説明

糖尿病治療薬のスクリーニング方法

【課題】 PDK4に対する特異的な阻害活性の有無を指標にし、当該活性を有する物質を選択するという、PDK4の機能の解明に基づく新規な糖尿病治療薬のスクリーニング方法を提供すること。
【解決手段】 本発明の糖尿病治療薬のスクリーニング方法は、PDK4に対する特異的な阻害活性の有無を指標にし、当該活性を有する物質を選択することを特徴とするものであり、具体的な方法としては、PDK4に対する阻害活性を有し、PDK1、PDK2、PDK3に対する阻害活性を有しない物質を選択する方法が挙げられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糖尿病治療薬のスクリーニング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、持続的高血糖状態を伴う疾患であり、多くの環境因子と遺伝的因子とが作用した結果に生じるとされている。体内における血糖の主要な調整因子はインスリンであり、高血糖は、インスリン欠乏、または、その作用を阻害する諸因子(例えば、遺伝的素因、運動不足、肥満、ストレスなど)が過剰となって生じる。糖尿病には主として2つの種類があり、自己免疫疾患などによる膵インスリン分泌機能の低下によって生じるインスリン依存性糖尿病(IDDM)と、持続的な高インスリン分泌に伴う膵疲弊による膵インスリン分泌機能の低下が原因であるインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)とに分類される。日本人の糖尿病患者の95%以上はNIDDMと言われており、今日、生活様式の変化に伴う患者数の増加が問題となっている。
【0003】
ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ(pyruvate dehydrogenase kinase:PDK)は、ピルビン酸をアセチルCoAに変換する酵素であるピルビン酸デヒドロゲナーゼ(pyruvate dehydrogenase:PDH)をリン酸化して不活性化する酵素であり、グルコースの代謝に関与していることから糖尿病とも関連していること、PDKには4種類のイソ酵素、PDK1〜PDK4が存在することが知られている(例えば下記の非特許文献1を参照)。PDKの機能によれば、この酵素を阻害することは糖尿病に有効に作用すると考えられるが、PDKの個々のイソ酵素の機能の解明は今だ必ずしも十分に行われていないことから、イソ酵素に対する特異的な阻害活性を有することが糖尿病にどのように有効に作用するかについては不明な部分も多い。
【非特許文献1】The Journal of Biological Chemistry, Vol.271, No.37, Issue of September 13, pp.22376-22382, 1996
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、PDK4の機能の解明に基づく新規な糖尿病治療薬のスクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の点に鑑みてなされた本発明の糖尿病治療薬のスクリーニング方法は、請求項1記載の通り、PDK4に対する特異的な阻害活性の有無を指標にし、当該活性を有する物質を選択することを特徴とする。
また、請求項2記載のスクリーニング方法は、請求項1記載のスクリーニング方法において、運動療法を代替する糖尿病治療薬のスクリーニング方法であることを特徴とする。
また、請求項3記載のスクリーニング方法は、請求項1または2記載のスクリーニング方法において、酵素としてPDK4、基質としてPDHまたはそのフラグメントを用い、標識ATPの存在下でPDK4による基質のリン酸化反応を行う際、評価対象物質を反応系内に添加して行った後、基質に結合した標識を指標にして評価対象物質のPDK4に対する阻害活性を判定する工程1、続いて工程1で用いたPDK4の代わりにPDK1、PDK2、PDK3のそれぞれを用いて工程1と同様の判定を行い、評価対象物質のそれぞれの酵素に対する阻害活性を判定する工程2を少なくとも含んでなる工程を経て、PDK4に対する阻害活性を有し、PDK1、PDK2、PDK3に対する阻害活性を有しない物質を選択することを特徴とする。
また、請求項4記載のスクリーニング方法は、請求項1または2記載のスクリーニング方法において、酵素としてPDK4、基質としてPDHまたはそのフラグメントを用い、ATPの存在下でPDK4による基質のリン酸化反応を行う際、評価対象物質を反応系内に添加して行った後、リン酸化セリン残基を認識する標識抗体をさらに添加するか、または、リン酸化セリン残基を認識する抗体とその抗体を認識する標識抗体をさらに添加し、抗体を介して基質に結合した標識を指標にして評価対象物質のPDK4に対する阻害活性を判定する工程1、続いて工程1で用いたPDK4の代わりにPDK1、PDK2、PDK3のそれぞれを用いて工程1と同様の判定を行い、評価対象物質のそれぞれの酵素に対する阻害活性を判定する工程2を少なくとも含んでなる工程を経て、PDK4に対する阻害活性を有し、PDK1、PDK2、PDK3に対する阻害活性を有しない物質を選択することを特徴とする。
また、本発明の糖尿病治療薬としてのPDK4特異的阻害剤は、請求項5記載の通り、請求項1乃至4のいずれかに記載のスクリーニング方法により選択されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、PDK4に対する特異的な阻害活性の有無を指標にし、当該活性を有する物質を選択するという、PDK4の機能の解明に基づく新規な糖尿病治療薬のスクリーニング方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の糖尿病治療薬のスクリーニング方法は、PDK4に対する特異的な阻害活性の有無を指標にし、当該活性を有する物質を選択することを特徴とするものである。
具体的な方法としては、例えば、酵素としてPDK4、基質としてPDHまたはそのフラグメントを用い、33P-ATPなどの標識ATPの存在下でPDK4による基質のリン酸化反応を行う際、評価対象物質を反応系内に添加して行った後、基質に結合した標識を指標にして評価対象物質のPDK4に対する阻害活性を判定する工程1(基質に結合した標識を観察できれば阻害活性がなく観察できなければ阻害活性がある)、続いて工程1で用いたPDK4の代わりにPDK1、PDK2、PDK3のそれぞれを用いて工程1と同様の判定を行い、評価対象物質のそれぞれの酵素に対する阻害活性を判定する工程2を少なくとも含んでなる工程を経て、PDK4に対する阻害活性を有し、PDK1、PDK2、PDK3に対する阻害活性を有しない物質を選択する方法が挙げられる。
また、酵素としてPDK4、基質としてPDHまたはそのフラグメントを用い、ATPの存在下でPDK4による基質のリン酸化反応を行う際、評価対象物質を反応系内に添加して行った後、基質のリン酸化部位を検出できる試薬として、リン酸化セリン残基を認識する標識抗体をさらに添加するか、または、リン酸化セリン残基を認識する抗体とその抗体を認識する標識抗体をさらに添加し、抗体を介して基質に結合した標識を指標にして評価対象物質のPDK4に対する阻害活性を判定する工程1(抗体を介して基質に結合した標識を観察できれば阻害活性がなく観察できなければ阻害活性がある)、続いて工程1で用いたPDK4の代わりにPDK1、PDK2、PDK3のそれぞれを用いて工程1と同様の判定を行い、評価対象物質のそれぞれの酵素に対する阻害活性を判定する工程2を少なくとも含んでなる工程を経て、PDK4に対する阻害活性を有し、PDK1、PDK2、PDK3に対する阻害活性を有しない物質を選択する方法が挙げられる。
ここで用いるPDK1〜PDK4とPDHはヒト由来のものであることが望ましい。PDHのフラグメントとしては、リン酸化部位となるセリン残基を含むPDH-E1サブユニットの内在配列ペプチド、例えば、2つのリン酸化部位を含むYHGHSMSDPGVSYR(左から5番目と12番目のSがリン酸化部位)がある。PDK4に対する特異的な阻害活性に基づく糖尿病治療薬は今だ存在しない。従って、本発明は、これまでにない作用機序に基づく糖尿病治療薬の開発に際して有用なものとなる。
【実施例】
【0008】
以下、本発明者らによって解明されたPDK4の機能を詳述する。
1)実験動物について
・運動負荷動物:メスKKAy2型糖尿病モデルマウス6週齢を購入し(日本クレア)、8週齢より運動負荷を開始した。運動負荷は、トレッドミル傾斜角0°、10m/min、1日1回30分間の条件で、土曜日と日曜日を除く毎日4週間連続して行った。最終日の運動負荷後に剖検した。
・インスリン投与動物:運動負荷の代わりに剖検30分前にインスリン2mg/kg wtを皮下投与した。
・無処置動物:運動負荷もインスリン投与も行わず剖検した。
運動負荷群、インスリン投与群、無処置群のそれぞれの骨格筋(ヒラメ筋と被覆筋)を採取した。
【0009】
2)Bodymap法による遺伝子発現頻度表作成
上記の採取した骨格筋(ヒラメ筋と被覆筋)を用い、無処置群、運動負荷群、インスリン投与群の各動物群の骨格筋における遺伝子発現頻度表をBodymap法により作成した。Bodymap法は大久保らの方法(必要であればDNA Seq 2:137,1991やNat Genet 2:173,1992を参照のこと)に若干の修正を加えて実施した。即ち、まず、筋肉からTRIZOL(GIBCO BRL)を用いてtotalRNAを抽出し、それぞれをRneasy kit(QIAGEN)により精製した。精製totalRNA2μgとPolyT付加、damメチラーゼ処理を施されたpUC19由来のベクタープライマー0.2μgを用いて2本鎖cDNA合成を行った後、制限酵素BamHI、MboIにより切断し、ライゲースにより自己環化させ、3'断片ライブラリーを作製した。作製したライブラリーを、大腸菌にトランスフォーム後、アンピシリンプレートに播き、生育したコロニーをランダムにピックアップした。ピックアップした大腸菌をボイルにより溶菌し、pUC19由来のプライマーを用いてPCR反応を行い、そのPCR産物をABI377により配列決定した。
得られた配列から、2回以上MboIサイトを持つもの、35bp以下のもの、ベクター、リボゾームRNA、ミトコンドリア由来のものを取り除いた後、ホモロジー解析ソフトであるFASTAにより、同じ配列をカウントした。同じ配列であると見なした条件は、2つの配列を見比べ、配列スタート位置のずれが5bp以内のもの、相同領域が短い方の長さの94%以上かつ相同性が92%以上あるものとした。
カウントは遺伝子毎に纏め、無処置群、運動負荷群、インスリン投与群の各動物群の骨格筋における遺伝子発現頻度表を作成した。
その結果、無処置群3607、運動負荷群3535、インスリン投与群3912クローンの有効データを得た。各々有効データ中、PDK4遺伝子の発現回数は無処置群で4回、運動負荷群で0回、インスリン投与群で6回であった。
<PDK4遺伝子発現頻度>
無処置群 :4/3607
運動負荷群 :0/3535
インスリン投与群 :6/3912
【0010】
3)ATAC-PCR法による遺伝子発現頻度情報確認
まず、2)のBodymap法で抽出した無処置群、運動負荷群、インスリン投与群の各動物群の骨格筋のtotalRNA3μgおよびビオチン化されたOligodT15pmolを用いて2本鎖cDNA合成を行い、制限酵素MboIにより消化し、DNA溶液を作製した(それぞれA、B、Cとする)。得られたDNA溶液と6種類の適当なアダプター(MA-1〜MA-6)を混合し、DNAライゲースにより結合させた後、ストレプトアビジンでコートしたマグネティックビーズにより、3'-MboI断片を回収した。なお、DNA溶液とアダプターは以下のように混合した。
・A+B+Cの等量混合物とMA-1
・AとMA-2
・A+B+Cの等量混合物とMA-3
・BとMA-4
・CとMA-5
・A+B+Cの等量混合物とMA-6
それぞれの3'-MboI断片溶液を、上から10:5:5:5:5:1の割合で混合後、蛍光標識したアダプタープライマーおよび配列特異的プライマーを用いてPCRによる増幅を実施した。得られた増幅物を377DNAシーケンサーで泳動し、GeneScan(Perkin Elmer)によるピーク検出を行った。得られたピークの面積比を計算し、A+B+Cの等量混合物による検量で正しい結果が得られたもののみを抽出し、ピーク面積比をmRNA発現量の面積比と見なした。
以上の方法でPDK4mRNAの発現量を調べた結果、ピーク面積比は無処置群を1とした場合、運動負荷群で0.06倍、インスリン投与群で1.71倍であった。
<PDK4mRNA発現比>
無処置群 :1
運動負荷群 :0.06
インスリン投与群 :1.71
なお、2)のBodymap法で抽出した運動負荷群の骨格筋のtotalRNAと、同様にして抽出した正常マウスの主要臓器のtotalRNAを用い、以上の方法でPDK4mRNAの正常マウスの主要臓器における発現量を調べた結果を表1に示す。表1から明らかなように、ピーク面積比は運動負荷群の骨格筋を1とした場合、正常マウスの心臓では3.80倍、筋肉では1.81倍であり、その他の臓器に比較して特異的に高い発現頻度を示すことが確認できた。
【0011】
【表1】

【0012】
4)機能解析試験
マウスC2C12多核筋管細胞を24穴プレートに播種し、翌日、PDK4遺伝子挿入プラスミド(ベクター:pCMV-Tag4A)または空ベクターをリポフェクトアミン2000を用いて細胞へ導入し、翌日、分化誘導した。分化誘導2日後に2deoxy-D-glucose(2-DG)取り込み試験を実施した。2-DG取り込み試験は、血清除去することで4時間starvationした後、(+)Hepes buffer(140mM NaCl, 5mM KCl, 2.5mM MgCl2, 1mM CaCl2, 20mM Hepes)に2-D[14C]-DG mix(final conc. 50μM)を添加し、37℃、1時間インキュベートしてから上清除去し、(+)Hepes buffer 2mlにて洗浄を3回した後、1%SDS300μlに溶解し、液体シンチレーターにてラベルカウントを測定することで行った。
その結果、PDK4遺伝子導入C2C12多核筋管細胞において、空ベクター導入細胞と比べ、2-D[14C]-DGの細胞への取り込みが約31%抑制された(N=4)。
【0013】
以上の実験から、PDK4は2型糖尿病モデル動物に対する運動負荷により、無処置の場合やインスリンを投与した場合に比較して遺伝子発現が低下すること、培養細胞へのPDK4の一過性発現により、細胞への糖の取り込みが抑制されることを確認することができた。従って、PDK4特異的阻害剤は、運動療法を代替する糖尿病治療薬となるので、PDK4に対する特異的な阻害活性の有無を指標にし、当該活性を有する物質を選択すること、即ち、PDK4特異的阻害剤をスクリーニングすることは、糖尿病治療薬、とりわけ、運動療法を代替する糖尿病治療薬をスクリーニングすることとして有用であることがわかった。PDK4特異的阻害剤のスクリーニングは、好適には、例えば、以下に示す手順で行うことができる。
【0014】
PDK4発現プラスミドとして、ヒトPDK4フラグメントをEcoRIおよびXhoIを用いて制限酵素消化し、pET44へサブクローニングしたものを用い、これを大腸菌(TUNER株)に導入し、IPTG添加LB培地にて22℃、一晩培養する。大腸菌回収後、BugBuster試薬(Novagen)で溶解し、同時にBenzonase Nuclease(Novagen)を添加する。発現ヒトPDK4の精製はTALONレジン(clontech)カラムを使用し、溶出は5mMイミダゾールで行う。精製後直ちにPD-10カラム(ファルマシア)により脱塩を行う。
このようにして発現させたPDK4に対する阻害活性評価は、フィルター法により行う。まず、酵素反応停止液としての120mMリン酸溶液100μlでMultiscreenプレート(MILLIPORE MAPH-NOB-50:PH)をプレウェットする。次に、96穴プレート(PP製)に、1)検体5μl、2)PDK4+N末をアセチル化したYHGHSMSDPGVSYR25μl、3)ATP(Cold ATP+33P-ATP)20μl、合計50μlを順に添加し混合する(Assay Buffer:20mM Tris-HCl pH7.4, 50mM KCl, 5mM MgCl2, 1mM 2-ME)。室温で1時間反応した後、反応を停止するため、120mMリン酸を100μl添加し、5分間インキュベートする。反応混合物を上記のプレウェットしたPHプレートに移し、100mMリン酸200μlで4回洗浄する。その後、PHプレートを乾燥し、underdrainを外して、top count用のホルダーに装着、MicroScintiOを20μl添加し、シールをしてtop countで放射活性を測定し、検体のPDK4に対する活性阻害評価を行う(基質に結合した標識を観察できれば阻害活性がなく観察できなければ阻害活性がある)。
PDK1〜PDK3に対する阻害活性評価は、上記のPDK4に対する阻害活性評価に準じて行えばよい。
【0015】
また、上記のようにして発現させたPDK4に対する阻害活性評価は、次のようにして行うこともできる。まず、96穴プレート(PP製)に、1)検体5μl、2)PDK4 1μg、3)N末をビオチン化したYHGHSMSDPGVSYR0.5μM、4)ATP2μMを含む合計50μl(Assay Buffer:20mM Tris-HCl pH7.4, 50mM KCl, 5mM MgCl2, 1mM 2-ME)を順に添加し混合する。室温で1時間反応した後、反応を停止するため、7.5mMのEDTAを50μl添加する。次いで、DELFIA assay buffer(Perkin Elmer)を100μl添加した後、反応混合物をストレプトアビジンコートプレートに移し、室温で1時間shakingする。その後、プレートを400μlのTBS-T(50mM Tris-HCl, 150mM NaCl, 0.1% tween20)で2回洗浄してから、1次抗体としてウサギ抗セリンリン酸化抗体(Rabbit anti-phosphoserin antibody:ZYMED)を添加し、室温で1時間shakingする。次に、プレートを400μlのTBS-Tで2回洗浄してから、2次抗体としてユーロピウム標識抗ウサギIgG抗体(LANCE Eu-w1024 labeled anti-Rabbit-IgG:Perkin Elmer)を添加し、室温で1時間shakingする。プレートを400μlのTBS-Tで6回洗浄してから、Enhancement Solution(Perkin Elmer)を200μl/wellで添加し、室温で5分間shakingした後、蛍光活性を測定し、検体のPDK4に対する活性阻害評価を行う(抗体を介して基質に結合した標識を観察できれば阻害活性がなく観察できなければ阻害活性がある)。
PDK1〜PDK3に対する阻害活性評価は、上記のPDK4に対する阻害活性評価に準じて行えばよい。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、PDK4に対する特異的な阻害活性の有無を指標にし、当該活性を有する物質を選択するという、PDK4の機能の解明に基づく新規な糖尿病治療薬のスクリーニング方法を提供することができる点において産業上の利用可能性を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼイソ酵素4(PDK4)に対する特異的な阻害活性の有無を指標にし、当該活性を有する物質を選択することを特徴とする糖尿病治療薬のスクリーニング方法。
【請求項2】
運動療法を代替する糖尿病治療薬のスクリーニング方法であることを特徴とする請求項1記載のスクリーニング方法。
【請求項3】
酵素としてPDK4、基質としてピルビン酸デヒドロゲナーゼまたはそのフラグメントを用い、標識ATPの存在下でPDK4による基質のリン酸化反応を行う際、評価対象物質を反応系内に添加して行った後、基質に結合した標識を指標にして評価対象物質のPDK4に対する阻害活性を判定する工程1、続いて工程1で用いたPDK4の代わりにPDK1、PDK2、PDK3のそれぞれを用いて工程1と同様の判定を行い、評価対象物質のそれぞれの酵素に対する阻害活性を判定する工程2を少なくとも含んでなる工程を経て、PDK4に対する阻害活性を有し、PDK1、PDK2、PDK3に対する阻害活性を有しない物質を選択することを特徴とする請求項1または2記載のスクリーニング方法。
【請求項4】
酵素としてPDK4、基質としてピルビン酸デヒドロゲナーゼまたはそのフラグメントを用い、ATPの存在下でPDK4による基質のリン酸化反応を行う際、評価対象物質を反応系内に添加して行った後、リン酸化セリン残基を認識する標識抗体をさらに添加するか、または、リン酸化セリン残基を認識する抗体とその抗体を認識する標識抗体をさらに添加し、抗体を介して基質に結合した標識を指標にして評価対象物質のPDK4に対する阻害活性を判定する工程1、続いて工程1で用いたPDK4の代わりにPDK1、PDK2、PDK3のそれぞれを用いて工程1と同様の判定を行い、評価対象物質のそれぞれの酵素に対する阻害活性を判定する工程2を少なくとも含んでなる工程を経て、PDK4に対する阻害活性を有し、PDK1、PDK2、PDK3に対する阻害活性を有しない物質を選択することを特徴とする請求項1または2記載のスクリーニング方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のスクリーニング方法により選択されてなることを特徴とする糖尿病治療薬としてのPDK4特異的阻害剤。

【公開番号】特開2007−295801(P2007−295801A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−214815(P2004−214815)
【出願日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【復代理人】
【識別番号】100087745
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 善廣
【復代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
【復代理人】
【識別番号】100106611
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 幸史
【Fターム(参考)】