説明

精密エネルギ制御用のレーザによる物質の加工方法、システム、およびこれに用いるサブシステム

【課題】
【解決手段】精密エネルギ制御用のレーザによる物質加工方法が提供され、バルクアッテネータは、RFドライバ出力により切り替えられ、RF出力全体を大幅に低くし、パルスごとのレーザエネルギを生成する。アッテネータの値により、実現可能なエネルギの範囲、すなわちpjまたはpjの端数を決定する。1以上のアッテネータおよびスイッチは、複数のエネルギ範囲を実現するために利用できる。バルクアッテネータが切り替えられた後に、レーザエネルギは大幅に減らされ、RFドライバは、SNRが非常によいRFパワーがほぼ最大の状態で再び動作できる。また、DACからの入力電圧は非常に高く、SNRが小さいためにノイズが多いダイナミックレンジの最低位ではない。この方法およびシステムは、高いDAC入力電圧とRFドライバの高いSNRにより、拡大されたダイナミックレンジ、優れた減衰(実行可能な低いエネルギ)、優れた精度、および安定性を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連する特許および出願のクロスリファレンス
本出願は、2004年12月30日に出願された米国暫定特許出願第60/643,341の優先権を主張する。本出願は、以下の米国特許および特許出願、6,791,059、6,744,288、6,727,458、6,573,473、6,381,259、2002/0167581、2004/0134896、および6,559,412の全体をここに組み込んでいる。これらの特許および公開は、本発明の出願人に譲渡されている。
【0002】
本発明は一般に、精密で高速なレーザによる物質の加工、例えばターゲット物質のマイクロマシニングに関する。この応用例の一つは、レーザによるリダンダント半導体記憶装置の修理である。
【背景技術】
【0003】
半導体およびDRAM装置の設計ルールが、より小さな形状(geometry)まで進歩するに伴い、より小さくより接近して配置されたプログラム可能なリンクを取り除くのに、より小さなレーザスポットが必要とされる。リンクの形状が小さくなるに伴い、より小さいリンク物質を取り除くため、各リンクを加工するのに必要とされるレーザパルスごとのエネルギは小さくなる。また、より小さなリンク形状を加工する場合は、隣接したリンクまたは他の構造の損傷を防ぐために、より小さなレーザスポットサイズが所望される。より小さなレーザスポットサイズではスポット内のエネルギ密度はより高く、このためリンク物質を取り除くためにパルスごとの低いエネルギを必要とする。
【0004】
レーザエネルギのより精密な制御は、パルスまたは一群のパルスごとのエネルギを精密かつ一定に維持するのに有益である。物質の確実な除去と、より信頼性のあるリンクの加工は、改良された制御により実現できる。このような精密な制御は、一般にレーザによる加工および精密なマイクロマシニングに有用である。
【0005】
リンクの加工に加え、レーザシステムの操作はしばしば、装置、対象とする構造、または加工する他の物質にレーザ光線を整列するステップを含む。
【0006】
米国特許第5,196,867および6,947,454、ならびに公開された米国出願2005/0270631、2005/0270630、および2005/0270629は本出願に関連する。
【0007】
エネルギコントロールにおける加工および整列操作の双方の精度を改良するために、非常に広範なダイナミックレンジを有するレーザによる物質加工システムの必要性がある。広範なダイナミックレンジに加え、このシステムは、エネルギ設定において非常に優れた分解能(resolution)、安定性、減衰、および正確性を必要とする。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、レーザの出力エネルギを精密に制御する改良されたレーザ加工方法およびシステムを提供することである。
【0009】
また、本発明の別の目的は、検出およびレーザ加工操作の双方に対して十分に広いダイナミックレンジでレーザの出力エネルギを精密に制御するレーザによる物質の加工方法およびシステムを提供することである。
【0010】
本発明の一の態様は、広範なダイナミックレンジで、レーザ出力エネルギを精密に制御するエネルギコントロールの方法を特徴とする。
【0011】
本発明の別の態様は、前記方法を実行するレーザによる物質加工システムを特徴とする。
【0012】
本発明の実施例は、広範なダイナミックレンジで、非常に高い分解能(resolution energy)の制御および減衰を提供する。各エネルギ設定の精度および安定性は、従来の方法やシステムより非常に改良されることが期待される。
【0013】
本発明の上記の目的または他の目的を実現するために、レーザによる物質の加工方法が提供される。この方法は、第1のエネルギ密度を有する第1のレーザ出力により物質を照射するステップを含む。前記第1のエネルギ密度は、前記第1のレーザ出力と前記物質の相互作用によって生じる検出可能なレーザ放射を生成するのに十分に高く、前記物質の実質的な変更を防ぐのに十分に低い。前記方法はさらに、前記物質の性質を示すデータを生成すべく前記検出可能なレーザ放射の少なくとも一部を検出するステップと、前記データを分析するステップと、分析されたデータに基づいてレーザ物質加工出力によりターゲット物質を照射するステップとを含む。前記物質加工出力は、前記第1のエネルギ密度よりも実質的に大きく、前記ターゲット物質の物理的な性質を変更するのに十分に高い加工エネルギ密度を有し、これにより前記ターゲット物質を加工する。
【0014】
前記方法はさらに、前記第1のレーザ出力を精密に制御すべく、第1の制御信号を生成するステップを含む。
【0015】
前記方法はさらに、前記物質加工出力を精密に制御すべく、第2の制御信号を生成するステップを含む。
【0016】
前記方法はさらに、少なくとも一つの前記制御信号を、高い信号対雑音比の操作範囲内に設定するステップを含み、前記第1のレーザ出力および前記物質加工出力の双方は、広範なダイナミックレンジで精密に制御される。
【0017】
前記少なくとも一つの制御信号は、アナログまたはデジタル信号でもよく、前記設定するステップは、前記少なくとも一つの設定された制御信号を、変調、増幅、減衰、圧縮、展開、測定、遅延、復号化、およびシフトするステップのうちの少なくとも一つを含む。
【0018】
前記方法はさらに、前記少なくとも一つの設定された信号を選択的に減衰させて、適切な第1のレーザ出力および適切な物質加工出力のうちの少なくとも一つを生成するステップを含む。
【0019】
前記少なくとも一つの設定された制御信号はRF信号でもよく、前記選択的に減衰するステップは、スイッチドアッテネータ(swiched attenuator)ネットワークにより実行してもよい。
【0020】
前記物質は前記ターゲット物質でもよい。
【0021】
前記加工エネルギ密度は、前記第1のエネルギ密度の約1000倍でもよい。
【0022】
前記物質の性質は、光学的性質または熱的性質でもよい。
【0023】
前記物質の性質は、空間的性質でもよい。
【0024】
前記データは前記ターゲット物質の位置を示してもよい。
【0025】
さらに、本発明の前述の目的および他の目的を実現するために、レーザによる物質加工システムが提供される。前記システムはパルスレーザシステムを具え、これが物品(article)の物質に相互作用してレーザ放射を生成する第1のパルスレーザ光線と、レーザ加工操作によりターゲット物質を加工する第2のパルスレーザ光線を生成する。このシステムはさらに、前記物品を支持する少なくとも一つのポジショナを具える。このシステムはさらに測定サブシステムを具え、これが前記レーザ放射の少なくとも一部に応じて測定操作を行い、対応する測定信号を生成する。このシステムはさらにシステムコントローラを具え、これが前記測定信号に応じて前記少なくとも一つのポジショナとパルスレーザシステムを制御する。このシステムはさらに、前記システムコントローラに取り付けられるビームデリバリおよびフォーカス構成部材を具え、これが前記レーザ光線を放出し焦点を合わせる。このシステムはさらに、前記レーザ光線を変調するモジュレータと、前記モジュレータに取り付けられるエネルギコントローラとを具え、これが前記測定およびレーザ加工操作の双方にとって十分に広いダイナミックレンジで、前記レーザ光線のレーザ出力エネルギを精密に制御する。
【0026】
前記エネルギコントローラは、スイッチドアッテネータネットワークを具えてもよい。
【0027】
前記モジュレータは音響光学装置でもよい。
【0028】
前記モジュレータは電気光学装置でもよい。
【0029】
さらに、本発明の前述の目的および他の目的を実現するために、レーザ出力の光源よりも後段でレーザ出力のレーザエネルギを精密に制御する方法が提供される。この方法は、前記レーザエネルギを調整して、測定操作で物品を破壊することなくスキャンするのに十分に低いエネルギ範囲内のスキャンエネルギを得るステップを含む。さらに、この方法は前記レーザエネルギを調整して、前記物品のターゲット物質を加工するのに十分に高いエネルギ範囲内の加工エネルギを得るステップを含む。
【0030】
さらに、本発明の前述の目的および他の目的を実現するために、前記レーザ出力の光源の後段に配置された光学モジュレータにより、レーザ出力のレーザエネルギを精密に制御するサブシステムが提供される。前記サブシステムは、前記モジュレータ用の出力制御信号を生成するエネルギコントローラを具え、前記モジュレータからのレーザ出力エネルギは、測定およびレーザ加工操作の双方にとって十分に広いダイナミックレンジで制御される。
【0031】
前記エネルギコントローラは、スイッチドアッテネータネットワークを具えてもよい。
【0032】
前記光学モジュレータは音響光学装置を具えてもよい。
【0033】
前記光学モジュレータは電気光学装置を具えてもよい。
【0034】
本発明のこれらのおよびその他の特徴、態様、および利点は、以下の説明、添付の請求項、および添付した図面により一層理解できるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本開示における「エネルギコントロール」の言及はまた、一般に、「パワーコントロール」、「輝度制御」、「ピークパワーコントロール」、「アベレージパワーコントロール」、または同様の関連する機能に適用できる。
【0036】
レーザによるメモリの修復方法/システム
以下の典型的な特許および公開された出願、
「Laser Processiong」という名称の米国特許6,791,059(以下、059特許と記す)、
「High-Speed Precision Positioning Apparatus」という名称の米国特許6,744,288(以下、288特許と記す)、
「Energy-Efficient,Laser-Based Method And System For Processing Target Material」という名称の米国特許6,727,458(以下、458特許と記す)、
「Method And System For Precisely Positioning A Waist Of A Material-Processing Laser Beam To Process Microstructures Within A Laser-Processing Site」という名称の米国特許6,573,473(以下、473特許と記す)、
「Controlling Laser Polarization」という名称の米国特許6,381,259(以下、259特許と記す)、
「Methods And Systems For Thermal-Based Laser Processing A Multi-Material Device」という名称の公開された米国出願2002/0167581(以下、581出願と記す)、
「Laser-Based Method And System For Memory Link Processing With Picosecond Lasers」という名称の公開された米国出願2004/0134896(以下、896出願と記す)、および「Laser Processing」という名称の米国特許6,559,412(以下、419特許と記す)は、一般にレーザによるマイクロマシニングの方法およびシステムに関し、特にメモリの修復に関する。
【0037】
上記文書の少なくとも以下の引用箇所は、本発明の様々な特徴、態様、および利点を理解するのに特に適切であり、
059特許の図5および対応する文章は、リンクブローイング(link blowing)のレーザ加工システムに関し、パルスを選択しエネルギを制御するモジュレータ(アッテネータ)が提供されている。
【0038】
471特許の図1および対応する文章は、リンクブローイングのレーザ加工システムに関し、パルスを選択しエネルギを制御するモジュレータ(アッテネータ)が提供されている。少なくとも一つの実施例では、0.55ミクロンより小さい波長を有するレーザ出力が生成される。
【0039】
581および896出願ならびに458特許の多くの図面および対応する文章は、パルスを選択しレーザエネルギを制御する少なくとも一つのモジュレータを具える。
【0040】
581出願の図10、11、12、13、14、および14bならびに対応する文章は、例示的な配置および測定方法およびシステムに関する。「Methods and Systems for Precisely Relatively Positioning a Waist of a Pulsed Laser Beam and Method and System for Controlling Energy Delivered to a Target Structure」という名称の関連出願は、米国特許出願2002/0166845として公開されている。
【0041】
288特許は、本発明の少なくとも一つの実施例を実施するのに用いられる「ウェーハステージ」の一例であるウェーハ位置決め装置を示している。
【0042】
473特許の図4−6、対応する文章、および列7,行60から列9,行8は一般に、物質を加工する応用例に利用される整列およびパワー制御方法に関し、特にリンクブローイングに関する。
【0043】
概説
本発明の一の態様は、レーザによる物質の加工方法を特徴とする。この方法は、第1のレーザー出力と物質の相互作用によって生じる検出可能なレーザ放射を生成するのに十分高い、前記物質の実質的な変更を防ぐのに十分低い第1のエネルギ密度を有する第1のレーザ出力により前記物質を照射するステップと、前記物質の性質を示すデータを生成すべく検出可能な放射の少なくとも一部を検出するステップと、前記データを分析するステップと、前記第1のエネルギ密度よりも実質的に大きく、前記ターゲット物質の物理的な性質を変更するのに十分高い加工エネルギ密度を有するレーザ物質加工出力により、ターゲット物質を照射するステップとを具え、これにより前記物質を加工する。
【0044】
この方法は、前記第1のレーザ出力を精密に制御すべく、第1の制御信号を生成するステップを含む。
【0045】
この方法はまた、前記レーザ物質加工出力を精密に制御すべく、レーザ物質加工または第2の制御信号を生成するステップを含む。
【0046】
この方法はまた、前記第1および第2の制御信号のうちの少なくとも一つを、高い信号対雑音比の操作範囲内に設定するステップを含み、前記レーザ出力と前記物質加工出力の双方が、広範なダイナミックレンジで精密に制御される。
【0047】
前記少なくとも一つの制御信号は、アナログまたはデジタル信号でもよい。前記少なくとも一つの制御信号を制御するステップは、前記信号を変調、増幅、減衰、圧縮、展開、測定、遅延、復号化、およびシフトするステップのうちの少なくとも一つを含む。
【0048】
前記方法はまた、少なくとも一つの前記設定された信号を選択的に減衰させて、適切な第1のレーザ出力または適切な物質加工出力のうちの少なくとも一つを生成するステップを含む。
【0049】
前記設定された信号はRF信号であってもよく、前記選択的に減衰するステップは、スイッチドアッテネータネットワークにより実行してもよい。
【0050】
少なくとも一つの実施例では、前記物質は前記ターゲット物質でもよい。
【0051】
前記レーザ物質加工出力のエネルギ密度は、前記第1のエネルギ密度の約1000倍でもよい。
【0052】
前記物質の性質は、光学的性質または熱的性質でもよい。
【0053】
前記物質の性質は、空間的性質でもよい。
【0054】
前記データはまた、前記物質の位置を示してもよい。
【0055】
本発明の別の態様は、前述のレーザ加工方法を行うシステムを特徴とする。図1は、本発明のシステム100を示している。この例示的なシステムは、パルスレーザシステム103と、少なくとも一つのポジショナ(すなわち、モーションステージ)105と、測定サブシステムまたは設備140と、システムコントローラ(制御コンピュータ)115と、ビームデリバリおよびフォーカス構成部材130と、モジュレータ(AOM)101と、エネルギコントローラ150とを具え、測定とレーザ加工操作の双方にとって十分に大きいダイナミックレンジでレーザ出力エネルギ110を精密に制御する。
【0056】
エネルギコントローラ150は、スイッチドアッテネータネットワーク(選択可能なバルクアッテネータ)125を具えてもよい。
【0057】
モジュレータは、音響光学装置101であってもよい。
【0058】
モジュレータは、電圧を制御するコントローラを具える電気光学装置であってもよい。
【0059】
アライメント、測定、または画像の検出
図1を参照すると、システム100のような多くのレーザ加工システムでは、様々な形状が、検出(すなわち、測定)設備140を用いてスキャン、測定、または分析される。これらの形状は通常は関心領域内である。アライメントは、加工波長で形状にレーザエネルギをスキャンし、ある領域を可視光で照射し、カメラを整列または組合せて形状を調べることにより行われる。加工用レーザ103でスキャンする場合、レーザエネルギ110は、初めにモジュレータ101の制御により非破壊レベルに設定され、装置112のアライメントターゲット(図示せず)がスキャンまたは検出される。アライメントターゲットからの反射エネルギが分析され、ターゲットの位置が検出される。例えば、通常必要とされるエネルギは、リンク加工エネルギの1000倍よりも低くすることができる。スポットの大きさが小さくなくにつれ、ますます低いエネルギが、スキャンするために必要となる。さらに低いスキャンエネルギは、エネルギコントロール回路内の非常に優れた減衰を必要とする。システム101は、エネルギをほぼ0にし、エネルギ設定の制御を維持できることが好適である。
【0060】
広範なダイナミックレンジエネルギ/パワーコントロール
レーザ加工設備の高精度で広い帯域幅のエネルギコントロールは、通常、音響光学モジュレータ(AOM)101と、AOM101を制御する付随するRFドライバ102を用いて行われる。
【0061】
レーザ103は通常、ウェーハまたはモーションステージ105が一定の早さで移動する間、一定の高いqレート(パルスレート)で操作される。ほとんどの時間、レーザエネルギは、エネルギコントロールシステムにより「OFF」状態に設定される。レーザエネルギは、(1)リンクまたは他のターゲット物質を加工し、ターゲットに対して整列し、または焦点を合わせるパルス(または一群のパルス)が必要な場合に、調整される。エネルギは、RFパワーを変更することによりAOM101に適応される。
【0062】
通常のAOM101とRFドライバ102の組合せは、以下のテーブルに示すように非常に有効に機能する。


【0063】
メモリを修復するリンクブラスチング(link blasting)の一般的で理想的な事例が、テーブルの1列−4列に示されている。システムコントローラ115または他の仕様と16ビットDAC120からの命令に応答する1.0μj(マイクロジュール)レーザエネルギ入力では、実現可能な最小限のエネルギ(減衰)は、0.10nj(ナノジュール)である。実現可能な分解能は、0.015njである。問題は、DAC120とRFドライバ102の双方が、信号が小さくノイズの多いダイナミックレンジの最低位で動作することである。この理想的な事例における分解能および減衰は、通常、RFドライバ102とRFドライバ102への入力ドライブ信号の信号対雑音比(SNR)が低いため実現できない。
【0064】
改良された装置では、選択可能なバルクアッテネータ125はRFドライバ出力により切り替えられ、RF出力全体を大幅に下げ、(テーブルの5から8に示す)パルスごとのレーザエネルギを生成する。アッテネータ125の値により、実現可能なエネルギの範囲、すなわち図示した事例におけるpj(ピコジュール)またはpjの端数が決まる。
【0065】
少なくとも一つの実施例では、複数のアッテネータおよびスイッチを利用して複数のエネルギ範囲を実現できる。
【0066】
留意すべき重要な一つのポイントは、バルクアッテネータ125が切り替えられた後に、レーザエネルギが大幅に減少され、RFドライバ102は、SNRが非常によい最大に近いRF出力で再び動作することである。また、DAC120からの入力電圧は非常に高く、SNRが小さいためにノイズが多いダイナミックレンジの最低位ではない。本実施例は、DAC入力電圧の高いSNRとRFドライバ102の高いSNRによる、拡大されたダイナミックレンジ、優れた減衰(実行可能な低いエネルギ)、優れた精度、および安定性といった本発明の様々な利点を示している。
【0067】
例示的な操作は、特にメモリの修復に適しているが、例えば、マーキング、トリミング、マイクロドリル、マイクロストラクチャリング、パターニング、フラットディスプレイまたは薄いフィルム回路の修復、およびターゲット物質に衝突するレーザパルスの精密なエネルギコントロールを必要とする同様の高速の応用例といった他の精密なレーザによるマイクロマシニング操作に利用するために適応してもよい。
【0068】
図1の実施例は、音響光学モジュレータ101とRFコントローラを示している。他の実施例は、例えば、ポッケルスセル、平らな導波管モジュレータ、または好適な制御範囲内で動作する他の光学スイッチなどの電気光学(E−O)モジュレータを具えてもよい。このような装置の多くは通常、入力電圧に応じて偏光を制御する。図1に示すのと同様の「段階的な」または切り替えられた変圧(transformation)、または他の適切な電圧の測定は、E−Oモジュレータを利用したレーザ加工システムのパフォーマンスを改良するのに使用してもよい。
【0069】
本発明の実施例はまた、モードロックまたは利得スイッチレーザ光源を組み込んだシステムに利用してもよい。例えば、パルス幅は、約1ピコ秒(あるいはこれ以下)から数百ナノ秒(あるいはこれ以上)であってもよい。ターゲット物質の加工は、一つのパルスまたは複数のパルスを用いて行ってもよい。
【0070】
さらに、本発明の少なくとも一つの実施例は、赤外線、可視、UV波長を利用して行ってもよく、特に、短い波長に有利である。
【0071】
精密な測定
本発明のシステムは、広範なダイナミックレンジ全体で精密に測定される。この測定は、DAC120のデジタル値とレーザ出力110との間の伝達特性を提供するのに利用される。1以上の検出器141は、測定設備140に設けてもよく、通常は操作可能にシステムコントローラ115に取り付けられる。少なくとも一つの実施例では、「パワーメータ」143は、レーザパワー、エネルギ、または他のパルス特性を直接測定するために、ウェーハステージ105に配置し、またはウェーハステージの近くに配置してもよい。
【0072】
本発明の実施例が説明および図示されているが、これらの実施例は、本発明の総ての可能な形態を説明および図示しているのではない。むしろ、本明細書で使用した語は、限定ではなく説明としての語であり、本発明の意図や目的から逸脱しないで、様々な変更が可能であると理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、精密なエネルギコントロールを具えるレーザによる物質加工システムの一実施例を示す概略的なブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザによる物質の加工方法であって、
第1のレーザ出力と物質の相互作用によって生じる検出可能なレーザ放射を生成するのに十分高く、物質の実質的な変更を防ぐのに十分低い第1のエネルギ密度を有する第1のレーザ出力により物質を照射するステップと、
前記物質の性質を示すデータを生成すべく前記検出可能なレーザ放射の少なくとも一部を検出するステップと、
前記データを分析するステップと、
前記分析されたデータに基づくレーザ物質加工出力により、ターゲット物質を照射するステップとを含み、前記物質加工出力は、前記第1のエネルギ密度よりも実質的に大きく、前記ターゲット物質の物理的な性質を変更するのに十分高い加工エネルギ密度を有し、これにより前記ターゲット物質を加工することを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法がさらに、第1の制御信号を生成するステップを含み、前記第1のレーザ出力を精密に制御することを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法がさらに、第2の制御信号を生成するステップを含み、前記物質加工出力を精密に制御することを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法がさらに、少なくとも一つの前記制御信号を、高い信号対雑音比の操作範囲内に設定するステップを含み、前記第1のレーザ出力および前記物質加工出力の双方は、広範なダイナミックレンジで精密に制御されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法において、前記少なくとも一つの設定された制御信号は、アナログまたはデジタル信号であり、前記設定するステップは、前記少なくとも一つの設定された制御信号を、変調、増幅、減衰、圧縮、展開、測定、遅延、複合化、およびシフトするステップのうちの少なくとも一つを含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法がさらに、前記少なくとも一つの設定された信号を選択的に減衰させて、適切な第1のレーザ出力と適切な物質加工出力のうちの少なくとも一つを生成するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、前記少なくとも一つの設定された制御信号はRF信号であり、前記選択的に減衰するステップは、スイッチドアッテネータネットワークにより実行されることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記物質は前記ターゲット物質であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法において、前記加工エネルギ密度は、前記第1のエネルギ密度の約1000倍であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法において、前記物質の性質は、光学的性質または熱的性質であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法において、前記物質の性質は、空間的性質であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記データは前記ターゲット物質の位置を示すことを特徴とする方法。
【請求項13】
レーザによる物質加工システムであって、
物品の物質に相互作用してレーザ放射を生成する第1のパルスレーザ光線と、レーザ加工操作によりターゲット物質を加工する第2のパルスレーザ光線を生成するパルスレーザシステムと、
前記物品を支持する少なくとも一つのポジショナと、
前記レーザ放射の少なくとも一部に応じて測定操作を行い、対応する測定信号を生成する測定サブシステムと、
前記測定信号に応じて前記少なくとも一つのポジショナと前記パルスレーザシステムを制御するシステムコントローラと、
前記レーザ光線を放出し焦点を合わせるべく、前記システムコントローラに取り付けられるビームデリバリおよびフォーカス構成部材と、
前記レーザ光線を変調するモジュレータと、
前記モジュレータに取り付けられるエネルギコントローラとを具え、前記測定およびレーザ加工操作の双方にとって十分に広いダイナミックレンジで、前記レーザ光線のレーザ出力エネルギを精密に制御することを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のシステムにおいて、前記エネルギコントローラは、スイッチドアッテネータネットワークを具えることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項13に記載のシステムにおいて、前記モジュレータは音響光学装置であることを特徴とするシステム。
【請求項16】
請求項13に記載のシステムにおいて、前記モジュレータは電気光学装置であることを特徴とするシステム。
【請求項17】
レーザ出力の光源後段でレーザ出力のレーザエネルギを精密に制御する方法において、当該方法が、
測定操作で物品を破壊せずにスキャンするのに十分低いエネルギ範囲内のスキャンエネルギを得るべく、前記レーザエネルギを調整するステップと、
前記物品のターゲット物質を加工するのに十分高いエネルギ範囲内の加工エネルギを得るべく、前記レーザエネルギを調整するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
前記レーザ出力の光源の後段に配置された光学モジュレータにより、レーザ出力のレーザエネルギを精密に制御するサブシステムにおいて、当該サブシステムが、
前記モジュレータ用の出力制御信号を生成するエネルギコントローラを具え、前記モジュレータからのレーザ出力エネルギは、測定およびレーザ加工操作の双方にとって十分に広いダイナミックレンジで制御されることを特徴とするサブシステム。
【請求項19】
請求項18に記載のサブシステムにおいて、前記エネルギコントローラは、スイッチドアッテネータネットワークを具えることを特徴とするサブシステム。
【請求項20】
請求項18に記載のサブシステムにおいて、前記光学モジュレータは、音響光学装置を具えることを特徴とするサブシステム。
【請求項21】
請求項18に記載のサブシステムにおいて、前記光学モジュレータは、電気光学装置を具えることを特徴とするサブシステム。

【図1】
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【公表番号】特表2008−526513(P2008−526513A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549506(P2007−549506)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2005/046762
【国際公開番号】WO2006/073888
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(507151375)ジーエスアイ ルモニクス コーポレーション (3)
【Fターム(参考)】