクリル樹脂系接着剤を含む粘着剤(例えば、2液架橋型アクリル系粘着剤)を塗布して接着層を形成し、この接着層の裏面側に重さ92g/mの離型紙を貼着して壁紙を構成した。なお、比較例1についても、実施例と同様、製造工程において、加湿処理を施した。
【0056】
(比較例2)
重さ65g/mのパルプからなる一般紙(紀州製紙製、品番NN−KSH)で構成される裏打ち紙層に、重さ230g/mの塩化ビニル樹脂からなる化粧層を配設し、裏打ち紙層に重さ35g/mのアクリル樹脂系接着剤を含む粘着剤(例えば、2液架橋型アクリル系粘着剤)を塗布して接着層を形成し、この接着層の裏面側に重さ92g/mの離型紙を貼着して壁紙を構成した。
【0057】
上記の実施例並びに比較例1及び2について、裏打ち紙の密度を測定した。
密度(g/cm3)は、裏打ち紙の坪量(g/m)、裏打ち紙の厚み(mm)に基づき算出した。
算出には、密度(g/cm3)=坪量(g/m)÷裏打ち紙の厚み(mm)×1000の式を用いた(JIS P 8118)。結果は、以下の通りである。
実施例 0.62g/cm3
比較例1 0.81g/cm3
比較例2 1.00g/cm3
このように、実施例では、比較例1及び2に比べて低い値となった。
【0058】
〔試験例1〕
実施例並びに比較例1及び2の試料について、裏打ち紙層の含水率を測定した。なお、実施例及び比較例ともに、複数個の試料について測定を行っており、これら複数個の試料を枝番号((1)、(2)、(3)…)で示す。
<測定条件>
温度 10℃
絶対湿度 1.9g/m3 (相対湿度20%)
上記の測定条件環境下において、試料の重量を測定し、その後、試料を70℃で3時間乾燥させ重量を測定し、減量した重量を乾燥後の試料重量で割って算出される値を含水率(重量%)とした。なお、測定した試料の寸法は、A4サイズ(210mm×297mm)とした。結果は、以下の通りである。
【0059】
【表1】

【0060】
上記結果の通り、裏打ち紙にポリエステル繊維等を含有する不織布を用いた実施例の含水率は0.1〜2.5重量%の範囲内である0.2〜0.34重量%であったのに対し、裏打ち紙が一般紙からなる比較例1及び2の含水率は0.1〜2.5重量%の範囲外である3.31〜5.95%の範囲であった。したがって、実施例のように、裏打ち紙層にポリエステル繊維が含有される合成繊維からなる不織布を用いると、従来のパルプのみの裏打ち紙層からなるものに比べ、含水率を抑えることができることがわかった。
【0061】
〔試験例2〕
実施例並びに比較例1及び2の試料について、裏打ち紙層の含水率を測定した。
<測定条件>
温度 30℃
絶対湿度 27.3g/m3 (相対湿度 90%)
上記の測定条件環境下において、試料の重量を測定し、その後、試料を70℃で3時間乾燥させ重量を測定し、減量した重量を乾燥後の試料重量で割って算出される値を含水率(重量%)とした。なお、測定した試料の寸法は、A4サイズ(210mm×297mm)とした。結果は、以下の通りである。
【0062】
【表2】

【0063】
上記結果の通り、裏打ち紙層にポリエステル繊維が含有される不織布を用いた実施例の含水率は0.1〜2.5重量%の範囲内である1.68〜1.80%の範囲にあったのに対し、裏打ち紙層が一般紙からなる比較例1及び2の含水率は0.1〜2.5重量%の範囲外である7.50〜12.02%の範囲であった。したがって、上記のような高湿度条件の下でも、実施例のように、裏打ち紙層にポリエステル繊維を含有する合成繊維からなる不織布を用いると、従来のパルプのみの裏打ち紙層からなるものに比べ、含水率を抑えることができることがわかった。
【0064】
〔試験例3〕
実施例並びに比較例1及び2の試料について、伸び率の測定を行った。
<測定条件>
温度 23℃
絶対湿度 10.3g/m3 (相対湿度 50%)
試料のサイズ 30mm×920mm
(試料は壁紙の幅方向に採取した。)
上記の測定条件環境下において、試料を24時間放置した後、スケールで寸法測定した。その後、試料を水中に浸漬し、5分後に取り出して寸法を測定し、伸び率を算出した。
算出には、伸び率(%)=(伸びた長さ)÷(元の寸法)×100の式を用いた。
結果は、以下の通りとなった。
実施例 …0.25%
比較例1…0.98%
比較例2…1.25%
【0065】
上記結果の通り、実施例の伸び率は、0.25%と小さい値を示したのに対し、裏打ち紙層に一般紙を用いた比較例1及び2の伸び率は、0.98%、1.25%と大きい値を示した。すなわち、実施例では、実際に水分が多い環境にさらされても、伸縮が起こりにくいのに対し、比較例1及び2では、伸縮が生じることがわかった。
【0066】
〔試験例4〕
実施例並びに比較例1及び2の試料について、以下の測定条件の下、貼着試験を行った。
<測定条件>
絶対湿度10.3g/m3 (室温23℃、相対湿度50%)の環境下で既設壁紙(94cm×182cm)の被着体に試料(46cm×180cm)を2枚貼着し、24時間放置した。次に絶対湿度1.9g/m3(室温10℃、相対湿度20%)の環境条件にしてさらに24時間放置後の状態を観察する。
試験結果は、貼着後の仕上がりを、突きつけ箇所については、外観変化なし3、突きつけ箇所の壁紙が縮んで隙間が空いている2、突きつけ箇所の壁紙の隙間が顕著に空いている1と判定した。表面の状態については、既設壁紙の影響を受けない3、既設壁紙の影響をやや受ける2、既設壁紙の影響を非常に受ける1と判定した。
結果は以下の通りである。
【0067】
【表3】

【0068】
上記結果の通り、実施例の貼着後の仕上がりは、突きつけ箇所についてはすべて「3:外観変化なし」の評価であったのに対し、裏打ち紙層に一般紙を用いた比較例1及び2の突きつけ箇所については、「1:突きつけ箇所の壁紙の隙間が顕著に空いている」〜「2:突きつけ箇所の壁紙が縮んで隙間が空いている」の評価であった。表面の状態については、実施例はすべて「3:既設壁紙の影響を受けない」の評価であったのに対し、比較例1及び2の表面の状態については、「1:既設壁紙の影響を非常に受ける」〜「2:既設壁紙の影響をやや受ける」の評価であった。
これは、実施例では低湿度の測定条件下でも、壁紙から水分が奪われることはなく、環境の影響を受けなかったのに対し、比較例1及び2では低湿度の測定条件では、環境の影響を受け、壁紙から水分が奪われて縮んでしまったことによる。
【0069】
〔試験例5〕
実施例並びに比較例1及び2の試料について、以下の測定条件の下、貼着試験をした。
<測定条件>
絶対湿度10.3g/m3 (室温23℃、相対湿度50%)の環境下で既設壁紙(94cm×182cm)の被着体に試料(46cm×180cm)を2枚貼着し、24時間放置した。次に絶対湿度27.3g/m3(室温30℃、相対湿度90%)の環境条件にしてさらに24時間放置後の状態を観察する。
試験結果は、貼着後の仕上がりを、突きつけ箇所については、外観変化なし3、突きつけ箇所の壁紙が伸びて継ぎ目が盛り上がっている2、突きつけ箇所の継ぎ目が顕著に盛り上がっている1と判定した。表面の状態については、既設壁紙の影響を受けない3、既設壁紙の影響をやや受ける2、既設壁紙の影響を非常に受ける1と判定した。
【0070】
【表4】

【0071】
上記結果の通り、実施例の貼着後の仕上がりは、突きつけ箇所についてはすべて「3:外観変化なし」の評価であったのに対し、裏打ち紙層に一般紙を用いた比較例1及び2の突きつけ箇所については、「1:突きつけ箇所の継ぎ目が顕著に盛り上がっている」〜「2:突きつけ箇所の壁紙が伸びて継ぎ目が盛り上がっている」の評価であった。表面の状態については、実施例はすべて「3:既設壁紙の影響を受けない」の評価であったのに対し、比較例1及び2の表面の状態については、「1:既設壁紙の影響を非常に受ける」〜「2:既設壁紙の影響をやや受ける」の評価であった。
これは、実施例では高湿度の測定条件下でも、水分を吸収しにくく、環境の影響を受けなかったのに対して、比較例1及び2では高湿度の測定条件では、環境の影響を受け、水分を吸収して伸びてしまったことによる。
【0072】
〔試験例6〕
実施例並びに比較例1及び2の試料について、以下の測定条件の下、貼着試験をした。
貼着後の仕上がりを良い3、やや悪い2、非常に悪い1として評価する。
<測定条件>
絶対湿度 9.5g/m3 (室温20℃、相対湿度55%)
ラワンベニヤ(94cm×182cm)の被着体に試料(46cm×180cm)を2枚貼着し、24時間後の状態を観察する。
試験結果は、貼着後の仕上がりを、突きつけ箇所については、外観変化なし3、突きつけ箇所の壁紙が伸縮している2、突きつけ箇所の壁紙の伸縮が顕著1と判定した。表面の状態については、既設壁紙の影響を受けない3、既設壁紙の影響をやや受ける2、既設壁紙の影響を非常に受ける1と判定した。
結果は、以下の通りである。
【0073】
【表5】

【0074】
上記結果の通り、実施例の貼着後の仕上がりは、突きつけ箇所についてはすべて「3:外観変化なし」の評価であった。また、裏打ち紙層に一般紙を用いた比較例1及び2の突きつけ箇所についても、比較例1(1)〜(3)、比較例2(3)は「3:外観変化なし」の評価であった。なお、比較例2(1)は「2.5」、比較例2(2)は「2:突きつけ箇所の壁紙が伸縮している」となった。
これは、湿度条件が高くも低くもない良好な条件で貼着試験を行ったためであり、環境要因がなかったことによる。したがって、実施例のみならず、比較例に関しても環境の影響はほとんどみられなかった。
ただし、表面の状態については、実施例はすべて「3:既設壁紙の影響を受けない」の評価であったのに対し、比較例1及び2の表面の状態については、「1:既設壁紙の影響を非常に受ける」〜「2:既設壁紙の影響をやや受ける」の評価であった。
【0075】
以上の通り、本発明に係る粘着壁紙は、裏打ち紙層にポリエステル繊維等の合成繊維を含むため、含水率は0.1重量%〜2.5重量%の範囲内となっている。これに対して、従来の一般品の代表例である比較例1及び2の含水率は、上記範囲外である3.31〜12.02%となった。したがって、本発明の粘着壁紙は一般品と比べると明らかに含水率が少ないことから、既設壁紙の上に重ねて貼着しても、貼着した後の環境変化の影響を受けることなく綺麗に仕上げることができる。
また、本発明の粘着壁紙の裏打ち紙の密度は、0.1g/cm3〜0.8g/cm3であり、一般紙より密度が低い。このため、裏打ち紙層がポーラス状である分、密度の高い従来の紙と比べると壁紙の伸縮を抑えることができる。
また、本発明の粘着壁紙の伸び率は一般品より小さいことから、寸法安定性に優れる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、貼着位置の微調整が可能で、突きつけ貼りで貼り付けた場合に、環境変化の影響を受けにくく、継ぎ目が綺麗で、天井面へも楽に貼着できる壁紙として好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る粘着壁紙の断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る粘着壁紙の断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る粘着壁紙の断面図である。
【符号の説明】
【0078】
1 粘着壁紙
2 裏打ち紙層
3 化粧層
4 粘着層
5 表面フィルム
6 離型紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化粧層及びその裏面側に設けられた裏打ち紙層からなる壁紙本体と、前記壁紙本体の裏面側に設けられた粘着層とを備えてなる粘着壁紙であって、
絶対湿度が1.9g/m3〜27.3g/m3のとき前記裏打ち紙層の含水率が、0.1重量%〜2.5重量%で、前記裏打ち紙層を構成する裏打ち紙の密度が0.1g/cm3〜0.8g/cm3であることを特徴とする粘着壁紙。
【請求項2】
前記裏打ち紙層は、合成繊維を含有することを特徴とする請求項1に記載の粘着壁紙。
【請求項3】
前記合成繊維がポリエステル繊維を含有することを特徴とする請求項2に記載の粘着壁紙。
【請求項4】
前記裏打ち紙層に対して20〜80重量%の合成繊維を含有することを特徴とする請求項2又は3に記載の粘着壁紙。
【請求項5】
前記粘着層が、アクリル樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の粘着壁紙。
【請求項6】
前記粘着層は粘着層の裏面側に離型紙を備え、前記離型紙には加湿処理が施されることを特徴とする請求項5に記載の粘着壁紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−19293(P2009−19293A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−181540(P2007−181540)
【出願日】平成19年7月10日(2007.7.10)
【出願人】(000126528)株式会社アサヒペン (14)
【Fターム(参考)】