説明

粘着組成物、及び粘着テープ

【課題】初期粘着力が高く、高温保存後でも高粘着力を有する粘着組成物を提供する。
【解決手段】粘着剤成分として、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単官能単量体(A)と、極性基含有単官能単量体(B)と、(メタ)アクリル系重合体(C)と、−57℃以下のガラス転移温度を有する非架橋反応性の(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)と、架橋反応性の官能基を有する架橋剤(E)と、開始剤(F)とを含有する粘着組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着組成物、及び粘着テープに関する。特に、本発明は、粘着剤成分と、熱伝導性フィラーや導電性フィラーなどのフィラーとを含有する粘着組成物、及びそれを用いた粘着テープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、粘着剤成分と熱伝導性フィラーとを含有する粘着組成物からなる粘着剤層を備えた熱伝導性の粘着テープや、同様に、粘着剤成分と導電性フィラーとを含有する粘着組成物からなる粘着剤層を備えた導電性の粘着テープが知られている。これらの粘着テープは、電子部品やそれを収容した筐体などに貼り付けて使用される場合がある。
【0003】
例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)、集積回路(IC)チップなどのような電子部品は、その高性能化に伴って発熱量が増大しており、そのため温度上昇による機能障害対策を講じる必要性が生じている。上記観点から、電子部品などの発熱体にはヒートシンクなどの放熱体が取り付けられているが、電子部品と放熱体との熱的接続性が低いと十分な冷却性能が得られないことから、これらを熱伝導性の粘着テープを用いて接合している。
【0004】
上記のような粘着テープに用いられる粘着剤成分としては、例えば、(メタ)アクリル系モノマーと、分子内に架橋反応可能な官能基を有する(メタ)アクリル系重合体と、分子末端に架橋反応可能な官能基を有する(メタ)アクリル系低分子量重合体と、架橋剤と、開始剤とを含有する粘着剤成分が提案されている(特許文献1)。上記の粘着剤成分によれば、(メタ)アクリル系モノマーや分子内に架橋反応可能な官能基を有する(メタ)アクリル系重合体だけでなく、分子末端に架橋反応可能な官能基を有する(メタ)アクリル系低分子量重合体も架橋剤により架橋して高分子量化するため、高充填でフィラーを含有しても、柔軟性、及び耐ブリードアウト性に優れた粘着テープを得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2005/42612
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような粘着組成物は、架橋反応により全ての成分が架橋するため、高分子量化によって得られる粘着組成物が硬くなり、高い粘着力が得られ難い。特に、このような粘着組成物を高温環境下で保存した場合、粘着力が顕著に低下するという問題がある。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、高い初期粘着力を有し、高温保存後でも、高粘着力を有する粘着剤組成物、及び粘着テープを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、粘着剤成分と、フィラーとを含む粘着組成物であって、
前記粘着剤成分が、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単官能単量体(A)と、極性基含有単官能単量体(B)と、(メタ)アクリル系重合体(C)と、−57℃以下のガラス転移温度を有する非架橋反応性の(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)と、架橋反応性の官能基を有する架橋剤(E)と、開始剤(F)とを含有する粘着組成物である。
【0009】
上記粘着組成物によれば、粘着剤成分が(メタ)アクリル酸アルキルエステル単官能単量体(A)と、極性基含有単官能単量体(B)と、架橋剤(E)とを含有するため、架橋反応により(メタ)アクリル酸アルキルエステル単官能単量体(A)と極性基含有単官能単量体(B)とを有する高分子量化した架橋体を形成することができる。また、粘着剤成分が(メタ)アクリル系重合体(C)を含有するため、上記高分子量化した架橋体と(メタ)アクリル系重合体(C)との絡み合いにより、高粘着力を有する粘着組成物を得ることができる。
【0010】
また、上記粘着組成物は、粘着剤成分として非架橋反応性の(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)を含有するから、該(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)は架橋反応に寄与せず、未架橋の状態で粘着組成物中に(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)を存在させることができる。さらに、(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)は低分子量であるため、架橋体や(メタ)アクリル系重合体(C)との絡み合いも少ない。そして、(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)は低ガラス転移温度を有するため、粘着組成物中に含まれる該(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)が粘着組成物全体の硬度を低下させる粘着付与剤のように機能する。これにより、架橋後でも高い初期粘着力を得ることができる。さらに、(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)は架橋反応可能な官能基を有していないから、高温環境下でも(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)が他の成分と架橋することもない。このため、高温保存後でも、高粘着力を維持することできる。なお、本明細書において、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリルを意味する。
【0011】
上記粘着組成物において、前記粘着剤成分は、粘着剤成分全量中、前記(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)を好ましくは5〜25質量%含有する。(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)の含有量が上記範囲であれば、より高粘着力を得ることができる。
【0012】
上記粘着組成物において、前記フィラーとしては、熱伝導性フィラーを用いることができる。
【0013】
そして、本発明は、上記に記載の粘着組成物を含有する粘着剤層を備えた粘着テープである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、高い初期粘着力を有し、高温保存後でも、高粘着力を有する粘着組成物を得ることができる。それゆえ、上記粘着組成物を有する粘着テープは、熱伝導性の粘着テープや導電性の粘着テープとして好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本実施の形態の粘着組成物は、粘着剤成分の1つとして、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単官能単量体(A)を含有する。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単官能単量体(A)を含有する粘着剤成分を用いることにより、樹脂製部材に対して高粘着力を得ることができる。
【0016】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単官能単量体(A)としては、炭素数20以下のアルキル基を有する単官能単量体を使用することができ、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独でまたは複数使用してもよい。これらの中でも、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソオクチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0017】
(メタ)アクリル酸アルキルエステル単官能単量体(A)の含有量は、粘着剤成分全量中、好ましくは50〜87質量%であり、より好ましくは55〜87質量%である。(メタ)アクリル酸アルキルエステル単官能単量体(A)の含有量が上記範囲外では、粘着力が低下する傾向がある。
【0018】
本実施の形態の粘着組成物は、粘着剤成分の1つとして、極性基含有単官能単量体(B)を含有する。極性基含有単官能単量体(B)を含有する粘着剤成分を用いれば、架橋により極性基含有単官能単量体(B)由来の極性基を有する高分子量の架橋体を形成することができ、金属製部材に対して高粘着力を得ることができる。
【0019】
極性基含有単官能単量体(B)としては、極性基と炭素数20以下のアルキル基とを有する単官能単量体を使用することができ、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸などのカルボキシル基含有単官能単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタル酸などの水酸基含有単官能単量体;2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2−(メタ)メタクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェートなどのリン酸基含有単官能単量体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有単官能単量体;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有単官能単量体;N−ビニル−2−ピロリドンなどの窒素環含有単官能単量体などが挙げられる。これらは単独でまたは複数使用してもよい。これらの中でも、カルボキシル基含有単官能単量体、及び水酸基含有単官能単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0020】
極性基含有単官能単量体(B)の含有量は、粘着剤成分全量中、好ましくは1〜27質量%であり、より好ましくは1〜16質量%である。極性基含有単官能単量体(B)の含有量が1質量%未満では、金属製部材に対する粘着力が低下する傾向がある。また、極性基含有単官能単量体(B)の含有量が27質量%より多いと、架橋体が過度に硬質となり、粘着力が低下する傾向がある。
【0021】
本実施の形態の粘着組成物は、粘着剤成分の1つとして、(メタ)アクリル系重合体(C)を含有する。(メタ)アクリル系重合体(C)を含有する粘着剤成分を用いることにより、粘着組成物中で架橋体と(メタ)アクリル系重合体(C)との絡み合いが生じ、高粘着力を有する粘着組成物を得ることができる。
【0022】
(メタ)アクリル系重合体(C)としては、既述した(メタ)アクリル酸アルキルエステル単官能単量体(A)の重合体、または(メタ)アクリル酸アルキルエステル単官能単量体(A)と極性基含有単官能単量体(B)との重合体を用いることができる。これらの中でも、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソオクチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体を主モノマーとし、カルボキシル基含有単官能単量体、及び水酸基含有単官能単量体からなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体をコモノマーとして含有する重合体がより好ましい。このような極性基を有する単量体をモノマー成分として用いることにより、金属製部材に対して高い粘着力を得ることができる。また、架橋体中の極性基含有単官能単量体(B)由来の極性基と、(メタ)アクリル系重合体(C)のモノマー成分に含まれる極性基とが架橋あるいは分子間相互作用して、高い凝集力を得ることができる。なお、(メタ)アクリル系重合体(C)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単官能単量体(A)、及び極性基含有単官能単量体(B)に用いられる単量体と同種の単量体をモノマー成分として含有することが好ましい。
【0023】
(メタ)アクリル系重合体(C)の重量平均分子量は、好ましくは10万〜300万である。高分子量の重合体を用いることにより、高粘着力を有する粘着組成物を得ることができる。なお、本明細書において、重量平均分子量、及び数平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィ(GPC)により測定される値(ポリスチレン換算値)である。(メタ)アクリル系重合体(C)のガラス転移温度は、特に限定されるものではないが、好ましくは−50〜0℃である。ガラス転移温度が上記範囲であれば、高温保存後により高い粘着力を得ることができる。なお、本明細書において、ガラス転移温度は、示差熱量測定装置(マックサイエンス社製,DSC3100)により、窒素雰囲気(流量:200mL/分)下、昇温速度10℃/分、測定温度範囲−100〜180℃の測定条件で測定される値である。
【0024】
(メタ)アクリル系重合体(C)の含有量は、粘着剤成分全量中、好ましくは5〜40質量%であり、より好ましくは5〜20質量%である。(メタ)アクリル系重合体(C)の含有量が5質量%以上であれば、高温保存後により高い粘着力を得ることができる。一方、(メタ)アクリル系重合体(C)の含有量が40質量%以下であれば、粘着組成物が低粘度となり、塗工不良を低減することができる。
【0025】
(メタ)アクリル系重合体(C)を調製する方法としては、特に限定されず、従来公知の塊状重合法や溶液重合法を使用することができる。これらの中でも、(メタ)アクリル系重合体(C)を構成する単量体を媒質とし、溶剤の除去が不要な塊状重合法が好ましい。従って、(メタ)アクリル系重合体(C)は、予め重合した重合物の形態で使用してもよいし、塊状重合法を用いる場合、媒質である単量体中で重合した部分重合物の形態(シロップ)で使用してもよい。
【0026】
本実施の形態の粘着組成物は、粘着剤成分の1つとして、−57℃以下のガラス転移温度を有する非架橋反応性の(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)を含有する。非架橋反応性の(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)は架橋反応に寄与しないから、架橋反応後も未架橋の状態で粘着組成物中に(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)を存在させることができる。また、(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)は低分子量であるため、架橋体や(メタ)アクリル系重合体(C)との絡み合いも少ない。そして、(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)は−57℃以下の低ガラス転移温度を有するから、粘着組成物中で該(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)が粘着組成物全体の硬度を低下させる粘着付与剤のように機能する。これにより、架橋後でも高い初期粘着力を得ることができる。また、(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)は架橋反応可能な官能基を有していないから、高温環境下でも(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)が他の成分と架橋することもない。このため、高温保存後でも、高粘着力を維持することできる。
【0027】
(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)が架橋反応性の官能基を有すると、架橋剤により(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)も高分子量化するため、低ガラス転移温度の低分子量重合体を用いても粘着組成物が高硬度となり、初期粘着力が低下しやすい。また、高温環境下では、加熱により低分子量重合体の架橋反応性の官能基と、極性基含有単官能単量体(B)の極性基や極性基を有する(メタ)アクリル系重合体(C)を用いた場合の極性基とが架橋する場合があるため、硬度の増加により粘着力が顕著に低下する。なお、架橋反応可能な官能基としては、放射線の照射により架橋するビニル基、(メタ)アクリレート基などの放射線反応性官能基;加熱により架橋するカルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、水酸基などの熱架橋性官能基が挙げられる。
【0028】
また、(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)のガラス転移温度が−57℃より高いと、非架橋反応性の低分子量重合体であっても、架橋反応後に粘着組成物を十分に軟化することができず、初期粘着力が低下し、また高温保存後の粘着力も低下する。なお、(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)のガラス転移温度は、好ましくは−90℃以上であり、より好ましくは−80℃以上であり、さらに好ましくは−77℃以上である。
【0029】
(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)としては、既述した(メタ)アクリル酸アルキルエステル単官能単量体(A)の低分子量重合体を用いることができる。これらの中でも、他の成分との相溶性を考慮すれば、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、及びイソオクチル(メタ)アクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の単量体をモノマー成分として含有する低分子量重合体がより好ましい。さらに、(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)は、低ガラス転移温度を確保するため、モノマー成分としてアクリル系単官能単量体の低分子量重合体がより好ましい。
【0030】
(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)の重量平均分子量は、好ましくは10,000以下であり、より好ましくは2,500〜8,000である。重量平均分子量が上記範囲内であれば、粘着組成物を十分に軟化させることができ、高粘着力を得ることができる。
【0031】
また、(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は、好ましくは1.4以下である。なお、(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)の分子量分布は低いほど好ましいが、生産性を考慮すれば、通常、1.1以上である。
【0032】
(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)の含有量は、粘着剤成分全量中、好ましくは5〜25質量%であり、より好ましくは5〜20質量%である。(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)の含有量が上記範囲であれば、より高い初期粘着力を得ることができ、また高温保存後により高い粘着力を得ることができる。
【0033】
(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)を調製する方法としては、従来公知の塊状重合法や溶液重合法を使用することができる。これらの中でも、(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)を構成する単量体を媒質とし、溶剤の除去が不要な塊状重合法が好ましい。なお、(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)を調製するにあたっては、メルカプト系の分子量調整剤を使用しない方が好ましい。メルカプト系の分子量調整剤を使用すると、得られる(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)の分子量分布が広くなる傾向があり、その結果、粘着力が低下する傾向がある。
【0034】
本実施の形態の粘着組成物は、粘着剤成分の1つとして、架橋剤(E)を含有する。架橋剤(E)としては、分子内に架橋反応可能な官能基を有し、放射線の照射及び/または加熱により(メタ)アクリル酸アルキルエステル単官能単量体(A)や極性基含有単官能単量体(B)、あるいはさらに架橋反応可能な極性基を有する(メタ)アクリル系重合体(C)と架橋し得るものが挙げられる。上記架橋反応可能な官能基としては、既述した放射線の照射により架橋するビニル基、(メタ)アクリレート基などの放射線反応性官能基;加熱により架橋するカルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基、水酸基などの熱架橋性官能基が挙げられる。このような架橋剤(E)としては、具体的には、例えば、多官能重合性化合物、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤などが挙げられる。これらの中でも、ラジカル重合により架橋する多官能重合性化合物が好ましい。
【0035】
多官能重合性化合物としては、分子内にビニル基、(メタ)アクリレート基、アリル基、などの重合可能な二重結合を2個以上有し、ラジカル重合し得る多官能モノマーを使用できる。具体的には、例えば、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリルレート、ビニル(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ウレタンジ(メタ)アクリレート、エポキシエステルジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独でまたは複数使用してもよい。
【0036】
エポキシ系架橋剤としては、分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物を使用できる。具体的には、例えば、ビスフェノールAエピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジアミングリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。これらは単独でまたは複数使用してもよい。
【0037】
イソシアネート系架橋剤としては、分子内に2個以上のイソシアネート基を有する化合物を使用できる。具体的には、例えば、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート、及びこれらとトリメチロールプロパン等のポリオールとのアダクト体などが挙げられる。これらは単独でまたは複数使用してもよい。
【0038】
架橋剤(E)の含有量は、粘着剤成分全量中、好ましくは0.05〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜4質量%である。架橋剤(E)の含有量が上記範囲であれば、より高い粘着力を得ることができる。
【0039】
本実施の形態の粘着組成物は、粘着剤成分の1つとして、開始剤(F)を含有する。開始剤(F)としては、光重合開始剤、及び熱重合開始剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を使用できる。光重合開始剤としては、具体的には、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(BASF社製,Lucirin TPO)、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド(BASF社製,Lucirin TPO−L)などのアシルホスフィンオキサイド類;2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1(チバ社製,Irgacure 369)などのアミノケトン類;ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド(チバ社製,Irgacure 819)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド(チバ社製,CGI403)などのビスアシルホスフィンオキサイド類;ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ社製,Irgacure 184)、ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ社製,Darocure 1173)などのヒドロキシケトン類;ベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;ベンジルメチルケタール(日本シーベルヘグナー社製,Esacure KB1);2−ヒドロキシ−2−メチル−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノールオリゴマー(日本シーベルヘグナー社製,Esacure KIP150)などが挙げられる。熱重合開始剤としては、具体的には、例えば、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミドなどのアゾ系の熱重合開始剤;クミルハイドロパーオキサイド、クミルパーオキシネオデカノエート、シクロヘキサノンパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカネート、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、3−クロロ過安息香酸などの過酸化物系の熱重合開始剤などが挙げられる。
【0040】
開始剤(F)の含有量は、粘着剤成分全量中、好ましくは0.05〜5質量%であり、より好ましくは0.1〜3質量%である。開始剤(F)の含有量が上記範囲であれば、より高い粘着力を得ることができる。
【0041】
本実施の形態において、フィラーとしては、目的とする粘着テープの特性に合わせて、熱伝導性フィラー、導電性フィラー、断熱フィラー、絶縁性フィラーなどの各種のフィラーを使用できる。具体的には、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、結晶性シリカ、非結晶性シリカ、酸化チタン、酸化ニッケル、酸化鉄、酸化銅、窒化アルミニウム、窒化珪素、カーボン、グラファイト、炭化珪素、ホウ酸アルミウイスカなどが挙げられる。これらは単独でまたは複数使用してもよい。フィラーの含有量は、目的とする粘着テープの特性に合わせて選択されるため、特に限定されるものではないが、粘着剤成分100質量部に対して、通常、50〜300質量部である。
【0042】
本実施の形態において、粘着組成物は、上記の粘着剤成分及びフィラーを含有していれば、他の特性の向上を目的として、必要に応じて、着色剤、難燃剤、帯電防止剤などの公知の添加剤をさらに含有してもよい。
【0043】
本実施の形態の粘着組成物を製造する方法としては、従来公知の方法を使用することができる。例えば、上記(A)乃至(F)の各構成成分と、フィラーとを従来公知の撹拌手段により混合する方法を採用することができる。また、塊状重合法により調製した(メタ)アクリル系重合体(C)や(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)を使用する場合、重合後に希釈剤として(メタ)アクリル酸アルキルエステル単量体(A)や極性基含有単官能単量体(B)を添加した重合体含有溶液を用いてもよい。
【0044】
本実施の形態の粘着テープを製造する方法としては、従来公知の方法を使用することができる。例えば、上記のようにして得られる粘着組成物を基材の少なくとも一面上に塗工して粘着剤層を形成し、粘着剤層に放射線(X線、紫外線、電子線など)の照射及び/または粘着剤層を加熱することにより粘着テープを製造することができる。
【0045】
基材としては、プラスチック製、金属製、紙製などの基材が挙げられ、これらの中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンなどからなるプラスチック製基材が好ましい。これらの基材は、剥離性改良処理などの表面処理が施されていてもよい。粘着剤層の厚さは、粘着剤層を貼付した後の被着体の厚さを低減するために、好ましくは50〜250μmである。また、粘着剤層上にさらに剥離用シートを設けてもよい。放射線の照射手段としては、具体的には、例えば、ブラックライト、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプなどが挙げられる。放射線として紫外線を使用する場合、紫外線の強度は、好ましくは約0.1〜10mW/cm(波長:365nm)であり、照射時間は、好ましくは20秒間〜5分間である。
【0046】
以下、実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」とあるのは、「質量部」を意味する。
【実施例】
【0047】
粘着組成物の各構成成分として、表1に示す(メタ)アクリル酸アルキルエステル単官能単量体、極性基含有単官能単量体、(メタ)アクリル系重合体、(メタ)アクリル系低分子量重合体、架橋剤、開始剤、及びフィラーを準備した。
【0048】
【表1】

【0049】
<粘着組成物の調製、及び粘着テープの作製>
表2に示す配合量で各構成成分を混合撹拌し、粘着組成物を調製した。また、調製した粘着組成物を剥離処理を施したポリエステルフィルム(厚さ:50μm)の一面上に厚さが150μmとなるように塗工して、粘着剤層を形成し、さらにこの粘着剤層の上から剥離処理を施したポリエステルフィルム(厚さ:50μm)を気泡が入らないように重ね、粘着剤層の一面側から紫外線(波長365nmにおける強度:3mW/cm)を2分間照射して、粘着テープを作製した。
【0050】
【表2】

【0051】
上記のようにして得られた粘着テープを用いて、以下の評価を行った。表3はこれらの評価結果を示す。
【0052】
〔初期粘着力〕
SUS304製の試験板上に粘着剤層を貼り合せた測定試料を作製した。この測定試料を23℃50%RHの環境下で24時間保存した後の粘着剤層の180°引き剥がし粘着力を、JIS Z 0237に準拠して測定した。
【0053】
〔高温保存後の粘着力〕
初期粘着力と同様の測定試料を作製した。この測定試料を80℃50%RHの高温環境下に168時間保存した後の粘着剤層の180°引き剥がし粘着力を、JIS Z 0237に準拠して測定した。
【0054】
〔熱伝導率〕
熱伝導率計測器(京都電子社製,迅速熱伝導率計,QTM−500)を用い、粘着剤層の熱伝導率を熱線法により測定した。
【0055】
【表3】

【0056】
上記表に示すように、実施例の粘着組成物を用いた粘着テープは、高い初期粘着力を有するとともに、高温保存後でも高粘着力を有していることが分かる。
【0057】
これに対して、低ガラス転移温度を有する非架橋反応性の(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)を含有しない粘着組成物を用いた粘着テープは、初期粘着力、高温保存後の粘着力いずれも低いことが分かる。これは、粘着剤組成物中に粘着剤組成物を軟化させる成分が含まれないためと考えられる。
【0058】
また、水酸基あるいはカルボキシル基などの金属製部材に対して粘着性に優れる官能基を有していても、高ガラス転移温度を有する(メタ)アクリル系低分子量重合体を含有する粘着組成物は、初期粘着力、高温保存後の粘着力いずれも低いことが分かる。
【0059】
さらに、低ガラス転移温度を有していても、架橋反応性の官能基を有する(メタ)アクリル系低分子量重合体である場合、高温保存後に粘着力が顕著に低下することが分かる。これは、高温保存時に、低分子量重合体の架橋反応性の官能基が他の成分と架橋するためと考えられる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着剤成分と、フィラーとを含む粘着組成物であって、
前記粘着剤成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル単官能単量体(A)と、極性基含有単官能単量体(B)と、(メタ)アクリル系重合体(C)と、−57℃以下のガラス転移温度を有する非架橋反応性の(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)と、架橋反応性の官能基を有する架橋剤(E)と、開始剤(F)とを含有する粘着組成物。
【請求項2】
前記粘着剤成分は、粘着剤成分全量中、前記(メタ)アクリル系低分子量重合体(D)を5〜25質量%含有する請求項1に記載の粘着組成物。
【請求項3】
前記フィラーは、熱伝導性フィラーを含む請求項1または2に記載の粘着組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の粘着組成物を含有する粘着剤層を備えた粘着テープ。


【公開番号】特開2012−97185(P2012−97185A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245764(P2010−245764)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000194332)マクセルスリオンテック株式会社 (46)
【Fターム(参考)】