説明

糖尿病性網膜症または眼炎症の処置におけるゲニステインのようなタンパク質チロシンインヒビターの使用

【課題】糖尿病性網膜症の予防的および治療的処置のための方法、および眼炎症の予防的および治療的処置のための方法を提供する。
【解決手段】糖尿病性網膜症または眼炎症をそれぞれ予防的または治療的に処置するのに十分な量のタンパク質チロシンキナーゼ経路のインヒビターを、動物(例えば、哺乳動物、特にヒト)へ投与すること。タンパク質チロシンキナーゼ経路のインヒビターは、好ましくはゲニステインあるいはそのアナログまたはプロドラッグ、あるいは前述のもののいずれかの薬学的に受容可能な塩である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、糖尿病性網膜症の予防的および治療的処置のための方法、および眼炎症の予防的および治療的処置のための方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
米国において1400万を超える人々が糖尿病に罹患している。糖尿病に罹患している全ての人々は、網膜合併症の危険がある。しかし、I型、すなわちインスリン依存性糖尿病の人々は、II型、すなわち非インスリン依存性糖尿病の人々に比べて、重い視力低下(vision loss)のより高い危険に直面している。
【0003】
最初に、糖尿病の人々における高い血液グルコースレベルは、彼らの眼において成長因子の増加を引き起こす。この状態は、「糖尿病前症性網膜症期」として知られ、予防的に処置されなければ網膜症に至ることがある。
【0004】
網膜症は、大部分の糖尿病の人々に、生涯にわたってかなりの程度悪影響を与える(Anonymous,MMWR 42(10):191−195(1993))。それは、現在20〜74歳の米国人における失明の主要な原因であり、米国における糖尿病の人々の約3分の1において視力を悪化させると予想されている。米国において各年、40,000ほどの新規な失明のケースが、糖尿病の人々の間で生じている(CDC、未発表データ、1993)。糖尿病の人々は、一般人口よりも25倍網膜症によって失明しやすい。
【0005】
糖尿病性網膜症は、2期、すなわち、非増殖性期(これは、典型的には最初に生じる)および増殖性期を有する。非増殖性期、これは「背景糖尿病性網膜症」とも呼ばれ、基底膜の肥厚、網膜周細胞の損失、微小血管異常、網膜内毛細血管瘤、網膜出血(「ドットブロット(dot blot)」出血としても知られている)、網膜浮腫(特に糖尿病性黄斑浮腫)、網膜虚血または網膜灌流の低下に関連した毛細血管閉鎖(すなわち、血管発達の不全)ならびに軟性白斑および硬性白斑によって特徴付けられる。増殖性期、これは概算で700,000の米国人に悪影響を与えており(Chenら、J.Miss.State Med.Assoc.36(7):201−208(1995))、網膜または網膜もしくは乳頭の内表面上の視神経から、あるいは硝子体腔内への新血管形成および線維血管(fibrovascular)成長(すなわち、神経膠要素および線維要素を含む瘢痕)によって特徴付けられる。
【0006】
増殖性期は、ルベオーシス(rubeotic)緑内障または新血管形成緑内障へと至ることがある。黄斑浮腫は、いずれの期でも起こり得、網膜新血管形成からの合併症と共に、糖尿病に関連する視力低下を引き起こす2つの主要な網膜の問題である。
【0007】
糖尿病性網膜症の病理学期は十分に説明されているが、糖尿病性網膜症に内在する分子現象は、あまり理解されていない。これは、一部には、この疾患が個人間で差はあるが10〜30年に渡って進行するという事実による。
【0008】
血糖および高血圧の厳重な制御ならびに糖尿病の眼科スクリーニングは、この疾患を予防するのに有益のようである。現在の処置は、眼科医による定期的な観察、レーザー光凝固および硝子体切除からなる。
【0009】
眼炎症(例えば、黄斑浮腫)は、疾患、細菌感染またはウイルス感染、眼手術(これは白内障手術、網膜手術、屈折矯正手術、および角膜手術(例えば、角膜移植)を含む)などの結果として起こり得る。眼炎症はまた、角膜移植片拒絶反応の結果として起こり得る。
【0010】
眼炎症は、現在コルチコステロイドによって処置される。このような処置の不利な点は、白内障、眼内圧の増加、角膜溶融、全身性合併症、高血圧、大腿骨先端部の無菌壊死、心臓血管疾患、顔面の毛および多くのその他のものである。非ステロイド抗炎症性化合物もまた、投与される。このような化合物の不利な点としては、特定の血液疾患、消化性潰瘍、胃痛(gastric distress)、および出血を伴う血小板機能不全、ならびにその他のものが挙げられる。黄斑中心に脅威を与えるかまたはそれを含む黄斑浮腫は、病巣黄斑光凝固を用いて処置される。小さな(直径50μm)中強度のレーザーバーンは、黄斑の漏出領域を標的とする(Murphy,Amer.Family Physician 51(4):785−796(1995))。黄斑浮腫が残存する場合、再処置が必要なときもある。
【0011】
重いか非常に重い非増殖性網膜症に罹患している患者、および増殖性網膜症の危険性が高いか、あるいは初期のまたは進行した増殖性網膜症に既に罹患している患者は、散乱または汎網膜光凝固を用いて処置される。汎網膜光凝固は、網膜の中央周辺部および周辺部に1,500〜2,000のレーザーバーン(これは直径500μmである)を含む(Murphy(1995)、前出)。
【0012】
糖尿病の微小血管合併症の発症に関する最もよく実証された生化学的機構は、ソルビトール経路である。ソルビトール経路では、酵素であるアルドースレダクターゼは、グルコースのソルビトールへの変換およびガラクトースのガラクチトールへの変換を触媒する。アルドースレダクターゼは、グルコースに対して低い基質親和性を有する。従って、グルコース濃度が正常である場合、この経路は不活性である。高血糖症の間、ソルビトール経路は活性になる。ソルビトール経路の活性化は、網膜周細胞にとって重要であり、例えば、これはグルコース浸透のためにインスリンを必要としない。同様に、網膜毛細血管細胞は、十分な量のアルドースレダクターゼを含むようである(Ferris,Hospital Practice :79−89(1993))。
【0013】
糖尿病性網膜症および眼炎症の高い罹患率を考慮すると、糖尿病性網膜症および眼炎症の有効な予防的および治療的処置の必要性が依然としてある。従って、本発明の主要な目的は、糖尿病性網膜症を予防的および治療的に処置するための方法(糖尿病前症性網膜症期、非増殖性糖尿病性網膜症期、および増殖性糖尿病性網膜症期での処置を含む)を提供することである。本発明の別の主要な目的は、眼炎症(例えば、黄斑浮腫(例えば、疾患、細菌感染またはウイルス感染、あるいは眼手術(例えば、白内障手術、網膜手術、屈折矯正手術、および角膜手術(例えば、角膜移植)など、とりわけ角膜移植片拒絶反応)に関連するもの))を予防的および治療的に処置するための方法を提供することである。本発明のこれらおよび他の目的は、本明細書中で提供する詳細な説明から明らかとなる。
【0014】
(発明の簡単な要旨)
本発明は、糖尿病性網膜症の予防的および治療的処置のための方法(糖尿病前症性網膜症期、非増殖性糖尿病性網膜症期、および増殖性糖尿病性網膜症期での処置を含む)に関する。本発明はまた、眼炎症の予防的および治療的処置のための方法に関する。本方法は、タンパク質チロシンキナーゼ経路のインヒビターの投与を含む。好ましくは、タンパク質チロシンキナーゼ経路のインヒビターは、以下の式の化合物である:
【0015】
【化1】

【0016】
ここでV、WおよびXは、ヒドロ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ、エステル、エーテル、カルボン酸基、カルボン酸基の薬学的に許容し得る塩、および−SR(ここでRは水素またはアルキル基である)からなる群より選択され、Yは、酸素、硫黄、C(OH)、およびC=Oからなる群より選択され、Zは、ヒドロおよびC(O)OR1(ここでR1はアルキルである)からなる群より選択される。好ましくは、アルコキシはC1−C6アルコキシである。好ましくは、ハロは、フッ素、塩素または臭素である。好ましくは、エステルはC1−C6エステルである。好ましくは、エーテルはC1−C6エーテルである。好ましいカルボン酸基の薬学的に許容し得る塩としては、ナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられる。好ましくは、アルキル基はC1−C6アルキル基である。望ましくは、タンパク質チロシンキナーゼ経路のインヒビターはゲニステイン(genistein)である。
【0017】
(発明の詳細な説明)
本発明は、チロシンリン酸化が非虚血性微小血管糖尿病性網膜症の初期において増加すること、およびタンパク質チロシンキナーゼ経路のインヒビター、特にゲニステインが糖尿病性網膜症の予防に有効であるという知見を根拠とする。従って、本発明は、糖尿病性網膜症の予防的および治療的処置のための方法(糖尿病前症性網膜症期、非増殖性糖尿病性網膜症期、および増殖性糖尿病性網膜症期での処置を含む)を提供する。さらに、本発明は、眼炎症の予防的および治療的処置のための方法を提供する。「予防的」とは、糖尿病性網膜症(特に、糖尿病性黄斑浮腫)または眼炎症に対する全体的または部分的保護を意味する。「治療的」とは、糖尿病性網膜症または眼炎症自体の改善、およびさらなる糖尿病性網膜症または眼炎症に対する全体的または部分的保護を意味する。眼炎症の予防的および治療的処置のための本発明の方法は、疾患、細菌感染またはウイルス感染、あるいは眼手術(例えば、白内障手術、網膜手術、屈折矯正手術、および角膜手術(例えば、角膜移植)など、とりわけ角膜移植片拒絶反応)による眼炎症(例えば、黄斑浮腫)の処置に特に有用である。この点に関して、本発明の方法はまた、例えば、白内障後またはレーザー嚢切開術に関連した網膜浮腫(Irvine−Gass症候群)、ぶどう膜炎、分岐または中央静脈の閉塞、局所的なエピネフリンの使用、重症高血圧、放射線網膜症、周中心窩末梢血管拡張症(telangectasia)および網膜色素変性の処置に有用である。
【0018】
本方法は、眼炎症または網膜症の網膜を予防的または治療的に処置するのに十分な量の、タンパク質チロシンキナーゼ経路のインヒビターを投与することを含む。タンパク質チロシンキナーゼ経路のインヒビターは、それが安全かつ有効である限り、本発明の方法において使用することができる。ここで、「PTKインヒビター」は、このような化合物を言及するために使用され、タンパク質チロシンキナーゼ経路の任意の点および全ての点でこの経路に影響を与える全ての化合物を包含することが意図される。
【0019】
好ましくは、PTKインヒビターは、ゲニステイン(5,7−ジヒドロキシ−3−(4−ヒドロキシフェニル)−4H−1−ベンゾピラン−4−オン)または薬学的に許容し得る、タンパク質チロシンキナーゼ経路を阻害するそのアナログまたはプロドラッグ、あるいは前述のもののいずれかの薬学的に許容し得る塩である。従って、PTKインヒビターは、以下の式の化合物であり得る:
【0020】
【化2】

【0021】
ここでV、WおよびXは、ヒドロ、ヒドロキシル、アルコキシ、ハロ、エステル、エーテル、カルボン酸基、カルボン酸基の薬学的に許容し得る塩、および−SR(ここでRは水素またはアルキル基である)からなる群より選択され、Yは、酸素、硫黄、C(OH)、およびC=Oからなる群より選択され、Zは、ヒドロおよびC(O)OR1(ここでR1はアルキルである)からなる群より選択される。好ましくは、アルコキシはC1−C6アルコキシである。好ましくは、ハロは、フッ素、塩素または臭素である。好ましくは、エステルはC1−C6エステルである。好ましくは、エーテルはC1−C6エーテルである。好ましいカルボン酸基の薬学的に許容し得る塩としては、ナトリウム塩およびカリウム塩が挙げられる。好ましくは、アルキル基はC1−C6アルキル基である。望ましくは、タンパク質チロシンキナーゼ経路のインヒビターはゲニステインである。
【0022】
プロドラッグは、ゲニステインの薬学的に許容し得る任意のプロドラッグ、ゲニステインのタンパク質チロシンキナーゼ経路を阻害するアナログ、または前述のいずれかの薬学的に許容し得る塩であり得る。しかし、当業者は、使用されるプロドラッグが、網膜内またはその周囲で活性なPTKインヒビターに変換され得るものでなければならないことを理解する。好ましいプロドラッグは、ゲニステイン、ゲニステインのタンパク質チロシンキナーゼ経路を阻害するアナログ、または前述のいずれかの薬学的に許容し得る塩の脂質溶解性を増加させるプロドラッグである。好ましいプロドラッグは、V、WおよびXの1つ以上が、独立して、エステル(例えばピバル酸)で誘導体化されたものである。
【0023】
上式の化合物は、広く市販入手可能である。例えば、ゲニステインは、LC Laboratories(Woburn,MA)から入手可能である。市販入手可能でない化合物は、当該分野で公知の有機合成法を用いて容易に調製することができる。
【0024】
本発明による化合物の特定のアナログ、プロドラッグまたは薬学的に許容し得る塩が、予防的または治療的に網膜症を処置できるかどうかは、実施例1で使用したラットモデルにおけるその効果によって決定することができる。あるいは、タンパク質チロシンキナーゼ経路のインヒビターのアナログ、プロドラッグおよび薬学的に許容し得る塩は、内皮細胞増殖のインビトロ研究によって、および糖尿病性網膜症の他のモデル(例えば、ストレプトゾトシン)において試験することができる。タンパク質チロシンキナーゼ経路のインヒビターのアナログ、プロドラッグおよび薬学的に許容し得る塩は、臨床試験によって(例えば、炎症の細胞性および体液性メディエーターの定量によって)、または眼炎症の予防的および治療的処置における効能のための実施例2に示す方法を用いて試験することができる。
【0025】
さらに、カラードップラー画像診断(color Doppler imaging)は、眼の病理における薬物の作用を評価するために使用することができる(Valliら、Ophthalmologica 209(13):115−121(1995))。カラードップラー画像診断は、最近の超音波診断の進歩であり、構造の同時2次元画像診断および血流の評価を可能にする。従って、網膜症および眼炎症は、このような技術を用いて分析することができる。
【0026】
PTKインヒビターは、本発明の方法で使用するために、所望であれば、適切なマトリクス、例えば、ポリマー性マトリクスに結合させることができる。ポリマー結合化合物がインビボで使用される場合、ポリマーが生物学的に許容し得るならば、任意の広範囲のポリマーを本発明の文脈において使用することができる(例えば、米国特許第5,384,333号および同第5,164,188号を参照のこと)。
【0027】
ゲニステインの利点は、非常に安全かつ有効であることである。例えば、ゲニステインを糖尿病の脂肪過多のZuckerラットに経口投与した場合、ゲニステインは、エレクトロレティノグラフィーによって測定して、6ヶ月の期間にわたって75mg/kg/日〜300mg/kg/日の範囲の投薬量で、網膜に対して無毒であったことが見出された。さらに、ゲニステインの経口投与は、雄ラットおよび雌ラットについて、食物摂取および体重に対する影響がなかったことが見出された。また、経口投与したゲニステインは、雌ラットにおいて卵巣および子宮の重量に対して影響がなかったことが見出された。
【0028】
PTKインヒビター(好ましくは、ゲニステイン、ゲニステインのタンパク質チロシンキナーゼ経路を阻害するアナログ、ゲニステインのタンパク質チロシンキナーゼ経路を阻害するプロドラッグ、または前述のいずれかの薬学的に許容し得る塩である)は、任意の適切な経路によって、本発明の方法に従って投与することができる。適切な投与経路としては、全身的(例えば経口または注射によって)、局所的、眼内、眼周辺(例えば、テノン膜下(subTenon's))、結膜下、網膜下、脈絡膜上および眼球後方が挙げられる。PTKインヒビターを投与する様式は、網膜症または眼炎症の処置が予防的または治療的であるかに一部依存する。PTKインヒビターを網膜症または眼炎症の治療的処置のために投与する様式は、それぞれ網膜症または眼炎症の原因に一部依存する。
【0029】
例えば、糖尿病が網膜症の主要な原因であれば、PTKインヒビターは、糖尿病前症性網膜症の状態が検出されるとすぐに予防的に投与することができる。糖尿病に起因し得る網膜症の予防的処置のために、PTKインヒビターは、好ましくは全身的に(例えば、経口または注射によって)投与される。非増殖性糖尿病性網膜症の治療的処置のために、PTKインヒビターは、全身的に(例えば、経口または注射によって)、または眼内に投与することができる。増殖性糖尿病性網膜症は、PTKインヒビターを眼内、局所的、結膜下または眼周辺(例えば、テノン膜下)に投与することによって、治療的に処置することができる。PTKインヒビターは、増殖性糖尿病期の間の新血管形成の間に発生した瘢痕組織を眼から外科的に除去する前、その間またはその後の網膜症の予防的または治療的処置のために、好ましくは眼内、局所的、結膜下または眼周辺(例えば、テノン膜下)に投与される。
【0030】
同様に、疾患、細菌感染またはウイルス感染、眼手術(例えば、白内障手術、網膜手術、屈折矯正手術、および角膜手術(例えば、角膜移植)など、およびとりわけ角膜移植片拒絶反応)が、眼炎症(例えば、黄斑浮腫)の主要な原因であるので、PTKインヒビターは、疾患または感染が検出されるかあるいは眼手術が完了するとすぐに治療的に投与することができる。PTKインヒビターは、疾患または感染が検出される前、あるいは眼手術の前、その間またはその後に予防的に投与することができる。眼炎症の予防的処置について、PTKインヒビターは、好ましくは眼内または網膜下に投与される。この点に関して、生体分解性でかつ生体吸収性である眼内デバイス/インプラント(例えば、VitrasertTM)の使用は、PTKインヒビターの徐放を達成するために使用することができる。
【0031】
PTKインヒビターは、好ましくは、動物(例えば、哺乳動物、特にヒト)が網膜症または眼炎症の危険にある(予防的処置)か、または網膜症または眼炎症を発症し始めた(治療的処置)ことを確定した後、できるだけ早く投与される。処置は、使用される特定のPTKインヒビター、投与されるPTKインヒビターの量、投与経路、ならびにもし網膜症または眼炎症が実際に発症している時はその原因および程度に一部依存する。
【0032】
当業者は、PTKインヒビターの適切な投与方法(本発明の方法に有用である)が利用可能であることを理解する。特定のPTKインヒビターを投与するために1より多い経路を使用することができるが、特定の経路は、別の経路よりも、より即時かつより効果的な反応を提供することができる。従って、記載した投与経路は、単なる例示であり、決して限定するものではない。
【0033】
本発明に従って動物(特に、ヒト)に投与される用量は、合理的な時間枠にわたって動物に所望の応答をもたらすのに十分な量とすべきである。当業者は、投薬量が、種々の因子(使用される特定のPTKインヒビターの強さ、動物の年齢、種、病気または疾患の状態、および体重、ならびに、網膜症によってまさに影響を受けようとしているまたは実際に影響を受けた網膜の量、または眼炎症の量および位置を含む)に依存することを理解する。用量のサイズはまた、投与の経路、時期および頻度、ならびに特定のPTKインヒビターの投与に伴うかもしれない任意の悪い副作用の存在、性質および程度、および所望の生理学的効果によって決定される。当業者は、種々の病気または疾患の状態(特に、慢性の病気または疾患の状態)が、複数回投与を含む延長した処置を必要とするかもしれないことを理解する。
【0034】
適切な用量および投薬量計画は、当業者に公知の従来の範囲決定技術によって決定することができる。一般に、処置は、化合物の最適用量よりも少量の投薬量で開始される。その後、投薬量は、その状況下で最適の効果に達するまで、少量ずつ増加される。本発明の方法は、典型的には、全身的に投与する場合、約1mg/kg/日〜約100mg/kg/日、好ましくは約15mg/kg/日〜約50mg/kg/日の投与を含む。眼内投与は、典型的には、合計約0.1mg〜合計約5mg、好ましくは合計約0.5mg〜合計約1mgの投与を含む。局所投与の好ましい濃度は、100μMである。
【0035】
本発明の方法において使用するための組成物は、好ましくは、薬学的に許容し得る担体と、網膜症または眼炎症を予防的または治療的に処置するのに十分な量のPTKインヒビターとを含有する。担体は、従来使用されているいずれのものでもよく、物理化学的考慮(例えば、溶解性および化合物との反応性の欠如)および投与経路によってのみ制限される。当業者は、以下に記載した医薬組成物に加えて、PTKインヒビターが、ポリマー性組成物、包接錯体(例えば、シクロデキストリン包接錯体)、リポソーム、ミクロスフェア、マイクロカプセルなどとして処方することができることを理解する(例えば、米国特許第4,997,652号、同第5,185,152号および同第5,718,922号を参照のこと)。
【0036】
PTKインヒビターは、薬学的に許容し得る酸付加塩として処方することができる。医薬組成物に使用するための薬学的に許容し得る酸付加塩の例としては、鉱酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、リン酸、メタリン酸、硝酸および硫酸)、および有機酸(例えば、酒石酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸、安息香酸、グリコール酸、グルコン酸、コハク酸、およびアリールスルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸))が挙げられる。
【0037】
本明細書中に記載する薬学的に許容し得る賦形剤、例えば、ビヒクル、アジュバント、担体または希釈剤は、当業者に周知であり、一般の人々が容易に入手可能である。薬学的に許容し得る担体は、PTKインヒビターに対して化学的に不活性であるもの、および使用状況下で有害な副作用または毒性を有しないものであることが好ましい。
【0038】
賦形剤の選択は、一部、特定のPTKインヒビターによって、ならびに組成物を投与するために使用する特定の方法によって、決定される。従って、広範な種々の本発明の医薬組成物の適切な処方物が存在する。以下の処方物は、単なる例示であり、決して限定するものではない。
【0039】
注射可能な処方物は、本発明の方法によれば好ましいものである。注射可能な組成物用の有効な薬学的担体の要件は、当業者に周知である(Pharmaceutics and Pharmacy Practice,J.B.Lippincott Co.,Philadelphia,PA,BankerおよびChalmers編、238−250頁(1982)、およびASHP Handbook on Injectable Drugs,Toissel、第4版、622−630頁(1986)を参照のこと)。このような注射可能な組成物は、筋肉内、静脈内、または腹腔内に投与されるのが好ましい。
【0040】
局所処方物は、当業者に周知である。このような処方物は、本発明の文脈において、皮膚への適用に適している。パッチ、角膜シールド(例えば、米国特許第5,185,152号を参照のこと)、および眼用溶液(例えば、米国特許第5,710,182号を参照のこと)ならびに軟膏(例えば、点眼薬)の使用もまた、当業者の範囲内である。
【0041】
経口投与に適切な処方物は、以下のものからなり得る:(a)液体溶液、例えば、有効量の化合物が希釈剤(例えば、水、生理食塩水、またはオレンジジュース)に溶解したもの;(b)カプセル剤、小袋剤(sachet)、錠剤、ロゼンジ剤、およびトローチ剤、これらはそれぞれ所定量の活性成分を、固体または顆粒として含む;(c)粉末剤;(d)適切な液体中の懸濁液;および(e)適切な乳濁液。液体処方物は、薬学的に許容し得る界面活性剤、懸濁化剤、または乳化剤を添加して、または添加しないで、希釈剤(例えば、水およびアルコール(例えば、エタノール、ベンジルアルコール、およびポリエチレンアルコール))を含んでもよい。カプセル剤形態は、通常の硬質または軟質シェル型(hard- or soft-shelled)ゼラチンタイプのものであり得、例えば、界面活性剤、滑沢剤、および不活性充填剤(例えば、ラクトース、スクロース、リン酸カルシウムおよびコーンスターチ)を含む。錠剤形態は、ラクトース、スクロース、マンニトール、コーンスターチ、ポテトスターチ、アルギン酸、微結晶性セルロース、アラビアゴム、ゼラチン、グアルガム、コロイド状二酸化ケイ素、クロスカルメロース(croscarmellose)ナトリウム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、および他の賦形剤、着色剤、希釈剤、緩衝化剤、崩壊剤、湿潤剤、保存剤、香味剤、および薬理学的に適合性の賦形剤のうちの1種以上を含むことができる。ロゼンジ剤形態は、香味料(通常、スクロースおよびアラビアゴムまたはトラガカントゴム)中に活性成分を含有することができ、ならびにパステル剤は、不活性基剤(例えば、ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアラビアゴム)中に活性成分を含有し、乳濁液、ゲルなどは、活性成分に加えて、当該分野で公知の賦形剤を含有する。
【0042】
非経口投与に適切な処方物としては、水性および非水性の、等張性の無菌注射溶液が挙げられ、これは、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、および処方物を意図するレシピエントの血液と等張にする溶質を含むことができ、ならびに水性および非水性の無菌懸濁液が挙げられ、この無菌懸濁液は、懸濁化剤、可溶化剤、粘稠化剤、安定化剤、および保存剤を含むことができる。インヒビターは、薬学的に許容し得る界面活性剤(例えば、石鹸または洗剤)、懸濁化剤(例えば、ペクチン、カーボマー、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはカルボキシメチルセルロース)、または乳化剤および他の薬学的アジュバントを添加してまたは添加しないで、薬学的担体(例えば、無菌液体または液体混合物)中の生理学的に許容し得る希釈剤中で投与することができ、この希釈剤としては、水、生理食塩水、水性デキストロースおよび関連する糖溶液、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、またはヘキサデシルアルコール)、グリコール(例えば、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール)、ジメチルスルホキシド、グリセロールケタール(例えば、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタノール)、エーテル(例えば、ポリ(エチレングリコール)400)、オイル、脂肪酸、脂肪酸エステルまたはグリセライド、またはアセチル化脂肪酸グリセライドが挙げられる。非経口処方物に使用することができるオイルとしては、石油、動物油、植物油または合成油が挙げられる。オイルの特定の例としては、ピーナッツ油、大豆油、ゴマ油、綿実油、コーン油、オリーブ油、ペトロラタム、および鉱物油が挙げられる。
【0043】
非経口処方物に使用するのに適した脂肪酸としては、オレイン酸、ステアリン酸、およびイソステアリン酸が挙げられる。オレイン酸エチルおよびミリスチン酸イソプロピルは適切な脂肪酸エステルの例である。
【0044】
非経口処方物に使用するのに適した石鹸としては、脂肪酸アルカリ金属塩、アンモニウム塩、およびトリエタノールアミン塩が挙げられ、適切な界面活性剤としては、(a)カチオン性界面活性剤、例えば、ジメチルジアルキルアンモニウムハライド、およびアルキルピリジニウムハライド、(b)アニオン性界面活性剤、例えば、スルホン酸アルキル、アリール、およびオレフィン、硫酸アルキル、オレフィン、エーテル、およびモノグリセライド、およびスルホスクシネート、(c)非イオン性界面活性剤、例えば、脂肪酸アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド、およびポリオキシエチレンポリプロピレンコポリマー、(d)両性界面活性剤、例えば、アルキル−p−アミノプロピオネート、および2−アルキル−イミダゾリン4級アンモニウム塩、および(e)それらの混合物が挙げられる。
【0045】
非経口処方物は、典型的には、溶液中に約0.5〜約25重量%の活性成分を含む。保存剤および緩衝剤を使用してもよい。注射部位での刺激を最小限にするかまたは除去するために、このような組成物は、約12〜約17の親水親油バランス(HLB)を有する1種以上の非イオン性界面活性剤を含んでもよい。
【0046】
このような処方物中の界面活性剤の量は、典型的には、約5〜約15重量%の範囲である。適切な界面活性剤としては、ポリエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、モノオレイン酸ソルビタン)およびエチレンオキシドと疎水性基剤との高分子量付加体が挙げられ、この付加体は、プロピレンオキシドとプロピレングリコールとの縮合によって形成される。非経口処方物は、単回用量または多回用量のシールされた容器(例えば、アンプルおよびバイアル)中に存在することができ、使用直前に注射用の無菌液体賦形剤(例えば、水)の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)状態で保存することができる。即時調合注射溶液および懸濁液は、前述した種類の無菌粉末剤、顆粒剤、および錠剤から調製することができる。
【0047】
このような組成物は、眼内処方物、徐放処方物またはデバイスとして処方することができる(例えば、米国特許第5,378,475号を参照のこと)。例えば、ゼラチン、硫酸コンドロイチン、ポリリン酸エステル、例えば、ビス−2−ヒドロキシエチル−テレフタレート(BHET)、またはポリ乳酸−グリコール酸(種々の割合で)を、徐放処方物を処方するために使用することができる。インプラント(例えば、米国特許第5,443,505号、同第4,853,224号および同第4,997,652号を参照のこと)、デバイス(例えば、米国特許第5,554,187号、同第4,863,457号、同第5,098,443号および同第5,725,493号を参照のこと)、例えば移植可能デバイス(例えば、機械式レザバー、眼内デバイスまたは眼内導管(例えば、直径100μ〜1mm)を有する眼外デバイス)、あるいは上記ポリマー性組成物からなるインプラントまたはデバイスを使用することができる。
【0048】
本発明の方法はまた、他の薬学的に活性な化合物の併用投与を含むことができる。「併用投与」とは、上記のPTKインヒビターの投与の前、それと同時(例えば、同じ処方物中または別の処方物中のPTKインヒビターと組み合わせて)、またはその後の投与を意味する。例えば、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、またはトリアムシノロン(triamcinalone)アセトニド)、または非コルチコステロイド抗炎症性化合物(例えば、イブプロフェンまたはフルビプロベン(flubiproben))を併用投与することができる。同様に、ビタミンおよびミネラル(例えば、亜鉛)、抗酸化剤(例えば、カロチノイド(例えば、キサントフィルカロチノイド様ゼアキサンチンまたはルテイン))、および微量栄養素を併用投与することができる。さらに、他のタイプのタンパク質チロシンキナーゼ経路のインヒビターとしては、天然タンパク質チロシンキナーゼインヒビター(例えば、ケルセチン、ラベンダスチンA(lavendustin A)、エルブスタチン(erbstatin)およびへルビマイシンA(herbimycin A))および合成タンパク質チロシンキナーゼインヒビター(例えば、チロホスチン(tyrphostin)(例えば、AG490、AG17、AG213(RG50864)、AG18、AG82、AG494、AG825、AG879、AG1112、AG1296、AG1478、AG126、RG13022、RG14620およびAG555)、ジヒドロキシ−およびジメトキシベンジリデンマロノニトリル、ラベンダスチンAのアナログ(例えば、AG814およびAG957)、キナゾリン(例えば、AG1478)、4,5−ジアニリノフタルイミド、およびチアゾリジンジオン)が挙げられ、これらを、ゲニステインまたはそのアナログ、プロドラッグまたは薬学的に許容し得る塩と併用投与することができる(Levitzkiら、Science 267:1782−1788(1995);およびCunninghamら、Anti−Cancer Drug Design 7:365−384(1992)を参照のこと)。この点に関して、ゲニステインの潜在的に有用な誘導体としては、Mazurekら、米国特許第5,637,703号に記載のものが挙げられる。成長因子に対する中和タンパク質(例えば、所定の成長因子(例えば、VEGF(例えば、Aielloら、PNAS USA 92:10457−10461(1995)を参照のこと)、またはホスホチロシン(Dharら、Mol.Pharmacol.37:519−525(1990))に対して特異的であるモノクローナル抗体)を併用投与することができる。併用投与することができる他の種々の化合物としては、タンパク質キナーゼCのインヒビター(例えば、米国特許第5,719,175号および同第5,710,145号を参照のこと)、サイトカインモジュレーター、増殖の内皮細胞特異的インヒビター(例えば、トロンボスポンジン(thrombospondin))、内皮細胞特異的阻害性成長因子(例えば、TNFα)、抗増殖性ペプチド(例えば、SPARCおよびプロルフェリン(prolferin)様ペプチド)、グルタメートレセプターアンタゴニスト、アミノグアニジン、アンギオテンシン変換酵素インヒビター(例えば、アンギオテンシンII)、カルシウムチャネル遮断薬、Ψ−テクトリゲニン(tectorigenin)、ST638、ソマトスタチンアナログ(例えば、SMS 201−995)、モノシアロガングリオシド(monosialoganglioside)GM1、チクロピジン、神経栄養性成長因子、メチル−2,5−ジヒドロキシシンナメート、血管形成インヒビター(例えば、組換えEPO、スルホニル尿素経口血糖減少剤(例えば、グリクラジド(gliclazide)(非インスリン依存性糖尿病))、ST638(Asahiら、FEBS Letter 309:10−14(1992))、サリドマイド、ニカルジピン(nicardipine)塩酸塩、アスピリン、ピセアタノール(piceatannol)、スタウロスポリン(staurosporine)、アドリアマイシン、エピダースタチン(epiderstatin)、(+)−アエロプリシニン(aeroplysinin)−1、フェナゾシン、ハロメチルケトン、抗脂肪血症剤(例えば、エトフィブレート(etofibrate))、クロルプロマジンおよびスピングホシン(spinghosines)、アルドースレダクターゼインヒビター(例えば、トルレスタット(tolrestat))、SPR−210、ソルビニル(sorbinil)または酸素、ならびにレチノイン酸およびそのアナログ(Burkeら、Drugs of the Future 17(2):119−131(1992);およびTomlinsonら、Pharmac.Ther.54:151−194(1992))が挙げられる。セレノインドール(2−チオインドール)および関連するジスルフィドセレニド(例えば、Dobrusinら、米国特許第5,464,961号に記載のもの)は、有用なタンパク質チロシンキナーゼインヒビターである。全身性体液鬱滞(例えば、心臓血管疾患または腎臓疾患および重篤な全身性高血圧による)を示す患者は、利尿薬物、透析薬物、心臓薬物および抗高血圧剤でさらに処置することができる。
【実施例】
【0049】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、もちろんその範囲をいかようにも限定しないと解釈されるべきである。
【0050】
(実施例1)
本実施例は、チロシンリン酸化が非虚血性微小血管糖尿病性網膜症の初期において増加し、そしてゲニステインがこのようなチロシンリン酸化を阻害することを示す。
【0051】
6対の同腹仔のZuckerラット(すなわち、6匹の引退した糖尿病の脂肪過多の繁殖雄Zucker(ZDF、fa/fa)ラットおよび6匹の引退した脂肪の少ない繁殖雌Zucker(fa/+)ラット)を得た(Genetic Models,Inc.,Indianapolis,IN)。糖尿病の脂肪過多のZuckerラットは、網膜毛細血管の基底膜肥厚、周細胞の損失、毛細血管の細胞過多、および内皮細胞間接合の増加を含む微小血管網膜症を発症する(Danisら、Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.34:2367−2371(1993);およびDossoら、Diabetologia 33:137−144(1990))。糖尿病の脂肪過多のZuckerラットにおいて起こることが知られている微小血管の変化は、VEGFおよび血小板由来成長因子(PDGF)のレベルの上昇、ならびにPTK経路、特にホスファチジルイノシトール−3−キナーゼ(PI3−K)およびミトゲン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)を含む経路の活性化に関連する。同腹仔の各対は、6ヶ月齢〜7ヶ月齢であった。ラットには、Purina5008ラット食の食餌を与えた。この動物を、Use of Animals in Ophthalmic and Vision Researchについて、The Association for Research in Vision and Ophthalmology(ARVO) Statementに従って処置した。平均血中グルコース値は、死亡時にグルコースオキシダーゼアッセイによって測定して、糖尿病の脂肪過多のZuckerラットについて500mg/dlよりも大きく、コントロールの脂肪の少ないラットについて120mg/dlであった(Danisら(1993)、前出)。
【0052】
ケタミン(40mg/kg)およびキシラジン(4mg/kg)の腹腔内注射後、ゲニステイン(LC Laboratories,Woburn,MA)を10mg/mlの濃度でDMSOに溶解し、これを、50mg/kg体重の用量で、糖尿病の脂肪過多のZuckerラットおよび脂肪の少ないラット(非処置群)に腹腔内注射した。2時間後、注射を繰り返した。
【0053】
24時間後、心臓内ペントバルビタールの注射によって、動物を屠殺した。次いで、1mMのオルトバナジン酸ナトリウムをラットの眼に注射して、ホスファターゼ活性を阻害し、眼を摘出し、そして前上葉区を切除した。ピンセットを用いて硝子体を除去し、網膜を網膜色素性上皮/脈絡膜から剥離し、そして視神経から切断した。網膜組織を、125μlの氷冷溶解緩衝液(150mM NaCl、1% Triton X−100、0.5% デオキシコール酸ナトリウム、0.1% SDS、50mM Tris、100μg/ml フェニルメチルスルホニルフルオライド(PMSF)、0.3μg/ml EDTA、0.7μg/ml ぺプスタチンA、0.5μg/ml ロイペプチン、1mM オルトバナジン酸ナトリウム、および50μM フッ化ナトリウム)を有するチューブに置いた。網膜組織をガラスホモジナイザーで均質化し、次いで、等量の2X SDSサンプル緩衝液(160mM Tris−HCl、pH6.8、4% SDS、30% グリセロール、5Bβ−メルカプトエタノール(mcercaptoethanol)、10mM ジチオスレイトール、0.01% ブロモフェノールブルー)を加えた。網膜ホモジネートを、95℃で5分間煮沸し、そして13,000rpmで10分間遠心分離した。上澄みを集め、そして−80℃で保存した。これらの全部の網膜サンプルを、ゲル電気泳動およびウェスタン免疫ブロット分析のために使用した。
【0054】
タンパク質濃度を、Pierce BCA法によって測定した。合計のタンパク質プロフィールは、糖尿病の脂肪過多のZuckerラットの網膜が、脂肪の少ないコントロールと比較して、67kDaでより強く染色したバンドを有したことを明らかにした。ゲニステインでの処置は、糖尿病の脂肪過多のZuckerラットにおいて67kDaのバンドの染色の量を減少させた。合計のタンパク質プロフィールにおける他のバンドは、ゲニステインでの処置にかかわりなく、変化していないようであった。
【0055】
抗ホスホチロシン抗体(PY20;1:500希釈;Transduction Laboratories,Lexington,KY)、抗PCNA抗体(1:200希釈)、抗ミトゲン活性化タンパク質キナーゼ抗体(1:100希釈;Santa Cruz Biotechnology,Inc.,Santa Cruz,CA)、抗ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ抗体(1:500希釈;Upstate Biotechnology,Inc.,Lake Placid,NY)を、ウェスタン免疫ブロット分析の第1の抗体として使用した。西洋わさびぺルオキシダーゼ(HRP)結合ヤギ抗マウスIgG抗体または抗ウサギIgG抗体(Bio−Rad Laboratories,Inc.,Hercules,CA)を、第2の抗体として使用した。アビジン−HRP(Bio−Rad)を使用して、ビオチン化された分子マーカーを検出した。
【0056】
網膜組織サンプルを、免疫沈降緩衝液(1% Triton X−100、150mM NaCl、10mM Tris、pH7.4、1mM EGTA、0.2mM バナジン酸ナトリウム、0.2mM PMSF、0.5% NP−40)に加え、そして均質化した。8,000rpm、4℃で10分間の遠心分離後、上澄みを得た。タンパク質濃度を、Pierce BCA法によって測定した。次いで、20μgのアガロース結合ホスホチロシン抗体(PY20;Transduction Laboratories)を、各ミリグラムの網膜ホモジネートに加えた。網膜ホモジネートを、4℃で一晩振とうしながら、アガロース結合ホスホチロシン抗体とインキュベートした。遠心分離(8,000rpmで10分間)によってペレットを集め、そして細胞溶解緩衝液で3回リンスした。網膜ホモジネート1ミリグラムあたり150μlの1X SDSサンプル緩衝液中にペレットを再懸濁し、そして95℃で5分間煮沸した。これらの免疫沈降したサンプルを、ゲル電気泳動のために使用した。
【0057】
タンパク質の量が等量の網膜サンプルを、Bio−Rad Protean II装置を用いて、4〜20%勾配のミニゲル(Bio−Rad)上で、一定の200Vで35分間電気泳動した。ブロードレンジのビオチン化した(6.5〜200kDa)分子量タンパク質マーカーおよび予備染色した(18.5〜106kDa)分子量タンパク質マーカー(Bio−Rad)を、サンプルと同時に電気泳動にかけた。電気泳動後、クマシーブリリアントブルー染料での全タンパク質染色のため、またはウェスタン免疫ブロット分析のために、ゲルを処理した。
【0058】
ゲル電気泳動後、ゲルを45%メタノールと10%酢酸の水性溶液中に30分間固定した。次いで、それらを飽和ピクリン酸溶液に短時間含浸し、そして0.25%水性クマシーブリリアントブルー(R−250)で最低2時間染色した。ゲルを10%酢酸溶液中で脱染色した。この手順を3回繰り返した。
【0059】
ウェスタン免疫ブロット分析のために、トランスブロットSD装置(Bio−Rad)を用いて、ゲルをニトロセルロース膜(Coster Scientific Corp.Cambridge,MA)上に電気ブロットした。チロシンリン酸化タンパク質の検出のための膜を、室温で1時間、Tris緩衝化生理食塩水(TBS;20mM Trisおよび150Mm NaCl、pH7.5)中の3%ウシ血清アルブミンとインキュベートした。他のタンパク質の検出のための膜を、室温で1時間、TBS中の2%無脂ドライミルク(Bio−Rad)とインキュベートした。次いで、各膜を、4℃で一晩、第1の抗体溶液とインキュベートした。次いで、膜をTBSでリンスし、そして室温で2時間、HRP結合ラット抗マウスIgG(Jackson Immunoresearch Laboratories,Inc.,West Grove,PA)または抗ウサギIgG抗体(Bio−Rad;1:1,000希釈)およびアビジン−HRP(Bio−Rad;1:10,000希釈)とインキュベートした。0.2% Tween−20を含むTBSおよびTBSのみを用いた最終リンスシリーズの後、膜を、増強された化学ルミネセンス(ECL)免疫検出試薬(Amersham Life Science Inc.,Arlington Heights,IL)と反応させ、そしてX線フィルムに曝露した。各ウェスタン免疫ブロット分析を、少なくとも3回繰り返した。
【0060】
総合的に、糖尿病の網膜におけるチロシンリン酸化タンパク質は、脂肪の少ないコントロールと比較して、50、66、97および116kDaで増加した。ゲニステイン処置した糖尿病のラットは、非処置群と比較して、各分子量で染色の減少を示した。
【0061】
免疫沈降したチロシンリン酸化タンパク質のウェスタン免疫ブロット分析は、脂肪の少ないコントロールと比較して、糖尿病のラットにおいて、85kDaでPI3−Kのチロシンリン酸化の増加を示した。チロシンリン酸化PI3−K染色バンドは、ゲニステインでの処置後、特に糖尿病のラットにおいて減少した。
【0062】
44kDaでのチロシンリン酸化MAPKは、脂肪の少ないコントロールと比較して、糖尿病のラットにおいて増加した。PI3−Kと同様に、処置群におけるMAPKのレベルもまた、非処置動物群と比較して減少した。
【0063】
2対のラットを、網膜中のPCNAの免疫組織化学的分析のために使用した。ケタミンおよびキシラジンを用いた深い麻酔下で、4匹のラットを、1mMのオルトバナジン酸塩を含む0.1Mリン酸緩衝化生理食塩水(PBS;pH7.4)で心臓を通して(transcardially)灌流し、続いて固定のために0.1M PBS中の2%パラホルムアルデヒドで灌流した。次いで、眼を取り出し、同じ固定液中に30分間浸漬した。前上葉区を除去し、後上葉区を5%から15%までの段階的スクロース溶液に2時間移し、そして20%スクロース溶液中、4℃で一晩インキュベートした。凍結保護後、眼をO.C.T.化合物(Miles,Inc.,Elkhart,IN)中で成型し、そしてイソペンタン中、ドライアイスで凍結させた。後上葉区を8μmの切片に切断した。
【0064】
切片を3%過酸化物で処理して、内在するぺルオキシダーゼを遮断し、そして2%正常ウマ血清と20分間インキュベートした。0.1M PBS中で3回リンスした後、切片を、抗PCNA抗体(1:1,000希釈)と4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、切片を0.1M PBS中でリンスし、そしてビオチン化抗マウスIgG抗体(Vector Laboratories,Inc.,Burlingame,CA;1:500希釈)と室温で30分間インキュベートし、次いで過酸化物標識化ストレプトアビジン(Kirkegaad & Perry Laboratories,Inc.,Gaithersburg,MD;1:500希釈)とインキュベートした。スライドを3−アミノ−9−エチルカルバゾール(AEC)溶液(Sigma Chemical Co.,St.Louis,MO)で処理して、可視化した。各スライドセットを同時に試験し、3つの異なるセットを研究した。グリセリンゼリー(7%ゼラチン、54%グリセリン、0.7%フェノール)と共にマウントした後、Nomarski光学(Carl Zeiss,Thornwood,NY)を用いて顕微鏡写真を撮った。
【0065】
糖尿病の脂肪過多のZuckerラットの網膜において、36kDaでのPCNAのレベルは、脂肪の少ないラットと比較して増加した。ゲニステインは、非処置群と比較してこの増加を減少させたが、脂肪の少ないコントロールのレベルまでは低下させなかった。
【0066】
脂肪の少ないコントロールと比較した場合、神経線維ならびに内核層および外核層中の細胞の核における強い陽性免疫反応を、糖尿病の脂肪過多のZuckerラットにおいて観察した。しかし、ゲニステイン処置した糖尿病のラットにおいては、より少ない免疫陽性細胞を検出した。糖尿病のラットの網膜を、抗PCNA抗体の代わりに非免疫マウスIgGとインキュベートすると、免疫反応を示さなかった。
【0067】
上記の結果は、ゲニステインが、糖尿病のラットの網膜において、ホスホチロシンの増加したレベルを全体として減少させ、かつリン酸化PI3−K、MAPKおよびPCNAの増加したレベル(これは、細胞が、複製のための用意ができていることを示す)を減少させたことを示す。これらの結果は、ゲニステインが、視覚変化前の糖尿病の動物の網膜においてPTK経路の活性化を阻害することができ、その結果、糖尿病性網膜症を予防することができることを示唆する。
【0068】
(実施例2)
本実施例は、タンパク質チロシンキナーゼ経路のインヒビターの、眼炎症を予防的および治療的に処置する能力を示す。
【0069】
ヘルビマイシンA(HA)は、Streptomyces hygroscopicus株によって産生されるベンゼノイドアンサマイシン(ansamycin)抗生物質である。それは、チロシンキナーゼレセプターの触媒部分にしっかりと結合し、かつそれはタンパク質チロシンリン酸化の強力かつ特異的なインヒビターであり、タンパク質メッセンジャーのリン酸化および続く細胞の活性化を防止し、かつ細胞増殖を阻害する。
【0070】
実験室での動物のケアの原則(NIH刊行No.86−23、1985年改訂)に従った。全ての研究について、色素性ウサギ、体重2.5〜3kgを使用した。動物を、ケタミン(25mg/kg)とキシラジン(5mg/kg)とのカクテルを用いて麻酔し、瞳孔を局所1%トロピカミドおよび0.5%フェニレフリンを用いて拡張させた。
【0071】
SF6ガスの注入によって硝子体の液状化を行った。前眼房の穿刺(0.1ml)後、純粋なSF6ガス(0.3ml)を注入した。硝子体の液状化を最大にするために、30ゲージのニードルを下位に挿入した。本発明者らは、冷凍固定を行わず、ガス−液体交換も行わなかった。従って、関連する合併症を回避した。
【0072】
ウサギ真皮線維芽細胞を、無菌条件下で調製したウサギ臀部バイオプシー材料から得た。初期培養物を、空気中5%二酸化炭素の湿潤雰囲気下で72時間、30%ウシ胎児血清、抗生物質(ペニシリンGナトリウム、硫酸ストレプトマイシン)および抗真菌剤(アンホテリシンB)を有するダルベッコの改変イーグル培地(DMEM)中でインキュベートした。次いで、培地を、10%ウシ胎児血清、上記抗生物質および抗真菌剤を有するDMEMに替えた。培養物を1週間継代培養した。それらを3.5mlの0.04%トリプシンと4分間インキュベートし、停止培地中の細胞を集めることによって、細胞を採取した。分散した細胞を1,000rpmで5分間遠心分離し、そして1mlのリン酸緩衝化生理食塩水中に再懸濁させた。0.05mlのアリコートの細胞計数後、0.1mlのリン酸緩衝化生理食塩水中2.5×104細胞の最終濃度に達するように懸濁液を希釈した。
【0073】
SF6ガスの注入から14日後、顕微鏡制御下で、鼻上(superonasal)四半部における角膜強膜縁の後方3mmに30ゲージのニードルを挿入した。ニードルのべベルを上方に向けて、0.1mlの無菌リン酸緩衝化生理食塩水中に懸濁した2.5×104個の同一源のウサギ真皮線維芽細胞を、視神経の先端のちょうど前方に注入した。これを全てのウサギの両眼に行った。ウサギを即座に1時間あおむけにして、細胞を硝子体表面上に固定させた。
【0074】
群1では、HAの最終眼内濃度を約20μgとするために、線維芽細胞の注入から1時間後(予防的)、各ウサギ(n=18)の一方の眼に、0.1mlのリン酸緩衝化生理食塩水中の23μgのHAを注入した。コントロール眼として、各ウサギのもう片方の眼に、0.1mlのリン酸緩衝化生理食塩水を注入した。群2では、線維芽細胞の注入から2日後(治療的)、各ウサギ(n=10)の一方の眼に、0.1mlのリン酸緩衝化生理食塩水中の23μgのHAを注入し、他方、もう片方の眼に、0.1mlのリン酸緩衝化生理食塩水を注入し、コントロールとした。群3では、線維芽細胞の注入から1時間後および再び2日後、各ウサギ(n=9)の一方の眼に、11.5μgのHA(眼中10μg)を注入し、他方、もう片方の眼に、0.1mlのリン酸緩衝化生理食塩水を注入した。
【0075】
線維芽細胞注入から3日後、各眼を間接検眼鏡検査によって試験し、眼底写真を撮った。硝子体腔の曇りによって判定される炎症は、眼底写真によって軽いまたは重いに類別した。重い炎症は、写真において、視神経先端付近の延髄翼の有髄の「刷子縁」の可視化を妨害するのに十分な曇りを生じた。
【0076】
線維芽細胞注入から3日後、炎症の重篤度(硝子体の曇りによって判定した)は、コントロール眼と処置眼との間で有意に異なっていた。群1では、重い炎症は、コントロール眼では47.1%に対し、処置眼では0%(p<0.01)存在した。群3では、重い炎症は、コントロール眼では77.8%に対し、処置眼では22.2%(p<0.05)存在した。群2では、重い炎症は、コントロール眼では50%に対し、処置眼では10%(p>0.05)存在した。
【0077】
要約すると、炎症の指標である硝子体の曇りは、HAで処置した眼では減少した。本実施例は、タンパク質チロシンキナーゼ経路のインヒビターの、眼炎症を予防的および治療的に処置する能力を示す。
【0078】
特許、特許出願、文献刊行物などを含む、本明細書で引用した全ての参考文献は、それらの全体を本明細書中で参考として援用する。
【0079】
本発明を好ましい実施態様を強調して記載したが、好ましい化合物および方法のバリエーションを使用してもよいこと、および本明細書に明確に記載されているのとは別の方法で本発明を実施してもよいことが意図されることは、当業者には明らかである。従って、本発明は、上記請求の範囲によって規定される本発明の精神および範囲内に含まれる全ての変更を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖尿病性網膜症の動物を予防的または治療的に処置する方法であって、該糖尿病性網膜症の動物を予防的または治療的に処置するのに十分な量のタンパク質チロシンキナーゼ経路のインヒビターを、該動物へ投与することを含む、方法。
【請求項2】
眼炎症の動物を予防的または治療的に処置する方法であって、該眼炎症の動物を予防的または治療的に処置するのに十分な量のタンパク質チロシンキナーゼ経路のインヒビターを、該動物へ投与することを含む、方法。
【請求項3】
タンパク質チロシンキナーゼ経路のインヒビターが、式
【化1】

〔ここでV、WおよびXは、ヒドロ、アルコキシ、ヒドロキシル、ハロ、エステル、エーテル、カルボン酸基、カルボン酸基の薬学的に許容し得る塩、および−SR(ここでRは水素またはアルキル基である)からなる群より選択され、Yは、酸素、硫黄、C(OH)、およびC=Oからなる群より選択され、Zは、ヒドロおよびC(O)OR1(ここでR1はアルキルである)からなる群より選択される。〕の化合物、あるいはそのタンパク質チロシンキナーゼを阻害するプロドラッグまたは薬学的に許容し得る塩である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ハロ基が、フッ素、塩素および臭素からなる群より選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
エステルがC1−C6エステルである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
エーテルがC1−C6エーテルである、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
カルボン酸基の薬学的に許容し得る塩がナトリウム塩またはカリウム塩である、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
アルキル基がC1−C6アルキル基であり、アルコキシ基がC1−C6アルコキシ基である、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
タンパク質チロシンキナーゼ経路のインヒビターがゲニステインである、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
ゲニステインが全身投与される、請求項1および3〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
ゲニステインが約1mg/kg/日〜約100mg/kg/日の量で投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ゲニステインが約15mg/kg/日〜約50mg/kg/日の量で投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ゲニステインが経口または注射によって投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
ゲニステインが糖尿病前症性網膜症期に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
ゲニステインが非増殖性糖尿病性網膜症期に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
ゲニステインの投与が糖尿病性黄斑浮腫を予防する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ゲニステインの投与が糖尿病性黄斑浮腫を処置する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
ゲニステインが増殖性糖尿病期に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
増殖性糖尿病期の間の新血管形成の間に発生した瘢痕組織を眼から外科的に除去する前、その間またはその後に、ゲニステインが投与される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
眼炎症が疾患由来のものである、請求項2〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
眼炎症が細菌感染またはウイルス感染由来のものである、請求項2〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
眼炎症が眼手術由来のものである、請求項2〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
眼手術が、白内障手術、網膜手術、屈折矯正手術、または角膜手術である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
角膜手術が角膜移植である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
角膜移植が角膜移植片拒絶反応を生じる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
眼炎症が非糖尿病性黄斑浮腫である、請求項2〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
ゲニステインが、局所的、結膜下、眼球後方、眼周辺、網膜下、脈絡膜上または眼内に投与される、請求項1〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
ゲニステインが、合計約0.1mg〜合計約5mgの量で眼内投与される、請求項3〜9および20〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
ゲニステインが、合計約0.5mg〜合計約1mgの量で眼内投与される、請求項28に記載の方法。

【公開番号】特開2010−168389(P2010−168389A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−47645(P2010−47645)
【出願日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【分割の表示】特願2000−535335(P2000−535335)の分割
【原出願日】平成11年3月12日(1999.3.12)
【出願人】(500361342)ジョンズ ホプキンズ ユニヴァーシティ スクール オヴ メディシン (3)
【Fターム(参考)】