説明

精製方法

【課題】非金属汚染物質からアリルアミン医薬、遊離塩基形または酸付加塩形のテルビナフィンの精製をするための方法を提供すること。
【解決手段】式(I)


の粗テルビナフィン塩基を、例えば、100℃を超える温度でおよび減圧で、例えば、0.2mbarで、好ましくは短経路の蒸留により蒸留し(方法A)、所望により純トランス異性体の同時沈殿下で得られる生成物の塩形成を伴い(方法B)、そして遊離塩基形または酸付加形の純テルビナフィンを回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアリルアミン医薬のための精製方法に関する。それは粗テルビナフィン塩基を精製するための方法および得られる純テルビナフィンに関する。
【背景技術】
【0002】
特に、塩酸塩である酸付加塩形の形態のテルビナフィンは例えば、EP 24587から既知である。それはアリルアミン抗真菌薬のクラスに属する。それは商標Lamisilの下に市販されている。それは広範囲の真菌感染症に局所的および経口的投与両方で有効である。テルビナフィンは皮膚の死組織またはその付属物、例えば、角質層、爪および髪に侵入する感染性菌類である皮膚糸状菌に対して特に有効である。
【0003】
テルビナフィンは、インビトロでの強力な殺菌作用ならびに経口的および局所的投与したときの様々な皮膚糸状菌感染に対する速い臨床効果に基づき、抗真菌剤治療における著しい進歩を示す。それはエルゴステロール生合成の強力な阻害剤であり(Ann. NY Acad. Sci. 544 [1988] 46 62)、それはスクアレンエポキシダーゼの作用をブロックし、したがってスクアレンのスクアレンエポキシドへの変換を阻害する。エルゴステロール合成は部分的に阻害されるのみであるが、細胞増殖は完全に阻止される。これはテルビナフィンの殺菌作用が高濃度で菌類に毒性であり得るスクアレンの蓄積に関連し得ることを示唆する。インビトロでテルビナフィンの活性のスペクトルはTrichophyton、EpidermophytonおよびMicrosporum属のすべての皮膚糸状菌を含む。これらの皮膚糸状菌に対する平均最小阻害濃度は0.001μg/mlから0.01μg/mlの範囲にわたる(Science 224 [1984] 1239-1241)。テルビナフィンはまたカビおよび二形成の菌類に対して、ならびにPityrosporum、CandidaおよびRhodotorula属の多数の病原性酵母に対してインビトロで活性である。
【発明の開示】
【0004】
テルビナフィンの構造は式I
【化1】

で示されるとおりであり、そしてその化学名はとりわけ(E)−N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチル−1−ナフタレン−メタンアミンである。
【0005】
それは遊離塩基形または酸付加塩形であり得る。酸付加塩形は慣用の方法で遊離塩基形から製造することができ、逆もまた同様である。適当な酸付加塩形の例は塩酸塩、乳酸塩、アスコルビン酸塩およびリンゴ酸塩、例えば、L−(−)−リンゴ酸水素塩である。遊離塩基ならびに塩酸塩およびリンゴ酸塩、とりわけ、塩酸塩およびL−(−)−リンゴ酸水素塩が好ましい。
【0006】
上記式Iから明らかなとおり、テルビナフィンは側鎖中の二重結合に共役した三重結合を有するアリルアミン化合物である。テルビナフィンははるか以前に発明され(例えば、EP 24587、実施例16参照)、そしてこのような共役したエニン構造は当時、そして現在もまだ医薬の分野において非常に珍しく、医薬品化学において新規構造的特徴を構成する。
【0007】
二重結合および三重結合両方は通常非常に反応性である。化学文献はこのような構造を有する化合物が安定である可能性を排除しないが、いくつかは不安定であり、そして貯蔵または加工、例えば、熱が適用されるとき、例えば、高温での蒸留のときに分解され得る。
【0008】
純ペンタ−1,2−ジエン−4−インを57°のその通常の沸点温度での単純な蒸留に付すことがすでに分解をもたらすことが例えば、E.R.H. Jones et al., J. Chem. Soc. (1960) 341-346から明らかである。同様に、(非共役)1−アルケン−4−インダイマー[CH=CH−CH−C≡C−C(CH)(OH)−]、すなわち、6,7−ジメチル−ドデカ−1,11−ジエン−4,8−ジイン−6,7−ジオール(H. Disselnkoetter and P. Kurtz, Ann. Chem. [1964] 26-34の化合物V)は低温(85−90℃)および圧力(0.05mmHg)での蒸留により、ならびに81−85℃および0.03mmHgでの新たな蒸留によりかなりの分解が起こる。さらに、エンジイン、(Z,Z)−3,7−デカジエン−1,5,9−トリエンは容易に重合し、その溶液は170−190℃で熱分解しナフタレンになり、一方、対応する(E,Z)および(E,E)異性体の熱分解では他の生成物またはポリマーになる(J.Am.Chem.Soc. 114 [1992] 3120 3121)。
【0009】
さらに、共役したエンイン化合物、例えば、エーテルCHCH=CH−C≡C−CHOCの対応する1,3,5−トリエン化合物への異性化は、付随するエタノールの1,6−除去からもたらされる蒸留後の多量のポリマー残基を伴い得て、一方、OC基のアミノ基での置換は芳香族化をもたらす(Van Dongen, J. et al., Recueil Trav. Chim. Pays-Bas 86 [1967] 1077 1081)。
【0010】
さらに、仮に蒸留をエンイン誘導体で行うとき、これは加熱で分解または崩壊または重合化、さらに爆発さえ起こり得る高い反応性化合物であることが予測されるため、通常100℃未満またはわずかに超える、とりわけ約125℃未満の温度で行うことが、例えば、上記出版物から包括的に顕著に明白である。これはまた例えば、Recueil Trav.Chim.Pays-Bas 85 (1966) 952 965およびZh.Org.Khim 3 (1967) 1792 3 (CA 68 [1968] 12370)に記載されているほとんどのアルケンイン誘導体で明白であり、一方Czech Author's Certificate No. 232843 (CA 106 [1984] 213632b)に記載のフェロモンに関する2つの中間体は減圧下で102−115℃および118−125℃各々で蒸留により精製される。
【0011】
さらに、遊離塩基形のテルビナフィンを140℃で0.3mbar圧力で沸騰させ、そしてその温度でその熱安定性は限界である:したがって下記分解が観察され得る(ガスクロマトグラフィーによる分析;全てのピークの合計との比較である1つの化合物のピークのエリアをエリア%と名付ける;Z異性体の場合、エリア%はほぼ重量%と一致するはずである):
【表1】

一方、生成物は43℃未満で既に凝固する。
【0012】
したがって、とりわけ、医薬の工業的製造におけるような大規模な操作において、このような珍しい構造を有する化合物を後処理するとき、とくにその構造が限られた熱安定性と関係するとき、通常は熱の実質的な適用を必要とする操作の実施を控えるであろう。例えば、テルビナフィンの製造を記載しているBanyu EP 0 421302 A2の実施例13において、反応後に得られる粗混合物(遊離塩基)はシリカゲルクロマトグラフィーによる精製に付される。
【0013】
しかし、直観とは逆に、テルビナフィン塩基を特に不都合な影響なく蒸留に付すことができることが本発明により見いだされた。さらに、このような蒸留は、高温、例えば、100℃を著しく超える温度で、例えば、約110℃から約170℃、好ましくは約125℃から約165℃、とりわけ約160℃、および対応する減圧下、例えば160℃(ジャケット温度)で0.2mbarで達成され得ることが見いだされた。
【0014】
それにより達成される収率は通常は粗生成物から出発して約95%である。
【0015】
上記発明は、遊離塩基形の粗テルビナフィンを蒸留に付し、そして得られる遊離塩基形または酸付加塩形の生成物を回収することを含むテルビナフィンの精製のための新規方法として、同時係属出願PCT/EP2004/9587(WO 2005/21483)およびその対応特許に記載され請求されている。
【0016】
該方法が特にとりわけその化学合成に起因する金属汚染物質から、例えば、触媒、例えば、銅および/または特にパラジウム汚染物質からテルビナフィンを分離するために、特に例えば、Banyu EP 421302および/またはDipharma EP 1'236'709に記載されている、例えば、テルビナフィン塩基を得るための(E)−N−(3−ハロ−2−プロペニル)−N−メチル−N−(1−ナフチルメチル)アミン(R11がメチルであり、R21が1−ナフチルメチルであり、そしてWがハロゲン、例えば、ブロモ、好ましくはクロロであるEP 421302の式IVの化合物)と3,3−ジメチル−1−ブチン(Rがtert−ブチルである前記の式Vの化合物)のパラジウムおよび/または銅触媒存在下での反応による方法に従ったまたは同様の合成に起因する汚染物質を減少または除去するために有用であることがそこで強調されている。触媒は例えば、ヨウ化銅(I)、またはヨウ化銅(I)とビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライドまたはテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、またはさらにEP 421302 A2の例えば、7頁の54行目から8頁の18行目に記載されているものから選択されるパラジウム、銅またはパラジウム/銅含有触媒である。
【0017】
その方法は慣用の手段により、好ましくはいわゆる“穏やかな”蒸留方法、例えば、バッチ蒸留として、または好ましくは連続または半連続方法で、およびとりわけ加熱マントルと冷却器間の経路が例えば10cm程度と短く、したがってテルビナフィンが高温、例えば100℃を超える状態の時間を最小にしている“短経路”の蒸留として行う。
【0018】
“短経路の蒸留”なる用語は、過大な構造変化または分解なしに長期加熱に耐えられない有機(またはシリコン)化合物の混合物を分離するための高真空蒸留と理解されるべきである。これは蒸発器の表面膜への放射性の熱放出のための主要な本体として凝縮熱を利用する。蒸発器と冷却器間の経路は塞がれない。短い滞留時間および低い蒸留温度のため、有機物質に対する熱的危険性が大いに減少する。
【0019】
短経路の蒸留を使用する方法はWO 2005/21483の記載に沿って、例えば、図において説明されるとおりの好都合な設備を使用して行うことができ、それにより蒸留は好ましく、そして循環処理をさせながら精製を意図する混合物の短い加熱時間が可能となり、精製される生成物の収率が対応して改善する。さらに、蒸発器壁上の物質の厚みが減少し、より低い蒸発温度およびより短い滞留時間を可能とする。それにより汚染物質からの非常に効率の良い分離はさらなるクロマトグラフィーまたは再結晶によるような精製段階、または、多量の炭の使用の必要なく、達成される。
【0020】
しかし本発明以前に、高温で分解なしにまたはわずかな分解のみで蒸留を行うことができるテルビナフィン塩基の能力から得られる最大の可能性および使用は理解されていなかった。他の非金属汚染物質、特に有機化合物、例えば、(メチル)(ナフタレン−1−イルメチル)アミン(副生成物1);2,2,7,7−テトラメチルオクタ−3,5−ジイン(生成物2);およびテルビナフィンのZ異性体が、もし存在するならば、例えば、副生成物1およびテルビナフィンのZ異性体を一部のみ除去できるかまたは全く除去できないと信じられていた。
【0021】
しかし、汚染物質を検出するために使用できる方法の徹底的な研究および改良が今回、予測に反して、さらに有機汚染物質化合物は上記方法またはそれに類似の条件を使用して、除去できるかまたは非常に減少し得ることを示した。
【0022】
テルビナフィン塩基およびこのような有機汚染物質の物理化学的特性から、この簡単な蒸留手段が、医薬最終生成物からこのような汚染物質の大部分を分離できることは、非常に驚くべきことであり、意外であった。
【0023】
したがって好都合な手段が、本発明により、大きな、工業規模で、有機汚染物質から非常に精製されたテルビナフィンを製造するために利用できる。
【0024】
遊離塩基形または酸付加塩形の“純テルビナフィン”は非金属汚染物質なし、例えば、全体で約2%w/w未満の非金属、とりわけ有機汚染物質を含むテルビナフィンとして本明細書に定義されている。反対に、“粗テルビナフィン”は全体で約2%w/w以上、例えば、約2%から約10%、とりわけ約2%から約5%w/wのこのような非金属汚染物質、および物質A(下記定義)に関しては、約5ppm以上、例えば、約5ppmから約200ppm、とりわけ約5ppmから約100ppmの物質Aを有すると理解されるべきである。
【0025】
第1の局面において、したがって本発明は遊離塩基形の粗テルビナフィンを非金属汚染物質濃度の実質的減少をもたらす条件下で蒸留に付し、そして得られる遊離塩基形または酸付加塩形の純テルビナフィンを回収することを含む非金属汚染物質からテルビナフィンの精製をするための新規方法、以下略して“方法A”に関する。
【0026】
非金属汚染物質の検出は好ましくは、慣用の検出法、例えば、逆相高圧液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)により通常達成される約0.05%w/w(500ppm)の従来の定量限界以下、好ましくは市販の装置、例えば、下記実施例4に記載されているHP 1100(Agilent)およびAlliance 2695(Waters)を使用しておよび以下の実施例4に記載の通り達成される、例えば、UV検出を伴うRP HPLCの約0.0001%(1ppm)ほど低い定量限界の濃度まで感受性である分析方法をを使用して行う。典型的な結果は例えば、下記クロマトグラムで説明されるとおりである。
【0027】
精製されるテルビナフィン塩基または酸付加塩の“大規模な”または“工業規模”生成は本明細書において、蒸留バッチまたはランあたり、遊離塩基形基準で少なくとも約5kg、好ましくは少なくとも約50kg、とりわけ少なくとも約200kg、例えば、約500kgから約2トン、より好ましくは約600kgから約900kg、さらに好ましくは約800kgから約900kg、とりわけ約850kgの生成物の量を意味する。
【0028】
“非金属汚染物質濃度の実質的減少”は、例えば、UV検出分析を有するRP−HPLC(逆相高速液体クロマトグラフィー)により測定して、全体の最初の濃度が全体で約2%から約10%w/wの検出できる有機汚染物質を有する粗テルビナフィン塩基から出発して、全体で約0.5%未満から約2%w/w、とりわけ約0.5%未満の検出できる非金属の、本質的に有機の汚染物質の濃度を得るときと理解すべきである。
【0029】
したがって例えば、約60から約80ppmの物質A(下記定義)を含む粗テルビナフィン生成物から出発して、約5ppmの物質Aのみを含む精製した生成物を得ることができ(実施例4参照)、一方、検出される他の不純物の全量がおよそ半減される。
【0030】
蒸留は好ましくは約100℃から約170℃、例えば約110℃から約170℃、好ましくは約125℃から約165℃、とりわけ約160℃(ジャケット温度)の温度で、および対応して減圧した圧力下で、例えば、約0.2mbar、160℃で達成される。
【0031】
これらのさらなる非金属汚染物質は通常は有機化合物、例えば、1種またはそれ以上の下記の化合物である:
a)
【化2】

すなわち、6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イナル(ynal);
b)
【化3】

すなわち、(メチル)(ナフタレン−1−イルメチル)アミン;N−メチル−N−(1−ナフチルメチル)アミン;N−メチル−1−ナフタレンメタンアミン(副生成物1);
c)
【化4】

すなわち、(Z)−N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチル−1−ナフタレンメタンアミン(=Z異性体);
d)
【化5】

すなわち、(E)−N−(3−クロロ−2−プロペニル)−N−メチル−1−ナフチルメタンアミン;
および特に
e)
【化6】

すなわち
(E)−4−[4,4−ジメチルペンチン−(E)−イリデン]−N,N−ジメチル−N,N−ビスナフタレン−1−イルメチル−ペント−2−エン−1,5−ジアミン
または
2(E),4(Z)−N−(4−[(N’−メチル−N’−1−ナフチルメチル)アミノメチル]−8,8−ジメチル−2,4−ノナ−ジエン−6−イニル)−N−メチル−1−ナフチルメタンアミン(物質A)。
【0032】
物質Aは例えば、EP 24587の方法a)をテルビナフィンの製造のために使用する、すなわちN−メチル−N−(1−ナフチルメチル)アミン(上記EPの式IVの化合物)を1−A−6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イン(Aが脱離基、とりわけブロモである上記EPの式Vの化合物)と反応させるとき、非金属汚染物質として存在する。
【0033】
テルビナフィンはトランス配置を有し、そして通常、活性成分が塩酸付加塩形である医薬組成物、例えば、錠剤で販売されている。したがって遊離塩基は酸付加塩、例えば、塩酸塩に変換されるべきであり、それはテルビナフィン遊離塩基の粗混合物が相当量の例えばシス異性体不純物を含むとき、純トランス異性体は同時塩沈殿条件下で酸、例えば、塩酸と塩形成を行うことにより得ることができることが、例えば、スイス特許No.678527から既知である。好ましくはこれは有機酸のエステル、例えば、酢酸エチル、または有機酸のエステル、例えば、酢酸エチルの混合物およびさらなる有機溶媒の存在下、または例えば、WO 01/28976に記載の条件を使用して、塩酸溶液および有機溶媒、例えば、メチルイソブチルケトンと共に行う。
【0034】
驚くべきことに、純トランス異性体の同時沈殿条件下でのこのような塩形成は上記の非金属汚染物質のさらなる除去のために本発明の上記方法と一緒に有利に使用され得、ひときわ純粋なテルビナフィンの製造をもたらすことも今回見いだした。
【0035】
例えば、RP−HPLC分析により測定して、全体の最初の濃度で全体で2%未満から約10%w/wの検出できる有機汚染物質を有する粗テルビナフィン塩基から出発するとき、例えば、UV検出を有するRP−HPLCにより測定して、このようなひときわ純粋なテルビナフィンは全体の濃度で全体で約0.2%未満から約1%w/wの残留する検出できる有機汚染物質を有する。
【0036】
したがって例えば、約60から約80ppmの物質Aを含む粗生成物から出発して、検出限界未満、すなわち約1ppm未満の量の物質Aを含む塩形のひときわ純粋な生成物を蒸留および塩形成/沈殿後に得ることができる(実施例5参照)。
【0037】
したがって優れた結果のため、粗テルビナフィン塩基の蒸留は純トランス異性体の同時沈殿下で塩形成と有利に組み合わせられ得る。
【0038】
さらなる局面において、したがって本発明は遊離塩基形の粗テルビナフィンを非金属汚染物質濃度の実質的減少をもたらす条件下で蒸留に付し、同時に得られる生成物の純トランス異性体の同時沈殿下での塩形成を行い、そして得られる遊離塩基形または酸付加塩形のひときわ純粋なテルビナフィンを回収することを含む非金属汚染物質からテルビナフィンの精製をするための新規方法、以下略して“方法B”に関する。
【0039】
塩形成と沈殿は一段階で達成される。適当な溶媒は例えば、有機酸のエステル、または有機酸のエステルおよびさらなる有機溶媒の混合物である。好ましい有機酸のエステルは例えば、酢酸のエステル、例えば、酢酸のC1−4アルキルエステル、例えば、メチル、エチル、n−ブチルまたはイソブチルエステル、とりわけ酢酸エチルである。
【0040】
さらなる有機溶媒は例えば、アルコールと対応するエステル、例えば、エタノールと酢酸エチル、イソプロパノールと酢酸イソプロピルエステルなど、とりわけエタノールと酢酸エチルである。
【0041】
さらなる有機溶媒は例えば、脂肪族ケトン、好ましくはメチルイソブチルケトンである。
【0042】
温度は好ましくは慣用の温度、好ましくは約−25°から約100°、好ましくはおよそ室温である。
【0043】
塩形成と同時沈殿は好ましくは、例えば、溶媒がpH1−3でおよび約10°から約30°の温度で約5%から約40%の塩酸水溶液を有するメチルイソブチルケトンであるとき、例えばガスまたは水溶液としての無機酸、好ましくは、塩酸で行う。
【0044】
例えば、遊離塩基形または塩酸塩形の方法Aまたは方法Bから得られるテルビナフィン生成物は慣用の方法でさらなる酸付加塩形、例えば、リンゴ酸塩、例えば、L−(−)−リンゴ酸水素塩に変換でき、逆もまた同様である。
【0045】
方法AおよびBは、多量の粗テルビナフィン塩基を使用して、すなわち、例えば精製テルビナフィン塩基および酸付加塩の工業環境下の、上記定義のとおりの大規模な生成において行い得る。
【0046】
したがって本発明はさらにとりわけ下記を含む:
−短経路の蒸留を含む上記定義の方法AまたはB;
−蒸留が100℃を超える温度でおよび減圧下で行う上記定義の方法AまたはB;
−粗テルビナフィンがパラジウムおよび/または銅含有触媒を使用して製造される上記定義の方法AまたはB;
−粗テルビナフィンがN−メチル−N−(1−ナフチルメチル)アミンとAが脱離基である化合物1−A−6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イン、とりわけ1−ブロモ−6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−インの反応を使用して製造される上記定義の方法AまたはB;
−蒸留バッチまたはランあたり少なくとも5kg、好ましくは少なくとも50kg、とりわけ少なくとも200kgの遊離塩基形の純粋生成物が製造される、上記定義の方法AまたはB;
−粗テルビナフィンがパラジウム−および/または銅−含有触媒の存在下で(E)−N−(3−ハロ−2−プロペニル)−N−メチル−N−(1−ナフチルメチル)アミンと3,3−ジメチル−1−ブチンの反応を使用して製造される上記定義の方法AまたはB;
【0047】
−非金属汚染物質を除去するために精製された遊離塩基形または酸付加塩形のテルビナフィン;
−全体で約0.2%から約1%w/w未満の有機汚染物質を含む遊離塩基形または酸付加塩形の純テルビナフィン;
−約1ppm以下の物質Aを含む遊離塩基形または酸付加塩形の純テルビナフィン;
−上記定義の方法AまたはBにより製造された遊離塩基形または酸付加塩形の純テルビナフィン;
−粗テルビナフィンが上記a)、b)、c)、d)および/またはe)(物質A)として定義されている1種またはそれ以上の化合物から選択される非金属汚染物質を約5ppmより多く含む上記定義の方法AまたはB;
−上記e)(物質A)として定義されている化合物を約5ppmより多く含む上記定義の方法AまたはB;
−粗テルビナフィンが約5ppmより多い物質Aを含みそして精製されたテルビナフィンが約5ppm未満の物質Aを含む上記定義の方法A;
−粗テルビナフィンが非金属汚染物質;例えば、約5ppmより多い上記a)、b)、c)、d)および/またはe)として定義されている1種またはそれ以上の化合物から選択される非金属汚染物質;例えば、約5ppmより多い物質Aを含む;例えば粗テルビナフィン塩基が約5ppmより多い物質Aを含み、そしてひときわ純粋なテルビナフィンが約1ppm未満の物質Aを含む上記定義の方法B;
−純テルビナフィンの製造のための上記定義の方法AまたはB;
−約1ppm未満の物質Aを含む純テルビナフィンの製造のための上記定義の方法AまたはBの使用;
【0048】
−上記定義の方法AまたはBにより製造される遊離塩基形または酸付加塩形のテルビナフィン;
−上記定義の方法Aにより製造される約5ppm未満の物質Aを含むか;または上記定義の方法Bにより製造される約1ppm未満の物質Aを含む遊離塩基形または酸付加塩形の純テルビナフィン;
−上記定義の方法AまたはBにより製造される遊離塩基形または酸付加塩形の純テルビナフィンと1種またはそれ以上の薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物;
−テルビナフィンの粗サンプル中に存在する物質Aの濃度を減少させることを含む、例えば、約1ppm未満の物質Aを有する純テルビナフィンを製造する方法;
−遊離塩基形のテルビナフィンを蒸留することを含むテルビナフィンから物質Aを除去する方法;
−蒸留前に粗テルビナフィン塩基のサンプルおよび蒸留後に純テルビナフィン塩基のサンプルを取り出し、そしてそれらの非金属汚染物質、例えば、物質Aの濃度を評価することを含む、上記定義の方法Aを使用するときに非金属汚染物質、例えば、物質Aの濃度をモニタリングする方法;
−蒸留前に粗テルビナフィン塩基のサンプル、蒸留後にテルビナフィン塩基のサンプルおよび塩形成/沈殿後にテルビナフィン塩のサンプルを取り出し、そしてそれらの非金属汚染物質、例えば、物質Aの濃度を評価することを含む、上記定義の方法Bを使用するときに非金属汚染物質、例えば、物質Aの濃度をモニタリングする方法。
【0049】
図の説明(1/2):
1.蒸留物の流出部
2.真空ポンプへの接続部
3.熱流入部
4.冷却器
5.減圧下の空間
6.ローリングワイパー(フィルムを形成するために粗生成物を均一に分配する)
7.加熱ジャケット
8.封入液、取り入れ口
9.歯車装置のためのフランジ
10.粗生成物の注入部
11.熱媒体の流出部
12.残留物の流出部
13.冷却水のための入口
14.冷却水のための出口
【0050】
クロマトグラムの説明(2/2):
I =ブランククロマトグラム(溶媒)
II =参考溶液3(1ppmの物質A)
III=試験溶液(純テルビナフィン;検出された物質Aはなし)
IV =“SST”溶液(純テルビナフィン、5ppmの物質Aを有する)
V =参考溶液2(100ppmの物質A)
1 =薬剤、テルビナフィン
2 =RS(すなわちテルビナフィン関連物質):物質A
WVL=波長280nm
横座標:分(分)
縦座標:mAU=吸収単位×10−3
(実施例4も参照)
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図の説明(1/2):1.蒸留物の流出部;2.真空ポンプへの接続部;3.熱流入部;4.冷却器;5.減圧下の空間;6.ローリングワイパー(フィルムを形成するために粗生成物を均一に分配する);7.加熱ジャケット;8.封入液、取り入れ口;9.歯車装置のためのフランジ;10.粗生成物の注入部;11.熱媒体の流出部;12.残留物の流出部;13.冷却水のための入口;14.冷却水のための出口
【図2】クロマトグラムの説明(2/2):I=ブランククロマトグラム(溶媒);II=参考溶液3(1ppmの物質A);III=試験溶液(純テルビナフィン;検出された物質Aはなし);IV=“SST”溶液(純テルビナフィン、5ppmの物質Aを有する);V=参考溶液2(100ppmの物質A);1=薬剤、テルビナフィン;2=RS(すなわちテルビナフィン関連物質):物質A;WVL=波長280nm;横座標:分(分);縦座標:mAU=吸収単位×10−3(実施例4も参照)
【発明を実施するための形態】
【0052】
下記実施例は本発明を説明する。全ての温度は摂氏(℃)である。1000mbar=750.06mmHg。実施例2、4および5は得られる肯定的結果を説明する(実施例3は非金属汚染物質濃度に関して情報価値なしである);実施例1および比較実施例は(否定的)参考のためである。
【実施例】
【0053】
実施例1バッチ蒸留(方法A;実験室規模)
(副生成物1に関しては否定的
0.3領域%の(メチル)(ナフタレン−1−イルメチル)アミン(生成物1)を含む100gの粗テルビナフィン塩基を20gのピーナッツ油と混合し、混合物を142°に0.3mbar圧力で加熱する(ジャケット温度190℃)。2時間後、黄色がかった留出物として96.4gの精製されたテルビナフィン塩基および21.4gの暗褐色残基を得る。バッチ蒸留中(2時間、142℃)の熱の影響のため、ガスクロマトグラフィー(実験条件:実施例2と同じ)により測定して、留出物は約1領域%の(メチル)(ナフタレン−1−イルメチル)アミン(副生成物1)を含む。
【0054】
大規模な生成のため、蒸留時間および熱の影響はかなり高いであろう。結果として、例えば、“短経路”の蒸留のように蒸留時間が短い時間でない限り、副生成物1が相当高い濃度であることが予想される。
【0055】
出発物質として使用する粗テルビナフィン塩基は例えば、EP 421302 A2の実施例13の記載に従うが、得られる生成物をシリカゲルクロマトグラフィーに付さない、触媒量のヨウ化銅(I)およびビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)ジクロライドの存在下で、n−ブチルアミンおよび水中の(E)−N−(3−クロロ−2−プロペニル)−N−メチル−1−ナフタレンメタンアミンおよび3,3−ジメチル−1−ブチンの反応により製造される。
【0056】
実施例2短経路の蒸留(方法A;実験室規模)
(副生成物1およびZ異性体に関しては不明確;生成物2に関しては肯定的
市販の薄フィルム蒸発器(Leybold Heraeus GmbH, Hanau, Germany:直径7cmの加熱ドラム;長さ25cm;冷却フィンガー50℃;圧力0.2mbar;Teflonローター450rpm)において、179gの粗テルビナフィン塩基(例えば上記実施例1に記載のとおりに製造)を8.9gのピーナッツ油と混合し、混合物を50℃に加熱する。0.2mbarへシステム全体を排気後、蒸留を混合物を、テルビナフィン塩基は数秒間だけ沸点に加熱される場所である高温ゾーン(ジャケット温度、160℃)にゆっくり落とすことにより開始する。2時間後、黄色がかった留出物として171g(95%)の純テルビナフィン塩基を得、これは1ppmのパラジウムおよび1ppm未満の銅で汚染されている。ガスクロマトグラフィー(HP−1カラム;架橋メチルシロキサン;長さ30m;フィルム厚さ2.65μm;カラム内部直径0.53mm;熱イオン化検出器(FID)温度300℃;注入温度250℃;温度勾配50°から270℃;加熱速度20℃/分)により測定されるとき、留出物の化学純度は98.6%w/wのテルビナフィン塩基(すなわちE異性体)である。10.5gの蒸留残留物を加え、0.4gの油状昇華物を得た。昇華物は主に2,2,7,7−テトラメチルオクタ−3,5−ジイン(副生成物2)からなる。
【0057】
ガスクロマトグラフィーにより測定されるとき、テルビナフィン塩基の全体の純度は下記のとおりである:
【表2】

【0058】
実施例3短経路の蒸留(方法A;工業規模)
(金属汚染物質に関しては肯定的;非金属汚染物質に関しては情報価値なし
粗テルビナフィン塩基の蒸留を2個の直列蒸発器を伴う短経路の蒸留を使用して高性能真空蒸留装置(UIC GmbH KD 150)において実施する。これによって物質を常に垂直指向性の蒸発器の内部表面に送りそして分配する。液体が下向きに流れるため、軸方向に配置されているローラーワイパーシステムは常に混合されている薄いフィルムとしてこの液体を分配する(図参照)。したがってこの穏やかな蒸留方法が最高蒸発温度および高温での滞留時間両方を減少させる。
【0059】
出発温度は一般的に下記のとおりである:
−供給タンクの内部限界:70℃;
−生成物受取部の内部限界:80℃;残留物タンクのジャケット限界:80℃;
−蒸発器1および2の上下内部限界:100℃;
−蒸発器1および2のジャケット限界:160℃。
【0060】
全装置を空であることおよび清浄度について制御後、拡散ポンプにより達成できる両方の蒸発器の最大真空度は下記のとおりである:
−蒸発器1の前および後:1.6×10−1mbar;
−蒸発器2の前:2.6×10−2mbar;
−蒸発器2の後:4.7×10−3mbar。
【0061】
872.5kgの粗テルビナフィン塩基(上記実施例1の記載に準じて製造)および120kgのピーナッツ油の混合物を次いで供給タンクに移す。ピーナッツ油は、皮が蒸発器内部に蓄積されないことを確実にする。冷却口を20から30kgのドライアイスおよび約30lのエタノール(94%)の混合物で満たし、温度を下記のとおりに調節する:
−残留物受取部のジャケット:40℃;
−蒸発器1のジャケット:120℃;
−蒸発器1の冷却器:50℃;
−蒸発器2のジャケット:155℃;
−蒸発器2の冷却器:45℃。
【0062】
生成物の融点が約42℃のため、主容器の内部温度は50℃に設定する。
【0063】
すべての温度に到達したとき、粗生成物を約1.5l/分の流速で蒸発器1に移す。その容量が少量のため蒸発器1の留出物(溶媒の残り)が計測器に回収され得る。蒸発器1の残留物を蒸発器2に移し、粗塩基を蒸留し、それは加熱された主容器に黄色の液体として回収される(1.4l/分)。
【0064】
すべての粗混合物が蒸留されたとき(約11時間)、蒸発器2の残留物を供給タンクに移し、再び蒸留する。それによって蒸発器1のジャケット温度は110℃まで下がり、蒸発器2のジャケット温度は140℃まで下がる。
【0065】
残留物の蒸留が完了した後(約2時間)、新しい残留物を生成物の流量が約0.2l/時間に達するまで蒸発器を介して循環させる。循環が開始できるようになる前に、蒸発器1のジャケット温度は100℃まで下がり、蒸発器2の冷却器温度は60℃まで上がる。循環中、収容される留出物は黒ずんでいく。
【0066】
蒸留の終了時(全体で約22.5時間)、装置を窒素により放出させる。主容器からの生成物を約50℃でドラムに入れる。サンプルをとり、ドラムを計量する。ガスクロマトグラフィーにより測定して、遊離塩基の化学純度は97%w/wまたはそれ以上(ここでは98.4%だった)である。収量は856.1kgだった。残った銅および/またはパラジウムの量は非常に少量か検出できない(1ppm未満)。
【0067】
残っている残留物(約120kgのピーナッツ油;ここではそれは128kgだった)、蒸発器1の留出物および冷却トラップの凝縮物を合わせ、灰化する。5から6回処理後、装置のクリーニングを行う。
【0068】
比較実施例炭精製(実験室規模)
(金属および非金属汚染物質に関しては否定的
シクロヘキサン(100gの(E)−N−(3−クロロ−2−プロペニル)−N−メチル1−ナフタレン−メタンアミンから上記実施例の記載に準じて製造)中の粗テルビナフィン塩基の404gの溶液に10gの活性炭(Norit Supra)を加える。混合物を17時間20−25℃で撹拌し、次いで濾過する。減圧で溶媒の蒸発後、14ppmのパラジウムで汚染されている110.5g(89%)のテルビナフィン塩基を得る。ガスクロマトグラフィー(実験条件:実施例2と同じ)により測定して、油状残留物の化学純度は95%である。
【0069】
実施例4短経路の蒸留およびUV検出を有するRP−HPLC
(方法A;工業規模)
(非金属汚染物質、特に物質Aに関しては肯定的
80ppm(他のバッチ:各々62ppm)の物質A(UV検出を有するRP HPLC 分析により粗テルビナフィン塩基のサンプルから測定して)および全体で2.45%w/wの他の検出できる非金属汚染物質(他のバッチ:各々2.40%)を含む2つのバッチから工業量(872.5kg)の粗テルビナフィン塩基を実施例3に記載のとおりの短経路の蒸留(合わせた両方のバッチ)に付し、粗テルビナフィン塩基のサンプルを留出物からとり、再びRP HPLC 分析に付す。サンプルがまだわずか5ppmの物質Aおよび全体で1.14%w/wの他の検出できる非金属汚染物質を含むことを示す。
【0070】
UV検出を有するRP HPLCは下記のとおりに行う:
試薬
−アセトニトリル:例えば、LiChrosolv(Merck);
−水:例えば、LiChrosolv(Merck);
−トリエチルアミン:例えば、puriss. p.a.(Fluka);
−溶媒:アセトニトリルまたはアセトニトリル/水 8:2(v/v);
−比較のための物質A(例えば、その化学構造の分光学的確認をした、EP 24587の方法a)にしたがってシリカゲルクロマトグラフィーによりテルビナフィン合成から副生成物として単離された約11mgから)。
装置:HP 1100(Agilent)、Alliance 2695(Waters)
カラム:XTerra RP18、3.5μm粒径、長さ150mm、内部直径3.0mm
クロマトグラフ条件
−移動相:A:水/トリエチルアミン 1000:1(v/v);
B:アセトニトリル/トリエチルアミン 1000:1(v/v)
−勾配:
【表3】

−流速:1.0ml/分
−検出波長:280nmでUV吸収
−温度:52℃
−注入量:20μlの試験溶液および参考溶液
−実施時間:16分
−サンプル濃度:40mg/ml
【0071】
システム適合性を下記に関して参考溶液により較正する:
−再現性(2.0mlの参考溶液1を溶媒で20.0mlに希釈することにより製造した100ppmの物質Aを含む参考溶液2;1000ppmの物質Aを含む参考溶液1を50mlの容量フラスコへ±0.001mgの精度で約2mgの物質Aを量り入れ、溶媒に溶解し、それで50mlに希釈することにより得る);
−記録限界(2.0mlの参考溶液2を溶媒で20.0mlに希釈し、そしてその溶液の2.0mlのアリコートを溶媒で20.0mlに希釈することにより製造した、1ppmの物質Aを含む参考溶液3);および
−選択性(5.0mlの容量フラスコへ±0.1mgの精度で約200mgの試験物質を量り入れ、250μlの参考溶液2を加え、溶媒で容量に希釈することにより製造した“SST”溶液:それは5ppmの物質Aを添加された100%の薬剤を含む)。
【0072】
溶媒単独をブランククロマトグラムのために使用する。2つの試験溶液は5.0mlの容量フラスコへ±0.1mgの精度で約200mgの試験物質を量り入れ、そしてそれを溶解し、そして一定容量に溶媒で希釈することにより製造する。
【0073】
アンバーガラスフラスコおよびバイアルを使用することが好ましい。
【0074】
試験溶液および参考溶液2のクロマトグラムにおける物質Aに対するピークエリアを決定する。
【0075】
計算を下記のとおり行う(記録限界1ppm未満のピークは無視する):
【数1】

式中、
RS=テルビナフィン関連物質、例えば、物質A
PA=試験溶液のRSのピークエリア
PAR2=参考溶液2のRSのピークエリア
=参考溶液1のRSの質量(mg)
=試験溶液の試験物質の質量(mg)
=参考溶液に対して使用されるRSの含有%
f=0.01=希釈因子
10000=ppmへの変換係数。
【0076】
典型的なランの結果は添付されているクロマトグラム(WVL=波長280nm;横座標=分;縦座標=mAU=吸収単位×10−3)に記載のとおりである。薬剤テルビナフィン塩基および物質Aに対する相対的な保持時間は、各々1.00および約1.73である。
【0077】
他の非金属不純物を例えば、40℃のカラム温度で0.1%のトリエチルアミン(v/v)を含む水の移動相A、0.1%のトリエチルアミン(v/v)、溶媒メタノールまたはメタノール/水 80:20(v/v)およびサンプル濃度0.5mg/mlを含むメタノールの相Bと共に、5μmの粒子サイズの逆相カラムHypersil ODSを同様の条件で使用して検出し得る。
【0078】
実施例5短経路の蒸留、次いで塩形成と沈殿
(方法Aおよび方法B;工業規模)
(特に物質Aに関しては肯定的
a)蒸留(方法A):
テルビナフィン粗塩基を上記実施例4に記載のとおりの短経路の蒸留に付す。UV検出を有するRP HPLC分析により測定して、5ppmの物質Aを含む得られる精製されたテルビナフィン塩基を次いで塩形成と沈殿に付す。
【0079】
b)トランス異性体のさらなる塩形成と沈殿(方法B):
段階a)からの塩基生成物に酢酸エチルを加え、その混合物を完全に溶解するまで20℃で撹拌し、得られる溶液を濾過し(2μm)、圧力を0.5barへ温度20℃で下げる。次いで塩酸ガスを20°から25℃で導入する。得られる懸濁液を4から15時間20℃で撹拌し、遠心分離し、得られた生成物を酢酸エチルで洗浄し、1000rpmで遠心分離し、得られた生成物を乾燥させる。純テルビナフィン塩酸塩を得る。サンプルを取り、RP HPLC分析に付す。1ppm未満の物質Aを含むことが見いだされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊離塩基形の粗テルビナフィンを非金属汚染物質濃度の実質的減少をもたらす条件下で蒸留に付し、そして得られる遊離塩基形または酸付加塩形の純テルビナフィンを回収することを含む非金属汚染物質からテルビナフィンの精製をするための方法(方法A)。
【請求項2】
遊離塩基形の粗テルビナフィンを非金属汚染物質濃度の実質的減少をもたらす条件下で蒸留に付し、同時に生成物の純トランス異性体の同時沈殿下での塩形成を行い、そして例外的に得られる遊離塩基形または酸付加塩形の純テルビナフィンを回収することを含む非金属汚染物質からテルビナフィンの精製をするための方法(方法B)。
【請求項3】
短経路の蒸留を含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
蒸留が100℃を超える温度でおよび減圧下で達成される請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
粗テルビナフィンがN−メチル−N−(1−ナフチルメチル)アミンとAが脱離基、とりわけ、ブロモである化合物1−A−6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−インの反応を使用して製造される請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
非金属汚染物質を除去することによって精製される遊離塩基形または酸付加塩形のテルビナフィン。
【請求項7】
全体で約0.2%未満から約1%w/wの有機汚染物質を含む請求項6に記載の純テルビナフィン。
【請求項8】
約1ppm以下の物質Aを含む請求項7に記載の純テルビナフィン。
【請求項9】
粗テルビナフィンが1種またはそれ以上の下記化合物
a)
【化1】

すなわち、6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イナル(ynal);
b)
【化2】

すなわち、(メチル)(ナフタレン−1−イルメチル)アミン=
N−メチル−N−(1−ナフチルメチル)アミン=
N−メチル−1−ナフタレンメタンアミン(副生成物1);
c)
【化3】

すなわち、(Z)−N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−N−メチル−1−ナフタレンメタンアミン(=Z異性体);
d)
【化4】

すなわち、(E)−N−(3−クロロ−2−プロペニル)−N−メチル−1−ナフチルメタンアミン;
および/または
e)
【化5】

(物質A)、
から選択される約5ppmより多い非金属汚染物質、とりわけ、約5ppmより多い物質Aを含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
粗テルビナフィンが約5ppmより多い物質Aを含み、そして純テルビナフィンが約5ppm未満の物質Aを含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
粗テルビナフィンが約5ppmより多い物質Aを含み、そして純テルビナフィンが例外的に約1ppm未満の物質Aを含む請求項2に記載の方法。
【請求項12】
純テルビナフィンの製造のための請求項1または2に記載の方法の使用。
【請求項13】
約1ppm未満の物質Aを含む純テルビナフィンの製造のための請求項12に記載の方法の使用。
【請求項14】
請求項1または2に記載の方法により製造された遊離塩基形または酸付加塩形のテルビナフィン。
【請求項15】
請求項1に記載の方法により製造された約5ppm未満の物質Aを含むか、または請求項2に記載の方法により製造された約1ppm未満の物質Aを含む請求項14に記載の純テルビナフィン。
【請求項16】
請求項1または2に記載の方法により製造された、遊離塩基形または酸付加塩形の純テルビナフィンと1種またはそれ以上の薬学的に許容される担体または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項17】
テルビナフィンの粗サンプル中に存在する物質Aの濃度を減少させることを含む、約1ppm未満の物質Aを有する純テルビナフィンを製造する方法。
【請求項18】
遊離塩基形のテルビナフィンを蒸留することを含むテルビナフィンから物質Aを除去する方法。
【請求項19】
蒸留前に粗テルビナフィン塩基のサンプルおよび蒸留後に純テルビナフィン塩基のサンプルを取り出し、そしてそれらの非金属汚染物質、例えば、物質Aの濃度を評価することを含む、請求項1に記載の方法を使用したときの非金属汚染物質、例えば、物質Aの濃度をモニタリングする方法。
【請求項20】
蒸留前に粗テルビナフィン塩基のサンプル、蒸留後にテルビナフィン塩基のサンプルおよび塩形成/沈殿後にテルビナフィン塩のサンプルを取り出し、そしてそれらの非金属汚染物質、例えば、物質Aの濃度を評価することを含む、請求項2に記載の方法を使用したときの非金属汚染物質、例えば、物質Aの濃度をモニタリングする方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−176960(P2012−176960A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−103825(P2012−103825)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【分割の表示】特願2007−556553(P2007−556553)の分割
【原出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】