説明

精紡機のためのドラフト装置

【課題】ドラフト装置が、ボトムローラの廉価で、かつ簡単に保守のできる支承部を備えるようにすることである。
【解決手段】互いに間隔を保って同軸的に配置された1対のボトムローラ(15A,15B,15C)が、それぞれ軸(20)上に自由に回転可能に支承されており、軸(20)が、ボトムローラ(15A,15B,15C)の間に延在している中間領域(22)で、ドラフト装置(4)の支持体(18)に設けられた対応している受容部(19)内に容易に固定可能、かつ支持体から再び取外し可能に構成されているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、精紡機のためのドラフト装置であって、複数のローラ対が形成されており、該ローラ対がそれぞれ、駆動可能なボトムローラと、該ボトムローラと対応して自由に回転可能に支承されたトップローラとを有していて、前記ドラフト装置が、2つのドラフト装置作業部を有している形式のものに関する。
【背景技術】
【0002】
ドイツ連邦共和国特許公開第3932614号明細書に基づき、2つのドラフト装置作業部を有するこのような形式のドラフト装置が公知である。この空気精紡機のためのドラフト装置には複数のローラ対が形成されている。これらのローラ対はそれぞれ、個別のモータによって駆動可能なボトムローラと、自由に支承されたトップローラとを有している。ドイツ連邦共和国特許公開第3932614号明細書に基づき、これらのボトムローラはドラフト装置の支持体に配置されていることが明らかであるが、これらのボトムローラがどのように支持体に支承されているかは説明されていない。しかしドラフト装置の製造コストを削減するために、ボトムローラの安定した信頼性の良い支承と、作業者(オペレータ)が容易に到達することができ、かつ容易に交換可能な配置という目的の、保守の簡単な支承とを兼ね備えさせるという点から、ボトムローラの支承部に特別な要求が課されている。
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許公開第3932614号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、冒頭で述べた形式のドラフト装置をさらに改良して、ドラフト装置が、ボトムローラの廉価で、かつ簡単に保守のできる支承部を備えるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決するために本発明の構成では、互いに間隔を保って同軸的に配置された1対のボトムローラが、それぞれ軸上に自由に回転可能に支承されており、かつ前記軸が、前記ボトムローラの間に延在している中間領域で、ドラフト装置の支持体に設けられた対応している受容部内に容易に固定可能、かつ支持体から再び取外し可能に構成されているようにした。
【発明の効果】
【0005】
本発明による別の有利な実施形態は従属項に記載されている。
【0006】
請求項1では、互いに距離を保って同軸的に配置された1対のボトムローラが、それぞれ軸上に自由に回転可能に支承されており、前記軸が、ボトムローラの間に延在している中間領域で、ドラフト装置の支持体に設けられた対応する受容部内に容易に固定可能、かつ受容部から取外し可能に構成されていることが提案される。本発明による支承、つまり1対のボトムローラを軸上に自由に回転可能に支承することで、規格化された中心軸(Lagerachsen)の使用が可能になった。このような規格化された中心軸は、従来からリング精紡機のドラフト装置のトップローラに用いられている。規格化された中心軸は、比較的単純な構造的な構成と、製造における自動化度と、自動化による高い製造量とから、精紡機のためのドラフト装置のボトムローラの支承用に特別に形成されている旧来の軸と比較して、明らかに廉価である。さらには、この軸の支持体の受容部内への配置によって、所要の保守や修理の際に、ボトムローラのより簡単な交換が達成される。さらに従来からリング精紡機に用いられてきたような機械の全長(maschinenlange)にわたるボトムローラと比較して、下部エプロンおよびボトムローラの交換が簡略化され、かつ廉価になる。というのは、機械の全長にわたるボトムローラを有するリング精紡機において必要とされるような、機械側面の完全な遮断を必要とせずに、下部エプロンおよびボトムローラの交換が実施可能だからである。
【0007】
ボトムローラはそれぞれ、個別のモータで動く駆動装置の駆動シャフトに連結されると有利である。個別のモータで動く駆動装置によって、ドラフト装置に設けられた2つのドラフト装置作業部を、異なるドラフト比で独立させて制御することが可能である。このような制御は、加工のために取り込まれた非加工材料によって必要とされる場合や、種々異なる繊維で糸を製造する場合に用いられる。
【0008】
本発明の有利な別の実施形態では、ボトムローラは駆動シャフトの受容のための連結付設部を有してよい。この連結付設部は、交換のためのボトムローラの駆動装置からの容易な取り外しを可能にする。本発明によるドラフト装置では、軸および軸上に配置された中央ローラが簡単に取り外せることで、中央ローラに設けられたエプロンを交換するための労力も同じように低減される。さらにボトムローラの中心軸の構造は、ボトムローラ対と中心軸から成る完成されたボトムローラユニットを、支持体の受容部に嵌め込むための、ボトムローラの前組立を可能にしている。全体的には組立の労力が低減され、この場合、保守作業が、作業者(オペレータ)に扱いやすくなり、素早く実行可能である。
【0009】
特に、ボトムローラの、個別のモータで動く駆動装置は支持体に固定されてもよい。択一的には、個別のモータで動く駆動装置の回動を防止するために、精紡機の台座に固定装置を設ける、またはひとつのドラフト装置作業部にある駆動装置を互いに結合させる枠を設けてもよい。
【0010】
択一的な構成では、ボトムローラはそれぞれベルト車を備えても良く、ボトムローラはベルト車を介して、互いに独立させて駆動可能である。
【0011】
支持体が、軸の中央領域に調節された、軸の収容のための緊締装置を備えると有利である。この緊締装置は、ボトムローラユニットの固定に役立つと同時に、ドラフト装置の稼働中にトップローラが負荷支持体によってボトムローラに押圧されているときに、トップローラからボトムローラ上にかけられた荷重を受容することにも役立つ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を図面につき詳しく説明する。
【0013】
以下に、本発明によるドラフト装置を空気精紡機1に基づいて説明するが、このドラフト装置はリング精紡機に設置することも可能である。
【0014】
図1に図示されている空気精紡機1は、多数の、列置された巻返し部2を有している。各巻返し部は、ドラフト装置4にスライバを供給する繰出しパッケージ3として形成されたスライバ源と、精紡機5と、引出しローラ対6と、糸クリアラ7と、糸敷設装置8と、綾巻きパッケージ9として形成された巻取パッケージとを有している。操作キャリッジ10は巻き返し部2に沿って、レール11,12上で案内されて走行可能である。空気精紡機の一方の端部には駆動ユニット13が配置されている。
【0015】
図2は、2つのドラフト装置作業部14を有する、ドラフト装置4の一部破断した概略図である。
【0016】
ドラフト装置4は、1つの支持体18を有している。支持体18には、ドラフト装置作業部14ごとに複数のローラ対が配置されている。これらのローラ対は駆動可能なボトムローラ15A,15B,15Cと、これらのボトムローラに対応する、自由に回転可能に支承されたトップローラとを有している。ボトムローラ15A,15B,15Cはそれぞれ、個別のモータで動く駆動装置16によって駆動される。トップローラは、負荷アームによって対応しているボトムローラ15A,15B,15Cに押し当てられて、ボトムローラ15A,15B,15Cにより摩擦によって駆動される。
【0017】
ボトムローラ15A,15B,15Cの駆動のためには、ボトムローラ15A,15B,15Cは、連結付設部17を介して個別のモータで動く駆動装置16に接続している。択一的には、ボトムローラ15A,15B,15Cはベルト車を備えてもよく、この場合、ボトムローラ15A,15B,15Cはベルト車を介して互いに独立して駆動可能である。
【0018】
図3には、ボトムローラユニットの概略的な部分断面図が示されている。ボトムローラユニットは、互いに間隔を保って、同軸的に配置された1対のボトムローラ15Aを有している。これらのボトムローラ15Aはそれぞれ軸20に、自由に回転可能に支承されている。軸20は中央領域22を有しており、この中央領域22は、ボトムローラ15Aを受容するための縁領域21の直径と比較して低減された直径を有している。軸20の中央領域22は、ボトムローラユニットがドラフト装置4の支持体18に設けられた受容部19内に容易に固定可能、かつ支持体18から再び容易に取外し可能に構成されている。受容部19は、支承しようとする軸20の長手方向軸線と同軸的に支持体18に配置されていて、ボトムローラユニットを、その取付け位置で形状接続(形状による束縛)的に取り囲んでいる。軸20は受容部19内に緊締されて固定されるので、軸20は容易に固定可能、かつ支持体18から再び容易に取外し可能である。
【0019】
ボトムローラ15Aの自由に回転可能な支承は、ころがり軸受、特に針状ころ軸受によって達成される。なぜならば、これらの軸受は、外径が小さい点ですぐれているからである。
【0020】
個別のモータで動く駆動装置との接続は、図2に図示したような連結付設部を介して、またはボトムローラ15Aに設けられた孔によって行われる。この場合、ボトムローラ15Aがこの孔によって、それぞれの駆動装置16の駆動シャフト上に固定される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】空気精紡機を示す概略図である。
【図2】ボトムローラのみを図示した、ドラフト装置の一部破断した概略図である。
【図3】ボトムローラユニットを示した概略的な部分断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 空気精紡機
2 巻返し部
3 繰出しパッケージ
4 ドラフト装置
5 精紡機
6 引出しローラ
7 糸クリアラ
8 糸敷設装置
9 綾巻きパッケージ
10 操作キャリッジ
11 レール
12 レール
13 駆動ユニット
14 ドラフト装置作業部
15A ボトムローラ
15B ボトムローラ
15C ボトムローラ
16 駆動装置
17 連結付設部
18 支持体
19 受容部
20 軸
21 縁領域
22 中央領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
精紡機(1)のためのドラフト装置(4)であって、複数のローラ対が形成されており、該ローラ対がそれぞれ、駆動可能なボトムローラ(15A,15B,15C)と、該ボトムローラと対応して自由に回転可能に支承されたトップローラとを有していて、ドラフト装置(4)が、2つのドラフト装置作業部(14)を有している形式のものにおいて、互いに間隔を保って同軸的に配置された1対のボトムローラ(15A,15B,15C)が、それぞれ軸(20)上に自由に回転可能に支承されており、軸(20)が、ボトムローラ(15A,15B,15C)の間に延在している中間領域(22)で、ドラフト装置(4)の支持体(18)に設けられた対応している受容部(19)内に容易に固定可能、かつ支持体から再び取外し可能に構成されていることを特徴とする、精紡機のためのドラフト装置。
【請求項2】
ボトムローラ(15A,15B,15C)が、個別のローラで動く駆動装置(16)の駆動シャフトにそれぞれ連結されていることを特徴とする、請求項1記載のドラフト装置。
【請求項3】
ボトムローラ(15A,15B,15C)が、駆動シャフトを受容するために連結付設部(17)を有していることを特徴とする、請求項2記載のドラフト装置。
【請求項4】
ボトムローラ(15A,15B,15C)の、個別のモータで動く駆動装置(16)が、支持体(18)に固定されていることを特徴とする請求項2または3記載のドラフト装置。
【請求項5】
ボトムローラ(15A,15B,15C)が、それぞれベルト車を有していて、該ベルト車を介してボトムローラ(15A,15B,15C)が、互いに独立して駆動可能であることを特徴とする請求項1記載のドラフト装置。
【請求項6】
支持体18が、軸(20)に設けられた中間領域(22)に調節された、軸(20)を受容するための緊締装置を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のドラフト装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−285805(P2008−285805A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130698(P2008−130698)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【出願人】(307031976)エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (105)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH&CO.KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D−42897 Remscheid, Germany
【Fターム(参考)】