説明

糖尿病又は糖尿病性腎症の治療又は予防薬のスクリーニング方法

糖尿病、糖尿病性腎症等の治療、予防、診断等のための手段を提供すること。ELMO1による糖尿病性腎症の治療又は予防薬のスクリーニング方法;ELMO1、ELMO2による、糖尿病の治療又は予防薬のスクリーニング方法、細胞外基質の産生抑制剤、マトリックスメタロプロテイナーゼの発現促進剤、サイトカイン産生抑制剤及び糖取り込み促進剤のスクリーニング方法;ELMO1による糖尿病性腎症の診断方法;糖尿病性腎症の診断キット及び糖尿病性腎症の発症に寄与する核酸の検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病性腎症の治療又は予防薬のスクリーニング方法、糖尿病の治療又は予防薬のスクリーニング方法、細胞外基質の産生抑制剤のスクリーニング方法、マトリックスメタロプロテイナーゼの発現促進剤のスクリーニング方法、サイトカイン産生抑制剤のスクリーニング方法、糖取り込み促進剤のスクリーニング方法、糖尿病性腎症の診断方法、糖尿病性腎症の診断キット及び糖尿病性腎症の発症に寄与する核酸の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病性腎症は、ある程度の糖尿病罹病期間の後、尿アルブミン排泄量の増加(微量アルブミン尿)で発症し、顕性蛋白尿を経て慢性腎不全へと至る連続性の経過をたどる。当該糖尿病性腎症は、透析療法導入後の生命予後が極めて不良で患者のQOLも損なう重大な合併症であり、腎症の早期診断及び治療法の確立が急務であると考えられている。
【0003】
現在、糖尿病性腎症の主な治療法は、血糖コントロール、血圧コントロール、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬の投与、アンジオテンシンII受容体拮抗薬の投与、タンパク質制限食である。
【0004】
しかしながら、前記ACE阻害薬、アンギオテンシンII受容体拮抗薬等は、糖尿病性腎症の進展を遅延させているに過ぎず、根本的治療には不十分であるという欠点がある。また、これらの薬剤は、その作用機序から、しばしば高カリウム血症を生じることが知られており、糖尿病性腎症の治療には十分な注意が必要であるという欠点がある。さらに、糖尿病性腎症の病因は、多要因的であると考えられており、正確な機構等について、不明な点が多いのが現状である。
【0005】
一方、ELMO1(Engulfment and Cell Motility 1)は、貪食作用と細胞形態の変化とを促進することが知られている(非特許文献1を参照のこと)。また、前記ELMO1は、Dockとの相互作用を介してRacによるGTPローディングを促進させることが示されている(非特許文献2を参照のこと)。しかしながら、前記非特許文献1及び非特許文献2によれば、前記ELMO1が、細胞骨格変化におけるRacの作用を促進させる可能性を示すにとどまっている。
【非特許文献1】ティナ(Tina L.Gumienny)ら,Cell,107,27−41,2001年10月5日発行
【非特許文献2】エンリコ(Enrico Brugnera)ら、Nature Cell Biology,4,574−582,2002年7月15日オンライン公開,ウェブページアドレス:http://cellbio.nature.com
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の1つの側面は、糖尿病患者において、糖尿病性腎症を併発する可能性を低減させること、糖尿病性腎症を治療すること、ELMO1に基づき、細胞外基質の産生を抑制すること、マトリックスプロテイナーゼの発現を促進すること、サイトカインの産生を抑制すること等のいずれかの性質を発揮しうる物質をスクリーニングすること、前記物質を簡便にスクリーニングすること、前記物質を効率よくスクリーニングすること等を可能にする糖尿病性腎症の治療又は予防薬のスクリーニング方法を提供することに関する。本発明の別の側面は、糖尿病を治療すること、ELMO1及び/又はELMO2に基づき、細胞内への糖の取り込みを促進すること等のいずれかの性質を発揮しうる物質を、簡便に、効率よくスクリーニングすること等を可能にする糖尿病の治療又は予防薬のスクリーニング方法を提供することに関する。本発明の別の側面は、細胞外基質の産生抑制剤、マトリックスメタロプロテイナーゼの発現促進剤、サイトカイン産生抑制剤又は糖取り込み促進剤のスクリーニング方法を提供することに関する。さらに、本発明の別の側面は、糖尿病性腎症を容易に高処理量で高い信頼性で診断することができる糖尿病性腎症の診断方法を提供することに関する。また、本発明の別の側面は、被験試料から、糖尿病性腎症の発症に寄与する核酸を、容易に、迅速に検出すること等を可能にする糖尿病性腎症の発症に寄与する核酸の検出方法を提供することに関する。さらに、本発明の別の側面は、糖尿病性腎症を容易に迅速に診断すること、被験試料から、糖尿病性腎症の発症に寄与する核酸を、容易に迅速に検出すること等を可能にする前記核酸の糖尿病性腎症の診断キットを提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の要旨は、
〔1〕 被験物質の存在下に、ELMO1の発現量若しくはELMO1を発現させることにより引き起こされる事象を評価し、該発現量の減少若しくは該事象の阻害をもたらす被験物質を選別することを特徴とする、糖尿病性腎症の治療又は予防薬のスクリーニング方法、
〔2〕 被験物質の存在下に、ELMO1及び/又はELMO2の発現量若しくはELMO1及び/又はELMO2を発現させることにより引き起こされる事象を評価し、該発現量の減少若しくは該事象の阻害をもたらす被験物質を選別することを特徴とする、糖尿病の治療又は予防薬のスクリーニング方法、
〔3〕 被験物質存在下に、ELMO1及び/又はELMO2の発現量を評価し、該発現量の減少をもたらす被験物質を選別することを特徴とする、細胞外基質産生抑制剤のスクリーニング方法、
〔4〕 被験物質存在下に、ELMO1及び/又はELMO2の発現量を評価し、該発現量の増加をもたらす被験物質を選別することを特徴とする、マトリックスメタロプロテイナーゼ産生促進剤のスクリーニング方法、
〔5〕 被験物質存在下に、ELMO1及び/又はELMO2の発現量を評価し、該発現量の減少をもたらす被験物質を選別することを特徴とする、サイトカイン産生抑制剤のスクリーニング方法、
〔6〕 被験物質存在下に、ELMO1及び/又はELMO2の発現量を評価し、該発現量の減少をもたらす被験物質を選別することを特徴とする、糖取込み促進剤のスクリーニング方法、
〔7〕 ELMO1遺伝子の第16イントロン、第17イントロン及び第18イントロンからなる群より選ばれた少なくとも1種のヌクレオチドにおける多型を検出することを特徴とする、糖尿病性腎症の診断方法、
〔8〕 ELMO1遺伝子の第16イントロン、第17イントロン及び第18イントロンからなる群より選ばれた少なくとも1種のヌクレオチドにおける多型を検出することを特徴とする、糖尿病性腎症の発症に寄与する核酸の検出方法、並びに
〔9〕 (I)ELMO1遺伝子の第16イントロン、第17イントロン及び第18イントロンからなる群より選ばれた少なくとも1種のイントロンにおいて糖尿病性腎症に罹患する可能性に関連する多型を検出するために用いられるプローブ、及び/又は
(II)ELMO1遺伝子の第16イントロン、第17イントロン及び第18イントロンからなる群より選ばれた少なくとも1種のイントロンにおいて糖尿病性腎症に罹患する可能性に関連する多型を検出するために用いられるプライマー対、
を含む、糖尿病性腎症の診断キット、
に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の糖尿病性腎症の治療又は予防薬のスクリーニング方法によれば、糖尿病患者において、糖尿病性腎症を併発する可能性を低減させ、糖尿病性腎症を治療し得、かつELMO1に基づき、細胞外基質の産生を抑制、マトリックスプロテイナーゼの発現を促進及び/又はサイトカインの産生を抑制しうる物質を、簡便に、効率よくスクリーニングすることができるという優れた効果を奏する。本発明の糖尿病の治療又は予防薬のスクリーニング方法によれば、糖尿病患者において、糖尿病を治療し得、かつELMO1及び/又はELMO2に基づき、細胞内への糖の取り込みを促進しうる物質を、簡便に、効率よくスクリーニングすることができるという優れた効果を奏する。本発明の細胞外基質産生抑制剤、本発明のマトリックスメタロプロテイナーゼの発現促進剤、本発明のサイトカイン産生抑制剤又は糖取り込み促進剤のスクリーニング方法によれば、糖尿病等に対する治療効果を発揮しうる物質を、簡便に、効率よくスクリーニングすることができるという優れた効果を奏する。さらに、本発明の糖尿病性腎症の診断方法によれば、糖尿病性腎症を容易に、迅速に診断することができるという優れた効果を奏する。また、本発明の糖尿病性腎症の発症に寄与する核酸の検出方法によれば、被験試料から、糖尿病性腎症の発症に寄与する核酸を、容易に迅速に検出することができるという優れた効果を奏する。また、本発明の診断キットによれば、本発明は、糖尿病性腎症を容易かつ迅速に診断することができ、被験試料から、糖尿病性腎症の発症に寄与する核酸を、容易かつ迅速に検出することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、ELMO1遺伝子周辺における連鎖不均衡マッピングを示す。
【0010】
【図2】図2は、ELMO1遺伝子における多型、ランドマークSNPを示す。
【0011】
【図3】図3は、図2の続きを示し、ELMO1遺伝子における多型、ランドマークSNPを示す。
【0012】
【図4】図4は、図3の続きを示し、ELMO1遺伝子における多型、ランドマークSNPを示す。
【0013】
【図5】図5は、正常マウス腎臓を用いたELMO1遺伝子のインサイチュハイブリダイゼーションの結果を示す。図中、パネルa)b)は、腎糸球体上皮細胞、パネルc)d)は、間質細胞を示す。また、パネルa)及びc)は、アンチセンスプローブを用いた結果、b)及びd)は、センスプローブを用いた結果を示す。矢頭は、陽性シグナルの細胞を示す。なお、スケールバーは、約50μmを示す。
【0014】
【図6】図6は、COS細胞におけるELMO1遺伝子の発現に対する影響を調べた結果を示す図である。データは、正常グルコース下で1日培養された細胞に比べた増加倍数として示される。値は、平均±標準偏差で、*はp<0.0001である。
【0015】
【図7】図7は、COS細胞に対するELOMO1発現の影響を示す。各遺伝子の発現を、リアルタイム定量RT−PCRで解析した。パネルa)は、TGF−β1、b)I型コラーゲン(α1)、c)フィブロネクチン、d)マトリックスメタロプロテイナーゼ−2(MMP−2)、e)マトリックスメタロプロテイナーゼ−3(MMP−3)を示す。白バーは、pCDNA−LacZによりトランスフェクトされた細胞、黒バーは、ELMO1でトランスフェクトされた細胞を示す。
【0016】
【図8】図8は、ELMO1の発現変動を調べた結果を示す図である。左パネルは、骨格筋、右パネルは、脂肪組織を示す。
【0017】
【図9】図9は、ELMO2の発現変動を調べた結果を示す図である。図中、左パネルは、骨格筋、右パネルは、脂肪組織を示す。
【0018】
【図10】図10は、L6細胞に導入されたELMO1遺伝子又はELMO2遺伝子の発現を示す図である。図中、左パネルは、ELMO1の発現、右パネルは、ELMO2の発現を示す。
【0019】
【図11】図11は、ELMO1又はELMO2発現細胞における糖取り込みを調べた結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、糖尿病性腎症を発症した糖尿病患者において、SNP解析をした結果、ELMO1遺伝子の第16イントロン、第17イントロン及び第18イントロンにおいて、驚くべく、高い頻度で変異が見られ、前記ELMO1が高グルコース濃度条件下で増加し、前記ELMO1の増加により、細胞外基質が蓄積され、マトリックスメタロプロテイナーゼが減少するという本発明者らの知見に基づく。すなわち、本発明は、貪食作用及び細胞運動に関与することが知られていたELMO1が、予想外にも、糖尿病性腎症と関連するという本発明者らの知見に基づく。また、本発明は、ELMO1及びELMO2がさらに糖尿病の憎悪因子であり、細胞内への糖の取込みを減少させるという本発明者らの知見に基づく。
【0021】
本発明のスクリーニング方法においては、ELMO1及び/又はELMO2の作用を、被験物質の存在下に評価する。
【0022】
前記「ELMO1及び/又はELMO2の作用」としては、「ELMO1及び/又はELMO2の発現量」、例えば、該発現量の変動等、「ELMO1及び/又はELMO2を発現させることにより引き起こされる事象」等が挙げられる。
【0023】
前記事象としては、より具体的には、細胞外基質量の上昇、マトリックスメタロプロテイナーゼの減少、サイトカインの上昇等が挙げられる。本発明のスクリーニング方法においては、かかる事象を評価することにより、より簡便に、ELMO1及び/又はELMO2に対する被験物質の作用を評価することができるという優れた効果を発揮する。
【0024】
したがって、本発明によれば、
− 被験物質の存在下に、ELMO1の発現若しくはELMO1を発現させることにより引き起こされる事象〔すなわち、発現(例えば、発現量)の抑制(例えば、減少)若しくは該事象の阻害等〕を評価し、該発現量の抑制(例えば、減少)若しくは該事象の阻害をもたらす被験物質を選別することを特徴とする、糖尿病性腎症の治療又は予防薬のスクリーニング方法(実施態様1);
− 被験物質の存在下に、ELMO1及び/又はELMO2の発現〔すなわち、発現(例えば、発現量)の抑制(例えば、減少)若しくは事象の阻害等〕を評価し、該発現量の抑制(例えば、減少)若しくは該事象の阻害をもたらす被験物質を選別することを特徴とする、糖尿病の治療又は予防薬のスクリーニング方法(実施態様2);
− 被験物質の存在下に、ELMO1及び/又はELMO2の発現〔すなわち、発現(例えば、発現量)の抑制(例えば、減少)等〕を評価し、該発現(例えば、発現量)の抑制(例えば、減少)をもたらす被験物質を選別することを特徴とする、細胞外基質産生抑制剤のスクリーニング方法(実施態様3);
− 被験物質の存在下に、ELMO1及び/又はELMO2の発現〔すなわち、発現(例えば、発現量)の促進(例えば、増加)等〕を評価し、該発現(例えば、発現量)の促進をもたらす被験物質を選別することを特徴とする、マトリックスメタロプロテイナーゼの発現促進剤のスクリーニング方法(実施態様4);
− 被験物質の存在下に、ELMO1及び/又はELMO2の発現〔すなわち、発現(例えば、発現量)の抑制(例えば、減少)等〕を評価し、該発現(例えば、発現量)の抑制(例えば、減少)をもたらす被験物質を選別することを特徴とする、サイトカイン産生抑制剤のスクリーニング方法(実施態様5);
− 被験物質の存在下に、ELMO1及び/又はELMO2の発現〔すなわち、発現(例えば、発現量)の抑制(例えば、減少)等〕を評価し、該発現(例えば、発現量)の抑制(例えば、減少)をもたらす被験物質を選別することを特徴とする、糖取込み促進剤のスクリーニング方法(実施態様6);
が提供される。なお、これらのスクリーニング方法は、薬理評価においても利用されうる。
【0025】
前記ELMO1及びELMO2は、貪食作用及び細胞運動に関与していることが知られている因子であり、それぞれ、配列番号:1に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド及び配列番号:2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである。
【0026】
前記ELMO1をコードする核酸としては、配列番号:1に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸等が挙げられる。また、前記ELMO2をコードする核酸としては、配列番号:2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸等が挙げられる。
【0027】
なお、本発明においては、コードされるポリペプチドが、配列番号:1に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド(以下、野生型ELMO1ともいう)と同等の生物学的活性を呈するものであれば、前記ELMO1をコードする核酸は、前記配列番号:1に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸のバリアントであってもよい。また、同様に、コードされるポリペプチドが、配列番号:2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド(以下、野生型ELMO2ともいう)と同等の生物学的活性を呈するものであれば、前記ELMO2をコードする核酸は、前記配列番号:2に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードする核酸のバリアントであってもよい。
【0028】
前記野生型ELMO1及び野生型ELMO2それぞれと同等の生物学的活性は、例えば、GTP結合型Racを測定することにより、Racの活性化を指標として評価されうる。また、さらに、前記野生型ELMO1及び野生型ELMO2それぞれと同等の生物学的活性は、当該ELMO1及びELMO2それぞれの存在に基づく細胞外基質量の上昇、マトリックスメタロプロテイナーゼの減少及びサイトカインの上昇をもたらす性質を指標としても評価されうる。ただし、この場合、野生型ELMO1及び/又は野生型ELMO2とは無関係な経路により、細胞外基質量の上昇、マトリックスメタロプロテイナーゼの減少及びサイトカインの上昇をもたらす因子であり、かつ糖尿病腎症に無関係な因子は除かれる。
【0029】
前記野生型ELMO1をコードする核酸のバリアントとしては、例えば、
1)配列番号:1に示されるアミノ酸配列において、少なくとも1残基、具体的には、1個若しくは複数個、好ましくは、1個若しくは数個のアミノ酸残基の置換、欠失、付加又は挿入を有するアミノ酸配列をコードする核酸、
2)野生型ELMO1をコードする核酸のアンチセンス鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズしうる核酸、
3)配列番号:1に示されるアミノ酸配列をコードする塩基配列に対し、Lipman−pearson法〔Science、227、p1435(1985)〕により、最適な状態にアラインメントされ、算出された値であり、少なくとも50%、好ましくは、80%以上、より好ましくは、90%以上である塩基配列からなる核酸、
等が挙げられる。
【0030】
前記核酸は、天然由来のバリアントであってもよく、人為的な変異を有する変異体であってもよい。人為的な変異を有する変異体は、例えば、モレキュラークローニング・ア・ラボラトリーマニュアル第3版等の記載に準じ、部位特異的変異導入法等により作製されうる。
【0031】
本明細書において、前記ストリンジェントな条件としては、例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0)と0.5% SDSと5×デンハルトと100μg/ml 変性サケ精子DNAと50% ホルムアミドとを含む溶液中、50℃、よりストリンジェントには、60℃で12時間インキュベーションし、低イオン強度、例えば、0.5×SSC、よりストリンジェントには、0.1×SSC等の条件及び/又はより高温、50℃以上、よりストリンジェントには、55℃、さらにストリンジェントには、60℃、より一層ストリンジェントには、65℃等の条件下での洗浄を行なう条件が挙げられる。
【0032】
本発明のスクリーニング方法に用いられる「被験物質」としては、例えば、生物の細胞抽出物、該生物の無細胞抽出物、該生物の細胞培養上清等の試料中に含まれた物質、生物学的に産生された物質、化学的に合成された化合物等が挙げられる。
【0033】
より具体的には、前記被験試料としては、例えば、化合物、ペプチド、ペプチドミメティックス、各種タンパク質、核酸、核酸アナログ、抗体、抗体断片等が挙げられる。なお、前記化合物には、コンビナトリアルケミストリーにより得られたコンビナトリアルライブラリーの化合物も含まれる。また、前記抗体及び抗体断片には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、Fabフラグメント等が含まれる。前記核酸及び核酸アナログには、アンチセンス核酸、リボザイム、PNA等が含まれる。
【0034】
ここで、前記生物としては、例えば、植物、動物、微生物等が挙げられる。
【0035】
1.実施態様1について
前記実施態様1のスクリーニング方法によれば、ELMO1の発現の抑制(例えば、発現量の減少)若しくはELMO1を発現させることにより引き起こされる事象の阻害を評価するため、糖尿病性腎症の進行を遅延させるための治療に一般的に用いられているACE阻害薬、アンジオテンシンII受容体拮抗薬等とは異なる作用機序を示す物質を簡便に、効率よくスクリーニングすることができるという優れた効果を発揮する。
【0036】
なお、本発明のスクリーニング方法においては、対照として、被験物質非存在下におけるELMO1の発現量、前記事象等を、被験物質存在下の場合と同様に評価し、被験物質存在下の場合のELMO1の発現量、前記事象と比較すればよい。
【0037】
かかるスクリーニング方法は、評価対象に応じて、
(1) 被験物質の存在下に、ELMO1をコードする核酸をコードする核酸を導入した哺乳動物細胞におけるELMO1の発現量を測定し、ELMO1の発現量を減少させる被検物質を、糖尿病性腎症の治療又は予防薬の候補物質としてスクリーニングする方法(方法1という);
(2) 被験物質の存在下に、ELMO1をコードする核酸を導入した哺乳動物細胞における細胞外基質の量を測定し、ELMO1の発現により引き起こされる該細胞外基質量の上昇を抑制する被験物質を、糖尿病性腎症の治療又は予防薬の候補物質としてスクリーニングする方法(方法2という);
(3) 被験物質の存在下に、ELMO1をコードする核酸を導入した哺乳動物細胞におけるマトリックスメタロプロテイナーゼの量を測定し、ELMO1の発現により引き起こされる該マトリックスメタロプロテイナーゼの減少を抑制する被験物質を、糖尿病性腎症の治療又は予防薬の被験物質としてスクリーニングする方法(方法3という);
(4) 被験物質の存在下に、ELMO1をコードする核酸を導入した哺乳動物細胞におけるサイトカインの量を測定し、ELMO1の発現により引き起こされる該サイトカイン量の上昇を抑制する被験物質を、糖尿病性腎症の治療又は予防薬の被験物質としてスクリーニングする方法(方法4という);
により行なわれうる。
【0038】
前記方法1としては、より具体的には、例えば、被験物質の存在下に、ELMO1をコードする核酸をコードする核酸を導入した哺乳動物細胞におけるELMO1の発現量を測定するステップを行ない、被験物質の存在した場合にELMO1の発現量が減少することを、該被験物質が糖尿病性腎症の治療又は予防薬であることの指標として、目的の被験物質をスクリーニングする方法等が挙げられる。
【0039】
前記ELMO1をコードする核酸を哺乳動物細胞に導入する際、該核酸を適切なベクターに連結し、得られた組換えベクターを慣用の遺伝子導入法により、哺乳動物細胞に導入してもよい。また、哺乳動物細胞への核酸の導入に際して、前記核酸を、いわゆるnaked-DNAとして用いてもよく、リポソーム、金粒子、ウイルス抽出物等の慣用の担体に担持させ、得られた産物(以下、核酸導入用担体ともいう)を用いてもよい。
【0040】
前記ベクターとしては、安定発現細胞株を樹立する観点から、好ましくは、抗生物質耐性遺伝子を含有しているベクターが望ましく、例えば、pcDNA3.1、pCDM8、pREP、pUC19、pTrxFus(商品名、インビトロジェン社製)、pET−3、pET−11、pBluescriptII SK(+)、pBluescriptII SK(−)、pCMV−Script(商品名、ストラタジーン社製)、pCl−neo(プロメガ社製)、pUC118、pSTV28(タカラバイオ社製)等が挙げられる。
【0041】
前記哺乳動物細胞としては、例えば、ヒト由来株細胞のHEK293(ヒト胎児腎細胞、ATCC:CRL−1573)、HeLa(子宮頚部癌細胞、ATCC:CCL−2)HBT5637(白血病細胞、特開昭63−299)、BALL−1(白血病細胞)及びHCT−15(大腸癌細胞)、ヒト腎糸球体上皮細胞、マウス由来株細胞のSp2/0−Ag14(マウス骨髄種細胞、ATCC:CRL−1581)及びNSO(マウス骨髄種細胞)、マウス腎糸球体上皮細胞、サル由来株細胞のCOS−1(アフリカミドリザル腎細胞(SV40形質転換細胞)、ATCC:CRL−1650)及びCOS−7(アフリカミドリザル腎細胞(SV40形質転換細胞)、ATCC:CRL−1651)、ハムスター由来株細胞のCHO−K1(チャイニーズハムスター卵巣細胞、ATCC:CCL−61)及びBHK−21(C−13)(シシリアンハムスター仔腎細胞、ATCC:CCL−10)、ラット由来株細胞のPC12(副腎褐色細胞腫、ATCC:CRL−1721)及びYB2/0(ラット骨髄種細胞、ATCC:CRL−1662)、ラット腎糸球体上皮細胞等が挙げられる。なかでも、治療薬等をスクリーニングする観点から、好ましくは、ヒト由来細胞が望ましい。
【0042】
前記核酸が導入された哺乳動物細胞について、例えば、細胞中におけるELMO1若しくはその遺伝子の発現が、核酸導入前の哺乳動物細胞における発現に比べ、増加していることを指標として、本発明のスクリーニング方法に用いられうる細胞であることが評価されうる。
【0043】
被験物質存在下における前記細胞中のELMO1の量は、例えば、
(I) 被験物質を含有した培地又は被験物質を含まない培地で、細胞を培養し、得られた細胞から全RNAを抽出し、得られた全RNAを鋳型とし、適切なプライマー(対)を用いてRT−PCRを行なう方法;
(II) 被験物質を含有した培地又は被験物質を含まない培地で、細胞を培養し、得られた細胞から全RNAを抽出し、適切なプローブを用いて、ノーザンブロット解析を行なう方法;
(III) 被験物質を含有した培地又は被験物質を含まない培地で、細胞を培養し、得られた細胞から無細胞抽出液を調製し、得られた無細胞抽出液と、適切な抗体とを用いて、イムノアッセイを行なう方法;
(IV) 被験物質を含有した培地又は被験物質を含まない培地で、細胞を培養し、得られた培養上清と、適切な抗体とを用いて、イムノアッセイを行なう方法;
等により、測定されうる。
【0044】
なかでも、スクリーニングを迅速かつ多量に行なう観点から、迅速かつ多量に処理可能な方法が望ましく、好ましくは、RT−PCRを行なう方法、及び得られた培養上清と適切な抗体とを用いて、イムノアッセイを行なう方法が望ましい。
【0045】
前記培地としては、哺乳動物細胞の培養に適した培地であればよく、例えば、MEM培地〔Science,130,432(1959)〕、D−MEM培地〔Virology,8,396(1959)〕、RPMI1640培地〔The Journal of the American Medical Association,199,519(1967)〕等にウシ胎仔血清(FCS)を適量添加したもの等が挙げられる。
【0046】
本発明において用いられるプライマーは、例えば、Tm値等、公知配列、核酸の二次構造の形成等を考慮し、プライマーのデザインを支援する慣用のソフトウェア等により作製されうる。プライマーの鎖長は、特に限定はないが、例えば、15〜40ヌクレオチド長であり、好ましくは、17〜30ヌクレオチド長であることが望ましい。
【0047】
本発明において用いられるプローブは、前記プライマーと同様に、例えば、Tm値等、公知配列、核酸の二次構造の形成等を考慮し、慣用のソフトウェア等により作製されうる。前記プローブの鎖長は、特に限定はないが、非特異的なハイブリダイゼーションを防止する観点から、連続した15ヌクレオチド長以上であり、好ましくは、18ヌクレオチド長以上であることが望ましい。前記プローブとしては、検出対象のポリペプチドをコードする核酸の塩基配列のうち、データベースの公知配列に存在しない塩基配列からなる核酸又はそのアンチセンス鎖、該塩基配列中の連続した15ヌクレオチド長以上の塩基配列を有する核酸又はそのアンチセンス鎖等が挙げられる。
【0048】
本発明に用いられる抗体は、例えば、カレント・プロトコルズ・イン・イムノロジー〔Current Protocols in Immunology、ジョン・E・コリガン(John E.Coligan)編、ジョン・ワイリー&サンズ社(John Weily&Sons,Inc)発行、1992年〕に記載の方法により、検出対象のポリペプチドを用いて、ウサギやマウス等を免疫することにより、容易に作製され得る。本発明に用いられる抗体は、検出対象のポリペプチドに特異的に結合する能力を有するものであれば、ポリクローナル抗体であってもよく、モノクローナル抗体であってもよく、モノクローナル抗体を精製後、ペプチダーゼ等により処理することにより得られた抗体の断片であってもよい。さらに、本発明に用いられる抗体は、前記抗体の誘導体、例えば、キメラ抗体、ヒト化抗体、Fabフラグメント、単鎖抗体等や公知技術により修飾された抗体等であってもよい。なお、本発明に用いられる抗体の特異性は、例えば、検出対象のポリペプチド及び他のポリペプチドを用い、オクタロニー法により、検出対象のポリペプチドとは反応して、沈降線を示し、他のポリペプチドとは反応せず、沈降線を示さないことを指標として評価されうる。
【0049】
前記方法2としては、より具体的には、例えば、被験物質存在下に、ELMO1をコードする核酸をコードする核酸を導入した哺乳動物細胞における細胞外基質の量を測定するステップを含み、ここで、被験物質の存在した場合に細胞外基質の産生が抑制されることを、該被験物質が糖尿病性腎症の治療又は予防薬であることの指標として、目的の被験物質をスクリーニングする方法等が挙げられる。
【0050】
前記方法2において、細胞外基質の量は、例えば、前記方法1と同様に、前記(I)〜(IV)に記載の手法等により、測定され得、スクリーニングを迅速かつ多量に行なう観点から、好ましくは、RT−PCRを行なう方法、及び得られた培養上清と適切な抗体とを用いて、イムノアッセイを行なう方法が望ましい。
【0051】
なお、細胞外基質の測定に用いられうるプライマー対としては、例えば、フィブロネクチンについて、配列番号:5に示される塩基配列を有するプライマーと配列番号:6に示される塩基配列を有するプライマーとからなるプライマー対、I型コラーゲン(アルファ1)について、配列番号:7に示される塩基配列を有するプライマーと配列番号:8に示される塩基配列を有するプライマーとからなるプライマー対等が挙げられる。
【0052】
前記方法3としては、より具体的には、例えば、被験物質存在下に、ELMO1をコードする核酸をコードする核酸を導入した哺乳動物細胞におけるマトリックスメタロプロテイナーゼの量を測定するステップを行ない、該被験物質の存在した場合にマトリックスメタロプロテイナーゼ産生が促進されること(例えば、ELMO1の発現により引き起こされる該マトリックスメタロプロテイナーゼの減少が抑制されること)を、該被験物質が糖尿病性腎症の治療又は予防薬であることの指標として、該被検物質をスクリーニングする方法等が挙げられる。
【0053】
マトリックスメタロプロテイナーゼの量は、例えば、
前記方法1と同様に培養された各細胞の全RNAを鋳型とし、マトリックスメタロプロテイナーゼに応じたプライマー(対)を用いてRT−PCRを行なう方法;
前記方法1と同様に培養された各細胞の全RNAとマトリックスメタロプロテイナーゼに応じたプローブとを用いて、ノーザンブロット解析を行なう方法;
前記方法1と同様に培養された無細胞抽出液とマトリックスメタロプロテイナーゼに対する抗体とを用いて、イムノアッセイを行なう方法;
前記無細胞抽出液について、マトリックスメタロプロテイナーゼの活性を測定する方法;
前記無細胞抽出液について、天然基質であるコラーゲンの分解活性を測定する方法;
前記無細胞抽出液について、蛍光ラベルされた合成ペプチド基質の分解活性を測定する方法;
等により、測定されうる。
【0054】
なかでも、簡便にハイスループットで測定可能である観点から、好ましくは、蛍光ラベルされた合成ペプチドを利用する方法が望ましい。
【0055】
RT−PCRを行なう場合、用いられうるプライマー対としては、特に限定されないが、例えば、マトリックスメタロプロテイナーゼ−2(MMP−2)について、配列番号:11に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号:12に示される塩基配列を有するプライマーとからなるプライマー対、マトリックスメタロプロテイナーゼ−3(MMP−3)について、配列番号:13に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号:14に示される塩基配列を有するプライマーとからなるプライマー対等が挙げられる。
【0056】
マトリックスメタロプロテイナーゼの活性は、例えば、天然基質であるコラーゲンの分解活性を測定する方法や蛍光ラベルされた合成ペプチド基質の分解活性を測ること等により測定されうる。
【0057】
前記方法4としては、より具体的には、例えば、被験物質存在下に、ELMO1をコードする核酸をコードする核酸を導入した哺乳動物細胞におけるサイトカインの量を測定するステップを行ない、被験物質の存在した場合にサイトカイン産生が抑制されることを、該被験物質が糖尿病性腎症の治療又は予防薬であることの指標として、目的の被検物質をスクリーニングする方法等が挙げられる。
【0058】
サイトカインの量は、例えば、
前記方法1と同様に培養された各細胞の全RNAを鋳型とし、サイトカインに応じたプライマー(対)を用いてRT−PCRを行なう方法、
前記方法1と同様に培養された各細胞の全RNAとサイトカインに応じたプローブとを用いて、ノーザンブロット解析を行なう方法、
前記方法1と同様に培養された無細胞抽出液とサイトカインに対する抗体とを用いて、イムノアッセイを行なう方法
等により、測定されうる。
【0059】
RT−PCRを行なう場合、用いられうるプライマー対としては、特に限定されないが、例えば、TGF−β1について、配列番号:9に示される塩基配列を有するプライマーと、配列番号:10に示される塩基配列を有するプライマーとからなるプライマー対等が挙げられる。
【0060】
また、方法4においては、サイトカイン又はそれにより引き起こされる生理学的事象を指標としてサイトカインの量を測定してもよい。
【0061】
前記方法4においては、被験物質の存在下に、ELMO1の発現により引き起こされる該サイトカインの上昇が抑制されることが、該被験物質が糖尿病性腎症の治療又は予防薬の被験物質であることの指標となる。
【0062】
2.実施態様2について
前記実施態様2のスクリーニング方法は、より具体的には、例えば、被験物質の存在下に、ELMO1をコードする核酸及び/又はELMO2をコードする核酸を導入した哺乳動物細胞におけるELMO1及び/又はELMO2の発現量を測定するステップを行ない、該被験物質の存在した場合に該発現量が減少することを、該被験物質が糖尿病の治療又は予防薬であることの指標として、目的の被験物質をスクリーニングすることができる。
【0063】
前記実施態様2のスクリーニング方法において、ELMO1及び/又はELMO2の発現量は、前記実施態様1における(I)〜(IV)と同様の手法と同様に測定されうる。
【0064】
前記実施態様2のスクリーニング方法によれば、ELMO1及び/又はELMO2の発現の抑制若しくは前記事象の阻害を評価するため、現在、糖尿病の治療において一般的に標的とされている「インスリン分泌促進」、「α−グルコシダーゼ阻害」等の作用機序とは異なる作用機序を示す物質をスクリーニングすることができるという優れた効果を発揮する。
【0065】
3.実施態様3について
前記実施態様3のスクリーニング方法においては、より具体的には、例えば、被験物質の存在下に、ELMO1をコードする核酸及び/又はELMO2をコードする核酸を導入した哺乳動物細胞におけるELMO1及び/又はELMO2の発現量を測定するステップを行ない、該被験物質の存在した場合に該発現量が減少することを、該被験物質が細胞外基質産生抑制剤であることの指標として、目的の被験物質をスクリーニングすることができる。
【0066】
なお、ELMO2をコードする核酸を導入した哺乳動物細胞は、前記ELMO1をコードする核酸を導入した哺乳動物細胞と同様に作製されうる。
【0067】
前記「細胞外基質」とは、糸球体を構成するメサンギウム領域に蓄積すること等の性質を有し、糖尿病性腎症に関与する生体構造物をいう〔例えば、アヨ(Ayo, S. H.)ら、 American Journal of Pathology 136巻、1339−1348、1990年;ワーブ(Wahab, N. A)ら、Biochemical Journal.、316巻、985−992、1996年;アヨ(Ayo, S. H.)ら、American Journal of Physiology、260巻、185−191、1991年等を参照〕。前記「細胞外基質」としては、例えば、フィブロネクチン、I型コラーゲン、III型コラーゲン、IV型コラーゲン、ラミニン等が挙げられる。
【0068】
前記実施態様3のスクリーニング方法において、ELMO1及び/又はELMO2の発現量は、前記実施態様1における(I)〜(IV)におけるELMO1の発現量の測定等の場合と同様の手法と同様に測定されうる。
【0069】
コラーゲン、フィブロネクチン等の細胞外基質は、糸球体のメサンギウム領域に蓄積することにより糸球体の硬化を引き起こすことから、これらの産生を抑制する物質(細胞外基質産生抑制剤)は、糸球体硬化や間質の線維化、及びそれに伴う慢性腎疾患、特に糖尿病性腎症の治療薬又は予防薬としての作用が期待される。
【0070】
4.実施態様4について
前記実施態様4のスクリーニング方法においては、より具体的には、例えば、被験物質の存在下に、ELMO1をコードする核酸及び/又はELMO2をコードする核酸を導入した哺乳動物細胞におけるELMO1及び/又はELMO2の発現量を測定するステップを行ない、該被験物質の存在した場合にELMO1及び/又はELMO2の発現量が減少することを、該被験物質が、マトリックスメタロプロテイナーゼの発現促進剤であることの指標として、被験物質をスクリーニングすることができる。
【0071】
前記実施態様4のスクリーニング方法において、ELMO1及び/又はELMO2の発現量は、前記実施態様1における(I)〜(IV)におけるELMO1の発現量の測定等の場合と同様の手法と同様に測定されうる。
【0072】
前記「マトリックスメタロプロテイナーゼ」とは、コラーゲン、ラミニン等の細胞外基質を分解する酵素であるマトリックスプロテイナーゼにおいて糖尿病性腎症に関与するものをいう〔例えば、前田ら、Kidney International. 60巻、1428−1434、2001年;マクレナン(McLennan SV)ら、Diabetologia、43巻、642−648、2000年;シング(Singh R)ら、Experimental Nephrology、9巻、9巻、249−257、2001年等を参照〕。前記「マトリックスメタロプロテイナーゼ」としては、例えば、マトリックスプロテイナーゼ−1、マトリックスプロテイナーゼ−2、マトリックスプロテイナーゼ−3、マトリックスプロテイナーゼ−9等が挙げられる。
【0073】
前記マトリックスメタロプロテイナーゼは、各種コラーゲンやフィブロネクチン等の細胞外基質を分解するため、マトリックスメタロプロテイナーゼの発現を促進させるような物質(MMP発現促進剤)は、これらの基質のメサンギウム領域への蓄積を防ぐことにより糸球体硬化や間質の線維化及びそれに伴う慢性腎疾患、特に糖尿病性腎症の治療薬又は予防薬としての作用が期待される。
【0074】
5.実施態様5について
前記実施態様5のスクリーニング方法においては、より具体的には、例えば、被験物質の存在下に、ELMO1をコードする核酸及び/又はELMO2をコードする核酸を導入した哺乳動物細胞におけるELMO1及び/又はELMO2の発現量を測定するステップを含み、ここで、被験物質の存在した場合にELMO1及び/又はELMO2の発現量が減少することを、該被験物質が、サイトカイン産生抑制剤であることの指標として、被験物質をスクリーニングすることができる。
【0075】
本明細書において、前記「サイトカイン」とは、糖尿病性腎症の発症に関与し、細胞から放出されるタンパク質性因子をいう〔例えば、ワング(Wang S)ら、American Journal of Physiology、278巻、554−560、2000年;ワング(Wang S)ら、Kidney International、57巻、1002−1014、2000年;ヒルシュベルク(Hirschberg R)ら、The Journal Clinical Investigation、98巻、116−124、1996年等を参照のこと)。前記「サイトカイン」としては、例えば、TGF−β1、TNF−α、PDGF、CTGF、IGF−1、VEGF−A、HGF、IL−6等が挙げられる。
【0076】
なお、TGF−β1、IL−6等のサイトカインは各種細胞外基質の発現を誘導し、さらに分解を抑制させることにより細胞外基質をメサンギウム領域に蓄積させることが知られている。そのため、これらのサイトカインの産生を抑制させる物質(サイトカイン産生抑制剤)はこれらの基質のメサンギウム領域への蓄積を防ぐことにより糸球体硬化や間質の線維化、及びそれに伴う慢性腎疾患、特に糖尿病性腎症の治療薬又は予防薬としての作用が期待される。
【0077】
前記実施態様5のスクリーニング方法において、ELMO1及び/又はELMO2の発現量は、前記実施態様1における(I)〜(IV)におけるELMO1の発現量の測定等の場合と同様の手法と同様に測定されうる。
【0078】
6.実施態様6について
前記実施態様6のスクリーニング方法においては、より具体的には、例えば、被験物質の存在下に、ELMO1をコードする核酸及び/又はELMO2をコードする核酸を導入した哺乳動物細胞におけるELMO1及び/又はELMO2の発現量を測定するステップを行ない、被験物質の存在した場合にELMO1及び/又はELMO2の発現量が減少することを、該被験物質が、糖取込み促進剤であることの指標として、被験物質をスクリーニングすることができる。
【0079】
前記「糖」とは、グルコース(ブドウ糖)をいう。
【0080】
前記実施態様6のスクリーニング方法において、ELMO1及び/又はELMO2の発現量は、前記実施態様1における(I)〜(IV)におけるELMO1の発現量の測定等の場合と同様の手法と同様に測定されうる。
【0081】
なお、血糖値の上昇は、糖尿病及び血管障害を引き起こし、糖尿病性腎症、神経症、網膜症等の合併症を発症するため、糖の主たる消費組織である脂肪細胞や骨格筋細胞などにおいて糖の取込みを促進するような物質(糖取込み促進剤)は高血糖状態になるのを防ぐため糖尿病の治療薬又は予防薬としての作用が期待される。
【0082】
さらに、糖尿病性腎症を発症した糖尿病患者において、ELMO1遺伝子の第16イントロン、第17イントロン及び第18イントロンにおいて、糖尿病性腎症との強い関連性を示す変異が高い頻度で見られるという本発明者らの知見に基づき、糖尿病性腎症の診断方法が提供される。かかる診断方法も本発明に含まれる。
【0083】
本発明の診断方法は、ELMO1遺伝子の第16イントロン、ELMO1遺伝子の第17イントロン及びELMO1遺伝子の第18イントロンからなる群より選ばれた少なくとも1種のイントロンにおける多型を検出することを1つの大きな特徴とする。
【0084】
ELMO1遺伝子並びにその第16イントロン、第17イントロン及び第18イントロンは、いずれもヒト第7染色体に位置しており、DNA配列について、例えば、GenBankアクセッション番号:NC−000007に従った場合、第16イントロンは、塩基番号:43554〜塩基番号:553834までの領域、第17イントロンは、塩基番号:553999〜塩基番号:561179までの領域、第18イントロンは塩基番号:561293〜塩基番号:570734までの領域をいう。
【0085】
本発明の診断方法では、例えば、第16イントロンにおける65015位のシトシン(C)からチミン(T)への置換、65287位のシトシン(C)からグアニン(G)への置換、67363位のアデニン(A)からグアニン(G)への置換、79410位のシトシン(C)からグアニン(G)への置換、80716位のシトシン(C)からチミン(T)への置換、101326位のグアニン(G)からシトシン(C)への置換、105612位のシトシン(C)からチミン(T)への置換、114458位のシトシン(C)からチミン(T)への置換、第17イントロンにおける5495位のグアニン(G)からアデニン(A)への置換、6958位のチミン(T)からシトシン(C)への置換、第18イントロンにおける9170位のグアニン(G)からアデニン(A)への置換を検出する。
【0086】
また、本発明の診断方法は、ELMO1遺伝子の第16イントロン、ELMO1遺伝子の第17イントロン及びELMO1遺伝子の第18イントロンからなる群より選ばれた少なくとも1種のイントロンにおける多型、すなわち、変異を指標とするため、被験個体における糖尿病性腎症を高い信頼度で診断することができ、被験個体における糖尿病性腎症を容易に、迅速に診断することができるという優れた効果を発揮する。
【0087】
前記多型、すなわち、変異とは、少なくとも1塩基(すなわち、ヌクレオチド)の多型を意味し、例えば、少なくとも1ヌクレオチドの置換、欠失、付加又は挿入を有することを意味する。
【0088】
なお、本明細書において、「少なくとも1塩基」とは、1個〜数百個の塩基(すなわち、ヌクレオチド)、好ましくは、1個若しくは複数個のヌクレオチド、好ましくは、1個若しくは数個のヌクレオチドを意味する。
【0089】
前記多型は、核酸多型解析手段等を行なうことにより検出されうる。前記多型は、具体的には、例えば、(I)ELMO1遺伝子の第16イントロン、ELMO1遺伝子の第17イントロン及びELMO1遺伝子の第18イントロンからなる群から選ばれた少なくとも1種のイントロンにおいて糖尿病性腎症に罹患する可能性に関連する多型を検出するために用いられるプローブ、及び/又は
(II)ELMO1遺伝子の第16イントロン、ELMO1遺伝子の第17イントロン及びELMO1遺伝子の第18イントロンからなる群より選ばれた少なくとも1種のイントロンにおいて糖尿病性腎症に罹患する可能性に関連する多型を検出するために用いられるプライマー対、
を用いて、PCR、ASO(Allele Specific Oligonucleotide hybridization法)、ALBUM(Aldehyde−Linker−Based Ultrasensitive Mismatch Scanning法)、マイクロアレイによる解析、clevageを用いた解析、インベーダー法、TaqManPCR、RFLP等を行なうことにより塩基配列の決定することにより検出されうる。
【0090】
なお、前記(I)のプローブは、ELMO1遺伝子の第16イントロン領域、ELMO1遺伝子の第17イントロン領域若しくはELMO1遺伝子の第18イントロン領域の配列又はこれらのアンチセンス配列と実質的に相補的なプローブであればよく、特に限定されない。ここで、実質的に相補的とはこれらの配列にストリンジェントな条件でハイブリッドできる程度に相補的であればよいことを意味する。さらに、これらのプローブは、5’側又は3’側、又はその両方に、イントロン領域の配列と相補的ではない配列を含んでも、イントロン領域の配列とハイブリダイズできるものであれば、本発明に用いられるプローブに含まれるものとする。本発明においては、例えば、検出しやすいように、任意の配列を付加したプローブを用いることができる。また、本発明においては、検出しやすいように5’末端を適切な標識物質で標識したものを用いることもできる。前記標識物質としては、ビオチン、蛍光物質、又は32P等が例示されうる。少なくとも数ヌクレオチド長、好ましくは、数ヌクレオチド長〜数千ヌクレオチド長、より好ましくは、数ヌクレオチド長〜数十ヌクレオチド長であることが望ましい。なお、ストリンジェントな条件は、前記と同様である。
【0091】
前記プローブとしては、具体的には、例えば、ELMO1遺伝子の塩基配列において、
a) 第16イントロンの65015位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、
b) 第16イントロンの65287位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、
c) 第16イントロンの67363位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、
d) 第16イントロンの79410位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、
e) 第16イントロンの80716位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、
f) 第16イントロンの101326位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、
g) 第16イントロンの105612位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、
h) 第16イントロンの114458位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、
i) 第17イントロンの5495位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、
j) 第17イントロンの6958位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、及び
k) 第18イントロンの9170位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、
等が挙げられる。
【0092】
前記(II)のプライマー対は、例えば、Tm値等、公知配列、核酸の二次構造の形成等を考慮し、プライマーのデザインを支援する慣用のソフトウェア等により作製されうる。ELMO1遺伝子の第16イントロン、第17イントロン及び第18イントロン領域の糖尿病性腎症に罹患する可能性に関連する多型の上流及び下流の配列の一部と実質的に相補的なプライマー対であればよく、特に限定されない。ここで、実質的に相補的とは、ELMO1遺伝子の第16イントロン、第17イントロン、第18イントロン領域の配列若しくはこれらのアンチセンス配列とアニーリングできる程度に相補的であればよいことを意味する。例えば、これらのプライマーは、5’側又は3’側、又はその両方に、ELMO1遺伝子の第16イントロン、第17イントロン又は第18イントロン領域の配列と相補的ではない配列を含んでも、前記イントロン領域のいずれかの配列を有する核酸とハイブリダイズできるものであれば、本発明に用いられるプライマーに含まれるものとする。また、非特異的な増幅を防ぐためや、適当な制限酵素認識部位を導入するために、ELMO1遺伝子の第16イントロン、第17イントロン、第18イントロン領域と相補的でないミスマッチ配列を有するプライマーを使用することができる。プライマーの鎖長は、特に限定はないが、例えば、15〜40ヌクレオチド長であり、好ましくは、17〜30ヌクレオチド長であることが望ましい。
【0093】
前記プライマー対としては、具体的には、例えば、ELMO1遺伝子の塩基配列において、
A) 第16イントロンの65015位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該65015位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、
B) 第16イントロンの65287位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該65287位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、
C) 第16イントロンの67363位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該67363位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、
D) 第16イントロンの79410位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該79410位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、
E) 第16イントロンの80716位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該80716位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、
F) 第16イントロンの101326位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該101326位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、
G) 第16イントロンの105612位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該105612位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、
H) 第16イントロンの114458位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該114458位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、
I) 第17イントロンにおける5495位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該5495位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、
J) 第17イントロンにおける6958位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該6958位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、及び
K) 第18イントロンにおける9170位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該9170位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、
等が挙げられる。
【0094】
前記多型の検出に用いうるプローブ及びプライマーとしては、例えば、
ELMO1イントロン16 +65015のCがTに置換したプローブ(121ヌクレオチド)(配列番号:17):
5'-AAGGAGTCTGGTGTCTTTTGCACATGATGATGTCAACTTGGGTCCCTCACATTGCCTTAGTGTCCTTCACCCAACCCACCAGTGCAGGACATAGTGGTCCTCCCCACCCCGCCCATTGTCT-3';
ELMO1イントロン16 +65015の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー(配列番号:18):
5'-GCACATGATGAT GTCAACTTGG-3';
ELMO1イントロン16 +65015の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー(配列番号:19):
5'-ATCTAGTTCATCCACTGAGCTC-3';
ELMO1イントロン16 +65015の塩基がCであるものを検出するプローブ(配列番号:20):
5'-TTGCCTTAGCGTCCTT-3';
ELMO1イントロン16 +65015の塩基がTであるものを検出するプローブ(配列番号:21):
5'-ATTGCCTTAGTGTCCTT-3';
ELMO1イントロン16 +65015の塩基がTであるかCであるかを検出するためのTaqman PCRプライマー(配列番号:22):
5'-CTGGTGTCTTTTGCACATGATGATG-3';
ELMO1イントロン16 +65015の塩基がTであるかCであるかを検出するためのTaqman PCRプライマー(配列番号:23):
5'-GCACTGGTGGGTTGGGT-3';
ELMO1イントロン16 +65287のCがGに置換したポリヌクレオチド(121ヌクレオチド)(配列番号:24):
5'-TTCTGCATGCTAGGAACCGACATAGGAGTTGGGGATAATAAGTCAAAGAACGCACAATAAGTCACTTGACTGTGTCTATGATAGACAAGTGTTTGCCTAGCTTATGTCACTTGAACTCGAC-3';
ELMO1イントロン16 +65287の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー(配列番号:25):
5'-GCACATGATGATGTCAACTTGG-3';
ELMO1イントロン16 +65287の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー(配列番号:26):
5'-ATCTAGTTCATCCACTGAGCTC-3';
ELMO1イントロン16 +65287の塩基がCであるものを検出するプローブ(配列番号:27):
5'-CAGTCAAGTGAGTTATT-3';
ELMO1イントロン16 +65287の塩基がGであるものを検出するプローブ(配列番号:28):
5'-CAGTCAAGTGACTTATT-3';
ELMO1イントロン16 +65287の塩基がTであるかCであるかを検出するためのTaqman PCRプライマー(配列番号:29):
5'-GCTAGGAACCGACATAGGAGTTG-3';
ELMO1イントロン16 +65287の塩基がTであるかCであるかを検出するためのTaqman PCRプライマー(配列番号:30):
5'-ACATAAGCTAGGCAAACACTTGTCT-3';
ELMO1イントロン16 +67363のAがGに置換したポリヌクレオチド(121ヌクレオチド)(配列番号:31):
5'-GTGGAGATCAGTCATTTCAATAACCTACCTCCGATGCCTTTCATTCCAGGATTCCAAAGGGGTTTCTTAAAAATGTCACTTCCTTGGGTTCTACAGTCCAAAGTGGGAATCTGTCTGATCT-3';
ELMO1イントロン16 +67363の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー(配列番号:32):
5'-TGTCTTCATAGCATA GCATGAG-3';
ELMO1イントロン16 +67363の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー:
5'-AGAATGTCATTACCTCAATCAGC-3'(配列番号:33);
ELMO1イントロン16 +67363の塩基がAであるものを検出するプローブ(配列番号:34):
5'-ACATTTTTAAGAAACTCCTTTG-3';
ELMO1イントロン16 +67363の塩基がGであるものを検出するプローブ(配列番号:35):
5'-ACATTTTTAAGAAACCCCTTTG-3';
ELMO1イントロン16 +67363の塩基がAであるかGであるかを検出するためのTaqman PCRプライマー(配列番号:36):
5'-CGATGCCTTTCATTCCAGGATTC-3';
ELMO1イントロン16 +67363の塩基がAであるかGであるかを検出するためのTaqman PCRプライマー(配列番号:37):
5'-GGACTGTAGAACCCAAGGAAGTG-3';
ELMO1イントロン16 +79410のCがGに置換したポリヌクレオチド(121ヌクレオチド)(配列番号:38):
5'-GCTTAGCGGAAACTCAGTAAATAATTGCTGTACAGCAGAGCTGTTGTCATTCAGATGGGAGGGGCAACTTGAAGTCCTGCCCCTTGATACTCCGAGGTGAGCCCTGCCTCTTTTGAACATT-3';
ELMO1イントロン16 +79410の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー(配列番号:39):
5'-TAGAGTGTGGATGCTGCGAAGC-3';
ELMO1イントロン16 +79410の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー(配列番号:40):
5'-CTAAGGTGAGAAGTGAGCTGTG-3';
ELMO1イントロン16 +79410の塩基がCであるものを検出するプローブ(配列番号:41):
5'-AAGTTGCCCGTCCCAT-3';
ELMO1イントロン16 +79410の塩基がCであるものを検出するプローブ(配列番号:42):
5'-CAAGTTGCCCCTCCCAT-3';
ELMO1イントロン16 +79410の塩基がCであるかGであるかを検出するためのTaqman PCRプライマー(配列番号:43):
5'-AAGGCTTAGCGGAAACTCAGTAAAT-3';
ELMO1イントロン16 +79410の塩基がCであるかGであるかを検出するためのTaqman PCRプライマー(配列番号:44):
5'-GGCTCACCTCGGAGTATCAAG-3';
ELMO1イントロン16 +80716のCがTに置換したポリヌクレオチド(121ヌクレオチド)(配列番号:45):
5'-GCTTTTTCTTCAGTTACAGAAGCATAAGACTCCATAGAACCTTCCAGCTTTGTTTCACTTTGTTCACTTAGTTTGTTTCACTTACTTTGCACTGTATTCTCACTGTTGCCCTTGCCCCCAC-3';
ELMO1イントロン16 +80716の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー(配列番号:46):
5'-ACGTGCTCTGAGCTGCTTTG-3';
ELMO1イントロン16 +80716の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー(配列番号:47):
5'-ACAGAACACTTAGTATAGCTGTG-3';
ELMO1イントロン16 +80716の塩基がCであるものを検出するプローブ(配列番号:48):
5'-AAACTAAGTGAACGAAGTGA-3';
ELMO1イントロン16 +80716の塩基がTであるものを検出するプローブ(配列番号:49):
5'-AAACTAAGTGAACAAAGTGA-3';
ELMO1イントロン16 +80716の塩基がCであるかTであるかを検出するためのTaqman PCRプライマー(配列番号:50):
5'-CTCCATAGAACCTTCCAGCTTTGTT-3';
ELMO1イントロン16 +80716の塩基がCであるかTであるかを検出するためのTaqman PCRプライマー(配列番号:51):
5'-CAACAGTGAGAATACAGTGCAAAGT-3';
ELMO1イントロン16 +101326のGがCに置換したポリヌクレオチド(121ヌクレオチド)(配列番号:52):
5'-TAGCTGACGTACATTCTCTGCATGGTGTTTACCCAACAGTCATCACTCATGTTTGCTCATCAGGTGTTGGGGTGATGAGCCGAGCTGCTGTATTCTCAGCTGGGCCTGGAGCCTGCTTAGT-3';
ELMO1イントロン16 +101326の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー(配列番号:53):
5'-TCTACTACAGGTAAGTAGATACC-3';
ELMO1イントロン16 +101326の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー(配列番号:54):
5'-AGCATTGTCTACTGCAGAATCTG-3';
ELMO1イントロン16 +101326の塩基がGであるものを検出するプローブ(配列番号:55):
5'-CAACACCTCATGAGCA-3';
ELMO1イントロン16 +101326の塩基がCであるものを検出するプローブ(配列番号:56):
5'-CAACACCTGATGAGCA-3';
ELMO1イントロン16 +101326の塩基がGであるかCであるかを検出するためのTaqman PCRプライマー(配列番号:57):
5'-TTTACCCAACAGTCATCACTCATGT-3';
ELMO1イントロン16 +101326の塩基がGであるかCであるかを検出するためのTaqman PCRプライマー(配列番号:58):
5'-AGCAGCTCGGCTCATCAC-3';
ELMO1イントロン16 +105612のCがTに置換したポリヌクレオチド(121ヌクレオチド)(配列番号:59):
5'-ATAATTGTTGTTTATTCTGTGTCCTCCAAAGGACTCATCAGTAAGGAAAGGGACTGCATTTGGGTGAGAGAATGGGAGACCCAGCAGATTTCTGGAAACCATTGCAATAACTGGCTTCACA-3';
ELMO1イントロン16 +105612の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー(配列番号:60):
5'-ATTGACTTCAGCAGCCAAGATG-3';
ELMO1イントロン16 +105612の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー(配列番号:61):
5'-CTGGCAAGTCTTCATGAAGGC-3';
ELMO1イントロン16 +105612の塩基がCであるものを検出するプローブ(配列番号:62):
5'-TCACCCGAATGCAG-3';
ELMO1イントロン16 +105612の塩基がTであるものを検出するプローブ(配列番号:63):
5'-TCACCCAAATGCAG-3';
ELMO1イントロン16 +105612の塩基がCであるかTであるかを検出するためのTaqman PCRプライマー(配列番号:64):
5'-CTCCAAAGGACTCATCAGTAAGGAA-3';
ELMO1イントロン16 +105612の塩基がCであるかTであるかを検出するためのTaqman PCRプライマー(配列番号:65):
5'-GCCAGTTATTGCAATGGTTTCCA-3';
ELMO1イントロン16 +114458のCがTに置換したポリヌクレオチド(121ヌクレオチド)(配列番号:66):
5'-GCTCCCCTGTGACATCGCGTCTTCCCTTGGGTGAGGCAAGTATGTGTCTTTCCACTGTCCTAGGCTGAGAGCTCATCCGGCACAGGGCCTCCAGTGTCGCGTCATTCCTTGCACTGAGTAG-3';
ELMO1イントロン16 +114458の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー(配列番号:67):
5'-TCAGCCTGTCTGCATGTGGC-3';
ELMO1イントロン16 +114458の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー(配列番号:68):
5'-TCTATGGTCACTCTGCATGTC-3';
ELMO1イントロン16 +114458の塩基がCであるものを検出するプローブ(配列番号:69):
5'-TCTCAGCCTGGGACAG-3';
ELMO1イントロン16 +114458の塩基がTであるものを検出するプローブ(配列番号:70):
5'-CTCTCAGCCTAGGACAG-3';
ELMO1イントロン16 +114458の塩基がCであるかTであるかを検出するためのTaqman PCRプライマー(配列番号:71):
5'-GTGAGGCAAGTATGTGTCTTTCCA-3';
ELMO1イントロン16 +114458の塩基がCであるかTであるかを検出するためのTaqman PCRプライマー(配列番号:72):
5'-GCCCTGTGCCGGATGAG-3';
ELMO1イントロン17 +5495のGがAに置換したポリヌクレオチド(121ヌクレオチド)(配列番号:73):
5'-ACTTTCTTTTCCACTCAGTGCAGGGTTCTTCAAAGCTGCAATTTACTGAGTCCATTTTAGATAGAGCTAAGTGCTGATAATAAATAGTTTAGTGATCTGAAAGCCTGAAATGAGACCCTAA-3';
ELMO1イントロン17 +5495の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー(配列番号:74):
5'-ATAACTCAACCCTGGCCTAGTG-3';
ELMO1イントロン17 +5495の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー(配列番号:75):
5'-TAAGCACTGAGCAGGAATGTAAG-3';
ELMO1イントロン17 +5495の塩基がGであるものを検出するプローブ(配列番号:76):
5'-ACTTAGCTCTACCTAAAAT-3';
ELMO1イントロン17 +5495の塩基がAであるものを検出するプローブ(配列番号:77):
5'-CACTTAGCTCTATCTAAAAT-3';
ELMO1イントロン17 +5495の塩基がGであるかAであるかを検出するためのTaqman PCRプライマー(配列番号:78):
5'- GGGTTCTTCAAAGCTGCAATTTACT-3';
ELMO1イントロン17 +5495の塩基がGであるかAであるかを検出するためのTaqman PCRプライマー(配列番号:79):
5'-GTCTCATTTCAGGCTTTCAGATCAC-3';
ELMO1イントロン17 +6958のTがCに置換したポリヌクレオチド(121ヌクレオチド)(配列番号:80):
5'-ATAAAAGAAGAAAATTTTCAGGACACTTTGCTCTGGAAAAACATCACTGAAGTAGCTGGTCCTTTTGTGGAATTCTGTAAATGTCACAGAATCTATTGTGGTGTTGTACTTATGCCCCTGG-3';
ELMO1イントロン17 +6958の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー(配列番号:81):
5'-TGATTGTCTTAGCAGTGCTGAATG-3';
ELMO1イントロン17 +6958の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー(配列番号:82):
5'-AACAGTGAGTGCCAGCTCTC-3';
ELMO1イントロン17 +6958の塩基がTであるものを検出するプローブ
5'-CCACAAAAGAACCAGC-3'(配列番号:83);
ELMO1イントロン17 +6958の塩基がCであるものを検出するプローブ(配列番号:84):
5'-TCCACAAAAGGACCAGC-3';
ELMO1イントロン17 +6958の塩基がTであるかCであるかを検出するためのTaqman PCRプライマー(配列番号:85):
5'-CATAACTTTGTATCCGTGGCTTTGT-3';
ELMO1イントロン17 +6958の塩基がTであるかCであるかを検出するためのTaqman PCRプライマー(配列番号:86):
5'-GGGCATAAGTACAACACCACAATAGA-3';
ELMO1イントロン18 +9170のGがAに置換したポリヌクレオチド(121ヌクレオチド)(配列番号:87):
5'-TAAATGAATAAGGAGCAGTTCCCATGGTGGTTATCATTAGTGATAACATAACCTCTGGAAACCACCACCTCATAAAATCTATTGCTATTGAGCTTGAAGAGTTCAATGACTTTACTAATGG-3';
ELMO1イントロン18 +9170の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー(配列番号:88):
5'-TGGTCATACCTATCCAGAGAAG-3';
ELMO1イントロン18 +9170の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマー(配列番号:89):
5'-CCTGGAGGAAACAAGCAGTTC-3';
ELMO1イントロン18 +9170の塩基がGであるものを検出するプローブ(配列番号:90):
5'-ATGACGTGGCAGACCTTCCAGAGGTTATGTTATCA-3';
ELMO1イントロン18 +9170の塩基がAであるものを検出するプローブ(配列番号:91):
5'-CGCGCCGAGGTTTCCAGAGGTTATGTTATCA-3';
ELMO1イントロン18 +9170の塩基がGであるかAであるかを検出するためのインベーダープローブ(配列番号:92):
5'-TAGATTTTATGAGGTGGTGGN-3'
等が挙げられる。
【0095】
前記被験個体としては、哺乳動物、具体的には、ヒト、非ヒト哺乳動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ等が挙げられる。
【0096】
本発明の診断方法に用いられる試料としては、前記被験個体から得られた生物学的試料、例えば、だ液、皮膚、末梢血、摘出された臓器、各種組織、毛髪、体液等が挙げられる。
【0097】
本発明の診断方法においては、前記多型が検出された場合、被験個体が、糖尿病性腎症を発症していること、あるいは将来の発症が予想されることの指標となる。
【0098】
また、本発明により、被験核酸試料中における糖尿病性腎症の発症に寄与する核酸の検出方法が提供される。
【0099】
本発明の検出方法によれば、前記多型を検出しているため、被験核酸試料から、糖尿病性腎症の発症に寄与する核酸を、容易に迅速に検出することができるという優れた効果を発揮する。
【0100】
本発明の検出方法に用いられる被験核酸試料は、慣用の方法で、個体の細胞又は組織より調製されうる。
【0101】
本発明の検出方法は、例えば、輸血用血液、採血された血液の検査、腎移植に用いられる提供された腎臓の検査に適用されうる。
【0102】
本発明の検出方法は、前記(I)及び/又は(II)を含有した糖尿病性腎症の診断キットにより、より容易かつ迅速に行なうことができる。かかる糖尿病性腎症の診断キットも本発明に含まれる。
【0103】
本発明の糖尿病性腎症の診断キットは、前記(I)のプローブ及び/又は前記(II)のプライマー対からなる群より選ばれた少なくとも1種を含有するものである。
【0104】
本発明のキットは、ELMO1遺伝子における糖尿病性腎症に関連する多型における変異を有するポリヌクレオチドを、そのような変異を有さないポリヌクレオチドと区別して特異的にハイブリダイゼーションできるプローブ、そのような変異を有するポリヌクレオチドを増幅できるプライマー又はそのような変異領域を増幅できるプライマーを含む。キットに含まれる試薬としては、塩基の置換を検出できる方法により適宜変更可能である。例えば、相補鎖を合成するタイプの変異の検出方法であれば、ddNTP、dNTP、DNA合成酵素、緩衝液などを含み、RFLPのように制限酵素の切断に基づき検出する場合には適当な制限酵素を含む。
【0105】
本発明のキットは、前記核酸、プライマー対等を含有するため、糖尿病患者における糖尿病性腎症を容易かつ迅速に診断することができ、糖尿病患者から得られた被験試料から、糖尿病性腎症の発症に寄与する核酸を、容易かつ迅速に検出することができるという優れた効果を発揮する。したがって、本発明のキットは、本発明の診断方法及び本発明の検出方法に有用である。なお、本発明のキットは、発症の疑いのある個体の診断、診断を要する個体の診断(いわゆる発症前診断)等にも用いられうる。
【0106】
本発明を、下記実施例等により説明するが、本発明は、かかる実施例に限定されるものではない。また、以下の実施例において、遺伝子操作、細胞培養等には、特に断りのない限り、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition(1989)(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、Current Protocols in Molecular Biology (Greene Publishing Associates and Wiley−Interscience)等に記載された方法を用いた。
【実施例1】
【0107】
糖尿病性腎症関連のSNPのスクリーニング
インフォームドコンセントの下、滋賀医科大学、東京女子医科大学、順天堂大学、川崎医科大学、岩手医科大学、又は千葉徳洲会病院に定期的に来診する2型糖尿病患者を対象として実験を行なった。
【0108】
なお、糖尿病患者について、下記診断基準:
1)糖尿病性腎症症例:糖尿病網膜症と、明らかな糖尿病性腎症(200μg/分を超える尿中アルブミン排泄率若しくは300mg/gCrを超える尿中アルブミン/クレアチニン比)とを伴う患者、又は慢性透析療法を受けている患者、及び
2)対照群:腎機能障害の兆候を示していないが糖尿病網膜症を伴う患者〔20μg/分未満の尿中アルブミン排泄率若しくは30mg/gCr未満の尿中アルブミン/クレアチニン比〕
により2つのグループに分類した。
【0109】
前記2型糖尿病患者の末梢血液を採血し、得られた末梢血液7mlを3000回転で10分間遠心分離して、血漿を除去した。ついで、得られた産物に、赤血球溶解液を添加して、室温で20分間インキュベートした。その後、インキュベーション後の混合物を、3000回転で5 分間遠心分離して、上清を除去した。得られた沈殿に、プロテイナーゼKを添加し、37℃4時間以上インキュベートした。得られた産物を、フェノール−クロロホルムで処理し、得られた上層(水層)に、イソプロパノールを添加して、DNAの沈殿を生じさせた。ついで、遠心分離(12000回転、10分)を行ない、DNAを回収し、1ml 70% エタノールを添加し、得られたDNAのペレットをTE緩衝液〔組成:10mM Tris−HCl、1mM EDTA(pH8.0)〕に溶解し、DNA試料を得た。
【0110】
前記DNA試料を用いて、インベーダー法により遺伝子型の判定を行った。解析するSNPは、JSNPデータベース(IMS−JST SNPs データベース:http://snp.ims.u-tokyo.ac.jp)から無作為に選択した。各SNP遺伝子座の遺伝子型を、Multiplex PCRと組み合わせたインベーダー法〔例えば、オオニシ(Ohnishi Y.)ら,J.Human.Genet.,46,471−477,2001等を参照のこと〕により解析した。
【0111】
より詳細に遺伝子多型の検索をダイレクトシーケンス法にて行った。ELMO1を含むゲノム配列に関連するジーンバンク(GenBank)の情報〔アクセッション番号:AC078843、AC083861、AC007444、AC009196、AC078844、AC007349〕を基にデザインしたPCRプライマーを用いて、標的部位を増幅した。また、PCRプライマーのデザインに際して、ベッデル(Bedell)ら、〔Bioinformatics、16、1040−1041、2000〕に記載されたように、商品名:REPEAT MASKERプログラム〔ワシントン大学より供給、ウェブページアドレス:http://repeatmasker.genome.washington.eduにて利用可能〕により、検索対象から反復エレメントを排除した。
【0112】
Multiplex PCRにおける反応条件は、反応溶液〔組成:16.6mM (NH42SO4、67mM Tris(pH8.8)、6.7mM MgCl2、10mM 2−メルカプトエタノール、6.7μM EDTA、1.5mM dNTP、10xTaqミックス(2.5U/μl Taq DNAポリメラーゼ、31.25U/μl Taq Antibody)、0又は10% DMSO、各0.25μM プライマー〕、95℃、5分の反応後、95℃で15秒と60℃で45秒と72℃で3分とを1サイクルとする40サイクルの反応を行なった。
【0113】
増幅された産物をdH2Oで、1:11に希釈し、384プレートの各ウェルに分注した。ついで、プレートを風乾させ、プレート上の各ウェルに、3μl インベーダー反応液(組成:10×緩衝液、10×FRETプローブ、10×clevase、アレルプローブ)を添加した。その後、63℃で20分間インキュベートし、ついで、プレートの各ウェルについて、蛍光(520nm、546nm)を測定した。
【0114】
糖尿病性腎症症例の94患者及び対照群の94個体のそれぞれに対し、81315個のSNP座について遺伝子タイピングを行なった。ついで、2×3又は2×2分割表を用いた統計学的データを評価することにより、糖尿病性腎症症例の患者と対照群個体との間の遺伝子型又は対立遺伝子頻度に有意な差異を示したSNPを選択した。
【0115】
なお、相関解析、ハプロタイプ頻度及びHardy−Weinberg平衡の統計解析並びに連鎖不均衡係数(D’)の算出は、デブリン(Devlin B.)ら〔Genomics,29,311−322,1995〕及びニールセン(Nielsen DM.)ら〔Am.J.Hum.Genet.,63,1531−1540,1998〕のように行なった。
【0116】
スクリーニングにおいて、腎症症例の患者と対照群の個体との間で0.01未満のp値を示したSNP座を、さらに多数の患者について、解析した。
【0117】
【表1】

【0118】
その結果、表1に示されるように、第7染色体のp14のELMO1遺伝子の第18イントロンにおける1つのSNP座の遺伝子型の分布が、糖尿病性腎症との強い関連性を示した〔CC対CT+TT,χ2=16.3、p=0.00005、オッズ率3.33、95%CI 1.81〜6.15〕
【0119】
また、図1に示されるように、ELMO1におけるランドマークSNP周辺の領域の連鎖不均衡マッピングにより、ランドマーク部位の約100kb上流及び100kb下流において、この領域における連鎖不均衡が広がっていることが示された。
【0120】
したがって、糖尿病性腎症の罹病性に重要な領域は、この200kbの高連鎖不均衡ブロック内に存在すると考えられる。また、この連鎖不均衡ブロック内に、ELMO1の他に遺伝子がないため、ELMO1自体が、糖尿病性腎症の罹病性に関する候補であると考えられる。
【0121】
ついで、複数の健常人由来のELMO1遺伝子配列を決定することにより、ELMO1における多型を調べた。結果を図2に示す。
【0122】
その結果、図2に示されるように、別の516多型、具体的には、448SNPs、49挿入/欠失多型、18タンデムリピート多型及び1つのその他の多型が同定された。多型の多くは、ELMO1遺伝子の第16イントロン、第17イントロン及び第18イントロンに存在していた。これらの中に、糖尿病性腎症の罹患性に関する多型が存在することが推定される。
【0123】
全体で471人の患者と249人の対照において、これらの遺伝子型を、例えば、配列番号:17〜89のプライマーやプローブを用いて上述のようなインベーダー法又はダイレクトシーケンス法を用いて特定することにより、これらの変異のいくつかは糖尿病性腎症と有意な相関があることがわかった。
【0124】
具体的には、ELMO1遺伝子の第16イントロンにおける65015位、65287位、67363位、79410位、80716位、101326位、105612位、114458位の塩基における多型、第17イントロンにおける5495位、6958位の塩基における多型がp値の結果より非常に密接に糖尿病性腎症と関連している可能性が高いことがわかった。
【実施例2】
【0125】
ELMO1発現組織の同定
糖尿病性腎症の病因におけるELMO1遺伝子の考えうる役割を調べるため、インサイチュハイブリダイゼーションにより、正常マウス腎臓における本遺伝子の発現パターンを調べた。
【0126】
センスプローブ及びアンチセンスプローブの両方を得るために、374bpの断片〔ELMO1をコードする核酸〕を、lacプロモーターに対して、正方向(lacプロモーターの転写方向と該cDNAの転写方向とが同じ)及び逆方向(lacプロモーターの転写方向と該cDNAの転写方向とが異なる)の2つの方向で、商品名:pBluescript SK〔ストラタジーン社製〕にサブクローン化し、組換えプラスミドを得た。得られたプラスミドを直鎖状にした後、得られた産物と、商品名:DIG RNA labeling Mix(ロシュ社製)とを用いて、インビボ転写法により、ジゴキシゲニン標識RNAプローブを合成した。
【0127】
ハイブリダイゼーションの後、組織切片とアルカリホスファターゼ結合抗ジゴキシゲニン抗体とをインキュベーションし、得られた混合物に、NBT/BCIPを含む発色溶液を添加した。指示された時間に発色反応を終了させ、核染色を行なった。結果を図5に示す。
【0128】
図5のパネルa)及びパネルc)に示されるように、興味深いことに、ELMO1遺伝子の発現は、腎糸球体上皮細胞及び間質細胞に見られた。
【0129】
また、糸球体メサンギウム細胞、近位尿細管上皮細胞、COS細胞及び網膜色素上皮細胞等の種々の培養細胞において、RT−PCRによりELMO1遺伝子の発現を調べた。
【0130】
前記RT−PCRにおいて、プライマー対として、5'-ccggattgtgcttgagaaca-3'(配列番号:6)と5'-ctcactaggcaactcgccca-3'(配列番号:4)とを用いた。また、サーマルプロファイルは、50℃2分間と95℃10分間のインキュベーションの後、95℃30秒と63℃30秒と72℃30秒とを1サイクルとする40サイクルの反応を行なう条件とした。また、前記RT−PCRにおける反応溶液の組成は、1×TaKaRa Ex TaqTM緩衝液(タカラバイオ社製)、200nM dNTP混合物、1/20000 SYBR Green、各800nMのプライマー、0.05U Ex TaqTM DNAポリメラーゼ(タカラバイオ社製)、2.75ng 商品名:TaqStart Antibody(クローンテック社製)及び5ng 鋳型である。
【0131】
以上の結果から、細胞外基質蓄積に関与すると推測される糸球体上皮、及び繊維化が進行する間質細胞で発現が確認されたことにより、ELMO1が糖尿病性腎症の発症、進展に寄与している可能性が示唆された。
【実施例3】
【0132】
(1)高グルコース条件化でのELMO1発現変動
正常グルコース濃度(5.5mM)又は高グルコース濃度(25mM)で培養されたCOS細胞において、ELMO1遺伝子の発現に対するグルコースの影響を調べた。
【0133】
COS細胞を、5.5mM グルコースを含むDMEM培地又は25mM グルコースを含むDMEM培地で、5% CO2、37℃で24〜72時間培養した。得られた細胞から、TRIZOLを用い、全RNAを調製した。
【0134】
定量リアルタイムPCRは、下記プライマー:
ELMO1について、
センスプライマー:5'-ccggattgtgcttgagaaca-3'(配列番号:3)、
アンチセンスプライマー:5'-ctcactaggcaactcgccca-3'(配列番号:4)、
フィブロネクチンについて、
センスプライマー:5'-gctcagaatccaagcggaga-3'(配列番号:5)、
アンチセンスプライマー:5'-ctttcccaagcaattttgatgg-3'(配列番号:6)、
I型コラーゲン(アルファ1)について、
センスプライマー:5'-caccaatcacctgcgtacaga-3'(配列番号:7)、
アンチセンスプライマー:5'-caccaatcacctgcgtacaga-3'(配列番号:8)、
TGF−β1について、
センスプライマー:5'-aggtcacccgcgtgctaat-3'(配列番号:9)、
アンチセンスプライマー:5'-ggttcaggtaccgcttctcg-3'(配列番号:10)、
マトリックスメタロプロテイナーゼ−2(MMP−2)について、
センスプライマー:5'-gatgccgcctttaactggag-3'(配列番号:11)、
アンチセンスプライマー:5'-catctgcgatgagcttggg-3'(配列番号:12)、
マトリックスメタロプロテイナーゼ−3(MMP−3)について、
センスプライマー:5'-tttctcgttgctgctcatgaa-3'(配列番号:13)、
アンチセンスプライマー:5'-gagacaggcggaaccgagt-3'(配列番号:14)、
GAPDHについて
センスプライマー:5'-gctcagaatccaagcggaga-3'(配列番号:15)、
アンチセンスプライマー:5'-ctttcccaagcaattttgatgg-3'(配列番号:16)
を用いて行なった。
【0135】
25μlの反応溶液〔組成:TaKaRa Ex TaqTM緩衝液(タカラバイオ社製)、200nM dNTP混合物、1/20000 SYBR Green、各800nMのプライマー、0.05U Ex TaqTM DNAポリメラーゼ(タカラバイオ社製)、2.75ng 商品名:TaqStart Antibody(クローンテック社製)及び5ng 鋳型〕中で反応を行なった。
【0136】
サーマルプロファイルは、50℃2分間、95℃10分間のインキュベーションの後、95℃30秒と63℃30秒と72℃30秒とを1サイクルとする40サイクルの反応である。ABI PRISM(登録商標) 7000シークエンスディテクションシステム〔PEアプライドバイオシステムズ社製〕を用いて、増幅及び測定を行なった。なお、GAPDHを用いた場合の結果により測定結果を正規化した。結果を図6に示す。
【0137】
図6に示されるように、ELMO1遺伝子の発現は、正常グルコース条件又はマンニトール(+19.5mM)で浸透圧調節された条件で培養された細胞に比べ、高グルコース濃度条件で培養された細胞において、顕著に増加した。
【0138】
したがって、高グルコース条件下でのELMO1遺伝子の発現の増加は、糖尿病性腎症の発症と進行とに寄与するものと考えられる。
【0139】
(2)ELMO1強制発現時の糖尿病性腎症関連遺伝子群の発現変動
ついで、ELMO1遺伝子を発現させた細胞を用い、細胞外マトリックス遺伝子、TGF−β1遺伝子及びマトリックスメタロプロテアーゼ遺伝子の発現に対する過剰のELMO1遺伝子影響を調べた。
【0140】
pCDNA3.1に、ELMO1をコードする核酸を連結させ、pCDNA3.1−ELMO1を得た。また、対照として、pCDNA3.1に、lacZ遺伝子を連結させ、pCDNA3.1−LacZを得た。得られたプラスミドを用いて、COS細胞をトランスフェクションした。
【0141】
得られたトランスフェクト細胞から、前記と同様に全RNAを調製した。ついで、得られた全RNAを用いて、前記と同様に、定量的RT−PCRを行なった。結果を図7に示す。
【0142】
図7のパネルa)〜c)に示されるように、pCDNA3.1−ELMO1で安定にトランスフェクトされた細胞において、TGF−β1遺伝子、I型コラーゲン遺伝子及びフィブロネクチン遺伝子それぞれの発現は、pCDNA3.1−LacZを用いてトランスフェクトされた細胞におけるこれらの遺伝子の発現に比べ、顕著に増加した(それぞれ、1.55倍、9.93倍及び13.8倍)。図7のパネルd)及びe)に示されるように、一方、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP−2、MMP−3)遺伝子の発現は、減少した(それぞれ、0.44倍及び0.52倍)。
【0143】
以上により、ELMO1の発現上昇に伴い、糖尿病性腎症の憎悪因子であるTGF−β1、及び細胞外基質の発現上昇、さらにはマトリックスメタロプロテイナーゼの発現低下が確認された。したがって、細胞外基質の蓄積を特徴とする糖尿病性腎症の発症と進展にELMO1が寄与しているものと推定される。
【実施例4】
【0144】
SNP同定に基づく糖尿病性腎症の診断
被験個体の末梢血より、慣用の核酸抽出法で核酸含有試料を調製する。ELMO1の第18イントロンの領域の核酸を基に作製されたSNP検出用マイクロアレイに、前記核酸含有試料を供して、ハイブリダイズさせ、生じるDNAハイブリッドの一方のDNA鎖について、4種の蛍光標識ジデオキシヌクレオチドとDNAポリメラーゼとを用いて、プライマー伸長させる。SNPが、存在する部分の塩基に取り込まれた蛍光を指標として検出されることに基づき、核酸含有試料が、糖尿病性腎症の発症に寄与する核酸を含むことが示され、被験個体が、糖尿病性腎症を発症しているか、あるいは、将来発症する可能性があると判断される。
【実施例5】
【0145】
ELMO1阻害剤のスクリーニング方法
pCDNA3.1−ELMO1を、エレクトロポレーション法により、哺乳動物腎臓由来細胞(COS7細胞、HEK293細胞等)に導入する。得られた形質転換細胞を、化合物ライブラリーの化合物を含有したDMEM培地において、5% CO2、37℃で4〜24時間培養する。また、対照として、前記化合物ライブラリーの化合物を含まないDMEM培地において、同様に培養する。培養後の細胞から、全RNAを抽出する。ついで、全RNAを鋳型とし、前記実施例2と同様に、フィブロネクチン、I型コラーゲン(アルファ1)、TGF−β1、マトリックスメタロプロテイナーゼ−2(MMP−2)、マトリックスメタロプロテイナーゼ−3(MMP−3)及びGAPDHのそれぞれに対するプライマーを用いて、定量的RT−PCRを行なう。GAPDHの結果により、数値を正規化し、化合物存在下及び非存在下におけるフィブロネクチン、I型コラーゲン(アルファ1)、TGF−β1、マトリックスメタロプロテイナーゼ−2(MMP−2)及びマトリックスメタロプロテイナーゼ−3(MMP−3)それぞれの発現量を評価する。
【0146】
形質転換細胞におけるフィブロネクチン、I型コラーゲン(アルファ1)、TGF−β1、マトリックスメタロプロテイナーゼ−2(MMP−2)及びマトリックスメタロプロテイナーゼ−3(MMP−3)の発現量を、哺乳動物腎臓由来細胞の場合の発現量と比較して、化合物の存在により、形質転換細胞におけるフィブロネクチン、I型コラーゲン(アルファ1)及びTGF−β1の発現量の上昇が抑制され、マトリックスメタロプロテイナーゼ−2(MMP−2)及びマトリックスメタロプロテイナーゼ−3(MMP−3)の発現量の減少が抑制されることを指標として、糖尿病性腎症の治療又は予防薬の被験物質をスクリーニングする。
【実施例6】
【0147】
(1)糖尿病モデルラットにおけるELMO mRNAの発現
インスリン抵抗性モデル動物について、1) インスリン抵抗性改善剤であるピオグリタゾンの投与〔ピオグリタゾン投与群〕、2) 食餌制限〔食餌制限群〕、又は3) 食餌制限と運動負荷との組み合わせ〔食餌制限+運動負荷群〕による処理を行なった。
【0148】
インスリン抵抗性モデル動物として、Zucker fatty rat(塩野義製薬株式会社油日ラボラトリーズAC部門育成供給、10齢)を用いた。対照として、Zucker lean rat(塩野義製薬株式会社油日ラボラトリーズAC部門育成供給、10齢)を用いた。飼育温度24.1℃、湿度55.5%、照明期間12時間(8時から20時)の飼育条件の下、自由に摂餌飼育した。
【0149】
前記1)のピオグリタゾン投与群については、ピオグリタゾン(武田薬品社製、商品名:アクトス)10mg/kgラット体重を、1日あたり、1回投与した。上記と同じの飼育条件の下、3週間、飼育した。
【0150】
前記2)の食餌制限群については、Zucker fatty ratに、一日摂餌量の70%相当量のみを摂餌させた。期間は5週間とした。上記と同じ条件の下、飼育した。
【0151】
前記3)の食餌制限+運動負荷群については、食事制限に加え、トレッドミルを用いて運動負荷を行なった。運動負荷条件は、15ml/分で15分間のウォーミングアップ、20ml/分で60分間の運動、15ml/分で15分間のクールダウンとした。期間は、5週間とした。
【0152】
インスリン抵抗性の改善は、グルコースクランプ試験を行ない、グルコース注入量の増加をインスリン抵抗性が改善したことの指標として評価した。
【0153】
前記1)〜3)の各処理群について、RT−PCRにより、Zucker fatty ratの骨格筋及び脂肪組織それぞれにおけるELMO1及びELMO2の遺伝子発現プロファイルを調べた。
【0154】
なお、RT−PCRには、ELMO1について、
センスプライマー:5'-TCAACAAGGTAATGCAGGTGGT-3'(配列番号:93)、
アンチセンスプライマー:5'-TGGCGGATTTTCAGGATCTC-3'(配列番号:94)、
ELMO2について、
センスプライマー:5'- GCCGGCAAGAAAGGTTCTG-3'(配列番号:95)、
アンチセンスプライマー:5'- TCACCATAATGCAAAACCTTGTG-3'(配列番号:96)、
GAPDHについて
センスプライマー:5'- TGCACCACCAACTGCTTAGC-3'(配列番号:97)、
アンチセンスプライマー:5'- GGATGCAGGGATGATGTTCTG-3'(配列番号:98)
を用いた。
【0155】
対照として、未処理検体由来のmRNAを用いた。具体的には、30%食餌制限と週5日間運動を実施したラットの骨格筋、及び脂肪組織より、インビトロジェン社製のTRIzol試薬(商品名)を用いて、添付マニュアルに従い、全RNAを抽出し、50μgの全RNAを得た。得られた全RNAを、キアジェン(QIAGEN)社製の商品名:RNeasy mini kitにて添付マニュアルに従いDNase I処理した後、回収した。得られた全RNA 2μgと、RT−PCR用SuperScript(登録商標) First−strand Synthesis System(商品名、インビトロジェン社製)とを用いて添付マニュアルに従い、cDNAを合成した。次に、遺伝子統合解析ソフトEnsembl(http://www.ensembl.org/)より抽出したラットELMO1、ELMO2の配列をもとにプローブ検索ソフトPrimer Express(商品名、ABI社製)によりリアルタイム定量PCR用プライマーを選択した。プライマーは、キアジェン(QIAGEN)社に合成を依頼した。このプライマーを用いて、合成したcDNAを鋳型としてSYBR Green Iによるリアルタイム定量PCRを行ない、mRNA量を定量した。
【0156】
反応試薬としては、キアジェン社の商品名:QuantiTect SYBR Green PCR kitを使用し、95℃で15分間インキュベーションした後、94℃で30秒と60℃で30秒と72℃で1分とを1サイクルとする40サイクルの反応を行なって定量した。PCR及び蛍光測定は、ABI社のABI PRISM 7000 Sequence Detection System(商品名)を用いて行なった。図8及び図9に結果を示す。図8及び図9のグラフは、未処置 ラットにおける発現量を1とした相対量で示す。なお、リアルタイム定量PCRでは、増幅産物の電気泳動と融解曲線を作製することにより目的の一種類のみ増幅されていることを確認した。
【0157】
その結果、図8に示されるように、ELMO1については、糖尿病ラット骨格筋、及び脂肪組織で食餌制限や運動によりインスリン抵抗性が改善されると発現が減少することが確認された。一方、図9に示されるように、ELMO2については、糖尿病ラット骨格筋では顕著な変動は見られなかったが、脂肪組織において、食餌制限や運動によりインスリン抵抗性が改善されると発現が減少することが確認された。
【0158】
また、図8及び図9に示されるように、2)の食餌制限群及び3)の食餌制限+運動負荷群において、インスリン抵抗性の改善により、改善前(対照群)に比べ、ELMO1、及びELMO2の遺伝子発現が約1/2に減少することがわかった。また、インスリン抵抗性改善薬物であるピオグリタゾンによっては、骨格筋での前記2種のELMO遺伝子の発現に変化は認められなかった。
【0159】
以上の結果より、ELMO1及びELMO2の発現を指標として、糖尿病が診断できることが示唆される。
【実施例7】
【0160】
ヒトELMO1、及びELMO2の発現細胞株の樹立
ヒトELMO1及びELMO2(GenBankアクセッション番号:NM_014800、NM_133171)の塩基配列に基づき、Human Skeletal Muscle Marathon−Ready cDNA(商品名、クローンテック社製)より、ヒトELMO1及びELMO2 cDNA全長をPCRにより増幅し、PCR−BluntII−TOPOベクター(商品名、インビトロジェン社)へクローニングした。
【0161】
得られたクローンにおける塩基配列を確認した後、cDNA全長を切りだし、p3xFLAG−CMV−14ベクター(商品名、シグマ社製)のマルチクローニングサイトへクローニングして、発現ベクターを得た。得られた発現ベクターを、商品名:FUGEN〔ロシュ(Roche)社製〕を用いてL6細胞に導入し、ELMO1又はELMO2を安定的に発現する細胞を得た。
【0162】
発現ベクターを導入した細胞におけるヒトELMOの発現は、抗FLAG抗体を用いたウェスタンブロット法により検出した。全細胞抽出液をSDS−PAGEに供した後、Immobilon Transfer Membranes(商品名、ミリポア社製)に転写した。得られたメンブランを、5重量% スキムミルクを含むPBS中で室温、1時間ブロッキング処理した。その後、前記PBS中のメンブランに、Peroxidase−conjugated Anti−FLAG抗体(シグマ社製)を加え、さらに1時間室温でインキュベーションした。インキュベーション後、メンブランを0.1% Tween−PBSで洗浄し、ECL+plus Western Blotting Detection System〔商品名、アマシャムバイオサイエンシーズ(Amersham Biosciences)社製〕を用いて発色させ、Hyperfilm ECL〔商品名、アマシャムバイオサイエンシーズ社製〕に露光した。結果を図10に示す。
【0163】
図10にしめされるように、ヒトELMO1を発現する細胞株及びELMO2を発現する細胞株が得られた。
【実施例8】
【0164】
ヒトELMO発現細胞株におけるグルコース取り込み活性の測定
前記実施例7で得られたヒトELMO発現細胞株を用いて、グルコース取りこみ活性の測定を行なった。CytoStar−T plate(商品名、アマシャムバイオサイエンシーズ社製)に、細胞を2×104細胞/ウェルとなるように播種し、CO2インキュベーターで37℃、一晩培養した。
【0165】
得られた細胞を、300μlのPBS(−)で3回洗浄し、各ウェルに、80μlのHEPES−Krebsバッファー〔組成:119mM NaCl、4.75mM KCl、5mM NaHCO3、2.54mM CaCl2・2H2O、1.2mM MgSO4、20mM HEPES・7H2O(pH7.4)〕を添加した。ついで、3μM インスリン 10μlと2−デオキシ−D−〔U−14C〕グルコース溶液〔アマシャムバイオサイエンシーズ社製〕 10μlとを前記細胞に添加し、軽く混和して、該細胞をCO2インキュベーターで37℃、20分間インキュベーションした。なお、細胞の培養については、10% ウシ胎仔血清と 1xAnti〔100xAntibiotic−Antimycotic(商品名)、インビトロジェン社製〕を加えたα−MEMを培地として使用し、70−80%コンフルエントに達した時点でトリプシンを使用して細胞を回収し、得られた産物を1/10−1/20希釈して、継代する条件で行なった。
【0166】
インキュベーション後、100μM Cytochalasin B〔シグマ社製〕 10μlを前記細胞に添加し、商品名:1450 MICRO BETA TRILUX(商品名、パーキンエルマー社製)で放射活性を測定した。アッセイに使用した試料は、商品名:CyQUANT Cell Proliferation Assay Kit〔モレキュラープローブ(Molecular Probes)社製〕を用いて測定したDNA量で補正した。
【0167】
その結果、図11に示されるように、ELMO細胞では、対照細胞(Mockベクター導入細胞)と比較してインスリン濃度非依存的にグルコース取りこみ能が低下していることが観察された。すなわち、ELMOの強制発現により、グルコース取り込み能が低下することがわかった。したがって、ELMOの発現の増加が、糖尿病の病態に関連することが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明のスクリーニング方法は、糖尿病、特に、糖尿病性腎症の治療又は予防の手段の開発に有用である。また、本発明の診断方法は、糖尿病性腎症に対する治療計画又は予防処置を立てるに際して有用である。さらに、本発明の検出方法によれば、移植用腎臓、血液等の検査等に有用である。また、本発明の糖尿病性腎症の診断キットは、糖尿病性腎症の診断等に用いられうる。
【配列表フリーテキスト】
【0169】
配列番号:3は、ELMO1遺伝子のセンスプライマーの配列である。
【0170】
配列番号:4は、ELMO1遺伝子のアンチセンスプライマーの配列である。
【0171】
配列番号:5は、フィブロネクチン遺伝子のセンスプライマーの配列である。
【0172】
配列番号:6は、フィブロネクチン遺伝子のアンチセンスプライマーの配列である。
【0173】
配列番号:7は、I型コラーゲン(α1)遺伝子のセンスプライマーの配列である。
【0174】
配列番号:8は、I型コラーゲン(α1)遺伝子のアンチセンスプライマーの配列である。
【0175】
配列番号:9は、TGF−β1遺伝子のセンスプライマーの配列である。
【0176】
配列番号:10は、TGF−β1遺伝子のアンチセンスプライマーの配列である。
【0177】
配列番号:11は、MMP−2遺伝子のセンスプライマーの配列である。
【0178】
配列番号:12は、MMP−2遺伝子のアンチセンスプライマーの配列である。
【0179】
配列番号:13は、MMP−3遺伝子のセンスプライマーの配列である。
【0180】
配列番号:14は、MMP−3遺伝子のアンチセンスプライマーの配列である。
【0181】
配列番号:15は、GAPDH遺伝子のセンスプライマーの配列である。
【0182】
配列番号:16は、GAPDH遺伝子のアンチセンスプライマーの配列である。
【0183】
配列番号:17は、ELMO1イントロン16 +65015のCがTに置換したポリヌクレオチド(121ヌクレオチド)を示す。
【0184】
配列番号:18は、ELMO1イントロン16 +65015の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0185】
配列番号:19は、ELMO1イントロン16 +65015の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0186】
配列番号:20は、ELMO1イントロン16 +65015の塩基がCであるものを検出するプローブを示す。
【0187】
配列番号:21は、ELMO1イントロン16 +65015の塩基がTであるものを検出するプローブを示す。
【0188】
配列番号:22は、ELMO1イントロン16 +65015の塩基がTであるかCであるかを検出するためのTaqman PCRプライマーを示す。
【0189】
配列番号:23は、ELMO1イントロン16 +65015の塩基がTであるかCであるかを検出するためのTaqman PCRプライマーを示す。
【0190】
配列番号:24は、ELMO1イントロン16 +65287のCがGに置換したポリヌクレオチド(121ヌクレオチド)を示す。
【0191】
配列番号:25は、ELMO1イントロン16 +65287の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0192】
配列番号:26は、ELMO1イントロン16 +65287の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0193】
配列番号:27は、ELMO1イントロン16 +65287の塩基がCであるものを検出するプローブを示す。
【0194】
配列番号:28は、ELMO1イントロン16 +65287の塩基がGであるものを検出するプローブを示す。
【0195】
配列番号:29は、ELMO1イントロン16 +65287の塩基がTであるかCであるかを検出するためのTaqman PCRプライマーを示す。
【0196】
配列番号:30は、ELMO1イントロン16 +65287の塩基がTであるかCであるかを検出するためのTaqman PCRプライマーを示す。
【0197】
配列番号:31は、ELMO1イントロン16 +67363のAがGに置換したポリヌクレオチド(121ヌクレオチド)を示す。
【0198】
配列番号:32は、ELMO1イントロン16 +67363の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0199】
配列番号:33は、ELMO1イントロン16 +67363の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0200】
配列番号:34は、ELMO1イントロン16 +67363の塩基がAであるものを検出するプローブを示す。
【0201】
配列番号:35は、ELMO1イントロン16 +67363の塩基がGであるものを検出するプローブを示す。
【0202】
配列番号:36は、ELMO1イントロン16 +67363の塩基がAであるかGであるかを検出するためのTaqman PCRプライマーを示す。
【0203】
配列番号:37は、ELMO1イントロン16 +67363の塩基がAであるかGであるかを検出するためのTaqman PCRプライマーを示す。
【0204】
配列番号:38は、ELMO1イントロン16 +79410のCがGに置換したポリヌクレオチド(121ヌクレオチド)を示す。
【0205】
配列番号:39は、ELMO1イントロン16 +79410の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0206】
配列番号:40は、ELMO1イントロン16 +79410の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0207】
配列番号:41は、ELMO1イントロン16 +79410の塩基がCであるものを検出するプローブを示す。
【0208】
配列番号:42は、ELMO1イントロン16 +79410の塩基がCであるものを検出するプローブを示す。
【0209】
配列番号:43は、ELMO1イントロン16 +79410の塩基がCであるかGであるかを検出するためのTaqman PCRプライマーを示す。
【0210】
配列番号:44は、ELMO1イントロン16 +79410の塩基がCであるかGであるかを検出するためのTaqman PCRプライマーを示す。
【0211】
配列番号:45は、ELMO1イントロン16 +80716のCがTに置換したポリヌクレオチド(121ヌクレオチド)を示す。
【0212】
配列番号:46は、ELMO1イントロン16 +80716の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0213】
配列番号:47は、ELMO1イントロン16 +80716の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0214】
配列番号:48は、ELMO1イントロン16 +80716の塩基がCであるものを検出するプローブを示す。
【0215】
配列番号:49は、ELMO1イントロン16 +80716の塩基がTであるものを検出するプローブを示す。
【0216】
配列番号:50は、ELMO1イントロン16 +80716の塩基がCであるかTであるかを検出するためのTaqman PCRプライマーを示す。
【0217】
配列番号:51は、ELMO1イントロン16 +80716の塩基がCであるかTであるかを検出するためのTaqman PCRプライマーを示す。
【0218】
配列番号:52は、ELMO1イントロン16 +101326のGがCに置換したポリヌクレオチド(121ヌクレオチド)を示す。
【0219】
配列番号:53は、ELMO1イントロン16 +101326の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0220】
配列番号:54は、ELMO1イントロン16 +101326の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0221】
配列番号:55は、ELMO1イントロン16 +101326の塩基がGであるものを検出するプローブを示す。
【0222】
配列番号:56は、ELMO1イントロン16 +101326の塩基がCであるものを検出するプローブを示す。
【0223】
配列番号:57は、ELMO1イントロン16 +101326の塩基がGであるかCであるかを検出するためのTaqman PCRプライマーを示す。
【0224】
配列番号:58は、ELMO1イントロン16 +101326の塩基がGであるかCであるかを検出するためのTaqman PCRプライマーを示す。
【0225】
配列番号:59は、ELMO1イントロン16 +105612のCがTに置換したポリヌクレオチド(121ヌクレオチド)を示す。
【0226】
配列番号:60は、ELMO1イントロン16 +105612の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0227】
配列番号:61は、ELMO1イントロン16 +105612の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0228】
配列番号:62は、ELMO1イントロン16 +105612の塩基がCであるものを検出するプローブを示す。
【0229】
配列番号:63は、ELMO1イントロン16 +105612の塩基がTであるものを検出するプローブを示す。
【0230】
配列番号:64は、ELMO1イントロン16 +105612の塩基がCであるかTであるかを検出するためのTaqman PCRプライマーを示す。
【0231】
配列番号:65は、ELMO1イントロン16 +105612の塩基がCであるかTであるかを検出するためのTaqman PCRプライマーを示す。
【0232】
配列番号:66は、ELMO1イントロン16 +114458のCがTに置換したポリヌクレオチド(121ヌクレオチド)を示す。
【0233】
配列番号:67は、ELMO1イントロン16 +114458の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0234】
配列番号:68は、ELMO1イントロン16 +114458の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0235】
配列番号:69は、ELMO1イントロン16 +114458の塩基がCであるものを検出するプローブを示す。
【0236】
配列番号:70は、ELMO1イントロン16 +114458の塩基がTであるものを検出するプローブを示す。
【0237】
配列番号:71は、ELMO1イントロン16 +114458の塩基がCであるかTであるかを検出するためのTaqman PCRプライマーを示す。
【0238】
配列番号:72は、ELMO1イントロン16 +114458の塩基がCであるかTであるかを検出するためのTaqman PCRプライマーを示す。
【0239】
配列番号:73は、ELMO1イントロン17 +5495のGがAに置換したポリヌクレオチド(121ヌクレオチド)を示す。
【0240】
配列番号:74は、ELMO1イントロン17 +5495の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0241】
配列番号:75は、ELMO1イントロン17 +5495の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0242】
配列番号:76は、ELMO1イントロン17 +5495の塩基がGであるものを検出するプローブを示す。
【0243】
配列番号:77は、ELMO1イントロン17 +5495の塩基がAであるものを検出するプローブを示す。
【0244】
配列番号:78は、ELMO1イントロン17 +5495の塩基がGであるかAであるかを検出するためのTaqman PCRプライマーを示す。
【0245】
配列番号:79は、ELMO1イントロン17 +5495の塩基がGであるかAであるかを検出するためのTaqman PCRプライマーを示す。
【0246】
配列番号:80は、ELMO1イントロン17 +6958のTがCに置換したポリヌクレオチド(121ヌクレオチド)を示す。
【0247】
配列番号:81は、ELMO1イントロン17 +6958の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0248】
配列番号:82は、ELMO1イントロン17 +6958の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0249】
配列番号:83は、ELMO1イントロン17 +6958の塩基がTであるものを検出するプローブを示す。
【0250】
配列番号:84は、ELMO1イントロン17 +6958の塩基がCであるものを検出するプローブを示す。
【0251】
配列番号:85は、ELMO1イントロン17 +6958の塩基がTであるかCであるかを検出するためのTaqman PCRプライマーを示す。
【0252】
配列番号:86は、ELMO1イントロン17 +6958の塩基がTであるかCであるかを検出するためのTaqman PCRプライマーを示す。
【0253】
配列番号:87は、ELMO1イントロン18 +9170のGがAに置換したポリヌクレオチド(121ヌクレオチド)を示す。
【0254】
配列番号:88は、ELMO1イントロン18 +9170の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0255】
配列番号:89は、ELMO1イントロン18 +9170の部分を含むポリヌクレオチドを検出するためのプライマーを示す。
【0256】
配列番号:90は、ELMO1イントロン18 +9170の塩基がGであるものを検出するプローブを示す。
【0257】
配列番号:91は、ELMO1イントロン18 +9170の塩基がAであるものを検出するプローブを示す。
【0258】
配列番号:92は、ELMO1イントロン18 +9170の塩基がGであるかAであるかを検出するためのインベーダープローブを示す。
【0259】
配列番号:93は、ELMO1用センスプライマーを示す。
【0260】
配列番号:94は、ELMO1用アンチセンスプライマーを示す。
【0261】
配列番号:95は、ELMO2用センスプライマーを示す。
【0262】
配列番号:96は、ELMO2用アンチセンスプライマーを示す。
【0263】
配列番号:97は、GAPDH用センスプライマーを示す。
【0264】
配列番号:98は、GAPDH用アンチセンスプライマーを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検験物質の存在下に、ELMO1の発現量若しくはELMO1を発現させることにより引き起こされる事象を評価し、該発現量の減少若しくは該事象の阻害をもたらす被験物質を選別することを特徴とする、糖尿病性腎症の治療又は予防薬のスクリーニング方法。
【請求項2】
被験物質の存在下に、ELMO1をコードする核酸を導入した哺乳動物細胞におけるELMO1の発現量を測定するステップを含み、ここで、被験物質の存在した場合にELMO1の発現量が減少することを、該被験物質が糖尿病性腎症の治療又は予防薬であることの指標とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
被験物質の存在下に、ELMO1及び/又はELMO2の発現量若しくはELMO1及び/又はELMO2を発現させることにより引き起こされる事象を評価し、該発現量の減少若しくは該事象の阻害をもたらす被験物質を選別することを特徴とする、糖尿病の治療又は予防薬のスクリーニング方法。
【請求項4】
被験物質の存在下に、ELMO1をコードする核酸及び/又はELMO2をコードする核酸を導入した哺乳動物細胞におけるELMO1及び/又はELMO2の発現量を測定するステップを含み、ここで、被験物質の存在した場合にELMO1及び/又はELMO2の発現量が減少することを、該被験物質が糖尿病の治療又は予防薬であることの指標とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
被験物質存在下に、ELMO1をコードする核酸を導入した哺乳動物細胞における細胞外基質の量を測定するステップを含み、ここで、被験物質の存在した場合に細胞外基質の産生が抑制されることを、該被験物質が糖尿病性腎症の治療又は予防薬であることの指標とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
被験物質存在下に、ELMO1及び/又はELMO2の発現量を評価し、該発現量の減少をもたらす被験物質を選別することを特徴とする、細胞外基質産生抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項7】
細胞外基質がI型コラーゲン又はフィブロネクチンである、請求項5又は6記載の方
法。
【請求項8】
被験物質存在下に、ELMO1をコードする核酸を導入した哺乳動物細胞におけるマトリックスメタロプロテイナーゼの量をするステップを含み、ここで、被験物質の存在した場合にマトリックスメタロプロテイナーゼ産生が促進されることを、該被験物質が糖尿病性腎症の治療又は予防薬であることの指標とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
被験物質存在下に、ELMO1及び/又はELMO2の発現量を評価し、該発現量の増加をもたらす被験物質を選別することを特徴とする、マトリックスメタロプロテイナーゼ産生促進剤のスクリーニング方法。
【請求項10】
マトリックスメタロプロテイナーゼがマトリックスメタロプロテイナーゼ−2又はマトリックスメタロプロテイナーゼ−3である、請求項8又は9記載の方法。
【請求項11】
被験物質存在下に、ELMO1をコードする核酸を導入した哺乳動物細胞におけるサイトカインの量をするステップを含み、ここで、被験物質の存在した場合にサイトカイン産生が抑制されることを、該被験物質が糖尿病性腎症の治療又は予防薬であることの指標とする、請求項1記載の方法。
【請求項12】
被験物質存在下に、ELMO1及び/又はELMO2の発現量を評価し、該発現量の減少をもたらす被験物質を選別することを特徴とする、サイトカイン産生抑制剤のスクリーニング方法。
【請求項13】
サイトカインがTGF−βである請求項11又は12記載の方法。
【請求項14】
被験物質存在下に、ELMO1をコードする核酸及び/又はELMO2をコードする核酸を導入した哺乳動物細胞における糖の取込み量をするステップを含み、ここで、被験物質の存在した場合に糖の取込み量が増加することを、該被験物質が糖尿病の治療又は予防薬であることの指標とする、請求項3記載の方法。
【請求項15】
被験物質存在下に、ELMO1及び/又はELMO2の発現量を評価し、該発現量の減少をもたらす被験物質を選別することを特徴とする、糖取込み促進剤のスクリーニング方法。
【請求項16】
ELMO1遺伝子の第16イントロン、第17イントロン及び第18イントロンからなる群より選ばれた少なくとも1種のヌクレオチドにおける多型を検出することを特徴とする、糖尿病性腎症の診断方法。
【請求項17】
該多型が、第16イントロンにおける65015位、65287位、67363位、79410位、80716位、101326位、105612位、114458位、第17イントロンにおける5495位、6958位及び第18イントロンにおける9170位のヌクレオチドからなる群より選ばれた少なくとも1種のヌクレオチドにおける多型である、請求項16記載の診断方法。
【請求項18】
ELMO1遺伝子の第16イントロン、第17イントロン及び第18イントロンからなる群より選ばれた少なくとも1種のヌクレオチドにおける多型を検出することを特徴とする、糖尿病性腎症の発症に寄与する核酸の検出方法。
【請求項19】
該多型が、第16イントロンにおける65015位、65287位、67363位、79410位、80716位、101326位、105612位、114458位、第17イントロンにおける5495位、6958位及び第18イントロンにおける9170位のヌクレオチドからなる群より選ばれた少なくとも1種のヌクレオチドにおける多型である、請求項18記載の検出方法。
【請求項20】
(I)ELMO1遺伝子の第16イントロン、第17イントロン及び第18イントロンからなる群より選ばれた少なくとも1種のイントロンにおいて糖尿病性腎症に罹患する可能性に関連する多型を検出するために用いられるプローブ、及び/又は
(II)ELMO1遺伝子の第16イントロン、第17イントロン及び第18イントロンからなる群より選ばれた少なくとも1種のイントロンにおいて糖尿病性腎症に罹患する可能性に関連する多型を検出するために用いられるプライマー対、
を含む、糖尿病性腎症の診断キット。
【請求項21】
(I’)ELMO1遺伝子の第16イントロンにおける65015位、65287位、67363位、79410位、80716位、101326位、105612位、114458位、第17イントロンにおける5495位、6958位及び第18イントロンにおける9170位のヌクレオチドからなる群より選ばれた少なくとも1種のヌクレオチドにおける多型を検出するために用いられるプローブ、及び/又は
(II’)ELMO1遺伝子の第16イントロンにおける65015位、65287位、67363位、79410位、80716位、101326位、105612位、114458位、第17イントロンにおける5495位、6958位及び第18イントロンにおける9170位のヌクレオチドからなる群より選ばれた少なくとも1種のヌクレオチドにおける多型を検出するために用いられるプライマー対、
を含む、請求項20記載の糖尿病性腎症の診断キット。
【請求項22】
(I’’)ELMO1遺伝子の塩基配列において、
a) 第16イントロンの65015位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、
b) 第16イントロンの65287位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、
c) 第16イントロンの67363位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、
d) 第16イントロンの79410位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、
e) 第16イントロンの80716位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、
f) 第16イントロンの101326位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、
g) 第16イントロンの105612位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、
h) 第16イントロンの114458位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、
i) 第17イントロンの5495位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、
j) 第17イントロンの6958位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、及び
k) 第18イントロンの9170位のヌクレオチドを含む連続した10〜100ヌクレオチドの塩基配列又はそのアンチセンス鎖を有するプローブ、
からなる群より選ばれた少なくとも1種のプローブ、及び/又は
(II’’)ELMO1遺伝子の塩基配列において、
A) 第16イントロンの65015位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該65015位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、
B) 第16イントロンの65287位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該65287位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、
C) 第16イントロンの67363位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該67363位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、
D) 第16イントロンの79410位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該79410位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、
E) 第16イントロンの80716位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該80716位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、
F) 第16イントロンの101326位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該101326位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、
G) 第16イントロンの105612位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該105612位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、
H) 第16イントロンの114458位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該114458位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、
I) 第17イントロンにおける5495位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該5495位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、
J) 第17イントロンにおける6958位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該6958位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、及び
K) 第18イントロンにおける9170位から5’又は3’末端方向に0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと、それに対応する方向に、該9170位に対応するアンチセンス鎖上のヌクレオチドから0〜20ヌクレオチド長離れた位置に存在するヌクレオチドを一端とする連続した15〜40ヌクレオチドの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドとからなるプライマー対、
からなる群より選ばれた少なくとも1種のプライマー対、
を含有してなる、請求項20又は21記載の糖尿病性腎症の診断キット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【国際公開番号】WO2005/042779
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【発行日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515192(P2005−515192)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016216
【国際出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(000001926)塩野義製薬株式会社 (229)
【出願人】(503359821)独立行政法人理化学研究所 (1,056)
【Fターム(参考)】