説明

糖化タンパク質分離・検出用デバイス

【課題】高度分析機器を使用せず、複数の糖化タンパク質を検出・測定する場合に有用な簡易型デバイスの提供。
【解決手段】検体中の複数の糖化タンパク質を分離・検出するためのデバイスであって、基板上に、試料液を保持・供給するための試料液載置部、洗浄液を保持・供給するための洗浄液載置部、溶出液を保持・供給するための溶出液載置部、ボロン酸化合物結合担体を充填した2以上の分離部、及び電気化学シグナルを検出するための検出部を具備し、前記試料液載置部、洗浄液載置部及び溶出液載置部がそれぞれ各分離部と流路を介して連通し、検出部が分離部毎に該分離部を通過した溶液と接触するように配置されてなるデバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖化タンパク質を簡易に分離・検出可能なデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、糖化ヘモグロビン(HbA1c)、糖化アルブミン等の糖化タンパク質は、糖尿病マーカーとして注目され、中でもHbA1cは、グルコース値と比較し、非常に長期間のコントロール状態が分かること、また、妊娠中においても正確にコントロール状態を反映することが報告され、グルコースと並び臨床において検査の必須項目として制定されている。
【0003】
血中の糖化タンパク質量は、非糖化タンパク質に対する糖化タンパク質の百分率で表されるが、それぞれの含有率の評価はアフィニティーやイオン交換に基づくクロマトグラフィーを用いて行われ、同一サンプルのクロマトグラムから糖化タンパク質の割合を換算することにより正確に評価できる。すなわち、HbA1c等の臨床検査方法は、HPLCやMSのような高度分析機器を用いることで非常に精密な測定が可能ではある。特にHPLCを用いる方法は、全体の80%を占め、その内訳として、50%がボロン酸アフィニティークロマトグラフィ、30%が陽イオン交換クロマトグラフィーとなっている。特にボロン酸アフィニティークロマトグラフィーに関しては、アルカリ条件下において、そのジオール基と糖のシスジオール基が共有結合することが知られており(非特許文献1、非特許文献2)、糖化タンパク質の分離・精製に広く用いられている(非特許文献1)。
しかしながら、これらは、操作が煩雑であることや、装置が高価・大型であることから、その検査は大型病院や検査会社に限られて行われているのが現状である。
【0004】
一方、糖化タンパク質の割合の算出には、クロマトグラフィーを用いない方法も行われている。例えば、糖化アルブミンについては、ニトロブルーテトラゾリウム(NBT)由来の540nmの発色を測定するNBT比色法 (非特許文献3、非特許文献4)が採用され、またHbA1cについては、ラテックス凝集比濁法 (非特許文献5)等が用いられている。しかしながら、これらの方法は糖化タンパク質を測定するものであり、非糖化タンパク質の測定をタンパク質の吸光測定等により算定する必要がある。このように算出された糖化タンパク質の割合は、濃度依存性はあるもののクロマトグラフィー法との直接的なデータ比較はできず、測定法ごとに補正値を設定する必要がある。また、測定対象の分子サイズ、血液中での存在形態、存在比率等の違いから、測定対象に応じて個々の測定法を適用することになり、複数の糖尿病マーカーを同時に、かつ簡易に検出することはできない。
【非特許文献1】Koyama and Terauchi “Synthesis and application of boronic acid-immobilized porous polymer particles: a novel packing for high-performance liquid affinity chromatography.” J Chromatogr B Biomed Appl 679:31-40 (1996)
【非特許文献2】Rohovec et al.“ The structure of the sugar residue in glycated human serum albumin and its molecular recognition by phenylboronate.” Chemistry 9:2193-9 (2003)
【非特許文献3】Boye and Ingerslev “Rapid and inexpensive microdetermination of serum fructosamine results in diabetics, uraemics, diabetics with uraemia and healthy subjects.” Scand J Clin Lab Invest. 48:779-83 (1988)
【非特許文献4】Rahlenbeck “Monitoring diabetic control in developing countries: a review of glycated haemoglobin and fructosamine assays.”Trop Doct. 28:9-15.(1998)
【非特許文献5】Halwachs-Baumann et al. “Comparative evaluation of three assay systems for automated determination of hemoglobin A1c.” Clin Chem. 43:511-7. (1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、高度分析機器を使用せず、複数の糖化タンパク質を検出・測定する場合に有用な簡易型デバイスを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、検体中の複数の糖化タンパク質を分離・検出するためのデバイスであって、基板上に、試料液を保持・供給するための試料液載置部、洗浄液を保持・供給するための洗浄液載置部、溶出液を保持・供給するための溶出液載置部、ボロン酸化合物結合担体を充填した2以上の分離部、及び電気化学シグナルを検出するための検出部を具備し、前記試料液載置部、洗浄液載置部及び溶出液載置部がそれぞれ各分離部と流路を介して連通し、検出部が分離部毎に該分離部を通過した溶液と接触するように配置されてなるデバイスに係るものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のデバイスは、シリンジポンプやピストンポンプによる陽圧、若しくはアスピレーションによる陰圧により送液が可能であり、HPLC等に用いられる高圧の送液システムや誘電泳動や圧電ポンプ等特殊な電子デバイスを必要とせず、少量の試薬で迅速に複数の糖化タンパク質を測定でき、コスト及び測定時間の削減が可能になる。すなわち、本発明によれば、簡便かつ迅速に測定可能な安価な糖化タンパク質測定チップを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明のデバイスは、検体中の複数の糖化タンパク質を分離・検出するためのデバイスである。
ここで、糖化タンパク質とは、タンパク質の主鎖又は側鎖のアミノ基がグルコース等の還元糖の還元末端と非酵素的に結合して生成される化合物をいい、例えば、糖化ヘモグロビン(HbA1c)、糖化アルブミン、糖化グロビン、糖化トランスサイレチン等が挙げられる。このうち、本発明のデバイスにおいては、糖化ヘモグロビン(HbA1c)と糖化アルブミンを一度に測定するものが好ましい。
【0009】
以下、本発明の実施態様を、図1〜3を用いて説明する。
図中、1は基板、2は洗浄液載置部、3は試料液載置部、4は溶出液載置部、5a及び5bは分離部、6a及び6bは検出部、7〜15は流路、16及び17は廃液口である。
【0010】
図1は、本発明試験デバイスの基本構成例を示した上面図である。
基板1は、洗浄液載置部2、試料液載置部3、溶出液載置部4、分離部5a、5b、検出部6a、6b及び流路7〜15を当該基板上又は内部に固定支持するための構造体であればよく、その材質は特に制限されるものではないが、例えば、樹脂やシリコン含有物質が挙げられる。樹脂としては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリサイクリックオレフィン(PCO)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、天然ゴム、合成ゴム及びこれらの誘導体が挙げられる。シリコン含有物質としては、ガラス、石英、シリコンウエファー等のアモルファスシリコン、ポリメチルシロキサン等のシリコーンが挙げられ、このうち、透明素材である点、コストパフォーマンスに優れる点、成型の容易さの点からPMMA、PDMSが好ましい。
基板に形設される、洗浄液載置部、試料液載置部、溶出液載置部、分離部、検出部及び流路は、例えば、各部位に相当する溝を形成したPMMAプレートに対して、PDMSにより作製した薄膜をプラズマ処理等して、被覆加工することにより作製できる。
【0011】
基板の形状やサイズは、特に限定されるものではないが、成型・送液の容易さ、それに関わるコストパフォーマンスにおける優位の点からプレート形状であるのが好ましく、特に厚さが2〜4mm程度のカード型形状であるのが好ましい。
【0012】
洗浄液載置部2、試料液載置部3、溶出液載置部4は、それぞれ、洗浄液、試料液、溶出液を保持・注入する部位であり、液体試料を注入・送液するための注入口により外部に開口している。試料液載置部3は、適用する試料数に応じて仕切られている(3a、3b)。注入口には、送液手段として、例えばシリンジポンプやピストンポンプを適宜装着することができる。注入口は、流路に接続されたシリカキャピラリー(外径:1mm,長さ:3 mm〜20 mm)を基板上に配置し、シリコンチューブ等でシリンジポンプに接続できるようにするのが好ましい。また、流路の注入口上部にシリコンやPDMS等のカップ構造を設け、その基板上部からピストンポンプで加圧することにより、送液することも可能である。
【0013】
試料液は、体液サンプル(例えば、血液、血漿、血清、唾液、尿等)を採取し、血液の場合は溶血し、必要に応じて残渣を除去した後、蒸留水等で適宜希釈し、測定対象とする糖化タンパク質に対する抗体(例えば、抗ヘモグロビン抗体、抗アルブミン抗体等)をフェロセン等の導電性化合物で標識した標識抗体とを、緩衝液中で抗原抗体反応させ、当該開始緩衝液を用いて適宜希釈したものが用いられる。
【0014】
洗浄液としては、一般に高速液体クロマトグラフィーに用いられる緩衝液を用いればよいが、酢酸アンモニウム溶液(pH7.5〜9)、タウリン緩衝液、N-[2-ヒドロキシエチル]ピペラジン-N'-[3-プロパンスルホン酸] (EPPS)緩衝液(pH7.5〜9)、リン酸緩衝液(pH7.5〜8)、タウリン緩衝液(pH7.5〜9)、等が好適である。
【0015】
溶出液は、分離部に充填した担体に吸着した糖成分よりも、ボロン酸に対して親和性の強い成分を含む緩衝液により構成される。このような成分としては、例えば、ソルビトールやトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等が挙げられる。斯かる溶出液のpHは中性付近(pH6〜8)が好ましい。
【0016】
分離部には、ボロン酸化合物結合担体が充填され、これにより糖化タンパク質が特異的にトラップされる。分離部は、測定する糖化タンパク質の数にあわせて2つ以上設けることができる。例えば、糖化ヘモグロビンと糖化アルブミンを一度に検出するには、糖化ヘモグロビン用分離部(5a)と糖化アルブミン用分離部(5b)を併設することになる。
【0017】
ボロン酸化合物結合担体としては、通常、ボロン酸アフィニティークロマトグラフィー法において充填剤として用いられるものが使用できる。
すなわち、ボロン酸化合物としては、ジヒドロキシボリル基を構造上有していればよく、たとえば、(1−アミノ−2−フェニルエチル)ボロン酸、[3−[(アミノカルボニル)アミノ]フェニル]ボロン酸、(4−アミノフェニル)ボロン酸、[3−(ハイドロオキシ)フェニル]ボロン酸塩酸塩、[2−(ハイドロキシアミノ)フェニル]ボロン酸、[4−(ハイドロオキシアミノ)フェニル]ボロン酸塩酸塩等が挙げられる。特にアミノ基を有するボロン酸誘導体が好ましく使用される。
【0018】
また、担体としては、ビーズ状、テストプレート状、チューブ状、ディスク状、球状、スティック状、ラテックス状等の何れの形状のものでもよく、その材質としては、例えば、ガラス、多糖類(セルロース、デキストラン、デンプン、デキストリン)またはその誘導体、多孔性セラミックス、金属酸化物、各種合成樹脂(たとえばプロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、スチレン、メチルスチレン、ブタジエン、イソプレン、アクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の重合体もしくは共重合体担体)、またはこれらに公知の手段によりスルホン基、アミノ基等の反応性官能基を導入したもの等が挙げられる。
【0019】
斯かる分離部の容積は、300μL未満とするのが好ましく、サンプル容積はカラム容積と同程度とするのが好ましい。
【0020】
検出部には、分離部毎に該分離部を通過した溶液と接触するように、電極が配置され、フロー型での電気化学シグナルの検出を可能とする。
電極は、例えば、メッキ、蒸着等の方法によりプラスチックやPMMA、ガラス等の基板上に金薄膜をつけたもの使用することができ、作用極/対極の2極式、もしくは作用極/対極/参照極の3極式(図3参照)のものが好適に利用できる。3極式の電極については、参照極に銀、又は銀/塩化銀を析出させたものを用いることができる。
電極のサイズは、例えば0.5〜1cm×1〜2cm四方のものが好適に利用できる。 尚、検出部は、分離部毎に配することが望ましい。
【0021】
斯かる電極は、外部と接触可能な状態にあり、電気化学測定用ポテンショスタット装置又はこれと同等の一定電圧を発生可能な定電圧装置で印加できるようにされ、発生する電流がアンペロメトリーによって測定される。
【0022】
上記試料液載置部3、洗浄液載置部2及び溶出液載置部4は、複数存在する分離部と流路7〜9を介して連通するが、斯かる流路は、各分離部に対してそれぞれ独立して連通していてもよく、一部を共有して配置されていてもよい。
流路は、各液体載置部から分離部へ(流路7〜9)、またカラム部から検出部へ(流路10〜11)液体を供給できるものであればその形状及びサイズは限定されないが、基板上に、0.1mm〜3mm程度の幅、0.1mm〜1mm程度の深さで作製されるのが好ましい。
【0023】
また、本発明のデバイスには、分離部の後に、基板を貫通する廃液口(吸引口)16、17を具備する流路12〜15をさらに設けることができる(図2参照)。これにより、吸引口に装着された適当な液体吸引手段、例えばアスピレーター、シリンジポンプ等を用いて試料を吸引することにより、流路切り替えが可能となる。例えば、廃液口16の下部からアスピレータで吸引することで洗浄液を廃液口16に、廃液口17で吸引することで溶出液によって溶出された糖化タンパク質の画分を検出部に誘導することができる。
廃液口を用いた流路切り替えは、糖化タンパク質の画分の電気化学シグナル測定を高精度化できることから、測定対象により適宜設けることができる。
【0024】
以下に、本発明のデバイスを用いた糖化ヘモグロビン(HbA1c)及び糖化アルブミンの測定の操作手順を示す。
1)洗浄液載置部2に洗浄液、試料液載置部3a、3bにそれぞれ抗ヘモグロビン抗体、抗アルブミン抗体溶液(リン酸緩衝液)、溶出液載置部4に溶出液をセットする。
2)生体より採取したサンプルをシリンジにより試料液載置部3a、3b同量に注入し、抗原抗体反応させる。
3)試料液載置部3aより、ピストンポンプを用いて試料液を押し出し、ヘモグロビン分離部内にサンプルを導入する。
4)試料液載置部3bより、ピストンポンプを用いて試料液を押し出し、アルブミン分離部内にサンプルを導入する。
5)洗浄液載置部2より、ポンプを用いて洗浄液を2つの分離部に導入する。次いで、非糖化タンパク質が分離部から検出部に移動することにより生じる電気化学シグナルを測定する。ここで、洗浄液の試料液載置部への混入を防ぐため、ピストンポンプは押し出したままにしておく。
6)溶出液載置部4より、ポンプを用いて溶出液を分離部に導入する。次いで、糖化タンパク質がカラム部から電極部に移動することに生じる電気化学シグナルを測定する。
ここで、溶出液の試料液載置部、洗浄液載置部への混入を防ぐため、ピストンポンプは押し出したままにしておく。
【実施例】
【0025】
試験例 HbA1cの測定
(1)フェロセン標識抗体の作製
フェロセンカルボキシル誘導体(以下、フェロセン)をジメチルスルフォキサイド(DMSO)1mlに溶解した(A液)。1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimidehydrochloride(EDC)(0.14 mmol)とN- Hydroxy succinimide(NHS)(0.14 mmol)をDMSO 1 mlに溶解した(B液)。A液をB液に滴下し、攪拌しながら室温で3 時間反応させ、フェロセンにサクシンイミド基を導入した(フェロセン活性化エステル)。0.13 M NaHCO3 緩衝液中の抗体(3mg/ml; 300 μl)に、フェロセン : 抗体のモル比が100:1になるようにフェロセン活性化エステル溶液を加え、4℃で一晩攪拌した。限外濾過により精製を行った後、PBSを用いてバッファー交換を行った。
【0026】
(2)カード型ボロン酸アフィニティーデバイスの作製
CAMM-3 (Computer aided modeling machine PNC-300,ROLAND DIGITAL GROUP) を用いて、PMMA (polymethylmethacrylate) 基板上に凸型の流路を切削した。凸型のPMMA基盤を鋳型とし、ソフトリソグラフィーによりPDMS基板上に流路を作製した。流路を持つPDMS基盤とPDMSにより作製した薄膜をプラズマ処理後、両者を貼り合わせた。作製したカラムに10 %のBSA溶液を導入し、1時間静置してブロッキングを行った。BSA溶液を洗浄後、ボロン酸固定化アガロースビーズ(シグマ社製)懸濁液を250 μl充填し、これをオンチップ型ボロン酸アフィニティーカラムとした。カラム容積は約200 μlとした。
【0027】
(3)フェロセン標識抗体を用いたフロー型ボロン酸アフィニティークロマトグラフィ
HbA1c (0-2000 μg/ml) とフェロセン標識抗ヘモグロビンIgG抗体(3200 μg/ml)をPBS中で抗原抗体反応させた。抗原抗体反応溶液(25 μl)を開始緩衝液を用いて希釈し、サンプルとした。サンプルをホウ酸固定化ビーズが充填されたカラムにインジェクションし、その後開始緩衝液 1600 μlで洗浄した。その後、50 mMソルビトールを含む溶出緩衝液800 μlを用いて溶出を行った。ソルビトールにより溶出される溶液の電流値を測定した。このとき得られた最大電流値を、HbA1c濃度に対してプロットしたところ、オフチップと同様にHbA1c濃度の増加に伴い、最大電流値が直線的に増加し (図4)、HbA1c濃度200 〜1000 μg/mlにおいて電気化学的な検量が可能であることが示唆された。このことより、作製したオンチップ型カラムがフロー型の本アッセイ系に用いることができることが示され、分離デバイスの小型化を可能にした。
【0028】
(4)実サンプルでの実証実験
同様に各HbA1c濃度の血液サンプル (HbA1c-L = HbA1c濃度 ; 420 μg/ml, 全Hb濃度 ; 7140 μg/ml、 HbA1c-H ; HbA1c濃度 ; 685 μg/ml, 全Hb濃度 ; 6930 μg/ml、福祉・医療技術振興会) を、PBSを用いて20倍希釈し、同様にフェロセン標識抗ヘモグロビンIgG と抗原抗体反応を行い、開始緩衝液を用いて希釈することで、サンプルとした。HbA1c−Low, HbA1c−Medium及びHbA1c−Highの各々において図5に示すような電流値が観測された。このことより、ソルビトールにより溶出された分画の電流値は、各血液サンプル中に含まれるHbA1c濃度に比例的に増加し、血液サンプルを用いても、本手法を用いてHbA1cの電気化学的検出及び定量が可能であることが示された。
また、同様のプロトコールで糖化アルブミン(13%、及び57%含有)サンプルを用いたところ、非糖化アルブミンの分離検出が可能であることが示された(図6)。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明デバイスの基本構成を示す上面図
【図2】本発明デバイスの基本構成を示す側面図
【図3】検出部における電極の配置図
【図4】各HbA1c濃度における電流値を示した図
【図5】各濃度のHbA1cを含む血液サンプルを用いた電流値を示した図
【図6】糖化アルブミンの検出を示した図
【符号の説明】
【0030】
1 基板
2 洗浄液載置部
3 試料液載置部
4 溶出液載置部
5a、5b 分離部
6a、6b 検出部
7〜15 流路
16〜17 廃液口
18 電極
19 ボロン酸化合物結合担体
20 参照極
21 作用極
22 対極
23 電気化学シグナル読み取り用配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体中の複数の糖化タンパク質を分離・検出するためのデバイスであって、基板上に、試料液を保持・供給するための試料液載置部、洗浄液を保持・供給するための洗浄液載置部、溶出液を保持・供給するための溶出液載置部、ボロン酸化合物結合担体を充填した2以上の分離部、及び電気化学シグナルを検出するための検出部を具備し、前記試料液載置部、洗浄液載置部及び溶出液載置部がそれぞれ各分離部と流路を介して連通し、検出部が分離部毎に該分離部を通過した溶液と接触するように配置されてなるデバイス。
【請求項2】
基板がカード型形状である請求項1項記載のデバイス。
【請求項3】
さらに、分離部及び/又は検出部に、基板を貫通する廃液口を具備する流路を設けてなる請求項1又は2記載のデバイス。
【請求項4】
分離部毎に別個の検出部を設けてなるものである請求項1〜3のいずれか1項記載のデバイス。
【請求項5】
糖化ヘモグロビン及び糖化アルブミンを分離・検出するものである請求項1〜4のいずれか1項記載のデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−255912(P2007−255912A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−77014(P2006−77014)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(801000072)農工大ティー・エル・オー株式会社 (83)