説明

精製メタロチオネイン(MT)を備えた膜を用いて、汚染サンプルから重金属を除去するための組成物と方法

それらから金属を除去することを必要とする基質から金属を除去するための、例えば、金属結合メタロチオネインタンパク質が結合した固体担体のようなデバイスを開示する。特に、液体基質から金属を除去するための、ブライン・シュリンプ(Artemia)からのメタロチオネインタンパク質を有する膜を開示する。メタロチオネインタンパク質を用いる、基質から金属を除去するための関連方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汚染されたサンプルから重金属を除去するための組成物と方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、メタロチオネインが結合した固体担体を用いて、汚染サンプルから重金属を除去することに関する。
【背景技術】
【0002】
金属回収と金属汚染除去及びこれに関連した、金属廃物クリーンアップの効果的で、安全な方法の必要性は、金属汚染物質によって惹起される、ヒトの健康に対する有害性及び可能な危険性のために、継続する環境的及び経済的問題である。実際に、農業、工業及びその他の営利的活動からの有害な廃物の放出が続く限り、効果的で、安全かつ低コストの金属汚染除去方法の必要性は増大する。United States Environmental Protection Agency (US EPA)による最近のレポートでは、金属汚染は、多くの汚染された場所において依然として留まっており、歴史的にも重要な問題になっている((US EPA Work Assignment #011059, Mar. 5, 1997, Contract #68-W5-0055)。さらに、汚染された土壌又は廃棄物質からの金属中毒の結果としてのヒト健康に対する危険性と同様に、野生生物、家畜、植物の障害についての、非常に多くの刊行されたレポートが存在する(Impact of Lead-Contaminated Soil on Public Health by Xintaras, C. May 1992 at http://www.atsdr.cdc.gov/cxlead.html)。例えば、ヒトに対する第1の問題は、鉛(Pb)汚染によって生じる健康被害である。鉛への暴露は、多様な方法によって、例えば、食物、水、土壌からの鉛の摂取によって又はダストの吸入によってさえも生じうる。鉛中毒は、極めて危険であり、致命的でさえある可能性があり、発作、知恵遅れ及び行動障害を含めた症状を伴 う。それ故、金属汚染除去方法は、我々の環境の金属汚染保護のため並びに疾患からの保護のための両方に極めて有益である。
【0003】
種々な廃物、廃棄又はリサイクル努力から回収された金属は、計り知れない経済的価値並びに環境汚染防止の増強をもたらす。金属回収は、例えば、廃棄電子デバイス(トランジスター、チップ、トランスフォーマー、バス・バー、カソード、及びマイクロプロセッサー、過密なコンピューター回路基板PCBs、マザーボード)のような、無数の、多様な供給源から行われうる。金属再生利用をしない場合の産業廃物の危険な廃棄に関連した費用は莫大である。それ故、金属リサイクル又はスクラップ若しくは廃棄された金属含有アイテムから抽出された金属の再使用は、特別な廃棄及び処理努力を必要とする金属廃物の量と費用を減ずるのみでなく、再生金属を再び売る又は再使用して、付加的な経済的価値を得ることもできる。
【0004】
金属汚染を処理することにおける先行技術の試みは、伝統的に、主として、汚染された物体を物理的に除去して、廃棄することから成るクリーンアップ技術を用いている。これらの方法論は、労働集約的かつ低効率であるのみでなく、多量若しくは大量の汚染廃物の除去及び廃棄に関連した高い出費を伴う。金属は、例えば化学又は有機物体のような、他の種類の廃物とは異なって、直接破壊又は転化することができないので、金属汚染は除去することが特に困難である。例えば、金属汚染された土壌を改良するための現在の技術は、主として、金属汚染物質の物理的若しくは化学的分離を伴う、埋め立て又は土壌掘削から成る。汚染された地下水の処理は、通常、汚染金属を除去するためのフラッシング、濾過又は化学的抽出を包含する。その結果、土壌又は地下水の汚染除去の費用は、高くなり、場所当たりの予測5年間費用で数億ドルから数十億ドルの範囲である(U.S.EPA,1993)。
【0005】
さらに、重金属汚染からのヒト及び環境に対する危険は、土壌又は地下水に限定される訳ではなく、例えば産業廃物、スラッジ廃物、汚水、放射性廃物(例えば、リサーチからの放射性核種及び医療廃物)及び鉱業廃物のような、他の発生源を包含する。除去すべき金属汚染物質の物理的及び化学的形態並びに特定の汚染除去アプローチに関する費用・便益分析に依存して、既存技術のいずれが特定の場所のためにより良好に適するかが、変化するであろう。しかし、伝統的なクリーンアップ技術の高い費用のために、費用のかからない、安全で、効果的な重金属回収及びクリーンアップ技術の大きな必要性がまだ依然として存在する。
【0006】
重金属汚染された廃物の回収又は汚染除去のために現在利用可能な、幾つかの技術が存在する。一般に、これらの技術は、次の一般的なアプローチ:廃棄物からの金属汚染の、単離、固定、毒性低減、物理的分離又は抽出の1つ以上を併用する。単離技術は、有害な金属廃物のさらなる拡散を防止するために、汚染された場所又は領域を限定しようと試みる封じ込め方策を用いる。固定技術は、金属汚染物質の移動度を低下させる技術であり、表土層から下方の土壌層(金属汚染物質を含有する)を分離するために不透過性バリヤーを与える系を包含する。汚染されていない地下水が汚染された場所を通って流動するのを阻止する物理的バリヤーも用いられる。さらに、金属汚染物質の毒性又は移動度を低減するために化学的又は物理的手法を一般に用いる毒性低減方法が存在する。毒性低減方法には、新しいバイオテクニカル・アプローチを適用する生物学的処理技術が含まれる。
【0007】
金属汚染除去は、生物学的処理技術の比較的新しい適用であり、例えば、生体内蓄積、ファイトレメディエーション、植物による吸収(phytoextraction)及び 根圏による濾過(rhizofiltration)のようなプロセスを包含する。これらの生物学的処理の全ては、ある一定の植物と微生物を用いて、汚染金属イオンの吸着、吸収又は濃縮のいずれかによって金属汚染を除去する。例えば、生体内蓄積では、植物及び微生物は、汚染された環境から活発に金属を吸収して、蓄積する。
【0008】
ファイトレメディエーションでは、土壌から金属イオンを選択的に取り出す能力を発達させている特定の植物を用いる。このような植物は、中毒症状を示す前に、大抵の植物よりも260倍大きいレベルで金属を蓄積することができる、例えば高山グンバイナズナのような、ある一定の「高蓄積体」種を包含する。しかし、大抵の高蓄積体植物は、非常に緩慢に成長し、特異的な成長必要条件を有する。これらの成長必要条件の幾つかは、金属回収又は金属汚染除去が必要である場所又は状況においてこれらの植物を用いることに適さない。さらに、回収又は汚染除去用途のために知られた若しくは利用可能な植物種は、殆ど存在しない。それ故、環境の廃棄場における金属汚染の持続的な、高い発生率(スーパーファンド法指定汚染浄化サイトの約75%が汚染の形態として金属イオンを含有する、U.S.EPA,1996)を考えると、汚染された発生源から重金属を回収するためのより効果的な方法及びアプローチがまだ必要である。
【0009】
さらに最近では、これらの必要性を満たそうと試みて、金属回収及び汚染除去の代替え方策としてバイオテクノロジー的アプローチが用いられている。これらのバイオテクノロジー的アプローチには、メタロチオネイン遺伝子を発現するように遺伝子操作されているタバコ植物の使用が包含される(Maiti et al. Seed-transmissible expression of mammalian metallothionein in transgenic tobacco, Biochem Biophys Res Commun. 150(2):640-7,1988)。メタルチオネイあン(MTs)は、動物界全体に遍在的に分布している、小型の金属結合タンパク質である。これらは、高い金属結合アフィニティを有しており、遊離金属イオンの細胞内レベルの制御に重要であると考えられる。しかし、これらの機能又は生物学的目的については、他には殆ど知られていない。メタルチオネインは、1957年にウマの組織中で最初に発見された。そのとき以来、メタルチオネインは、真菌類及び貝類からマウス及びヒトに至るまでの範囲の種において同定されている。
【0010】
MTsの構造的な特徴としては、高度なシステイン組成と、芳香族アミノ酸の欠損が挙げられる。該システイン残基は、該タンパク質の高アフィニティ金属イオン結合容量の原因である。一般に、MTsは高度なアミノ酸配列類似性を有する。しかし、該タンパク質又は該タンパク質をコードする既知遺伝子配列は、主として、研究セッティング又は疾患治療方法論に用いられている。
【発明の開示】
【0011】
したがって、本発明の目的の1つは、多様な基質から金属を除去するための新規な金属結合タンパク質を提供することである。この技術は、環境廃物又は重金属で汚染された他の物質から重金属の、効果的で、費用のかからない、安全かつ簡単な除去を可能にすると考えられる。
【0012】
発明の要旨
メタルチオネイン(MT)タンパク質は、一般に、約60〜68アミノ酸残基のサイズであり、様々な種のなかで高度に配列保存されている。これとは対照的に、ブライン・シュリンプ(brine shrimp)(Artemia)からのMTsは、非常に小さいサイズ(約48アミノ酸残基)であり、極めて独特なアミノ酸及びDNA配列を有する。本発明の金属結合タンパク質は、高容量かつ高アフィニティの金属結合を可能にする。このことが、該タンパク質を、汚染防止、金属リサイクリング、金属マイニング(metal mining)並びにその他の金属回収及び金属汚染除去技術に用いるために特に適したものにする。
【0013】
これらの及び他の目的は、多様な発生源からの重金属を、固体担体上に固定された少なくとも1種類の金属結合タンパク質から成る再生型金属結合担体を用いて効果的にかつ確実に封じ込めることを可能にする、本発明の組成物及び方法によって達成される。該金属結合タンパク質は、1種類以上の重金属の結合が望ましい場合に、例えば金属レメディエーション、金属リサイクリング、金属マイニング又は他の種類のプロセスのような目的のために容易に発現され、産生されることができる。
【0014】
本発明の教示によると、少なくとも1種類の実質的に精製された金属結合 タンパク質が得られる。本発明の1実施態様では、該金属結合タンパク質は、ブライン・シュリンプ(Artemia)からのものであり、配列番号NO.2又は配列番号NO.4のアミノ酸配列を有する。
配列番号NO.2:
【0015】
【化1】

【0016】
配列番号NO.4:
【0017】
【化2】

【0018】
本発明の他の実施態様では、金属結合タンパク質配列は、配列番号NO.2又は配列番号NO.4の1つ以上の保存アミノ酸置換を含む。金属回収及び金属レメディエーションに関連して金属結合タンパク質を考察する場合に、該タンパク質が、重金属又は重金属錯体の除去、回収又は単純な結合が望ましい、多くの他の用途に容易に適用可能であることに注目すべきである。
【0019】
さらに、本発明の教示によると、該新規な金属結合タンパク質は、そのままの組成物として用いることができる、又は本明細書に開示したような、金属回収、金属レメディエーション若しくは金属結合プロセスにおける金属結合タンパク質の分散、取り扱い、パッケージング若しくは機能のいずれかを助成するための担体若しくは他のデリバリー系に結合した状態で提供することができる。それ故、本発明の金属結合タンパク質のいずれも、例えば膜フィルターのような担体に結合して、再生型金属結合担体を形成することができ、該再生型金属結合担体を介して金属含有流体と接触する。
【0020】
本発明は、金属回収、金属レメディエーション若しくは金属リサイクリング・プロセス又は方法に用いるために特に良好に適する。これらの方法は、ブライン・シュリンプ(Artemia)からの少なくとも1種類の金属結合タンパク質配列と類似したアミノ酸配列を有する本発明の金属結合タンパク質を、ある濃度の少なくとも1種類の重金属を含有する基質若しくは物質と接触させて、該重金属を該金属結合タンパク質に結合させ;その後に、該結合金属を該基質若しくは物質から分離することを包含する。
【0021】
例えば、本明細書に開示した、金属結合タンパク質と、それを含むデバイスは、例えば重金属のような、少なくとも1種類の金属のある濃度を有する任意の基質の処理に関連して有用である。当業者によって正しく理解されるであろうように、このような重金属含有基質は、例えば、地下水、飲用水、汚染された土壌等のような、ある濃度の金属を含有する、任意の環境的又は産業的物質でありうる。同様に、本発明の方法は、除去するのが望ましい金属を含有する、産業的又は局地的廃物の処理に等しく有用である。この広範囲な有用性は、本発明の組成物と、それに関連した方法を非常に多様な状況に特に有益にしている。
【0022】
本発明の金属結合タンパク質は、多様な状態における重金属に対する高い結合アフィニティを保有し、このことが該金属結合タンパク質を、基質又は任意の、金属含有する若しくは金属汚染された発生源からの重金属の除去又は回収が望ましい状況に特に有用なものにしている。本発明の金属結合タンパク質とそれに関連した方法は、非常に多様な基質からの重金属の効果的で、費用効果的かつ安全な除去及び回収を可能にする。
【0023】
本発明のデバイスの1実施態様では、基質から重金属を除去するためのデバイスは、結合しているポリマー膜と、哺乳動物、魚類、軟体動物、棘皮動物、甲殻類、爬虫類、線虫類、穀類及び酵母から成る群から選択される生物からの、少なくとも1種類の実質的に精製されたメタルチオネイン(MT)タンパク質若しくはその一部を含む再生型金属結合担体を含み、該再生型金属結合担体は該重金属を結合することによって、該重金属を該基質から除去し;そして、該再生型金属結合担体への重金属の該結合は可逆的であり;該再生型金属結合担体は再使用可能である。
【0024】
本発明のデバイスの別の実施態様では、該哺乳動物はヒト、サル又はウサギであり;該魚類はナマズであり;該軟体動物はイガイであり;該棘皮動物はウニであり;該爬虫類はカエルであり;該穀類は米又は小麦であり;該甲殻類はブライン・シュリンプ(Artemia)である。
【0025】
本発明のデバイスの他の実施態様では、MTタンパク質は、配列番号NO.2、配列番号NO.4、配列番号NO.11、配列番号NO.12、配列番号NO.13、配列番号NO.14、配列番号NO.15、配列番号NO.16、配列番号NO.17、配列番号NO.18、配列番号NO.19、配列番号NO.20、配列番号NO.21、配列番号NO.21及び配列番号NO.23から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0026】
本発明のデバイスのさらに他の実施態様では、該ポリマー膜はナイロンである。
本発明のデバイスのさらに他の実施態様では、該基質は液体である。
本発明のデバイスの他の実施態様では、該重金属は重金属錯体である。
【0027】
本発明の方法の1実施態様では、基質から金属を除去する方法であって、重金属をその中に有する基質を、結合したポリマー膜と、哺乳動物、魚類、軟体動物、棘皮動物、甲殻類、爬虫類、線虫類、穀類及び酵母から成る群から選択される生物からの、少なくとも1種類の実質的に精製されたメタルチオネイン(MT)タンパク質又はその一部とを含む再生型金属結合担体と接触させ;該重金属を該再生型金属結合担体に結合させることによって、重金属含有量の少ない基質を製造することを含む方法を提供する。
【0028】
本発明の方法の他の実施態様では、該ポリマー膜はナイロンである。
本発明の方法のさらに他の実施態様では、該重金属は重金属錯体である。
本発明の方法のさらに他の実施態様では、該基質は液体である。
【0029】
本発明の方法の他の実施態様では、該方法はさらに、該再生型金属結合担体から結合した重金属を放出させて、該再生型金属結合担体の金属結合容量を再生することを含む。
発明の詳細な説明
例えば、ヒト、マウス、細菌種、カニ、魚、酵母及びニワトリのような、多様な種から単離されたものである、例えばメタルチオネイン(MTs)のような、金属結合タンパク質は、例えば、類似したサイズ(約6.0〜6.8kDa)、高度なアミノ酸配列保存、及び該タンパク質の総アミノ酸組成中の高い割合のシステイン残基のような、非常に類似した構造的特徴を有することが知られている。非限定的に、ヒ素、亜鉛、銅、カドミウム、水銀、コバルト、鉛、ニッケル、クロム、ウラニウム、白金、銀及び金を包含する重金属に対する、該タンパク質の結合アフィニティをもたらすのは、これらのMTsのシステイン組成である。特に指定しない限り、タンパク質なる用語は、タンパク質、ポリペプチド及びペプチドを意味する。本発明の金属結合タンパク質はさらに、重金属がタンパク質又は他の分子に結合している重金属錯体にも結合する。
【0030】
例えば、本明細書に開示する、金属結合タンパク質と、それらを含み、再生型金属結合担体と呼ばれるデバイスは、例えば重金属のような、少なくとも1種類の金属のある濃度を有する、任意の基質の処理に関連して有用である。当業者によって理解されるように、このような重金属含有基質は、例えば地下水、飲用水、汚染された土壌、廃物等のような、任意の環境的又は産業的物質でありうる。同様に、本発明の方法は、除去することが望ましい金属を含有する、産業的又は局地的物質の処理に等しく有用である。この広範囲な有用性は、本発明の組成物と、それに関連した方法を非常に多様な状況に特に有益にしている。
【0031】
本発明の金属結合タンパク質と再生型金属結合担体は、金属含有基質からの金属の回収、特に貴金属の回収に有用である。例えば、本発明の金属結合タンパク質は、例えば金、白金及び銀のような貴金属を単離する及び取り出すための金属マイニング・プロセスに用いることができる。このようにすることは、鉱石からの金属精製の最終段階に例えばシアン化物のような、他の有害物質を用いる必要性を排除する。これらの同じ新規方法を、産業的又は局地的廃物からこのような金属を回収するために用いることができる。使い捨て式及びその他の電子デバイスの増え続ける使用に伴って、このような廃物発生源はますます該金属で満ちており、回収を価値ある試みにしている。
【0032】
本発明の金属結合タンパク質は、金属回収、金属マイニング、金属リサイクリング、金属レメディエーション、汚染防止又は、金属封じ込めを含めた任意のプロセスに用いるために、天然発生源から容易に単離することができるか、又は本明細書に開示するように合成的に製造することができる。それ故、本発明の金属結合タンパク質及びそれに関連した方法は、金属結合特徴を有する、任意のプロセスに用いるための、多様な、容易に生産される、効果的で、確実な資源を提供する。
【0033】
本発明の1実施態様では、金属結合タンパク質をブライン・シュリンプ(Artemia)から単離した。ArtemiaMTは、「異性体」と呼ばれる、金属結合タンパク質のファミリーである。これらのたんぱく質の特有のアミノ酸組成の分析は、各アイソフォームが本質的に同等であることを示した。本発明の教示によると、少なくとも5個の個別のArtemiaMTが同定されている。高度な配列相同性若しくは類似性を共有する、他の生物からのMTsとは異なり、Artemia金属結合タンパク質は、意外にも異なる構造特徴を有するが、相互に高度な配列相同性を有する。
【0034】
Artemia金属結合タンパク質をコードする核酸配列を得るために、下記手法を用いた。最初に、ブライン・シュリンプ(Artemia)からの金属結合タンパク質を単離して、精製した。該単離金属結合タンパク質に対してN−末端アミノ酸配列分析を行った。アミノ酸配列分析は、ウサギ及びヒトMTsと比較した時に、Artemia金属結合タンパク質の最初の6システイン残基の金属結合モチーフが保存されることを示し、このことは、該タンパク質の金属結合機能におけるこれらのアミノ酸残基の重要性を実証した(Hamer DH, Metallothionein. Ann. Rev. Biochem. 55:813-51, 1986)。システイン富化金属結合モチーフの保存は、非常に多様な分岐種(divergent species)中に見られる(図8)。
【0035】
このN−末端アミノ酸配列情報を用いて、N−末端アミノ酸配列に対応するオリゴヌクレオチド・プライマーを、当該技術分野で知られているように構築した。これらのオリゴヌクレオチド・プライマーを用いて、ブライン・シュリンプ(Artemia)からの少なくとも1つの標的金属結合タンパク質をコードするMT遺伝子配列の可能な候補をポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって増幅した。該PCR生成物をQiaPrepスピン・カラム(Qiagen.Inc.)を用いて精製し、製造者のプロトコールを用いて、TAクローニング・ベクターCR2.1(Invitrogen)にクローン化した。エレクトロコンピテント大腸菌(Escherichia coli)(InvitrogenからのSure Shot細胞)を組み換えベクターによって形質転換して、アンピシリン(100μg/ml)と1%グルコースを含有するLB寒天プレート上に塗布した。該プレートを37℃において一晩放置した。個々のコロニーを採取し、これを用いて、アンピシリン(100μg/ml)と1%グルコースを補充したLBブロス5mlをインキュベートした。該培養物を回転インキュベーターで37℃において一晩インキュベートした。該細胞懸濁液からQiaPrepスピン・カラム(Qiagen.Inc.)を用いて、製造者のプロトコール(Qiagen)に従って、プラスミドを単離した。次に、このプラスミドをLi Cor 4200上で、M13ユニバーサル・フォーワード・プライマー及びリバース・プライマーを用いて配列決定した。金属結合タンパク質をコードする配列であると実証され、決定されたならば、ブライン・シュリンプMT遺伝子を細菌発現ベクターpTMZにサブクローン化した。同定されたMTコーディング配列に基づいて、本発明の最初の新規な金属結合タンパク質のアミノ酸配列を決定した。
【0036】
図1は、本発明の典型的な金属結合タンパク質を用いた、典型的な溶離プロフィルを詳述する。pTMZ中に配列番号NO.1のMT遺伝子配列を含有するプラスミド発現ベクターによって、大腸菌(菌株ER2566)を形質転換した。細菌を1%グルコース含有LBブロス中で、37℃において0.60のA600まで増殖させた。細菌細胞を回収して、0.1%グルコース含有LBブロス中に再懸濁させ、同温度において45分間インキュベートした。イソプロピル b−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)を0.1mMの最終濃度まで加えた。該細菌細胞を約16時間インキュベートした。対照として、非形質転換細菌を用いた。該細胞を遠心分離によって回収して、10mM Tris,pH8.0、5mMジチオスレイトール(DTT)及び0.5mMフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)中で音波処理した。該ホモジネートを150,000xgで、4℃において1時間遠心分離した。上清を回収して、2μCiの109Cdと共に室温においてインキュベートした。次に、放射能標識した上清をG−50分子排除カラムに加えて、50mM Tris,pH8.0で溶離した。5ml画分を回収して、放射能(CPM)と亜鉛(Zn)に関して分析する、亜鉛は、該形質転換細菌によって発現される外因性金属結合タンパク質に結合する内因性金属である。カラムから溶離する各画分をICPM(誘導結合プラズマ質量分析装置)によってZnに関して分析した。非限定的に配列番号NO.3を含めた、機能的金属結合タンパク質をコードする、他のヌクレオチド配列も、本発明の教示によって提供され、開示されるように、用いることが可能である。
【0037】
それ故、本発明は、固体担体上に固定された金属結合タンパク質に金属を可逆的に結合させることによる、金属含有基質からの金属の除去に用いるための実質的に精製された金属結合タンパク質を提供する。本明細書で用いる限り、「実質的に精製された」なる用語は、天然の環境から取り出され、単離又は分離され、それらが天然に結合している他の成分から少なくとも60%純粋から、好ましくは75%純粋から、90%以上まで純粋である核酸、アミノ酸又はタンパク質を意味する。
【0038】
本発明の教示による、実質的に精製された金属結合タンパク質は、配列番号NO.2:
【0039】
【化3】

【0040】
に類似したアミノ酸配列を有する。
該タンパク質の金属結合アフィニティを保存する、上記配列番号NO.2の配列の変形である、実質的に精製された金属結合タンパク質も本発明の範囲内である。特に、本発明の範囲内の保存アミノ酸置換は、下記:(1)ロイシン若しくはバリンに代わるイソロイシンの任意の置換、イソロイシンに代わるロイシンの任意の置換、及びロイシン若しくはイソロイシンに代わるバリンの任意の置換;(2)グルタミン酸に代わるアスパラギン酸の任意の置換及びアスパラギン酸に代わるグルタミン酸の任意の置換;(3)アスパラギンに代わるグルタミンの任意の置換及びグルタミンに代わるアスパラギンの任意の置換;並びに(4)トレオニンに代わるセリンの任意の置換及びセリンに代わるトレオニンの任意の置換;のいずれかを包含することができる。
【0041】
本明細書で用いる限り、「保存アミノ酸置換」とは、同様な構造的又は化学的性質を有するアミノ酸を置換することによるアミノ酸配列の変化を意味する。当業者は、本発明のタンパク質の金属結合特性に関係なく(without the metal binding properties of the proteins of the present invention)、いずれのアミノ酸残基を置換、挿入又は変更することができるかを決定することができる。
【0042】
特定のアミノ酸の環境に依存して、他の置換も保存的と見なすこともできる。例えば、グリシンとアラニンは、アラニンとバリンが互換性であることができるように、互換性であることができる。比較的疎水性であるメチオニンは、しばしば、ロイシン及びイソロイシンと相互交換することができ、時にはバリンと相互交換することができる。リシンとアルギニンは、該アミノ酸残基の有意な特徴がその電荷と、これらの2つのアミノ酸残基の異なるpKsである位置において、これらの異なるサイズが重要でない場合に、互換性である。さらに他の変化も、当該技術分野で知られているような、特定の環境において「保存的」と見なすことができる。
【0043】
例えば、タンパク質の表面上のアミノ酸が、例えば該タンパク質によって結合した別のタンパク質サブユニット又はリガンドのような、他の分子との水素結合又は塩架橋相互作用に関与しない場合には、例えばグルタミン酸又はアスパラギン酸のような負荷電アミノ酸を例えばリシン又はアルギニンのような正荷電アミノ酸によって置換することができる、そしてこの逆の場合も同じである。アルギニン又はリシンよりも弱塩基性であり、中性pHにおいて部分的に荷電しているヒスチジンも、時には、これらの強塩基性アミノ酸に代わって置換することができる。さらに、アミドであるグルタミンとアスパラギンは、時には、それらのカルボン酸同族体、グルタミン酸とアスパラギン酸に代わって置換することができる。
【0044】
本発明のArtemia金属結合タンパク質と、それらに関連した製造及び使用方法は、複数の異性体形を有する金属結合タンパク質のファミリーである。その結果、本発明は、重金属の除去又は回収に用いるために適したArtemia金属結合タンパク質の少なくとも5個の異性体形を包含する。異性体は、同じ化学組成を有するが、構造形において異なる2つ以上の化合物の1つである。本発明の「異性体」とは、それらを金属結合タンパク質として分類する、必要な構造的特徴を有する。これらの特徴には、それらの金属結合容量を与える、それらの高いシステイン含量が包含される。異性体は2つ以上のアミノ酸残基によって異なり、このことが個々の異性体の異なるpIを生じる。このpIの違いが、アイソフォームの容易な分離と特徴付けを可能にする。それ故、本発明の金属結合タンパク質は、効果的にかつ容易に、発現され、産生されることができる。
【0045】
これらの金属結合タンパク質は、それらの金属結合特性の他に、さらに、非常に多様な金属回収及び金属レメディエーション・セッティングにそれらを特に有用にする特徴を示す。例えば、これらの金属結合タンパク質は、例えば中程度の温度から高温までの条件下のような、ある範囲の条件下で重金属を結合することが可能である。該金属結合タンパク質は、室温において重金属を結合することが可能であり、それ故、多くの用途に特に理想的である。該金属結合タンパク質は、例えば、約4℃〜約100℃の温度範囲のような、広い温度範囲内で重金属を結合することが可能である。当業者は、該金属結合タンパク質を用いる予定である、特定の用途又は操作に依存して、実際的若しくは経済的理由から特定の温度範囲が好ましいと考えられることを理解するであろう。例えば、金属結合タンパク質を「現場で」又は環境汚染の場所で(これが、使用可能なコスト内で得ることができる特定の温度範囲を決定すると考えられる)用いることが、より実際的であると考えられる。他方では、ある一定の基質上へのより効果的な金属抽出は、比較的高い温度条件下で本発明の金属結合タンパク質を用いることによって達成することができる。それ故、本発明の教示によると、本発明を実施するために適当な温度範囲は、約4℃〜約100℃の範囲を包含する。この範囲の温度条件は、本発明の金属結合タンパク質をより多目的で、有用なものにする。
【0046】
さらに、本発明の教示によると、該金属結合タンパク質はそのままの組成物として、又は金属回収、金属レメディエーション若しくは金属結合プロセスにおける金属結合タンパク質の分散、取り扱い、パッケージング若しくは機能のいずれかを助成するための担体若しくは分散手段(dispersal means)に結合した状態で用いることができる。このような金属結合タンパク質は、例えば、使用者を有害な又は他の恐らくは危険な種類の化学薬品に暴露させる化学抽出のような、他の方法に比べて、より容易にかつ安全にそれらを用いることができるので、金属回収、金属レメディエーション若しくは金属結合プロセスに特に有用である。
【0047】
新規な金属結合タンパク質の取り扱い又は分散を助成するために、多様な固体担体を用いることができ、このような固体担体は、親水性膜、部分的親水性膜、複合膜、多孔質有機固体担体、無孔質有機固体担体、多孔質無機固体担体、無孔質無機固体担体及びこれらの組み合わせを包含する。固体担体が膜である場合には、例えば、米国特許No.5,618,433及びNo.5,547,760(これらの両方ともそれらの全体で本明細書に援用される)に記載されているような膜が典型的である。固体担体が無機若しくは有機粒状固体担体である場合には、好ましい固体担体は、米国特許Nos. 4,943,375, 4,952,321, 4,959,153, 4,960,882, 5,039,419, 5,071,819, 5,078,978, 5,084,430, 5,173,470, 5,179,213, 5,182,251, 5,190,661, 5,244,856, 5,273,660 及び 5,393,892(これらは、本明細書に援用される)に記載されているような、砂、シリカ、シリケート、シリカゲル、ガラス、ガラスビーズ、ガラス繊維、アルミナ、ジルコニア、チタニア、酸化ニッケル、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリフェノール等を包含する。特定の例は、フレキシブルな膜、ビーズ若しくは粒状物、フィルター、又は分離のために有用である、当該技術分野で知られた、任意の他の固体担体を包含する。
【0048】
具体的な1実施態様では、固体担体は膜の形状である。好ましくは、該膜はポリマーであり、より好ましくは、フッ素化ポリマー、ポリオレフィン、ポリスチレン、置換ポリスチレン、ポリスルホン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ビニルポリマー、ブタジエンとスチレンとのコポリマー、フッ素化エチレン−プロピレン・コポリマー、エチレンクロロトリフルオロエチレン・コポリマー、ナイロン及びこれらの混合物から成る群から選択されるメンバーである。
【0049】
本発明の金属結合タンパク質は、例えばポリマー膜のような、担体と、該ポリマーへの金属結合タンパク質の共有結合によって又は例えば、非限定的に、静電引力、分散力及び溶媒仲介力のような非共有結合によって結合する。
【0050】
本発明の1実施態様では、再生型金属結合担体が形成されるように、少なくとも1種類の金属結合タンパク質を固体担体に結合させる、この場合に、再生型金属結合担体は基質から重金属を結合することができ、該重金属は該再生型金属結合担体から放出されることができ、該再生型金属結合担体は重金属を結合するために再使用することができる。
【0051】
一般に、1種類以上の重金属種を除去すべきである基質を、固体担体に結合した金属結合タンパク質と接触させる、この場合該金属結合タンパク質は重金属に対するアフィニティを有する。固体担体は金属結合タンパク質の担体を形成し、膜、ビーズ若しくは固体担体粒子、又は生化学的若しくは化学的分離に一般に用いられる、任意の他の形の形状であることができる。固体担体として膜を用いる場合には、該金属結合タンパク質−固体担体組成物を、本発明の該組成物を含有するハウジング、例えばカートリッジを含む接触デバイス中に、所望のイオンを含有する溶液を該カートリッジに通して流し、このようにして本発明の組成物と接触させることによって、組み入れることができる。1実施態様では、膜の構造は、プリーツ状膜であるが、例えば、フラットシート、積層ディスク又は中空ファイバーのような、他の膜構造も使用可能である。しかし、例えば、非限定的に、カセット、シリンジ、ユニット、キャニスター、マルチウェル・プレート又はフィルターホルダーのようなカートリッジの代わりに、種々な接触装置も使用可能である。固体担体を用いる場合には、当該技術分野で知られているように、分離カラムを用いることができる。
【0052】
注目すべきことは、該金属結合タンパク質の付加的な特徴が、該タンパク質が可逆的に重金属を結合することも可能であることである。例えば、金属結合タンパク質から結合した金属を、酸性条件を用いて又は瞬間的交換反応若しくは無機キレーターによって溶出する(eluted off or away)ことができる。例えば、金属結合タンパク質を放射性Cdと共にインキュベートする間に、109Cd金属が該金属結合タンパク質に結合した内因性金属と交換する。約pH1.0において、金属は該タンパク質から放出される。該溶液のpHを約pH8.0にすると、該タンパク質の金属結合活性が再生される。それ故、該新規な金属結合タンパク質の可逆的結合特徴のために、本発明はさらに、2回以上(more than once)用いることができる、実質的に精製された金属結合タンパク質を含む、組成物、製剤、粉末、液体、デバイス又は装置を提供する。
【0053】
次に、本発明の新規な金属結合タンパク質の遺伝子操作についての典型的な考察を考えて、ブライン・シュリンプ(Artemia)からの金属結合タンパク質のアイソフォームの1つのヌクレオチド配列を、上記で考察したように同定した。一般に、単離プロセスは、(1)ブライン・シュリンプ(Artemia)からの核酸を含有する1つ以上のサンプルの調製;(2)Artemiaからの総RNAの単離;(3)総RNAからのcDNAの調製;(4)金属結合タンパク質遺伝子配列の増幅;及び(5)単離した核酸配列のクローニング、配列決定(sequencing)及び、ブライン・シュリンプ(Artemia)からの金属結合タンパク質遺伝子(MT)としての立証;を含む。
【0054】
上記方法は、金属結合タンパク質遺伝子、メタロチオネイン(MT)の1つの完全なコーディング配列を生じた。この配列は、配列番号NO.1:
【0055】
【化4】

【0056】
である。
ヒトと小麦のような、異なる種が、重金属に対して同様な結合アフィニティを有するメタルチオネインタンパク質を発現する。これらのMTタンパク質は、異なる種にわたって保存されている、12〜22システイン残基を含有する。これらのシステイン残基は、該タンパク質の金属結合機能を担う金属結合モチーフを形成する(Hamer DH, Metallothionein. Ann. Rev. Biochem. 55:813-51, 1986)。それ故、本発明の1実施態様は、例えば膜のような、固体担体上に固定されたMTタンパク質を提供する、この場合、該MTは、非限定的に、哺乳動物、魚類、軟体動物、棘皮動物、甲殻類、爬虫類、線虫類、穀類及び酵母を包含する生物から単離される。これらの生物の非限定的な例は、非限定的に、ブライン・シュリンプ(Artemia)、ウサギ(Oryctolagus cuniculus)、サバンナモンキー(Cercopithecus aethiops)、ヒト(Homo sapiens)、チャンネル・キャットフィッシュ(Ictalurus punctatus)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis)、ムラサキイガイ(Mytilus edulis)、ペインテッド・ムラサキウニ(painted sea urchin)(Lytechinus pictus)、ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)、蛔虫(Caenorhabditis elegans)、米(Oryza sativa)、小麦(Triticum aestivum)及び酵母(Candida glabrata)を包含する。
【0057】
本発明の1実施態様は、非限定的に、Artemia、哺乳動物及び海洋種又は、Artemia MT(図8)に比べて、システイン残基、例えば金属結合モチーフにおいて保存されたアミノ酸配列相同性を有するメタロチオネインタンパク質を含む他の種を包含する生物からの少なくとも1つのメタルチオネインタンパク質に類似した、実質的に精製された金属結合タンパク質をコードする、1つ以上の核酸配列を提供する。
【0058】
本発明の他の実施態様は、非限定的に、Artemia、哺乳動物及び海洋種又は、Artemia MT(図8)に比べて、システイン残基、例えば金属結合モチーフにおいて保存されたアミノ酸配列相同性を有するメタロチオネインタンパク質を含む他の種を包含する生物からの少なくとも1つのメタルチオネインタンパク質に類似した、実質的に精製された金属結合タンパク質をコードする、1つ以上のアミノ酸配列を提供する。典型的なアミノ酸配列は、配列番号NO.2と配列番号NOs.11〜23(図8)の配列を包含する。
【0059】
或いは、単離核酸は、機能性金属結合タンパク質の翻訳を可能にするために充分な、最小DNA配列を含むことができる。機能性金属結合タンパク質は、完全なネイティブ金属結合タンパク質である必要はないが、重金属に結合可能であるタンパク質をコードするような、まさに配列番号NO.1の部分又は領域であることができる。それ故、本発明はさらに、配列番号NO.1のヌクレオチド残基1〜66個の配列を有するDNA分子に少なくとも80%の配列同一性を有するDNAを含めた、単離核酸をも包含する。
【0060】
本発明の新規な金属結合タンパク質のいずれか1つをコードする核酸配列も、本発明の範囲内である。このような新規な金属結合タンパク質は、約5,800ダルトンの分子量を有することができ、例えば、ヒ素、亜鉛、銅、カドミウム、水銀、コバルト、鉛、ニッケル、白金、銀及び金のような重金属イオンに高いアフィニティで結合することができる。新規な金属結合タンパク質は、その中に、配列番号NO.2とその1つ以上の保存アミノ酸置換を含む配列から成る群から選択されるアミノ酸配列を包含する、この場合該保存アミノ酸置換は、下記:(1)イソロイシン、ロイシン及びバリンのいずれかの、これらアミノ酸のうちの他のいずれかに代わる置換;(2)グルタミン酸に代わるアスパラギン酸の置換及びこの逆の置換;(3)アスパラギンに代わるグルタミンの置換及びこの逆の置換;並びに(4)トレオニンに代わるセリンの置換及びこの逆の置換;のいずれかである。代替え核酸配列は、標準遺伝子コードを用いて決定することができ;代替えコドンは、この配列中の各アミノ酸に対して容易に決定することができる。
【0061】
注目すべきことは、本明細書で提供される単離核酸は、新規な金属結合タンパク質を産生させる若しくは発現させるために用いることができるが、これらが、本発明の新規な金属結合タンパク質をコードする、付加的な金属結合タンパク質遺伝子の単離及び同定のためにも特に有用であることである。例えば、本明細書で提供される方策、典型的な方法及び核酸配列を用いて、金属結合タンパク質異性体のいずれかをコードするDNA配列を得ることができる。それ故、本発明は、本発明の金属結合タンパク質の異性体又は代替え形のいずれか又は全てをコードする核酸を包含する。さらに、単離核酸はMT異性体の完全なコーディング配列を含む必要はないが、例えば、本発明の金属結合タンパク質異性体の機能的若しくは金属結合領域のような、MT異性体をコードするコーディング配列のドメイン若しくは部分をコードする核酸配列を包含する。
【0062】
本発明の他の態様は、核酸配列の発現又は調節を制御する、少なくとも1つの制御配列に動作可能に連結した、本発明による核酸配列を含むベクターである。このような制御配列は、当該技術分野で周知であり、オペレータ、プロモーター、エンハンサー、プロモーター−近位要素及び複製起源を含む。クローニング、ライゲーション、ギャップ充填、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の使用、固相ヌクレオチド合成及びその他の手法を含めたベクター構築手法は、当該技術分野で周知であり、ここでさらに述べる必要はない。本発明のベクターは、改変された生物(modified organisms)、宿主細胞又は他の種類の発現系のいずれかによる、該新規な金属結合タンパク質の産生に特に有用である。本発明の金属結合タンパク質は、細菌細胞、昆虫細胞、植物細胞又は哺乳動物細胞において産生されることができる。これらの種の各々における金属結合タンパク質の産生のための適当なベクター及び細胞は、当業者に周知である。
【0063】
次には、本発明の金属結合タンパク質の用途を考える。これらのタンパク質の典型的な用途は、例えば金属レメディエーション、汚染防止、金属リサイクリング又は金属マイニングのような、汚染防止用途を包含する。例えば、金属結合タンパク質を用いて、環境的物質中の重金属濃度を減ずることができる。該物質は、例えば地下水のような流体、汚泥、廃水等でありうる。さらに、該金属結合タンパク質は、汚染防止に用いられる、1種類以上の組成物又はデバイスに組み入れることが可能である。例えば、該金属結合タンパク質は、フロキュレント(flocculent)若しくは粉末の形状で現場に適用することができる、又は汚染された物質からの重金属除去のために用いられる、膜濾過若しくは他の種類の固体担体デバイスの一部として、処理プラントに用いることができる。
【0064】
これらの金属結合プロセスに用いられる金属結合タンパク質は、その天然発生源から精製された生成物として提供されるか、又は生物工学によって産生されることができる。例えば、該金属結合タンパク質は、トランスジェニック生物又は改変された生物によって産生されることができる。改変された生物は、トランスジェニック動物、細菌又は植物を包含する。例えば、修飾された植物は、本発明の金属結合タンパク質の1種類以上を発現するように、そのゲノムが遺伝的に変更されているトランスジェニック植物であることができる。該改変された生物はさらに、金属レメディエーションが望ましい、汚染された場所における又は該場所内で増殖する可能性がある植物又はバイオマスを包含することもできる。改変された生物による金属汚染物の抽出も、汚染された場所からの有害金属を濃縮する。このことは、重金属をより少量にする並びに、廃棄若しくはさらなる加工のためにより容易にかつ安全に取り扱われる最終生成物を生成するという付加的な利点を生じる。
【0065】
基質中の重金属の濃度を減ずるための方法は、本発明の金属結合タンパク質を、重金属を有する基質に接触させることを含む。非限定的な例では、ブライン・シュリンプ(Artemia)からの少なくとも1つの金属結合タンパク質配列に類似したアミノ酸配列を有する金属結合タンパク質を、ある濃度の少なくとも1種類の重金属を有する物質と接触させて、該重金属を該金属結合タンパク質に結合させることができる。その後に、結合した重金属を該基質から分離して、オリジナル基質中の重金属の濃度を減ずることができる。
【0066】
既述したように、本発明の金属結合タンパク質の他の有利な特徴には、酸抽出、無機キレーター及び/又は交換反応技術を用いて、結合した重金属を放出する、それらの能力が包含される。このことは、使用者に、必要な場合には、金属結合タンパク質から結合した重金属を溶出させる。重金属が本発明の金属結合タンパク質からひと度溶出されたならば、該金属結合タンパク質は、金属抽出にさらに用いるために再生される(又はリサイクルされる)ことができる。それ故、本発明はさらに、該金属結合タンパク質を含む、再使用可能な組成物、デバイス及び装置を用いて、基質中の重金属濃度を減ずる方法を提供する。
【0067】
本発明の金属結合タンパク質は、基質中の金属濃度を減ずる方法に用いる場合に、金属結合タンパク質を用いる予定である、特定の用途、状況、投与方法又は環境に適当であるようなやり方で、提供することができる。例えば、金属レメディエーション又は汚染防止に用いる場合に、該金属結合タンパク質を例えば粉末のような担体に結合させて、該金属結合タンパク質を分散させる、便利で、効果的な手段を与えるために、例えば、フロキュレントとして用いることができる。
【0068】
或いは、重金属含有基質から重金属を結合させる若しくは封じ込めるために、該重金属含有基質に該金属結合タンパク質を充分に暴露させるために適当な、膜、半透膜、フィルター又は任意の他の手段に結合させて、該金属結合タンパク質を提供することができる。金属結合タンパク質を含む膜又はフィルターは、汚染された水を該膜又はフィルターに通過させることによって、化学的抽出プロセスで必要であるような、さらなるクリーンアップなしに、精製することができるので、地下水又は廃水を処理する、特に効果的な手段を提供する。金属結合タンパク質を担体又は担持マトリックスに結合することも、特に、大規模に又は産業的用途に用いる場合に、該金属結合タンパク質の容易な取扱いを可能にする。
【0069】
本発明の金属結合タンパク質の使用は、重金属除去が目的であるような方法にのみ限定されるのではなく、基質中の重金属の回収又は濃縮を達成すべきである方法も包含しうる。例えば、該金属結合タンパク質は、例えば金、白金及び銀を含めた貴金属の回収におけるような、金属マイニングに用いることができる、又は放射性金属を含有する、危険な廃物のような、危険な状態にある金属を濃縮するために用いることができる。このような危険な金属廃物は、非常に多くの研究使用、商業的使用又は産業的使用のいずれかに由来する可能性がある。
【0070】
廃物からの放射性金属の濃縮に該金属結合タンパク質を用いることは、廃棄すべき危険な廃物の総量若しくは数量をも減ずる。危険な金属廃物の総量を減ずることは、ある一定の個体が暴露される放射能のレベルをも減ずることになる。
【0071】
基質中の重金属の濃度を減ずるための方法は、改変された生物において金属結合タンパク質を産生させることを含む。改変された生物は、例えば、トランスジェニック生物又はトランスジェニック宿主を包含する。例えば、エビ、植物、細菌、酵母又は藻類のような、宿主又は生物を、当該技術分野で周知のモレキュラー工学及び遺伝子操作手法を用いて、改変することができる。例えば、Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual (New York: Cold Spring Harbor Press, 2001); Ausubel et al. Current Protocols in Molecular Biology (Wiley lnterscience Publishers, 1995); US Dept Commerce/NOAA/NMFS/NWFSC Molecular Biology Protocols (URL:http://research.nwfsc.noaa.gov/protocols.html);又は Protocols Online (URL:www.protocol-online.net/molbio/index.htm)に記載されている、これらの手法を用いて、そのゲノムが、金属結合タンパク質の発現を生じるように遺伝子操作されている生物が提供される。本発明の金属結合タンパク質は、ブライン・シュリンプ(Artemia)からの少なくとも1つの金属結合タンパク質配列に類似したアミノ酸配列を有する金属結合タンパク質を包含する。改変された生物を作製して、これらの金属結合タンパク質と、本明細書で提供する方法に有用な金属結合タンパク質を産生させるために用いることができる。
【0072】
本発明の金属結合タンパク質を産生する改変された生物は、ブライン・シュリンプ(Artemia)からの金属結合タンパク質配列と実質的に同様なアミノ酸配列を有する金属結合タンパク質の少なくとも1種類を産生する改変された生物を包含する。改変された生物はさらに、配列番号NO.2若しくはその保存アミノ酸置換と実質的に同様なアミノ酸配列を有する金属結合タンパク質を産生する生物を包含する。
【0073】
或いは、改変された生物からの本発明の金属結合タンパク質の産生又は発現は、金属結合タンパク質のゲノム発現に限定されず、改変された生物からの金属結合タンパク質の後生的発現をも包含する。改変された生物から後生的発現を得るための方法及び手法は、例えば、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、プラスミド及び、当該技術分野で知られている一過性発現手法を包含する。
【0074】
本発明は、本発明の金属結合タンパク質を産生させる方法を包含する。例えば、ブライン・シュリンプ(Artemia)からの少なくとも1種類の金属結合タンパク質配列に類似したアミノ酸配列を有する金属結合タンパク質を産生させる方法は、発現系を用意する工程、該発現系を用いて、金属結合タンパク質を産生させる工程、及び該金属結合タンパク質を精製若しくは単離して、本発明の金属結合タンパク質を得る工程を包含する。
【0075】
発現系は、例えば伝統的な製造プラントのような系でありうる。例えば、ブライン・シュリンプのような生物を成長させて、該ブライン・シュリンプの組織から、本発明の金属結合タンパク質を精製又は抽出することができる。或いは、該金属結合タンパク質を産生することができる遺伝子操作した生物(本明細書に記載したように作製した)を用いる生体産生系(biomanufacturing system)を用いて、該金属結合タンパク質を産生させることができる。例えば、金属結合タンパク質発現ベクターを大規模又は小規模で(特定の必要性に依存して)培養することができる。次に、該金属結合タンパク質を細菌ブロスから精製して、金属結合プロセスに用いることができる。
【0076】
それ故、本発明の金属結合タンパク質は、改変された生物又は宿主細胞における金属結合タンパク質をコードする核酸配列の発現によって産生することができる。このような核酸配列は、非限定的に、例えば配列番号NO.1のようなMT遺伝子又はMT遺伝子のフラグメント若しくは機能性金属結合ドメインを包含する。
【0077】
発現した金属結合タンパク質を標準的手法を用いて精製する。クローン化タンパク質の精製方法は、当該技術分野で周知であり、ここでさらに述べる必要はない。他の特に適した、1つの精製方法は、金属結合タンパク質に固定抗体を用いるアフィニティクロマトグラフィーである。他のタンパク質精製方法は、特に、イオン交換樹脂上でのクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、等電点電気泳動(isoelectric focusing)及びゲル濾過を包含する。或いは、本発明の金属結合タンパク質は、それらの発現後に、改変された生物から、例えば試薬(例えば、硫酸アンモニウム、アセトン若しくは硫酸プロタミン並びに当該技術分野で知られた方法)による沈澱のような方法によって精製することができる。
【0078】
下記の非限定的実施例を検討するならば、当業者は本発明をさらに理解するであろう。
これらの実施例が、これらの実施例が本発明の要旨及び教示の例示であり、本発明の範囲を、典型的なブライン・シュリンプ(Artemia)金属結合タンパク質のみに限定するように意図されないことが、強調される。
【実施例1】
【0079】
本発明の教示によると、下記典型的なプロトコールは、本発明の金属結合タンパク質の製造、精製及び分析に有用な方法を説明する。
サンプル調製
該金属結合タンパク質の単離における予備段階として、Artemiaブライン・シュリンプを人工海水(AS)(422.7 mM NaCl, 7.24 mM KCL, 22.58 mM MgCl2・6H2O, 25.52 mM MgSO4・7H2O, 1.33 mM CaCl2・2H2O 及び 0.476 mM NaHCO3)中で成長させた。Artemia嚢胞(2.5g)を、抗生物質を補充したAS250ml中で30℃及び125rpmの回転において48時間インキュベートした。24時間後に、光合成Artemiaを回収して、さらに24時間培養してから、クロス濾過によって回収した。シュリンプを計量し、直ちに用いない場合には、−80℃において保存した。
【0080】
次に、該Artemiaを均質化バッファー(HB)(10 mM Tris-HCl (pH 8.0), 0.1 mM DTT, 0.5 mM PMSF 及び 10 μg/ml Soybean Trypsin 阻害剤)中でホモジナイズして、4ml/gシュリンプ湿重量のHB中に再懸濁した。該ホモジネートをYamato LH-21 ホモジナイザーに、800rpmのセッティングで3回通し、Miracloth (Calbiochem)に通して濾過し、濾液をSorvall SA-600回転装置に14,300rpm、4℃において30分間遠心分離した。上清の頂部の脂質層を真空吸引によって取り出し、下部上清層を回収して、Beckman 50.2TI 回転装置で、40Krpm、4℃において90分間遠心分離した。再び、上部脂質層を取り出し、下部上清を150K(150K sup)において再遠心分離した。次に、150K supを直ちに用いるか又は−80℃において保存した。直ちに用いる場合には、この生成物に対してゲル濾過を次のように行なった。このゲル濾過試験は、該金属結合タンパク質の、重金属に結合する能力を立証した。
【0081】
ゲル濾過試験
150K supをSorvall SA-600回転装置で8,500rpm、4℃において30分間遠心分離した。次に、得られた上清をHPLC公認0.45ミクロンLC13アクロディスク・フィルター(Gelman Sciences)に通して濾過した。濾過した150K上清の20mlァリコートを、4℃において、109Cd(0.066μCi)2μlと共にインキュベートして、該金属結合タンパク質を放射能標識した。次に、サンプルを、Nで飽和させた、50 mM Tris-HCl (pH 8.0)と予め平衡させたSephadex G-50分子量排除カラム(2.6cmx94cm)に加えた。低分子量金属結合タンパク質を含有する画分中に還元性条件を維持するために、サンプル負荷前の画分60〜100に、1モルDTT(2μl)を加えた。該カラムを50mM Tris(pH8.0)によって20ml/hrの流量で溶出し、この間、溶離液を280nmにおいてモニターした。この溶出期間中に、該バッファータンク(buffer reservoir)をNで連続的にパージした。アミノ酸分析に用いたサンプルは放射能標識しなかった。
【0082】
該カラム画分の109Cd含量(CPM)をAuto-Logicガンマーカウンター (ABBOTT Laboratories)で測定した。亜鉛含量は、Flame or Furnace Atomic Absorption Spectroscopyによって測定して、PPB亜鉛/画分として表現した。以前の試験は、2クラスの金属結合タンパク質が存在し、1クラスは高分子量画分であることを示した。しかし、109Cdの大部分は、低分子量クラスの亜鉛含有金属結合タンパク質と共に溶出した。図1に示すように、放射性金属結合タンパク質は、亜鉛の溶出ピーク(大体、画分#50)に一致する溶出ピークを有した。Sephadex G-50画分のタンパク質濃度を、BCA Totalプロテイン・アッセイ・キット(Pierce)によって製造者のプロトコールに従って測定した。次に、本発明の金属結合タンパク質の明確な構造特徴を、下記試験で同定した。
【0083】
金属結合タンパク質特徴付け試験
クロマトグラフィー試験及び分子量試験を行なって、該金属結合タンパク質の構造特徴を確認した。用いた全てのプロトコールは、B. Harpham, "Isolation of Metal Binding Proteins From Artemia", Master's Thesis, California State University, Long Beach Library, 1998に既述されている通りであった。当該技術分野で周知であり、例えば、B. Harpham "Isolation of Metal Binding Proteins From Artemia",上記文献に記載されているアニオン交換及び逆相クロマトグラフィー手法を用いて、Artemiaからの金属結合タンパク質を精製して、他の既知金属結合タンパク質よりも予想外に低い、分子量及びアミノ酸配列長さを有することを測定した。SDS-PAGE条件下で、Artemia金属結合タンパク質は、他の哺乳動物種からの金属結合タンパク質の6〜7kDaに比べて、約5.8kDaの分子量を有する。Artemia金属結合タンパク質のタンパク質分析は、48アミノ酸の配列長さを示す。ArtemiaMTアミノ酸配列は、60〜68アミノ酸残基の長さ範囲である、他の既知金属結合タンパク質よりも予想外にかつ著しく短い長さであった。
【実施例2】
【0084】
Artemia金属結合タンパク質をコードする遺伝子のクローニングと配列決定
総RNAを、48時間ノープリウス(Artemiaの幼生期)から、RNAzol法を用いて単離した。58時間ノープリウスサンプルを、実施例1に上述したように調製した。次に、PolyTract方法(Promega,WI)を用いて、総RNAサンプルからmRNAを単離した。該mRNAからSuperScriptと3‘−RACEキット方法(Cat #18373, Gibco/BRL, WI)を用いて、cDNAを作製して、これに下記合成反応を行なった。
【0085】
【化5】

【0086】
上記混合物を70℃において10分間インキュベートしてから、氷上に1〜2時間置いた。揮発した液体を10,000rpmでの10秒間の遠心分離によって回収した。次に、上記RNAカクテルに下記試薬を加えて、cDNA溶液を調製した:
【0087】
【化6】

【0088】
上記で得られたcDNA溶液を次に混合して、42℃において5時間インキュベートした。Superscript II RT 5μlを加えて、混合物をcDNA合成のために42℃において50分間インキュベートした。該溶液を70℃において15分間インキュベートすることによって、該逆転写反応を停止させ、次に、RNase 5μlを加えて、この溶液を37℃において20分間インキュベートした。ArtemiacDNAを含有する最終溶液を、以下に述べるようなPCR増幅に用いるまで、−20℃において貯蔵した。
【0089】
用いた最初のPCRプライマー配列は、次の通りであった:5’プライマー(N−末端側)は「MT−Not I」(配列番号NO.5)と名づけ、3’プライマー(C−末端側)は「dT−Spe I」(配列番号NO.6、配列番号NO.7、配列番号NO.8又は配列番号NO.9)と名づけた。
【0090】
【化7】

【0091】
次に、上記5’プライマーと3’−プライマーを下記増幅カクテルに用いた。
【0092】
【化8】

【0093】
上記PCR反応カクテルに対して、Gem 50ワックスビーズを該管に加えて、この管を80℃において2〜3分間インキュベートした。室温において10〜15分間該ワックスを硬化させた直後に、下記を該硬化ワックスの頂部に層状に重ねた:
【0094】
【化9】

【0095】
次に、該最終混合物に、下記PCR増幅プログラムを行なった:
【0096】
【化10】

【0097】
ひと度、増幅したならば、PCR生成物を1.2%アガロースゲル上で増幅の成功に関して検証した。次に、該PCR生成物を、その後のクローニングのために、Qiagen QIAquick Gel Extraction (Qiagen, CA)を用いて精製した。それらの配列に組み入れた改変制限部位(modifying restriction sites)を含有する下記プライマーを用いて、ブライン・シュリンプArtemia金属結合タンパク質遺伝子配列を含有する精製PCR生成物を増幅させ、サブクローン化した。
【0098】
【化11】

【0099】
MT NcoIプライマーとMT Sal Iプライマーを、72℃のアニーリング温度と共に1分間用いて、ArtemiaMTヌクレオチド配列を増幅させてから、続いて、pGEM3ベクターのEco RI部位にサブクローン化した。サブクローン化したならば、該クローン化金属結合タンパク質遺伝子を次に、金属結合タンパク質をコードする単離核酸の使用を必要とする、発現、産生又は他の方法に用いるために、容易に改変するか又はさらに加工することができる。
【0100】
次に、MT遺伝子の完全コーディング配列を、LiCor 4200L DNA配列決定装置を用いて、決定した。ArtemiaからのMT遺伝子の配列比較研究は、該MT遺伝子が、他の既知金属結合タンパク質遺伝子に比べて、予想外に異なる配列を有することを示す。ArtemiaMT遺伝子配列をウマ及びヒトMTの遺伝子配列と並べると、金属結合システイン残基の位置において相同性が観察された。次に、下記試験において、本発明の典型的な金属結合タンパク質の、重金属結合能力を確認した。
【実施例3】
【0101】
ArtemiaMTのトランスジェニック・タバコ発現
以下では、金属結合タンパク質としてのタンパク質の立証を助成するために、本発明の新規な金属結合タンパク質のいずれかに対して実行することができる典型的な試験を提供する。例えば、本発明の金属結合タンパク質は、例えば亜鉛、カドミウム及び銅のような重金属を結合することができる。単離タンパク質の重金属結合能力は、本発明の典型的なMTによる大腸菌(E.coli)の形質転換の開示に記載され、詳述されており、そして図1に示したように、示されている。
【0102】
既述したように、本発明の新規な金属結合タンパク質の産生に有用な改変された生物は、本明細書に提供した教示に従って、作製することができる。典型的な改変された生物は、本明細書に記載する方法に特に有用であるトランスジェニック・タバコ植物を包含する。
【0103】
TOPO.CR2ベクターにクローン化したMTのcDNAは、pARTmtと呼ばれる。MTのコーディング配列を、多重クローニング部位と共にフレーム単位でTMVコートタンパク質のオメガ5’非翻訳領域を含有する、pUC18に基づくプラスミドにクローン化した(図2参照)。これは、5’プライマー上にNco I制限部位を有し、3’プライマー上にSal I部位を含有するPCRプライマーを用いて、pARTmt1からのMTコーディング配列の増幅によって、達成された。PCR生成物とベクターをそれぞれ、Nco IとSal I
で制限して、精製した。次に、PCR生成物を該ベクター中にT4DNAリガーゼを用いてライゲートした。該ライゲーション混合物を用いて、DH5α細胞をエレクトロポレーションによって形質転換した。LB培地に個々のコロニーを接種して、一晩増殖させた。プラスミドを単離して、配列決定して、MTコーディング配列の存在と完全性を立証した。
【0104】
Eco RI/Xba Iカセットを取り出して、植物発現ベクターpSS上の対応部位にクローン化した。pSSベクターは、構成的CMVプロモーターと転写ターミネーター配列を多重クローニング部位と共にフレーム単位で含有する。得られたpSSmt構築体をDH5α細胞中で増殖させ、単離し、配列決定して、MT遺伝子の存在と完全性を上述したように立証した。
【0105】
タバコ葉中のMT発現
A.ツメファシエンス(A.tumefaciens)を細胞質ゾルpSSmt構築体で、エレクトロポレーションによって形質転換して、抗生物質を含有するYEB培地(pH7.4)中、27℃において一晩増殖させた。該細胞を回収して、誘導培地(YEB、pH5.8、抗生物質及び20μMアセトシリンゴン)中に再懸濁させ、27℃において増殖させた。翌朝、細胞を遠心分離によって回収して、浸潤培地(抗生物質と200μMアセトシリンゴンを含有するMMAバッファー)中に1.5のA600まで再懸濁させ、室温において2時間インキュベートした。タバコ(Nicotiana tabacum)葉を該細菌懸濁液中に沈めて、真空デシケータ中に入れた。30〜40mbarの真空下で、葉に浸潤させた。該葉を室温において72時間放置してから、液体窒素中で微粉状に粉砕して、10 mM Tris pH 8.0, 0.05 mM DTT, 1 mM PMSFによって抽出した。該溶液を、30,000xgにおける遠心分離によって清澄化し、上清をMTに関して、109Cd金属結合アッセイによって分析した。ArtemiaMTの遺伝子を含有する葉では、金属結合活性が明らかである(表1)。
【0106】
【化12】

【0107】
タバコの安定な形質転換
pSSmtで形質転換したA・ツメファシエンスの懸濁液を上述したように増殖させた。タバコ葉を小片(中央葉脈を含まない)にカットして、細菌懸濁液(A600約1.0)50〜100mlを含有する滅菌ベックガラス中に移して、室温において30分間インキュベートした。次に、葉小片を、プラスチック・ペトリ皿中の滅菌水で予め湿らせた滅菌Whatman3MM濾紙上に移した。該皿をサランラップで密封して、暗所で26〜28℃において2日間インキュベートした。該葉小片を次に、抗生物質を含有する滅菌水で洗浄して、MS II寒天プレート上に移した。該小片を25℃において16時間光周期(photoperiod)で3〜4週間インキュベートした。発芽が形成され始めたときに、発芽を取り出して、MS II寒天プレート上に移して、25℃において16時間光周期で、根が形成され始めるまで、インキュベートした。該小植物を、MSIII培地を含有するベックガラス中に移して、25℃において16時間光周期で約2週間インキュベートした。次に、該若い植物を土壌に植えた。該植物からの若い葉を回収して、MT活性に関して、上述したように分析して、トランスジェニック植物であることを決定した。
【実施例4】
【0108】
水から有害金属を除去するためのポリマー膜
Artemia胚芽から、メタロチオネインを上述したように抽出した。該タンパク質抽出物(80ml)を沸騰水浴中に15分間入れた。該溶液を30,000xg(SA600回転装置中16,000rpm)で、4℃において30分間遠心分離した。メタロチオネインを含有する上清を109Cd(Amersham Biosciences)60μlを含有する清潔な管に移した。該溶液を充分に混合して、室温において5分間静置させた。これは、放射性カドミウムをメタロチオネイン上に交換させて、該溶液の精製中に該タンパク質を検出する方法を我々に与える。次に、該溶液を100x48cm G−50分子排除カラムに加えて、窒素飽和50mMTris,pH8.0で溶出した。1M DTT25μlを含有する管中に、15ml画分を回収した。ピーク金属結合活性をプールして、4℃において貯蔵した。この溶液をMTと呼ぶ(図3〜図7参照)。
【0109】
中性pHにおける金属結合
Pall Biodyne 膜 (Biodyne A と Biodyne B, 0.45 μm, ロット番号、それぞれ、002245と035241)を、これらの実験のために固体担体として用いた。膜の1cm小片を10mlMilliporeガラスフリット濾過ユニットに入れた。MT10mlを、約100ml/minの流量において真空下で膜に通した(図4参照)。貫流物をタンパク質分析のために回収した。次に、カドミウム溶液(水50ml中に0.1μg/mlのCdClと10μlの109Cd)10mlを該膜に真空下で通した(図5参照)。次に、該膜をそれぞれPBS10mlで2回洗浄した。プールした溶出液5mlを放射能に関して分析した。該膜を濾過ユニットから取り出し、12x75mm遠心分離管に入れ、LKBガンマカウンター中で放射能に関して分析した。対照として、MTによって処理されなかった第2膜によって、該方法を繰り返した。この膜は「ブランク」と呼ぶ。結果は、以下の表2に示す。
【0110】
【化13】

【0111】
結果は、膜に結合したMTが膜を通過した金属溶液からカドミウム(109Cdとして)を除去できることを実証する。MTを含まない膜は、該溶液から金属を、たとえ除去するとしても、殆ど除去しないも同然である。
【0112】
変動するpHにおける金属結合
次の実験シリーズは、膜のタンパク質の金属結合活性に対するpHの両極端の影響を知るためであった。これらの試験のために、MTの新鮮なサンプルを用意した。これらの実験に用いたカドミウム溶液は、次のように調製した:CdClの水溶液(1ppm)1mlに、109Cd2μlを加えた。次に、この放射性カドミウム溶液100μlを下記溶液の各々10mlに加えた:PBS、 10 mM グリシン、150 mM NaCl, pH 3.0.、及び 10 mM H2CO3/HCO3、 150 mM NaCl, pH 10.1。この試験には、Biodyne A 膜のみを用いた。MTで処理せず、放射性カドミウム含有PBSで洗浄した膜を、対照として用いた。膜をMillipore濾過ユニットに入れて、次のように処理した:
膜#1(ブランク)は、放射性カドミウム含有PBS5mlで洗浄した。次に、該膜を、非放射性の、金属を含まないPBS10mlで2回洗浄した。
【0113】
膜#2は、最初に、MT溶液10mlで、次に、放射性カドミウム含有PBS5mlで洗浄した。該膜を次に、非放射性の、金属を含まないPBS10mlで2回洗浄した。
膜#3は、MT溶液10mlで、次に、放射性カドミウムを含有する、10mM HCO/HCO、150mM NaCl、pH10.1 5mlで洗浄した。該膜を次に、非放射性の、金属を含まない10mM HCO/HCO、150mM NaCl、pH10.1 10mlで2回洗浄した。
【0114】
膜#4は、MT溶液10mlで、次に、放射性カドミウムを含有する、10mMグリシン、150mM NaCl、pH2.0 5mlでで洗浄した。該膜を次に、非放射性の、金属を含まない10mMグリシン、150mM NaCl、pH2.0 10mlで2回洗浄した。
【0115】
各膜を、放射能に関して、上述したように分析した。結果は、以下の表3に示す。
【0116】
【化14】

【0117】
該実験は、膜に結合したMTが7.5〜10.1の範囲内のpHにおいて金属に結合することができるが、2のpHではこれが生じないことを実証する。金属がひと度MTに結合したならば、該膜を酸(pH=2)に暴露することによって、金属を回収することが可能である(図6参照)。これらの実験は、膜に直接全ての溶液を加えることによって行なった。MTの添加前に膜をバッファーと予備平衡させることの効果、即ち、行なわれる金属結合の効率を評価するために、膜(Byodine A)次のように処理した:
膜#1(ブランク)は、放射性カドミウム含有PBS5mlで洗浄した。次に、該膜を、非放射性の、金属を含まないPBS10mlで2回洗浄した。
【0118】
膜#2は、最初に、MT溶液10mlで、次に、放射性カドミウム含有PBS5mlで洗浄した。該膜を次に、非放射性の、金属を含まないPBS10mlで2回洗浄した。
膜#3は、金属を含まない10mM HCO/HCO、150mM NaCl、pH10.1 10mlで予め洗浄し、次に、MT溶液10mlで、次に、放射性カドミウムを含有する、10mM HCO/HCO、150mM NaCl、pH10.1 5mlで洗浄した。最後に、該膜を、非放射性の、金属を含まない10mM HCO/HCO、150mM NaCl、pH10.1 10mlで2回洗浄した。
【0119】
結果は、以下の表4に示す。
【0120】
【化15】

【0121】
pH10.1において該膜を平衡させることは、該膜へのタンパク質結合の良好な効率を生じる。
MT金属結合の特異性
ウシ血清アルブミン、数個のシステイン残基を含有し、重金属を結合することがと知られているタンパク質に対して、結合アフィニティ/特異性を測定した。この実験には、Biodyne A膜を用いた。MT溶液の濃度は、約7μg/mlであると判明した。貫流物の濃度は、出発物質と同等であり、このことは、膜に結合した量がng(ナノグラム)量であることを意味し、したがって、該タンパク質の金属結合容量が有意(significant)であることを意味する。それ故、Pierce Chemical Inc.からの2mg/mlBSA標準試薬を用いて、D−PBS中に、BSAの7μg/ml溶液と100μg/ml溶液を作製した。カドミウム結合溶液を次のように調製した:1ppm CdCl水溶液1.5mlに、109Cd3μlを混合した。この溶液を4℃において貯蔵した。アッセイを次のように行なった:
膜#1(ブランク)は、放射性カドミウム含有PBS5mlで洗浄した。次に、該膜を、非放射性の、金属を含まないPBS10mlで2回洗浄した。
【0122】
膜#2は、最初に、MT溶液5mlで、次に、放射性カドミウム含有PBS5mlで洗浄した。該膜を次に、非放射性の、金属を含まないPBS10mlで2回洗浄した。
膜#3は、BSA溶液(7μg/ml)5mlで、次に、放射性カドミウム含有PBS 5mlで洗浄した。該膜を次に、非放射性の、金属を含まないPBS 10mlで2回洗浄した。
【0123】
膜#4は、BSA溶液(100μg/ml)10mlで、次に、放射性カドミウム含有PBS 5mlで洗浄した。該膜を次に、非放射性の、金属を含まないPBS 10mlで2回洗浄した。
【0124】
これらの実験の結果は、以下の表5に示す。
【0125】
【化16】

【0126】
これらの実験条件下で、BSAは、膜を調製するためにMTよりも10倍高濃度のBSAを用いた場合にも、水溶液から金属を除去しない。この実験は、水又は他の水性基質からの金属のレメディエーションのための膜結合MTの有用性を実証する。(図7参照)。
【0127】
金属結合活性への温度の影響
これらの結合実験は、Biodyne A膜によって行なった。
膜#1(ブランク)は、放射性カドミウム含有PBS5mlで洗浄した。次に、該膜を、非放射性の、金属を含まないPBS10mlで2回洗浄した。
【0128】
膜#2は、MT溶液10mlで、次に、60℃に予め加温した、放射性カドミウム含有PBS5mlで洗浄した。該膜を次に、60℃に予め加温した、非放射性の、金属を含まないPBS10mlで2回洗浄した。
【0129】
膜#3は、MT溶液10mlで、次に、4℃に冷却した、放射性カドミウム含有PBS5mlで洗浄した。該膜を次に、4℃に冷却した、非放射性の、金属を含まないPBS10mlで2回洗浄した。
【0130】
これらの実験の結果は、以下の表6に示す。
【0131】
【化17】

【実施例5】
【0132】
ウサギMTとArtemiaMTとの比較
本発明の金属結合タンパク質による金属レメディエーションをは、多様な発生源からのメタロチオネインタンパク質を用いて、達成することができる。ウサギ肝臓MTは、凍結乾燥タンパク質(Sigma)として入手して、50 mM Tris, pH 8.0, 0.001 M DTT 400μl中で2.5mg/mlの最終濃度まで可溶化した(ウサギMTストック溶液)。ArtemiaMTは、上記で実施例4に記載したように精製した。
【0133】
MT含有溶液を、上記で実施例4に記載したように、該膜に通すことによって、結合したArtemiaMT又はウサギ肝臓MTを有する膜を作製した。次に、3種類の膜:ブランク、ArtemiaMT結合膜、及びウサギ肝臓MT結合膜を、13mm焼結ガラス濾過ユニットに入れて、金属結合溶液(109Cd/25μl溶液 9000cpmのストック溶液を75μl/10mlPBSに希釈して、該金属結合溶液を形成した)10mlを、真空下で該膜に通過させた。次に、該膜をPBS中で3回洗浄して、膜結合放射能を、Packardガンマカウンターで測定した。第2実験では、より多量のArtemiaMTを膜に結合させた。これらの2つの実験の結果は、表7と8に示す。
【0134】
【化18】

【0135】
膜結合メタロチオネインは、発生源に拘わらず、水溶液からの金属の除去を生じる。さらに、金属結合活性は、膜に加えられたタンパク質の量の関数であり、膜上のMTタンパク質の量を増加させると、該膜による金属結合活性の増大が生じる。
【0136】
最後に、本明細書に開示した、本発明の実施態様は、本発明の原理の例示であることを理解すべきである。本発明の範囲内である、他の改変を用いることも可能であり、したがって、本発明は、まさに本明細書に示し、記載した通りであることに限定されない。
【0137】
特に指定しない限り、本明細書及び特許請求の範囲で用いられる、成分、例えば分子量のような性質、反応条件等の量を表す全ての数は、全ての場合に、「約」なる用語によって修飾されるものとして理解すべきである。したがって、そうでない場合を指定しない限り、以下の明細書及び添付特許請求の範囲に記載される数値的パラメータは、本発明によって得られるように求められる望ましい性質に依存して、変動しうる近似値である。各数値的パラメータは、最低限でも、そして特許請求の範囲の同等物の原理の適用を限定する試みとしてではなく、報告された重要な数字の数を考慮して及び通常の丸め技術の適用によって、少なくとも解釈すべきである。本発明の広い範囲を示す、数値的範囲及びパラメータが近似値であるにも拘わらず、特定の実施例に記載する数値は、可能な限り正確に報告する。しかし、如何なる数値も、それらのそれぞれの試験測定に見出される標準偏差に必然的に由来する、ある一定の誤差を本質的に含有する。
【0138】
本発明の記載に関連して(特に、特許請求の範囲に関連して)用いられる「不定冠詞(“a”と“an”)」と「定冠詞(“the”)」なる用語と、同様な参照は、本明細書で特に指定しない限り又は前後関係によって明確に矛盾しない限り、単数と複数の両方を包含すると解釈すべきである。本明細書におけるある範囲の数値の列挙は、該範囲内に入る各別々の数値を個別に表わす省略法として役立つように意図されるに過ぎない。本明細書で特に指定しない限り、各個別の値は、あたかも本明細書に個別に列挙されるかのように、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書で特に指定しない限り又は前後関係によって明確に矛盾しない限り、任意の適当な順序で行なうことができる。本明細書に記載する、あらゆる実施例又は典型的な言語(例えば、“・・・のような(such as)”)の使用は、単に、本発明をよりよく解明することを意図するに過ぎず、他の点で特許請求される本発明の範囲を限定するものではない。本明細書中の如何なる言語も、本発明の実施に本質的な、特許請求されない要素を指定するものと解釈すべきではない。
【0139】
本明細書に記載した本発明の代替え要素又は実施態様のグループ化は、限定と解釈すべきではない。各グループメンバーは、個別に又は、該グループの他のメンバー若しくは本明細書に見出される他の要素との任意の組み合わせで、引用し、特許請求することができる。グループの1つ以上のメンバーを、便宜性及び/又は特許可能性の理由から、グループに含める又はグループから欠損させることができると、予想される。任意のこのような包含又は欠損が生じる場合には、明細書は、特許請求の範囲に用いられる全てのMarkushグループの書面による明細を実行するように改変されたグループを含有すると判断される。
【0140】
本発明の好ましい実施態様を、本発明を実施するために本発明者に知られた最良のモードを含めて、本明細書に記載する。このような好ましい実施態様の変更は、当然、上記記載を読むときに、当業者に明らかになると思われる。本発明者は、熟練した技術者が、このような変更を適当な場合に用いると期待して、本発明者が、本明細書に特に記載した以外のやり方で実施されることを意図する。したがって、本発明は、適用可能な法律によって認可される限り、本明細書に添付された特許請求の範囲に記載された要旨のあらゆる変更及び同等物を包含する。さらに、本明細書に特に指定しない限り又は特に前後関係によって明らかに矛盾しない限り、上記要素の任意の組み合わせも、それらのあらゆる可能な変更において、本発明によって包含される。
【0141】
さらに、本明細書を通して、特許及び出版物への非常に多くの参照がなされている。上記参考文献及び出版物の各々は、それらの全体で、個別に本明細書に援用される。
最後に、本明細書に開示された、本発明の実施態様が本発明の原理の〇時であることを理解するべきである。用いることが可能である、他の変更も本発明の範囲内である。したがって、一例として、但し、限定する訳ではなく、本発明の代替え形態が、本明細書の教示にしたがって用いることが可能である。したがって、本発明は、まさに、示し、記載した通りであるものに限定される訳ではない。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】図1は、重金属亜鉛と金属結合タンパク質との共溶出を説明する、本発明の典型的な金属結合タンパク質の溶出プロフィルである。
【図2】図2は、本発明の教示による、金属結合タンパク質遺伝子の遺伝子配列を含有する、典型的なクローニング・カセットのマップである。
【図3】図3は、本発明の教示による、溶液中の重金属を選択的に結合するメタロチオネイン(MT)タンパク質を説明する。
【図4】図4は、本発明の教示による、固体担体に結合したMTタンパク質を説明する。
【図5】図5は、本発明の教示による、水からの重金属の取り出しを説明する。
【図6】図6は、本発明の教示による、MTタンパク質で被覆された膜からの、除去された金属の回収を説明する。
【図7】図7は、重金属を結合するための本発明の選択性とアフィニティを説明する。
【図8】図8は、異なる種から単離したメタロチオネインタンパク質間の、システイン金属結合モチーフにおける配列相同性を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生型金属結合担体を含んでなる、基質から重金属を除去するデバイスであって:
該再生型金属結合担体は、それに結合したポリマー膜と少なくとも1種類の実質的に精製されたメタルチオネイン(MT)タンパク質、又はその一部であって、哺乳動物、魚類、軟体動物、棘皮動物、甲殻類、爬虫類、線虫類、穀類及び酵母から成る群から選択される生物由来のものを含み、
該再生型金属結合担体が該重金属を結合することによって、該重金属を該基質から除去し;そして、
該再生型金属結合担体への重金属の該結合が可逆的であり;該再生型金属結合担体が再使用可能である、前記デバイス。
【請求項2】
前記哺乳動物がヒトである、請求項1記載のデバイス。
【請求項3】
前記哺乳動物がサルである、請求項1記載のデバイス。
【請求項4】
前記哺乳動物がウサギである、請求項1記載のデバイス。
【請求項5】
前記魚類がナマズである、請求項1記載のデバイス。
【請求項6】
前記軟体動物がイガイである、請求項1記載のデバイス。
【請求項7】
前記棘皮動物がウニである、請求項1記載のデバイス。
【請求項8】
前記爬虫類がカエルである、請求項1記載のデバイス。
【請求項9】
前記穀類が米である、請求項1記載のデバイス。
【請求項10】
前記穀類が小麦である、請求項1記載のデバイス。
【請求項11】
前記甲殻類がブライン・シュリンプ(Artemia)である、請求項1記載のデバイス。
【請求項12】
前記MTタンパク質が、配列番号NO.2、配列番号NO.4、配列番号NO.11、配列番号NO.12、配列番号NO.13、配列番号NO.14、配列番号NO.15、配列番号NO.16、配列番号NO.17、配列番号NO.18、配列番号NO.19、配列番号NO.20、配列番号NO.21、配列番号NO.21及び配列番号NO.23から成る群から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1記載のデバイス。
【請求項13】
前記ポリマー膜がナイロンである、請求項1記載のデバイス。
【請求項14】
前記基質が液体である、請求項1記載のデバイス。
【請求項15】
前記重金属が重金属錯体である、請求項1記載のデバイス。
【請求項16】
基質から金属を除去する方法であって:
重金属を含有する前記基質を、再生型金属結合担体と接触させ、該再生型金属結合担体は、哺乳動物、魚類、軟体動物、棘皮動物、甲殻類、爬虫類、線虫類、穀類及び酵母から成る群から選択される生物由来の、少なくとも1種類の実質的に精製されたメタルチオネイン(MT)タンパク質又はその一部を結合したポリマー膜を含み;
前記重金属を前記再生型金属結合担体に結合させることによって、重金属含有量の低減した基質を生成することを含む方法。
【請求項17】
前記ポリマー膜がナイロンである、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記重金属が重金属錯体である、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記基質が液体である、請求項16記載の方法。
【請求項20】
前記再生型金属結合担体から前記結合重金属を放出させて;前記再生型金属結合担体の金属結合容量を再生することをさらに含む、請求項16記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2008−516770(P2008−516770A)
【公表日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538124(P2007−538124)
【出願日】平成17年10月19日(2005.10.19)
【国際出願番号】PCT/US2005/038136
【国際公開番号】WO2006/045103
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(507129949)エムジーピー・バイオテクノロジーズ・エルエルシー (2)
【Fターム(参考)】