説明

精製希少糖の大量生産方法

【課題】 生産目的希少糖を含む希少糖類同志の混合物からなる原液から生産目的希少糖のみを高純度かつ高回収率で分離できる方法を提供すること。
【解決手段】 異性化を触媒する酵素の作用で基質希少糖から目的希少糖へ変換し、得られる原液を擬似移動層により連続的に目的希少糖画分としてクロマト分離することを特徴とする精製希少糖の大量生産方法。基質希少糖D−プシコースから目的希少糖の精
製D−アロースを製造するのに適用する。上記原液として、基質糖にPseudomonas stutzeri 由来のL-ラムノースイソメラーゼを作用させて得た原液を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異性化反応により得られた希少糖混合溶液から目的希少糖を精製した形で分離する精製希少糖の大量生産方法、特に希少糖類の一つとしてその特性や機能性が注目される精製アロースの大量生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、2成分以上を含有する原液中の特定成分を分離する方法として、擬似移動層式クロマト分離装置を用いた分離方法が知られている。この擬似移動層式クロマト分離装置は、代表的には原液中に含まれる2成分以上の成分中の特定成分に対して選択的吸着能力を有する吸着剤を充填した多数の充填塔を配管で直列に連結するとともに、最後部の充填塔と最前部の充填塔を配管で連結することによって、全体を無端に連結した充填塔群の系として形成した装置において、原液の供給、溶離液の供給、および非吸着液(つまり、吸着剤に対し吸着能力の低い非吸着物質を多く含む画分)の抜き出し、吸着液(つまり、吸着剤に対し吸着能力の高い吸着物質を多く含む画分)の抜き出しの各位置関係を一定に保ちながら、これらの位置を経時的に系内循環方向下流側に順次移行させることで、吸着剤の実際の移動を行わずに吸着剤が移動するのと同等の機能を発揮させ、移動層の処理操作を擬似的に実現する装置であることはよく知られている。このような擬似移動層式クロマト分離装置を用いて、糖類を含む原液からグルコースやフルクトースを含む画分を分離するようにした技術も知られている。この擬似移動層式のクロマト分離技術を用いて、プシコースとフルクトースを含む溶液からプシコースを高純度、高回収率で連続的に分離する方法が開発されている(特許文献1)。
【0003】
一方、新規な触媒機能を有する酵素、Pseudomonas stutzeri の生産するL-ラムノースイソメラーゼをコードする遺伝子配列を明らかとした(特許文献2)。希少糖戦略の中で、多種類の希少アルドースに作用し、多種類の希少ケトースを生産するために最も効率のよいイソメラーゼを得ることによって、多種類の希少糖を生産する反応系を確立した。これにより希少糖の生理活性探索に弾みがつき希少糖類の特性や機能性が次々と明らかにされて来ている。
【特許文献1】特開2001−354690号公報
【特許文献2】WO 2004/063369 A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、希少糖類の一つとしてその特性や機能性が注目されるアロースをプシコースを原料として生産した場合、アロースおよびプシコースの混合物として得られるところ、希少糖類を生産対象糖類として、それを希少糖類同志の混合物から生産対象希少糖のみを大量に分離生産する技術は知られていない。
本発明は、生産することを目的とする希少糖を含む希少糖類同志の混合物からなる原液、あるいは、特定の酵素を用いて異性化した生産することを目的とする希少糖を含む原液を擬似移動層により連続的に目的希少糖画分としてクロマト分離する精製希少糖の大量生産方法を提供することを目的とする。
より具体的には,本発明は、従来主として除去対象とされていた希少糖類のアロースの特性や機能性に着目し、アロースとプシコースを含む原液から、擬似移動層を用いて特定の条件で操作することにより、高純度かつ高回収率でプシコースを含む溶液を分離できる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下の(1)〜(11)の精製希少糖の大量生産方法を要旨とする。
(1)異性化を触媒する酵素の作用で基質希少糖から目的希少糖へ変換し、得られる原液を擬似移動層により連続的に目的希少糖画分としてクロマト分離することを特徴とする精製希少糖の大量生産方法。
(2)基質希少糖D−プシコースから目的希少糖の精製D−アロースを製造する上記(1)の精製希少糖の大量生産方法。
(3)クロマト分離が、目的希少糖と基質希少糖を含む原液から、溶離液として水を用いて目的希少糖を多く含む目的希少糖画分と基質希少糖を多く含む基質希少糖画分とにクロマト分離する方法であって、基質希少糖と目的希少糖に対し選択的吸着能力を有する吸着剤としてカルシウム形の陽イオン交換樹脂が充填された複数の充填塔を直列かつ無端に連結して原液および溶離液が循環可能な循環系を形成し、該循環系に、糖濃度が40%以上、目的希少糖組成が20%以上の原液、および溶離液を供給し、前記循環系を、溶離液供給部から目的希少糖画分抜出部までの目的希少糖の脱着帯域、目的希少糖画分抜出部から原液供給部までの目的希少糖の濃縮帯域、原液供給部から基質希少糖画分抜出部までの基質希少糖の吸着帯域、基質希少糖画分抜出部から溶離液供給部までの基質希少糖の回収帯域の4つの帯域に区分し、各供給部および各抜出部を所定の位置関係を保ちつつ順次循環方向下流側に移行させることにより吸着剤の擬似移動層を形成して、循環液を目的希少糖画分と基質希少糖画分とに連続的にクロマト分離する上記(1)または(2)の精製希少糖の大量生産方法。
(4)分離した基質希少糖画分を原液の製造工程に回収する上記(3)の精製希少糖の大量生産方法。
(5)下記配列番号(a)または (b)に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質からなる異性化を触媒する酵素の作用で基質糖から目的希少糖へ変換し、得られる原液を擬似移動層により連続的に目的希少糖画分としてクロマト分離することを特徴とする精製希少糖の大量生産方法。
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、L-ラムノースイソメラーゼ活性を有するタンパク質。
(6)上記酵素が、Pseudomonas stutzeri 由来のL-ラムノースイソメラーゼである上記(5)の精製希少糖の大量生産方法。
(7)目的希少糖がD−アロースまたはD−プシコースである上記(5)または(6)の精製希少糖の大量生産方法。
(8)クロマト分離が、目的希少糖と基質糖を含む原液から、溶離液として水を用いて目的希少糖を多く含む目的希少糖画分と基質糖を多く含む基質糖画分とにクロマト分離する方法であって、基質糖と目的希少糖に対し選択的吸着能力を有する吸着剤としてカルシウム形の陽イオン交換樹脂が充填された複数の充填塔を直列かつ無端に連結して原液および溶離液が循環可能な循環系を形成し、該循環系に、糖濃度が40%以上、目的希少糖組成が20%以上の原液、および溶離液を供給し、前記循環系を、溶離液供給部から目的希少糖画分抜出部までの目的希少糖の脱着帯域、目的希少糖画分抜出部から原液供給部までの目的希少糖の濃縮帯域、原液供給部から基質糖画分抜出部までの基質糖の吸着帯域、基質糖画分抜出部から溶離液供給部までの基質糖の回収帯域の4つの帯域に区分し、各供給部および各抜出部を所定の位置関係を保ちつつ順次循環方向下流側に移行させることにより吸着剤の擬似移動層を形成して、循環液を目的希少糖画分と基質糖画分とに連続的にクロマト分離する上記(5)、(6)または(7)の精製希少糖の大量生産方法。
(9)分離した基質糖画分を原液の製造工程に回収する上記(8)の精製希少糖の大量生産方法。
(10)上記(3)、(4)、(8)または(9)の方法を用いて、高純度かつ高回収率で目的希少糖を連続的に製造することを特徴とする精製希少糖の大量生産方法。
(11)クロマト分離で得られた目的希少糖の溶液から目的希少糖を結晶として回収する上記(1)ないし(10)のいずれかの精製希少糖の大量生産方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、希少糖類を生産対象糖類として、それを希少糖類同志の混合物から生産対象希少糖のみを大量に分離生産する、あるいは特定のイソメラーゼを基質糖に作用させて異性化した生産対象希少糖を含む原液から生産対象希少糖のみを大量に分離生産する、精製希少糖の大量生産方法を提供することを目的とする。
特に希少糖類の一つとしてその特性や機能性が注目される精製アロースの大量生産方法によれば、次のような優れた効果が得られる。
(1)原液の品質を何ら損なうことなく原液より高純度のアロース溶液を得ることができる。
(2)原液の品質を何ら損なうことなく原液よりアロースを高回収率で分離、回収できる。
(3)試薬を用いることなく分離、回収ができ、安いランニングコストで実施することができる。
(4)連続的にまた工業的に実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明者らは、二種類の希少糖を含む溶液、アロースとプシコースを含む溶液から生産を目的とする希少糖アロースを高純度の目的希少糖アロースの溶液として高回収率で分離する方法について検討した結果、原液糖濃度が40%(全溶液中の重量%、以下同様)以上、目的希少糖アロース組成が20%(全固形分中の重量%、以下同様)以上の溶液を擬似移動層により連続的にクロマト分離することにより工業的に有効な高純度、高回収率で目的希少糖アロース溶液を連続的に大量生産できることを見いだし、本発明に到達したものである。
【0008】
すなわち、本発明の好ましい態様である精製アロースの大量生産方法は、アロースとプシコースを含む原液から、溶離液として水を用いてアロースを多く含むアロース画分とプシコースを多く含むプシコース画分とにクロマト分離する方法において、アロースとプシコースに対し選択的吸着能力を有する吸着剤としてカルシウムイオンを有するカルシウム形の陽イオン交換樹脂が充填された複数の充填塔を直列かつ無端に連結して原液および溶離液が循環可能な循環系を形成し、該循環系に、糖濃度が40%以上、アロース組成が20%以上の原液、および溶離液を供給し、前記循環系を、溶離液供給部からアロース画分抜出部までのアロースの脱着帯域、アロース画分抜出部から原液供給部までのアロースの濃縮帯域、原液供給部からプシコース画分抜出部までのプシコースの吸着帯域、プシコース画分抜出部から溶離液供給部までのプシコースの回収帯域の4つの帯域に区分し、各供給部および各抜出部を所定の位置関係を保ちつつ順次循環方向下流側に移行させることにより吸着剤の擬似移動層を形成して、循環液をアロース画分とプシコース画分とに連続的にクロマト分離することを特徴とする方法からなる。
【0009】
このアロースの分離方法においては、分離したプシコース画分を原液の製造工程に回収して再利用することも可能である。本発明に係るアロースの製造方法は、上記のようなアロースの分離方法を用いて、高純度かつ高回収率でアロースを連続的に製造することを特徴とする方法からなる。この方法により、高純度のアロースを工業的規模で大量生産することが可能になる。さらに、クロマト分離で得られたアロースの溶液からアロースを結晶として回収することができる。たとえば、アロースのアルコールに難溶性の性質を利用してアロースを結晶化させアロース結晶を分離することができる。
【0010】
本発明で使用する異性化を触媒する酵素L-ラムノースイソメラーゼは、L-ラムノースからL-ラムニュロースへの異性化反応、ならびに、L-ラムニュロースからL-ラムノースへの異性化を触媒する酵素である。L-ラムノースイソメラーゼの種類は限定されないが、本発明ではD−プシコースからD−アロースを生産することができる酵素Pseudomonas stutzeri由来の「L−ラムノースイソメラーゼ」を好ましいものとして例示される。L−ラムノースイソメラーゼは、「ジャーナル・オブ・ファーメンテーション・アンド・バイオエンジニアリング(Journal of Fermentation and Bioengineering)」第85巻、539乃至541頁(1998年)で発表された公知酵素である。Pseudomonas stutzeri に属する菌株「Pseudomonas stutzeri LL172」は、日本国独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6)に2004年1月6日に国際寄託している(IPOD FERM BP-08593)が、それ由来のL-ラムノースイソメラーゼは配列番号1に記載されるアミノ酸配列、またはそのアミノ酸配列の中の1個以上のアミノ酸が他のアミノ酸で置換され、欠失され、1個以上のアミノ酸が付加されてなるアミノ酸配列を有し、以下の物理化学的性質を有する酵素である(WO
2004/063369)。
(イ)作用pHおよび至適pH
作用pHは7.0〜10.0であり、至適pHは9.0である。
(ロ)pH安定性
種々のpHで4℃、1時間保持した場合、pH6.0〜11.0の範囲で安定である。
(ハ)作用温度および至適温度
作用温度は40〜65℃であり、至適温度は60℃である。
(ニ)温度安定性
40℃、10分では安定しており、50℃、10分でも90%以上残存している。
(ホ)キレート剤の影響
キレート剤であるEDTA、EGTAを活性測定時に共存させても、ほとんど活性は阻害されない。
(ヘ)金属イオンの影響
1mMのコバルトイオンにより約30%阻害される。
(ト)SDS−PAGE法による分子量
約43,000である。
【0011】
通常、得られた培養菌体からL−ラムノースイソメラーゼを抽出し、そのままで反応に用いることができるが、好ましくは固定化した形態で用いる。固定化の対象とするL−ラムノースイソメラーゼそのものは、使用目的に応じて、必ずしも高純度に精製されたものでなくてもよく、粗酵素であっても用いることができる。粗酵素の具体的例としては、上記のL−ラムノースイソメラーゼ産生能を有する微生物自体を、また、その培養物や部分精製した培養物を用いることができる。
【0012】
本発明により、異性化を触媒する酵素の作用で基質L-ラムノースまたはL-ラムニュロースから目的希少糖L-ラムニュロースまたはL-ラムノースへ変換し、得られる原液溶液を擬似移動層により連続的にクロマト分離することにより工業的に有効な高純度、高回収率で目的希少糖溶液を連続的に大量生産する。イズモリング(登録商標)を用いて異性化反応を整理した。L−ラムノースイソメラーゼの全ての異性化反応は、イズモリングの図1、図2、図3に示される。基質特異性は表1、表2、表3に示される。L-ラムノースおよびL-ラムニュロースを基質とする。のみならず、L−リキソースおよびL−キシルロース、L−マンノースおよびL−フラクトース、D−リボースおよびD−リブロース、D−アロースおよびD−プシコースを基質とする。図1、図2、図3よりL−ラムノースイソメラーゼが単糖の多くを基質とすることが理解できる。すなわち、活性の大小はあるものの、L−ラムノースイソメラーゼが触媒することが確認された異性化反応は図1中太い黒線で示したものである。一方、異性化反応が確認できなかったものは、太い点線で示した4種であることが一目瞭然に理解できる。また、図2、図3に示すように、これも活性の大小はあるものの、ペントースおよびテトロースにおける全異性化活性を持つことを示している。
【0013】
【表1】


【0014】
【表2】

【0015】
【表3】

【0016】
目的希少糖がD-アロースである場合について説明する。D-アロースは、希少糖研究の中で特に各種生理活性を有することが判明してきた希少糖である。希少糖とは、自然界に微量にしか存在しない単糖および糖アルコールと定義づけることができる。自然界に多量に存在する単糖は、D-グルコース、D-フラクトース、D-ガラクトース、D-マンノース、D-リボース、D-キシロース、L-アラビノースの7種類あり、それ以外の単糖は全て希少糖である。また糖アルコールは単糖を還元してできるが、自然界にはD-ソルビトールが比較的多いがそれ以外のものは量的には少ないので、これらも希少糖と考えられる。
D-アロース(D-アロヘキソース)は、アルドース(アルドヘキソース)に分類されるアロースのD体であり、融点が178℃の六炭糖(C6H12O6)である。
【0017】
このD-アロースの製法としては、上記L-ラムノースイソメラーゼを用いてD-プシコースから合成する製法によれば、D-アロースを生成する場合には、未反応のD-プシコースと共に、新たに生成したD-アロースを含有している酵素反応液として得られる。本発明では、基質を含む溶液を原料にして酵素反応でD-アロースを含む溶液として得られるD-アロースの製造方法を利用して、D-アロースを分離回収することができ、また連続的に製造することができる。アロースとプシコースを含む溶液から高純度のプシコースを含む溶液を高回収率で分離する方法について検討した結果、原液糖濃度が40%(全溶液中の重量%、以下同様)以上、アロース組成が20%(全固形分中の重量%、以下同様)以上の溶液を擬似移動層により連続的にクロマト分離することにより工業的に有効な高純度、高回収率でプシコース溶液を連続的に大量生産できる。
【0018】
本発明の連続法について、好ましい態様について説明する。
固定化酵素は、例えばL-ラムノースイソメラーゼを共有結合法によって固定化したものを用いる。これは、酵素を菌体から抽出したものを用いる場合は沈殿させた後に、菌体そのものを用いる場合はそのまま、グルタルアルデヒドにより架橋する。これは共有結合が起こり架橋されるもので、これにリジンを添加することでさらに強度が増すこととなる。この固定化法によって、これまで1週間ほどの安定性であったものが数ヶ月の安定性を持つ固定化酵素を得ることができる。L-ラムノースイソメラーゼを共有結合法によって固定化した固定化酵素および/または固定化微生物を使用するバイオリアクターに通液し例えば50%エタノール溶液中でも安定な固定化酵素を用いたバイオリアクターを構築することができる。50%エタノール溶液中でも安定な固定化酵素を用いたバイオリアクターを用いて、50%エタノールを含むD-プシコース溶液を通液することで、反応時は42℃、結晶化時は4℃と温度をコントロールすることによりD-アロースの結晶を連続的に製造する。結晶化後のろ液をエタノール除去、濃縮することなしにバイオリアクターに再添加する。
【0019】
本発明の分離回収の原理を説明する。目的希少糖がアロースである例について説明すると、アロースとプシコースを含む、糖濃度が40%以上、アロース組成が20%以上の原液から、溶離液として水を用いてアロース画分とプシコース画分とにクロマト分離される。まず、この本発明で用いるクロマト分離法の基本的な概念について説明する。
【0020】
図4に模式的に示すように、特定の吸着剤1、つまり本発明においてはカルシウム形の強酸性陽イオン交換樹脂が複数の充填層(本発明では充填塔2)に充填され、該複数の充填塔2が直列かつ無端に連結されて原液Fおよび溶離液Dが循環可能な循環系3が形成される。吸着剤としてのカルシウム形強酸性陽イオン交換樹脂1は、プシコースとアロースに対し選択的吸着能力を有し、プシコースに対しては高い吸着能力を発揮するが、アロースに対しては実質的に非吸着性である。この吸着能力の差に起因して生じる、循環系3内の溶液のプシコースの濃度分布およびアロースの濃度分布を利用し、アロースを多く含むアロース画分Aとプシコースを多く含むプシコース画分Cとが、それぞれ特定の位置から抜き出される。このクロマト分離を連続的に行うには、循環系3内への液の供給位置および循環系3内の定常的な循環流に対して、吸着剤を反循環流方向に相対的に移動させる必要がある。この相対移動は、実際に吸着剤を移動させることでも達成できるが、そうすると各成分の濃度分布がくずれたり、吸着剤に物理的な力が作用して吸着剤の粉砕等の問題が生じるので、各液の供給位置および各画分の抜出位置を一定の関係に保ちながら、順次循環流下流側に間欠的に移行させることにより、吸着剤が移動されたのと同等の効果が得られるようにしたのが、擬似移動層式のクロマト分離である。
【0021】
このような擬似移動層式のクロマト分離においては、循環系3が、溶離液Dの供給部からプシコース画分Cの抜出部までのプシコースの脱着帯域4と、プシコース画分Cの抜出部から原液Fの供給部までのプシコースの濃縮帯域5と(図4におけるCnがプシコースの濃縮分布を示している。)、原液Fの供給部からアロース画分Aの抜出部までのプシコースの吸着帯域6と(図4におけるAnがアロースの濃度分布を示している。)、アロース画分Aの抜出部から溶離液Dの供給部までのアロースの回収帯域7との4つの帯域に区分される。これら4つの帯域が、各液の供給位置および各画分の抜出位置を図4に示したような位置関係に保ちながら、適切な時間間隔をもって順次下流側に移行されることにより、擬似的に吸着剤の移動層が形成され、擬似移動層式のクロマト分離が行われる。
【0022】
このような擬似移動層式クロマト分離方法を実施するための、本発明に係る装置の構成例を図5および図6に示す。
【0023】
図5に示す擬似移動層式クロマト分離装置11においては、8塔の充填塔12が設けられ、各充填塔12内には、原液中に含まれるアロースとプシコースに対し選択的吸着能力を有する吸着剤13として、カルシウム形強酸性陽イオン交換樹脂が充填されている。各充填塔12は、配管14により、各充填塔12の出口から隣接する充填塔12の入口へと連結されて、全体として直列に連結されており、最後部の充填塔12(たとえば、図2におけるNo.8充填塔12)の出口から最前部の充填塔12(たとえば、図5におけるNo.1充填塔12)の入口へと配管14で連結されることにより、全充填塔12が無端に連結されている。したがって、この全充填塔12が無端に連結された系は、流体が矢印方向に循環可能な循環系15として形成されている。この循環系15内のいずれか適当な部位に、循環ポンプPRが配設されている。また、循環系15には、循環系15内の圧力が予め設定した所定圧以上にはならないように、異常高圧逃がし用に安全弁16(又はリリーフ弁)が設けられている。
【0024】
上記循環系15に対し、原液タンク17に収容されている、アロースとプシコースを含む原液18が供給される。本実施態様では、原液18は、原液供給ポンプPFにより原液供給ライン19を介して供給され、供給圧が設定圧以上になるとリリーフ弁20によってタンク17に戻される。原液供給ライン19は、各分岐供給ライン21に分岐され、原液は各分岐供給ライン21を介して各充填塔12の入口側に供給可能となっている。各分岐供給ライン21には、開閉可能な原液供給弁F1、F2、F3、F4、F5、F6、F7、F8が設けられており、開弁された原液供給弁のラインを介して対応する充填塔12に原液が供給される。
【0025】
溶離液タンク22に収容されている溶離液23(本発明では水)は、本実施態様では、溶離液供給ポンプPDにより、溶離液供給ライン24を介して供給され、供給圧が設定圧以上になるとリリーフ弁25によってタンク22に戻される。溶離液供給ライン24は、各分岐供給ライン26に分岐され、溶離液は各分岐供給ライン26を介して充填塔12の入口側に供給可能となっている。各分岐供給ライン26には、開閉可能な溶離液供給弁D1、D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8が設けられており、開弁された溶離液供給弁のラインを介して対応する充填塔12に溶離液が供給される。
【0026】
各充填塔12と、その下流側に位置する充填塔12との間の配管14からは、アロース画分抜出ライン27が分岐され、各抜出ライン27には、各ラインを開閉可能なアロース画分抜出弁A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8が設けられている。各抜出ライン27は、合流されて一つのアロース画分合流管28にまとめられている。
【0027】
同様に、配管14から、プシコース画分抜出ライン29が分岐され、各抜出ライン29には、各ラインを開閉可能なアロース画分抜出弁C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8が設けられている。各抜出ライン29は、合流されて一つのプシコース画分合流管30にまとめられており、ここからプシコース画分が抜き出される。抜き出されたプシコース画分はクロマト分離用原液の製造工程すなわちプシコースの一部をアロースにする反応工程用の原料プシコース溶液収容タンク(図示略)に回収することができる。
【0028】
このように構成された擬似移動層式クロマト分離装置11を用いて、本発明に係るアロースの分離方法が実施され、循環系15に糖濃度が40%以上、アロース組成が20%以上の原液と、水からなる溶離液とが供給される。そして、前述の図1に示したような基本的な分離処理操作が行われるように、各弁の開閉が制御されて、本発明に係るアロースの分離方法が実施される。各弁の開閉制御により、各液の供給位置および各画分の抜出位置が所定の位置関係に保たれながら、順次下流側に移行される。この移行が、循環系15に対し一巡すると、分離処理の1サイクルが終了する。
【0029】
この1サイクルの動作例を表1に示す。表1には、各弁F1〜F8、D1〜D8、A1〜A8、C1〜C8の開閉制御状態が示されており、表中の数字は各弁の番号を示しており(たとえば、Fの項で「1」はF1の弁を示している)、その番号が記入されている弁が開弁されることを表している。また、循環ポンプPRの項では、丸印は作動オン状態を示しており、本実施態様では基本的に循環ポンプPRは分離処理中常時運転されている。
【0030】
【表4】

【0031】
図6は、本発明の方法に適用可能な別の実施態様に係る擬似移動層式クロマト分離装置を示している。本実施態様では、装置全体の簡素化、小型化がはかられつつ、アロースの高純度、高回収率での分離が可能となっている。
【0032】
本実施態様に係るクロマト分離装置41では、充填塔の数が4塔とされており、このクロマト分離装置41で原液タンク42からの原液43の分離処理を行う。クロマト分離装置41は、4つの充填塔44(No.1〜No.4充填塔)を備えており、各充填塔44内には、原液43中に含まれる特定成分としてのアロースとプシコースに対し選択的吸着能力を有するカルシウム形陽イオン交換樹脂からなる吸着剤45が充填されている。各充填塔44は、配管46により、各充填塔44の出口から隣接する充填塔44の入口へと連結されて、全体として直列に連結されており、最後部の単位充填塔44(たとえば、図6におけるNo.4充填塔44)の出口から最前部の単位充填塔44(たとえば、図6におけるNo.1充填塔44)の入口へと配管46で連結されることにより、全充填塔44が無端に連結されている。したがって、この全充填塔44が無端に連結された系は、流体が矢印方向に循環可能な循環系47として形成されている。
【0033】
上記循環系47内のいずれか適当な部位に、循環ポンプPRが配設されている。また、循環系47内の各隣接充填塔44間の部位には、それよりも循環方向下流側の充填塔44に対し循環系47を遮断可能な遮断弁R1、R2、R3、R4が設けられている。各遮断弁R1〜R4と、その上流側に位置する各充填塔44の出口との間には、吸着剤45に対し吸着能力の低いアロースを多く含むアロース画分の抜き出しライン48がそれぞれ分岐され、各抜き出しライン48には、各ラインを開閉可能なアロース画分抜出弁A1、A2、A3、A4が設けられている。各抜き出しライン48は、合流されて一つのアロース画分合流管49にまとめられている。また、同様に、吸着剤45に対し吸着能力の高いプシコースを多く含むプシコース画分の抜き出しライン50がそれぞれ分岐され、各抜き出しライン50には、各ラインを開閉可能なプシコース画分抜出弁C1、C2、C3、C4が設けられている。各抜き出しライン50は、合流されて一つのアロース画分合流管51にまとめられている。
【0034】
循環系47には、循環系47内の圧力が予め設定した所定圧以上にはならないように、異常高圧逃がし用に安全弁52(又はリリーフ弁)が設けられている。また、各充填塔44間には、逆流防止用の逆止弁53が設けられている。
【0035】
循環系47内には、原液43と、溶離液タンク54に収容された溶離液55が供給可能となっている。原液43は、本実施態様では、供給流量の制御が可能な原液供給ポンプPFにより、原液供給ライン56を介して供給され、供給圧が設定圧以上になるとリリーフ弁57によって原液タンク42に戻される。原液供給ライン56は、各分岐供給ライン58に分岐され、原液は各分岐供給ライン58を介して各充填塔44の入口側に供給可能となっている。各分岐供給ライン58には、開閉可能な原液供給弁F1、F2、F3、F4が設けられており、開弁された原液供給弁のラインを介して対応する充填塔に原液が供給される。
【0036】
溶離液55は、本実施態様では、供給流量の制御が可能な溶離液供給ポンプPDにより、溶離液供給ライン59を介して供給され、供給圧が設定圧以上になるとリリーフ弁60によって溶離液タンク54に戻される。溶離液供給ライン59は、各分岐供給ライン61に分岐され、溶離液は各分岐供給ライン61を介して各充填塔44の入口側に供給可能となっている。各分岐供給ライン61には、開閉可能な溶離液供給弁D1、D2、D3、D4が設けられており、開弁された溶離液供給弁のラインを介して対応する充填塔44に溶離液が供給される。
【0037】
このように構成されたクロマト分離装置41において、分離処理は次のように行われる。すなわち、このクロマト分離装置41では、5つの工程の運転が可能となっており、そのうち少なくとも第3の工程と、第2または第5の工程を含むように運転される。
【0038】
第1の工程では、いずれかの遮断弁Rが閉じられた状態で、いずれかの原液供給弁Fが開かれて溶離液が対応する充填塔44の入口側から循環系47内に供給され、そのときのアロース画分の抜き出し位置に相当するアロース画分抜出弁Aが開かれ、そのアロース画分抜き出しライン48を通してアロース画分の全量が抜き出される。
【0039】
第2の工程では、いずれかの遮断弁Rが閉じられた状態で、いずれかの溶離液供給弁Dが開かれて、溶離液がそれぞれ対応する充填塔44の入口側から循環系47内に供給され、そのときのプシコース画分の抜き出し位置に相当するプシコース画分抜出弁Cが開かれ、そのプシコース画分抜き出しライン50を通してプシコース画分の全量が抜き出される。
【0040】
第3の工程では、いずれかの遮断弁Rが閉じられた状態で、いずれかの溶離液供給弁Dが開かれて溶離液が対応する充填塔44の入口側から循環系47内に供給され、そのときのアロース画分の抜き出し位置に相当するアロース画分抜出弁Aが開かれ、そのアロース画分抜き出しライン48を通してアロース画分の全量が抜き出される。
【0041】
第4の工程では、一切の供給、抜き出し、遮断は行われず、原液と溶離液の混合液が循環系47内を循環ポンプPRにより循環移動され、循環系47内の液のプシコース画分とアロース画分への分離が促進される。
【0042】
この擬似移動層式クロマト分離装置41の運転の一例を、表2に示す。表2には、各弁F、D、A、Cの開閉制御状態が示されており、表中の数字は各弁の番号を示しており(たとえば、Fの項で1はF1の弁を示している)、その番号が記入されている弁が開弁されることを表している。空欄の場合には、閉弁の状態を示している。また、遮断弁Rの項では、遮断する弁(つまり、閉じる弁)の番号を示している。空欄の場合には全遮断弁Rは開かれている。さらに、循環ポンプPRの項では、丸印は作動オン状態を示しており、空欄の場合には、作動がオフとされ、循環系47内での必要な液の移動は循環ポンプPR内のクリアランスを介して行われ、そのときの液の抜き出しは、溶離液供給ポンプPDまたは/および原液供給ポンプPFの吐出圧を利用して行われる。
【0043】
表2において、工程No.1−1〜1−4から工程No.4−1〜4−4までが、本クロマト分離装置41における分離処理の1サイクルを示している。
【0044】
【表5】

【0045】
工程No.1−1〜1−4についてみるに、工程1−1では、遮断弁R2が閉じられ、原液供給弁F1が開かれて原液が循環系47内に供給されるとともに、アロース画分抜出弁A1が開かれて、そこからアロース画分の全量が抜き出される。したがって、この工程1−1は前述の第1の工程に相当している。
【0046】
工程1−2では、遮断弁R2が閉じられ、溶離液供給弁D3が開かれて溶離液が循環系47内に供給されるとともに、プシコース画分抜出弁C3が開かれて、そこからプシコース画分の全量が抜き出される。したがって、この工程1−2は前述の第2の工程に相当している。
【0047】
工程1−3では、弁D3が開かれ遮断弁R2が閉じられて、循環系47内に溶離液が供給されるとともに、アロース画分抜出弁A1が開かれて、そこからアロース画分の全量が抜き出される。したがって、この工程1−3は前述の第3の工程に相当している。
【0048】
工程1−4では、弁F、D、A、Cは全て閉じられるとともに、遮断弁Rは全て開かれ、循環ポンプPRが作動されて、循環系47内の液が循環移動されてプシコース画分、アロース画分への分離が促進される。したがって、この工程1−4は前述の第4の工程に相当している。
【0049】
以上の一連の工程1−1〜1−4は、原液、溶離液の供給位置、プシコース画分、アロース画分の抜き出し位置、および循環系47の遮断位置が、ある特定の位置関係をもって実行され、これら一連の工程1−1〜1−4が終了すると、その特定の位置関係を維持しつつ、各制御対象弁の位置が下流側に一つ移行され、次の一連の工程2−1〜2−4が実行される。この移行を順次行うことにより、擬似移動層式クロマト分離装置としての作動が成立する。
【0050】
工程2−1〜2−4、工程3−1〜3−4、工程4−1〜4−4では、上記の如く各弁の位置が一つずつ移行された状態にて、上記工程1−1〜1−4と同様の運転が実行される。工程1−1〜4−4までが実行されると、分離処理の1サイクルが終了する。
【0051】
上記分離処理においては、原液供給ポンプPFおよび溶離液供給ポンプPDは、定流量供給制御としてもよいし、流量制御を行ってもよい。流量制御を行う場合には、たとえば溶離液のみの供給から、溶離液と原液の両液の供給に移行する場合、トータルの供給量を一定にするような制御を行うこともでき、より高精度の分離が可能となる。
【0052】
さらに、第3の工程が必須とされることで、溶離液が循環系47内を循環されて、少ない充填塔数でありながら、プシコース画分、アロース画分への十分に高い分離効率が容易に達成される。
【実施例1】
【0053】
[L-ラムノースイソメラーゼの調製]
D-プシコースからD-アロースの生産は、Pseudomonas stutzeri LL172の生産するL-ラムノースイソメラーゼをグルタルアルデヒドを用いた架橋法で固定化酵素を作成した。Pseudomonas stutzeri LL172は、日本国独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国茨城県つくば市東1−1−1 中央第6)に2004年1月6日に国際寄託している(IPOD FERM BP-08593)。上記段落番号0010参照。
【0054】
[アロースの製造]
50%D−プシコースを含有する溶液(1mM MnCl2を含むグリシン緩衝液pH9に溶解したもの)100mlに上記の固定化L-ラムノースイソメラーゼ(約20000単位の固定化酵素)を作用させて、D−アロースとD−プシコースを生成せしめ、酵素反応液を得る。この反応液はD-アロース30.240%、D-プシコース68.443%、その他反応時の副産物、1.316%よりなる全糖濃度50%のD-アロース原液として得られる。
【0055】
[アロースの分離]
図3に示した擬似移動層式クロマト分離装置41を用いて、D-アロース30.240%、D-プシコース68.443%、その他反応時の副産物、1.316%よりなる全糖濃度50%のD-アロース原液を分離した。No.1〜No.4の各充填塔44は内径28mm、高さ1.0mの円筒形とし、各充填塔44にはカルシウム形の強酸性陽イオン交換樹脂”アンバーライト”CR1310(ロースアンドハース社製)を2.46L充填した。充填塔44内は約60℃に保持した。この擬似移動層においてD-アロース原液および遊離液としての水の供給量を(1サイクル当たりの供給量)をそれぞれ以下の条件で運転した。
【0056】
D-アロース原液 :360ml
水供給量 :1980ml
D-アロース画分抜出液 :540ml
D-フラクトース画分抜出液 :1800ml
循環量 :1548ml
1サイクル当たりの時間 :3.867h

【0057】
【表6】

【0058】
定常状態において抜き出されたD-アロース画分およびD-プシコース画分の糖組成は上記表に示した。D-アロース画分中のD-アロースの回収率は83.7%であった。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】イズモリングを用いて示した、L−ラムノースイソメラーゼが触媒するヘキソースの異性化反応である。太い黒線が触媒することが確認された異性化反応である。太い点線が触媒反応が確認されなかった異性化反応である。
【図2】イズモリングを用いて示した、L−ラムノースイソメラーゼが触媒するペントースの異性化反応である。太い黒線が触媒することが確認された異性化反応である。全ての異性化反応が確認された。
【図3】イズモリングを用いて示した、L−ラムノースイソメラーゼが触媒するテトロースの異性化反応である。太い黒線が触媒することが確認された異性化反応である。全ての異性化反応が確認された。
【図4】本発明で適用する擬似移動層式クロマト分離方法の説明図である。
【図5】本発明の一実施態様に係るアロースの分離方法を実施するためのクロマト分離装置の機器系統図である。
【図6】本発明の別の実施態様に係るアロースの分離方法を実施するためのクロマト分離装置の機器系統図である。
【符号の説明】
【0060】
1 吸着剤
2 充填塔(充填層)
3 循環系
4 プシコースの脱着帯域
5 プシコースの濃縮帯域
6 プシコースの吸着帯域
7 アロースの回収帯域
A アロース画分
C プシコース画分
D 溶離液
F 原液
11、41 クロマト分離装置
12、44 充填塔
13、45 吸着剤
14、46 配管
15、47 循環系
17、42 原液タンク
18、43 原液
19、56 原液供給ライン
21、58 原液分岐供給ライン
22、54 溶離液タンク
23、55 溶離液
24、59 溶離液供給ライン
26、61 溶離液分岐供給ライン
27、48 アロース画分抜出ライン
28、49 アロース画分合流管
29、50 プシコース画分抜出ライン
30、51 プシコース画分合流管
PR 循環ポンプ
A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8 アロースの画分抜出弁
C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8 プシコースの画分抜出弁
PF 原液供給ポンプ
PD 溶離液供給ポンプ
F1、F2、F3、F4、F5、F6、F7、F8 原液供給弁
D1、D2、D3、D4、D5、D6、D7、D8 溶離液供給弁
R1、R2、3、R4 遮断弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異性化を触媒する酵素の作用で基質希少糖から目的希少糖へ変換し、得られる原液を擬似移動層により連続的に目的希少糖画分としてクロマト分離することを特徴とする精製希少糖の大量生産方法。
【請求項2】
基質希少糖D−プシコースから目的希少糖の精製D−アロースを製造する請求項1の精製希少糖の大量生産方法。
【請求項3】
クロマト分離が、目的希少糖と基質希少糖を含む原液から、溶離液として水を用いて目的希少糖を多く含む目的希少糖画分と基質希少糖を多く含む基質希少糖画分とにクロマト分離する方法であって、基質希少糖と目的希少糖に対し選択的吸着能力を有する吸着剤としてカルシウム形の陽イオン交換樹脂が充填された複数の充填塔を直列かつ無端に連結して原液および溶離液が循環可能な循環系を形成し、該循環系に、糖濃度が40%以上、目的希少糖組成が20%以上の原液、および溶離液を供給し、前記循環系を、溶離液供給部から目的希少糖画分抜出部までの目的希少糖の脱着帯域、目的希少糖画分抜出部から原液供給部までの目的希少糖の濃縮帯域、原液供給部から基質希少糖画分抜出部までの基質希少糖の吸着帯域、基質希少糖画分抜出部から溶離液供給部までの基質的希少糖の回収帯域の4つの帯域に区分し、各供給部および各抜出部を所定の位置関係を保ちつつ順次循環方向下流側に移行させることにより吸着剤の擬似移動層を形成して、循環液を目的希少糖画分と基質希少糖画分とに連続的にクロマト分離する請求項1または2の精製希少糖の大量生産方法。
【請求項4】
分離した基質希少糖画分を原液の製造工程に回収する請求項3の精製希少糖の大量生産方法。
【請求項5】
下記配列番号(a)または
(b)に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質からなる異性化を触媒する酵素の作用で基質糖から目的希少糖へ変換し、得られる原液を擬似移動層により連続的に目的希少糖画分としてクロマト分離することを特徴とする精製希少糖の大量生産方法。
(a)配列番号1に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。
(b)配列番号1に示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、L-ラムノースイソメラーゼ活性を有するタンパク質。
【請求項6】
上記酵素が、Pseudomonas stutzeri 由来のL-ラムノースイソメラーゼである請求項5の精製希少糖の大量生産方法。
【請求項7】
目的希少糖がD−アロースまたはD−プシコースである請求項5または6の精製希少糖の大量生産方法。
【請求項8】
クロマト分離が、目的希少糖と基質糖を含む原液から、溶離液として水を用いて目的希少糖を多く含む目的希少糖画分と基質糖を多く含む基質糖画分とにクロマト分離する方法であって、基質糖と目的希少糖に対し選択的吸着能力を有する吸着剤としてカルシウム形の陽イオン交換樹脂が充填された複数の充填塔を直列かつ無端に連結して原液および溶離液が循環可能な循環系を形成し、該循環系に、糖濃度が40%以上、目的希少糖組成が20%以上の原液、および溶離液を供給し、前記循環系を、溶離液供給部から目的希少糖画分抜出部までの目的希少糖の脱着帯域、目的希少糖画分抜出部から原液供給部までの目的希少糖の濃縮帯域、原液供給部から基質糖画分抜出部までの基質糖の吸着帯域、基質糖画分抜出部から溶離液供給部までの基質糖の回収帯域の4つの帯域に区分し、各供給部および各抜出部を所定の位置関係を保ちつつ順次循環方向下流側に移行させることにより吸着剤の擬似移動層を形成して、循環液を目的希少糖画分と基質糖画分とに連続的にクロマト分離する請求項5、6または7の精製希少糖の大量生産方法。
【請求項9】
分離した基質糖画分を原液の製造工程に回収する請求項8の精製希少糖の大量生産方法。
【請求項10】
請求項3、4、8または9の方法を用いて、高純度かつ高回収率で目的希少糖を連続的に製造することを特徴とする精製希少糖の大量生産方法。
【請求項11】
クロマト分離で得られた目的希少糖の溶液から目的希少糖を結晶として回収する請求項1ないし10のいずれかの精製希少糖の大量生産方法。



























【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−153591(P2006−153591A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−342930(P2004−342930)
【出願日】平成16年11月26日(2004.11.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成16年5月28日 国際希少糖学会主催の「国際希少糖学会 第2回国際シンポジウム」において文書をもって発表
【出願人】(304028346)国立大学法人 香川大学 (285)
【出願人】(000155908)株式会社林原生物化学研究所 (168)
【出願人】(591286270)株式会社伏見製薬所 (50)
【Fターム(参考)】