説明

精密スプレー成形・積層転圧修繕及び製造装置

精密スプレー成形・積層転圧修繕及び製造装置は、スプレーユニット(100)と積層転圧修繕及び製造ユニット(200)とを備える。前記スプレーユニット(100)は金属液の供給に用いる金属液溶解調製又は供給手段(5)と、前記金属液溶解調製又は供給手段(5)の下流に位置する不活性ガス霧化スプレー手段(8)とを備える。前記積層転圧修繕及び製造ユニット(200)は、被覆待ち加工物(1)の周囲に位置するとともに前記被覆待ち加工物(1)の表面を予熱する加熱手段(3)と、前記金属被覆層(10)側に位置するとともに前記金属被覆層(10)に対して積層転圧を行う積層転圧手段(11)と、前記被覆待ち加工物(1)を収容する移動機械操作手段(4)と、前記積層転圧手段に接続される金属被覆層厚さ検出制御機構(12)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精密スプレー成形・積層転圧(layer by layer compaction)修繕及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄道車輪、冶金の転圧ホイール、大型の回転シャフト等、機械部品の多くは、少しの局部摩滅により部品全体がだめになってしまう。鉄道車輪を例にすると、運行中にレールの摩擦やブレーキの摩擦等の要因によって摩滅してしまう。鉄道車両は世界中でなお主要な旅客及び物資の輸送手段であり、世界で毎年摩滅により廃棄処分される車輪は数千万枚に上るが、現在のところ、未だ実用的な修繕方法はない。新たに車輪を製作するには、エネルギー等の天然資源や輸送能力等を含め、大量の人的及び物的資源を消費しなければならない。
【0003】
スプレー成形は、金属下地に高速で金属を1層被覆又はめっきすることができるが、一般的にこのような被覆層の孔隙率は0.5〜2%で、車輪の機械的性能に対する要求を満たし難い。もし廃車輪を被覆した後全体の転圧又はその他のホットプレス加工を行えば、車輪における修繕不要である部位の形状やサイズの精度まで損なってしまうとともに、エネルギー及びその他の加工コストを大きく浪費してしまう。
【0004】
現在、金属熱スプレー法により加工物を修繕する方法もあるが、その金属被覆層と元の加工物下地との結合が弱く、金属被覆層における孔隙率が5%以上である上、ノズル1つ当たりの金属スプレー効率も低く(100グラム/分オーダーにとどまる)、スプレーの面積が大きいと過大な熱応力が発生するため、高負荷で用いる大型金属部品の修繕に用いることはできない。
【0005】
上記の通り、本分野においては、スプレー成形による高速金属被覆及び熱転圧技術を用いて、摩滅した金属部品に高品質な修繕を行ったり複数の機能層を有する複合金属部品を製造したりする方法や装置を欠いていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
よって、本分野では、上記の各金属層被覆方法が抱える問題を解決するとともに、高負荷で用いる大型金属部品の高効率な修繕及び複数の機能層を有する部品の製造を実現し、その金属被覆層を緻密化させ、機械的性能を下地の機械的性能に近い、ひいてはそれを超えるものにできる方法及び装置が切望されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、高負荷で用いる大型金属部品の高効率な修繕及び複数の機能層を有する部品の製造を実現する精密スプレー成形・積層転圧修繕及び製造装置を得ることにある。
【0008】
本発明は、被覆待ち加工物(1)のスプレー成形、並びに積層転圧修繕又は製造に用いる精密スプレー成形・積層転圧修繕及び製造装置を提供し、前記装置は以下の機構又は機能部材を備えている、即ち、
−スプレーユニット(100)、前記スプレーユニット(100)は以下のものを備えている、
−金属液溶解調製又は供給手段(5)、前記金属液溶解調製又は供給手段(5)は金属液(7)を供給する、
−前記金属液溶解調製又は供給手段(5)の下流に位置する不活性ガス霧化スプレー手段(8)、前記不活性ガス霧化スプレー手段(8)は前記金属液(7)を霧化させて前記被覆待ち加工物(1)にスプレーし金属被覆層(10)を形成する、
−積層転圧修繕及び製造ユニット(200)、前記積層転圧修繕及び製造ユニット(200)は以下のものを備えている、
−前記被覆待ち加工物(1)の周囲に位置するとともに前記被覆待ち加工物(1)の表面を予熱する加熱手段(3)、
−前記金属被覆層(10)側に位置するとともに前記金属被覆層(10)に対して積層転圧を行う積層転圧手段(11)、
−前記被覆待ち加工物(1)を収容する移動機械操作手段(4)、前記移動機械操作手段(4)は前記被覆待ち加工物(1)の位置を金属液(7)及び前記積層転圧手段(11)に対して移動させる、
−前記金属被覆層(10)が所定の厚さに達したら適時に前記金属液(7)の供給又はスプレーを停止することができるよう前記積層転圧手段(11)に接続される金属被覆層厚さ検出制御機構(12)。
【0009】
本発明の一の具体的な実施形態において、前記不活性ガス霧化スプレー手段(8)は、金属液ガイド管と、前記金属液ガイド管に近接する一つ又は複数の不活性ガスノズルとを備える。
【0010】
本発明の一の具体的な実施形態において、前記積層転圧手段(11)は液圧又は空気制御式の転圧手段である。
【0011】
本発明の一の具体的な実施形態において、前記積層転圧手段(11)は一つ又は複数の転圧ホイールを備える。
【0012】
本発明の一の具体的な実施形態において、前記積層転圧手段(11)における転圧ホイールは円柱形又は曲線回転体である。
【0013】
本発明の一の具体的な実施形態において、前記転圧ホイールの周囲には内部又は外部循環冷却システムが設けられている。
【0014】
本発明の一の具体的な実施形態において、前記加熱手段(3)には誘導加熱器が採用されている。
【0015】
本発明の一の具体的な実施形態において、前記金属液溶解調製及び供給手段(5)は、溶解炉、保持炉、鋳込とりべ又はタンデッシュから選ばれる。
【0016】
本発明の一の具体的な実施形態において、前記金属被覆層厚さ検出制御機構(12)は変位センサを介して積層転圧手段(11)と一体化している。
【0017】
本発明の一の具体的な実施形態において、前記被覆待ち加工物は摩滅部品又は複合構造部品から選ばれる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の効果は以下の通りである。
(1)摩滅部材の修繕は天然資源やエネルギーの節約となり、環境保全に役立つとともに、製造コストを大いに下げることができる。本発明においては、さらに金属部品の生産効率や使用性能を向上することができる。
(2)本発明によれば、高負荷で用いる大型金属部品の高効率な修繕及び複数の機能層を有する部品の製造を実現し、その金属被覆層を緻密化させ、機械的性能を下地の機械的性能に近い、ひいてはそれを超えるものにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、実施例1の本発明の精密スプレー成形・積層転圧修繕及び製造装置の模式図である。
【図2】図2は、実施例2の本発明の精密スプレー成形・積層転圧修繕及び製造方法によって得られる部品の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の主旨は、液状態の金属のスプレー成形及び積層転圧法によって実現され、従来の各金属被覆法の抱える問題及び不足する点を解決する、確実で、技術・経済性に優れた摩滅部品の修繕又は再製造方法並びに装置を提供することにある。これを基礎として、本発明が完成された。
【0021】
本発明の構想は以下の通りである。
【0022】
スプレー成形の金属スプレーが修繕待ち部品に堆積した直後に、融点に近い高温と優れた流動変形性とを利用して小さな圧力で積層転圧を行うことによって、緻密な金属被覆層を得るとともに、被覆待ち部品の他の部位の形状及びサイズ精度を明らかに損なわないようにする。
【0023】
以下、本発明の各方面について詳述する。
【0024】
(精密スプレー成形・積層転圧修繕及び製造装置)
本発明は、被覆待ち加工物(1)のスプレー成形、並びに積層転圧修繕又は製造に用いる精密スプレー成形・積層転圧修繕及び製造装置を提供し、前記装置は以下の機構又は機能部材を備えている、即ち、
−スプレーユニット(100)、前記スプレーユニット(100)は以下のものを備えている、
−金属液溶解調製又は供給手段(5)、前記金属液溶解調製又は供給手段(5)は金属液(7)を供給する、
−前記金属液溶解調製又は供給手段(5)の下流に位置する不活性ガス霧化スプレー手段(8)、前記不活性ガス霧化スプレー手段(8)はその中の金属液(7)を霧化させて前記被覆待ち加工物(1)にスプレーし金属被覆層(10)を形成する、
−積層転圧修繕及び製造ユニット(200)、前記積層転圧修繕及び製造ユニット(200)は以下のものを備えている、
−前記被覆待ち加工物(1)の周囲に位置するとともに前記被覆待ち加工物(1)の表面を予熱する加熱手段(3)、
−前記金属被覆層(10)側に位置するとともに前記金属被覆層(10)に対して積層転圧を行う積層転圧手段(11)、
−前記被覆待ち加工物(1)を収容する移動機械操作手段(4)、前記移動機械操作手段(4)は前記被覆待ち加工物(1)の位置を金属液(7)及び前記積層転圧手段(11)に対して移動させる、
−前記金属被覆層(10)が所定の厚さに達したら適時に前記金属液(7)の供給又はスプレーを停止することができるよう前記積層転圧手段(11)に接続される金属被覆層厚さ検出制御機構(12)。
【0025】
スプレーユニット(100)において、前記金属液溶解調製及び供給手段(5)には、金属液を供給し且つ本発明の目的を制限しない限り、本分野において通常用いられる装置を採用することができる。
【0026】
本発明の一の具体的な実施形態において、前記金属液溶解調製及び供給手段(5)は、溶解炉、保持炉、鋳込とりべ又はタンデッシュから選ばれる。
【0027】
前記金属液は、純金属または合金であってよい。前記金属液は被覆待ち加工物の材料と一致してもよく、必要に応じて被覆待ち加工物の材料と異ならせて複合材料加工物を得てもよい。
【0028】
スプレーユニット(100)において、前記不活性ガス霧化スプレー手段には、本発明の発明目的を制限しない限り、本分野において伝統的に用いられている不活性ガス霧化スプレー手段を採用することができる。
【0029】
本発明の一の具体的な実施形態において、前記不活性ガス霧化スプレー手段(8)は、金属液ガイド管と不活性ガスノズルとを備える。前記不活性ガスノズルは必要に応じて1個又は複数個設けることができる。不活性ガスノズルの設置位置に具体的な制限はなく、金属液ガイド管内の金属液を霧化及びスプレー可能でさえあればよい。一つの不活性ガス霧化スプレー手段内に複数の不活性ガスノズルがある場合、ノズルの分布及び向きは必要に応じて決めることができ、ノズルは固定式でも移動式でもよい。
【0030】
具体的に、前記不活性ガス霧化スプレー手段は、耐火材料を用いて製作された金属液ガイド管と、一般的には金属又はセラミックを用いて製作される不活性ガスノズルとを備える。本発明の発明目的を制限しない限り、前記耐火材料、金属、セラミックには全て本分野において通常用いられる材質を採用することができる。
【0031】
具体的に、本発明の目的を制限しない限り、前記不活性ガスの種類には具体的な制限がない。具体的に、例えば積層転圧修繕及び製造ユニット(200)における加熱手段が用いるものと一致させる。通常、鋼鉄部品を処理する際には窒素ガスを用いるのが一般的である。
【0032】
前記不活性ガス霧化スプレー手段の個数に制限はなく、状況に応じて一つ又は複数の霧化スプレー手段を用いることができる。
【0033】
本発明の一の具体的な実施形態において、前記不活性ガス霧化スプレー手段(8)の個数は2つ以上である。
【0034】
具体的に、同時に動作する複数組の不活性ガス霧化スプレー手段(即ち、金属液霧化スプレー手段)があってよく、その分布及び向きは修繕待ち部品の形状及びサイズによって異なるようにしてよく、それらは固定式であっても可動式であってもよい。
【0035】
さらに具体的に、前記不活性ガス霧化スプレー手段(8)の上流にはさらに不活性ガスの調製又は供給手段が接続されていてもよい。前記不活性ガスの調製又は供給手段に具体的な制限はなく、本分野において伝統的に用いられている不活性ガスの調製又は供給手段を用いることができる。さらに具体的に、前記不活性ガスの調製又は供給手段は各種の空気分離装置、パイプ輸送手段又は液化ガス供給手段を含む。
【0036】
積層転圧修繕及び製造ユニット(200)において、前記被覆待ち加工物(1)の周囲には、前記被覆待ち加工物(1)の表面を予熱する加熱手段(3)が設けられている。
【0037】
本発明の一の具体的な実施形態において、前記加熱手段(3)には誘導加熱器が採用されている。
【0038】
前記誘導加熱器には、本分野において伝統的に用いられている誘導加熱器を採用することができ、具体的に、前記誘導加熱器の例にはスプレー室に固定される誘導加熱器又は駆動型の誘導加熱器を含むが、これらに限られない。
【0039】
積層転圧修繕及び製造ユニット(200)において、本発明の一の具体的な実施形態では、前記積層転圧手段(11)は一つ又は複数の転圧ホイールを備える。
【0040】
好ましくは、前記転圧ホイールは円柱形又は曲線回転体である。
【0041】
好ましくは、前記転圧ホイールの周囲にはさらに内部又は外部循環冷却システムが設けられており、前記内部又は外部循環冷却システムの冷却媒体には本分野において伝統的に用いられている冷却媒体を採用することができ、具体的には、例えば水又は他の流体であってよい。
【0042】
本発明の一の具体的な実施形態において、前記積層転圧手段(11)は液圧又は空気制御式の転圧手段である。
【0043】
好ましくは、金属被覆層を充分に押し固められるように、また、部品の他の部位の形状及びサイズ精度を損なわないように、前記転圧手段は被覆金属の特性及びその下地部品の構造に応じて圧力を調節することができる。本発明の一の具体的な実施形態において、同時に被覆金属に対して積層転圧を行いそれを緻密化させる時、転圧圧力の大きさは200〜2000キログラムである。
【0044】
積層転圧修繕及び製造ユニット(200)において、好ましくは、前記金属被覆層厚さ検出制御機構(12)は変位センサを介して積層転圧手段(11)と一体化している。
【0045】
積層転圧修繕及び製造ユニット(200)において、前記被覆待ち加工物(1)を収容する移動機械操作手段(4)をさらに設ける。前記移動機械操作手段(4)は、前記被覆待ち加工物(1)の位置を金属液(7)及び前記積層転圧手段(11)に対して移動させる。前記移動機械操作手段(4)には、金属液(例えば霧化スプレー形態の金属液)及び前記積層転圧手段に対する前記被覆待ち加工物の位置の移動を制御できるものでさえあれば、本分野において伝統的に用いられている移動機械操作手段の構造を採用することができる。
【0046】
具体的には、例えば前記移動機械操作手段(4)は、前記被覆待ち加工物と金属液及び前記積層転圧手段との間の相対回転、往復等の相対運動を制御することによって、均一に、速く、1層ずつ被覆待ち加工物の表面を被覆金属に覆わせる。
【0047】
前記被覆待ち加工物は摩滅部品又は複合構造部品であってよい。前記被覆待ち加工物の個数に制限はなく、例えば一つでもよく、複数の加工物が同時に被覆されるようにしてもよい。
【0048】
前記被覆待ち加工物の表面は回転体であってもよく、非回転体の対称形の表面であってもよい。
【0049】
前記スプレーユニット(100)及び積層転圧修繕及び製造ユニット(200)の外部には容器を設けてもよい。具体的には、例えば不活性ガス保護雰囲気のスプレー室を設けることができる。
【0050】
本文の開示内容により、本発明の他の方面は当業者にとって明らかである。
【0051】
本発明は上記の詳細な記述に限られず、本発明の実質的な精神を逸脱しないあらゆる変更や修飾はすべて本発明の範疇に含まれる。以下、具体的な実施例と合わせ、本発明についてさらに説明する。なお、これらの実施例は本発明の説明に用いられるのに過ぎず、本発明の範囲を制限するものではない。以下の実施例において具体的な条件を示していない実験方法については、通常、一般的に用いられる条件又はメーカーの提案する条件に基づく。特に説明しない限り、比率及びパーセンテージは重量に基づくものとする。
【0052】
特に定義や説明を行わない限り、本文中で用いる全ての専門用語及び科学用語は当業者が熟知する意味と同じ意味を有する。また、記載内容と類似又は同等の方法及び材料は全て本発明の方法に適用することができる。
【実施例1】
【0053】
図1は、本発明の方法及び装置の模式図である。外円部の摩滅により廃棄処分となった1対の鉄道車輪1の修繕を例にする。
【0054】
装置にはスプレー室2が設けられており、スプレー室2の上部には、金属液7を供給する金属液溶解調製又は供給手段5と、金属液溶解調製又は供給手段5の下流に位置し、その中の金属液7を霧化させて前記被覆待ち加工物(即ち、車輪)1にスプレーし金属被覆層10を形成する不活性ガス霧化スプレー手段8とを備えるスプレーユニット100が設けられている。
【0055】
スプレー室2の下部には、前記被覆待ち加工物1の周囲に位置するとともに、前記被覆待ち加工物1の表面を予熱する加熱手段3と、前記金属被覆層10側に位置するとともに、前記金属被覆層10に対して積層転圧を行う積層転圧手段11と、前記被覆待ち加工物1を収容し、前記被覆待ち加工物1の位置を金属液7及び前記積層転圧手段11に対して移動させる移動機械操作手段4と、前記金属被覆層10が所定の厚さに達したら適時に前記金属液7の供給又はスプレーを停止することができるよう前記積層転圧手段11に接続される金属被覆層厚さ検出制御機構12とを備える積層転圧修繕及び製造ユニット200が設けられている。
【0056】
詳しくは以下の通りである。
【0057】
図1に示すように、スプレー室2の上部には孔が設けられており、金属液溶解調製又は供給手段5がセットされている。前記金属液溶解調製又は供給手段5は、溶解炉またはタンデッシュであってよい。スプレー室2の両側方には孔が設けられており、移動機械操作手段4a及び移動機械操作手段4bが設けられている。スプレー室2の下部の一方には排気出口14が設けられている。スプレー成形中に発生した不活性ガスは、排気出口14を通り集塵システム(図示しない)に入った後、排出又は回収される。スプレー室2の下部の他方には、厚さ検出制御機構12(即ち、操作センサ機構)が通るように孔が設けられている。
【0058】
また、図1に示すように、車輪1はスプレー室2にセットされ、加熱手段3によってその表面が予熱される。車輪1は移動機械操作手段4に取り付けられる。誘導加熱器3はスプレー室2に固定することができ、修繕待ち車輪1は操作システム4aによってその中に推し入れられ、加熱される。誘導加熱器3は、車輪1をノズル8下方のスプレー成形位置に留まらせ、操作システム4bの駆動により自ら動いて車輪1の修繕待ち表面を覆うことが可能な可動式であってもよい。この加熱中、ムラ無く加熱し歪を少なくするため、車輪1は操作システム4aによって適切な速さ(例えば20〜200回転/分の速さ)で回転するよう駆動される。
【0059】
移動機械操作手段4は操作システム4a、操作システム4b又はこの両者を組み合わせたものである。
【0060】
金属液溶解調製又は供給手段5(溶解炉又は鋳込とりべ)は、スプレー室2の上部の孔に設けられたタンデッシュ6に金属液7を注入する。タンデッシュ6の底部には、前記金属液7が孔を通ってスプレー室へ進入できるように孔が設けられており、金属液7は前記不活性ガス霧化スプレー手段8と接触後、霧化して車輪1へスプレーされる。
【0061】
金属被覆層10に対する転圧ホイール11の圧力は、操作センサ機構12によって制御され、該操作センサ機構12は、所定の被覆厚さに達した時にスプレーを停止できるよう金属被覆層10の厚さを検出する検出器でもある。
【0062】
端面部位へのスプレーコーティングを補助するとともに被覆を必要としない部位を保護するため、修繕待ち表面の端面には必要に応じてじゃま板13が設けられる。
【0063】
本発明の修繕の手順は以下の通りである。
【0064】
まず、修繕待ち表面を処理する。この処理には、汚染除去及びクリーニング、ショット又はサンドブラスト処理、機械加工等が含まれていてもよい。
【0065】
修繕待ち部品1を図1に示すスプレー室2にセットし、不活性ガスの保護の下、誘導器3によって修繕待ち表面を急速に加熱する。この加熱速度は、修繕待ち表面がなるべく速く適切な温度(一般的には、修繕待ち部品の金属融点の50〜95%であり、ここでは融点は1493℃である)に達するよう、誘導器の電力、形状及び動作周波数によって調節することができる。一方、その他の部位、例えばその内孔やスポークの温度は、その形状及びサイズ精度を維持するため低い温度に保たれる。誘導加熱器3は、スプレー室2に固定されていて、修繕待ち車輪1が操作システム4aによってその中に推し入れられ加熱されるのであってもよい。また、誘導加熱器3は、車輪1をノズル8下方のスプレー成形位置に留まらせ、操作システム4bの駆動により自ら動いて車輪1の修繕待ち表面を覆うことが可能な可動式であってもよい。この加熱中、ムラ無く加熱し歪を少なくするため、車輪1は操作システム4aによって適切な速さ(例えば20〜200回転/分の速さ)で回転するよう駆動される。
【0066】
修繕待ち表面が適切な温度に達したら、車輪1はスプレー成形位置へ進み、霧化した金属によってスプレーコーティングされる。この時、溶解炉又は鋳込とりべ5は、タンデッシュ6に金属液7を注入する。金属液はタンデッシュ6の底部注入孔からスプレー室2に入った後直ちに高圧(2〜15気圧)不活性ガスノズル8によって霧化されて金属液・霧状スプレー9となり、車輪1の修繕待ち面へスプレーされ、堆積して金属被覆層10を形成する。この時、各修繕待ち部位が必要な被覆厚さになるように、車輪1は、霧化金属スプレーの下で設定された速さ(例えば20〜100回転/分、30〜80ミリメートル/秒)の回転及び往復運動を行う。一つのスプレー手段の金属流速は10〜100キログラム/分(例えば50〜70キログラム/分)であり、これはタンデッシュ6底部注入孔の直径及びノズル8のサイズ等の要素によって制御される。本方法において、修繕待ち部品の形状及びサイズ特性によっては複数組のノズルを用いてスプレーコーティング工程を行ってもよい。
【0067】
上記金属のスプレーコーティング中、転圧ホイール11は高温の被覆金属に1層ごとの転圧(積層転圧)を行う。堆積直後の金属被覆層の温度は融点に近く、優れた流動変形性を有しているため、転圧ホイール11は小さな圧力(例えば1〜10トン)で金属被覆層10を押し固めることができ、その圧力は車輪1の非修繕部位の形状及びサイズ精度を損なうこともない。金属被覆層10に対する転圧ホイール11の圧力は操作センサ機構12によって制御され、該操作センサ機構12は、所定の被覆厚さに達した時にスプレーを停止できるよう金属被覆層10の厚さを検出する検出器でもある。
【0068】
端面部位へのスプレーコーティングを補助するとともに被覆を必要としない部位を保護するため、修繕待ち表面の端面には必要に応じてじゃま板13が設けられる。
【0069】
スプレー成形で用いられた不活性ガスは、排気出口14を通り集塵システムに入った後、排出又は回収される。
【0070】
上記の手順を経て被覆・積層転圧された1対の車輪は、機械的に分離され、通常用いられる機械加工及び必要な熱処理を経て再生された又は再製造された製品となる。
【0071】
得られた車輪の性能は以下の通りである。
【0072】
図2に示すような幅138ミリメートルのリム1にスプレーコーティング及び転圧を行い、金属被覆層10のサンプルを得た。最終的に、サンプル1−4及びサンプル2−4という2つのサンプルを得た。そのリム及び被覆金属はともに標準的な鉄道車輪用鋼材であり、その成分は表1に示す通りである。また、本発明の特長と比較するため、同様のリムにスプレーコーティングのみを行って転圧は行わず、サンプル1−1というもう1つのサンプルを得た。
【0073】
【表1】

【0074】
中華人民共和国鉄道部の転圧鋼車輪規格TB/T2817に基づいて、各サンプルに焼き入れ・焼き戻し熱処理を行うとともに、硬度計測並びに引っ張り強度、延伸率及び断面収縮率の測定を行った。測定時、図2に示す部位A(引っ張り強度試験棒採取位置)において引っ張り強度試験棒を切り取り引っ張り強度試験を行い、その規格の機械的性能と比較を行った。その結果を表2に示す。その結果、本発明の方法によって得られたサンプル1−4及びサンプル2−4は転圧鋼車輪規格(注:2−4の引っ張り強度が規格値より若干低いのは、熱処理の硬度が低すぎるためであり、材料自体の品質に問題があるわけではない)を満たすことができるが、スプレーコーティングをしただけの比較サンプル1−1は満たすことができなかった。図2に示すように、引っ張り強度試験棒のテスト範囲はスプレーコーティング層と下地シミュレーション部材との境界面に跨っており、これら引っ張り強度試験の結果はその境界面の最低強度を代表することにもなる。スプレーコーティング層と被覆されるリムとは確実に結合している。
【0075】
【表2】

【0076】
本発明の言及する全ての文献は、それぞれの文献が参考として単独で引用されるのと同じように、参考として本願に引用される。なお、本発明の上記内容を閲読した後、当業者は本発明に対して各種の変更又は修正を行ってよく、これらの等価である形式は、同様に本願に付帯する特許請求の範囲が限定する範囲内にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆待ち加工物(1)のスプレー成形、並びに積層転圧修繕又は製造に用いる精密スプレー成形・積層転圧修繕及び製造装置であって、前記装置が以下の機構又は機能部材を備えていることを特徴とする、即ち、
−スプレーユニット(100)、前記スプレーユニット(100)は以下のものを備えている、
−金属液溶解調製又は供給手段(5)、前記金属液溶解調製又は供給手段(5)は金属液(7)を供給する、
−前記金属液溶解調製又は供給手段(5)の下流に位置する不活性ガス霧化スプレー手段(8)、前記不活性ガス霧化スプレー手段(8)は前記金属液(7)を霧化させて前記被覆待ち加工物(1)にスプレーし金属被覆層(10)を形成する、
−積層転圧修繕及び製造ユニット(200)、前記積層転圧修繕及び製造ユニット(200)は以下のものを備えている、
−前記被覆待ち加工物(1)の周囲に位置するとともに前記被覆待ち加工物(1)の表面を予熱する加熱手段(3)、
−前記金属被覆層(10)側に位置するとともに前記金属被覆層(10)に対して積層転圧を行う積層転圧手段(11)、
−前記被覆待ち加工物(1)を収容する移動機械操作手段(4)、前記移動機械操作手段(4)は前記被覆待ち加工物(1)の位置を金属液(7)及び前記積層転圧手段(11)に対して移動させる、
−前記金属被覆層(10)が所定の厚さに達したら適時に前記金属液(7)の供給又はスプレーを停止することができるよう前記積層転圧手段(11)に接続される金属被覆層厚さ検出制御機構(12)。
【請求項2】
前記不活性ガス霧化スプレー手段(8)は、金属液ガイド管、並びに前記金属液ガイド管と近接する一つ又は複数の不活性ガスノズルを備えることを特徴とする請求項1に記載の精密スプレー成形・積層転圧修繕及び製造装置。
【請求項3】
前記積層転圧手段(11)は液圧又は空気制御式の転圧手段であることを特徴とする請求項1に記載の精密スプレー成形・積層転圧修繕及び製造装置。
【請求項4】
前記積層転圧手段(11)は一つ又は複数の転圧ホイールを備えることを特徴とする請求項1に記載の精密スプレー成形・積層転圧修繕及び製造装置。
【請求項5】
前記積層転圧手段(11)における転圧ホイールは円柱形又は曲線回転体であることを特徴とする請求項4に記載の精密スプレー成形・積層転圧修繕及び製造装置。
【請求項6】
前記転圧ホイールの周囲には内部又は外部循環冷却システムが設けられていることを特徴とする請求項4に記載の精密スプレー成形・積層転圧修繕及び製造装置。
【請求項7】
前記加熱手段(3)には誘導加熱器が採用されていることを特徴とする請求項1に記載の精密スプレー成形・積層転圧修繕及び製造装置。
【請求項8】
前記金属液溶解調製及び供給手段(5)は、溶解炉、保持炉、鋳込とりべ又はタンデッシュから選ばれることを特徴とする請求項1に記載の精密スプレー成形・積層転圧修繕及び製造装置。
【請求項9】
前記金属被覆層厚さ検出制御機構(12)は変位センサを介して積層転圧手段(11)と一体化していることを特徴とする請求項1に記載の精密スプレー成形・積層転圧修繕及び製造装置。
【請求項10】
前記被覆待ち加工物は摩滅部品又は複合構造部品から選ばれることを特徴とする請求項1に記載の精密スプレー成形・積層転圧修繕及び製造装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−516725(P2011−516725A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−502216(P2011−502216)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【国際出願番号】PCT/CN2009/071085
【国際公開番号】WO2009/121290
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(510261120)
【Fターム(参考)】