説明

糸巻取装置及びテンション確認方法

【課題】 テンションセンサの測定精度を容易に確認することができる糸巻取装置及びそのような糸巻き取り装置を用いたテンションセンサの調整方法を提供する。
【解決手段】 給糸ボビンBの糸YをパッケージPに巻き取る巻取ユニット1であって、糸Yのテンションを測定するテンションセンサ6と、給糸ボビンBの糸YをパッケージPに巻き取る運転モード、及びテンションセンサ6によって測定された糸Yのテンションを確認するメンテナンスモードを含む複数の動作モードを相互に切り替える制御部15と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給糸ボビンの糸を巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置、及び糸巻取装置において実施されるテンション確認方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、給糸ボビンからパッケージに糸を巻き取る糸巻取装置が知られている。このような糸巻取装置には、糸巻取装置の異常を検出する機能が搭載される場合がある。例えば、特許文献1には、糸道を通る糸のテンションを測定するテンションセンサと、測定されたテンション測定値から動作不良となっている構成部材を検出する構成部材動作不良検出部とを備える自動ワインダが記載されている。この装置では、テンション測定値の変動を各構成部材毎にパターン化して記憶しておき、テンションセンサのテンション測定値に異常な変化が発生した場合、測定値と記憶しているデータとを比較することで、動作不良となっている構成部材を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−242098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の装置では、テンションセンサの測定値が正確であることを前提としており、テンションセンサ自体の測定精度の低下を検出することはできない。テンションセンサの測定精度は、糸巻取装置により形成されるパッケージの密度等に影響を与えるため、定期的にテンションセンサの測定精度が所定の範囲内に収まっているかを確認することが望ましい。しかしながら、テンションセンサの測定精度は、テンションセンサを糸巻取装置から取り外したうえで、測定器を用いて確認する必要があることから、現場のオペレータでは対応が難しいという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、テンションセンサの測定精度を容易に確認することができる糸巻取装置及びそのような糸巻き取り装置を用いたテンション確認方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の糸巻取装置は、給糸ボビンの糸をパッケージに巻き取る糸巻取装置であって、糸のテンションを測定するテンションセンサと、給糸ボビンの糸をパッケージに巻き取る第1モード、及びテンションセンサによって測定された糸のテンションを確認する第2モードを含む複数の動作モードを相互に切り替える制御部と、を備える。
【0007】
この糸巻取装置では、テンションセンサによって測定された糸のテンションを確認する動作モードである第2モードを有している。これにより、テンションセンサを取り外すことなく、テンションセンサの測定値を確認することができる。このため、現実に糸に付加されているテンションと、テンションセンサによって測定された糸のテンションとを比較して、テンションセンサの測定精度を容易に確認することができる。
【0008】
また、制御部は、動作モードが第2モードである場合に、テンションセンサよって測定された糸のテンションに関する情報を表示部に表示させてもよい。この構成によれば、テンションセンサを取り外すことなく、テンションセンサの測定値を容易に確認することができる。このため、現実に糸に付加されているテンションと、テンションセンサによって測定された糸のテンションとを比較して、テンションセンサの測定精度を更に容易に確認することができる。
【0009】
また、本発明の糸巻取装置は、糸に所定テンションを付与するテンション付与部を更に備え、制御部は、動作モードが第1モードである場合には、テンションセンサによって測定された糸のテンションに基づいて、所定テンションが糸に生じるように糸を保持し、動作モードが第2モードである場合には、糸を解放するように、テンション付与部を制御してもよい。この構成によれば、第2モードにおいてテンションセンサの精度を確認する際に糸が解放されるため、正確にテンションセンサの測定精度を確認することができる。
【0010】
また、本発明の糸巻取装置は、前記第2モードにおいて、テンションセンサによって測定された糸のテンションと、糸に付与されているテンションとの関係を調整する調整部を更に備えてもよい。この構成によれば、テンションセンサによって測定される糸のテンションを適正な値に調整することができる。
【0011】
また、本発明のテンション確認方法は、上述したテンション測定装置において実施されるテンション確認方法であって、制御部によって動作モードを第2モードに切り替える第1工程と、第1工程の後に、糸に既知のテンションを付与する第2工程と、第2工程の後に、テンションセンサによって糸のテンションを測定する第3工程と、第3工程の後に、テンションセンサによって測定されたテンションを報知する第4工程と、を含む。
【0012】
このテンション確認方法では、動作モードが第2モードに切り替えられた後に、糸に既知のテンションが付与される。そして、テンションセンサによって測定されたテンションが表示される。これにより、テンションセンサを取り外すことなく、テンションセンサによって測定された糸のテンションを確認することができる。このため、既知のテンションと、テンションセンサによって測定された糸のテンションとを比較して、テンションセンサの測定精度を容易に確認することができる。
【0013】
また、第4工程の後に、報知したテンションと制御部の入力電圧との特性を変更する第5工程を更に含んでもよい。この場合には、制御部の入力電圧を既知のテンションに基づいた値に調整することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、テンションセンサの測定精度を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態の糸巻取装置である巻取ユニットの正面図である。
【図2】本発明の一実施形態のテンション測定装置であるテンションセンサの縦断面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿ってのテンションセンサの断面図である。
【図4】図2のテンションセンサの一部の分解斜視図である。
【図5】テンションセンサの調整方法を示すフローチャートである。
【図6】表示値テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
図1に示されるように、巻取ユニット(糸巻取装置)1は、給糸ボビンBからパッケージPに糸Yを巻き取る装置である。給糸ボビンBは、前工程の精紡機で形成され、例えば、トレーにセットされた状態で精紡機から搬送される。なお、複数の巻取ユニット1が並設されることで自動ワインダが構成されている。
【0018】
巻取ユニット1には、ボビン支持部2、糸解舒補助装置3、プレクリアラ4、ゲート式テンサ(テンション付与部)5、テンションセンサ(テンション測定装置)6、下糸捕捉装置7、スプライサ8、カッター9、ヤーンクリアラ11、上糸捕捉装置12及び巻取部13が、糸Yの走行経路(すなわち、糸道)に沿って上流側(ここでは、下側)から順に設けられている。これらの各構成は、機台14に取り付けられている。また、巻取ユニット1には、制御部15(制御部、調整部)、記憶部15a、ディスプレイ(表示部)16、及び操作部19が設けられている。
【0019】
ボビン支持部2は、給糸ボビンBを直立させた状態で支持する。糸解舒補助装置3は、給糸ボビンBの上方に配置された筒状部材によって、給糸ボビンBから解舒された糸Yのバルーンを制御する。ゲート式テンサ5は、櫛歯状の固定ゲート及び可動ゲートからなる一対のゲートによって糸Yをジグザグ状に保持することで、走行する糸Yに所定テンションを付与する。テンションセンサ6は、糸道に沿って走行する糸Yのテンションを測定する装置である。
【0020】
プレクリアラ4は、糸道を挟んで所定間隔で配置された一対の規制部材によって、規定値よりも大きい糸欠点の通過を予め規制する。ヤーンクリアラ11は、糸Yの巻取中にスラブ等の糸欠点を検出する。カッター9は、プレクリアラ4によって糸欠点の通過が規制されたとき、或いはヤーンクリアラ11によって糸欠点が検出されたときに、糸Yを切断する。スプライサ8は、カッター9による糸Yの切断時、或いは糸Yの糸切れ時に、給糸ボビンB側の糸端とパッケージP側の糸端とを継ぐ。
【0021】
下糸捕捉装置7は、軸線αを中心に上下方向へ回動可能に構成されており、その回動端には吸引口7aが設けられている。吸引口7aは、スプライサ8の上部とプレクリアラ4の下部との間で回動する。上糸捕捉装置12は、軸線βを中心に上下方向へ回動可能に構成されており、その回動端には吸引口12aが設けられている。吸引口12aは、スプライサ8の下部と巻取部13との間で回動する。これにより、下糸捕捉装置7は、下方向に回動して吸引口7aで給糸ボビンB側の糸端を吸引し、その後、上方向に回動して給糸ボビンB側の糸端をスプライサ8に引き渡す。一方、上糸捕捉装置12は、上方向に回動して吸引口12aでパッケージP側の糸端を吸引し、その後、下方向に回動してパッケージP側の糸端をスプライサ8に引き渡す。
【0022】
巻取部13は、給糸ボビンBから解舒された糸YをパッケージPに巻き取って満巻のパッケージPを形成する。巻取部13は、ドラム溝17aが形成された巻取ドラム17、及びパッケージPを回転可能に支持するクレードル18を有している。クレードル18は、パッケージPの表面を巻取ドラム17の表面に対して適切な接圧で接触させる。巻取部13は、モータで巻取ドラム17を駆動回転させてパッケージPを従動回転させることにより、糸Yを所定幅で綾振りしつつ糸YをパッケージPに巻き取っていく。
【0023】
次に、上述したテンションセンサ6について、より詳細に説明する。なお、以下の説明では、便宜上、糸道におけるテンションセンサ6の上流側を下側、その反対側を上側、テンションセンサ6の糸道に対して糸Yが導入出される側を前側、その反対側を後側という。
【0024】
図2及び図3に示されるように、テンションセンサ6は、金属により一体的に形成されたベース20を備えている。ベース20は、空間Sを囲む側壁部(第1壁部)21、上壁部22、下壁部23及び後壁部24を有している。ベース20は、更に、側壁部21の外側(すなわち、空間Sの反対側)において上下方向に延在する縦壁部25、及び縦壁部25の下端部から前側に延在する横壁部(第2壁部)26を有している。ここで、横壁部26は、側壁部21と略垂直に交差している。
【0025】
側壁部21の前端部の内側(すなわち、空間S側)の側面21aには、糸Yの接触によって変形させられる変形部30が取り付けられている。変形部30は、金属により一体的に形成されたロードセル部31及びロッド部34を有し、より詳細には、次のように構成されている。
【0026】
すなわち、側壁部21の側面21aには、ロードセル部31の前端部31aがボルト32によって取り付けられている。ロードセル部31は、金属により前後方向に延在する直方体状に形成されており、その側面には、歪ゲージ33が例えば印刷等によって設けられている。ロードセル部31の後端部(他端部)31bには、ロッド部34の後端部34bが接続されている。ロッド部34は、前後方向に延在する円柱状(ただし、後端部34bは直方体状)に形成されており、その前端部34aには、側壁部21側から糸Yに接触する接触部36が設けられている。接触部36は、糸Yとの摩擦抵抗が低く且つ摩耗の少ないセラミック等の材料により円筒状に形成されており、その周面には、糸Yが安定して接触するように溝36aが設けられている。
【0027】
ベース20の上壁部22には、側壁部21側から糸Yに接触するヤーンガイド51が取り付けられている。一方、ベース20の下壁部23には、側壁部21の反対側から糸Yに接触するヤーンガイド52が取り付けられている。ヤーンガイド51,52は、糸Yとの摩擦抵抗が低く且つ摩耗の少ないセラミック等の材料により板状に形成されている。これにより、糸道に沿って走行する糸Yが、ロッド部34の接触部36及び各ヤーンガイド51,52の三箇所に接触して所定角度で屈曲し、糸Yのテンションに応じて、ロッド部34を介してロードセル部31に歪を生じさせる。そして、ロードセル部31に歪が生じると、ロードセル部31の歪量に応じた電気信号が歪ゲージ33から出力される。
【0028】
ベース20の横壁部26の上面26aには、変形部30の変形に基づいて糸Yのテンションを電気信号として検出する検出部40が取り付けられている。ここで、横壁部26の上面26aは、側壁部21の側面21aと略垂直に交差している。検出部40は、ケーシング41及び回路基板43を有し、より詳細には、次のように構成されている。
【0029】
すなわち、横壁部26の上面26aには、ベース20に対して空間Sの反対側に並設されたケーシング41の取付部41aがボルト42によって取り付けられている。ケーシング41は、樹脂により直方体箱状に形成されている。ケーシング41には、糸Yのテンションを電気信号として検出するためにその電気信号を処理する回路基板43が収容されている。回路基板43は、配線44を介して歪ゲージ33と電気的に接続されており、ロードセル部31の歪量に応じた電気信号を歪ゲージ33から取得し、その電気信号に基づいて糸Yのテンションを電気信号として出力する。
【0030】
図2及び図4に示されるように、ベース20の上側には、テンションセンサ6の糸道に対して糸Yを導入する際に、糸Yをヤーンガイド51に案内するガイド板53が配置されている。ガイド板53は、ベース20の側壁部21の上端面21bにボルト54によって固定されている。一方、ベース20の下側には、テンションセンサ6の糸道に対して糸Yを導入する際に、糸Yをヤーンガイド52に案内するガイド板55が配置されている。ガイド板55は、巻取ユニット1の機台14側に設けられた台座14aに取り付けられている。テンションセンサ6は、ベース20の横壁部26の下面26bに台座14aがボルト56(図3参照)によって取り付けられることで、台座14aに支持されている。ここで、側壁部21の上端面21b及び横壁部26の下面26bのそれぞれは、側壁部21の側面21aと略垂直に交差している。
【0031】
図3及び図4に示されるように、ベース20の側壁部21の前端面21cには、樹脂により形成されたカバー61がボルト62によって取り付けられている。カバー61は、ベース20の上壁部22と下壁部23との間において変形部30を覆っている。ここで、側壁部21の前端面21cは、側壁部21の側面21aと略垂直に交差している。カバー61には、糸Yを支持するロッド部34の前端部34aを突出させる凹部61aが形成されている。凹部61aの底面には、粘着性を有する円環状の弾性部材63が僅かな隙間を介してロッド部34を包囲するように配置されている。この状態で、凹部61aには、樹脂により形成された包囲部材64が嵌められている。包囲部材64は、ロッド部34の接触部36における糸Yの接触箇所を露出させて、ロッド部34の前端部34aを包囲している。カバー61及び包囲部材64には、テンションセンサ6の糸道に対して糸Yを導入する際に、糸Yをロッド部34の接触部36に案内するガイド板57(図2参照)が取り付けられている。
【0032】
このように、ロッド部34の前端部34aを突出させるカバー61の凹部61aの底面には、粘着性を有する円環状の弾性部材63が僅かな隙間を介してロッド部34を包囲するように配置されている。これにより、変形部30を覆うカバー61内に風綿が侵入して糸Yのテンションの測定精度が劣化するのを防止することができる。
【0033】
図2に示されるように、ベース20には、エアー流路71,72,73を有するブロー機構70が設けられている。エアー流路71は、上下方向に延在するように縦壁部25内に形成されている。エアー流路71の下端部71bは、ケーシング41を介して巻取ユニット1のエアー供給源に接続されている。エアー流路72は、エアー流路71の上端部71aから横方向に延在するように、側壁部21の上端部及び上壁部22内に形成されている。エアー流路72の先端部には、下側に開口するエアー噴射孔74、及び上側に開口するエアー噴射孔75が設けられている。エアー流路73は、エアー流路71の下端部71bから分岐して横方向に延在するように、側壁部21の下端部内に形成されている。エアー流路73の先端部には、側方に開口するエアー噴射孔76が設けられている。
【0034】
このように、ベース20には、テンションセンサ6の所定部分に対してエアーを噴射することができるブロー機構70が設けられている。そのため、所定タイミングでブロー機構70からエアーを噴射することで、テンションセンサ6に付着した風綿を除去し、テンションセンサ6に風綿が堆積するのを防止することができる。
【0035】
次に、制御部15、記憶部15a、ディスプレイ16、及び操作部19について説明する。巻取ユニット1は、動作モードとして、給糸ボビンBの糸YをパッケージPに巻き取る運転モード(第1モード)と、テンションセンサ6によって測定された糸Yのテンションを確認するメンテナンスモード(第2モード)を有している。これらの動作モードは、操作部19を操作することによって相互に切り替えられる。操作部19の操作により、動作モードが相互に切り替えられると、切り替え後の動作モードを示す制御信号が制御部15に出力される。
【0036】
制御部15は、巻取ユニット1の各構成を制御する。制御部15は、巻取ユニット1が運転モードとして動作している場合には、テンションセンサ6で測定された糸Yのテンションに基づいて、所定テンションが走行する糸Yに生じるようにゲート式テンサ5をフィードバック制御する。
【0037】
記憶部15aには、制御部15の入力電圧と、ディスプレイ16で表示される表示値との関係を示す表示値テーブルが記憶されている。
【0038】
制御部15は、巻取ユニット1がメンテナンスモードとして動作している場合、巻取ドラム17の回転を停止するとともに、糸Yを解放するようにゲート式テンサ5を制御する。すなわち、ゲート式テンサ5の固定ゲート及び可動ゲートの噛み合わせを解除して、糸Yにテンションが付与されないようにする。また、制御部15は、テンションセンサ6によって測定された糸Yのテンションを検出部40を介して受信し、測定された糸Yのテンションがディスプレイ16に表示されるように制御する。また、制御部15は、テンションセンサ6によって測定された糸Yのテンションと、糸Yに付与されているテンションとの関係を調整する。
【0039】
操作部19は、上下キーを有しており、上下キーを操作するによりディスプレイ16の表示値を変更することができる。操作部19の操作により表示値が変更された場合には、変更前の表示値(測定された糸Yのテンション)及び変更後の表示値が、制御部15に出力される。
【0040】
次に、制御部15の制御による巻取ユニット1におけるテンション確認方法について、図5を参照しつつ説明する。まず、オペレータが、操作部19を操作することにより、動作モードをメンテナンスモードに切り替える(ステップS1、第1工程)。次に、制御部15がゲート式テンサ5に制御を出力し、糸Yを解放する(ステップS2)。
【0041】
次に、オペレータが、テンションセンサ6の上流側の糸Yに、既知の重さを有する錘を取り付ける(ステップS3、第2工程)。これにより、テンションセンサ6には、既知のテンションTiが付加される。テンションセンサによって糸Yのテンションが測定される(ステップS4、第3工程)。続いて、テンションセンサ6よって測定された糸Yのテンションが、制御部15によりディスプレイ16に表示される(ステップS5、第4工程)。このようにして、テンションセンサ6よって測定された糸Yのテンションが確認される。
【0042】
その後、オペレータが、ディスプレイ16に表示される表示値を確認し、必要であれば表示値を変更する(ステップS6)。すなわち、ディスプレイ16の表示値が、既知のテンションTiであるかを確認し、表示値が既知のテンションTiとは異なるテンションTaであった場合には、操作部19を操作して、ディスプレイ16の表示値をテンションTiに変更する。一方、ディスプレイ16の表示値がテンションTiである場合には、テンションセンサ6の測定精度のずれはないと判断し、テンションセンサの調整を終了する。
【0043】
ステップS6において、操作部19を操作して表示値が変更された場合、制御部15により、糸Yのテンションが調整される(ステップS7、第5工程)。このようにして、テンションセンサの検出精度が調整される。
【0044】
以下に、具体的な例を用いて糸Yのテンションの調整方法について説明する。ここでは、既知のテンションTiが付与された場合に、テンションセンサよって測定された糸のテンションとして、ディスプレイ16にテンションTaが表示されたものとする。そして、オペレータが、操作部19を操作して、ディスプレイ16の表示値をテンションTiに変更したものとする。
【0045】
図6は、記憶部15aに記憶されている表示値テーブルの一例を示している。図6に示されるように、テンションセンサ6から制御部15への入力される電圧が電圧Vaの場合、表示値Taが表示される。
【0046】
操作部19の操作により、ディスプレイ16の表示値がテンションTaからテンションTiに変更されると、制御部15は、表示値テーブルを参照して、変更後のテンションTiに対応する入力電圧は、電圧Vaであると認識する。すなわち、図6に示される、テンションセンサ6の測定値と入力電圧との特性G1を特性G2に変更する。
【0047】
以上説明したように、巻取ユニット1では、テンションセンサ6によって測定された糸Yのテンションを確認する動作モードであるメンテナンスモードを有している。これにより、テンションセンサ6を取り外すことなく、テンションセンサ6の測定値を確認することができる。このため、既知のテンションと、テンションセンサ6によって測定された糸Yのテンションとを比較して、テンションセンサ6の測定精度を容易に確認することができる。
【0048】
また、制御部15は、動作モードがメンテナンスモードである場合に、テンションセンサ6よって測定された糸Yのテンションに関する情報をディスプレイ16に表示させている。これにより、テンションセンサ6を取り外すことなく、テンションセンサ6の測定値を容易に確認することができる。このため、既知のテンションと、テンションセンサ6によって測定された糸Yのテンションとを比較して、テンションセンサ6の測定精度を更に容易に確認することができる。
【0049】
また、巻取ユニット1は、糸Yに所定テンションを付与するゲート式テンサ5を備え、制御部15は、動作モードが運転モードである場合には、テンションセンサ6によって測定された糸Yのテンションに基づいて、所定テンションが糸に生じるように糸Yを保持し、動作モードがメンテナンスモードである場合には、糸Yを解放するようにゲート式テンサ5を制御している。このため、メンテナンスモードにおいてテンションセンサ6の精度を確認する際に糸Yが解放されるため、正確にテンションセンサ6の測定精度を確認することができる。
【0050】
また、巻取ユニット1は、メンテナンスモードにおいて、テンションセンサ6によって測定された糸Yのテンションと、既知のテンションとの関係を調整する制御部15を備えている。このため、テンションセンサ6によって測定される糸Yのテンションを適正な値に調整することができる。
【0051】
また、上記のテンション確認方法では、動作モードがメンテナンスモードに切り替えられた後に、糸Yに既知のテンションが付与される。そして、テンションセンサ6によって測定されたテンションが報知される。これにより、テンションセンサ6を取り外すことなく、テンションセンサ6によって測定された糸Yのテンションを確認することができる。このため、既知のテンションと、テンションセンサによって測定された糸Yのテンションとを比較して、テンションセンサの測定精度を容易に確認することができる。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、巻取ユニット1はディスプレイ16を備えているが、巻取ユニット1とは異なるコンピュータ等の外部機器を巻取ユニットに接続し、テンションセンサ6よって測定された糸Yのテンションを外部機器に表示してもよい。
【0053】
また、本実施形態では、テンションセンサ6のテンションを調整する際に、制御部15が表示値と制御部15の入力電圧との特性を調整しているが、その他の方法で、テンションセンサ6のテンションを調整してもよい。例えば、テンションセンサの基板にある特性調整用のボリューム等を調整して、テンションセンサ自体の出力を調整してもよい。
【0054】
また、制御部15は、テンションセンサよって測定された糸のテンションをディスプレイ16に表示しているが、ディスプレイ16の表示は、数字によるテンションの表示に限定されるものではない。また、本実施形態では、既知のテンションを付加するために、錘を用いているが、バネ等を用いることもできる。また、本実施形態では、巻取ドラム17の回転を停止し、静的な状態でテンションセンサ6のテンションを確認したが、巻取ドラム17が回転した状態で、動的な状態でテンションセンサ6のテンションを確認してもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…巻取ユニット(糸巻取装置)、5…ゲート式テンサ(テンション付与部)、6…テンションセンサ、15…制御部(制御部、調整部)、16…ディスプレイ(表示部)、B…給糸ボビン、Y…糸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
給糸ボビンの糸をパッケージに巻き取る糸巻取装置であって、
前記糸のテンションを測定するテンションセンサと、
前記給糸ボビンの前記糸を前記パッケージに巻き取る第1モード、及び前記テンションセンサによって測定された前記糸のテンションを確認する第2モードを含む複数の動作モードを相互に切り替える制御部と、を備えることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記動作モードが前記第2モードである場合に、前記テンションセンサよって測定された前記糸のテンションに関する情報を表示部に表示させることを特徴とする請求項1記載の糸巻取装置。
【請求項3】
前記糸に所定テンションを付与するテンション付与部を更に備え、
前記制御部は、前記動作モードが前記第1モードである場合には、前記テンションセンサによって測定された前記糸のテンションに基づいて、前記所定テンションが前記糸に生じるように前記糸を保持し、前記動作モードが前記第2モードである場合には、前記糸を解放するように、前記テンション付与部を制御することを特徴とする請求項1又は2記載の糸巻取装置。
【請求項4】
前記第2モードにおいて、前記テンションセンサによって測定された前記糸のテンションと、前記糸に付与されているテンションとの関係を調整する調整部を更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載の糸巻取装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項記載の糸巻取装置において実施されるテンション確認方法であって、
前記制御部によって前記動作モードを前記第2モードに切り替える第1工程と、
前記第1工程の後に、前記糸に既知のテンションを付与する第2工程と、
前記第2工程の後に、前記テンションセンサによって前記糸のテンションを測定する第3工程と、
前記第3工程の後に、前記テンションセンサによって測定されたテンションを報知する第4工程と、を含むことを特徴とするテンション確認方法。
【請求項6】
前記第4工程の後に、報知したテンションと前記制御部の入力電圧との特性を変更する第5工程を更に含むことを特徴とする請求項5記載のテンション確認方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−67482(P2013−67482A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206618(P2011−206618)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】