説明

糸巻取装置

【課題】糸巻取装置において、綾振ドラムによりトラバースされる糸をガイドする糸ガイドが設けられている場合でも、精度よくトラバースの異常を検出する。
【解決手段】綾振ドラム28の前側に配置された糸ガイド40には、トラバースされることによって綾振ドラム28の軸方向に移動する糸Yをガイドするガイド面41aを備えた第1ガイド壁部41のガイド面41aと反対側の面に、糸検出センサ50が取り付けられている。糸検出センサ50は反射型の光学式センサであり、発光素子及び受光素子が設けられたセンシング部51は、第1ガイド壁部41に形成された貫通孔46内に位置しており、貫通孔46を介して、ガイド面41a側に露出している。また、糸ガイド40は、第1ガイド壁部41に対して前側に折り返された第2ガイド壁部42aには、貫通孔46を覆う部分に貫通孔47が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給糸ボビンから解舒した糸をパッケージとして巻き取る糸巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給糸ボビンから解舒された糸を、綾振ドラムによりトラバースしつつ巻き取ってパッケージを形成する糸巻取装置が知られている。特許文献1には、このような糸巻取装置において、ドラム(綾振ドラム)のすぐ上流側の部分に、トラバースセンサ機構(糸検出センサ)を設け、トラバースセンサ機構によりトラバースの異常を検出することが記載されている。また、特許文献2には、綾振ドラムの近傍に糸ガイド枠(糸ガイド)が設けられ、トラバースに伴って綾振ドラムの軸方向に移動する糸が、糸ガイド枠によってガイドされることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】登録実用新案第3006822号公報
【特許文献2】特開2010−11480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献2に記載されているような糸ガイドを備えた糸巻取装置において、トラバースの異常を検出するために、特許文献1に記載されているような糸検出センサを設けることが考えられる。
【0005】
このとき、特許文献1、2に記載されているような糸巻取装置においては、トラバースされる糸の移動範囲は、綾振ドラムに近い位置のほうが大きいため、糸検出センサを、綾振ドラムに近い位置に配置して糸を検出するほうが、誤検知が生じにくく好ましい。
【0006】
しかしながら、特許文献2では、綾振ドラムのすぐ近くに糸ガイドが設けられているため、糸検出センサを糸ガイドと干渉しないように配置する必要があり、糸検出センサを、糸ガイドと別の位置に配置しようとすると、どうしても、糸ガイドよりも上流側の位置に配置することとなってしまう。その結果、糸検出センサが、綾振ドラムから離れた位置に配置されることとなり、誤検知が生じやすくなってしまう。
【0007】
本発明の目的は、綾振ドラムによりトラバースされる糸をガイドする糸ガイドが設けられている場合でも、精度よくトラバースの異常を検出可能な糸巻取装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明に係る糸巻取装置は、回転する巻取パッケージに巻取られる糸をトラバースする綾振装置と、前記綾振装置に近接して配置され、トラバースされる糸を、ガイド面によってガイドする第1ガイド壁部を有する、糸ガイドと、発光部と受光部とを有する反射型の光学式センサからなり、前記トラバースされる糸を検出する糸検出センサを有し、前記糸検出センサが、前記糸ガイドの前記第1ガイド壁部に取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明によると、糸をガイドするために綾振装置の近傍に配置される糸ガイドの第1ガイド壁部に、糸検出センサが取り付けられているため、綾振装置に近い位置で糸の検出を行うことができる。
【0010】
また、糸検出センサが反射型センサであると、発光部と受光部が隣接して並んだ配置となるため、発光部と受光部が対向配置される透光型センサと比べて発光面及び受光面の清掃が容易となる。また、反射型センサであれば、糸ガイドに設けられた場合に透過型センサのとは異なりガイド面から飛び出さないように配置することができるため、他部材との干渉を防止することができる。
【0011】
第2の発明に係る糸巻取装置は、第1の発明に係る糸巻取装置において、前記糸検出センサは、前記第1ガイド壁部の前記ガイド面と反対側の面に取り付けられ、前記第1ガイド壁部には、前記発光部からの照射光、及び、前記照射光が前記ガイド面に沿ってトラバースされる糸によって反射した反射光を通過させる、光通過孔が形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明によると、糸検出センサが、糸ガイドの、トラバースされる糸が移動するガイド面と反対側の面に設けられており、第1ガイド壁部に発光部からの照射光及び反射光を通過させるための光貫通孔が形成されているため、トラバースされた糸が、発光部及び受光部に接触することがなく、発光部及び受光部の損傷が防止される。また、発光部及び受光部に風綿が付着しにくくなる。
【0013】
第3の発明に係る糸巻取装置は、第2の発明に係る糸巻取装置において、前記糸ガイドは、前記ガイド面と対向するように配置された第2ガイド壁部を有し、前記第2ガイド壁部は、前記第1ガイド壁部の前記ガイド面の、前記光透過孔を形成している部分の周辺を覆うように配置されていることを特徴とする。
【0014】
本発明によると、糸ガイドの光を通過させる光通過孔を覆うように、第2ガイド壁部が配置されていることから、第2ガイド壁部により、発光部及び受光部の損傷が確実に防止される。また、発光部及び受光部に、一層、風綿が付着しにくくなる。
【0015】
第4の発明に係る糸巻取装置は、第3の発明に係る糸巻取装置において、前記第2ガイド壁部が前記第1ガイド壁部の前記光透過孔を覆う部分には、貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明によると、第2ガイド壁部の、光通過孔を覆う部分に貫通孔が形成されているため、この貫通孔を通して糸検出センサの清掃を容易に行うことができる。
【0017】
第5の発明に係る糸巻取装置は、第3又は第4の発明に係る糸巻取装置において、前記糸ガイドは、板状の部材によって形成されており、前記第2ガイド壁部は、前記糸ガイドが、前記綾振装置による糸のトラバース方向に関する前記第1ガイド壁部の端部において、前記ガイド面側に折り返されることによって形成されることを特徴とする。
【0018】
本発明によると、板状の糸ガイドを、第1ガイド壁部のトラバース方向に関する端部において折り返すことによって、第2ガイド壁部が形成されているため、第1ガイド壁部と第2ガイド壁部とを1つの部材によって形成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、綾振ドラムの近傍に配置される糸ガイドの第1ガイド壁部に、糸検出センサが取り付けられているため、綾振ガイドの近い位置で、糸の検出を行うことができる。また、糸検出センサが反射型センサであるため、発光部と受光部が対向配置される透光型センサと比べて発光面及び受光面の清掃が容易となる。また、反射型センサであれば、糸ガイドに設けられた場合に、透過型センサとは異なりガイド面から飛び出さないように配置することができるため、他部材との干渉を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る巻取ユニットの概略構成図である。
【図2】図1の綾振ドラム近傍の拡大図である。
【図3】図2を矢印IIIの方向から見た図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】図2の糸ガイドの折り曲げ前の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について説明する。本実施形態は、給糸ボビンから解舒された糸を巻取管に巻取って巻取パッケージを形成する巻取ユニットを多数備えた、自動ワインダーに本発明を適用した一例である。自動ワインダーは、1つのパッケージを形成する巻取ユニットが、一方向に多数列設された構成を有する。
【0022】
図1に示すように、巻取ユニット1の各々は、ボビン支持部3、及び、糸巻取部4を備えている。そして、巻取ユニット1は、供給された給糸ボビン8をボビン支持部3で保持しつつ、この給糸ボビン8から解舒される紡績糸Yをトラバースさせながら巻取管6に巻き付けて、所定形状のパッケージPを形成する。なお、なお、図1における紙面手前側を作業者が巻取ユニット1に対して作業を行う前側(正面側)、紙面奥側をその反対の後側(背面側)と定義する。
【0023】
ボビン支持部3は、図示しないボビン供給装置から供給された給糸ボビン8を直立状態で保持する。ボビン支持部3と糸巻取部4との間の糸走行経路には、ボビン支持部3側から順に、糸解舒補助装置11、テンション付与装置12、糸継装置13及びクリアラー14(糸欠陥検出装置)が配設されている。
【0024】
糸解舒補助装置11は、給糸ボビン8の上端部に被せられる可動筒体21を、糸Yの解舒が進行するに従って下降させることで、解舒中の糸Yの膨らみ(バルーン)を規制し、これにより、解舒張力を安定させる。
【0025】
テンション付与装置12は、走行する糸Yに所定のテンションを付与するためのものである。このテンション付与装置12としては、例えば、固定櫛歯とこの固定櫛歯に対して移動可能に配設された可動櫛歯とを有する、ゲート式のものを使用できる。
【0026】
糸継装置13は、次述のクリアラー14が糸欠陥を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン8からの糸解舒中の糸切れ時に、給糸側の糸(下糸)と、巻取側の糸(上糸)とを糸継ぎするものである。この糸継装置13としては、例えば、上糸端と下糸端のそれぞれの撚り戻しを行う解撚ノズルと、解撚された両糸端に旋回空気流を作用させて撚り合わせを行う撚り掛けノズルとを有する、いわゆる、エア式の糸継装置(エアスプライサー)を使用できる。
【0027】
クリアラー14はスラブ等の糸欠陥や、糸の有無を検出するためのものであって、糸欠陥検出時の糸切断用のカッターが付設されている。
【0028】
糸継装置13の上下には、パッケージP側の上糸を吸引捕捉して糸継装置13へ案内する上糸捕捉案内部材15と、給糸ボビン8側の下糸を吸引捕捉して糸継装置13へ案内する下糸捕捉案内部材16とが設けられている。上糸捕捉案内部材15はパイプ状に構成されており、軸15aを中心に上下回動可能に配設されるとともに、その先端部にマウス15bが設けられている。同様に下糸捕捉案内部材16もパイプ状に構成されており、軸16aを中心に上下回動可能に配設されるとともに、その先端部には吸引口16bが設けられている。さらに、上糸捕捉案内部材15及び下糸捕捉案内部材16には適宜の負圧源が接続されているとともに、それらの先端のマウス15b及び吸引口16bから空気を吸引して糸端を捕捉することができるようになっている。
【0029】
糸巻取部4は、巻取管6を回転自在かつ着脱可能に支持する1対のクレードルアームを有するクレードル27と、クレードル27に支持された巻取管6の表面、又は、巻取管6に形成されたパッケージPの表面に接触可能な綾振ドラム28(綾振装置)を備えている。綾振ドラム28の表面には、その周方向に沿って、糸Yをトラバースするための綾振溝28aが形成されている。そして、糸巻取部4は、綾振ドラム28が巻取管6(又は、パッケージPの表面)に接触した状態で、図示しないドラム駆動モータにより綾振ドラム28を回転駆動することで、糸Yをトラバースしながら巻取管6を従動回転(連れ回り)させて、巻取管6の外周にパッケージPを形成するように構成されている。なお、このとき、糸Yは、綾振溝28aに入り込むことによって、トラバースされるが、図1、図2、図5では、トラバースされる糸Yの動きを説明するために、糸Yを綾振溝28aから外れた状態で簡易に記載している。
【0030】
綾振ドラム28のすぐ前側には、綾振ドラム28によりトラバースされる糸Yをガイドするための糸ガイド40が設けられている。糸ガイド40は、金属材料等からなる板状体であり、図1〜図4に示すように、第1ガイド壁部41、2つの第2ガイド壁部42a、42b、2つの糸導入部43a、43b、及び、取り付け部44を備えている。
【0031】
第1ガイド壁部41は、前方から見た形状が、略台形となっており、その前側(綾振ドラム28と反対側)の面が、ガイド面41aとなっている。綾振ドラム28によりトラバースされる糸Yは、ガイド面41aに接触しており、ガイド面41aにガイドされつつ、綾振ドラム28の軸方向(トラバース方向)に往復移動する。
【0032】
また、第1ガイド壁部41の後側(ガイド面41aと反対側)の面には、糸検出センサ50が取り付けられている。糸検出センサ50は、発光素子(発光部)と受光素子(受光部)とが隣接して配置されたセンシング部51を備えた、いわゆる反射型の光学式センサである。第1ガイド壁部41の図4における左端部には、略円形の貫通孔46(光通過孔)が形成されており、糸検出センサ50は、センシング部51が、貫通孔46を通してガイド面41a側に露出するように取り付けられている。また、センシング部51の先端は、貫通孔46の内部に位置しており、ガイド面41aよりも前側には飛び出していない。
【0033】
これにより、センシング部51の発光素子から照射された照射光は、貫通孔46を通過して、第1ガイド壁部41の前方まで照射される。そして、トラバースにより綾振ドラム28の軸方向に移動する糸Yが貫通孔46の前方にきたときには、この照射光が糸Yで反射し、貫通孔46を通過してセンシング部51において受光される。
【0034】
一方、糸Yが貫通孔46と重ならない位置にあるときには、センシング部51の発光素子から照射された照射光は、糸Yで反射されず、センシング部51の受光素子において反射光が受光されない。
【0035】
したがって、糸検出センサ50では、所定のトラバース周期でセンシング部51の受光素子において反射光が受光されるか否かによって、正常にトラバースが行われているか否かを検出することができる。
【0036】
2つの第2ガイド壁部42a、42bは、第1ガイド壁部41の、トラバース方向に関する両端に連なっており、第1ガイド壁部41に対して前側(ガイド面41a側)に折り返されて、それぞれ、図2における第1ガイド壁部41の左端部及び右端部を覆っている。そして、第2ガイド壁部42a、42bにより、ガイド面41aにガイドされている糸Yが、前側に浮き上がってしまうのを防止することができる。
【0037】
また、第2ガイド壁部42aには、第1ガイド壁部41の貫通孔46と重なる部分(貫通孔46を覆う部分)に、略円形の貫通孔47が形成されている。これにより、貫通孔46を通して第1ガイド壁部41の前側に露出したセンシング部51は、さらに、貫通孔47を通して、第2ガイド壁部42aの前側に露出している。
【0038】
2つの糸導入部43a、43bは、それぞれ、第2ガイド壁部42a、42bの上方に位置しており、第2ガイド壁部42a、42bの上端に連なっている。また、2つの糸導入部43a、43bは、綾振ドラム28の軸方向(図2の左右方向)に関する内側の端部において折り曲げられることにより、糸導入部43bが糸導入部43aよりも前側にくるように前後に重なっている。
【0039】
前後に重なった糸導入部43aと糸導入部43bとの間には、糸Yが通過可能な隙間56が形成されている。糸継を行う際には、上糸捕捉案内部材15が、綾振ドラム28の表面近傍の糸Yの糸端を捕捉し、軸15aを中心に回動することで、糸ガイド40前側を通って、捕捉した糸Yを糸継装置13に案内する。そのため、糸継が完了した直後においては、糸Yは、図2、図3に一点鎖線で示すように、第2ガイド壁部42a、42bのいずれかの前側に位置している。
【0040】
この状態で、綾振ドラム28を回転させて糸Yの巻取を再開すると、糸Yが、第2ガイド壁部42aの前側に位置している場合には、トラバースにより往復移動する糸Yが、隙間56を通って、ガイド面41aに接触する位置まで移動する。一方、糸Yが、第2ガイド壁部42bの前側に位置している場合には、トラバースにより往復移動する糸Yが、一旦第2ガイド壁部42aの前側に移動してから、隙間56を通ってガイド面41aに接触する位置まで移動する。
【0041】
取り付け部44は、第1ガイド壁部41の上端に連なっており、第1ガイド壁部41に対して後側に折り曲げられている、取り付け部44は、巻取ユニット1の機台57に固定されている。なお、図1、図2、図4では、機台57の図示を省略している。
【0042】
以上に説明したような巻取ユニット1においては、糸Yが綾振ドラム28の溝にひっかかったり、巻取テンションが弱くて糸Yが綾振ドラム28の溝に入り込まなかったりすることにより、正常なトラバースがなされなくなることがある。このとき、糸Yはトラバース範囲の中央側に寄るケースが多い。
【0043】
これに対して、本実施の形態では、上述したように、貫通孔46が第1ガイド壁部41の図2における左端部に設けられているため、糸Yがトラバース範囲の一方の端(反転位置)に近い位置にきたときに、糸検出センサ50が糸Yを検出する。したがって、正常なトラバースがされなくなって、糸Yがトラバース範囲の中央側に寄ったときに、精度よくトラバースの異常を検出することができる。
【0044】
また、トラバースされる糸Yの移動量は、綾振ドラム28に近いほど大きいため、正常なトラバースがされず、トラバース範囲が中央側に寄ったときの糸Yの移動量の変動も、綾振ドラム28に近いほど大きくなる。
【0045】
具体的に説明すると、例えば、図5に示すように、糸Yが、綾振ドラム28付近のある部分において、正常にトラバースされているときには、移動幅L1の範囲で往復移動しており、トラバース異常が生じてトラバース範囲が中央側に寄ったときに、一点鎖線で示すように、当該部分の移動量が変動量D1だけ変動するとする。この場合に、糸Yの、当該部分よりも綾振ドラム28から離れたある部分は、正常にトラバースされているときには、移動幅L1よりも小さい移動幅L2で往復移動し、トラバース異常が生じてトラバース範囲が中央側に寄ったときに、移動量が変動量D1よりも小さい変動量D2だけ変動する。
【0046】
そのため、例えば、トラバース範囲が中央側に寄ったときに、図5に示すように、綾振ドラム28に近い位置にセンシング部51Aが配置されている場合には、糸Yが検出されなくなり、これにより、トラバースの異常を検出することができる。しかしながら、綾振ドラム28から離れた位置にセンシング部51Bが配置されている場合には、糸Yが検出され、トラバースの異常を検出することができない。すなわち、糸検出センサ50のセンシング部51Aの位置が、綾振ドラム28に近いほど、小さなトラバース範囲の変動でも検出することができ、糸検出センサ50の検出の精度が高くなる。
【0047】
本実施の形態では、綾振ドラム28のすぐ近くにある糸ガイド40の第1ガイド壁部41に糸検出センサ50が設けられているため、トラバースの異常を精度よく検出することができる。
【0048】
また、本実施の形態とは異なり、仮に、反射型の光学式センサである糸検出センサ50の代わりに、発光素子と受光素子とが互いに対向するように配置された、いわゆる透過型の光学式センサを設けるとすると、発光素子と受光素子とを、トラバースされる糸Yを前後から挟むように配置する必要がある。そのため、発光素子及び受光素子のいずれか一方を、必ず、糸Yよりも前側、すなわち、第1ガイド壁部41よりも前側に配置する必要がある。その結果、第1ガイド壁部41よりも前側の発光素子又は受光素子が、第2ガイド壁部42aなどに干渉して、糸検出センサを糸ガイド40に配置するのが困難となる場合がある。
【0049】
これに対して、本実施の形態では、糸検出センサ50が反射型の光学式センサであるので、糸検出センサ50を第1ガイド壁部41の後側に配置し、センシング部51を第1ガイド壁部41に形成された貫通孔46からガイド面41aに露出させることにより、第2ガイド壁部42aなどに干渉しないように、糸検出センサ50を配置することができる。
【0050】
さらに、センシング部51の先端が、ガイド面41aから飛び出していないため、センシング部51が第1ガイド壁部41に保護される。これにより、センシング部51に糸Yが接触してセンシング部51が損傷してしまうことや、センシング部51に風綿が付着してしまうことが防止される。
【0051】
また、糸ガイド40が、第1ガイド壁部41に対して前側に折り返された第2ガイド壁部42aを備えているため、センシング部51は、第2ガイド壁部42によっても保護される。これにより、センシング部51に糸Yが接触してセンシング部51が損傷してしまうことや、センシング部51に風綿が付着してしまうことがより確実に防止される。
【0052】
また、本実施の形態では、第1ガイド壁部41及び第2ガイド壁部42aの互いに対向する部分に、それぞれ、貫通孔46、47が形成されており、糸検出センサ50のセンシング部51が貫通孔46、47を通して、糸ガイド40の前側に露出している。したがって、貫通孔46、47から綿棒を通すなどすることにより、センシング部51に付着した風綿を除去する等、センシング部51の清掃を容易に行うことができる。
【0053】
また、板状の糸ガイド40を、綾振ドラム28によるトラバース方向に関する第1ガイド壁部41の両端部においてガイド面41a側に折り返すことによって、第2ガイド壁部42a、42bが形成されているので、第1ガイド壁部41と第2ガイド壁部42a、42bとを1つの部材によって形成することができる。
【0054】
次に、本実施の形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。ただし、本実施の形態と同様の構成については、適宜その説明を省略する。
【0055】
上述の実施の形態では、第2ガイド壁部42aにおける、第1ガイド壁部41の貫通孔46と対向する部分に貫通孔47が形成されていたが、貫通孔47は形成されていなくてもよい。
【0056】
この場合には、貫通孔47のない第2ガイド壁部42aにより、糸検出センサ50のセンシング部51が覆われるため、センシング部51が、第2ガイド壁部42aによって、より確実に保護される。これにより、センシング部51が損傷してしまうことや、センシング部51に風綿がたまってしまうことを、いっそう確実に防止することができる。
【0057】
また、糸検出センサ50のセンシング部51においては、厳密には、発光素子から照射された照射光は、糸Yで反射しないときであっても、例えば、糸ガイド40の特に第2ガイド壁部42aにおいて反射し、その反射光が、受光素子において受光される。このような場合には、金属材料からなる第2ガイド壁部42aから反射して受光素子において受光される光の強度は、糸Yに反射して受光素子において受光される反射光の強度に比べれば大きなものであるため、糸検出センサ50では、受光素子において受光される光の強度がある閾値よりも小さいときに、糸Yが検出されたと判断する。
【0058】
しかしながら、上述の実施の形態のように、第2ガイド壁部42aに貫通孔47が形成されていると、貫通孔47を通して、第2ガイド壁部42aの前後で光が通過可能となるため、発光素子から照射された照射光が糸Yで反射しないときに受光素子において受光される光の強度が、第2ガイド壁部42aの前側の状況によって変動する。そして、このような受光素子において受光される光の強度の変動は、誤検知の要因となり得る。
【0059】
これに対して、第2ガイド壁部42aに貫通孔47が形成されていない場合には、発光素子から照射された照射光が糸Yで反射されないときに受光素子に受光される光の強度が、第2ガイド壁部42aの前側の状況によって変動せず、安定している。したがって、糸検出センサ50において誤検知が発生しにくくなる。
【0060】
ただし、変形例1の場合には、第2ガイド壁部42aに貫通孔47が形成されていないため、上述の実施の形態と比較すると、センシング部51の清掃などのメンテナンス性は悪くなってしまう。
【0061】
また、上述の実施の形態では、板状の糸ガイド40が、綾振ドラム28によるトラバース方向に関する第1ガイド壁部41の両端部においてガイド面41a側に折り返されることによって、第2ガイド壁部が形成されていたが、これには限られず、第1ガイド壁部41と第2ガイド壁部42a、42bとは、互いに別の部材によって形成されていてもよい。
【0062】
また、上述の実施の形態では、糸ガイド40が、ガイド面41aに対して前側に折り返された第2ガイド壁部42a、42bを備えていたが、糸ガイド40に第2ガイド壁部42a、42bはなくてもよい。
【0063】
また、上述の実施の形態では、糸検出センサ50が、第1ガイド壁部41の後側に配置されており、糸検出センサ50のセンシング部51が、第1ガイド壁部41に形成された貫通孔46を通して、ガイド面41a側に露出していたが、これには限られない。例えば、第1ガイド壁部41に貫通孔46が形成されておらず、糸検出センサ50が、第2ガイド壁部42a、42bのガイド面41aとの対向面など、糸ガイド40の他の部分に取り付けられていてもよい。
【0064】
この場合には、糸検出センサ50を、第1ガイド壁部41のガイド面41aにガイドされる糸Yと干渉しない薄型のものにする必要があるが、糸検出センサ50は、反射型の光学式センサであるため、糸検出センサ50を透過型の光学式センサとする場合とは異なり、ガイド面41a側にそれほど大きくは突出せず、糸Yと干渉しにくい。
【0065】
また、上述の実施の形態では、綾振ドラム28により糸Yのトラバースが行われるようになっていたが、これには限られず、例えば、アームを揺動させることによって糸をトラバースさせる、いわゆるアーム式の綾振装置(特開2011−126639号等参照)など、別の綾振装置によって糸Yのトラバースが行われるようになっていてもよい。
【符号の説明】
【0066】
40 糸ガイド
41 第1ガイド壁部
41a ガイド面
42a、42b 第2ガイド壁部
46、47、貫通孔
50 糸検出センサ
51 発受光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する巻取パッケージに巻取られる糸をトラバースする綾振装置と、
前記綾振装置に近接して配置され、トラバースされる糸を、ガイド面によってガイドする第1ガイド壁部を有する、糸ガイドと、
発光部と受光部とを有する反射型の光学式センサからなり、前記トラバースされる糸を検出する糸検出センサを有し、
前記糸検出センサが、前記糸ガイドの前記第1ガイド壁部に取り付けられていることを特徴とする糸巻取装置。
【請求項2】
前記糸検出センサは、前記第1ガイド壁部の前記ガイド面と反対側の面に取り付けられ、
前記第1ガイド壁部には、前記発光部からの照射光、及び、前記照射光が前記ガイド面に沿ってトラバースされる糸によって反射した反射光を通過させる、光通過孔が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の糸巻取装置。
【請求項3】
前記糸ガイドは、前記ガイド面と対向するように配置された第2ガイド壁部を有し、
前記第2ガイド壁部は、前記第1ガイド壁部の前記ガイド面の、前記光透過孔を形成している部分の周辺を覆うように配置されていることを特徴とする請求項2に記載の糸巻取装置。
【請求項4】
前記第2ガイド壁部が前記第1ガイド壁部の前記光透過孔を覆う部分には、貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の糸巻取装置。
【請求項5】
前記糸ガイドは、板状の部材によって形成されており、
前記第2ガイド壁部は、前記糸ガイドが、前記綾振装置による糸のトラバース方向に関する前記第1ガイド壁部の端部において、前記ガイド面側に折り返されることによって形成されることを特徴とする請求項3又は4に記載の糸巻取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−63840(P2013−63840A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204566(P2011−204566)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】