説明

粘膜炎の治療用の組成物及び方法

本発明は、式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物又はオキシリピン化合物を投与することを含む、粘膜炎の治療方法に関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2006年7月19日に出願された米国仮特許出願第60/831,866号に基づく優先権を主張する。当該仮特許出願は、参照によりここに含めるものとする。
本発明は、粘膜炎の治療方法又は予防方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
背景
粘膜炎は、頻繁に起こる耐え難い強化化学療法及び/又は放射線治療の合併症である。口腔粘膜炎は、癌の治療の際の化学療法剤、放射線治療又はこれら2つの手法の組合せにより口腔咽頭上皮組織に対して直接的毒作用がもたらされた結果である。癌の局在によっては、肺癌のための放射線治療後の食道や前立腺癌治療後の直腸において同様の病変が共通して存在する(これらは、特に、それぞれ食道炎及び直腸炎と呼ばれている)。例えば、S.T.Sonis,Nature Reviews,2004,277-284を参照されたい。口腔粘膜が破壊されると、潰瘍を伴う重症患者に共通して、食事に影響を及ぼし且つ多くの場合オピオイド鎮痛薬が必要になる衰弱性の痛みが生じる。患者に対する深刻な脅威は、口腔内における生物学的均衡の崩壊により、片利共生微生物に対して、病原体になる能力、往々にして敗血症を含めた全身性合併症に至らせる能力が突然付与されることである。事実、造血幹細胞移植(HSCT)のために状態が整えられた患者では、口腔粘膜炎は、100日以内に死亡するリスクの増大と関連がある。さらに多くの発熱日数、長期の入院及び非経口栄養への依存のため、罹患患者に対する臨床管理コストの増加はかなりのものとなる。患者に特異的な危険因子に関するサーチについて結論は出ていないが、治療のタイプと治療の強さとの間には何らかの関連があることが実証されている。完全な回復が実現できることは明らかであるものの、根本的な粘膜生物学が永久的に変わってしまう可能性があり、これは再発治療薬に関する口腔粘膜炎についての閾値を減少させる可能性がある。
【0003】
一般に、口腔粘膜炎は、薬物有害事象に対してNCI CTCスケールを使用して等級分けされている:グレード3及び4の口腔粘膜炎を有する患者は、生命にかかわる合併症を発症する場合が多い。
【0004】
口腔粘膜炎の別の悪化因子は、化学療法/放射線療法の強さを弱め、罹患患者の癌生存率を低下させる可能性のある、用量制限的な合併症になる場合が多いことである。多くの場合、口腔粘膜炎は、高い治癒率に至り得る新しい積極的な細胞減少療法の組合せを開発するに当たっての用量制限因子であると考えざるを得ない。
【0005】
粘膜炎病変は、上皮組織の萎縮と出血性潰瘍とによって特徴付けられるものであるところ、その基礎をなす病理生物学的現象は、一連の事象(現在、4つの期に記述的に分けられている)を通して、究極的には上皮幹細胞とこれらのものが正常粘膜を維持する能力とをターゲットにする複雑なプロセスである。口腔粘膜炎は、上皮組織には限られない複雑な生物学的現象である。早期には、炎症細胞成分は在住マクロファージに限られる。初期のDNA損傷及びROS(活性酸素種)の放出により、数種の転写因子:p53、NF−kB及びAP1転写因子ファミリーの一員(最も重要なものとしてはNF−kBの可能性がある)が活性化される。それによる炎症性サイトカイン(TNFα、IL−1)と、メタプロテイナーゼと、IL−6との産生は、プロアポトーシスシグナル及び抗アポトーシスシグナル(BAX及びBCL)の見込まれるシフトと共に、早期に結合組織と内皮の損傷及び血管拡張を刺激し、これは次に細胞毒性薬、フリーラジカル及び他の粘膜に有害な内因性メディエーターの送達を促進させ、それによって次の期を開始させる。
【0006】
第2期は、上皮基底細胞の複製の抑制によって特徴付けられる。口腔咽頭上皮組織は細胞の回転率が最も速い身体組織の一つであるため、基底細胞活性の減少は、毒性上皮細胞の死滅によりさらに加速される需要の増加にもはや対応できず、上皮細胞の死滅及び潰瘍の形成による粘膜防壁の破壊に至る。また、cox−2の早期の有意な上方調節も存在する。活性な線維芽細胞は、AP1を介して、組織破壊を助長するMMPを放出する。潰瘍形成の第3期では、細菌が粘膜下層に侵入し、コロニー形成細菌に対する免疫応答を介して炎症性応答と潰瘍形成とをさらに増幅させる。第4期及び最終期では、自然治癒が生じる。通常、口腔粘膜炎は、癌治療の終了後に迅速に解消する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】S.T.Sonis,Nature Reviews,p.277-284,2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
現在、癌治療によって生じた口腔粘膜炎に対する治療法の選択肢は非常に限られており、多くの患者が支持療法を受けているに過ぎない。実際には、口腔粘膜炎は、癌患者の治療を成功させるための管理に重要な合併症である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
本発明は、粘膜炎の治療方法又は予防方法を提供する。このような粘膜炎は化学療法又は放射線治療によって誘発され得るものであり、その治療は、本発明の化合物を投与することを含み、治療誘発粘膜炎の発生率を減少させることによって生存率を改善させることを含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面の簡単な説明
【図1】図1は、化合物Xの投与後の評点が対照に対して3以上の日のカイ二乗分析を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の詳細な説明
本発明は、式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物若しくはオキシリピン化合物又はアスピリンとω−3脂肪酸との組合せを投与することを含む、粘膜炎の治療方法又は予防方法を提供する。本願の目的上、粘膜炎とは、癌及び関連する疾患の治療用の放射線又は薬物(化学療法)を投与することにより誘発される又はそれを投与することに関連する粘膜傷害をいう。通常、粘膜炎とは、それ自体、口腔から肛門まで消化管のあらゆる場所にある粘膜の腫瘍形成、組織壊死及び萎縮として示される。例えば、本発明の方法は、放射線治療及び/又は化学療法に関連する潰瘍形成及び組織壊死を治療するために使用できる。
【0012】
本発明は、化学療法誘発粘膜炎又は放射線治療誘発粘膜炎の発症を予防する方法であって、式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物若しくはオキシリピン化合物又はアスピリンとω−3脂肪酸との組合せを投与することを含むものを提供する。所定の実施形態では、式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物若しくはオキシリピン化合物又はアスピリンとω−3脂肪酸との組合せを化学療法又は放射線療法と合同投与する。
【0013】
本発明は、治療誘発粘膜炎の発生率を減少させることによって生存率を改善させる方法であって、式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物若しくはオキシリピン化合物又はアスピリンとω−3脂肪酸との組合せを投与することを含むものを提供する。生命にかかわる重度の粘膜炎(WHOの基準でグレード4)の割合は、治療を受けていない患者における60%の平均発生率から、対象の治療を受けた患者における20%以下にまで低下することが予想されるであろう。
【0014】
本発明の方法に使用するのに好適な化合物としては、次式Aの化合物が挙げられる:
【化1】

上記式において、
W’及びY’のそれぞれは、結合又は20個までの原子を含有する環又は20個までの原子の鎖から独立に選択されるリンカーであるが、ただし、W’及びY’は、独立して1個以上の窒素原子、酸素原子、硫黄原子又は燐原子を含むことができるものとし、さらに、W’及びY’は、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、クロル、ヨード、ブロム、フルオル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、カルボキシアミド、シアノ、オキソ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、アシルチオ、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、ホスホリル又はスルホニルから独立に選択される1個以上の置換基を含むことができるものとし、さらに、W’及びY’は、独立して、1個以上の炭素環式、複素環式、アリール又はヘテロアリール縮合環を含むことができるものとし、また、o’が0でありV1
【化2】

であるときに、Y’は炭素原子を介してV1に結合し;
1は、
【化3】

から選択され、ここで、q’が0でありV3が結合であるときに、n’は0又は1であり;その他の場合には、n’は1であり;
2は、結合、
【化4】

から選択され、
上記式において、L’は−C(R1003)(R1004)−から選択され、ここで、R1003及びR1004のぞれぞれは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ペルフルオルアルキル、アルコキシ、アリール若しくはヘテロアリールから独立して選択され、又はR1003及びR1004は共に結合して炭素環又は複素環を形成し;V3
【化5】

であるときに、L’はさらにW’から選択され;n’は0又は1であり;
3は、結合又は
【化6】

から選択され、
ここで、上記式において、それぞれのR1001及びR1002は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルコキシ又はハロからそれぞれ独立に選択され、この場合、該アルキル又はアリール含有部分は、独立に選択される3個までの置換基で置換されていてよく;
a'及びRb'のぞれぞれは、−OR’若しくは−N(R’)2からそれぞれ独立に選択され、又は隣接するRa'及びRb'は一緒になってcis若しくはtrans配置を有するエポキシド環を形成し、ここで、それぞれのR’は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル、シリル、アルコキシアシル、アミノアシル、アミノカルボニル、アルコキシカルボニル又は保護基から独立に選択され;
或いは、V1
【化7】

であり、かつ、V2
【化8】

であるときに、R1002及びRb'は両方とも水素であり;
X’は、−CN、−C(NH)N(R”)(R”)、−C(S)−A’、−C(S)R”、−C(O)−A’、−C(O)−R”、−C(O)−SR”、−C(O)−NH−S(O)2−R”、−S(O)2−A’、−S(O)2−R”、S(O)2N(R”)(R”)、−P(O)2−A’、−PO(OR”)−A’、−テトラゾール、アルキルテトラゾール又は−CH2OHから選択され、
ここで、A' は、−OR”、−N(R”)(R”)又はOM’から選択され;
それぞれのR”は水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル又は検出可能な標識分子から独立に選択され、この場合、任意のアルキル含有部分、アリール含有部分又はヘテロアリール含有部分は、独立に選択される3個までの置換基で置換されていてよく;
M’は陽イオンであり;
G’は、水素、ハロ、ヒドロキシ、アルキル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、カルボキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、カルボキシアミド又は検出可能な標識分子から選択され、ここで、任意のアルキル含有部分、アリール含有部分又はヘテロアリール含有部分は、独立に選択される3個までの置換基で置換されていてよく;
o’は、0、1、2、3、4又は5であり;
p’は、0、1、2、3、4又は5であり;
q’は、0、1又は2であり;
o’+p’+q’は、1、2、3、4、5又は6であり;
ここで、
2が結合である場合には、q’は0であり、V3は結合であり;
3
【化9】

であるときには、o’は0であり、V1
【化10】

であり、p’は1であり、V2
【化11】

であり;
任意の非環式二重結合はcis若しくはtrans配置であることができ、又は三重結合により置換されていてよく;
当該化合物の一つの
【化12】

部分(存在する場合)は、
【化13】

で置換されていてよく、又は、当該化合物の一つの
【化14】

部分(存在する場合)は、
【化15】

で置換されていてよく、ここで、Q’は1個以上の置換基を表し、それぞれのQ’は、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシル、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ又はアミノカルボニルから独立に選択される。
【0015】
所定の実施形態では、V1は、
【化16】

から選択される。
【0016】
所定の実施形態では、V2は結合、
【化17】

から選択される。
【0017】
所定の実施形態では、q’が0であり、かつ、V3が結合であるときに、n’は0又は1であり;その他の場合には、n’は1である。
【0018】
所定の実施形態では、p’は0、1、2、3又は5である。
【0019】
所定の実施形態では、q’は0又は1である。
【0020】
所定の実施形態では、V1
【化18】

である場合に、o’は0又は1であり、p’は1又は2であり、o’+p’は1又は2であり、V2
【化19】

であり、V3は結合である。
【0021】
所定の実施形態では、V1
【化20】

であるときには、o’は3、4又は5であり、p’は0、1又は2であり、o’+p’は4又は5であり、V2は結合である。
【0022】
所定の実施形態では、V2が結合の場合には、o'は0、3、4又は5であり;p’は0、1、2又は5であり、o’+p’は4又は5であり、q’は0であり、V3は結合である。
【0023】
所定の実施形態では、W’及びY’のそれぞれは、結合又は低級アルキル若しくはヘテロアルキルであってアルケニル、アルキニル、アリール、クロル、ヨード、ブロム、フルオル、ヒドロキシ、アミノ又はオキソから独立に選択される1個以上の置換基で置換されていてよいものから独立に選択される。
【0024】
本発明の方法に使用するのに好適な化合物としては、式1のもの:
【化21】

(式中、
炭素a’及びb’は二重結合又は三重結合により結合し;
炭素c’及びd’は二重結合又は三重結合により結合し;
Re、Rf及びRgは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル(例えば、アルコキシアシル、アミノアシル)、アミノカルボニル、アルコキシカルボニル又はシリルから独立に選択され;
Rh、Ri及びRjは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ペルフルオルアルキル、アリール又はヘテロアリールから独立に選択され;
Iは−C(O)−E、−SO2−E、−PO(OR)−Eから選択され、ここで、Eはヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ又はアリールアミノであり;Rは水素又はアルキルであり;
J、L及びHは20個までの原子を含有する環又は20個までの原子の鎖から独立に選択されるリンカーであるが、ただし、J、L及びHは、独立して1個以上の窒素原子、酸素原子、硫黄原子又は燐原子を含むことができるものとし、さらに、J、L及びHは、独立して、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、クロル、ヨード、ブロム、フルオル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、カルボキシアミド、シアノ、オキソ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、アシルチオ、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、ホスホリル及びスルホニルから選択される1個以上の置換基を含むことができるものとし、さらに、J、L及びHは1個以上の炭素環式、複素環式、アリール又はヘテロアリール縮合環も含有することができるものとし、また、リンカーJは隣接するC(R)OR基に炭素原子を介して結合するものとし;
Gは、水素、アルキル、ペルフルオルアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、クロル、ヨード、ブロム、フルオル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ又はカルボキシアミドから選択される。)、又は
製薬上許容できるそれらの塩が挙げられる。
【0025】
所定の実施形態では、当該化合物の製薬上許容できる塩は、Eを誘導体化させることによって形成され、ここで、Eは−OMであり、Mはアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、Na、K、Mg及びZnから選択される陽イオンである。
【0026】
所定の実施形態では、式1の化合物は、式2:
【化22】

(式中、E、Re、Rf及びRgは上で定義したとおりである。)
によって表される。
【0027】
所定の実施形態では、当該化合物の製薬上許容できる塩はEを誘導体化させることによって形成され、ここで、Eは−OMであり、Mはアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、Na、K、Mg及びZnから選択される陽イオンである。
【0028】
式2の代表的な化合物としては次のものが挙げられる。
【化23】

【0029】
所定の実施形態では、式1の化合物は式3:
【化24】

(式中、E、Re、Rf及びRgは上で定義したとおりである。)
によって表される。
【0030】
所定の実施形態では、当該化合物の製薬上許容できる塩はEを誘導体化させることによって形成され、ここで、Eは−OMであり、Mはアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、Na、K、Mg及びZnから選択される陽イオンである。
【0031】
式3の代表的な化合物としては次のものが挙げられる。
【化25】

【0032】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式4のもの:
【化26】

(式中:
AはH又は−OP4であり;
1、P2及びP4はそれぞれ独立に保護基又は水素原子であり;
1及びR2は、それぞれ独立に置換又は非置換の分岐又は非分岐アルキル、アルケニル又はアルキニル基、置換又は非置換アリール基、置換又は非置換の分岐又は非分岐アルキルアリール基、ハロゲン原子、水素原子であり;
Zは、−C(O)ORd、−C(O)NRcc、−C(O)H、−C(NH)NRcc、−C(S)H、−C(S)ORd、−C(S)NRcc、−CN、好ましくはカルボン酸、エステル、アミド、チオエステル、チオカルボキシアミド又はニトリルであり;
それぞれのRa(存在する場合)は、水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C3〜C8)シクロアルキル、シクロヘキシル、(C4〜C11)シクロアルキルアルキル、(C5〜C10)アリール、フェニル、(C6〜C16)アリールアルキル、ベンジル、2〜6員ヘテロアルキル、3〜8員ヘテロシクリル、モルホリニル、ピペラジニル、ホモピペラジニル、ピペリジニル、4〜11員ヘテロシクリルアルキル、5〜10員ヘテロアリール及び6〜16員ヘテロアリールアルキルから独立に選択され;
それぞれのRbは、存在する場合には、=O、−ORd、(C1〜C3)ハロアルキルオキシ、−OCF3、=S、−SRd、=NRd、=NORd、−NRcc、ハロゲン、−CF3、−CN、−NC、−OCN、−SCN、−NO、−NO2、=N2、−N3、−S(O)Rd、−S(O)2d、−S(O)2ORd、−S(O)NRcc、−S(O)2NRcc、−OS(O)Rd、−OS(O)2d、−OS(O)2ORd、−OS(O)2NRcc、−C(O)Rd、−C(O)ORd、−C(O)NRcc、−C(NH)NRcc、−C(NRa)NRcc、−C(NOH)Ra、−C(NOH)NRcc、−OC(O)Rd、−OC(O)ORd、−OC(O)NRcc、−OC(NH)NRcc、−OC(NRa)NRcc、−[NHC(O)]nd、−[NRaC(O)]nd、−[NHC(O)]nORd、−[NRaC(O)]nORd、[NHC(O)]nNRcc、−[NRaC(O)]nNRcc、−[NHC(NH)]nNRcc及び−[NRaC(NRa)]nNRccから独立に選択される好適な基であり;
それぞれのRcは、存在する場合には、独立に保護基又はRaであり、或いは2個のRcは、それらが結合する窒素原子と一緒になって、5〜8員ヘテロシクリル又はヘテロアリールであって1個以上の追加のヘテロ原子を有していてよく、かつ、同一の若しくは異なるRa又は好適なRb基の1個以上で置換されていてよいものを形成し;
それぞれのnは、独立に、0〜3の整数であり;
それぞれのRdは、独立に保護基又はRaである。)
又は製薬上許容できるそれらの塩のものが挙げられる。
【0033】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式5のもの:
【化27】

又は製薬上許容できるそれらの塩
(上記式において、
3は保護基又は水素原子であり;
1、P2、R1及びZは式4において定義したとおりである。)
が挙げられる。
【0034】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式6のもの
【化28】

又は製薬上許容できるそれらの塩
(上記式において、
それぞれのXは水素を表し、或いは両方のX基は、一緒になって3員環を形成するように、1個の置換若しくは非置換メチレン、酸素原子、置換若しくは非置換N原子又は硫黄原子を表し;
1、P2、P3、R1及びZは上で定義したとおりである。)
が挙げられる。
【0035】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式7のもの:
【化29】

又は製薬上許容できるそれらの塩
(式中、
炭素e’及びf’は二重結合又は三重結合により結合し、また、炭素e’が二重結合を介して炭素f’に結合する場合には、その立体配置はcis又はtransであり;
炭素g’及びh’は二重結合又は三重結合により結合し、また、炭素g’が二重結合を介して炭素h’に結合する場合には、その立体配置はcis又はtransであり;
mは0又は1であり;
T’は水素、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル、(C2〜C6)アルキニル、(C5〜C14)アリール、(C6〜C16)アリールアルキル、5〜14員ヘテロアリール、6〜16員ヘテロアリールアルキル又は−CH=CHCH2CH3であり;
Tは−(CH2q− 又は−(CH2q−O−であり、ここで、qは0〜6の整数であり;
Z’は1,2、3、4、5又は6個の同一の又は異なるハロゲン原子で置換されていてよい(C1〜C6)アルキレン、−(CH2p−O−CH2−又は−(CH2m−S−CH2−であり、ここで、pは0〜4の整数であり;
11、R12及びR13は、それぞれ独立に、置換若しくは非置換の分岐若しくは非分岐アルキル、アルケニル若しくはアルキニル基、置換若しくは非置換アリール基、置換若しくは非置換の分岐若しくは非分岐アルキルアリール基、C1〜4アルコキシ、ハロゲン原子、−CH214、−CHR1414、−CR141414又は水素原子であり;
14はそれぞれ独立に−CN、−NO2又はハロゲンから選択され;
1、P2、P3及びZは上で定義したとおりである。)
が挙げられる。
【0036】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式8のもの:
【化30】

又は製薬上許容できるそれらの塩
(式中、
炭素i’から炭素j’の結合の立体配置はcis又はtransであり;
mは0又は1であり;
D’はCH3、−CH=CHCH2U又は−CH=CHCH2CH2Aであり;
Uは分岐又は非分岐の置換又は非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アルコキシカルボニルオキシ及びアリールオキシカルボニルオキシ基であり;
AはH又は−OP4であり;
1、P2、P4、R1、R2及びZは上で定義したとおりである。)
が挙げられる。
【0037】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式9のもの:
【化31】

又は製薬上許容できるそれらの塩
(式中、
炭素k’及びl’は二重結合又は三重結合により結合し;
炭素m’から炭素n’の二重結合の立体配置はcis又はtransであり;
mは0又は1であり;
Dは−CH3又は−CH=CHCH2CH3であり;
1、P2、P3、R1、X及びZは上で定義したとおりである。)
が挙げられる。
【0038】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式10のもの:
【化32】

又は製薬上許容できるそれらの塩
(式中、P1、P2、P3、R1及びZは上で定義したとおりであり;
Qは1個以上の置換基を表し、それぞれのQ(存在する場合)は、個々に、ハロゲン原子又は分岐若しくは非分岐の置換若しくは非置換アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシル、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ又はアミノカルボニル基である。)
が挙げられる。
【0039】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式11のもの:
【化33】

又は製薬上許容できるそれらの塩が挙げられる
(式中、P1、P2、P3、R1及びZは上で定義したとおりである。)。
【0040】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式12のもの:
【化34】

又は製薬上許容できるそれらの塩が挙げられる
(式中、P1、P2、P3、Q、R1及びZは上で定義したとおりである。)。
【0041】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式13のもの:
【化35】

又は製薬上許容できるそれらの塩が挙げられる
(式中、P1、P2、R1、R2、U及びZは上で定義したとおりである。)。
【0042】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式14のもの:
【化36】

又は製薬上許容できるそれらの塩が挙げられる
(式中、P1、P2、R1、R2、Q及びZは上で定義したとおりである。)。
【0043】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式15のもの:
【化37】

又は製薬上許容できるそれらの塩が挙げられる
(式中、P1、P2及びZは上で定義したとおりである。)。
【0044】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式16のもの:
【化38】

又は製薬上許容できるそれらの塩が挙げられる
(式中、P1及びZは上で定義したとおりである。)。
【0045】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式17のもの:
【化39】

又は製薬上許容できるそれらの塩が挙げられる
(式中、炭素o’及びp’は単結合又は二重結合により結合し;
炭素q’及びr’は単結合又は二重結合により結合し;
1、P2及びZは上で定義したとおりである。)。
【0046】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式18のもの:
【化40】

又は製薬上許容できるそれらの塩が挙げられる
(式中、炭素s’から炭素t’の二重結合の立体配置はcis又はtransであり;
炭素u’から炭素v’の二重結合の立体配置はcis又はtransであり;
1、P2、R1、R2及びZは上で定義したとおりである。)。
【0047】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式19のもの:
【化41】

又は製薬上許容できるそれらの塩が挙げられる
(式中、炭素w’及びx’は単結合又は二重結合により結合し;
炭素y’及びz’は単結合又は二重結合により結合し;
1、P2及びZは上で定義したとおりである。)。
【0048】
式4〜19の所定の実施形態では、それぞれのRbは、存在する場合には、=O、−ORd、(C1〜C3)ハロアルキルオキシ、−OCF3、=S、−SRd、=NRd、=NORd、−NRcc、ハロゲン、−CF3、−CN、−NC、−OCN、−SCN、−NO、−NO2、=N2、−N3、−S(O)Rd、−S(O)2d、−S(O)2ORd、−S(O)NRcc、−S(O)2NRcc、−OS(O)Rd、−OS(O)2d、−OS(O)2ORd、−OS(O)2NRcc、−C(O)Rd、−C(O)ORd、−C(O)NRcc、−C(NH)NRcc、−C(NRa)NRcc、−C(NOH)Ra、−C(NOH)NRcc、−OC(O)Rd、−OC(O)ORd、−OC(O)NRcc、−OC(NH)NRcc、−OC(NRa)NRcc、−[NHC(O)]nd、−[NRaC(O)]nd、−[NHC(O)]nORd、[NHC(O)]nNRcc、−[NRaC(O)]nNRcc、−[NHC(NH)]nNRcc及び−[NRaC(NRa)]nNRccから独立に選択される好適な基である。)。
【0049】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式20:
【化42】

式21:
【化43】

式22:
【化44】

式23:
【化45】

式24:
【化46】

式25:
【化47】

式26:
【化48】

式27:
【化49】

若しくは式28:
【化50】

のもの又は上記のいずれかの製薬上許容できる塩が挙げられる
(上記式において、それぞれのPはH又は保護基から独立に選択され;
RはH、C1〜6アルキル(例えば、メチル、エチル、グリセリン)、C2〜6アルケニル又はC2〜6アルキニルである。)。
【0050】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式29のもの:
【化51】

並びにその製薬上許容できる塩、水和物及び溶媒和物が挙げられる
(式中:
1−E1及びF1−G1は独立にcis又はtrans−C=C−又は−C≡C−であり;
101、R102及びR103は、水素、(C1〜C4)直鎖又は分岐アルキル、(C2〜C4)アルケニル、(C2〜C4)アルキニル、(C1〜C4)アルコキシ、−CH2104、−CHR104104及び−CR104104104から独立に選択され;
それぞれのR104はCN、−NO2及びハロゲンから独立に選択され;
1は−R105、−OR105、−SR105及び−NR105105から選択され;
それぞれのR105は、水素、1個以上の同一の又は異なるR基で置換されていてよい、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル又は(C2〜C6)アルキニル、1個以上の同一の又は異なるR基で置換されていてよい(C5〜C14)アリール、1個以上の同一の又は異なるR基で置換されていてよいフェニル、1個以上の同一の又は異なるR基で置換されていてよい(C6〜C16)アリールアルキル、1個以上の同一の又は異なるR基で置換されていてよい5〜14員ヘテロアリール、1個以上の同一の又は異なるR基で置換されていてよい6〜16員ヘテロアリールアルキル及び検出可能な標識分子から独立に選択され;
1は1、2、3、4、5又は6個の同一の又は異なるハロゲン原子で置換されていてよい(C1〜C6)アルキレン、−(CH2m−O−CH2−及び−(CH2m−S−CH2−から選択され、ここでmは0〜4の整数であり;
1は−(CH2n−及び−(CH2n−O−から選択され、ここでnは0〜6の整数であり;
1は水素、1個以上の同一の又は異なるR100基で置換されていてよい、(C1〜C6)アルキル、(C2〜C6)アルケニル又は(C2〜C6)アルキニル、1個以上の同一の又は異なるR100基で置換されていてよい(C5〜C14)アリール、1個以上の同一の又は異なるR100基で置換されていてよいフェニル、1個以上の同一の又は異なるR100基で置換されていてよい(C6〜C16)アリールアルキル、1個以上の同一の又は異なるR100基で置換されていてよい5〜14員ヘテロアリール、1個以上の同一の又は異なるR100基で置換されていてよい6〜16員ヘテロアリールアルキル及び検出可能な標識分子から選択され;
それぞれのR100は、電気陰性基、=O、−ORa1、(C1〜C3)ハロアルキルオキシ、=S、−SRa1、=NRa1、=NONRa1、−NRC1C1、ハロゲン、−CF3、−CN、−NC、−OCN、−SCN、−NO、−NO2、=N2、−N3、−S(O)Ra1、−S(O)2a1、−S(O)2ORa1、−S(O)2NRC1C1、−OS(O)Ra1、−OS(O)2a1、−OS(O)2ORa1、−OS(O)2NRC1C1、−C(O)Ra1、−C(O)ORa1、−C(O)NRC1C1、−C(NH)NRC1C1、−OC(O)Ra1、−OC(O)ORa1、−OC(O)NRC1C1、−OC(NH)NRC1C1、−NHC(O)Ra1、−NHC(O)ORa1、−NHC(O)NRC1C1及び−NHC(NH)NRC1C1から独立に選択され;
それぞれのRa1は、水素、(C1〜C4)アルキル、(C2〜C4)アルケニル又は(C2〜C4)アルキニルから独立に選択され;
それぞれのRC1は、独立にRa1であり、或いは、RC1C1は、それが結合する窒素原子と一緒になって5又は6員環を形成する。)。
【0051】
式29の所定の実施形態では、X1−Y1が−CH2CH3であるときに、R101、R102又はR103の少なくとも一つは水素以外である。
【0052】
所定の実施形態では、式29の化合物は、式30:
【化52】

により表される。
【0053】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式31〜37のもの:
【化53】

並びにその製薬上許容できる塩、水和物及び溶媒和物が挙げられる
(式中、
106は−OH、−OCH3、−OCH(CH32又は−NHCH2CH3であり;
107
【化54】

である。)。
【0054】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式38のもの:
【化55】

(式中、
炭素aa’及びbb’は二重結合又は三重結合により結合し;
炭素cc’及びdd’は二重結合又は三重結合により結合し;
Re、Rf及びRgは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アシル(例えば、アルコキシアシル、アミノアシル)、アミノカルボニル、アルコキシカルボニル又はシリルから独立に選択され;
Eはヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ又はアリールアミノであり;
Rh、Ri及びRjは水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ペルフルオルアルキル、アリール又はヘテロアリールから独立に選択され;
4は水素、アルキル、ペルフルオルアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、フルオル、ヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシから選択され;
5は次のi〜iv:i)CH2CH(R6)CH2(ここで、R6は水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ペルフルオルアルキル、アリール、ヘテロアリール、フルオル、ヒドロキシル又はアルコキシである); ii)CH2C(R67)CH2(ここで、R6及びR7は、それぞれ独立に、アルキル、アルケニル、アルキニル、ペルフルオルアルキル、アリール若しくはフルオルであり、又は、R6及びR7は、互いに結合して炭素環又は複素環を形成する); iii)CH2OCH2、CH2C(O)CH2又はCH2CH2;或いはiv)R5は炭素環、複素環、アリール環又はヘテロアリール環から選択され;
8及びR9は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、ペルフルオルアルキル、アルコキシ、アリール又はヘテロアリールから独立に選択され、或いは、R8及びR9は互いに結合して炭素環又は複素環を形成する。)
或いは製薬上許容できるそれらの塩が挙げられる。
【0055】
所定の実施形態では、R8及びR9は水素である。
【0056】
所定の実施形態では、当該化合物の製薬上許容できる塩はEを誘導体化させることによって形成され、ここで、Eは−OMであり、Mはアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、Na、K、Mg及びZnから選択される陽イオンである。
【0057】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式39〜44のもの:
【化56】

及び製薬上許容できるそれらの塩が挙げられ、上記式において、
Re、Rf、E、Ri、R5、R8及びR9は上で定義したとおりである。
【0058】
式39、41及び43の代表的な化合物としては次のものが挙げられる。
【化57】

【0059】
所定の実施形態では、当該化合物の製薬上許容できる塩はEを誘導体化させることによって形成され、ここで、Eは−OMであり、Mはアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、Na、K、Mg及びZnから選択される陽イオンである。
【0060】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物としては、式46のもの
【化58】

又は製薬上許容できる塩若しくはそのプロドラッグが挙げられる
(式中:
それぞれの
【化59】

は、独立に二重結合又は三重結合を表し;
1、R2及びR3は、それぞれ独立に、OR、OX1、SR、SX2、N(R)2、NHX3、NRC(O)R、NRC(O)N(R)2、C(O)OR、C(O)N(R)2、SO2R、NRSO2R、C(O)R又はSO2N(R)2であり;
それぞれのRは、水素、或いは、C1〜6脂肪族、3〜8員飽和環、部分不飽和環又は窒素、酸素若しくは硫黄から独立に選択される0〜4個のヘテロ原子を有するアリール環から選択される随意に置換された基から選択され;或いは
同一の窒素上にある2個のRは、その窒素と一緒になって窒素、酸素若しくは硫黄から独立に選択される1〜3個のヘテロ原子を有する5〜8員ヘテロシクリル又はヘテロアリール環を形成し;
それぞれのX1は個々に好適なヒドロキシル保護基であり;
それぞれのX2は個々に好適なチオール保護基であり;
それぞれのX3は個々に好適なアミノ保護基であり;
4は、NRC(O)R、NRC(O)N(R)2、C(O)OR、C(O)N(R)2、SO2R、NRSO2R、C(O)R又はSO2N(R)2である。)。
【0061】
上記化合物(例えば、式A又は式1〜46の化合物)は、炎症又は炎症性疾患の治療又は予防に有用であることが知られている。このような化合物の例は、次の特許及び特許出願:US2003/0191184号、WO2004/014835号、WO2004/078143号、US6670396号、US2003/0236423号、US2005/0228047号、US2005/0238589号及びUS2005/0261255号に開示されている。これらの化合物は、本発明の方法において使用するのに好適である。
【0062】
本発明に有用な他の化合物は、上記式A又は式1〜46の化合物のいずれかに対する化学的に類似する変種である化合物である。用語「化学的に類似する変種」には、既知のバイオスター(biostere)により様々な部分が置換されたもの;上記化合物の一つの末端基を任意の他の上記化合物の対応する末端基で置換したもの、化合物における任意の二重結合の方向を変化させたもの、任意の化合物において任意の二重結合を三重結合で置き換えたもの及び上記化合物の一つに存在する1個以上の置換基を任意の他の化合物の対応する置換基で置き換えたものが含まれるが、これらに限定されない。
【0063】
本発明で使用するのに好適なリポキシン化合物としては、式50のもの:
【化60】

(式中:
XはR301、OR301又はSR301であり;
301
(a)水素原子;
(b)直鎖又は分岐であってよい1〜8個の炭素原子のアルキル;
(c)3〜10個の炭素原子のシクロアルキル;
(d)7〜12個の炭素原子のアラルキル;
(e)フェニル;
(f)置換フェニル
【化61】

(ここで、Zi、Zii、Ziii、Ziv及びZvは、それぞれ独立に、−NO2、−CN、−C(=O)−R301、−SO3H、水素原子、ハロゲン、メチル、−ORxから選択され、Rxは、直鎖又は分岐であってよい1〜8個の炭素原子及びヒドロキシルであり、ここで、Zi、Zii、Ziii、Ziv又はZvのいずれかがC(=O)−R301である場合には、該Zi、Zii、Ziii、Ziv又はZvは別のC(=O)−R301では置換されていない。)、
(g)検出可能な標識分子;又は
(h)2〜8個の炭素原子の直鎖又は分岐鎖アルケニル;
であり、
1は(C=O)、SO2又は(CN)であるが、ただし、Q1がCNであるときに、Xは存在しないものとし;
3及びQ4は、それぞれ独立にO、S又はNHであり;
302及びR303の一方は水素原子であり、他方は
(a)H;
(b)直鎖又は分岐であってよい1〜8個の炭素原子のアルキル;
(c)3〜6個の炭素原子のシクロアルキル;
(d)直鎖又は分岐であってよい2〜8個の炭素原子のアルケニル;或いは
(e)Rk2l(ここで、Q2は−O−又は−S−であり;Rkは直鎖又は分岐であってよい0〜6個の炭素原子のアルキレンであり、Rlは、直鎖又は分岐であってよい0〜8個の炭素原子のアルキルであるが、ただし、Rlが0のときには、Rlは水素原子であるものとする。);
であり、
304は、
(a)H;
(b)直鎖又は分岐であってよい1〜6個の炭素原子のアルキル;
であり、
305
【化62】

(ここで、Zi、Zii、Ziii、Ziv及びZvは上で定義したとおりである)であり;
306は、
(a)H;
(b)1〜4個の炭素原子の直鎖又は分岐アルキル;
であり、
ここで、Y301は−OH、メチル、−SH、2〜4個の炭素原子の直鎖又は分岐アルキル、1〜4個の炭素原子のアルコキシ又は(CH)p(Z)q(ここで、p+q=3、p=0〜3、q=0〜3であり、Zはシアノ、ニトロ又はハロゲンである)であり;
TはO又はSである。)
並びに製薬上許容できるそれらの塩が挙げられる。
【0064】
本発明で使用するのに好適なリポキシン化合物としては、式51、52、53又は54のものが挙げられる:
【化63】

式中:
それぞれのR307は、水素及び1〜20個の炭素原子を有する直鎖、分岐、環状、飽和又は不飽和アルキルから独立に選択され;
308、R309、R310、R319及びR320は、
(a)水素;
(b)1〜20個の炭素原子を有する直鎖、分岐、環状、飽和又は不飽和アルキル;
(c)1〜20個の炭素原子を有する置換アルキル(このアルキルは、ハロ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アリールアミノ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、カルボキシ、カルボキシアミド、カルボアルコキシ、アリール及びヘテロアリールから選択される1個以上の置換基で置換されている。);
(d)置換アリール又はヘテロアリール(このアリール又はヘテロアリールは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロ、アリール、ヘテロアリール、カルボキシル及びカルボキシアミドから選択される1個以上の置換基で置換されている。);並びに
(e)Z−Y(式中:
Zは、1〜20個の炭素原子を有する直鎖、分岐、環状、飽和又は不飽和アルキル;置換低級アルキル(ここで、このアルキルはハロ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アリールアミノ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、カルボキシ、カルボキシアミド、カルボアルコキシ、アリール及びヘテロアリールから選択される1個以上の置換基で置換されている);及び置換アリール又はヘテロアリール(ここで、当該アリール又はヘテロアリールはアルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロ、アリール、ヘテロアリール、カルボキシル及びカルボキシアミドから選択される1個以上の置換基で置換されている。)から選択され;
Yは、水素;アルキル;シクロアルキル;カルボキシル;カルボキシアミド;アリール;ヘテロアリール;置換アリール又はヘテロアリール(ここで、当該アリール又はヘテロアリールは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロ、アリール、ヘテロアリール、カルボキシル及びカルボキシアミドから選択される1個以上の置換基で置換されている)から選択される。)
から独立に選択され、
311〜R318は、
(a)水素;
(b)ハロ;
(c)1〜20個の炭素原子を有する直鎖、分岐、環状、飽和又は不飽和アルキル;
(d)1〜20個の炭素原子を有する置換アルキル(ここで、当該アルキルは、ハロ、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、アリールアミノ、ヒドロキシアミノ、アルコキシアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、カルボキシ、カルボキシアミド、カルボアルコキシ、アリール及びヘテロアリールから選択される1個以上の置換基で置換されている);
(e)置換アリール又はヘテロアリール(ここで、当該アリール又はヘテロアリールは、アルキル、シクロアルキル、アルコキシ、ハロ、アリール、ヘテロアリール、カルボキシル及びカルボキシアミドから選択される1個以上の置換基で置換されている);
から独立して選択され、或いは
308〜R320は、独立に、炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合又はリポキシン骨格と共に環を形成する結合であり;或いは
307〜R320のいずれか二つは、これらが結合する原子及び随意に1〜6個の酸素原子、1〜6個の窒素原子又は1〜6個の酸素原子及び1〜6個の窒素原子の両方と一緒になって3〜20個の原子を含む環を形成する。
【0065】
本発明で使用するのに好適なリポキシン化合物としては、式55のものが挙げられる:
【化64】

式中:
401は、
【化65】

から選択され;
402は、
【化66】

から選択され;
10は、R411、OR411又はSR411であり;
411は、
(a)水素原子;
(b)直鎖又は分岐であってよい1〜8個の炭素原子のアルキル;
(c)3〜10個の炭素原子のシクロアルキル;
(d)7〜12個の炭素原子のアラルキル;
(e)フェニル;
(f)置換フェニル
【化67】

(ここで、Zi、Zii、Ziii、Ziv及びZvは、それぞれ独立に、−NO2、−CN、−C(=O)−R411、−SO3H、水素原子、ハロゲン、メチル、−ORx(ここで、Rxは直鎖又は分岐であってよい1〜8個の炭素原子である。)及びヒドロキシルから選択されるが、ただし、Zi、Zii、Ziii、Ziv又はZvのいずれかがC(=O)−R411の場合に、該Zi、Zii、Ziii、Ziv又はZvは別のC(=O)−R411では置換されていないものとする。)
(g)検出可能な標識分子;或いは
(h)2〜8個の炭素原子の直鎖又は分岐鎖アルケニル
であり、
1は(C=O)、SO2又は(CN)であり;
3はO、S又はNHであり;
412及びR413の一方は水素原子であり、他方は、
(a)H;
(b)直鎖又は分岐であることができる1〜8個の炭素原子のアルキル;
(c)3〜6個の炭素原子のシクロアルキル;
(d)直鎖又は分岐であることができる2〜8個の炭素原子のアルケニル;或いは
(e)R4312432(ここで、Q2は−O−又は−S−であり;R431は直鎖又は分岐鎖であることができる0〜6個の炭素原子のアルキレンであり、R431は、直鎖又は分岐であることができる0〜8個の炭素原子のアルキルである。);
から独立に選択され、
413a及びR413bは、それぞれ独立に、
(a)H;
(b)直鎖又は分岐であることができる1〜8個の炭素原子のアルキル;
(c)3〜6個の炭素原子のシクロアルキル;
(d)直鎖又は分岐であることができる2〜8個の炭素原子のアルケニル;或いは
(e)R4312432(ここで、R431、Q2及びR432は上で定義したとおりである。);
であり、
414は、
(a)H;
(b)直鎖又は分岐であることができる1〜6個の炭素原子のアルキル;
であり、
415は、
(a)直鎖又は分岐であることができる1〜9個の炭素原子のアルキル;
(b)(CH2)−Ri
(ここで、n=0〜4であり、Ri
(i)3〜10個の炭素原子のシクロアルキル;
(ii)フェニル;又は
(iii)置換フェニル
【化68】

(式中、Zi〜Zvは上で定義したとおりである);
(c)R4312432(式中、R431、Q2及びR432は上で定義したとおりである。);
(d)C(Riii)(Riv)−Ri
(ここで、Riii及びRivは、それぞれ独立に
(i) 水素原子;
(ii)(CH)p(Z)q(式中、Z、p及びqは上で定義したとおりである。);
(e)1〜8個の炭素原子及び1〜6個のハロゲン原子の直鎖又は分岐ハロアルキル;
であり、
416は、
(a)H;
(b)1〜4個の炭素原子の直鎖又は分岐アルキル;
(c)ハロゲン;
であり、
401又はY402の一方は−OH、メチル又は−SHであり、他方は、
(a)H;
(b)(CH)p(Z)q(ここで、p+q=3、p=0〜3、q=0〜3であり、それぞれのZは、独立に、シアノ、ニトロ又はハロゲンである);
(c)2〜4個の炭素原子の直鎖又は分岐アルキル;或いは
(d)1〜4個の炭素原子のアルコキシ
から選択され、或いは
401とY402は一緒になって
(a)=NH;又は
(b)=O;
であり、
403又はY404の一方は−OH、メチル又は−SHであり、他方は、
(a)H;
(b)(CH)p(Z)q(ここで、Z、p及びqは上で定義したとおりである。);
(c)2〜4個の炭素原子の直鎖又は分岐アルキル;或いは
(d)1〜4個の炭素原子のアルコキシ
から選択され、或いは
401及びY402は一緒になって
(a)=NH;又は
(b)=O;
であり、
405又はY406の一方は、−OH、メチル又は−SHであり、他方は
(a)H
(b)(CH)p(Z)q(式中、Z、p及びqは上で定義したとおりである。);
(c)2〜4個の炭素原子の直鎖又は分岐アルキル;又は
(d)1〜4個の炭素原子のアルコキシ
から選択され、或いは
401及びY402は一緒になって
(a)=NH;又は
(b)=O;
であり、
421は、
(a)H;又は
(b)1〜8個の炭素原子のアルキル;
であり、
422及びR423は、それぞれ独立に、
(a)H;
(b)ヒドロキシル又はチオール;
(c)メチル又はハロメチル;
(d)ハロゲン;又は
(e)1〜3個の炭素原子のアルコキシ;
であり、
424及びR425は、それぞれ独立に、
(a)H;
(b)ヒドロキシル又はチオール;
(c)メチル又はハロメチル;
(d)ハロゲン;
(e)1〜3個の炭素原子のアルコキシ;又は
(f)直鎖又は分岐であることができる、2〜4個の炭素原子のアルキル又はハロアルキル;
であり、
426は、
(a)置換フェニル
【化69】

(ここで、Zi〜Zvは上で定義したとおりである。);
(b)置換フェノキシ
【化70】

(ここで、Zi〜Zvは上で定義したとおりである。);又は
(c)
【化71】

(ここで、Zi〜Zvは上で定義したとおりである。)
である。
【0066】
本発明で使用するのに好適なリポキシン化合物としては、式56のものが挙げられる:
【化72】

式中:
Eは、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ又は−OM(ここで、Mは、アンモニウム、テトラアルキルアンモニウムから選択される陽イオン及びナトリウム、カリウム、マグネシウム及び亜鉛の陽イオンである)であり;
Wは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、カルボキシアミド又はスルホンアミド;
501〜R503のそれぞれは、水素、アルキル、アリール、アシル又はアルコキシアシルから独立に選択され;
nは0、1又は2であり;
mは1又は2であり;
当該フェニル環上の2個の置換基は、オルト、メタ又はパラである。
【0067】
本発明で使用するのに好適なリポキシン化合物としては、式57のもの:
【化73】

式中:
Iは、−C(O)−E、−SO2−E、−PO(OR)−Eから選択され、ここで、Eはヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ又は−OM(Mはアンモニウム、テトラアルキルアンモニウム、Na、K、Mg及びZnから選択される陽イオンである)であり、Rはヒドロキシル又はアルコキシであり、
J’及びK’は、20個までの原子の鎖及び20個までの原子を含有する環から独立に選択されるリンカーであるが、ただし、J’及びK’は、独立して、1個以上の窒素原子、酸素原子、硫黄原子又は燐原子を含むことができるものとし、さらに、J’及びK’は、独立に、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、クロル、ヨード、ブロム、フルオル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ、カルボキシアミド、シアノ、オキソ、チオ、アルキルチオ、アリールチオ、アシルチオ、アルキルスルホネート、アリールスルホネート、ホスホリル及びスルホニルから選択される1個以上の置換基を含むことができ、また、J’及びK’は、1個以上の炭素環式、複素環式、アリール又はヘテロアリール縮合環を含むこともできるが、ただし、リンカーJ’及びK’は隣接する C(R)OR基に炭素原子を介して結合し又はC−ヘテロ原子結合(ここで、当該ヘテロ原子は酸素、硫黄、燐又は窒素である)であり;
Gは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、クロル、ヨード、ブロム、フルオル、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、カルボキシ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アシルアミノ及び カルボキシアミドから選択され、
Re、Rf及びRgは、水素、アルキル、アリール、ヘテロアリール、アシル、シリル、アルコキシアシル及びアミノアシルから独立に選択され;
601、R602及びR603は、水素、アルキル、アリール及びヘテロアリールから独立に選択されるが、ただし、R601、R602及びR603は、独立に、リンカーJ’又はK’に結合することができるものとし;
604及びR605は、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、フルオルから独立に選択されるが、ただし、R604及びR605は一緒になって炭素環、複素環又は芳香族環を形成することができ、さらに、R604及びR605は結合によって置換されて三重結合を形成することができるものとする。
【0068】
本発明の方法に使用するのに好適な他の化合物は、国際出願WO2006/055965号に記載されたオキシリピンである。これらの化合物は引用により本明細書に含めるものとする。このような化合物の例は、表1に示す式58〜115のものである。これらの化合物は、長鎖ω−6脂肪酸、ドコサペンタエン酸(DPAn−6)(化合物58〜73)及びドコサテトラエン酸(DTAn−6)(化合物74〜83)並びにDPAn−6、ドコサペンタエン酸(DPAn−3)のω−3対応部分(化合物84〜97)を包含する。さらなる化合物は、ドコサノイド98〜115である。
【0069】
【表1−1】

【0070】
【表1−2】

【0071】
【表1−3】

【0072】
【表1−4】

【0073】
【表1−5】

【0074】
【表1−6】

【0075】
【表1−7】

【0076】
【表1−8】

【0077】
【表1−9】

【0078】
【表1−10】

【0079】
【表1−11】

【0080】
本発明の方法に使用するのに好適な他のオキシリピン化合物としては、表1に示された化合物の類縁物質が挙げられる。このような化合物としては、1個以上の二重結合が三重結合で置換された類縁物質、カルボキシ基がエステル、アミド又は塩を形成するように誘導体化されたもの、ヒドロキシルを保有する炭素がさらに誘導体化(例えば、置換又は非置換の分岐又は非分岐アルキル、アルケニル又はアルキニル基、置換又は非置換アリール基、置換又は非置換の分岐又は非分岐アルキルアリール基、ハロゲン原子で)されて三級アルコール(又はエーテル、エステル又はそれらの他の誘導体)を形成したもの、1個以上のヒドロキシル基が誘導体化されてエステル又は保護アルコールを形成したもの、或いは上記改変のいずれかの組合せを有するものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
本発明の方法に使用するのに好適なさらなるオキシリピン化合物としては、次のものが挙げられる:ドコサペンタエン酸(DPAn−6)の単離ドコサノイド;DPAn−6のモノヒドロキシ、ジヒドロキシ及びトリヒドロキシ誘導体;ドコサペンタエン酸(DPAn−3)の単離ドコサノイド;DPAn−3のモノヒドロキシ、ジヒドロキシ及びトリヒドロキシ誘導体;ドコサペンタエン酸(DTAn−6)の単離ドコサノイド;又はDTAn−6のモノヒドロキシ、ジヒドロキシ及びトリヒドロキシ誘導体。
【0082】
用語「アシル」とは、当業者に周知であり、一般式:ヒドロカルビルC(O)−、好ましくはアルキルC(O)−によって表される基をいう。
【0083】
用語「アシルアミノ」とは、当業者に周知であり、アシル基で置換されたアミノ基をいい、例えば、次式:ヒドロカルビルC(O)NH−で表すことができる。
【0084】
用語「アシルオキシ」とは、当業者に周知であり、一般式:ヒドロカルビルC(O)O−、好ましくはアルキルC(O)O−で表される基をいう。
【0085】
用語「アルコキシ」とは、アルキル基、好ましくは低級アルキル基であって、それに酸素が結合したものをいう。代表的なアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、t−ブトキシなどが挙げられる。
【0086】
用語「アルコキシアルキル」とは、アルコキシ基で置換されたアルキル基をいい、一般式:アルキル−O−アルキルで表すことができる。
【0087】
ここで使用するときに、用語「アルケニル」とは、少なくとも1個の二重結合を含む脂肪族基をいい、かつ、「非置換アルケニル」及び「置換アルケニル」の両方を包含するものとし、ここで、後者の置換アルケニルとは、該アルケニルの1個以上の炭素上の水素を置換基で置き換えたアルケニル部分をいう。このような置換基は、1個以上の二重結合に含まれる又はそれには含まれない1個以上の炭素上に生じ得る。さらに、このような置換基としては、以下で議論するように、アルキル基について考えられる全てのものが挙げられるが、ただし、安定性が高すぎる場合は除くものとする。例えば、アルケニル基の1個以上のアルキル、カルボシクリル、アリール、ヘテロシクリル又はヘテロアリール基による置換が予期される。
【0088】
用語「アルキル」とは、飽和脂肪族基のラジカルをいい、直鎖アルキル基、分岐鎖アルキル基、シクロアルキル(脂環式)基、アルキル置換シクロアルキル基及びシクロアルキル置換アルキル基が挙げられる。好ましい実施形態では、直鎖又は分岐鎖アルキルは、その骨格内に30個以下の炭素原子(例えば、直鎖についてはC1〜C30、分岐鎖についてはC3〜C30)、より好ましくは20個以下の炭素原子を有する。同様に、好ましいシクロアルキルは、それらの環構造内に、3〜10個の炭素原子を有し、好ましくはその環構造内に5、6又は7個の炭素を有する。
【0089】
さらに、本明細書、実施例及び特許請求の範囲を通じて使用するときに、用語「アルキル」(又は「低級アルキル」)には、「非置換アルキル」と「置換アルキル」の両方を含むものとし、ここで、置換アルキルとは、置換基によって炭化水素骨格の1個以上の炭素上の水素が置換されたアルキル部分をいう。このような置換基は、特定しない限り、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えばカルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル又はアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテート又はチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルホヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分を含むことができる。当業者であれば、炭化水素鎖上で置換された部分は、それら自体が適宜置換されていてよいことが分かるであろう。例えば、置換アルキルの置換基は、アミノ、アジド、イミノ、アミド、ホスホリル(ホスホネート及びホスフィネートを含む)、スルホニル(スルフェート、スルホンアミド、スルファモイル及びスルホネートを含む)及びシリル基、並びにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(ケトン、アルデヒド、カルボキシレート及びエステルを含む)、−CF3、−CNなどの置換及び非置換形態を含むことができる。代表的な置換アルキルを以下に説明する。シクロアルキルは、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニル置換アルキル、−CF3、−CNなどでさらに置換されていてよい。
【0090】
アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル又はアルコキシといった化学部分に関連して使用するときの用語「Cx〜y」とは、鎖中にx〜y個の炭素を有する基を含むことを意味する。例えば、用語「Cx〜yアルキル」とは、鎖中にx〜y個の炭素を含有する、直鎖アルキル及び分岐鎖アルキル基(トリフルオルメチル及び2,2,2−トリフルオルエチルなどのハロアルキル基を含む)を含めた置換又は非置換飽和炭化水素基をいう。C0アルキルとは、当該基が末端の位置にある場合には水素であり、内部にある場合には結合であることを指す。用語「C2〜yアルケニル」及び「C2〜yアルキニル」とは、上記アルキルに対して長さ及び見込まれる置換の点で同等の置換又は非置換不飽和脂肪族基であるが、ただし、それぞれ少なくとも1個の二重結合又は三重結合を有するものをいう。
【0091】
ここで使用するときに、用語「アルキルアミノ」とは、少なくとも1個のアルキル基で置換されたアミノ基をいう。
【0092】
ここで使用するときに、用語「アルキルチオ」とは、アルキル基で置換されたチオール基をいい、一般式:アルキルS−で表すことができる。
【0093】
ここで使用するときに、用語「アルキニル」とは、少なくとも1個の三重結合を有する脂肪族基をいい、これには「非置換アルキニル」と「置換アルキニル」の両方が含まれるものとする。ここで、置換アルキニルとは、当該アルキニル基の1個以上の炭素上の水素が置換基により置換されたアルキニル部分をいう。このような置換基は、1個以上の三重結合に含まれる又はそれには含まれない1個以上の炭素上に生じる場合もある。さらに、このような置換基には、上で議論したようにアルキル基について想定されるものの全てが含まれるが、ただし、安定性が高すぎる場合を除くものとする。例えば、1個以上のアルキル、カルボシクリル、アリール、ヘテロシクリル又はヘテロアリール基によるアルキニル基の置換が想定される。
【0094】
ここで使用するときに、用語「アミド」とは、次の基:
【化74】

(ここで、それぞれのR10は、独立に、水素又はヒドロカルビル基を表し、或いは、2個のR10は、これらが結合するN原子と一緒になって環構造内に4〜8個の原子を有する複素環を完成する。)
をいう。
【0095】
用語「アミン」及び「アミノ」とは、当該技術分野において周知であり、非置換アミン及び置換アミンの両方並びにそれらの塩をいい、例えば、次式:
【化75】

(式中、それぞれのR10は、独立に水素又はヒドロカルビル基を表し、或いは、2個のR10は、それらが結合するN原子と一緒になって環構造内に4〜8個の原子を有する複素環を完成する。)
によって表すことができる部分をいう。
【0096】
ここで使用するときに、用語「アミノアルキル」とは、アミノ基で置換されたアルキル基をいう。
【0097】
ここで使用するときに、用語「アラルキル」とは、アリール基で置換されたアルキル基をいう。
【0098】
ここで使用する用語「アリール」には、置換又は非置換の単環芳香族基であって、該環の各原子が炭素であるものが含まれる。好ましくは、この環は5〜7員環、より好ましくは6員環である。また、用語「アリール」には、2個以上の炭素が2個の隣接する環に共通する2個以上の環状環を有する多環式環系も含まれる。ここで、当該環の少なくとも一つは芳香族であり、例えば、他の環状環は、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール及び/又はヘテロシクリルであることができる。アリール基としては、ベンゼン、ナフタリン、フェナントレン、フェノール、アニリンなどが挙げられる。
【0099】
用語「カルバメート」とは、当業者に周知であり、次の基:
【化76】

(式中、R9及びR10は、独立に、水素又はヒドロカルビル基、例えばアルキル基を表し、或いは、R9及びR10は、介在原子(1又は複数の原子)と一緒になって環構造内に4〜8個の原子を有する複素環を完成する。)
をいう。
【0100】
ここで使用するときに、用語「炭素環」、「カルボシクリル」及び「炭素環式」とは、非芳香族飽和又は不飽和環であって、当該環の各原子が炭素であるものをいう。好ましくは、炭素環式環は、3〜10個の原子、より好ましくは5〜7個の原子を含有する。
【0101】
ここで使用するときに、用語「カルボシクリルアルキル」とは、炭素環基で置換されたアルキル基をいう。
【0102】
用語「カーボネート」 とは、当業者に周知であり、次の基:−OCO2−R10(ここで、R10はヒドロカルビル基を表す)をいう。
【0103】
ここで使用するときに、用語「カルボキシ」とは、次式:−CO2Hによって表される基をいう。
【0104】
ここで使用するときに、用語「エステル」とは、基:−C(O)OR10(式中、R10はヒドロカルビル基を表す)をいう。
【0105】
ここで使用するときに、用語「エーテル」とは、酸素を介して別のヒドロカルビル基に結合したヒドロカルビル基をいう。したがって、ヒドロカルビル基のエーテル置換基は、ヒドロカルビル−O−であることができる。エーテルは、対称又は非対称のいずれかであることができる。エーテルの例としては、複素環−O−複素環及びアリール−O−複素環が挙げられるが、これらに限定されない。エーテルには、一般式:アルキル−O−アルキルによって表すことができる「アルコキシアルキル」基が含まれる。
【0106】
ここで使用するときに、用語「ハロ」及び「ハロゲン」とは、ハロゲンを意味し、クロル、フルオル、ブロム及びヨードが含まれる。
【0107】
ここで使用するときに、用語「ヘタラルキル」及び「ヘテロアラルキル」とは、ヘテロアリール基で置換されたアルキル基をいう。
【0108】
ここで使用するときに、用語「ヘテロアルキル」とは、炭素原子及び少なくとも1個のヘテロ原子の飽和又は不飽和鎖であって、2個のヘテロ原子が隣接していないものをいう。
【0109】
用語「ヘテロアリール」及び「ヘタリール」には、置換又は非置換の芳香族単環構造、好ましくは5〜7員環、より好ましくは5〜6員環であって、その環構造が少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1〜4個のヘテロ原子、より好ましくは1又は2個のヘテロ原子を含むものをいう。また、用語「ヘテロアリール」及び「ヘタリール」には、2個以上の炭素が2個の隣接する環に共通する2個以上の環状環を有する多環式環系であって、該環の少なくとも一つがヘテロ芳香族であり、例えば、他の環状環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール及び/又はヘテロシクリルであることができるものも含まれる。ヘテロアリール基としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン及びピリミジンなどが挙げられる。
【0110】
ここで使用するときに、用語「ヘテロ原子」とは、炭素又は水素以外の任意の元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は窒素、酸素及び硫黄である。
【0111】
用語「ヘテロシクリル」、「複素環」及び「複素環式」とは、置換又は非置換の非芳香族環構造、好ましくは3〜10員環、より好ましくは3〜7員環であって、その環構造が少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1〜4個のヘテロ原子、より好ましくは1又は2個のヘテロ原子を含むものをいう。また、用語「ヘテロシクリル」及び「複素環式」には、2個以上の炭素が2個の隣接する環に共通する2個以上の環状環を有する多環式環系であって、該環の少なくとも一つが複素環式であり、例えば、他の環状環がシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール及び/又はヘテロシクリルであることができるものも含まれる。ヘテロシクリル基としては、例えば、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ラクトン、ラクタムなどが挙げられる。
【0112】
ここで使用するときに、用語「ヘテロシクリルアルキル」とは、複素環基で置換されたアルキル基をいう。
【0113】
ここで使用するときに、用語「ヒドロカルビル」とは、炭素原子を介して結合する基であって、=O又は=S置換基を有しないものをいい、典型的には、これは少なくとも1個の炭素−水素結合と炭素主鎖とを有するが、ただし、随意にヘテロ原子を有していてもよい。つまり、本発明の目的上、メチル、エトキシエチル、2−ピリジル及びトリフルオルメチルのような基がヒドロカルビルであるとみなされるが、ただし、アセチル(結合炭素上に=O置換基を有するもの)及びエトキシ(炭素ではなく酸素を介して結合するもの)のような置換基は除かれる。ヒドロカルビル基としては、アリール、ヘテロアリール、炭素環、複素環、アルキル、アルケニル、アルキニル及びそれらの組合せが挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
ここで使用するときに、用語「ヒドロキシアルキル」とは、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基をいう。
【0115】
アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル又はアルコキシのような化学的部分に関して使用するときの用語「低級」とは、置換基に10個以下、好ましくは6個以下の非水素原子が存在する基を包含することを意味する。例えば、「低級アルキル」とは、10個以下の炭素原子、好ましくは6個以下の炭素原子を含有するアルキル基をいう。所定の実施形態では、ここで定義するアシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル又はアルコキシ置換基は、それぞれ低級アシル、低級アシルオキシ、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル又は低級アルコキシであり、これらのものが単独で表記されるのか、ヒドロキシアルキル及びアラルキルという記載のように他の置換基と組み合わせて表記されるのかを問わない(この場合、例えば、当該アリール基内の原子は、アルキル置換基内の炭素原子を数に入れる場合にはカウントしない)。
【0116】
用語「ポリシクリル」、「多環」及び「多環式」とは、2個以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール及び/又はヘテロシクリル)であって、2個以上の原子が2個の隣接する環に共通するものをいい、例えば、これらの環は「縮合環」である。該多環の環のそれぞれは、置換されていてもよいし、置換されていなくてもよい。所定の実施形態では、該多環のそれぞれの環は、当該環中に3〜10個、好ましくは5〜7個の原子を含有する。
【0117】
用語「シリル」とは、珪素部分に3個のヒドロカルビル部分が結合したものをいう。
【0118】
用語「置換」とは、骨格の1個以上の炭素上の水素が置換基により置き換えられたことをいう。「置換」又は「で置換された」には、このような置換が置換原子及び置換基の許容原子価に従い、かつ、この置換によって安定な化合物、例えば、転位、環化、脱離などによる転換を自発的に受けないものが得られるという暗黙の条件を含むものとする。ここで使用するときに、用語「置換」には、許容される全ての有機化合物の置換基が含まれるものとする。広義の解釈では、この許容される置換基としては、有機化合物の非環式及び環式置換基、分岐及び非分岐置換基、炭素環式及び複素環式置換基、芳香族及び非芳香族置換基が挙げられる。この許容される置換基は、適切な有機化合物について1個以上存在し、また同一のもの又は異なるものであることができる。本発明の目的上、窒素のようなヘテロ原子は、水素置換基及び/又はヘテロ原子の原子価を満足するここで説明した有機化合物の許容される任意の置換基を有することができる。置換基としては、ここで説明した任意の置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えばカルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル又はアシル)、チオカルボニル(例えばチオエステル、チオアセテート又はチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルホヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分が挙げられる。当業者であれば、炭化水素鎖上の置換された部分は、適切な場合には、それ自体が置換されていてよいことが分かるであろう。
【0119】
本明細書において、「非置換」であると特に述べない限り、化学的部分に関する言及には、置換物が含まれるものとする。例えば、「アリール」基又はアリール部分に関する言及には、置換物及び非置換物の両方が暗黙的に含まれる。
【0120】
用語「スルフェート」 とは、当業者に周知であり、基:−OSO3H又は製薬上許容できるその塩をいう。
【0121】
用語「スルホンアミド」とは、当業者に周知であり、次の一般式:
【化77】

(式中、R9及びR10は、独立に水素又はヒドロカルビル、例えばアルキルを表し、或いは、R9及びR10は、介在する1個以上の原子と一緒になって環構造内に4〜8個の原子を有する複素環を完成する。)
によって表される基をいう。
【0122】
用語「スルホキシド」とは、当業者に周知であり、基:−S(O)−R10(式中、R10はヒドロカルビルを表す。)をいう。
【0123】
用語「スルホネート」とは、当業者に周知であり、基SO3H又はその製薬上許容できる塩をいう。
【0124】
用語「スルホン」とは、当業者に周知であり、基−S(O)2−R10(式中、R10はヒドロカルビルを表す。)をいう。
【0125】
ここで使用するときに、用語「チオアルキル」とは、チオール基で置換されたアルキル基をいう。
【0126】
ここで使用するときに、用語「チオエステル」とは、基−C(O)SR10又は−SC(O)R10(式中、R10はヒドロカルビルを表す。)をいう。
【0127】
ここで使用するときに、用語「チオエーテル」とは、エーテルと同様であるが、ただし、その酸素が硫黄で置換されたものである。
【0128】
用語「尿素」は、当該技術分野において周知であり、かつ、次の一般式:
【化78】

(式中、R9及びR10は、独立に水素又はヒドロカルビル、例えばアルキルを表し、或いは、R9のいずれかがR10及び1以上の介在原子と一緒になって環構造内に4〜8個の原子を有する複素環を完成する。)
によって表すことができる。
【0129】
「保護基」とは、分子内の反応性官能基に結合すると、その官能基の反応性をマスキングし、低減させ又は阻害する原子の基をいう。通常、保護基は、合成中に適宜選択的に除去できる。保護基の例がGreene及びWuts,「Protective Groups in Organic Chemistry」,第3版,1999,John Wiley&Sons,NY及びHarrison外,「Compendium of Synthetic Organic Methods」,1−8巻,1971−1996,John Wiley&Sons,NYに記載されている。代表的な窒素保護基としては、ホルミル、アセチル、トリフルオルアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(「CBZ」)、t−ブトキシカルボニル(「Boc」)、トリメチルシリル(「TMS」)、2−トリメチルシリルエタンスルホニル(「TES」)、トリチル及び置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9−フルオレニルメチルオキシカルボニル(「FMOC」)、ニトロベラトリルオキシカルボニル(「NVOC」)などが挙げられるが、これらに限定されない。代表的なヒドロキシル保護基としては、ヒドロキシル基がアシル化(エステル化)又はアルキル化されたもの、例えば、ベンジル及びトリチルエーテル、並びにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル(例えば、TMS又はTIPPS基)、グリコールエーテル、例えばエチレングリコール及びプロピレングリコール誘導体並びにアリルエーテルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
用語「治療する」とは、病気、疾患又は病状が所定の細胞、組織、器官、動物又はヒト(病気、疾患及び/又は病状に罹患しやすくされていてよいが、ただし、まだ罹患していると診断されていないもの)に生じないようにすること;病気、疾患又は病状を安定にすること、すなわち、その発症を抑えること;及び病気、疾患又は病状の1以上の症状を緩和すること、すなわち、病気、疾患及び/又は病状の症候を緩解させることをいう。
【0131】
ここで使用するときに、病気又は疾患を「予防」する治療剤とは、統計検体において、治療を受けた検体での病気又は疾患の出現を、治療を受けていない対照の検体に対して減少させたり、病気又は疾患の一以上の発症を治療を受けていない対照検体に対して遅らせたり、病気又は疾患の一以上の症状の重さを治療を受けていない対照検体に対して低減させたりする化合物をいう。
【0132】
用語「プロドラッグ」とは、生体内で、例えば血中での加水分解により迅速に変化して式Iの化合物を生じさせる化合物をいう。T.Higuchi及びV.Stella,「Pro−drugs as Novel Delivery Systems」,A.C.S.Symposium Seriesの14巻及びBioreversible Carriers in Drug Design,Edward B.Roche著,American Pharmaceutical Association and Pergamon Press,1987(両方とも引用によってここに含めるものとする)において十分に議論されている。ここで使用するときに、プロドラッグとは、所定の化合物であって、生体内に投与されると、該化合物の生物学的、薬学的又は治療的に活性な形態に代謝される又はさもなくば転化するもののことである。当該プロドラッグは、化合物の代謝的安定性又は輸送特性を改変させ、副作用又は毒性をマスキングし、化合物の香味を改善させ、又は化合物の他の特徴や特性を変化させるように設計できる。生体内での薬力学プロセスと薬物代謝の知識に基づき、薬剤として活性な化合物がいったん同定されたら、製薬技術分野において通常の知識を有する者であれば、通常当該化合物のプロドラッグを設計することができる(例えば、Nogrady(1985)Medicinal Chemistry A Biochemical Approach,Oxford University Press,N.Y.,388−392頁を参照)。好適なプロドラッグの選択と調製に関する従来の手順については、例えば、「Design of Prodrugs」,H.Bundgaard,Elsevier著,1985に記載されている。プロドラッグの好適な例としては、対応する酸のメチルエステル、エチルエステル及びグリセリンエステルが挙げられる。
【0133】
上記式Aの化合物、式1〜46のいずれかの化合物、リポキシン化合物又はオキシリピン化合物のぞれぞれの合成は、当該技術分野において周知の方法により達成できる。例えば、式A又は式1〜46の化合物の合成は、US2003/0191184号、WO2004/014835号、WO2004/078143号、US6670396号,US2003/0236423号及びUS2005/0228047号(これらの全ては引用によりここに含めるものとする)に記載されている。リポキシン化合物の合成は、US2002/0107289号、US2004/0019110号、US2006/0009521号、US2005/0203184号、US2005/0113443号に記載されている。オキシリピン化合物の調製はWO2006/055965号に記載されている。
【0134】
本発明の組成物及び方法を使用して治療が必要な個体を治療することができる。所定の実施形態では、当該個体は、哺乳動物、例えばヒトやヒト以外の哺乳動物である。当該組成物又は化合物は、ヒトのような動物に投与される場合に、好ましくは、例えば、式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物、オキシリピン化合物又はアスピリン及び/若しくはω−3脂肪酸と、製薬上許容できるキャリヤーとを含む医薬組成物として投与される。製薬上許容できるキャリヤーは、当該技術分野において周知であり、例えば、水や緩衝生理食塩水のような水溶液、又は他の溶媒若しくはビヒクル、例えばグリコール類、グリセリン、オイル類、例えばオリーブオイル、又は有機エステル注射剤が挙げられる。好ましい実施形態では、このような医薬組成物がヒトへの投与用のものである場合には、当該水溶液は発熱物質を有しない又は実質的に発熱物質を有しない。賦形剤は、例えば、薬剤の遅延放出をもたらすように、又は1種以上の細胞、組織若しくは器官を選択的に標的とするように選択できる。医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、粒状カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、坐剤、注射剤などのような単位剤形であることができる。また、組成物は、経皮デリバリーシステム、例えば、皮膚用パッチ剤中に存在することもできる。
【0135】
製薬上許容できるキャリヤーは、例えば、式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物、オキシリピン化合物又はアスピリン及び/又はω−3脂肪酸といった化合物を安定化させ、或いはその吸収を増大させるように作用する、生理的に許容できる薬剤を含有することができる。このような生理的に許容できる薬剤としては、例えば、グルコース、スクロース又はデキストランといった炭水化物、アスコルビン酸又はグルタチオンといった酸化防止剤、キレート化剤、低分子量蛋白質その他の安定剤や賦形剤が挙げられる。生理的に許容できる薬剤を含む製薬上許容できるキャリヤーの選択は、例えば、当該組成物の投与経路に依存する。また、当該医薬組成物(製剤)は、例えば本発明の化合物を取り込んだリポソームその他のポリマーマトリックスであることもできる。例えば、リン脂質その他の脂質を含むリポソームは、作製及び投与が比較的簡易な、非毒性で生理的に許容できる代謝可能なキャリヤーである。
【0136】
本明細書において、成句「製薬上許容できる」は、サウンド・メディカル・ジャッジメントの範囲内で、合理的な効果/リスク比に見合う、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応又は他の問題若しくは合併症なしにヒト及び動物の組織と接触させるための用途に好適な化合物、材料、組成物及び/又は剤形をいうために使用する。
【0137】
ここで使用する成句「製薬上許容できるキャリヤー」とは、製薬上許容できる材料、組成物又はビヒクル、例えば、液体若しくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又はカプセル化材料を意味する。それぞれのキャリヤーは、処方物の他の成分と相溶性があり、しかも患者に対して有害ではないという意味で「許容できる」ものでなければならない。製薬上許容できるキャリヤーとして機能できる材料のいくつかの例としては、(1)糖質、例えばラクトース、グルコース及びスクロース;(2)デンプン、例えばコーンスターチ及びジャガイモデンプン;(3)セルロース及びその誘導体、例えばナトリウムカルボキシメチルセルロース、エチルセルロース及び酢酸セルロース;(4)粉末トラガカント;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)賦形剤、例えばココアバター及び坐剤ワックス;(9)オイル類、例えばピーナッツオイル、綿実油、紅花油、胡麻油、オリーブオイル、トウモロコシ油及び大豆油;(10)グリコール類、例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール類、例えばグリセリン、ソルビット、マンニット及びポリエチレングリコール;(12)エステル類、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を有しない水;(17)等張食塩水;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)リン酸緩衝液;及び(21)その他医薬組成物に使用される非毒性の相溶性物質が挙げられる。
【0138】
医薬組成物(製剤)は、例えば、経口(例えば、水溶液又は非水溶液若しくは懸濁液のような水薬、錠剤、ボーラス、散剤、顆粒剤、舌に塗布するためのペースト);舌下;経肛門、経直腸又は経膣(例えば、ペッサリー、クリーム又はフォームとして);非経口(例えば、滅菌溶液又は懸濁液として筋肉内、静脈内、皮下又は髄腔内を含む);経鼻;腹膜内;皮下;経皮(例えば皮膚に適用されるパッチとして);及び局所(例えば、皮膚に適用される乳剤、軟膏又はスプレーとして)を含め、多数の投与経路のいずれかにより被検体に投与できる。また、化合物は、吸入のためにも処方できる。所定の実施形態では、化合物は、単に滅菌水に溶解又は懸濁するだけでよい。好適な投与経路及び投与経路に好適な組成物の内容については、例えば、米国特許第6,110,973号、同5,763,493号、同5,731,000号、同5,541,231号、同5,427,798号、同5,358,970号及び同4,172,896号並びにそこで引用された特許文献に記載されている。最も好ましい投与経路は経口経路である。
【0139】
これらの処方物は、単位剤形として与えるのが便利であり、また、調剤の技術分野において周知の任意の方法により調製できる。キャリヤー材料と組み合わせて単一の剤形を製造することができる活性成分の量は、治療主、特定の投与形態に応じて変わってくる。キャリヤー材料と組み合わせて単一の剤形を製造することができる活性成分の量とは、一般に、治療効果を生じさせる化合物の量のことである。一般に、100パーセントのうち、この量は、約1パーセント〜約99パーセントの活性成分、好ましくは約5パーセント〜約70パーセント、最も好ましくは約10パーセント〜約30パーセントの範囲である。
【0140】
これらの処方物又は組成物を製造する方法は、活性化合物、例えば、式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物、オキシリピン化合物又はアスピリン及び/又はω−3脂肪酸と、キャリヤー及び随意に1種以上の副成分とを混合する工程を含む。一般に、これらの処方物は、本発明の化合物と、液体キャリヤー若しくは微粉化した固体キャリヤー又はその両方とを均一かつ密接に混合させ、次いで、適宜その生成物を成形することによって製造される。
【0141】
経口投与に好適な本発明の処方物は、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、トローチ剤(香味付けした主成分、通常はスクロース及びスクロース及びアラビアガム又はトラガカントを使用する)、散剤、顆粒剤、又は水溶液若しくは非水性液体の溶液若しくは懸濁液、又は水中油型若しくは油中水型の液体エマルジョン、又はエリキシル若しくはシロップ剤、又は香錠(不活性の主成分、例えばゼラチンとグリセリン、又はスクロースとアラビアガムを使用する)及び/又は洗口剤などの形態にあることができ、それぞれ、活性成分として所定量の本発明の化合物を含有する。また、組成物又は化合物は、ボーラス、舐剤又は泥膏として投与することもできる。
【0142】
経口投与用の固体剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、散剤、顆粒剤など)を製造するために、当該活性成分は、1種以上の製薬上許容できるキャリヤー、例えばクエン酸ナトリウム又はリン酸水素カルシウム、及び/又は次のいずれか:(1)充填剤又は増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニット及び/又は珪酸;(2)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニル ピロリドン、スクロース及び/又はアラビアガムなど;(3)湿潤剤、例えばグリセリン;(4)崩壊剤、例えば寒天−寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、所定のシリケート及び炭酸ナトリウム;(5)溶解遅延剤、例えばパラフィン;(6)吸収促進剤、例えば第四アンモニウム化合物;(7)浸潤剤、例えば、セチルアルコール及びグリセリンモノステアレートなど;(8)吸収剤、例えばカオリン及びベントナイトクレー;(9)潤滑剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固形ポリエチレングリコール類、ラウリル硫酸ナトリウム及びそれらの混合物;並びに(10)着色剤と混合される。カプセル剤、錠剤及び丸剤の場合には、医薬組成物は緩衝剤を含むこともできる。また、同様のタイプの固体組成物は、ラクトース又は乳糖のような賦形剤並びに高分子量ポリエチレングリコール類などを使用した軟質及び硬質充填ゼラチンカプセル剤への充填剤としても使用できる。
【0143】
錠剤は、随意に1種以上の副成分と共に圧縮又は成形することにより作ることができる。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、防腐剤、崩壊剤(例えば、ナトリウムデンプングリコレート又は架橋ナトリウムカルボキシメチルセルロース)、界面活性剤又は分散剤を使用して製造できる。成形錠剤は、好適な機械中で、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化化合物の混合物を成形することにより作ることができる。
【0144】
随意に、医薬組成物の錠剤及び他の固体剤形、例えば糖衣錠、カプセル剤、丸剤 及び顆粒剤を、溶腸コーティング及び医薬処方技術の分野において周知の他のコーティングのようなコーティング及びシェルで得ることや製造することができる。また、これらのものは、所望の放出特性を与えるための様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他の重合体マトリックス、リポソーム及び/又は微小球を使用して、それらの内部の活性成分を持続放出又は制御放出させるように処方することもできる。これらは、例えば、細菌保持フィルターによる濾過により、又は使用直前に滅菌水又は他の滅菌注射用媒体中に溶解できる滅菌固体組成物として滅菌剤を取り入れることにより滅菌できる。また、これらの組成物は、乳白剤を含有していてもよく、また、活性成分を随意に遅延態様で消化管の所定部分においてのみ又は優先的に放出する組成物であってもよい。使用できる具体的な組成物の例としては、高分子物質及びワックスが挙げられる。また、活性成分は、適宜、上記賦形剤の1種以上と共にマイクロカプセルの形態で存在することもできる。
【0145】
経口投与に有用な液体剤形としては、製薬上許容できるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ剤及びエリキシルが挙げられる。当該液体剤形は、活性成分のほかに、例えば、水その他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤といった当該技術分野において一般的な不活性希釈剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、油類(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ひまし油及び胡麻油)、グリセリン、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタン脂肪酸エステル並びにそれらの混合物を含有することができる。
【0146】
また、当該経口組成物は、不活性希釈剤のほかに、浸潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味剤、香味剤、着色剤、香料及び防腐剤といった添加剤を含むこともできる。
【0147】
懸濁液は、活性化合物のほかに、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビット及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、寒天−寒天及びトラガカント並びにそれらの混合物のような懸濁化剤を含有することができる。
【0148】
直腸内投与、膣内投与又は尿道投与用の医薬組成物は、1種以上の活性化合物と、例えばココアバター、ポリエチレングリコール、坐剤ワックス又はサリチレートを含む、1種以上の刺激の少ない好適な賦形剤又はキャリヤーとを混合させることによって調製でき、かつ、室温では固体であるが、体温では液体であり、そのため直腸腔や膣腔で溶解し、活性化合物を放出する坐剤として処方することができる。
【0149】
口腔に投与するための医薬組成物は、洗口剤、又は経口噴霧剤、又は口腔軟膏として処方することができる。
【0150】
選択肢として又は追加的に、組成物は、カテーテル、ステント、ワイヤーその他の腔内装置を介した投与のために処方できる。このような装置を介した投与は、膀胱、尿道、尿管、直腸又は腸への送達に特に有用な場合がある。
【0151】
また、膣内投与に好適な処方物は、好適であることが当該技術分野において知られているようなキャリヤーを含有するペッサリー、タンポン、乳剤、ゲル、泥膏、フォーム又は噴霧処方物を含む。
【0152】
局所投与又は経皮投与用の剤形としては、散剤、噴霧剤、軟膏、泥膏、乳剤、ローション剤、ゲル、溶液、パッチ及び吸入剤が挙げられる。活性化合物は、滅菌条件下で、製薬上許容できるキャリヤー及び必要な任意の防腐剤、緩衝剤又は推進剤と混合できる。
【0153】
軟膏、泥膏、乳剤及びゲルは、活性化合物のほかに、賦形剤、例えば、動物性脂肪及び植物性脂肪、オイル、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体,ポリエチレングリコール類、シリコーン類、ベントナイト、珪酸、タルク及び酸化亜鉛又はそれらの混合物を含むことができる。
【0154】
散剤及び噴霧剤は、活性化合物のほかに、賦形剤、例えばラクトース、タルク、珪酸、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウム及びポリアミド散剤又はこれらの物質の混合物を含有することができる。噴霧剤は、慣用の推進剤、例えばクロルフルオル炭化水素並びにブタン及びプロパンといった揮発性非置換炭化水素をさらに含有することができる。
【0155】
経皮パッチには、本発明の化合物の身体への制御送達を与えるというさらなる利点がある。このような剤形は、活性化合物を適当な媒体に溶解又は分散させることによって作ることができる。また、吸収促進を使用して該化合物の皮膚への流動を増大させることもできる。このような流動速度は、速度制御膜を与えるか、又は当該化合物をポリマーマトリックスやゲルに分散させるかのいずれかにより制御できる。
【0156】
眼用処方物、つまり眼軟膏、眼散剤、眼溶液なども本発明の範囲内にあるものとする。
【0157】
ここで使用するときに、成句「非経口投与」及び「非経口的に投与」とは、腸内投与及び局部投与以外の投与態様、通常は注射による投与態様を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、くも膜下、包内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、間接内、被膜下、くも膜下、髄腔内並びに胸骨間の注射及び点滴が挙げられるが、これらに限定されない。
【0158】
非経口投与に好適な医薬組成物は、1種以上の活性化合物を1種以上の製薬上許容できる滅菌等張水溶液若しくは非水溶液、分散液、懸濁液若しくはエマルジョン、又は使用直前に滅菌注射溶液若しくは分散液に再構成できる滅菌散剤と共に含み、ここで、これらのものは、酸化防止剤、緩衝液、静菌剤、処方物を対象の受容者の血液で等張にする溶質又は懸濁化剤若しくは増粘剤を含有することができる。
【0159】
本発明の医薬組成物に使用できる好適な水性キャリヤー及び非水性キャリヤーの例としては、水、エタノール、ポリオール類(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)及びそれらの好適な混合物、植物性油、例えばオリーブ油、並びに有機エステル注射剤、例えば オレイン酸エチルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、被覆材料、例えばレシチンの使用、分散液の場合には必要な粒度の維持及び界面活性剤の使用によって維持できる。
【0160】
また、これらの組成物は、防腐剤、浸潤剤、乳化剤及び分散剤のような添加剤を含有することもできる。微生物作用の阻害は、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロルブタノール、フェノール、ソルビン酸などを含めることによって確保できる。また、等張剤、例えば、糖質、塩化ナトリウムなどを当該組成物に含めることも望ましいかもしれない。さらに、注射用医薬品形態の持続的吸収は、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンといった、吸収を遅延させる薬剤を含ませることによって達成できる。
【0161】
場合によっては、薬物の効果を長くするために、皮下注射又は筋肉内注射からの薬物の吸収を緩やかにすることが望ましい。これは、水溶性に乏しい結晶質又は非晶質材料の懸濁液を使用することによって達成できる。このときに、薬物の吸収速度はその溶解速度に依存する。言い換えれば、これは、結晶寸法及び結晶形に依存し得る。或いは、非経口投与薬物形式の遅延吸収は、薬物を油性ビヒクルに溶解又は懸濁させることによって達成される。
【0162】
注射用持続性薬剤形態は、生体分解性重合体、例えば、ポリラクチド−ポリグリコリドで目的化合物のマイクロカプセル化マトリックスを形成させることによって作製される。薬物対重合体の比率及び使用される具体的な重合体の性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。他の生体分解性重合体の例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が挙げられる。また、持続性薬剤注射用処方物は、薬物を、体内組織と適合性のあるリポソーム又はマイクロエマルジョン中に閉じこめることによっても製造される。
【0163】
本発明の方法において使用するために、活性化合物そのものを与えることができ、又は、例えば、0.1〜99.5%(より好ましくは、0.5〜90%)の活性成分と製薬上許容できるキャリヤーとを含む医薬組成物として与えることができる。
【0164】
また、導入方法は、再荷電性又は生体分解性装置によって行うこともできる。近年では、蛋白質生物医薬品を含め、薬物の制御送達のために様々な持続放出重合体装置が開発され、生体内で試験されてきている。様々な生体適合性重合体(ヒドロゲルを含む)は、生体分解性重合体と非分解性重合体の両方を含めて、特定の標的部位で化合物を持続的に放出させるためのインプラントを形成させるために使用できる。
【0165】
医薬組成物中における活性成分の実際の投与量レベルは、患者に対して毒性となることなく、特定の患者にとって望ましい治療効果、組成及び投与形態を達成するのに有効な活性成分の量を得るように変更できる。
【0166】
選択された投与量レベルは、特定の化合物の活性や使用する化合物の組合せ又はそのエステル、塩若しくはアミド、投与経路、投与時期、使用される特定の化合物の排泄速度、治療期間、使用される特定の化合物と併用される他の薬剤、化合物及び/又は材料、治療を受ける患者の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康及び以前の病歴並びに医薬分野において周知の同様の因子を含め、様々な因子に依存する。
【0167】
当該技術分野において通常の知識を有する医師又は獣医師であれば、治療効果のある医薬組成物の必要量を容易に決定及び処方できる。例えば、医師又は獣医師は、所望の治療効果を達成するために必要とされるよりも低いレベルで医薬組成物又は化合物の投与を開始し、そしてこの所望の効果が達成されるまで投与量を徐々に増加させることができるであろう。「治療効果のある量」とは、所望の治療効果を引き出すのに十分な化合物の濃度を意味する。一般に、化合物の有効量は、被験者の体重、性別、年齢及び病歴によって変わってくると理解されている。有効量に影響を及ぼす他の要因としては、患者の状態の深刻さ、治療される疾患、化合物の安定性及び、適宜、本発明の化合物と共に投与される別のタイプの治療剤を挙げることができるが、これらに限定されない。総量が多い場合は、薬剤の複数回投与により送達できる。効能及び投与量を決定するための方法は、当業者に周知である(Isselbacher外,(1996)Harrison’s Principles of Internal Medicine第13版.,1814−1882(引用により含める))。
【0168】
一般に、本発明の組成物及び方法で使用される活性化合物の好適な日用量は、治療効果を生じさせるのに効果のある最も低い投与量である化合物量であろう。このような効果のある投与量は、一般に、上記の要因に依存するであろう。
【0169】
所望ならば、活性化合物の有効な日用量を、1日を通して好適な間隔で分割して投与される1、2、3、4、5又は6回以上の副用量として、随意に単位剤形の形態で投与できる。本発明の所定の実施形態では、活性化合物は、毎日2回又は3回投与できる。好ましい実施形態では、活性化合物を毎日1回投与する。
【0170】
この治療を受ける患者(患畜)は、それが必要な任意の動物であり、霊長類、特にヒト並びに他の哺乳動物、例えば、ウマ、ウシ、ブタ及びヒツジ;並びに家禽及び一般的なペットが挙げられる。
【0171】
所定の実施形態では、粘膜炎を治療するのに好適な、式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物、オキシリピン化合物又はアスピリンとω−3脂肪酸との組合せの日用量は、炎症を治療するために投与される用量の2倍、5倍、10倍又は20倍であろう。所定の実施形態では、粘膜炎を治療するのに好適な、式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物、オキシリピン化合物又はアスピリンとω−3脂肪酸との組合せの日用量は、炎症を治療するために投与される用量の2倍、5倍、10倍又は20倍未満であろう。
【0172】
所定の実施形態では、式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物、オキシリピン化合物又はアスピリンとω−3脂肪酸との組合せは、単独で使用してもよいし、又は別のタイプの治療剤と合同投与してもよい。ここで使用するときに、成句「合同投与」とは、2種以上の異なる治療化合物を、予め投与しておいた治療化合物が体内でなお有効である間に第2の化合物を投与するように投与する任意の形態をいう(例えば、これら2種の化合物は、患者において同時に効力を及ぼすが、これは、これら2種の化合物の相乗効果を包含し得る)。例えば、これらの異なる治療化合物は、同一の処方物又は別個の処方物のいずれかで、同時に又は連続的に投与できる。こうして、このような治療を受ける患者は、異なる治療化合物の複合効果の利益を受けることができる。
【0173】
一実施形態では、粘膜炎の治療方法は、式Aの環式化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物若しくはオキシリピン化合物又はアスピリンとω−3脂肪酸との組合せを、粘膜炎の治療に有用な追加の薬剤と共に投与することを含むことができる。所定の実施形態では、式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物若しくはオキシリピン化合物又はアスピリンとω−3脂肪酸との組合せは、抗菌剤と共に合同投与できる。所定の実施形態では、式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物若しくはオキシリピン化合物又はアスピリンとω−3脂肪酸との組合せは、成長因子と共に合同投与できる。所定の実施形態では、式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物若しくはオキシリピン化合物又はアスピリンとω−3脂肪酸との組合せは、セラミドの合成を阻害する薬剤、セラミドの活性をブロックする薬剤又はセラミドを分解する薬剤と共に合同投与できる。
【0174】
一実施形態では、粘膜炎の治療方法は、式Aの環式化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物若しくはオキシリピン化合物又はアスピリンとω−3脂肪酸との組合せを化学療法剤と共に投与することを含むことができる。式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物、オキシリピン化合物又はアスピリンとω−3脂肪酸との組合せと共に合同投与できる化学療法剤としては、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、bcg、ビカルタミド、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロドロネート、コルヒチン、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ジエネストロール、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、ゲニステイン、ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン、イリノテカン、レトロゾール、ロイコボリン、ロイプロリド、レバミゾール、ロムスチン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキセート、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、ニルタミド、ノコダゾール、オクトレオチド、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、ペントスタチン、プリカマイシン、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ストレプトゾシン、スラミン、タモキシフェン、テモゾロマイド、テニポシド、テストステロン、チオグアニン、チオテパ、二塩化チタノセン、トポテカン、トラスツズマブ、トレチノイン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン及びビノレルビンが挙げられる。
【0175】
癌の治療のために多くの併用療法が開発されてきている。所定の実施形態では、式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物、オキシリピン化合物又はアスピリンとω−3脂肪酸との組合せは、併用療法と共に合同投与できる。式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物、オキシリピン化合物又はアスピリンとω−3脂肪酸との組合せを合同投与できる併用療法の例を表2にまとめている。
【0176】
【表2−1】

【0177】
【表2−2】

【0178】
【表2−3】

【0179】
【表2−4】

【0180】
【表2−5】

【0181】
所定の実施形態では、本発明は、(a)式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物若しくはオキシリピン化合物又はアスピリンとω−3脂肪酸との組合せの1種以上の単一剤形;(b)上記のような化学療法剤の1種以上の単一剤形;及び(c)式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物若しくはオキシリピン化合物又はアスピリンとω−3脂肪酸との組合せ並びに化学療法剤の投与に関する取扱説明書を備えるキットを提供する。
【0182】
所定の実施形態では、式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物、オキシリピン化合物又はアスピリンとω−3脂肪酸との組合せは、癌治療の非化学的方法の実施と共に投与できる。所定の実施形態では、式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物、オキシリピン化合物又はアスピリンとω−3脂肪酸との組合せは、放射線治療の実施と共に投与できる。所定の実施形態では、式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物、オキシリピン化合物又はアスピリンとω−3脂肪酸との組合せは、外科手術、温熱切除、焦点超音波治療又は凍結療法の実施と共に投与できる。
【0183】
所定の実施形態では、式Aの様々な化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物又はオキシリピン化合物は、互いに合同投与することができ、また、このような組合せは、上記のように他の治療の実施と共に投与できる。所定の実施形態では、式Aの様々な化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物又はオキシリピン化合物は、アスピリンとω−3脂肪酸との組合せと合同投与することができ、また、このような組合せは、上記他の治療剤と合同投与することができる。
【0184】
アスピリンとω−3脂肪酸との組合せを投与する実施形態では、アスピリンとω−3脂肪酸は、両方の成分を含む単一の処方物として又は別個の処方物として同時に投与したり、何回かに分けて投与したりすることができるが、ただし、Serhan,外,2002,J.Exp.Med.,196:1025−1037に記載されるように、この治療を行っている間の少なくとも所定時期に、アスピリンとω−3脂肪酸の両方が同時に、当該ω−3脂肪酸を代謝させることがレベルで患者に存在することを条件とする。このような実施形態では、当該ω−3脂肪酸は、部分的に精製された天然抽出物、例えば魚油の形態で与えられるのに対し、他の実施形態では、当該ω−3脂肪酸は、1種以上のω−3脂肪酸、例えばC18:3、C20:5又はC22:6脂肪酸、特にエイコサペンタエン酸又はドコサヘキサエン酸の実質的に純粋な製剤として与えることができる。1種以上のω−3脂肪酸の実質的に純粋な製剤とは、脂肪酸成分が1種以上のω−3脂肪酸、例えば1種以上の特定のω−3脂肪酸を少なくとも90%、少なくとも95%又は少なくとも98%である組成物を意味する。非脂肪酸成分、例えば賦形剤又は処方中に添加される他の材料は、脂肪酸成分が所望の純度レベルを満たすかどうかを決定するにあたっては考慮されない。
【0185】
所定の実施形態では、ここで議論した様々な実施形態のいずれかにおいて粘膜炎を治療又は予防するために、アスピリン以外のCOX−2阻害剤、例えば、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、NS−398又はパレコキシブをω−3脂肪酸と併用できる。様々なCOX−2阻害剤とω−3脂肪酸との組合せにより、様々なサブセット又は割合の活性なω−3代謝物質を生成させることができる。
【0186】
本発明は、本発明の組成物又は方法において式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物又はオキシリピン化合物の製薬上許容できる塩を使用することを包含する。所定の実施形態では、本発明の意図する塩としては、アルキルアンモニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアルキルアンモニウム塩又はテトラアルキルアンモニウム塩が挙げられる。所定の実施形態では、本発明の意図する塩としては、Na、Ca、K、Mg、Znその他の金属塩が挙げられる。
【0187】
また、製薬上許容できる酸付加塩は、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミドなどと共に、様々な溶媒和物として存在することもできる。また、このような溶媒和物の混合物も製造できる。このような溶媒和源は、製剤化若しくは結晶化の溶媒に固有の結晶化溶媒又はこのような溶媒に付随するものであることができる。
【0188】
また、浸潤剤、乳化剤及び潤滑剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム、並びに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤及び香料、防腐剤及び酸化防止剤も組成物に存在することもできる。
【0189】
製薬上許容できる酸化防止剤の例としては、(1)水溶性酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸、システイン塩酸塩、硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性酸化防止剤、例えば、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α−トコフェロールなど;及び(3)金属キレート化剤、例えば、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビット、酒石酸、リン酸などが挙げられる。
【実施例】
【0190】
実施例
例1.急性放射線照射により生じたハムスターの口腔粘膜炎の治療における化合物Xの有効性の研究
研究目的:
この研究の目的は、腹腔内注射によって投与された化合物X:
【化79】

が、急性放射線照射によって生じたハムスターの口腔粘膜炎の頻度、発病度及び期間に及ぼす効果を評価することであった。
【0191】
【表3−1】

【0192】
【表3−2】

【0193】
実験計画:
32匹(32)のシリアンゴールデンハムスターに、左頬の頬袋に向けて40Gyの急性放射線照射を与えた。これは、当該動物に麻酔をかけ、そして左頬袋をめくり返すと同時に、当該動物の他の部位を鉛遮へい体で保護することにより行った。試験材料を表3に詳述するように腹腔内に毎日1回又は2回与えた。投薬を照射の1日前(−1日)に開始し、そして照射日(0日、すなわち照射前30分)を含めて、15日まで続行し、粘膜炎を6日目から28日目まで隔日で臨床的に評価した。
【0194】
【表4】

【0195】
粘膜炎誘導:
粘膜炎を、0日目に全ての動物に投与される放射線の単一線量(40Gy/放射線量)を使用して誘導した。放射線を160キロボルト電位(18.75−ma)源により21cmの焦点距離で発生させ、3.0mmのAlろ過システムで強化した。照射は、1.32Gy/分の速度で左側頬袋の粘膜を目標とした。照射前に、ケタミン(160mg/kg)及びキシラジン(8mg/kg)の腹腔内注射により動物に麻酔をかけた。左側の頬袋を外側にめくり、固定し、そして鉛遮へい体を使用して隔離した。
【0196】
粘膜炎の採点:
6日目から開始し、その後1日おきに(8、10、12、14、16、18、20、22、24、26及び28日)続行して、それぞれの動物を写真撮影し、そして粘膜炎の採点のために評価した。測定したパラメーターには、粘膜炎の評点、体重変化及び生存が含まれた。粘膜炎の評価のために、吸入麻酔薬で動物に麻酔をかけ、そして左頬を外側にめくった。粘膜炎を、有効な写真スケールと比較することによって、0(正常)から5(重度の潰瘍化)までの範囲(臨床的評点)にわたり採点した。記述用語では、このスケールを次のとおりに定義した:
評点: 説明:
0 頬袋が完全に健康。紅斑又は血管拡張なし。
1 軽度から重度の紅斑及び血管拡張。粘膜のびらんなし。
2 重度の紅斑及び血管拡張。粘膜表面のびらんが露出部分に残る。粘膜の斑点の減少。
3 1カ所以上に白色に近い潰瘍が形成。潰瘍は偽膜のため黄色/灰色を呈する場合がある。潰瘍の累積的サイズは頬の約1/4に等しいはずである。重度の紅斑及び血管拡張。
4 潰瘍の累積的サイズは頬の約1/2に等しいはずである。柔軟さの欠如。重度の紅斑及び血管拡張。
5 事実上頬の全てが潰瘍化する。柔軟さの欠如(頬は口腔から部分的にしか引き出せない)。
【0197】
1〜2の評点は、当該疾患の軽度な時期を表すものとみなしたのに対し、3〜5の評点は、中程度から重度の粘膜炎を示すものとみなした。この予備臨床採点に続き、標準化された技術を使用してそれぞれの動物の粘膜の写真を撮影した。この実験の終了時に、フィルムを現像し、盲検化された採点のために、その写真にランダムに番号を付けた。その後、訓練を受けた2名の独立の観察者が上記のスケールを使用して盲検的に上記写真を採点した。それぞれの写真について、実際の盲検化採点は、評価者の評点の平均に基づくものであった。この盲検化写真評価からの評点のみを統計的に分析し、最終研究報告において報告した。
【0198】
粘膜炎の評価:
上記盲検化した写真を用いて、粘膜炎のグレートを、6日目から初めて、その後1日おきに28日目まで採点を行った。ビヒクルの対照と比較した、それぞれの薬剤治療が粘膜炎に及す効果を次のパラメーターに従って評価した。
【0199】
重度(評点≧3)を有する各群における各評価日のハムスターの差
それぞれの日に動物を採点し(評価日)、各薬剤治療群において盲式粘膜炎評点が≧3の動物の数をビヒクル対照群と比較した。差を毎日分析すると共に、累積ベースでも分析した。薬剤治療群においてこの評点のハムスターの数がコントロールに対して統計的に有意に少ない(カイ二乗分析により決定される)ときに治療が成功したものとみなした。
【0200】
日々の粘膜炎評点における差の順位和
各評価日について、ビヒクル対照群の評点と治療群の評点とを、ノンパラメトリック順位和分析を使用して比較した。6日目から28日目まで2日以上治療群の評点が統計的に有意に低下したときに、治療が成功したものとみなした。
【0201】
試験薬剤が粘膜炎の消炎に及ぼす影響を評価するために、試験薬剤と対照との間で治癒期間を比較した。消炎とは、潰瘍性病巣(評点<3)が存在しないことと定義した。
【0202】
体重:
研究期間中毎日各動物の体重を量り、そしてその生存を記録して、粘膜炎の度合いについての指標として治療群中における動物の体重の見込まれる差及び/又は治療により生じるおそれがある毒性を評価した。
【0203】
データ分析及び報告:
治療群間の統計的差異をスチューデントt検定、マンホイットニーU検定及びカイ二乗検定を0.05の臨界値で使用して決定した。まず第一に麻酔薬の投与の結果として10%までの動物が死亡する可能性があることが予想された。しかしながら、28日目に生存していることが予想される動物の数(治療群当たり6匹)は、統計的評価に許容できるものであるとみなした。
【0204】
図1は、化合物Xの投与後に、対照に対して評点が3以上の日のカイ二乗分析を示している。このデータは、特に、5μg/kg及び50μg/kg投与量の群については3以上の臨床評点の日が対照と比較して減少することを示している。5μg/kg及び50μg/kg投与量の群は、対照と比較して、それぞれ40%及び30%の減少を示した。
【0205】
引用による援用
本明細書において言及した全ての特許出願及び特許は、それぞれ個々の出願又は特許を具体的かつ個別的に示して引用により援用したかのように、それら全体が参照によって援用されるものとする。矛盾がある場合は、本明細書におけるあらゆる定義を含め、本願が優先する。
【0206】
均等
本願の特定の実施形態を議論してきたが、本願明細書は例示であって限定ではない。当業者であれば、本願明細書及び特許請求の範囲の検討から本発明の多くの変形例が明らかになるであろう。本発明の全範囲は、特許請求の範囲及び本願明細書を基準にして、それぞれ、それらの均等の全範囲及びそれらの変形例と共に決定すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学療法又は放射線治療を受ける患者における粘膜炎の発症を抑制する方法であって、該患者に式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物又はオキシリピン化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物又はオキシリピン化合物を、前記化学療法又は放射線治療と共同して投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
患者における粘膜炎を治療する方法であって、該患者に式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物又はオキシリピン化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項4】
粘膜炎のリスクの増大と関連のある治療法を受ける患者の生存率を向上させる方法であって、該患者に式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物又はオキシリピン化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項5】
前記式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物又はオキシリピン化合物を前記治療法と共同して投与する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
化学療法又は放射線治療を受ける患者における粘膜組織の潰瘍化又は壊死を治療する方法であって、該患者に式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物又はオキシリピン化合物を投与することを含む、前記方法。
【請求項7】
式Aの化合物、式1〜46のいずれか一つの化合物、リポキシン化合物又はオキシリピン化合物が式1〜46又は50〜115のいずれか一つの化合物から選択される、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記化合物が化合物X:
【化1】

又はその製薬上許容できる塩である、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
化学療法又は放射線治療を受ける患者における粘膜炎の発症を抑制する方法であって、該患者にアスピリンとω−3脂肪酸との組合せを投与する、前記方法。
【請求項10】
前記アスピリンとω−3脂肪酸との組合せを前記化学療法又は放射線治療と共同して投与する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
患者における粘膜炎を治療する方法であって、該患者にアスピリンとω−3脂肪酸との組合せを投与する、前記方法。
【請求項12】
粘膜炎のリスクの増大と関連のある治療法を受ける患者の生存率を向上させる方法であって、該患者にアスピリンとω−3脂肪酸との組合せを投与する、前記方法。
【請求項13】
前記アスピリンとω−3脂肪酸との組合せを前記治療法と共同して投与する、請求項12に記載方法。
【請求項14】
化学療法又は放射線治療を受ける患者における粘膜組織の潰瘍化又は壊死を治療する方法であって、該患者にアスピリンとω−3脂肪酸との組合せを投与することを含む、前記方法。

【図1】
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【公表番号】特表2009−545527(P2009−545527A)
【公表日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−520828(P2009−520828)
【出願日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2007/016338
【国際公開番号】WO2008/011085
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(509018719)リゾルヴィクス・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】RESOLVYX PHARMACEUTICALS, INC.
【住所又は居所原語表記】6a Preston Court,Bedford,MA 01730 U.S.A.
【Fターム(参考)】