説明

糞尿処理基材とその製造方法及び動物糞尿の処理方法並びに有機廃棄物の処理方法

【課題】 動物の糞尿を、悪臭の発生を効果的に抑えつつ、微生物にて効率的に分解処理することが出来る糞尿処理基材を提供する。
【解決手段】 細長比が2〜20の細長形状とされた木材破砕物10又は樹皮破砕物12を含む木質細片の他に、曝気処理した豚及び/又は牛の糞尿を加えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物の働きにより人間を含む動物の糞尿を発酵させて、分解処理する際に用いられる糞尿処理基材とその有利な製造方法、及びそのような糞尿処理基材を用いた動物糞尿の処理方法、並びにかかる動物糞尿のみならず、生ゴミ、草木、生魚、動物の死骸等の各種の有機廃棄物の処理方法と、そしてそれらに関連する新規な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、豚、牛、鶏等の家畜の糞尿に、ワラや籾殻、オガ粉(オガ屑)等を混合して、堆積することにより、糞尿を発酵、分解して、堆肥化する処理が、一般に実施されている。この堆肥化による動物糞尿の処理は、よく知られているように、ワラや籾殻、オガ粉等の処理基材の混入により、糞尿中の水分含有量が適度な範囲内とされ且つ通気性が確保された条件下において、糞尿中に存在する有機物分解能を備えた、主に好気性微生物の生分解作用により、糞尿を土壌還元し易い、しかも環境に悪影響を与えない形態にするものである。
【0003】
ところで、上記の処理基材のうち、特にオガ粉は、近年、犬猫等のペットの糞尿、更には人間の糞尿を処理するための処理基材として用いることも検討されてきている。即ち、そこでは、オガ粉が、それらの糞尿中の水分の調整や通気性の確保のためだけでなく、糞尿を発酵させて、分解処理する働きを有する微生物を保持して、繁殖させることが出来る菌床としても利用されているのである。
【0004】
ところが、そのようなオガ粉からなる糞尿の処理基材は、未だ十分に満足出来るものではなかった。即ち、かかる従来の動物糞尿の処理基材にあっては、糞尿の処理中における悪臭の発生を十分に防止することが困難であったのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここにおいて、本発明は、上述せる如き事情を背景にして為されたものであって、その解決課題とするところは、動物の糞尿を、悪臭の発生を効果的に抑えつつ、微生物にて効率的に分解処理することが出来る、新規な糞尿処理基材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下の記載の態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体及び図面に記載されたもの、或いはそれらの記載から当業者が把握することが出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0007】
本発明の第一の態様は、木質細片を含んで構成された糞尿処理基材において、木材を破砕して得られた木材破砕物と樹皮を破砕して得られた樹皮破砕物であって、それらの少なくとも一方の細長比が2〜20の細長形状を有するものを含んで前記木質細片を構成する一方、該木質細片の他に、曝気処理した豚及び/又は牛の糞尿を含んでいることを、特徴とする。
【0008】
このような本態様においては、糞尿処理基材を構成する木質細片が、木材を破砕することによって得られる木材破砕物と、樹皮を破砕することによって得られる樹皮破砕物とを含んで構成されており、しかも、それら木材破砕物と樹皮破砕物の少なくとも一方において、細長比が2〜20の細長形状とされたものを含んでいることから、それら木材破砕物と樹皮破砕物の間に空隙が形成され易くなる。
【0009】
すなわち、本発明者が検討したところ、前述の如き従来の糞尿処理基材として用いられるオガ粉は、製材所の鋸屑が多く、細かい上に略多角の粒状を呈している。そのため、このようなオガ粉を用いた従来の糞尿処理基材を糞尿に混合して、使用する場合、基材が糞尿の水分を吸収し、全体として、付着力や表面張力等により集合して固まって、固形物を容易に形成してしまう。それにより、基材の表面積が減少し、空隙が少なくなって、糞尿の分解に特に有用な好気性微生物の繁殖が抑制されてしまうという問題が発生するのであろうとの知見を得るに至った。そして、特に、このような集合固形物が形成されると、その中央部分では嫌気的条件となって、好気性微生物による分解速度が著しく減少し、糞尿処理が進行しなくなるばかりでなく、低級脂肪酸等の悪臭の原因物質が発生することとなり、その結果、悪臭が発生し易くなるのであろうということが判ったのである。
【0010】
ここにおいて、本態様にあっては、細長比の大きな破砕物を用い、これを糞尿処理基材として構成したことにより、全体として集合固形物が形成され難くなる。また、たとえ、かかる処理基材が集合したとしても、細長比が大きいために空隙が形成され易く、それ故、集合体の内部に、好気的環境を効率的に作り出すことが可能となる。従って、全体に亘って微生物による糞尿の分解が効率的且つ迅速に行われることとなり、その結果、糞尿を発酵させて、分解処理する際に、悪臭の原因物質の発生も効果的に抑制され、以て、悪臭の発生が、有利に抑えられ得ることとなるのである。
【0011】
また、豚や牛の糞尿に含まれる微生物が生ゴミの分解処理に有効であることは従来から報告されているが、特に、豚や牛の糞尿に曝気処理を施したものを採用することにより、好気性の微生物が選択的に有利に採取され得て、生ゴミは勿論、動物の糞尿の分解に一層有効となる。なお、糞尿の分解は、全体として、好気性的条件で進行するが、嫌気性微生物も、分解途中において部分的な役割を担っている。そして、豚や牛の糞尿に含まれる微生物には、この動物糞尿の分解処理に有効な嫌気性の微生物も存在しているものと考えられ、この点からしても、豚や牛の糞尿が、動物糞尿の分解処理において、極めて有効に活用され得るのである。
【0012】
そして、特に、本態様においては、細長比が2〜20の細長形状とされた木材破砕物及び/又は樹皮破砕物を含んで木質細片が構成されているところから、適度に空気を取り込むことが可能となり、それによって、悪臭の発生を十分に抑制しつつ、微生物による糞尿の分解処理を、より一層効果的に行うことが可能となる。
【0013】
すなわち、細長比が2より小さいと、木質細片が、空気を取り込み難くなる。つまり、木質細片に空隙が形成され難くなってしまう。そのため、悪臭が発生し易くなると共に、糞尿の分解処理能力が低下する。一方、細長比が20よりも大きくなると、木質細片が、より多くの空気を取り込むようになる。つまり、木質細片に対して必要以上に空隙が形成されるようになってしまい、それにより、乾燥化が促進されて、糞尿内部での水分不足が生じる。その結果、糞尿の分解に有用な好気性微生物の活性が低下して、糞尿の分解処理能力が低下してしまう。
【0014】
なお、本態様における細長比とは細長形状とされた木材破砕物や樹皮破砕物の長さ寸法を幅寸法で割った値をいうものとする。そこにおいて、長さ寸法は、木材破砕物や樹皮破砕物の最大長さの値をいうものとし、また、幅寸法は、木材破砕物や樹皮破砕物の最大幅の値をいうものとする。
【0015】
また、本態様の木材破砕物や樹皮破砕物の大きさは、それぞれ、幅寸法が好ましくは1mm〜10mm、より好ましくは3〜8mmとされていると共に、長さ寸法が好ましくは5〜100mm、より好ましくは15〜80mmとされている。そして、本態様においては、このような大きさを確保しつつ、細長比が2〜20となるように設定された木材破砕物や樹皮破砕物が好適に採用されることとなる。
【0016】
また、本態様の糞尿処理基材は、曝気処理した豚や牛の糞尿に含まれている微生物によって木質細片を発酵させてから、糞尿処理に用いることが望ましく、それによって、動物糞尿を処理する際の温度の上昇と悪臭の発生を一層効果的に抑えることが可能となる。更に、発酵させた糞尿処理基材は、糞尿処理に用いる前に、適当な時間に亘って屋内で保管することが望ましい。何故なら、それによって、ある程度の熟成が図られるからである。
【0017】
ここにおいて、本態様における「曝気処理した豚及び/又は牛の糞尿」とは、豚舎や牛舎から集められた豚や牛の糞尿を曝気槽に入れて、曝気処理したものである。また、本態様における「豚及び/又は牛の糞尿」とは、豚舎や牛舎の床を流下せしめられて集められる液状の流下物であって、尿を主体とするが、多少の糞も混じったものである。なお、曝気処理は、複数回に亘って行っても良い。また、曝気処理は、土の地面に対して穿った素堀の曝気槽で行うことが望ましく、それによって、豚や牛の糞尿の臭いを土着菌の作用により抑えることが可能となる。また、豚や牛の糞尿に含まれるものだけでなく、土壌に存在する有用な微生物を有効利用することが可能となる。特に、枯れ葉の存在する山野の土壌が望ましい。また、本態様における豚や牛の糞尿は、抗生物質を与えずに飼育している豚や牛の糞尿が望ましい。
【0018】
なお、本態様における木材破砕物は、建設工事や道路工事等で生じた伐採樹林等、或いは樹皮を剥皮処理した原木や製材屑を必要に応じて切断し、破砕することによって有利に得られる。また、本態様における樹皮破砕物は、原木から剥皮処理した樹皮を破砕することによって有利に得られる。そこにおいて、剥皮処理していない原木を切削して得られたものを破砕することによって木材破砕物と樹皮破砕物を同時に得るようにしても良い。特に、それら両者を同時に破砕機に投入して、破砕処理すれば、比較的に柔らかい樹皮も、比較的に硬い木材と相互に打ち当たることで、効率的に破砕され得る。また、剥皮処理していない原木は生木であっても良い。更にまた、樹皮を剥皮処理した原木や製材屑を必要に応じて切削したものを破砕する際に、樹皮も破砕することで、木材破砕物と樹皮破砕物とを同時に得るようにしても良い。
【0019】
木材や樹皮の破砕に用いる装置は、従来から周知の木材用のハンマークラッシャ等の破砕機が好適に採用される。特に、比較的に低速で回転する一対のローラ等で押し潰すように破砕する構造のものよりも、比較的に高速で回転するパドルや突起等で叩いて衝撃を与えることで破砕する構造のものが望ましい。このような破砕機を用いることにより、その後に特別な処理を施すことなく、木材の繊維方向に長尺とされて、本発明において良好な細長比の木材破砕物や樹皮破砕物を容易に得ることが可能となる。
【0020】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る糞尿処理基材において、細長比が2〜20の細長形状とされた前記木材破砕物及び/又は前記樹皮破砕物の合計体積が、前記木材細片の全体積の1/3以上とされていることを、特徴とする。このような本態様においては、細長比が特定範囲に設定された木質細片による前述の如き作用効果が一層有効に発揮され得ることとなる。
【0021】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係る糞尿処理基材において、前記樹皮破砕物が、針葉樹の樹皮を破砕したものを含んでいることを、特徴とする。このような本態様に従えば、動物糞尿を分解処理する際の悪臭が一層効果的に抑えられる。また、例えば糞尿処理の前に糞尿処理基材自体を発酵させる場合にも、その悪臭を一層効果的に抑えることが可能となる。なお、針葉樹としては、杉や桧等があるが、中でも杉の樹皮を用いることが望ましく、それによって、動物糞尿を分解処理する際の悪臭や、必要に応じて糞尿処理の前に糞尿処理基材自体を発酵させる場合の悪臭を、何れも、より効果的に抑えることが出来る。
【0022】
本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材において、前記樹皮破砕物が、広葉樹の樹皮を破砕したものを含んでいることを、特徴とする。このような本態様に従う糞尿処理基材においては、動物糞尿を分解処理した後の堆肥化を速やかに為すことが可能となる。
【0023】
なお、本態様と第三の態様とを組み合わせて採用する場合には、針葉樹の樹皮を破砕した樹皮破砕物と広葉樹の樹皮を破砕した樹皮破砕物の割合が、略同じ程度とされていることが望ましい。
【0024】
本発明の第五の態様は、前記第一乃至第四の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材において、前記樹皮破砕物の体積が、前記木質細片の全体積の1/3以上とされていることを、特徴とする。このような本態様に従えば、動物糞尿を分解処理する際の悪臭や、必要に応じて糞尿処理の前に糞尿処理基材自体を発酵させる場合の悪臭を、一層効果的に抑えることが出来る。
【0025】
本発明の第六の態様は、前記第一乃至第五の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材において、発酵状態又は略発酵状態の豚糞及び/又は牛糞を含んでいることを、特徴とする。このような本態様に従えば、動物糞尿を分解処理した後の糞尿処理基材を堆肥として利用する際の肥料効果が大幅に向上せしめられ得る。即ち、従来のオガ粉だけを基材として豚や牛の糞尿に含まれる微生物を付着培養せしめた生ゴミ処理基材では、生ゴミを分解処理した直後に堆肥として用いることが出来ず、一定の期間、発酵させる等の準備が必要であったが、本態様に従えば、豚糞や牛糞がもつ栄養分を利用することで、動物糞尿を分解処理した直後であっても、堆肥として用いることが可能となる。
【0026】
また、本態様においては、豚糞や牛糞の有する栄養分によって、動物糞尿を処理する際の糞尿の発酵や糞尿処理に用いる前の糞尿処理基材自体の発酵が促進される。さらに、豚糞や牛糞を加えることによって発酵温度を高くすることが可能となり、それによって、例えば、冬場においても発酵を有利に促進させることが可能となる。なお、豚糞や牛糞を加えることで発酵温度が高くなるのは、豚糞や牛糞の添加により糞尿処理基材に高温発酵型の菌が付加され、或いは増量される結果、そのような高温発酵型の菌による発酵が行われていることに起因するものと考えられる。
【0027】
また、本態様では、豚糞や牛糞の量を季節の温度変化に応じて変更するようにしても良く、この場合、冬場よりも夏場の方が豚糞や牛糞の量を少なくすることが出来る。更に、豚糞や牛糞を加えることで高くなった発酵温度を利用して、糞尿処理に関係のない細菌や有害な細菌、悪臭を発生させる原因となるような細菌等を殺すことが容易になる。なお、本態様における発酵状態の豚糞や牛糞とは、発酵が完全に終了して、乾燥した状態のものをいう。また、本態様における略発酵状態の豚糞や牛糞とは、八割程度まで発酵が進んで、八割程度まで乾燥しているが、完全に大気湿度付近までは乾燥しきっていない状態のものをいう。更に、本態様においては、発酵状態の豚糞や牛糞よりも略発酵状態の豚糞や牛糞の方が発酵熱をより高くすることが可能となる。これにより、特に冬場の発酵効率を向上させたり、発酵熱を利用した殺菌の有効性の向上が更に図られ得る。
【0028】
また、本第六の態様は、特に、前記せる第三の態様と組み合わせて採用することが望ましく、それによって、例えば、略発酵状態の豚糞や牛糞を用いた場合であっても、悪臭の発生を抑えることが可能となる。この場合、樹皮破砕物は、杉の皮や檜の皮を破砕したものが、特に望ましい。
【0029】
本発明の第七の態様は、前記第一乃至第六の態様うちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材において、土着菌を更に含んでいることを、特徴とする。このような本態様においては、土着菌を含ませることにより、土壌中の細菌による動物糞尿の分解機能までもを有効に利用することが可能となる。なお、土着菌は、例えば、前述の如く、豚や牛の糞尿に対する曝気処理を素堀の貯留池にて実施することで容易に混入させることが出来る。特に素堀の池を山野の富栄養な土壌に形成することにより、土着菌を一層有利に混入させることが可能となる。
【0030】
本発明の第八の態様は、前記第一乃至第七の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材において、米糠を更に含んでいることを、特徴とする。このような本態様に係る糞尿処理基材においては、米糠の有する栄養分によって、動物糞尿を処理する際の糞尿の発酵や糞尿処理に用いられる前の糞尿処理基材自体の発酵が促進される。また、米糠の代わりに、或いは米糠に加えて、オカラを採用することも可能である。それにより、分解後の残留物を堆肥として、一層有利に利用することが出来ると共に、産業廃棄物の一種であるオカラを効率的に処理することが可能となる。更に、この米糠とオカラとが更に含まれた糞尿処理基材は、家畜用飼料としても有利に用いられ、これによって、それら米糠とオカラの有効利用が、更に一層有利に図られ得る。
【0031】
本発明の第九の態様は、前記第一乃至第八の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材において、前記木質細片が、生木を破砕して得られる生木破砕物を発酵させたものを含んでいることを、特徴とする。このような本態様に従えば、生木破砕物を発酵させたものを含んでいない糞尿処理基材を用いて動物糞尿を処理した場合に比して、悪臭の発生を一層有利に抑えることが可能となる。なお、生木は、針葉樹であっても良いし、広葉樹であっても良い。また、生木破砕物の発酵は、生木破砕物に対して、豚や牛の糞尿に含まれる微生物や土着菌等を添加し、それら添加した微生物等を利用して行っても良いが、生木や根株に付着している微生物を利用して行っても良い。また、生木(根株を含む、以下同じ)を破砕機によって破砕することで、生木破砕物を利用する場合には、破砕機で破砕した際の熱を利用して、生木破砕物の発酵を促進させることも可能となる。
【0032】
さらに、本態様の生木は、乾燥しきっていなければ、その形状等が特に限定されるものではなく、例えば、剥皮処理がされていない原木の状態であっても良いし、剥皮処理された原木の状態であっても良い。また、生木の破砕は、木材の破砕や樹皮の破砕と同時に行っても良い。更に、生木を本発明における木材として利用して、生木の破砕物により、木質細片を構成することも可能である。
【0033】
また、本発明の第十の態様は、前記第一乃至第九の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材の製造方法であって、(a)木材を破砕して、木材破砕物を得る木材破砕工程と、(b)樹皮を破砕して、樹皮破砕物を得る樹皮破砕工程と、(c)前記木材破砕物及び/又は前記樹皮破砕物の細長比を調整する細長比調整工程と、(d)豚及び/又は牛の糞尿を曝気処理する曝気処理工程と、(e)前記曝気処理工程によって得られた豚及び/又は牛の糞尿と前記細長比調整工程によって細長比が調整された前記木材破砕物及び/又は前記樹皮破砕物を含んで構成された木質細片を混合する混合工程と、(f)前記混合工程によって得られた混合物を発酵させる混合物発酵工程とを含むことを、特徴とする。
【0034】
このような本態様の製造方法に従えば、木質細片が、木材破砕物や樹皮破砕物を特定の細長形状としたものを少なくとも一部に含んで構成されて、かかる木質細片と、曝気処理された豚や牛の糞尿とが混合された混合物が、混合物発酵工程において発酵されるものであるところから、そのような混合物発酵工程において悪臭の発生を抑制することが出来ると共に、本製造手法に従って製造された糞尿処理基材を利用して、動物糞尿を処理する際にも、悪臭の発生を抑えることが出来るのである。
【0035】
なお、本態様における細長比調整工程は、例えば、木材や樹皮を潰して破砕する形式でなく、前述の如き叩いて砕く形式のハンマークラッシャ等の木材破砕機を採用して、木材破砕物や樹皮破砕物を得ることにより、特別な調整工程を必要とすることなく、目的とする細長比を有する木質細片を得ることが出来る。この場合には、細長比調整工程が、木材破砕工程及び樹皮破砕工程において同時に実施されることとなる。より好適には、かくの如き木材破砕機で木材を破砕する際、それと一緒に樹皮も処理容器に入れて、それら木材と樹皮とを同時に破砕処理することが望ましい。これにより、破砕され難い樹皮も、破砕された木材によって打ち当たって破砕される確率が向上し、効率的な破砕処理が実現され得る。
【0036】
また、本態様における木材破砕工程と樹皮破砕工程は、それぞれ一回だけ行っても良いし、或いは目的とする大きさが得られるまで、段階的に複数回行っても良い。更に、混合工程は、例えば、羽根等の撹拌手段を利用して、所定時間撹拌することで有利に実現される。また、混合物発酵工程は、例えば、混合工程によって得られた混合物を屋内において換気した状態で、所定の高さに積み上げておくことで有利に実現される。なお、積み上げた混合物は、その積上げ高さを考慮して、十分に内部まで空気が行き渡り難いと判断された場合には、適当な時間或いは日数で切返しを行って、内部と表層の部分を入れ替えることが望ましく、それによって、全体として、略均一の発酵が行われる。
【0037】
また、本態様に従って糞尿処理基材を製造する際には、上記の工程に加えて、豚糞及び/又は牛糞の発酵工程を別途設け、この豚糞及び/又は牛糞の発酵工程によって得られた発酵状態又は略発酵状態の豚糞及び/又は牛糞を混合工程において他の材料と一緒に混合し、この混合工程によって得られた混合物を混合物発酵工程で発酵させるようにすることが望ましい。これにより、目的とする糞尿処理基材を有利に得ることが出来る。また、特に、そうした場合には、混合物に発酵状態又は略発酵状態の豚糞や牛糞が混ざっていることから、混合物が混合工程において高温とならず、混合物発酵工程から高温になる。更に、この場合においては、発酵状態又は略発酵状態の豚糞や牛糞が混合されていることから、発酵熱を高温にすることが可能となり、この発酵熱を利用して、糞尿処理基材に不要な微生物を殺すことが可能となる。
【0038】
なお、豚糞及び/又は牛糞の発酵工程は、例えば、豚舎や牛舎から集められた豚糞及び/又は牛糞を、好ましくはコンクリート被覆等で不透水性とした地盤上に積み上げて、数日から数週間の間、日陰で自然発酵させること等により有利に実現される。
【0039】
また、本態様に従って糞尿処理基材を製造する場合には、混合工程において米糠を他の材料と一緒に混合し、混合工程で得られた混合物を混合物発酵工程で発酵させるようにすることが望ましい。これにより、目的とする糞尿処理基材を有利に得ることが可能となる。なお、米糠としては、精米で廃棄処分されるものや市場に流通する任意のものを採用することが出来る。
【0040】
さらに、このようにして糞尿処理基材を製造する場合には、上述の工程に加えて、生木を破砕する生木破砕工程、及びこの生木破砕工程によって得られた生木破砕物を発酵させる生木破砕物発酵工程を別途設け、これら生木破砕工程と生木破砕物発酵工程とを行うことによって得られた発酵した生木破砕物を混合工程において他の材料と一緒に混合し、この混合物を混合物発酵工程において発酵させるようにすることが望ましい。これにより、目的とする糞尿処理基材を有利に得ることが出来る。
【0041】
なお、ここでの生木破砕工程は、例えば、生木を破砕機で破砕することによって有利に実現される。また、生木破砕物発酵工程は、例えば、生木破砕物に付着している微生物を利用して発酵させることで有利に実現される。更に、生木破砕工程は、木材破砕工程や樹皮破砕工程と同時に行っても良いし、生木を木材破砕物や樹皮破砕物として採用して、生木で木質細片を構成しても良い。
【0042】
本発明の第十一の態様は、前記第一乃至第九の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材を用いた有機廃棄物の処理方法を、特徴とする。そこにおいて、糞尿処理基材を用いて有機廃棄物を処理する場合には、糞尿処理基材を、有機廃棄物に振り掛けたり、有機廃棄物の中に埋め込んだりしても良いし、有機廃棄物の層と糞尿処理基材の層とを積層するようにしても良いし、有機廃棄物を糞尿処理基材で覆うようにしても良い。また、糞尿処理基材を有機廃棄物中に混合しても良い。本態様において使用される糞尿処理基材と有機廃棄物の割合は、3:1程度が望ましい。この程度において良好な熱をもって効率的に発酵、分解処理が実施される。しかしながら、有機廃棄物の種類によっては、糞尿処理基材と有機廃棄物の割合が、4:1等、適当な割合で使用される。なお、ここでいう有機廃棄物とは、動物糞尿の他に、生ゴミ、草木、生魚、動物の死骸等の各種の有機体乃至は有機物質を含む廃棄物をいう。
【0043】
本発明の第十二の態様は、前記第十一の態様に係る有機廃棄物の処理方法において、前記第一乃至第九の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材を前記有機廃棄物に混合することにより、該有機廃棄物を分解処理するようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従えば、有機廃棄物の分解処理を、より効率的に行うことが可能となる。
【0044】
本発明の第十三の態様は、前記第十二の態様に係る有機廃棄物の処理方法において、前記第一乃至第九の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材と前記有機廃棄物とを収容するための収容部と、該収容部内に略水平に延びるように配設された回転軸と、該回転軸を回転駆動させるための駆動手段と、該回転軸の軸方向一端部から中央部に向かって該回転軸回りの一方向に螺旋状に並べられて、該回転軸に固定された複数の第一の撹拌羽根と、該回転軸の軸方向他端部から中央部に向かって該回転軸回りの一方向とは反対方向に螺旋状に並べられて、該回転軸に固定された複数の第二の撹拌羽根とを備えた混合装置を用いて、前記糞尿処理基材と前記有機廃棄物とを混合するようにしたことを、特徴とする。
【0045】
このような本態様に従えば、混合装置の収容部内に収容された糞尿処理基材と有機廃棄物とが、回転軸の回転駆動により、複数の第一の撹拌羽根と複数の第二の撹拌羽根にて、収容部の両端部側から中央に向かって移動せしめられつつ、十分に混合乃至は混練される。また、その際に、それら糞尿処理基材と有機廃棄物、更にはそれらの混合物が、収容部内を、その両端部側から中央に向かって移動せしめられるようになるため、そのような移動により、糞尿処理基材と有機廃棄物とそれらの混合物が、収容部の壁部の内面に押し付けられ、その押付け力にて潰されたり、かかる壁部の内面に固まった状態で付着してしまうようなことが、有利に回避される。従って、かかる本態様によれば、糞尿処理基材と有機廃棄物の混合、ひいては有機廃棄物の分解処理を、更に一層効率的に且つスムーズに行うことが可能となる。
【0046】
また、本態様に従って有機廃棄物の処理を行う場合には、回転軸に対して軸直角方向に離間した位置において、回転軸の軸方向一端部から中央部に向かって回転軸回りの一方向に螺旋状に延びる帯体からなり、回転軸に固定された複数の第一の撹拌羽根を先端部同士において相互に連結する第一の連結体と、回転軸に対して軸直角方向に離間した位置において、回転軸の軸方向他端部から中央部に向かって回転軸回りの一方向とは反対方向に螺旋状に延びる帯体からなり、回転軸に固定された複数の第二の撹拌羽根を先端部同士において相互に連結する第二の連結体とを、混合装置に更に設けることが望ましい。これによって、第一及び第二の撹拌羽根の強度が向上し、混合装置の使用耐久性が有利に高められるだけでなく、それら第一及び第二の撹拌羽根による糞尿処理基材と有機廃棄物の混合が、より確実に且つより十分に為され得る。また、収容部内への異物の混入時の噛込みも防止出来る。
【0047】
なお、本態様において使用される混合装置の駆動手段は、例えば、電動モータ等、回転軸を自動的に回転駆動させ得るものであっても良いし、例えば、ハンドル等、回転軸を手動で回転駆動させ得るものであっても良い。また、第一の撹拌羽根や第二の撹拌羽根としては、例えば、回転軸に対して略軸直角方向に延び出し且つ略軸方向に広がるように配置された状態で、回転軸に固定された平板形態を呈する撹拌羽根が採用される。
【0048】
本発明の第十四の態様は、前記第十一乃至前記第十三の態様のうちの何れか一つの態様に係る有機廃棄物の処理方法において、前記第一乃至第九の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材を用いて前記有機廃棄物を処理する前に、該有機廃棄物に対して、蒸気に晒すと共に、加熱して、更に、攪拌する事前処理を施し、その後、かかる事前処理後の有機廃棄物を冷却又は一定の温度にしてから該糞尿処理基材を用いて処理するようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従えば、有機廃棄物に対して事前処理が施されるようになっていることから、有機廃棄物において分子量の大きいものや分解され難いものが、糞尿処理基材を用いた処理の前に予め分解等されて、分子量の小さいものや分解されやすいものになる。これにより、例えば、野菜屑やみかんの皮等のように、発酵が極めて困難な有機廃棄物も簡単に発酵処理することが可能となり、その結果、有機廃棄物の発酵処理に要する時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0049】
また、発酵処理に際しての異臭の発生を抑えることも可能となる。これにより、発酵処理に際して激しい異臭が発生する生魚やアラ,肉等を発酵処理する場合であっても、異臭の発生を極めて効果的に抑えることが可能となる。
【0050】
そこにおいて、本態様では、事前処理において行われる、有機廃棄物を蒸気に晒すことと、有機廃棄物を加熱することとは、有機廃棄物を攪拌する際に、或いは、有機廃棄物を攪拌する前に行われていれば良い。また、有機廃棄物を蒸気に晒すことと、有機廃棄物を加熱することとを同時に行っても良いし、或いは、それらの何れか一方を先に行って、その後に他方を行うようにしても良い。
【0051】
また、本態様において、有機廃棄物を蒸気に晒すとは、例えば、有機廃棄物に対して蒸気を噴射したり、或いは、有機廃棄物が収容された容器内に蒸気を噴射したりすること等によって、有利に実現される。更にまた、本態様において、蒸気は、蒸気そのものが供給されるようになっていても良いし、或いは、液体の状態で供給された後、加熱によって蒸気とされるようになっていても良い。そして、有機廃棄物を蒸気に晒すという処理は、有機廃棄物の中でも、野菜や果実及びそれらの屑,魚を含む動物の死骸や食べ残り物,草木等の植物等を事前処理する場合に、特に効果的である。
【0052】
また、本態様において、加熱は、例えば、有機廃棄物を収容した容器を電気ヒーター等で加熱したり、或いは、有機廃棄物を加熱した蒸気に晒すこと等によって、有利に実現される。特に、有機廃棄物を加熱した蒸気に晒す場合には、有機廃棄物を蒸気に晒すことと、有機廃棄物を加熱することとを、同時に行うことが可能となる。更にまた、加熱の温度は、有機廃棄物の種類や処理の目的等によって適宜変更されるものであるが、加熱温度が低過ぎると、有機廃棄物に対する事前の分解処理効果が安定して発揮され難くなってしまう一方、加熱温度が高過ぎると、有機廃棄物が事前処理において分解され過ぎてしまい、その後の糞尿処理基材を用いた発酵分解処理がされ難くなってしまう。なお、加熱温度の好ましい範囲は、100℃〜200℃の範囲であるが、上述の如く、加熱温度は、有機廃棄物の種類や処理の目的等によって適宜に変更されるものであって、かかる範囲に限定されるものではない。
【0053】
また、本態様において、攪拌は、例えば、有機廃棄物を収容する容器内で攪拌羽根が設けられた回転軸を駆動手段で回転駆動すること等によって、有利に実現される。その際、回転軸は、容器内で略水平方向に延びるように配設されていると共に、攪拌羽根は、回転軸の軸方向一端部から中央部に向って回転軸回りの一方向に螺旋状に並んでいる複数の第一の攪拌羽根と、回転軸の軸方向他端部から中央部に向って回転軸回りの一方向とは反対方向に螺旋状に並んでいる複数の第二の攪拌羽根とによって構成されていることが望ましい。これにより、有機廃棄物が回転軸の回転駆動により、複数の第一の攪拌羽根と複数の第二の攪拌羽根によって容器の両端部から中央に向って移動されつつ、十分に混合乃至は混練される。また、このような有機廃棄物の移動により、有機廃棄物が容器の壁部の内面に押し付けられ、かかる壁部の内面に固まった状態で付着してしまうことが、有利に回避される。その結果、有機廃棄物の攪拌、延いては、有機廃棄物に対する事前の分解処理を、効率的に且つスムーズに行うことが可能となる。
【0054】
また、本態様において、「事前処理後の有機廃棄物を冷却又は一定の温度にして」とは、事前処理が施されることによって高温となった有機廃棄物の温度を下げることを意味する。そこにおいて、一定の温度とは、例えば、糞尿処理基材を用いた処理を直ぐに行う場合には、発酵処理に有効な微生物が活性化する温度をいい、糞尿処理基材を用いた処理を直ぐに行わない場合には、大気の温度をいう。更にまた、事前処理後の有機廃棄物の温度を下げる方法は、特に限定されるものではなく、例えば、事前処理後の有機廃棄物をそのまま放置しておく方法であっても良いし、送風機等の風を利用する方法であっても良いし、或いは冷風や冷気を用いても良い。また、事前処理後の有機廃棄物の温度を下げる場合、事前処理後の有機廃棄物を攪拌していても良い。
【0055】
また、事前処理に要する時間は、30分〜120分、好ましくは、60分〜90分とされている。蓋し、事前処理の時間が短い場合、有効な分解処理効果を得ることが難しく、事前処理の時間が長い場合、その後の糞尿処理基材を用いた発酵処理を有利に進めることが難しくなるからである。
【0056】
本発明の第十五の態様は、前記第十四の態様に係る有機廃棄物の処理方法であって、前記事後処理後の有機廃棄物の温度を強制的に下げるようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従えば、事前処理後の有機廃棄物の温度を、発酵処理に有効な微生物が活性化する温度(一般的には、20℃〜80℃の範囲とされている)まで速やかに下げることが可能となる。これにより、事前処理が終了してから糞尿処理基材を用いた発酵処理が開始されるまで時間を短縮することが可能となる。なお、事前処理後の有機廃棄物の温度を強制的に下げる方法としては、例えば、事前処理後の有機廃棄物に対して送風機や冷風機等で風を送ってやること等によって、有利に実現される。
【0057】
本発明の第十六の態様は、前記第十四又は第十五の態様に係る有機廃棄物の処理方法であって、前記事前処理後の有機廃棄物の温度を下げる際に、該事前処理後の有機廃棄物を攪拌するようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従えば、事後処理後の有機廃棄物の温度を速やかに且つ略均一に下げることが可能となる。
【0058】
本発明の第十七の態様は、鶏舎の床をコンクリート製として、その上に、前記第一乃至第九の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材を所定厚さで敷設して、該床の上方に鶏のゲージを設けることにより、該糞尿処理基材の敷設された床の上に鶏の糞尿が落下するようにした鶏舎用の糞尿処理構造を、特徴とする。
【0059】
また、本発明の第十八の態様は、(g)コンクリート製の床と、(h)該床の上に敷設された、前記第一乃至第九の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材と、(i)該床の上方に設置された鶏用のゲージと、(j)該糞尿処理基材が敷設された該床の上に、該ゲージに収容された鶏から排出されて落下した糞尿を集めて積み上げておく発酵スペースとを含んで構成した鶏舎における糞尿処理システムを、特徴とする。
【0060】
このような本発明の第十七の態様に係る鶏舎用の糞尿処理構造や本発明の第十八の態様に係る鶏舎における糞尿処理システムにおいては、鶏舎において極めて大きな問題となっている悪臭を、殆ど問題とならない程度にまで軽減することが可能となる。そして、堆積した鶏糞は、数日毎或いは数週間毎に、敷設した糞尿処理基材と共に集めて、それに必要に応じて前記第一乃至第九の態様に係る糞尿処理基材を更に添加した後、混合し、発酵処理することによって、良好な堆肥とすることが出来るのである。
【0061】
また、上述の如き本発明の第十八の糞尿処理システムにおいては、堆積した鶏糞が糞尿処理基材によって発酵処理されることによって、その量が減少され得る。
【0062】
本発明の第十九の態様は、前記第一乃至第九の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材を、家畜が放し飼いにされている敷地に所定厚さで敷き詰めておくことにより、該家畜から排出された糞尿が該糞尿処理基材の上に落下するようにした放し飼いの家畜用糞尿処理システムを、特徴とする。
【0063】
このような本態様においては、家畜の糞尿が糞尿処理基材によって発酵処理されることによって、その量が減少され得る。
【0064】
そこにおいて、本態様では、家畜が敷地内を歩いたりすること等によって、糞尿処理基材と糞尿が混合乃至は混練されたり、或いは、糞尿処理基材と糞尿の混合物が切り返されたりすることとなる。その結果、家畜の行動によって、糞尿処理基材による家畜の糞尿の発酵処理を進行させることが可能となり、また、悪臭の発生を抑えることも可能となる。なお、敷地に敷き詰められた糞尿処理基材は、数日毎に適宜入れ換えるようにしても良く、その際、入れ換える量は、一部であっても良いし、全部であっても良い。
【0065】
本発明の第二十の態様は、前記第一乃至第九の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材を用いて家畜の糞尿を発酵処理することにより、再生該糞尿処理基材を得る再生糞尿処理基材の製造方法を、特徴とする。
【0066】
また、本発明の第二十一の態様は、前記第二十の態様に係る再生糞尿処理基材の製造方法によって製造された再生糞尿処理基材を、特徴とする。
【0067】
上述の如き本発明の第二十の態様に係る再生糞尿処理基材の製造方法によって製造された本発明の第二十一の態様に係る再生糞尿処理基材においては、糞尿に対する発酵処理が進行することによって、発酵処理に有用な微生物が繁殖しており、また、有用な微生物が糞尿の栄養分によって一層活性化する傾向にあることから、一層優れた処理効果を発揮することが可能となる。なお、かかる再生糞尿処理基材は、予め多量の木質細片がある状態で糞尿に対する発酵処理を進めることにより、或いは、糞尿に対する発酵処理が進行する際に、木質細片を追加することによって、その量を増やすことが可能となる。
【0068】
本発明の第二十二の態様は、動物の糞尿に対して、前記第一乃至第九の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材を混合した後、かかる混合物を堆積することにより発酵処理する動物糞尿の処理方法を、特徴とする。このような本態様に従えば、従来から問題となっていた、例えば豚や牛等の家畜や、犬や猫等のペット、或いは人間の糞尿を、殆ど臭いを発することなく簡易に処理して、堆肥化することが出来るのである。
【0069】
本発明の第二十三の態様は、前記第二十二の態様に係る動物糞尿の処理方法において、前記混合物を堆積するに際して、前記第一乃至第九の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材を、該堆積物の表面に5〜30mmの厚さの層状にふりかけて、カバー層を形成することを、特徴とする。この本態様に従って、混合物を、例えば山状や畝状に堆積して、表層にカバー層を形成しておくことにより、発酵が効率的に行われ得る。この理由は、特定の細長比を有する木質細片を含んで構成された糞尿処理基材によってカバー層が形成されることで、相当量の空気が混合物内に入り込むと共に、保温効果が有利に発揮されて、積み上げた混合物の発酵が速やかに行われることに基づくものと考えられる。
【0070】
本発明の第二十四の態様は、前記第二十二又は前記二十三の態様に係る動物糞尿の処理方法において、前記混合物を堆積するに際して、そのベースを不透水性の表面で形成すると共に、かかる表面に対して、前記第一乃至第九の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材を敷設するようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従えば、地盤からの水分の上昇によって混合物の発酵が阻害されることを防止することが出来、また、敷設された糞尿処理基材によって適当な空気の流入と保温効果が発揮されると共に、糞尿処理基材自体の分解能が動物糞尿の底面からも作用し得ることとなる。
【0071】
本発明の第二十五の態様は、前記第二十二乃至第二十四の態様のうちの何れか一つの態様に係る動物糞尿の処理方法において、前記第一乃至第九の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材と前記動物の糞尿とを収容するための収容部と、該収容部内に略水平に延びるように配設された回転軸と、該回転軸を回転駆動させるための駆動手段と、該回転軸の軸方向一端部から中央部に向かって該回転軸回りの一方向に螺旋状に並べられて、該回転軸に固定された複数の第一の撹拌羽根と、該回転軸の軸方向他端部から中央部に向かって該回転軸回りの一方向とは反対方向に螺旋状に並べられて、該回転軸に固定された複数の第二の撹拌羽根とを備えた混合装置を用いて、前記糞尿処理基材と前記動物糞尿とを混合するようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従えば、前記せる本発明の第十三の態様に係る有機廃棄物の処理方法において奏される作用と同様な作用によって、糞尿処理基材と動物糞尿の混合、ひいては動物糞尿の分解処理を、更に一層効率的に且つスムーズに行うことが可能となる。
【0072】
本発明の第二十六の態様は、前記第二十二乃至第二十五の態様のうちの何れか一つの態様に係る動物糞尿の処理方法において、前記動物の糞尿と前記第一乃至第九の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材とを混合する前に、該動物の糞尿に対して、蒸気への晒し,加熱,攪拌の少なくとも一つを行う事前処理を施し、その後、かかる事前処理後の動物の糞尿を冷却又は一定の温度にしてから該糞尿処理基材と混合するようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従えば、動物の糞尿に対して事前処理が施されるようになっていることから、糞尿処理基材を用いた処理を効率的に行うことが可能となる。これにより、動物の糞尿の発酵処理に要する時間を大幅に短縮することが可能となる。また、発酵処理に際しての異臭の発生を抑えることも可能となる。
【0073】
なお、本態様において、加熱と攪拌の両方を行う場合、加熱しながら攪拌しても良いし、加熱した後で、攪拌するようにしても良い。また、本態様において、蒸気への晒しと攪拌の両方を行う場合、蒸気へ晒しながら攪拌しても良いし、蒸気に晒した後で攪拌するようにしても良い。更にまた、蒸気への晒しと加熱の両方を行う場合、それらを同時に行うようにしても良いし、蒸気に晒してから加熱するようにしても良い。また、加熱した蒸気を用いることにより、蒸気処理と加熱処理を同時に行うことも可能となる。特に、糞が乾燥している時や凍っている時又はそれらが部分的である時には、蒸気処理を施すことによって水分を調節することが可能となり、加熱処理をすることによって解凍することが可能となり、攪拌処理をすることによって糞の状態を均一にすることが可能となる。それ故、目的とする事前処理を有利に実現することが可能となる。また、本態様において、加熱や攪拌は、本発明の第十四の態様に係る有機廃棄物の処理方法において行われる方法と同じ方法によって行うことが可能である。また、本態様において、「事前処理後の動物の糞尿を冷却又は一定の温度にして」や「一定の温度」とは、本発明の第十四の態様に係る有機廃棄物の処理方法において説明したことをいう。
【0074】
本発明の第二十七の態様は、前記第二十六の態様に係る動物糞尿の処理方法であって、前記事前処理後の動物の糞尿の温度を強制的に下げるようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従えば、事前処理後の動物の糞尿の温度を目的とする温度まで速やかに下げることが可能となる。
【0075】
本発明の第二十八の態様は、前記第二十六又は第二十七の態様に係る動物糞尿の処理方法であって、前記事前処理後の動物糞尿の温度を下げる際に、該事前処理後の動物の糞尿を攪拌するようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従えば、事前処理後の動物の糞尿の温度を速やかに且つ略均一に下げることが可能となるのである。
【0076】
本発明の第二十九の態様は、動物の糞尿を発酵させて、堆肥を製造する方法において、(k)前記第一乃至第九の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材を準備する糞尿処理基材準備工程と、(l)前記動物の糞尿に対して、前記糞尿処理基材を混合する混合工程と、(m)前記混合工程によって得られた混合物を堆積することにより発酵せしめる混合物発酵工程とを含むことを、特徴とする。このような本態様に従えば、家畜やペット、人間の糞尿を、殆ど臭いを生ぜしめることなく簡易に処理して、良好な堆肥を製造することが出来る。
【0077】
本発明の第三十の態様は、前記第二十九の態様に係る堆肥の製造方法において、前記混合物発酵工程において前記混合物を堆積するに際して、前記第一乃至第九の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材を、該堆積物の表面に5〜30mmの厚さの層状にふりかけて、カバー層を形成するようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従えば、動物糞尿と糞尿処理基材との混合物の発酵が、より効率的に行われ得て、目的とする堆肥が、一層良好に製造され得る。
【0078】
本発明の第三十一の態様は、前記第二十九又は第三十の態様に係る堆肥の製造方法において、前記混合物発酵工程において前記混合物を堆積するに際して、そのベースを不透水性の表面で形成すると共に、かかる表面に対して、前記第一乃至第九の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材を敷設するようにしたことを、特徴とする。この本態様に従えば、地盤からの水分の上昇による混合物の発酵の阻害が防止され得ると共に、敷設された糞尿処理基材による適当な空気の流入と保温効果が発揮され、更に、糞尿処理基材自体の分解能が動物糞尿の底面からも作用せしめられ得る。その結果として、目的とする堆肥が、より良好に製造され得る。
【0079】
本発明の第三十二の態様は、前記第二十九乃至第三十一の態様のうちの何れか一つの態様に係る堆肥の製造方法において、前記第一乃至第九の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材と前記動物の糞尿とを収容するための収容部と、該収容部内に略水平に延びるように配設された回転軸と、該回転軸を回転駆動させるための駆動手段と、該回転軸の軸方向一端部から中央部に向かって該回転軸回りの一方向に螺旋状に並べられて、該回転軸に固定された複数の第一の撹拌羽根と、該回転軸の軸方向他端部から中央部に向かって該回転軸回りの一方向とは反対方向に螺旋状に並べられて、該回転軸に固定された複数の第二の撹拌羽根とを備えた混合装置を用いて、前記糞尿処理基材と前記動物糞尿とを混合するようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従えば、糞尿処理基材と動物糞尿の混合が、より効率的に行われ得、それによって、目的とする堆肥の製造の効率化が図られ得る。
【0080】
本発明の第三十三の態様は、前記第二十九乃至第三十二の態様のうちの何れか一つの態様に係る堆肥の製造方法において、前記第一乃至第九の態様のうちの何れか一つの態様に係る糞尿処理基材と前記動物の糞用を混合する前に、該動物の糞尿に対して、蒸気への晒し,加熱,攪拌の少なくとも一つを行う事前処理を施し、その後、かかる事前処理後の動物の糞尿を冷却又は一定の温度にしてから該糞尿処理基材と混合するようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従えば、前述の如き本発明の第二十六の態様に係る有機廃棄物の処理方法において奏される作用と同様な作用によって、動物の糞尿の発酵処理に要する時間を大幅に短縮することが出来ると共に、発酵処理に際しての異臭の発生を抑えることが可能となる。
【0081】
本発明の第三十四の態様は、前記第三十三の態様に係る堆肥の製造方法において、前記事前処理後の動物の糞尿の温度を強制的に下げるようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従えば、事後処理後の動物の糞尿の温度を目的とする温度まで速やかに下げることが可能となる。
【0082】
本発明の第三十五の態様は、前記第三十三又は第三十四の態様に係る堆肥の製造方法において、前記事前処理後の動物の糞尿の温度を下げる際に、該事前処理後の動物の糞尿を攪拌するようにしたことを、特徴とする。このような本態様に従えば、事前処理後の動物の糞尿の温度を速やかに且つ略均一に下げることが可能となる。
【0083】
本発明の第三十六の態様は、前記第二十九乃至第三十五の態様のうちの何れか一つの態様に係る堆肥の製造方法によって製造した堆肥を、特徴とする。このような本態様に係る堆肥にあっては、効率的且つ良好な生産性が確保され得る。
【発明の効果】
【0084】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う糞尿処理基材においては、木質細片に含まれている木材破砕物と樹皮破砕物の少なくとも一方が特定範囲の細長比とされた細長形状を有していることから、微生物による動物糞尿の発酵分解が効率的に行われ得て、悪臭の発生が、極めて有利に抑えられ得ることとなるのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0085】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0086】
図1は、本発明に従う糞尿処理基材の製造工程を示すフローチャートである。木材破砕工程(S1)では、破砕機を用いて木材を破砕する。なお、ここで用いられる木材には、例えば、樹皮を剥皮処理した原木や製材屑等が使用される。また、そのような原木や製材屑は、必要に応じて切削し、適当な大きさに加工した状態で用いられる。更に、木材の種類も限定されるものではなく、例えば、針葉樹であっても良いし、広葉樹であっても良い。そして、そのような各種の木材のうちの1種類のみが単独で、或いは複数種類のものが適宜に組み合わされて、使用される。また、かかる木材は、生木であっても、何等差し支えない。
【0087】
一方、それらの木材を破砕する破砕機としては、従来から公知の各種の破砕機が、何れも用いられ得るが、例えば、比較的に高速で回転するパドルや突起等で叩いて衝撃を与えることで木材を破砕する構造のハンマークラッシャが用いられる場合には、木材の繊維方向に長尺とされた破砕物が得られる。
【0088】
次に、細長比調整工程(S2)において、木材破砕工程(S1)で得られた木材の破砕物の細長比を調整して、図2に示される如き細長い針状形態を呈する木材破砕物10を、多数得る。このとき、上述の如く、木材破砕工程(S1)での木材の破砕がハンマークラッシャを用いて行われる場合、木材が繊維方向に長尺とされた状態で破砕されるため、そのようなハンマークラッシャを用いて木材の破砕を行うことによって、細長比調整工程(S2)が、かかる木材破砕工程(S1)と同時に行われることとなる。
【0089】
また、細長比調整工程(S2)は、その他、木材破砕工程(S1)で得られた木材の破砕物を篩に掛けること等によって、木材破砕工程(S1)とは別個に行われる。即ち、細長形状の矩形の篩目を有するスクリーンの複数枚が互いに所定距離を隔てて重ね合わされて配置された構造の篩を用い、この篩にて、木材破砕工程(S1)で得られた木材の破砕物を選別することにより、目的とする細長形状の木材破砕物10を得ることが出来る。
【0090】
そして、このような細長比調整工程(S2)で得られる木材破砕物10は、その幅寸法:aが、好ましくは1〜10mm、より好ましくは3〜8mmとされる一方、長さ寸法:bが、好ましくは5〜100mm、より好ましくは15〜80mmとされる。なお、本実施形態では、木材破砕物10の幅寸法:aとして、木材破砕物10の最大幅が採用され、また、その長さ寸法:bとして、その最大長さが採用される。
【0091】
そして、特に、かかる木材破砕物10にあっては、幅寸法:aと長さ寸法:bとが上記の如き好適な範囲内の値とされた上で、その細長比、即ち、長さ寸法:bを幅寸法:で除した値:b/aが2〜20とされている。換言すれば、細長比調整工程(S2)によって、細長比:b/aが2〜20となるように、幅寸法:aと長さ寸法bとが調整された木材破砕物10を得るのである。なお、細長比調整工程(S2)において、細長比:b/aが2〜20とされた木材破砕物10のみを得ることが困難な場合には、細長比:b/aが2〜20の範囲外の値とされた木材破砕物10も、幅寸法:aと長さ寸法:bとが共に上述の範囲内の値とされておれば、多少含まれていても良い。
【0092】
そして、そのような木材破砕工程(S1)と細長比調整工程(S2)の実施に際しては、適当な細長比:b/aを有する木材破砕物10が十分に得られるまで、それら2工程を繰り返し行っても良い。また、木材破砕工程(S1)を適数回繰り返した後、細長比調整工程(S2)を行うようにしても良い。
【0093】
一方、かかる木材破砕工程(S1)と細長比調整工程(S2)とは別に、樹皮破砕工程(S3)において、原木から剥皮して得られた樹皮を、破砕機を用いて破砕する。なお、この破砕機による破砕前に、原木から剥皮された樹皮を適当な大きさに切断しておいても良い。また、ここで使用される樹皮は、針葉樹から剥皮したものであっても良いし、広葉樹から剥皮したものであっても良い。そして、そのような各種の樹皮のうちの1種類のみが単独で、或いは複数種類のものが適宜に組み合わされて、使用される。また、かかる樹皮は、生木から剥皮したものと、伐採後の樹木から剥皮したもののどちらのものであっても良い。また、そのような樹皮を破砕する破砕機には、従来から公知のものが何れも使用され得る。
【0094】
次に、細長比調整工程(S4)において、樹皮破砕工程(S3)で得られた樹皮の破砕物の細長比を調整して、図3に示される如く、木材破砕物10と同様な細長い針状形態を呈する樹皮破砕物12を、多数得る。なお、ここでは、木材破砕工程(S1)と細長比調整工程(S2)とを行う場合と同様に、樹皮破砕工程(S3)を前記せるハンマークラッシャを用いて実施すれば、細長比調整工程(S4)を、樹皮破砕工程(S3)と同時に行うことが出来る。また、特に、ハンマークラッシャを用いて、木材と樹皮とを同時に破砕すれば、破砕され難い樹皮が、硬い木材と打ち当たって効率的に破砕され得るばかりでなく、木材破砕工程(S1)と細長比調整工程(S2)と樹皮破砕工程(S3)と細長比調整工程(S4)の4工程を、一挙に同時に行うことが可能となる。また、細長比調整工程(S4)は、その他、樹皮破砕工程(S3)で得られた樹皮材の破砕物を、木材破砕工程(S1)の細長比調整工程(S2)で使用される篩と同じ篩に掛けること等によって、樹皮破砕工程(S1)とは別個に行うことも出来る。
【0095】
そして、このような細長比調整工程(S4)で得られる樹皮破砕物12は、その幅寸法:aと長さ寸法:bとが、木材破砕工程(S1)及び細長比調整工程(S2)の実施によって得られる木材破砕物10の幅寸法:a及び長さ寸法:bと同一の範囲内の寸法とされると共に、細長比:b/aも、かかる木材破砕物10の細長比:b/aと同様に、2〜20の範囲内の値とされる。
【0096】
また、かかる樹皮破砕工程(S3)と細長比調整工程(S4)の実施に際しても、適当な細長比:b/aを有する樹皮破砕物12が十分に得られるまで、それら2工程を繰り返し行っても良く、或いは樹皮破砕工程(S3)を適数回繰り返した後、細長比調整工程(S4)を行うようにしても良い。
【0097】
さらに、それら木材破砕工程(S1)と細長比調整工程(S2)と樹皮破砕工程(S3)と細長比調整工程(S4)の4工程とは別に、曝気処理工程(S5)において、豚舎から集められた豚の糞尿を曝気槽に入れて、かかる豚の糞尿の曝気処理を行う。その際、豚の糞尿を、複数の曝気槽で、複数回において曝気処理しても良い。また、ここで用いられる曝気槽の構造は特に限定されるものではなく、例えばコンクリート製であっても、素堀のものであっても良い。特に、素堀の曝気槽にて曝気処理した場合には、曝気処理中に糞尿から発する悪臭が、土着菌の働きによって効果的に抑制され得る。なお、豚糞に代えて或いは豚糞に加えて牛糞を採用しても有効な作用効果の発揮されることが確認できているが、以下の実施形態では豚糞だけを用いるものとして説明する。
【0098】
次に、混合工程(S6)において、木材破砕工程(S1)及び細長比調整工程(S2)で得られた、細長比:b/aが調整済みの木材破砕物10と、樹皮破砕工程(S3)及び細長比調整工程(S4)で得られた、細長比:b/aが調整済みの樹皮破砕物12と、曝気処理工程(S5)で得られた曝気処理された豚の糞尿とを、混合して、混合物を得る。この混合工程(S6)は、例えば、混合されるべき材料の全てを公知のミキサー等に投入して、混合することによって、有利に実現される。
【0099】
そこにおいて、混合されるべき材料(木材破砕物10と樹皮破砕物12と曝気処理された豚の糞尿)の混合割合は、特に限定されるものではないものの、好ましくは、木材破砕物10と樹皮破砕物12との混合物、つまり木質細片の1立方メートルに対して、曝気処理された豚の糞尿が100〜200リットル程度の量において混合される割合とされる。また、木質細片を構成する木材破砕物10と樹皮破砕物12のそれぞれの量も、何等特定されるものでないところではあるが、例えば、樹皮破砕物12の体積が、木質細片の全体積(木材破砕物10の体積と樹皮破砕物12の体積の合計値)の1/3以上とされていることが、望ましい。
【0100】
なお、かかる混合工程(S6)では、木材破砕物10と樹皮破砕物12と曝気処理された豚の糞尿に対して、必要に応じて、米糠や発酵した豚糞、或いは略発酵した豚糞等が添加、混合される。それらの添加材料のうち、米糠としては、精米時に発生するもので、廃棄されるものや市場に提供されるものが、適宜に使用される。また、このような米糠の添加量は、好ましくは、木質細片(木材破砕物10と樹皮破砕物12)の1立方メートルに対して20〜30リットル程度とされる。
【0101】
また、発酵した豚糞には、豚舎から集められた豚糞に対して、それを堆積し、発酵させる豚糞発酵処理を施したものが使用される。更に、略発酵した豚糞とは、そのような豚糞発酵処理による発酵が八割程度か、それ以上に進んだ状態のものをいう。なお、かかる豚糞発酵処理を実施する際には、豚糞に、細かく切断された杉の皮を混ぜておくことが、望ましい。それによって、豚糞発酵処理中に生ずる悪臭を可及的に抑えることが出来る。また、混合工程(S6)で添加、混合される発酵した豚糞又は略発酵した豚糞の量は、木質細片の1立方メートルに対して10〜20リットル程度とされていることが、好ましい。
【0102】
その後、混合物発酵工程(S7)において、混合工程(S6)で得られた混合物を発酵させる。この混合物発酵工程(S7)は、例えば、図4に示されるように、木材破砕物10と樹皮破砕物12と曝気処理された豚の糞尿14と必要に応じて添加せしめられた上記の如き他の成分(図示せず)との混合物16を、ある程度の高さ:hにまで積み上げて、堆積し、その状態で、一定期間発酵させることによって実現される。これによって、細長比:b/aが2〜20とされた細長形状を呈する木材破砕物10及び樹皮破砕物12と、曝気処理された豚の糞尿14とを含んでなる、目的とする糞尿処理基材18を得るのである。
【0103】
なお、この混合物発酵工程(S7)の最中に、堆積せしめられた混合物16の切り返しを行っても良い。それによって、混合物16の発酵が効率的に且つ迅速に進行せしめられる。また、混合物16の積上げ高さ:hは、1.5〜3m程度とされていることが望ましい。何故なら、かかる高さ:hが1.5mよりも低いと、所定量の混合物16を堆積しておくために、大きなスペースが必要となるといった不具合が生ずるからであり、また、混合物16の積上げ高さ:hが3mよりも高くなると、自重により、混合物16の内部に空気が入る隙間が出来難くなり、それによって、発酵状態が悪化して、切返し時等に悪臭が発生するようになるからである。
【0104】
かくして、かくの如き一連の製造工程によって製造された糞尿処理基材18を用いて、家畜やペット、或いは人間の糞尿を分解処理する場合、糞尿処理基材18中に含まれる木材破砕物10と樹皮破砕物12とが、特定の範囲内の細長比:b/aを有する細長形状とされているところから、例えば、それらの動物糞尿に糞尿処理基材18を混合することにより、分解処理されるべき動物糞尿中に、適度な空気が取り込まれ得るようになって、好気性微生物の繁殖や活性化に適した好気的環境が、確実に形成され得ることとなる。しかも、糞尿処理基材18中には、動物糞尿の分解処理に有効な微生物(好気性のものと嫌気性ものの両方を含む)が存在している。従って、それらの微生物によって、動物糞用の分解処理が速やかに且つ確実に進行せしめられ得、その結果として、動物糞尿の分解処理時における悪臭の発生が、極めて効果的に抑えられ得るのである。
【0105】
また、製造工程中における木材破砕物10と樹皮破砕物12と曝気処理された豚の糞尿の混合物16の発酵工程中における悪臭の発生も、有利に抑制され得ることとなる。
【0106】
次に、このような糞尿処理基材18を用いて、動物糞尿のうち、例えば鶏の糞尿を分解処理する際の具体的な手順について、説明する。
【0107】
先ず、糞尿処理基材18と鶏の糞尿とを混合する。これらの混合に際しては、例えば、図5及び図6に示される如き混合装置20が、有利に用いられる。この混合装置20は、水平方向に隣り合って配置された、収容部としての収容槽22と、内部に駆動手段としての電動モータ(図示せず)が収納された収納部24とを有している。
【0108】
そして、収容槽22は、縦断面U字形状を呈する半割筒状形態をもって、水平方向に延びる、上方と軸方向両側とに向かってそれぞれ開口する胴体部26と、この胴体部26に対して、その軸方向両側開口部を覆蓋するようにして一体的に固設された二つの側壁部28,28とからなり、糞尿処理基材18と鶏の糞尿とを、それぞれ所定量において収容可能な大きさを有して、構成されている。また、かかる収容槽22にあっては、上方に向かって開口する胴体部26の開口部にて、糞尿処理基材18や鶏の糞尿を内部に投入するための投入口30が形成されている一方、胴体部の長さ方向略中央の底部部位には、内部に収容された収容物を外部に取り出すための取出口32が設けられている。更に、この取出口32は、カバー体34にて開閉可能に覆蓋されており、前記収納部24に設けられた開閉ハンドル36に対するスライド操作によって、自由に開閉せしめられるようになっている。
【0109】
また、このような収容槽22の内部には、その中心軸に沿って水平方向に延びる回転軸38が、両端部において、二つ側壁部28,28に対して回転可能に支持されて、配設されている。そして、この回転軸38は、一端部が、収納部24内に突入せしめられて、かかる収納部24内に収納された図示しない電動モータに連結されており、それによって、電動モータの駆動に伴って回転駆動せしめられるようになっている。
【0110】
さらに、かかる回転軸38にあっては、その外周面に、第一の撹拌羽根40と第二の撹拌羽根42が、それぞれ複数個ずつ固設されている。即ち、それら第一の撹拌羽根40と第二の撹拌羽根42は、何れも、ロッド状の支持部44と、細長い平板状を呈し、支持部44に沿って延びるように位置せしめられた状態で、幅方向の一方側の片縁部において、支持部44に一体的に固定された羽根部46とからなっている。
【0111】
そして、複数の第一の撹拌羽根40が、収容槽22内において、それぞれの羽根部46を収容槽22の軸方向に広がるように位置せしめて、回転軸38の駆動モータとの連結側端部から中央部に向かって右回りに螺旋状に並べられた状態で、支持部44の一端部において、回転軸38の外周面に固定されている。一方、複数の第二の撹拌羽根42は、収容槽22内において、それぞれの羽根部46を収容槽22の軸方向に広がるように位置せしめて、回転軸38の駆動モータとの連結側とは反対側の端部から中央部に向かって左回りに螺旋状に並べられた状態で、支持部44の一端部において、回転軸38の外周面に固定されている。そして、それら複数の第一の撹拌羽根40と複数の第二の撹拌羽根42は、何れも、回転軸38への固定状態下で、回転軸38の周方向において互いに同一の位相差を有して、位置せしめられていると共に、先端部が、収容槽22の胴体部26の内面の直近に位置せしめられている。
【0112】
また、収容槽22内には、回転軸38に対して軸直角方向に離間した位置において、回転軸38における複数の第一の撹拌羽根40の固定部分の周りを、軸方向中央部側に向かって右回りに螺旋状に延びる第一の連結体48が配置されて、この第一の連結体48により、複数の第一の撹拌羽根40が先端部同士において相互に連結されて、補強されている。一方、回転軸38に対して軸直角方向に離間した位置において、回転軸38における複数の第二の撹拌羽根42の固定部分の周りにも、かかる固定部分の周りを、軸方向中央部側に向かって左回りに螺旋状に延びる第二の連結体50が配置されて、この第二の連結体50により、複数の第二の撹拌羽根42が先端部同士において相互に連結されて、補強されている。更に、それら第一の連結体48と第二の連結体50は、それぞれ狭幅の帯状形態を呈し、厚さ方向両側の面を収容槽22の二つの側壁部28,28に対向させ、且つ外側の端面を胴体部26の内面との間に極僅かな隙間が形成されるように設置されている。
【0113】
そして、このような構造とされた混合装置20を用いる場合には、例えば、先ず、取出口32をカバー体34にて閉塞せしめた状態下において、処理されるべき鶏の糞尿と、糞尿処理基材18とを、投入口30を通じて収容槽22内に投入し、収容せしめる。なお、このとき、鶏の糞尿と糞尿処理基材18の収容槽22へのそれぞれの投入量は、例えば、後者が前者の3倍程度とされる。
【0114】
その後、或いはその前に、収納部24内に収納された電動モータを駆動させて、収容槽22内に設置された回転軸38を回転駆動させることにより、複数の第一の撹拌羽根40と複数の第二の撹拌羽根42とをそれぞれ回転せしめて、それら回転せしめられた各撹拌羽根40,42により、収容槽22内に収容された鶏の糞尿と糞尿処理基材18とを撹拌する。そして、このような撹拌操作を、例えば30分程度、連続的に実施することにより、鶏の糞尿と糞尿処理基材18とが十分に混合された混合物を得るのである。
【0115】
なお、この撹拌操作時には、鶏の糞尿の臭いが糞尿処理基材18にて吸着され、それによって、悪臭の発生が有利に抑制される。
【0116】
また、ここで用いられる混合装置20においては、第一の撹拌羽根40と第二の撹拌羽根42とが、回転軸38の両側端部から中央部に向かって、それぞれ右回りと左回りの互いに異なる方向に螺旋状に並べられているため、そのような各撹拌羽根40,42の回転に伴って、収容槽22内に投入された鶏の糞尿と糞尿処理基材18とが、各撹拌羽根40,42にて撹拌されつつ、収容槽22の軸方向中央部に向かって移動せしめられる。
【0117】
それ故、ここでの混合操作では、例えば、全ての撹拌羽根が、回転軸の軸方向一方側から他方側に向かって、右回りと左回りの何れが一方に螺旋状に並べられ、回転軸の回転駆動に伴って、鶏の糞尿と糞尿処理基材18とが、収容槽内を軸方向の一方の端部側から他方の端部側に移動せしめられるような構造とされた混合装置を用いる場合とは異なって、鶏の糞尿と糞尿処理基材18、更にはそれらの混合物が、収容槽22の側壁部28に押し付けられることにより、固まった状態で、側壁部28の内面に付着してしまうようなことが有利に防止される。
【0118】
また、かかる混合装置20にあっては、狭幅の帯状形態を呈する第一及び第二の連結体48,50が、厚さ方向両側の面を収容槽22の二つの側壁部28,28に対向させ、且つ外側の端面を胴体部26の内面との間に極僅かな隙間が形成された位置に設置されているところから、回転軸38の回転に伴って、収容槽22の胴体部26の内面が、第一連結体48と第二の連結体50とにて掻き取られて、かかる内面に、鶏の糞尿や糞尿処理基材18、更にはそれらの混合物が付着されるようなことも有利に防止される。これらによって、鶏の糞尿と糞尿処理基材18の混合操作を、より十分に且つスムーズに行うことが出来る。
【0119】
次に、鶏の糞尿と糞尿処理基材18の混合物を、混合装置20の収容槽22から、その底部に設けられた取出口32を通じて、外部に取り出す。このとき、上述せるように、混合操作中における収容槽20の胴体部26や側壁部28のそれぞれの内面への混合物等の付着が防止されるようになっているため、得られた混合物の全量が、収容槽22内から容易に取り出され得る。
【0120】
その後、かくして得られた鶏の糞尿と糞尿処理基材18の混合物を堆積して、発酵させる。このとき、前述せる如く、糞尿処理基材18による鶏糞尿の分解能が有利に発揮されて、鶏糞尿の発酵が効率的に進行せしめられ得るのであり、また、そのような発酵の進行中における悪臭の発生が、糞尿処理基材18によって極めて効果的に抑制され得るのである。
【0121】
なお、このような混合物の発酵は、単に、混合物を地面上に所定の高さで積み上げておくだけでも行われ得るが、好ましくは、図7に示されるように、地面を所定の広さにおいてコンクリートで被覆して、不透水性のベース52を形成した後、このベース52の表面上に、糞尿処理基材18を敷きならして、適当な厚さの糞尿処理基材層54を形成しておき、そして、この糞尿処理基材層54上に、鶏糞尿と糞尿処理基材18の混合物56を山状乃至は畝状に積み上げて、堆積する。更にまた、この山状乃至は畝状に堆積された混合物54の表面に、糞尿処理基材18を層状に振り掛けて、かかる糞尿処理基材18からなるカバー層58を形成する。そうした状態で、数日間放置して、発酵させるようにすることが、望ましいのである。勿論、この発酵中に、必要に応じて、混合物56の切り返しを行っても良い。
【0122】
このように、コンクリート等からなる不透水性のベース52上において混合物56を積み上げるようにすれば、地面からの水分の上昇によって混合物56中の水分含有量が必要以上に多くなり、それによって、微生物による鶏糞尿の分解作用が阻害されるようなことが効果的に阻止され得る。従って、発酵が効率的且つ迅速に進められることとなる。なお、かかる不透水性のベース52は、地面からの水分の上昇を阻止し得るものであれば、コンクリート製のものに何等限定されるものではなく、例えば、ビニールシート等によって、手軽に形成することも出来る。
【0123】
また、ここでは、ベース52とその上に堆積される混合物56との間に糞尿処理基材層54が介在せしめられているため、この糞尿処理基材層54によって、混合物56の下側から通気性が有利に確保され得るばかりでなく、適度な保温性が確保され、しかも、糞尿処理基材層54を構成する糞尿処理基材18自体による鶏糞尿の分解能が混合物56の下側からも有利に作用せしめられて、発酵が更に効率的に進行せしめられるようになる。なお、ベース52と堆積された混合物56との間に形成される糞尿処理基材層54の厚さは、好ましくは5〜50mm程度、より好ましくは10〜30mm程度とされる。そのような厚さとすることで、糞尿処理基材18を無駄に使用することなく、上記の如き通気性や保温性、更には糞尿処理基材18自体の分解能が、有利に発揮され得ることとなる。
【0124】
また、このようなベース52と糞尿処理基材層54の上に堆積される混合物56の高さは、特に限定されるものではないものの、余りに高いと、混合物56内が自重により押し潰されて、空気を取り入れるための隙間の形成が困難となって、内部の発酵が不十分となる恐れがあり、また、低過ぎると、今度は、混合物56を堆積しておくために広大なスペースが必要となるところから、この混合物56の積上げ高さは、例えば、30〜300cm程度とされていることが好ましい。なお、堆積された混合物56内部での空気不足が懸念される場合には、切り返しを行うことが、望ましい。また、混合物56を積み上げる際には、例えば、所定の距離を隔てて対向配置されて、互いに平行に延びる二つの仕切壁を形成しておき、それら仕切壁同士の間に混合物56を投入して、堆積するようにしても良い。そうすれば、堆積に際しての混合物56の広がりが防止されて、混合物の堆積に要するスペースの省スペース化等が、有利に図られ得る。
【0125】
そして、ここでは、特に、堆積された混合部56の表面に、糞尿処理基材18からなるカバー層58が形成されていることで、表層部での通気性が十分に確保され、それによって、発酵熱により生ずる蒸気が表層部で滞ることなく、外部に効果的に放出されるようになる。このため、単に、混合物56を堆積しておくだけでは、水分過多が原因して、発酵が不十分となりがちであった表層部分、具体的には堆積された混合部56の表面から深さ2〜3cm程度のまでの部分の発酵が十分に且つ速やかに進行せしめられ得るようになる。その結果、従来とは異なって、切り返し操作を何度も行うような面倒な作業を要することなく、混合物56全体が、ムラなく均一に発酵せしめられ得る。
【0126】
しかも、そのような蒸散効果を発揮するカバー層58が、臭いの吸着性に優れた糞尿処理基材18にて形成されているため、カバー層58内を蒸気が通過せしめられる際に、蒸気に混じったアンモニア臭等が吸着されて、蒸気と共に悪臭が発散せしめられるようなことが効果的に防止され得る。
【0127】
さらに、カバー層58により高い保温性が発揮されるため、発酵熱により混合物56の内部温度が速やかに上昇せしめられ、それによって、糞尿処理基材18内の微生物が効率的に活性化されて、発酵の進行が効果的に促進される。その結果、混合物56の発酵開始から終了までに要する日数が有利に短縮化され得る。そして、カバー層58の保温力による発酵の促進は、外気温の低い冬場において特に顕著なものとなる。なお、外気温の高い夏場等において、カバー層58の保温力により、混合物56の内部温度が必要以上に高くなる恐れがある場合には、混合物の積上げ高さを低くしたり、切り返し操作を行うことによって、かかる内部温度の上昇を可及的に抑えるように為すことが望ましい。
【0128】
かくして、かくの如き一連の操作を実施することにより、鶏の糞尿が、効率的に、しかも悪臭の発生が効果的に抑制されつつ、発酵、分解されて、良質の堆肥が製造され得ることとなる。なお、この製造された堆肥は、有機質肥料や土壌改良剤等として圃場施用に供されるばかりでなく、糞尿処理基材18として再利用することも出来るのである。
【0129】
また、鶏の糞尿と糞尿処理基材18とを混合する前に、鶏の糞尿に対して、蒸気への晒しと加熱と攪拌を行う事前処理を施しておき、その後、かかる事前処理が施された鶏の糞尿の温度を下げてから糞尿処理基材18と混合するようにしても良い。この場合、かかる事前処理は、図9及び図10に示されている混合装置80を用いることによって、有利に実現される。なお、混合装置80において、図5及び図6に示されている混合装置20に採用されている部材及び部位と同様な構造とされた部材及ぶ部位については、図中に、混合装置20において採用されているものと同一の符号を付すことにより、それらの詳細な説明を省略する。
【0130】
混合装置80においては、中実の回転軸(38)の代わりに、円筒形状を呈する回転軸82が採用されている。そして、混合装置80の外部に別途設けられた蒸気発生装置86から回転軸82内に加熱した蒸気が送られてくるようになっており、この加熱蒸気が回転軸82の外周面に開口する複数の噴射孔84から収容槽22内に噴射されるようになっている。これにより、鶏の糞尿が蒸気に晒されながら加熱されるようになっている。なお、収容槽22をヒーターによって加熱することによって、鶏の糞尿を加熱するようにしても良い。そこにおいて、加熱温度は、加熱対象の種類や処理の目的に応じて適宜変更されるものであるが、100℃〜200℃の範囲であることが望ましい。
【0131】
そして、このように鶏の糞尿が蒸気に晒されながら加熱された状態で、複数の第一の攪拌羽根40と複数の第二の攪拌羽根42によって攪拌されることで、事前処理が為されるようになっている。かかる事前処理は、30分〜120分、好適には、60分〜90分行われるようになっている。その後、加熱蒸気の噴射を終了して、加熱蒸気が送られるパイプ88上に設けられたバルブ90を切り換えることにより、混合装置80の外部に別途設けられた冷風機92から回転軸82内に冷風が送られてくるようになっており、その冷風が複数の噴射孔84から収容槽22内に噴射されて、高温となった鶏の糞尿が冷まされるようになっている。その際、鶏の糞尿は攪拌されており、それによって、鶏の糞尿を冷ますことが速やかに且つ略均一に行われ得ることとなる。
【0132】
なお、バルブ90としては、手動で切り換えるものであっても良いし、電磁式のものであっても良い。また、パイプ88や回転軸82,収容槽22等は、耐熱性を有する材料(例えば、鉄鋼等)によって形成される。更にまた、冷風機92は、例えば、熱交換器を備えたものによって有利に構成される。また、蒸気発生装置86は、例えば、ボイラーを備えたものによって有利に構成される。更にまた、蒸気を噴射する際の圧力は、適当に設定されるものであって、特に限定されるものではない。
【0133】
上述のように冷却された事前処理後の鶏の糞尿は、糞尿処理基材18と混合されて、発酵処理される。この場合、鶏の糞尿の発酵処理に要する時間を大幅に短縮することが出来る。また、鶏の糞尿の発酵処理に際しての異臭の発生を抑えることも出来る。
【0134】
なお、冷まされた事前処理後の鶏の糞尿と糞尿処理基材18との混合は、冷まされた事前処理後の鶏の糞尿を混合装置80から取り出さず、かかる混合装置80を用いて行うようにしても良いし、或いは、冷まされた事前処理後の鶏の糞尿を混合装置80から取り出して、混合装置20を用いて行うようにしても良い。
【0135】
また、事前処理後の鶏の糞尿を冷ます方法は、上述の方法に限定されるものではなく、例えば、常温の風を送ることによって行っても良いし、或いは、そのまま放置することによって行っても良い。
【0136】
なお、事前処理は、動物の糞尿を処理する場合のみに行われるものではなく、例えば、野菜屑や動物の死骸等を処理する場合に行っても良い。この場合、事前処理は、野菜屑や動物の死骸等を蒸気に晒すと共に、加熱し、更に攪拌するものであり、かかる事前処理は、図9及び図10に示された混合装置80を用いて有利に実現される。そして、このような事前処理を行うことによって、その後の発酵処理に要する時間を短くすることが出来ると共に、発酵処理に際しての異臭の発生を抑えることが出来る。
【0137】
次に、上記の如き優れた特徴を有する糞尿処理基材18を用いた糞尿処理システムが構築された鶏舎について、説明する。
【0138】
この糞尿処理システムが構築された鶏舎は、図8に示されるように、コンクリートで舗装された床60を有しており、この床60は、僅かに一方向(図8中、左方向)に向かって下がるように傾斜した略平面とされている。そして、かかる床60の上に、鶏用のゲージ62が設置されている。このゲージ62は、複数の鋼線が組み合わされてなる従来から公知の構造を有しており、矩形ボックス状の鶏用個室64が、前後左右に連なって、また必要に応じて複数段乃至は多段に積み重ねられて設置されたものである。
【0139】
そして、そのようなゲージ62の各鶏用個室64には、鶏66が、それぞれ収容されて、飼育されている。また、これらの鶏用個室64は、鶏舎の床60から所定高さだけ上方に位置しており、各鶏用個室64に収容された鶏66の糞尿68が、床60上に落下して、堆積せしめられるようになっている。
【0140】
ここにおいて、かかる鶏舎の床60上には、少なくとも各鶏用個室64の下方に位置する部分を含む領域(本実施形態では、実質的に略全面)に、前述の如くして製造された糞尿処理基材18が、所定厚さ(例えば、5〜50mm)で、層状に敷き詰められている。
【0141】
このような構造とされた鶏舎では、数日或いは数週間毎に、床60上に堆積された糞尿68を、床60上に敷き詰められた糞尿処理基材18と共に掻き集めて、別の場所に設けた発酵スペース(図示せず)において、数十〜数百cmの高さ、例えば30〜300cm程度の高さの山状或いは畝状に積み上げて、発酵処理を施すようになっている。なお、この鶏舎の床60から掻き集められた鶏66の糞尿68と糞尿処理基材18との発酵処理に際しては、前述せる如き糞尿処理基材18を用いた鶏糞尿の分解処理の具体的な手順に従って作業が進められることが望ましい。
【0142】
また、本実施形態の鶏舎では、ゲージ62の脚部70が所定間隔で立設された柱からなっており、そのような複数本の脚部70の間の隙間を通じて、鶏の糞尿68を容易に集めることが出来るようになっている。更に、鶏舎の床60の傾斜方向前方には溝72が設けられており、この溝72を通じて、糞尿68を一層容易にかき集めることが出来るように配慮されている。
【0143】
かくして、かくの如き構造とされた鶏舎においては、鶏66が収容されたゲージ62の下の床60に、糞尿処理基材18が敷き詰められているところから、床60上に堆積した鶏66の糞尿68の臭いが、糞尿処理基材18にて効果的に吸着され得る。それによって、従来では、呼吸をすることも苦しい程であった鶏舎内の悪臭が、驚く程に改善され得るのである。また、かかる床60上に敷き詰められた糞尿処理基材18とその上に堆積した糞尿68とを共に掻き集めて、発酵処理することにより、悪臭の発生を極めて効果的に抑制しつつ、良質な堆肥を効率的に製造することが可能となる。
【0144】
更にまた、糞尿処理基材18を用いて糞尿68を発酵処理することによって、糞尿68の量を減少させることも可能となる。また、上述の如き糞尿68の発酵処理に用いられた糞尿処理基材18は、糞尿68に対する発酵処理が進行することによって、発酵処理に有用な微生物が繁殖しており、また、有用な微生物が糞尿68の栄養分によって一層活性化する傾向にあることから、一層優れた処理効果を発揮する再生糞尿処理基材として用いることが可能となる。そこにおいて、このような再生糞尿処理基材は、予め多量の木材破砕物10や樹皮破砕物12がある状態で、糞尿68に対する発酵処理を進めることにより、或いは、糞尿68に対する発酵処理が進行する際に、木材破砕物10や樹皮破砕物12を追加することにより、その量を増やすことが可能となる。
【0145】
次に、上記の如き優れた特徴を有する糞尿処理基材18を用いて、放し飼いの家畜の糞尿を処理するシステムについて、説明する。
【0146】
この糞尿処理システムは、図11に示されているように、家畜が放し飼いされている敷地に、前述の如くして製造された糞尿処理基材18が、所定厚さ(例えば、5〜50mm)で層状に敷き詰められている。そして、このようにして敷き詰められた糞尿処理基材18の上に家畜94の糞尿96が落下するようになっている。
【0147】
この場合、家畜94が敷地内を歩くこと等によって、糞尿96と糞尿処理基材18が混合される。また、このようにして出来た混合物が切り返される。従って、家畜94の行動によって、糞尿96の発酵処理を進行させることが出来るのである。
【0148】
また、このように糞尿96の発酵処理に用いられた糞尿処理基材18は、糞尿96に対する発酵処理が進行することによって、発酵処理に有用な微生物が繁殖しており、また、有用な微生物が糞尿96の栄養分によって一層活性化する傾向にあることから、一層優れた効果を発揮する再生糞尿処理基材として用いることが可能となる。そこにおいて、このような再生糞尿処理基材は、予め多量の木材破砕物10や樹皮破砕物12がある状態で、糞尿96に対する発酵処理を進めることにより、或いは、糞尿96に対する発酵処理が思考する際に、木材破砕物10や樹皮破砕物12を追加することにより、その量を増やすことが可能となる。
【実施例】
【0149】
先ず、木材として、樹皮を剥皮処理した樫と椎の木の製材屑と、樹皮を剥皮処理した杉の原木とが混在したものを、所定量準備した。また、樹皮として、杉の原木を剥皮処理して得られた杉の樹皮と、桧の原木を剥皮処理して得られた桧の樹皮とが混在したものを、所定量準備した。なお、準備された木材に含まれる樫と椎の木の製材屑と杉の原木の割合は、1:1であり、また、準備された樹皮に含まれる杉の樹皮と桧の樹皮の割合は、8:2であった。
【0150】
次に、コマツBR200Sに用いて、上記のように準備された木材と樹皮とを7:3の割合となる量において同時に破砕処理して、第一中間破砕物を得た。その後、公知の磁選機を用いて、かかる第一中間破砕物から鉄系の異物を取り出した後、コマツゼノアハンマークラッシャCR370Mを使用して、第一中間破砕物を、再度、破砕処理して、第二中間破砕物を得た。引き続き、公知の磁選機を用いて、かかる第二中間破砕物から鉄系の異物を取り出した後、石田エンジニアリング(株)製のブレークマンTPC−800型を用いて、第二中間破砕物を更に破砕処理した。このように、準備された木材と樹皮とを三段階に分けて、同時に破砕処理することにより、木材破砕物と樹皮破砕物とが混在した木質細片を得た。
【0151】
次いで、かくして得られた木質細片を5mm幅のメッシュで篩分けした。これにより、幅寸法:3mm、長さ寸法:10〜40mm、細長比:3.3〜13.3程度の範囲内の値を有するものを含む木質細片を、所定量作製した。
【0152】
引き続き、この作製された木質細片と、別途準備された米糠と予め曝気処理した豚の糞尿と略発酵した豚糞とを、協全商事(株)製の協全式ミキサを用いて、30分間混合して、混合物を得た。
【0153】
なお、このときの各材料の混合割合は、木質細片1立方メートルに対して、曝気処理された豚の糞尿が100リットル、米糠が30リットルの割合とした。また、米糠としては、一般に市販されているものを使用した。更に、曝気処理した豚の糞尿には、豚舎から集められた糞尿を、コンクリート製の第一の曝気槽、素堀の第二及び第三の曝気槽、素堀の調整池としての第四の曝気槽の順番で各曝気槽において曝気処理しながら第一の曝気槽から第四の曝気槽に向けて放流して、第四の曝気槽で熟成したものを用いた。更に、略発酵した豚糞には、豚舎から集められて自然発酵させている最中のもので、八割程度発酵しているものを使用した。
【0154】
次に、上述のようにして得られた混合物を、屋内において2.5mの高さで山状に積み上げて、室温で30日間発酵させた。その際、入口の戸を開放状態として、換気すると共に、薄暗くなるように遮光した。また、発酵開始から15日目に混合物の切り返しを行った。これにより、本発明に従う構成を有する、目的とする糞尿処理基材の所定量を作製した。なお、この発酵処理中、悪臭が発生していないことが、確認された。
【0155】
そして、本発明に従う糞尿処理基材を用いて動物の糞尿を発酵、分解処理した際に得られる効果を確認するために、先ず、前記の如くして作製された糞尿処理基材の300リットルと、鶏舎から集められた鶏の糞尿の100リットルとを、協全商事(株)製の協全式ミキサを用いて、30分間混合して、混合物を得た。その後、この混合物を、屋外の堆肥場に40cmの高さで畝状に堆積し、その状態で放置して、混合物に対する発酵処理を行った。
【0156】
また、それとは別に、糞尿処理基材の代わりに、製材所で発生したオガ粉の300リットルを用いて、これと鶏の糞尿の100リットルとを、協全商事(株)製の協全式ミキサを用いて、30分間混合して、混合物を得た。その後、上記と同様にして、かかる混合物の発酵処理を行った。
【0157】
そして、糞尿処理基材と鶏糞尿の混合物の発酵処理中における悪臭の有無と、オガ粉と鶏糞尿の混合物の発酵処理中における悪臭の有無とを、感応試験により調べた。その結果、前者の発酵処理では、悪臭が殆ど感じられなかったのに対して、後者の発酵処理では、著しい悪臭が感じられた。この結果から、本発明に従う糞尿処理基材を用いることによって、鶏の糞尿の発酵、分解処理時における悪臭の発生が効果的に防止され得ることが、明確に認識され得る。
【0158】
次に、動物糞尿を堆積して、発酵させる際に、本発明に従う糞尿処理基材にてカバー層を形成することによって得られる効果を確認するために、以下の試験を行った。
【0159】
すなわち、先ず、前記の如くして作製された糞尿処理基材の300リットルと、鶏舎から集められた鶏の糞尿の100リットルとを、協全商事(株)製の協全式ミキサを用いて、30分間混合して、混合物を得た。その後、この混合物を、屋外の堆肥場に40cmの高さで畝状に堆積し、その状態で放置して、混合物に対する発酵処理を行った。そして、この発酵処理の開始から終了に至るまでの間、その進行状態を調べるために、毎日、午前8時と午後4時に、堆積された混合物の内部温度をそれぞれ測定した。その結果を下記表1に示した。なお、この表1及び後述する表2中、外気温は、午後4時における堆肥場での気温を示す。また、堆肥場への堆積は、表1において1日目とされる日の前日の午後4時に行った。更に、混合物の内部温度は、堆積された混合物の表面から深さ20cm程度のところまで温度計を差し込んだ状態で測定される温度とした。
【0160】
【表1】

【0161】
また、それとは別に、前述にようにして得られた糞尿処理基材の300リットルと、鶏舎から集められた鶏の糞尿の100リットルとを、協全商事(株)製の協全式ミキサを用いて、30分間混合して、混合物を得、その後、この混合物を、屋外の堆肥場に40cmの高さで畝状に堆積した。次いで、この堆積された混合物の表面に、鶏糞尿と混合されたものとは別の糞尿処理基材を層状に振り掛けて、糞尿処理基材からなる略1〜3cm程度の厚さのカバー層を形成した。そして、その状態で放置して、混合物の発酵を行った。かかる混合物の発酵処理に際しても、発酵処理の開始から終了に至るまでの間、その進行状態を調べるために、毎日、午前8時と午後4時に、堆積された混合物の内部温度をそれぞれ測定した。なお、堆肥場への堆積は、表2において1日目とされる日の前日の午後4時に行った。更に、混合物の内部温度は、前記試験1と同様な条件で測定した。
【0162】
【表2】

【0163】
それら表1及び表2の結果から明らかなように、単に、糞尿処理基材と鶏糞尿の混合物を堆積して、発酵処理を行う場合、発酵開始から5日目に、混合物の内部温度が最高温度の60℃となって、発酵のピークに達し、その日から更に5日目に、混合物の内部温度が、略発酵が終了したと判断される程度の温度20℃にまで下降しており、発酵の開始から終了まで、10日間の日数を要していることが認められる。これに対して、糞尿処理基材と鶏糞尿の混合物を堆積し、更にこの堆積物の表面に糞尿処理基材からなるカバー層を形成した状態で発酵処理を行った場合、発酵開始から、早くも3日目に、混合物の内部温度が最高温度の66℃となって、発酵のピークに達し、その日から5日目に、混合物の内部温度が、略発酵が終了したと判断される程度の温度24℃にまで下降しており、発酵の開始から終了まで、僅か8日間の日数しか掛かっていないことが認められる。これらの結果は、糞尿処理基材と鶏糞尿の混合物の表面に糞尿処理基材からなるカバー層を形成することによって、発酵処理が迅速に且つ効率的に行われ得ることを如実に示している。
【0164】
また、糞尿処理基材を用いて糞尿を発酵処理した場合、糞尿の70%以上が分解等されて水(水蒸気)等としてなくなってしまうことが確認された。特に、鶏糞では、80%程が分解等されてなくなってしまうことが確認された。
【0165】
更にまた、一般的な食物残渣の処理において、食物残渣に事前処理を施すことにより、1/10〜1/2の時間短縮が可能であることを確認した。また、水分が30〜60%になることを確認した。なお、この場合の事前処理は、食物残渣を蒸気に晒すと共に、加熱し、更に、攪拌することによって行われる。
【0166】
また、木材破砕物と樹皮破砕物の少なくとも一方のみ、その細長比が2〜20とされているものについても、同様な実験を行った。そして、木材破砕物と樹脂破砕物の両方において、細長比が2〜20に設定されている場合と同様な効果を得ることを確認した。
【0167】
以上、本発明の実施形態及び幾つかの実施例を示したが、本発明は、これらの具体的記載によって、何等限定されるものではない。
【0168】
例えば、前記実施形態及び前記実施例では、糞尿処理基材を用いて鶏の糞尿を分解処理する例が示されていたが、本発明に従う糞尿処理基材は、その他、牛や豚、馬等の鶏以外の家畜の糞尿や犬猫等のペットの糞尿、或いは人間の糞尿等、各種の動物の糞尿の分解処理に際して有利に用いられるのであり、更には、それらの糞尿以外に、生ゴミ、草木、生魚、動物の死骸等の各種の有機廃棄物の分解処理に際しても、極めて有効に使用され得るのである。更にまた、本発明に従う糞尿処理基材は、と蓄場において処分した獣蓄や食鳥処理場において処理した食鳥等の動物系固形不要物や畜産産業に係る動物の糞尿等の分解処理に際しても、有利に用いられる。
【0169】
また、本発明に従って得られた基材は、それを直接に例えば鶏舎等に敷設して用いたり生ゴミ等の有機廃棄物の処理等に用いる他、例えばかかる基材を適当量の水と混合して得られる上澄み液を利用することも可能である。このような上澄み液は、例えば消臭用の散布剤として利用して、具体的には生ゴミのゴミ箱やペット用トイレ等に用いることが可能であり、またかかる上澄み液は、人間用の汚物の浄化槽やトイレ等にも好適に用いることが可能である。
【0170】
更にまた、有機廃棄物に対して前述の事前処理をする前に、その有機廃棄物に対して破砕や選別を行う処理をするようにしても良い。なお、有機廃棄物が動物の糞尿である場合と野菜屑や食物残渣,動物の死骸等である場合の何れにおいても、事前処理は、蒸気への晒し,加熱,攪拌の何れか一つ,二つ又は三つを採用できる。
【0171】
また、処理対象となる有機廃棄物が乾燥している場合には、適当に水や湯を加えても良いし、水や湯を加えてから加熱することで蒸気に晒すこともできる。
【0172】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
【図面の簡単な説明】
【0173】
【図1】本発明に従う糞尿処理基材の製造工程の一例を示すフローチャートである。
【図2】本発明に従う糞尿処理基材の製造工程における木材破砕砕工程で得られた木材破砕物を説明するための概念図である。
【図3】本発明に従う糞尿処理基材の製造工程における樹皮破砕工程で得られた樹皮破砕物を説明するための概念図である。
【図4】本発明に従う糞尿処理基材の製造工程における混合物発酵工程において、混合物を堆積した状態を示す説明図である。
【図5】本発明に従う動物糞尿の処理方法において、動物糞尿と糞尿処理基材とを混合する際に用いられる混合装置の一例を示す、一部切欠図を含む正面説明図である。
【図6】図5におけるVI−VI断面説明図である。
【図7】本発明に従う動物糞尿の処理方法において、動物糞尿と糞尿処理基材の混合を堆積した状態を示す説明図である。
【図8】本発明に従う糞尿処理システムを有する鶏舎の一例を示す概念説明図である。
【図9】本発明に従う動物糞尿の処理方法において、動物糞尿を事前処理する際に用いられる混合装置の一例を示す、一部切欠図を含む正面説明図である。
【図10】図9におけるX−X断面説明図である。
【図11】本発明に従う放し飼いの家畜用糞尿処理システムを示す概念説明図である。
【符号の説明】
【0174】
10 木材破砕物 12 樹皮破砕物
14 糞尿 16 混合物
18 糞尿処理基材 20 混合装置
52 ベース 54 糞尿処理基材層
58 カバー層 60 床
62 ゲージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質細片を含んで構成された糞尿処理基材において、
木材を破砕して得られた木材破砕物と樹皮を破砕して得られた樹皮破砕物であって、それらの少なくとも一方の細長比が2〜20の細長形状を有するものを含んで前記木質細片を構成する一方、該木質細片の他に、曝気処理した豚及び/又は牛の糞尿を含んでいることを特徴とする糞尿処理基材。
【請求項2】
細長比が2〜20の細長形状とされた前記木材破砕物及び/又は前記樹皮破砕物の合計体積が、前記木材細片の全体積の1/3以上とされている請求項1に記載の糞尿処理基材。
【請求項3】
前記樹皮破砕物が、針葉樹の樹皮を破砕したものを含んでいる請求項1又は請求項2に記載の糞尿処理基材。
【請求項4】
前記樹皮破砕物が、広葉樹の樹皮を破砕したものを含んでいる請求項1乃至請求項3のうちの何れか1項に記載の糞尿処理基材。
【請求項5】
前記樹皮破砕物の体積が、前記木質細片の全体積の1/3以上とされている請求項1乃至請求項4のうちの何れか1項に記載の糞尿処理基材。
【請求項6】
発酵状態又は略発酵状態の豚糞及び/又は牛糞を含んでいる請求項1乃至請求項5のうちの何れか1項に記載の糞尿処理基材。
【請求項7】
土着菌を更に含んでいる請求項1乃至請求項6のうちの何れか1項に記載の糞尿処理基材。
【請求項8】
米糠を更に含んでいる請求項1乃至請求項7のうちの何れか1項に記載の糞尿処理基材。
【請求項9】
前記木質細片が、生木を破砕して得られる生木破砕物を発酵させたものを含んでいる請求項1乃至請求項8のうちの何れか1項に記載の糞尿処理基材。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のうちの何れか1項に記載された糞尿処理基材の製造方法であって、
木材を破砕して、木材破砕物を得る木材破砕工程と、
樹皮を破砕して、樹皮破砕物を得る樹皮破砕工程と、
前記木材破砕物及び/又は前記樹皮破砕物の細長比を調整する細長比調整工程と、
豚及び/又は牛の糞尿を曝気処理する曝気処理工程と、
前記曝気処理工程によって得られた豚及び/又は牛の糞尿と前記細長比調整工程によって細長比が調整された前記木材破砕物及び/又は前記樹皮破砕物を含んで構成された木質細片を混合する混合工程と、
前記混合工程によって得られた混合物を発酵させる混合物発酵工程と、
を含むことを特徴とする糞尿処理基材の製造方法。
【請求項11】
前記請求項1乃至請求項9のうちの何れか1項に記載された糞尿処理基材を用いたことを特徴とする有機廃棄物の処理方法。
【請求項12】
前記請求項1乃至請求項9のうちの何れか1項に記載された糞尿処理基材を前記有機廃棄物に混合することにより、該有機廃棄物を分解処理するようにした請求項11に記載の有機廃棄物の処理方法。
【請求項13】
前記請求項1乃至請求項9のうちの何れか1項に記載された糞尿処理基材と前記有機廃棄物とを収容するための収容部と、該収容部内に略水平に延びるように配設された回転軸と、該回転軸を回転駆動させるための駆動手段と、該回転軸の軸方向一端部から中央部に向かって該回転軸回りの一方向に螺旋状に並べられて、該回転軸に固定された複数の第一の撹拌羽根と、該回転軸の軸方向他端部から中央部に向かって該回転軸回りの一方向とは反対方向に螺旋状に並べられて、該回転軸に固定された複数の第二の撹拌羽根とを備えた混合装置を用いて、前記糞尿処理基材と前記有機廃棄物とを混合するようにした請求項12に記載の有機廃棄物の処理方法。
【請求項14】
前記請求項1乃至請求項9のうちの何れか1項に記載された糞尿処理基材を用いて前記有機廃棄物を処理する前に、該有機廃棄物に対して、蒸気に晒すと共に、加熱して、更に、攪拌する事前処理を施し、その後、かかる事前処理後の有機廃棄物を冷却又は一定の温度にしてから該糞尿処理基材を用いて処理するようにした請求項11乃至請求項13のうちの何れか1項に記載の有機廃棄物の処理方法。
【請求項15】
前記事前処理後の有機廃棄物の温度を強制的に下げるようにした請求項14に記載の有機廃棄物の処理方法。
【請求項16】
前記事前処理後の有機廃棄物の温度を下げる際に、該事前処理後の有機廃棄物を攪拌するようにした請求項14又は請求項15に記載の有機廃棄物の処理方法。
【請求項17】
鶏舎の床をコンクリート製として、その上に、請求項1乃至請求項9のうちの何れか1項に記載の糞尿処理基材を所定厚さで敷設して、該床の上方に鶏のゲージを設けることにより、該糞尿処理基材の敷設された床の上に鶏の糞尿が落下するようにしたことを特徴とする鶏舎用の糞尿処理構造。
【請求項18】
コンクリート製の床と、
該床の上に敷設された、請求項1乃至請求項9のうちの何れか1項に記載の糞尿処理基材と、
該床の上方に設置された鶏用のゲージと、
該糞尿処理基材が敷設された該床の上に、該ゲージに収容された鶏から排出されて落下した糞尿を集めて積み上げておく発酵スペースと
を、含んで構成したことを特徴とする鶏舎における糞尿処理システム。
【請求項19】
請求項1乃至請求項9のうちの何れか1項に記載の糞尿処理基材を、家畜が放し飼いされている敷地に所定厚さで敷き詰めておくことにより、該家畜から排出された糞尿が該糞尿処理基材の上に落下するようにしたことを特徴とする放し飼いの家畜用糞尿処理システム。
【請求項20】
請求項1乃至請求項9のうちの何れか1項に記載の糞尿処理基材を用いて家畜の糞尿を発酵処理することにより、再生糞尿処理基材を得ることを特徴とする再生糞尿処理基材の製造方法。
【請求項21】
請求項20に記載された再生糞尿処理基材の製造方法によって製造したことを特徴とする再生糞尿処理基材。
【請求項22】
動物の糞尿に対して、請求項1乃至請求項9のうちの何れか1項に記載の糞尿処理基材を混合した後、かかる混合物を堆積することにより発酵処理することを特徴とする動物糞尿の処理方法。
【請求項23】
前記混合物を堆積するに際して、請求項1乃至請求項9のうちの何れか1項に記載の糞尿処理基材を、該堆積物の表面に5〜30mmの厚さの層状にふりかけて、カバー層を形成する請求項22に記載の動物糞尿の処理方法。
【請求項24】
前記混合物を堆積するに際して、そのベースを不透水性の表面で形成すると共に、かかる表面に対して、請求項1乃至請求項9のうちの何れか1項に記載の糞尿処理基材を敷設するようにした請求項22又は請求項23に記載の動物糞尿の処理方法。
【請求項25】
前記請求項1乃至請求項9のうちの何れか1項に記載された糞尿処理基材と前記動物の糞尿とを収容するための収容部と、該収容部内に略水平に延びるように配設された回転軸と、該回転軸を回転駆動させるための駆動手段と、該回転軸の軸方向一端部から中央部に向かって該回転軸回りの一方向に螺旋状に並べられて、該回転軸に固定された複数の第一の撹拌羽根と、該回転軸の軸方向他端部から中央部に向かって該回転軸回りの一方向とは反対方向に螺旋状に並べられて、該回転軸に固定された複数の第二の撹拌羽根とを備えた混合装置を用いて、前記糞尿処理基材と前記動物糞尿とを混合するようにした請求項22乃至請求項24のうちの何れか1項に記載の動物糞尿の処理方法。
【請求項26】
前記動物の糞尿と前記請求項1乃至請求項9のうちの何れか1項に記載された糞尿処理基材とを混合する前に、該動物の糞尿に対して、蒸気への晒し,加熱,攪拌の少なくとも一つを行う事前処理を施し、その後、かかる事前処理後の動物の糞尿を冷却又は一定の温度にしてから該糞尿処理基材と混合するようにした請求項22乃至請求項25のうちの何れか1項に記載の動物糞尿の処理方法。
【請求項27】
前記事前処理後の動物の糞尿の温度を強制的に下げるようにした請求項26に記載の動物糞尿の処理方法。
【請求項28】
前記事前処理後の動物の糞尿の温度を下げる際に、該事前処理後の動物の糞尿を攪拌するようにした請求項26又は請求項27に記載の動物糞尿の処理方法。
【請求項29】
動物の糞尿を発酵させて、堆肥を製造する方法にして、
請求項1乃至請求項9のうちの何れか1項に記載の糞尿処理基材を準備する糞尿処理基材準備工程と、
前記動物の糞尿に対して、前記糞尿処理基材を混合する混合工程と、
前記混合工程によって得られた混合物を堆積することにより発酵せしめる混合物発酵工程と、
を含むことを特徴とする堆肥の製造方法。
【請求項30】
前記混合物発酵工程において前記混合物を堆積するに際して、請求項1乃至請求項9のうちの何れか1項に記載の糞尿処理基材を、該堆積物の表面に5〜30mmの厚さの層状にふりかけて、カバー層を形成するようにした請求項27に記載の堆肥の製造方法。
【請求項31】
前記混合物発酵工程において前記混合物を堆積するに際して、そのベースを不透水性の表面で形成すると共に、かかる表面に対して、請求項1乃至請求項9のうちの何れか1項に記載の糞尿処理基材を敷設するようにした請求項29又は請求項30に記載の堆肥の製造方法。
【請求項32】
前記請求項1乃至請求項9のうちの何れか1項に記載された糞尿処理基材と前記動物の糞尿とを収容するための収容部と、該収容部内に略水平に延びるように配設された回転軸と、該回転軸を回転駆動させるための駆動手段と、該回転軸の軸方向一端部から中央部に向かって該回転軸回りの一方向に螺旋状に並べられて、該回転軸に固定された複数の第一の撹拌羽根と、該回転軸の軸方向他端部から中央部に向かって該回転軸回りの一方向とは反対方向に螺旋状に並べられて、該回転軸に固定された複数の第二の撹拌羽根とを備えた混合装置を用いて、前記糞尿処理基材と前記動物糞尿とを混合するようにした請求項29乃至請求項31のうちの何れか1項に記載の堆肥の製造方法。
【請求項33】
前記請求項1乃至請求項9のうちの何れか1項に記載された糞尿処理基材と前記動物の糞尿を混合する前に、該動物の糞尿に対して、蒸気への晒し,加熱,攪拌の少なくとも一つを行う事前処理を施し、その後、かかる事前処理後の動物の糞尿を冷却又は一定の温度にしてから該糞尿処理基材と混合するようにした請求項29乃至請求項32のうちの何れか1項に記載の堆肥の製造方法。
【請求項34】
前記事前処理後の動物の糞尿の温度を強制的に下げるようにした請求項33に記載の堆肥の製造方法。
【請求項35】
前記事前処理後の動物の糞尿の温度を下げる際に、該事前処理後の動物の糞尿を攪拌するようにした請求項33又は請求項34に記載の堆肥の製造方法。
【請求項36】
請求項29乃至請求項35のうちの何れか1項に記載された堆肥の製造方法によって製造したことを特徴とする堆肥。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−272309(P2006−272309A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−184852(P2005−184852)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(502240397)リサイクル神志山有限会社 (4)
【Fターム(参考)】