説明

糖炭化物の回収装置

【課題】 モーノポンプなどの特殊なポンプを使用することなく、酸糖液から糖炭化物を回収する装置を構築する。
【解決手段】 木質系材料に含まれているセルロース成分を酸により加水分解して得られる酸糖液から、その酸糖液に溶解している糖成分を炭化して糖炭化物を回収する装置であって、前記酸糖液を貯留しておく貯留タンク12と、前記酸糖液を加熱する加熱装置14と、前記貯留タンク12から前記加熱装置14に向けて前記酸糖液を圧送する圧送ポンプ18と、前記加熱装置12により加熱された酸糖液中に生成する糖炭化物を分離する固液分離装置16と、を備えることを特徴とする、糖炭化物の回収装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木質系材料に含まれているセルロース成分を酸により加水分解して得られる酸糖液から、その酸糖液に溶解している糖成分を炭化して糖炭化物を回収する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
木材やケナフなどの木質系材料の中には、リグニン、ヘミセルロース、及びヘミセルロースがその構成成分として含まれており、植物資源の有効利用の観点から、これらの成分を分離して回収するための試みがこれまでになされている。例えば、特許文献1,2には、リグニン、ヘミセルロース、及びセルロースを含む木質系材料に対して、クレゾール及び酸(例えば硫酸)を順次添加するとともに、クレゾール及び酸の相分離現象を利用して、上相側のクレゾール相からはリグニン成分を回収するともに、下相側の酸相からは酸糖液(主に、酸によって、セルロース成分が加水分解して生成したグルコースなどの糖類が溶解している液)を回収することのできる技術が開示されている。この技術によれば、木質系材料からリグニン成分を分離して回収することができる。回収したリグニン成分は、接着剤やフィルムなどへ加工したり、あるいは、古紙から採取したパルプを固めて成形体を作るためのバインダ、などへの有効利用が可能である。
【0003】
上述した従来の技術では、木質系材料からリグニン成分を回収して有効利用を図ることができる。しかし、木質系材料に含まれているもう一方の成分、すなわち、セルロース成分の有効利用については、十分になされているとは言い難い。そこで、木質系材料に含まれるセルロース成分をより有効に利用するために、セルロース成分を酸により加水分解して得られた酸糖液から、この酸糖液に溶解している糖成分を炭化して糖炭化物を回収する図2のような装置が提案されている。
【0004】
図2は、酸糖液から糖炭化物を回収する装置の一例を示している。図2に示すように、糖炭化物の回収装置100は、木質系材料に含まれているセルロース成分を酸により加水分解して得られた酸糖液を貯留しておく貯留タンク110と、前記貯留タンク110に貯留されている酸糖液を加熱する加熱装置112を備えている。前記加熱装置112によって酸糖液が加熱されると、その酸糖液に溶解している糖成分が炭化して糖炭化物が析出する。糖炭化物を含む酸糖液は、固液混合のスラリーとなっており、このスラリーとなっている酸糖液は、ポンプ114によって圧送されて固液分離装置116に送り込まれる。前記ポンプ114には、スラリー圧送用の特殊なポンプ(例えばモーノポンプなど)が使用される。前記固液分離装置116には、例えばフィルタープレスなどの圧搾方式の固液分離装置が使用される。また、前記貯留タンク110の材質には、加熱された酸糖液による腐食に耐え得る特殊な材質、例えば、ハステロイなどの特殊な金属が使用される。また、前記貯留タンク110の上部には、加熱されている酸糖液中に析出した糖炭化物を液中に拡散させるための攪拌機118が設置される。
【0005】
【特許文献1】特許第2895087号公報
【特許文献2】特開2001−64494号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図2に示す糖炭化物の回収装置100によれば、貯留タンク110から固液分離装置116に送り込まれる酸糖液がスラリーとなっているために、この酸糖液を圧送するためのポンプ114として、モーノポンプなどの特殊なポンプを使用しなければならない。このモーノポンプは、樹脂製のローターの内部で、螺旋状に形成された金属製のステーターを回転させるものであり、ステーターの偏心回転によって生じるローターとステーターとの間の容積変化を利用することによって、酸糖液のような固体が入り混じっている移送物であっても定量的にかつ脈動させることなく圧送することが可能なポンプである。
【0007】
しかし、モーノポンプは特殊な技術を要するために、製作コストが高価であるのみならず、メンテナンス作業も容易ではない。また、酸糖液のような腐食性のスラリーを圧送する場合には、ステーターの摩耗や腐食を抑えるために、ステーターの材質としてチタンやハステロイなどの特殊で高価な金属を採用しなければならない。
そこで本発明は、モーノポンプなどの特殊なポンプを使用する必要のない、酸糖液から糖炭化物を回収する装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段は、以下の(1)〜(7)に記載した発明である。
(1)木質系材料に含まれているセルロース成分を酸により加水分解して得られる酸糖液から、その酸糖液に溶解している糖成分を炭化して糖炭化物を回収する装置であって、前記酸糖液を貯留しておく貯留手段と、前記酸糖液を加熱する加熱手段と、前記貯留手段から前記加熱手段に向けて前記酸糖液を圧送する圧送手段と、前記加熱手段により加熱された酸糖液中に生成する糖炭化物を分離する分離手段と、を備えることを特徴とする、糖炭化物の回収装置。
(2)上記(1)に記載の糖炭化物の回収装置であって、前記加熱手段と前記分離手段とを連結する配管が、前記加熱手段の上部に接続されており、前記加熱手段の内部で生成した糖炭化物を前記分離手段へ送り込むための送込み手段を有することを特徴とする、糖炭化物の回収装置。
(3)上記(1)または(2)に記載の糖炭化物の回収装置であって、前記圧送手段は、ダイヤフラム式のポンプであることを特徴とする、糖炭化物の回収装置。
(4)上記(1)から(3)のうちいずれに記載の糖炭化物の回収装置であって、 前記加熱手段は、管状の縦置き型加熱炉であることを特徴とする、糖炭化物の回収装置。
(5)上記(1)から(4)のうちいずれかに記載の糖炭化物の回収装置であって、前記加熱手段は、セラミック管及びそのセラミック管の周囲に配置されるヒータで構成されていることを特徴とする、糖炭化物の回収装置。
(6)上記(1)から(5)のうちいずれかに記載の糖炭化物の回収装置であって、前記加熱手段と前記分離手段とを連結する配管に、洗浄液を送り込むための配管が接続されていることを特徴とする、糖炭化物の回収装置。
(7)上記(6)に記載の糖炭化物の回収装置であって、前記加熱手段と前記分離手段とを連結する配管の中に、インラインミキサーが設置されていることを特徴とする、糖炭化物の回収装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、モーノポンプなどの特殊なポンプを使用することなく、酸糖液から糖炭化物を回収する装置を構築することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、木質系材料に含まれているセルロース成分を酸により加水分解して得られる酸糖液から、その酸糖液に溶解している糖成分を炭化して糖炭化物を回収する装置に関するものである。より具体的には、例えば、木質系材料に含まれているセルロース成分を硫酸により加水分解して得られる硫酸糖液から、その硫酸糖液に溶解している糖成分を炭化して糖炭化物を回収する装置に関するものである。加水分解に用いる酸は、硫酸、リン酸、硝酸など、どのような酸を用いても良いが、この中では硫酸が好ましい。これらのうち2種以上の酸を混合して用いることも可能である。例えば、リン酸と硫酸を混合して用いることが可能である。セルロース成分を酸により加水分解して得られた糖液を、酸糖液と呼ぶ。セルロース成分を硫酸により加水分解して得られた糖液を、硫酸糖液と呼ぶ。酸糖液あるいは硫酸糖液には、酸や糖成分以外のその他の成分が含まれていても良い。
【0011】
本発明における「木質系材料」とは、リグニンとヘミセルロースとセルロースとを含有するリグノセルロース系材料のことである。「木質」という単語をその名称に付しているが、木材に限らず、草本類からも採取することが可能である。このような木質系材料は、例えば、スギ、ヒノキ、ブナなどの各種の樹木から採取することが可能である。また、ケナフの茎、トウモロコシ、サトウキビ、麻、イグサ、イネなどの草本類から採取することが可能である。あるいは、家屋解体物、家具解体物、木屑、間伐材、籾殻、木粉、古紙、剪定枝、刈り草、落ち葉、サトウキビの圧搾滓(バガス)などの産業廃棄物から採取することも可能である。
【0012】
木質系材料に対してフェノール誘導体及び酸を添加し混合することによって、その木質系材料に含まれるリグノセルロース系物質をリグニン成分及びセルロース成分(セルロース、ヘミセルロース)に分離することができる。前記フェノール誘導体としては、例えばクレゾールを使用することができる。前記酸としては、例えば硫酸を使用することができる。
木質系材料に対して酸を添加すると、その木質系材料に含まれるセルロース成分は膨潤し、さらに部分的な加水分解及び溶解が生じ、結果として細胞壁構造が破壊される。セルロース成分と酸との反応がさらに進行すると、セルロース成分はグルコースなどの糖類(炭水化物)に分解されて酸の中に溶解する。セルロース成分の加水分解により得られる糖類が溶解した酸は、「酸糖液」と呼ばれる。本発明に係る酸糖液の回収装置10は、この酸糖液に溶解している糖類を炭化して糖炭化物を回収する装置である。
【0013】
図1は、本発明に係る糖炭化物の回収装置10の構成を示している。
図1に示すように、糖炭化物の回収装置10は、酸糖液を貯留するための貯留タンク12と、酸糖液を加熱するための加熱装置14と、酸糖液から糖炭化物を分離するための固液分離装置16と、を備えている。貯留タンク12は配管30を介して加熱装置14に連結されている。配管30の途中には、貯留タンク12に貯留されている酸糖液を加熱装置14に圧送する圧送ポンプ18が設置されている。この圧送ポンプ18の下流側には、圧送ポンプ18の作動に伴う移送物の脈動を吸収するためのエアチャンバー20が設置されている。
【0014】
貯留タンク12は、木質系材料に含まれるセルロース成分を酸により加水分解して得られる酸糖液を貯留しておくための槽である。この貯留タンク12が、本発明における「貯留手段」に対応している。この貯留タンク12の槽本体12aの材質としては、内部に貯留している酸糖液からの腐食を防ぐために、例えばステンレス鋼などの耐腐食性の金属材料や、FRPなどの樹脂材料が使用される。ただし、この貯留タンク12は、加熱されている酸糖液を貯留するわけではないので、例えば熱濃硫酸に耐えうるような特殊な金属材料(例えばハステロイなど)を使用する必要はない。また、この貯留タンク12では、酸糖液がまだ加熱されていない状態であり、酸糖液の中に糖炭化物が析出していないので、その糖炭化物を液中に拡散させるための攪拌機などを設置する必要がない。
【0015】
加熱装置14は、貯留タンク12から圧送ポンプ18によって圧送されてきた酸糖液を加熱するための装置である。この加熱装置14が、本発明における「加熱手段」に対応している。この加熱装置14は、管状の縦置き型の加熱炉として構成されている。すなわち、加熱装置14は、円管状のセラミック管14aと、そのセラミック管14aの周囲に配置されているヒータ14bによって構成されている。ヒータ14bによってセラミック管14aが加熱されることによって、そのセラミック管14aの内部を流れる酸糖液が加熱される。セラミック管14aの材料としては、耐熱性のセラミックス材料、例えば、アルミナやシリカなどが使用される。前記ヒータ14bとしては、例えば、ニクロム線により構成される電熱式のヒータなどが使用される。
【0016】
図1に示すように、加熱装置14は、セラミック管14aが縦置きに設置されるとともに、そのセラミック管14aの下部に配管が30が接続される。そして、縦置きに設置されたセラミック管14aの内部を、圧送ポンプ18により送り込まれる酸糖液が下部から流入して上向きに流れるようになっている。加熱装置14による酸糖液の加熱温度は、セラミック管14aの出口部14cにおける酸糖液の温度が例えば60℃以上100℃以下(より好ましくは70℃以上90℃以下)となるように制御される。
【0017】
酸糖液が加熱装置14によって加熱されると、その酸糖液中に溶解している糖成分(グルコースなどの単糖類)が炭化して糖炭化物が析出する。この糖炭化物は、酸糖液の加熱時に発生したガスを抱き込んでいるので、セラミック管14aの内部において上方に浮上する。また、木質系材料に加える酸として硫酸を用いた場合には、硫酸の比重が高いために、セラミック管14aの内部において糖炭化物が浮上する。本発明では、このように、糖炭化物をセラミック管14aの内部において積極的に浮上させている。したがって、酸糖液及び糖炭化物は、縦置きに設置されているセラミック管14aの内部を上方に向けて速やかに流れるようになっている。また、セラミック管14aは縦置きに設置されているために、管内を流れる酸糖液との接触効率が高く、酸糖液を効率的に加熱できるようになっている。
【0018】
圧送ポンプ18は、貯留タンク12に貯留されている酸糖液を加熱装置14に圧送するためのポンプである。この圧送ポンプ18が、本発明における「圧送手段」に対応している。
この圧送ポンプ18は、加熱装置14に向けて酸糖液を圧送するためのポンプである。本実施例では、この圧送ポンプ18として、ダイヤフラム式のポンプを使用することが可能になっている。なぜならば、酸糖液が加熱装置14よって加熱されていない段階であり、酸糖液の中には糖炭化物が析出していないので、圧送ポンプ18として固液混合のスラリーを圧送するための特殊なポンプ(例えばモーノポンプ)を使用する必要がないからである。
【0019】
酸糖液を圧送するための圧送ポンプ18としては、ダイヤフラムポンプを使用することができる。なぜならば、酸糖液は糖炭化物などの固体を含んでいないので、ダイヤフラムポンプを使用した場合であっても、ポンプ内の吸込弁18aや吐出弁18bに固体が挟まることがないからである。
圧送ポンプ18としてダイヤフラムポンプを使用した場合には、例えばモーノポンプを使用した場合よりも、製作コストが極めて安価になる。また、ダイヤフラムポンプは、モーノポンプよりも汎用的であるので、消耗品などの部品の調達が容易であり、メンテナンスコストも少なくて済む。ダイヤフラムポンプを使用する場合、ダイヤフラム(隔膜)の材質としては、ゴムやPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)などを採用することができる。
また、圧送ポンプ18としてダイヤフラムポンプを使用した場合には、ダイヤフラム(隔膜)の往復に伴って移送物に脈動が生じるのが通常であるが、本実施例では、配管30の途中にエアチャンバー20が設置されているので、このような移送物の脈動が吸収されるようになっている。
【0020】
加熱装置14と固液分離装置16とは、配管32によって連結されている。この配管32は、加熱装置14の上部に接続されている。加熱装置14によって酸糖液が加熱されると、加熱装置14を構成するセラミック管14aの内部では、糖炭化物が生成する。生成した糖炭化物は、配管32を通って、固液分離装置16に送り込まれる。本発明において、糖炭化物を固液分離装置16に送り込むための送り込み手段としては、圧送ポンプ18を利用することができる。すなわち、圧送ポンプ18の作動によって生じる圧力によって、加熱装置14の内部で生成した糖炭化物を固液分離装置16に送り込むことができる。糖炭化物を送り込むための送り込み手段としては、その他にも、例えば、貯水タンク24に貯留されている水が配管32の内部を流れるときの負圧を利用したり、あるいは、固液分離装置16に吸引装置を設けるなどの方法をとることもできる。
【0021】
また、加熱装置14と固液分離装置16とを連結する配管32の途中には、貯水タンク24に貯留されている洗浄液としての水を送り込むための配管34が接続されている。また、加熱装置14と固液分離装置16とを連結する配管32の中には、配管32内を流れる水、糖炭化物、及び酸糖液を撹拌するためのインラインミキサー22が設けられている。このインラインミキサー22は、配管32の内部に設置される静止型の混合器であって、スタティックミキサーとも呼ばれるものである。このインラインミキサー22は、ポリプロピレンなどの樹脂、あるいは、ステンレスなどの金属により形成される。インラインミキサー22の形状は、特に制限するものではないが、例えばスパイラル型の羽根形状を採用することができる。
【0022】
糖炭化物の回収装置10は、水を貯留するための貯水タンク24を備えている。この貯水タンク24は、配管34を介して、加熱装置14と固液分離装置16とを連結する配管32に接続されている。配管34は貯水タンク24の下部に接続されており、この配管34の途中には、貯水タンク24に貯留されている水を圧送するための圧送ポンプ26と、圧送ポンプ26の作動に伴う移送物の脈動を吸収するためのエアチャンバー28が設置されている。本実施例において、圧送ポンプ26には、ダイヤフラムポンプが使用されている。
【0023】
貯水タンク24に貯留されている水は、圧送ポンプ26によって圧送されて、インラインミキサー22の入口部に送り込まれる。このインラインミキサー22の入口部では、加熱装置14からの配管32と、貯水タンク24からの配管34が合流している。加熱装置14によって加熱された酸糖液は、貯水タンク24から送り込まれる水と合流して、インラインミキサー22によって混合・撹拌される。また、加熱装置14の内部で生成した糖炭化物は、配管32に送り込まれる水とともに、固液分離装置16に送り込まれる。
【0024】
酸糖液と水とがインラインミキサー22によって混合・撹拌されることによって、酸糖液の温度が下がるとともに、酸糖液の濃度が低下する。これにより、配管32の材質として、熱濃酸に耐えうるような特殊な材質(例えばハステロイなど)を使用する必要がなくなる。例えば、配管32の材質としては、SUS304やSUS316Lなどの通常のステンレス鋼を使用することが可能になる。
【0025】
インラインミキサー22によって水と混合・撹拌された酸糖液は、固液分離装置16に送り込まれる。この固液分離装置16は、固体と液体を分離するための装置であり、例えばフィルタープレスなどの圧搾方式の固液分離装置を採用することができる。この固液分離装置16が、本発明における「分離手段」に対応している。
酸糖液に含まれる糖炭化物は、固液分離装置16によって酸糖液から分離・回収される。この回収された糖炭化物は、さまざまな用途に利用することが可能である。例えば、酸糖液から回収された糖炭化物は、活性炭の材料や、肥料の原料などに使用することが可能である。
他方で、糖炭化物が分離・回収された後の酸糖液は、回収タンク17に回収される。木質系材料に添加する酸として硫酸を用いた場合には、回収タンク17に回収される酸糖液は、糖成分が糖炭化物として分離されているので、ほとんどが希硫酸である。この回収タンク17に回収された希硫酸は、濾過・濃縮などの必要な精製工程を経た後に、木質系材料に添加して酸糖液を得るための硫酸として再利用することが可能である。
【0026】
以上説明したように、本発明に係る糖炭化物の回収装置10は、酸糖液を圧送するための圧送ポンプ18を加熱装置14よりも上流側に設置している。したがって、圧送ポンプ18としては、固液混合のスラリーを圧送するための特殊なポンプ(モーノポンプなど)を使用する必要がなく、ダイヤフラムポンプなどの汎用性のあるポンプを使用することができる。
また、加熱装置14は、セラミック管14a及びその周囲に配置されるヒータ14bによって構成されており、セラミック管14aは縦置きに設置されているので、従来のように加熱装置を回分式のタンクなどで構成するよりも、装置全体がコンパクトになるという利点がある。
また、加熱装置14は、セラミック管14a及びその周囲に配置されるヒータ14bによって構成されているので、酸糖液を加熱する際の加熱効率が高いという特徴がある。この場合、酸糖液を撹拌して加熱効率を高める必要性が小さいので、従来のように加熱装置に攪拌機などを設置する必要がないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】糖炭化物の回収装置の構成を示す図である。
【図2】従来の糖炭化物の回収装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
10 糖炭化物の回収装置
12 貯留タンク
14 加熱装置
14a セラミック管
14b ヒータ
16 固液分離装置
17 回収タンク
18 圧送ポンプ
20 エアチャンバー
22 インラインミキサー
24 貯水タンク
30,32,34 配管


【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質系材料に含まれているセルロース成分を酸により加水分解して得られる酸糖液から、その酸糖液に溶解している糖成分を炭化して糖炭化物を回収する装置であって、
前記酸糖液を貯留しておく貯留手段と、
前記酸糖液を加熱する加熱手段と、
前記貯留手段から前記加熱手段に向けて前記酸糖液を圧送する圧送手段と、
前記加熱手段により加熱された酸糖液中に生成する糖炭化物を分離する分離手段と、を備えることを特徴とする、糖炭化物の回収装置。
【請求項2】
請求項1に記載の糖炭化物の回収装置であって、
前記加熱手段と前記分離手段とを連結する配管が、前記加熱手段の上部に接続されており、
前記加熱手段の内部で生成した糖炭化物を前記分離手段へ送り込むための送込み手段を有することを特徴とする、糖炭化物の回収装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の糖炭化物の回収装置であって、
前記圧送手段は、ダイヤフラム式のポンプであることを特徴とする、糖炭化物の回収装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の糖炭化物の回収装置であって、
前記加熱手段は、管状の縦置き型加熱炉であることを特徴とする、糖炭化物の回収装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のうちいずれか1項に記載の糖炭化物の回収装置であって、
前記加熱手段は、セラミック管及びそのセラミック管の周囲に配置されるヒータで構成されていることを特徴とする、糖炭化物の回収装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の糖炭化物の回収装置であって、
前記加熱手段と前記分離手段とを連結する配管に、洗浄液を送り込むための配管が接続されていることを特徴とする、糖炭化物の回収装置。
【請求項7】
請求項6に記載の糖炭化物の回収装置であって、
前記加熱手段と前記分離手段とを連結する配管の中に、インラインミキサーが設置されていることを特徴とする、糖炭化物の回収装置。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−306649(P2006−306649A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−129696(P2005−129696)
【出願日】平成17年4月27日(2005.4.27)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【Fターム(参考)】