説明

糖尿病治療剤の経口投与用徐放性複合製剤及びその製造方法

a)活性成分としてメトホルミンまたは薬学的に許容可能なその塩、及びポリエチレンオキシドと天然ガムとからなる徐放化担体を含む徐放部;及びb)前記徐放部の表面にコーティングされている、活性成分としてスルホニル尿素系の糖尿病治療剤を含む速放部を含む本発明の経口投与用徐放性複合製剤は、糖尿病の治療に有用である、何故ならそれは有効濃度の薬剤を一定のレベル維持できるからである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2種の糖尿病治療剤の経口投与用徐放性複合製剤及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
メトホルミンは、肝臓でグルコース受容体を活性化させることによって患者の高い血糖レベルの調節のために考案された経口用薬剤である。メトホルミンは、糖尿病患者の体重減少を誘導し、血中の中性脂肪と低比重リポタンパク質(LDL)の減少及び高比重リポタンパク質(HDL)の増加効果を奏するため、インスリン非依存性糖尿病(non-insulin-dependent diabetes mellitus、NIDDM)患者の一次薬剤として用いることができる。
【0003】
現在、メトホルミンはその塩酸塩の錠剤形態であるグルコファージ(登録商標)(GLUCOPHAGE(登録商標)、ブリストル・マイヤーズ スクイブ(Bristol−Myers Squibb)社製)として市販されており、その一日の服用量は、効能及び耐性の両方を考慮して一日当り2,550mgの最大勧奨投与量を超えない範囲内で個別的に決められる。メトホルミンの副作用は、食欲減退、腹部膨満感、吐き気、下痢などがあり、たまには、肌発疹とじんましんなどを誘発することもある。このような副作用は、最少量及び/または維持量を減少させるか、或いは、徐放性製剤を投与することによって解決できる。
【0004】
グリメピリドは、経口投与用スルホニル尿素の一つであって、食事療法、運動療法、体重減量などでは改善できないインスリン非依存性糖尿病患者のための治療剤として用いられており、その錠剤は、アマリール(登録商標)(AMARYL(登録商標)、アベンティスファーマ(Aventis Pharmaceuticals)社製)として市販されている。
【0005】
グリメピリドを含むスルホニル尿素系の薬物は、主にβ細胞に作用してインスリン分泌を促進させ、長期服用時には血糖値降下の効果をもたらすと知られている。
米国特許第6,031,004号は、インスリン非依存性糖尿病治療のための新規のメトホルミン塩と共に錠剤化されたグリブリド(glyburide)、グリピザイド(glipizide)またはグリメピリドのようなスルホニル尿素系の誘導体を含む治療剤を開示しており;国際特許公開第WO 00/03742号は、(a)メトホルミンとグリベンクラミド(glibenclamide)の混合物の湿式顆粒化により顆粒を形成し、(b)錠剤補助剤及び希釈剤とともに顆粒を混合した後、(c)混合物を錠剤化し、(d)前記錠剤を親水性セルロース高分子でコーティングする段階を含む、複合製剤の製造方法を開示している。しかし、このような複合製剤は満足できない放出挙動を示すという問題点を有する。
【0006】
一方、米国特許第6,682,759号は、(a)ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリエチレンオキシドを用いて塩酸メトホルミンを徐放性錠剤化し、(b)安定化剤を添加せずにヒドロキシプロピルメチルセルロースに分散させたグリメピリドを前記錠剤に噴霧する段階を含む複合製剤の製造方法を開示している。しかし、この複合製剤は、メトホルミンのシアノグアニジン(cyanoguanidine)誘導体とグリメピリドのスルホンアミド(sulfonamide)誘導体のような薬物の誘導体形成により薬物の有効濃度が減少するという問題がある。
従って、長期間に亘って均一に薬物が放出されて薬物の効力が持続的に維持できる、糖尿病複合治療剤の改善された経口投与用徐放性製剤の開発が求められている。
【特許文献1】米国特許第6,031,004号
【特許文献2】国際特許公開第 WO00/03742号
【特許文献3】米国特許第6,682,759号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は長期間に亘って均一な放出速度を維持し、且つ製造方法が簡易なメトホルミンとスルホニル尿素系の糖尿病治療剤との経口投与用徐放性複合製剤及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために本発明は、a)活性成分としてメトホルミン、または薬学的に許容可能なその塩及びポリエチレンオキシドと天然ガムとからなる徐放化担体を含む徐放部;及びb)前記徐放部の表面にコーティングされている、活性成分としてスルホニル尿素系の糖尿病治療剤を含む速放部を含む経口投与用徐放性複合製剤を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明による徐放性複合製剤は、経口投与時に安定化剤を含む速放部のスルホニル尿素系の糖尿病治療に対する迅速な薬物放出と共に、徐放部にポリエチレンオキシドと天然ガムとを徐放化担体として用いることによって、活性成分であるメトホルミンを長期間に亘って均一且つ持続的な薬効を示すように放出できるため薬学的に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の経口投与用徐放性複合製剤は、a)活性成分としてメトホルミンまたは薬学的に許容可能なその塩、及びポリエチレンオキシドと天然ガムとからなる徐放化担体を含む徐放部;及びb)前記徐放部の表面にコーティングされている、活性成分としてスルホニル尿素系の糖尿病治療剤を含む速放部を含む。
【0011】
以下、本発明による製剤の各構成成分について詳細に説明する。
【0012】
1.徐放部
本発明の製剤の徐放部は、徐放部の活性成分、徐放化担体、薬学的に許容可能な添加剤及び放出調節剤を含み、製剤の総重量に対して85〜99.5重量%の量で用いられ得る。
【0013】
(1)徐放部の活性成分
徐放部の活性成分は、インスリン非依存性糖尿病治療に用いられるメトホルミンまたはその塩化物、コハク酸エステル、またはフマル酸エステルのような薬学的に許容可能な塩が用いられ得る。
【0014】
(2)徐放化担体
本発明の徐放化担体としては、ポリエチレンオキシドと天然ガムとの複合混合物が挙げられる。この中、ポリエチレンオキシドは平均分子量が100,000〜7,000,000であるか、或いは分子量の異なる二種以上のポリエチレンオキシドを混合して用いることができる。
また、天然ガムとしてはキサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム及びこれらの混合物を用いることができる。
本発明による徐放部の活性成分:徐放化担体の重量比は1:0.01〜1:1、好ましくは、1:0.1〜1:0.95である。また、ポリエチレンオキシド:天然ガムの重量比は1:0.1〜1:10、好ましくは1:0.5〜1:5である。
【0015】
(3)薬学的に許容可能な添加剤
本発明の徐放部は薬学的に許容可能な添加剤をさらに含むことができ、前記添加剤は、中性の希釈担体のような経口用固形製剤に用いられ得る薬学的担体、結合剤、潤滑剤またはこれらの混合物を含む。
前記中性の希釈担体としては、ラクトース、デキストリン、澱粉、微細結晶性セルロース、リン酸二水素カリウム、炭酸カルシウム、サッカリドまたは二酸化ケイ素などが挙げられる。
本発明の結合剤としては、ポリビニルピロリドンまたはゼラチンが挙げられる。
本発明の潤滑剤としては、ステアリン酸の亜鉛またはマグネシウム塩などが挙げられる。
本発明による徐放部の活性成分:各薬学的に許容可能な添加剤の重量比は1:0.0005〜1:0.3、好ましくは、1:0.001〜1:0.1である。
【0016】
(4)放出調節剤
本発明の徐放性複合製剤には活性成分の放出パターンを精密に調節するために、徐放化担体が生体内でゲル物性を現すようにするための補助的な役割をするワックス及びポリ酢酸ビニル/ポリビニルピロリドンの混合剤などの選択的放出調節剤が任意の成分としてさらに用いられる。
本発明による徐放部の活性成分:放出調節剤の重量比は、1:0〜1:0.9であることが好ましく、前記放出調節剤は製剤の総重量に対して0.001〜0.1重量%の量で用いられることが好ましい。
【0017】
2.内被部(内部分離層)
徐放部及び速放部の活性成分同士の相互作用を阻止して速放部の活性成分の速やかな放出率を維持するために、本発明の徐放性複合製剤は、徐放部の表面にコーティングされた内部分離層として製剤の総重量に対して0.5〜5重量%の量の内被部をさらに含むことができる。
本発明の内被部に用いられ得る成膜物質(被膜剤及び/またはコーティング剤)としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリメタクリル酸、ポリエチレングリコール、タルク、二酸化チタン及びこれらの混合物が挙げられ、その他にも経口用固形製剤の剤形化において薬学分野で通常的に用いられる添加剤であれば、いずれでもよい。
【0018】
3.速放部
本発明の製剤において、速放部は前述の徐放部の表面にコーティングされるか、内被部をさらに含む場合には内被部の表面にコーティングされ、この速放部は、活性成分、安定化剤、及び成膜物質を含むことができ、製剤の総重量に対して0.5〜15重量%の量で用いられ得る。
【0019】
(1)速放部の活性成分
速放部の活性成分としては、グリメピリド、グリブリド、グリピザイド及びグリクラジドなどのスルホニル尿素系の糖尿病治療剤が挙げられる。
【0020】
(2)安定化剤
本発明の速放部は、活性成分の安全性向上のために安定化剤をさらに含むことができ、この安定化剤としては、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン及びトコフェロールのような抗酸化剤;水酸化ナトリウム及びアンモニアのような無機アルカリ化剤;メグルミン(N−methylglucamine)、エタノールアミン及びプロパノールアミンのような有機アルカリ化剤;またはアルギニン、リジン及びヒスチジンのような塩基性アミノ酸などが挙げられる。その他にも経口用固形製剤の剤形化において薬学分野で通常的に用いられる添加剤であれば、いずれでもよい。本発明による速放出性活性成分:安定化剤の重量比は1:0.01〜1:1、好ましくは1:0.1〜1:0.5である。
【0021】
(3)成膜物質
本発明の製剤で用いられる速放部の成膜物質としては、前記内被部の成膜物質と同一の物質を用いることができ、速放出性活性成分:成膜物質の重量比は1:5〜1:50、好ましくは1:10〜1:30である。
【0022】
4.外被部
外部の影響から本発明の複合製剤を保護するために、本発明の製剤は外被部であるフィルムコーティング層をさらに含むことができる。
外被部に用いられ得る成膜物質(フィルム形成化剤及び/または被覆剤)としては、前記内被部で用いられるものと同一の物質を用いることができ、製剤の総重量に対して0.5〜5重量%の量で用いられ得る。
【0023】
本発明の経口投与用徐放性複合製剤は、下記段階を含む方法により製造することができる。
1)メトホルミンまたはその薬学的に許容可能な塩と第1の親水性徐放化担体とを混合して顆粒化する段階;
2)前記段階1)で得た顆粒に第1の親水性担体と同種または異種の第2の親水性担体とを混合する段階;
3)前記段階2)で得た混合物に薬学的に許容可能な添加剤を添加して徐放部を製造する段階;
4)最終的に得られる徐放性製剤の活性成分同士の相互作用を阻止するために前記段階3)で製造された徐放部をコーティングする段階;及び
5)前記段階4)から得たコーティング済みの徐放性製剤をスルホニル尿素系の糖尿病治療剤でコーティングする段階を含む方法。
前記方法は、外被部のコーティング段階をさらに含むことができる。
【実施例】
【0024】
次に、本発明を実施例により詳細に説明する。但し、下記実施例は本発明を例示するだけであり、本発明がこれらに限定されるのではない。
【0025】
I.メトホルミンの徐放性錠剤の製造
実施例1
30メッシュを通したメトホルミン・HCl(ファイル薬品社(Hwail Pharm.Co.,Ltd)製、韓国)500g、ポリエチレンオキシド(ポリオックス(登録商標)(Polyox(登録商標))WSR凝集体、分子量5,000,000、ユニオンカーバイド(Union Carbide)社製)80g及びキサンタンガム(Cpkelco社製)100gを混合して高速混合機(SPG−2、フジパウダル(Fujipaudal)社製)に導入した後、ポリビニルピロリドン(コリドン(登録商標)(Kollidon(登録商標))K−90、BASF社製)20gを前記蒸溜水に溶解したバインダー溶液を加えて100〜1000rpmで3分間混合して顆粒を形成した。生成した顆粒を乾燥させた後、30メッシュで通し、これにポリ酢酸ビニル /ポリビニルピロリドン混合剤(コリドン(登録商標)(Kollidon(登録商標))SR、BASF社製)200g、ワックス(コンプリトル(登録商標)(Compritol(登録商標))888ATO、ガットフォッセ(Gattefosse)社製)80g及び二酸化ケイ素10gを加えて30分間混合した。最後にステアリン酸マグネシウム粉末10gを前記混合物に加えて3分間混合した後に圧縮し、表1に示すような組成を有する錠剤を製造した。
【表1】

【0026】
実施例2〜5
混合部にキサンタンガム(Cpkelco社製)を用いることと、分子量が異なるポリエチレンオキシドを用いることを除いては、実施例1と同様な方法で、それぞれ表2〜5に示す組成を有する錠剤を製造した。また、これらの実施例では顆粒形成部にポリビニルピロリドン結合剤を使用しなかった。
【表2】

【表3】

【表4】

【表5】

【0027】
実施例6
顆粒形成時に結合剤であるポリビニルピロリドン(コリドン(登録商標)K−90、BASF社製)を用いないことを除いては、前記実施例1と同様な方法で、表6に示す組成を有する錠剤を製造した。
【表6】

【0028】
実施例7
顆粒形成時に蒸溜水の代わりにイソプロピルアルコールを用いることを除いては、前記実施例1と同様な方法で、表7に示す組成を有する錠剤を製造した。
【表7】

【0029】
実施例8〜10
顆粒形成時に蒸溜水の代わりに蒸溜水/イソプロピルアルコールの混合物(1:1(v/v))を用いることを除いては、前記実施例1と同様な方法で、表8〜10に示す組成を有する錠剤を製造した。
【表8】

【表9】

【表10】

【0030】
実施例11
顆粒形成時に適量の蒸溜水/イソプロピルアルコールの混合物(1/1((v/v))を用いることと、混合部にキサンタンガム(Cpkelco社製)及びローカストビーンガム(Sigma社製、米国)を用いることを除いては、前記実施例1と同様な方法で、表11に示す組成を有する錠剤を製造した。
【表11】

【0031】
実施例12
顆粒形成時に適量の蒸溜水/イソプロピルアルコールの混合物(1:1(v/v))を用いることと、混合部にキサンタンガム(Cpkelco社製)及びローカストビーンガム(Sigma社製、米国)を用いると共に、ポリ酢酸ビニル/ポリビニルピロリドン混合剤(コリドン(登録商標)SR、BASF社製)を用いないことを除いては、前記実施例1と同様な方法で表12に示す組成を有する錠剤を製造した。
【表12】

【0032】
II.メトホルミンとグリメピリドとの複合製剤の製造
実施例13
前記実施例12で製造したメトホルミンの徐放性錠剤を下記の段階を経てコーティングした。
(1)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC2910、信越化学工業社製、日本)20gを適量のエタノール/塩化メチレン混合物(7/3(v/v))に溶解した後、ポリエチレングリコール6000(三洋化成工業(Sanyo chemical Inc)社製、日本)2.7gを添加し、攪拌して完全に溶解させた溶液を200メッシュに通した後、実施例12で製造したメトホルミンの徐放性錠剤に噴射してメトホルミン徐放性錠剤を含む徐放部を形成した。
(2)グリメピリド(シプラ(Cipla)社製)2.0gを適量のエタノール/塩化メチレン混合物(7/3(v/v))に溶解させた後、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC2910、信越化学工業社製、日本)30gを添加し、溶けるまで攪拌した。メグルミン(N−methylglucamine、Sigma社製、米国)0.5g及びポリエチレングリコール6000(三洋化成工業(Sanyo chemical Inc.)社製、日本)4.0gを前記の溶液に加えて完全に溶解させた溶液を200メッシュに通した後、メトホルミンを含む徐放部に噴射して、グリメピリドを含む膜を形成した。
(3)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC2910、信越化学工業社製、日本)20gを適量のエタノール/塩化メチレン混合物(7/3(v/v))に溶解した後、二酸化チタン(クロノス(Kronos International)社製、米国)2.4gを添加して均質粉砕機で粉砕し、ポリエチレングリコール6000(三洋化成工業(Sanyo chemical Inc.)社製、米国)2.7gを添加して完全に溶解した溶液を200メッシュに通した後、前記のグリメピリド膜がコーティングされたメトホルミンの徐放性錠剤に噴射して、表13に示す組成を有する複合製剤を製造した。
【表13】

【0033】
実施例14
速放部の安定化剤としてメグルミンの代りにブチルヒドロキシアニソール0.5gを用いたことを除いては、前記実施例13と同様な方法で表14に示す組成を有する複合製剤を製造した。
【表14】

【0034】
実施例15
速放部の安定化剤としてメグルミンの代りにトコフェロール(ロッシュ(Roche)社製、スイス)0.5gを用いたことを除いては、前記実施例13と同様な方法で、表15に示す組成を有する複合製剤を製造した。
【表15】

【0035】
比較例1
安定化剤であるメグルミンを用いないことを除いては、実施例13と同様な方法で、実施例12で製造したメトホルミンの徐放性錠剤をフィルムコーティングして表16に示す組成を有する複合製剤を製造した。
【表16】

【0036】
試験例1
生体外溶出試験1
徐放化担体であるポリエチレンオキシドと天然ガムが放出速度にどのような影響を及ぼすかを測定するために、前記実施例1〜12で製造された徐放性錠剤と対照製剤であるグルコファージ(登録商標)XR徐放錠(ブリストル・マイヤーズ スクイブ(Bristol−Myers Squibb Company)社製)を用いて大韓薬典に記載の溶出試験法(パドル法)に従って次のような条件下で生体外溶出試験を行い、各徐放性錠剤からのメトホルミン・HClの放出パターンを次の条件下で測定した。
【0037】
溶出試験装置:Erweka DT 80(Erweka社製、ドイツ)
溶出液:大韓薬典に記載の崩壊試験法第2液(人工膓液)
溶出液の温度:37℃±0.5℃
溶出液量:900ml
回転速度:50rpm
サンプル採取時間:1、2、3、4、6、8及び10時間毎に溶出溶液を採取して0.45μmメンブレインフィルターで濾過した後に検液として用いた。溶出液を採取した後、溶出試験装置に新しい溶出液を同量補充した。
分析方法:検液及び常用標準液をもって233nmで蒸溜水を対照し、それぞれの吸光度を測定して溶出率を求めた。
放出量計算:累積放出量(Cummulative release amount)で計算した。
【0038】
その結果、図2〜4に示すように、徐放化担体としてのポリエチレンオキシドまたは天然ガムの使用量が増加するほど溶出速度が遅くなり、特に実施例12の錠剤は対照製剤と類似した放出パターンで薬物を持続的に放出した。
【0039】
試験例2
生体外溶出試験2
実施例13で得られた徐放性錠剤のフィルムコーティングが、薬物の溶出速度にどのような影響を及ぼすかを比較するために、前記実施例12の徐放性製剤、実施例13の複合製剤及び対照製剤としてグルコファージ(登録商標)XR徐放錠を用いたことを除いては、試験例1と同様な方法で生体外溶出試験を行った。
その結果、図5に示すように、実施例13による徐放性複合製剤は実施例12の複合製剤及び対照製剤と同様に持続的な薬物放出を示した。
【0040】
試験例3
生体外溶出試験3
徐放性複合製剤におけるグリメピリドのコーティングが溶出速度にどのような影響を及ぼすかを比較するため、前記実施例13で製造された徐放性複合製剤と対照製剤であるアマリール(登録商標)錠(アベンティスファーマ(Aventis Pharmaceuticals Inc.)社製)を用いて大韓薬典に記載の溶出試験法(パドル法)に従って生体外溶出試験を行い、各製剤から活性成分であるグリメピリドの放出パターンを次のような条件下で測定した。
【0041】
溶出試験装置:Erweka DT 80(Erweka社製、ドイツ)
溶出液:リン酸塩緩衝液(pH7.8)
溶出液の温度:37℃±0.5℃
溶出液量:900ml
回転速度:75rpm
サンプル採取時間:5、10、15及び30分毎に溶出溶液を採取して0.45μmメンブレインフィルターで濾過した後に検液として用いた。溶出液を採取した後は、溶出試験装置に新しい溶出液を同量補充した。
分析方法:大韓薬典の一般試験法のうち、液体クロマトグラフィー法により次のような条件下で検液及び常用標準液の溶出率を求めた。
−カラム:オクタデシルシリル化カラム
−移動相:リン酸二水素ナトリウム:アセトニトリル:水(0.5g:500ml:500ml)を混合した後に20体積%のリン酸で混合物のpHを2.5〜3.5に調節する。
−検出器:紫外分光光度計(測定波長:228nm)
−注入量:50μl
−流速:0.5ml/min
放出量計算:累積放出量で計算した。
その結果、図6に示すように、実施例13の錠剤からグリメピリドは対照製剤であるアマリール(登録商標)錠と同様の溶出率を表した。
【0042】
試験例4
生体外溶出試験4
回転速度を100rpm及び150rpmに変化させることを除いては、試験例1と同様な方法で、前記実施例12で製造された錠剤及び対照製剤に対して生体外溶出試験を行った。
その結果、図7及び図8に示すように、実施例12の錠剤は高い回転速度でも初期溶出における薬物の急激な放出を起こさず、安定した放出パターンを示した。
【0043】
試験例5
安定性試験
グリメピリドのpH変化による溶液中の安定性を確認するために、実施例13の製剤のグリメピリド速放部の部分のみを分離して表17に示す溶液を加えて溶解し、常温に放置した後に所定時間毎にその含量を求めた。
【表17】

その結果、図9に示すように、アルカリ性化合物であるメグルミンが含まれた溶液におけるグリメピリドのK値が最も低いため、最も安定的であることが分かった。
【0044】
試験例6
安定性試験(加速試験(40℃、75%相対湿度))
有機アルカリ化剤であるメグルミンがグリメピリドの安定性に及ぼす影響を調べるために、前記実施例13と比較例1の徐放性複合製剤で安定性試験を行い、その結果を表18に示す。
【表18】

【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明による徐放性複合製剤の構成成分を示した模式図である。
【図2】本発明による実施例1〜4で製造された徐放性錠剤とメトホルミン含有の対照製剤(グルコファージ(登録商標)(GLUCOPHAGE(登録商標))XR徐放錠、(ブリストル・マイヤーズ スクイブ(Bristol−Myers Squibb Company)社製)の溶出試験結果を示したグラフである。
【図3】本発明による実施例5〜8で製造された徐放性錠剤と対照製剤(グルコファージ(登録商標)XR徐放錠)の生体外溶出試験結果を示したグラフである。
【図4】本発明による実施例9〜12で製造された徐放性錠剤と対照製剤(グルコファージ(登録商標)XR徐放錠)の生体外溶出試験結果を示したグラフである。
【図5】本発明による実施例12で製造された徐放性錠剤、実施例13で製造された徐放性複合製剤及び対照製剤(グルコファージ(登録商標)XR徐放錠)の生体外溶出試験結果を示したグラフである。
【図6】本発明による実施例13で製造された徐放性複合製剤とグリメピリド含有対照製剤(アマリール(登録商標)(AMARYL(登録商標))錠、アベンティスファーマ(Aventis Pharmaceuticals Inc.)社製)の溶出試験結果を示したグラフである。
【図7】本発明による実施例12で製造された徐放性錠剤の溶出口内の回転速度による溶出試験結果を示したグラフである。
【図8】対照製剤(グルコファージ(登録商標)XR徐放錠)の溶出口内の回転速度による溶出試験結果を示したグラフである。
【図9】溶液のpH変化によるグリメピリドの安定性を示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)活性成分としてメトホルミンまたは薬学的に許容可能なその塩、及びポリエチレンオキシドと天然ガムとからなる徐放化担体を含む徐放部;及びb)前記徐放部の表面にコーティングされている、活性成分としてスルホニル尿素系の糖尿病治療剤を含む、速放部を含む経口投与用徐放性複合製剤。
【請求項2】
製剤の総重量を基準に前記徐放部が85〜99.5重量%の量で、速放部が0.5〜15重量%の量で含まれることを特徴とする、請求項1に記載の徐放性複合製剤。
【請求項3】
薬理学的活性成分同士の相互作用を阻止するために前記徐放部の表面にコーティングされた内被部をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の徐放性複合製剤。
【請求項4】
製剤の総重量を基準に前記内被部が0.5〜5重量%の量で含まれることを特徴とする、請求項3に記載の徐放性複合製剤。
【請求項5】
前記速放部が安定化剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の徐放性複合製剤。
【請求項6】
前記徐放性複合製剤を外部の影響から保護するための外被部をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の徐放性複合製剤。
【請求項7】
製剤の総重量を基準に前記外被部が0.5〜5重量%の量で含まれることを特徴とする、請求項6に記載の徐放性複合製剤。
【請求項8】
前記メトホルミンの薬学的に許容可能な塩がメトホルミン塩酸塩、メトホルミンコハク酸エステルまたはメトホルミンフマル酸エステルであることを特徴とする、請求項1に記載の徐放性複合製剤。
【請求項9】
前記ポリエチレンオキシドの平均分子量が100,000〜7,000,000であることを特徴とする、請求項1に記載の徐放性複合製剤。
【請求項10】
前記天然ガムがキサンタンガム、ローカストビーンガム、グアーガム及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の徐放性複合製剤。
【請求項11】
前記メトホルミン:徐放化担体の重量比が1:0.01〜1:1であることを特徴とする、請求項1に記載の徐放性複合製剤。
【請求項12】
前記徐放部が薬学的に許容可能な添加剤及び放出調節剤をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の徐放性複合製剤。
【請求項13】
前記薬学的に許容可能な添加剤が中性の希釈担体、結合剤、潤滑剤またはこれらの混合物であることを特徴とする、請求項12に記載の徐放性複合製剤。
【請求項14】
前記放出調節剤がワックスまたはポリ酢酸ビニル/ポリビニルピロリドン混合剤であることを特徴とする、請求項12に記載の徐放性複合製剤。
【請求項15】
前記内被部の形成物質が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリメタクリル酸、ポリエチレングリコール、タルク、二酸化チタン及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする請求項3に記載の徐放性複合製剤。
【請求項16】
前記スルホニル尿素系の糖尿病治療剤がグリメピリド、グリブリド、グリピザイド及びグリクラジドからなる群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の徐放性複合製剤。
【請求項17】
前記安定化剤が抗酸化剤、無機アルカリ化剤、有機アルカリ化剤及び塩基性アミノ酸からなる群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の徐放性複合製剤。
【請求項18】
前記スルホニル尿素系の糖尿病治療剤:安定化剤の重量比が1:0.01〜1:1であることを特徴とする、請求項5に記載の徐放性複合製剤。
【請求項19】
前記外被部の形成物質が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ポリメタクリル酸、ポリエチレングリコール、タルク、二酸化チタン及びこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の徐放性複合製剤。
【請求項20】
1)メトホルミンまたはその薬学的に許容可能な塩と第1の親水性徐放化担体を混合して、顆粒化する段階;
2)前記段階1)で得た顆粒に第1の親水性担体と同種或いは異種の第2の親水性担体を混合する段階;
3)前記段階2)で得た混合物に薬学的に許容可能な添加剤を添加して徐放部を製造する段階;
4)最終的に得られる徐放性製剤の活性成分同士の相互作用を阻止するために前記段階3)で製造された徐放部をコーティングする段階;及び
5)前記段階4)で得たコーティング済みの徐放性製剤をスルホニル尿素系の糖尿病治療剤でコーティングする段階を含む、徐放性複合製剤の製造方法。
【請求項21】
前記徐放性複合製剤を外部の影響から保護するために外被部をコーティングする段階をさらに含むことを特徴とする、請求項20に記載の徐放性複合製剤の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−526733(P2008−526733A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−549261(P2007−549261)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【国際出願番号】PCT/KR2005/004609
【国際公開番号】WO2006/071078
【国際公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願人】(599139534)ハンミ ファーム. シーオー., エルティーディー. (56)
【Fターム(参考)】