説明

純水製造方法

【課題】光触媒反応を利用して溶液中に活性酸素種を生成して堆積した微粒子を除去するための純水製造方法を提供することを目的としている。
【解決手段】光触媒1であるオキソ酸およびハロゲンが化学結合した酸化チタン(IV)を水中に設け、水中で酸素を含む気体を散気手段3によって気体を水中に混合しながら、光源2によって酸化チタン(IV)に紫外線を照射することで、反応液中に過酸化水素などの活性酸素種を生成する。液中に浮遊するか、または固体表面に付着する有機物などの微粒子と反応し、除去効果を発現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌や真菌、あるいはウイルスなどを抗菌、抑制する能力をもつ活性酸素種やハロゲン酸化物などの抗菌成分を液中に発生させ、原水から有機物などを除去して純水を製造するために用いられる膜や吸着装置に付着する有機物を分解、除去、あるいは微生物の繁殖を抑制して、膜や吸着装置の長期性能を向上させることができる純水の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の純水製造方法には、生成したオゾン、あるいは過酸化水素の薬液を系内に直接添加して膜などの洗浄を行うものが知られている。例えば、従来この種の純水製造方法を実施するための装置として、図3に示すような、超純水製造システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
これは、超純水製造装置101に、オゾンガス発生装置102と、オゾンガス溶解装置103、オゾンを自己分解するための塩基性薬品添加装置104を設け、ユースポイント105までの配管内を洗浄するものである。長期間の使用によって超純水製造装置101内に滞留、蓄積した微生物の死骸などの微粒子を除去するために、オゾンを供給して殺菌、分解したのち、連続的に残存するオゾンを分解除去することで、装置を停止させることなく、系内の洗浄を行う事ができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−221144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の従来の超純水製造システムは、装置内でオゾンの供給、分解を連続的に行うことができるため、操作が簡便であるという利点があるが、オゾンを分解するために適切な濃度の塩基性薬品を供給しなければならず、塩基性薬品の濃度が不足するとオゾンが残留する事になり、また濃度が過剰になると塩基性成分によって配管を劣化させてしまうという課題があった。また、薬液を供給するため、薬液を管理しなければならないという課題があった。そのため、薬液の添加が不要な洗浄システムが求められている。
【0006】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、光触媒によって系内に存在する微生物の死骸などの有機物を捕捉、分解することができ、さらに光触媒にリン酸塩化合物などのオキソ酸化合物と、フッ素などのハロゲンを含有することによって、光触媒表面から、過酸化水素や、ヒドロキシルラジカル、スーパーオキサイドラジカルなどの活性酸素種を生成し、光触媒表面から系内に放出することができる。これらは、水中で容易に分解し、短時間で消失するため、薬液による除去が不要である。薬液によって配管を劣化させることのない純水の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の純水製造方法は、上記目的を達成するために、純水製造系内に、オキソ酸およびハロゲンを含有した光触媒である酸化チタンと、酸化チタンを励起するための光源である紫外線ランプと、を備え、光触媒効果により活性酸素種を発生させ、有機物の分解に用いるものであり、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、純水製造装置の系内にあって、純水生成手段の上流側に設置された光触媒と、光触媒を励起するための光源と、を備えた構成にしたことにより、液体中で光触媒反応によって活性酸素種を生成し、光触媒上に捕捉して微粒子を分解除去するため、高い除去効果が得られる。さらに光触媒にオキソ酸とハロゲンを含有することで、液体中で比較的短時間安定して存在できる過酸化水素などの活性酸素種を生成することができ、配管内の離れた場所に拡散している微粒子を分解することができるため、従来の純水製造方法に対して、清浄度を高めるという効果が得られる。また、このような活性酸素種は、オゾンと比較して短時間で自己分解するため、薬剤による分解処理が不要であり、オゾンなどの活性物質を系外に漏出させず、かつ配管を劣化させ難いため、長期間性能を維持することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1の純水製造方法フローを示す図
【図2】本発明の実施例1の過酸化水素の測定結果を示すグラフ
【図3】従来の超純水製造装置を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の請求項1記載の発明は、純水製造装置の系内であって、純水生成手段の上流側に設置されたオキソ酸およびハロゲンを含有する光触媒と、前記光触媒を励起するための光源と、を備え、前記光触媒から生成した活性酸素種によって前記純水製造装置の系内の水中および前記純水製造装置の内壁面および配管内に存在する有機物を分解することを特徴としたものである。これにより、光触媒反応によって強い酸化力により有機物の分解作用をもつ活性酸素種を、液体中に発生し、拡散させて系内の清浄化を行うことができる。
【0011】
また、請求項2記載の発明は、光触媒が酸化チタン(IV)であって、光源が紫外線ランプであることを特徴としたものである。これにより、酸化チタンによる高い酸化エネルギーと、紫外線による高い酸化エネルギーを併用することができ、有機物の分解、微生物の抑制効果を高めることができる。
【0012】
また、請求項3記載の発明は、水中に酸素を含む気体を溶解させるための散気手段を備えたことを特徴としたものである。水中に溶存する酸素濃度を高めることで、光触媒で発生する活性酸素種の量を増加させ、分解効果を高めることができる。
【0013】
また、請求項4記載の発明は、オキソ酸がリン酸化合物であることを特徴としたものである。これにより、活性酸素種のうち、過酸化水素のような比較的寿命が長いものを生成することができ、広範囲に拡散させて作用が得られる範囲を拡大させることができる。
【0014】
また、請求項5記載の発明は、ハロゲンがフッ素であって、前記フッ素が光触媒に少なくとも一部が化学結合していることを特徴としたものである。光触媒にフッ素を化学結合させることで、活性酸素種の発生量を大幅に増加させることができる。さらに、化学結合であるため、安定して発生させることができる。
【0015】
(実施の形態)
[純水製造方法]
本発明における純水製造方法のフローを図1に示す。純水を製造するためには、水道水や地下水などの原水をろ過、吸着、脱イオン処理などの工程によって共存する不純物を除去することによって行うことが一般である。
【0016】
ろ過工程では、5から10μm以上の粗大粒子を除去するための目のやや粗いフィルタを用いる。例えば、樹脂や天然繊維、あるいは金属などの繊維を押し固めて不織布にしたものや、メッシュ状に編み込んだものなどを、板状、あるいはロール状に加工し、水を通過させて使用する。
【0017】
吸着除去工程では、吸着剤を充填したカラム、吸着塔に水を通過させて溶存する有機物や無機物などを除去する。吸着材として、例えば活性炭を使用する場合、粒状のものを用いるが、粒子径が小さくなると抵抗が大きくなるため、使用流量に併せて活性炭の形状を検討することが好ましい。また、活性炭が水中に放出しないよう、メッシュなどで覆うことが好ましい。
【0018】
脱イオン処理工程では、イオン交換樹脂に水を接触させることにより、水中に溶存する金属イオンなどのイオン性の物質を除去する。例えば、イオン交換樹脂をビーズ状に加工したものを充填したカラムなどを用いることができる。この場合も活性炭と同様に、水中にイオン交換樹脂が放出しないようメッシュなどで覆うことや、粒子径の調整を行うことが好ましい。
【0019】
純水の清浄度をさらに高めるために、前段に加熱処理や微生物処理、加熱蒸留、電気浸透などを使用し、また後段にRO膜と呼ばれる逆浸透膜や中空糸膜、紫外線ランプを設置することができる。これらの工程を組み合わせることによって、純水を製造することができる。
【0020】
本発明において、純水とは、溶存あるいは浮遊する有機物や無機物などの不純物が非常に少なく、純度の高い水のことを指す。指標として、電気伝導率、浮遊粒子数、TOC濃度、生菌数などが挙げられ、使用目的によって値を設定する。例えば、工業的に使用する超純水と呼ばれるグレードの水は、電気伝導率では18Mオーム以上、TOCは0.05mg/L以下などと定められている。
【0021】
[ハロゲン含有酸化チタンによる活性酸素種の生成]
純水を製造するための系内に、液体と接触、または含浸するように光触媒1を設け、励起するための光を照射する光源2を近傍に設ける。純水を製造する系内とは、原水から純水を製造し、使用するためのユースポイントまでの間の配管あるいは装置内部を指し、系外からの汚染がないように密閉されている空間である。光触媒1の下部には、配管内に加圧された気体を導入して液体中に微細化して混合するための散気手段3を設ける。これらは、原水中の有機物などの微粒子を吸着、ろ過などによって純水を生成するための純水生成手段4の前段に設ける。光触媒1を純水生成手段4の前段に設けることで、原水中の有機物、例えば、TOCと呼ばれる粒子状有機炭素、またDOCと呼ばれる溶存有機炭素などを捕捉、吸着して分解するほか、水中に存在するバクテリアや、クリプトスポリジウム、緑藻類などの原生生物のような微生物を殺滅し、細胞の残骸を分解することによって水中の不純物を除去することができる。さらに、本発明では、光触媒1が、オキソ酸およびハロゲンを含有するものであり、励起光の照射によって水中に過酸化水素などの寿命が長い活性酸素種を生成することで、水中に浮遊する有機物を分解し、純水生成手段4の表面に堆積した有機物を分解、除去することができる。このような配置にすることによって、純水生成手段4への負荷を低減し、長期間安定した純水の製造を可能とすることができる。なお、発生した活性酸素種は、純水生成手段4によって完全に除去されるため、後段のユースポイントにおいては、純水として使用できる水質が得られる。
【0022】
また、生成する活性酸素種の濃度を徐々に高めるために、一定時間通水を停止するなどの運転制御を行うと堆積した有機物を除去する効果が高まるため好ましい。配管は、生成した活性酸素種の酸化力によって変質せず、また光源2によって照射される光、例えば紫外光によって変質しないものを用いる。例えば金属や無機材料によるもの、またはこれらを表面にコーティングしたものが使用できる。金属であれば、ステンレス、アルミ、銅などであり、無機化合物であれば、セラミックやガラスなどが使用できる。光源2の光を反射して光触媒反応効率を高める観点からステンレスが好ましい。
【0023】
配管には、光触媒1と光源2を設置するが、反応効率を高めるためには光触媒1と光源2との距離が近いほどよく、また光源2から照射される光を効率よく使用するために、光源2を取り囲むように、光触媒1を配置する構成であることがのぞましい。光源2であるランプは寿命があるため、あらかじめ交換しやすいように、配管の外部より、石英ガラスなどの紫外線を透過する材料を介して配置してもよい。
【0024】
本発明における光触媒1は、酸化チタン、酸化タングステン、チタン酸ストロンチウム、酸化ニオブ、酸化タンタルなどが挙げられる。これらのうち、活性の強さの点から、酸化チタンが好ましい。
【0025】
酸化チタン(IV)としては、例えば、アナタース型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタンが挙げられ、高い光触媒活性が得られることから、アナタース型酸化チタンが好ましい。本発明において「アナタース型酸化チタン」とは、粉末X線回折スペクトル測定において(使用電極:銅電極)、回折角度2θ=25.5度付近に回折ピークが現れる酸化チタンのことをいう。
【0026】
酸化チタンとしては、二酸化チタンのほか、含水酸化チタン、水和酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸、水酸化チタン、酸素欠損型酸化チタン、窒素置換型酸化チタン、硫黄置換型酸化チタンなどが挙げられる。光触媒活性を有していれば結晶形については特に制限はなく、無定形、アナタース形、ルチル形、ブルッカイト形のいずれでもよい。ルチル型とアナターゼ型酸化チタンの組み合せなど、結晶形の違う成分を複合してもなんら問題はない。
【0027】
酸化チタンは粉末状であることが多いが、チタン板などの金属表面を酸化して、酸化チタン薄膜を形成してもよい。また、チタンアルコキシドなどをコーティングして、加熱処理することによってチタン薄膜を形成してもよい。チタン粉末を金属表面などに溶射して、酸化チタン膜を形成してもよい。
【0028】
また、酸化チタンの表面にPt、Pd、Rh、Ru、Au、Ag、Cu、Fe、Ni等の金属を被覆して用いることも何ら限定するものではない。また、表面にCrやVなどの不純物金属を含有させて光の吸収波長を拡大させた光触媒を用いることもなんら限定するものではない。
【0029】
酸化チタンは、比表面積が200〜350m2/gの範囲が好ましく、より好ましくは250〜350m2/gの範囲である。ここで、本発明において比表面積とは、BET法(窒素の吸着・脱離方式)により測定した、酸化チタンの粉末1g当たりの表面積値である。比表面積が200m2/g以上の場合、分解する対象物との接触面積を大きくすることができる。
【0030】
光源2は、酸化チタン(IV)を用いる場合、活性化できる波長350nmから450nmの波長範囲を含む光を発生させるものを用いる。強い発光ピークを持つものであるほど、投入電力に対して効率的に酸化チタンの励起を行うことができる。例えば、直管型の蛍光灯型ブラックライトを使用すると、380nm付近の波長を多く含み、効率的に広い範囲に強い光を照射できるため、基材の面積が広い場合に好適に使用できる。また、ハロゲンランプ、キセノンランプ、水銀ランプなどの光源を、紫外線の吸収が少ないミラーやレンズなどによって広い面積が照射できるように配置することでも実施できる。
【0031】
また、前記波長に強い発光ピークをもつ光源として、半導体素子を使用したものがある。例えば、発光ダイオード、半導体レーザーなどが使用できる。これらは、照射面積が小さく、光源部分の大きさも小さいため、小さな部分に局所的に照射するのに適している。
【0032】
光触媒反応には、酸素が必要とされるため、効率的に反応を行なうためには、液中に含有されている量では不十分である。そのため、濃縮酸素ガスや空気などの酸素を含む気体を、反応液中に混合させ、溶存酸素量を増加させることが望ましい。反応液に気体を混合させる散気手段3としては、ノズルから圧縮した気体を液体中に吹き出して混合させるものや、ノズルと回転体とから構成され、吸引効果などで供給された気体を液体にて激しく撹拌し、液相中に気相成分を混合させるものなどがある。ノズルから噴霧させる場合、ノズルの形状によって、液中に噴霧できる気泡が微細化し、液中に多くの酸素を長時間安定して混合させることができる。ノズル先端に多孔質体の散気管を設置すると、液中に放出される気泡が微細化し、水中への溶存量が増加する。さらに、気泡を回転体と衝突させ、微細化させると、さらに長時間安定させることができる。
【0033】
液中に分散させた気泡は、時間とともに浮上し、やがて気相に戻る。光触媒1の表面に気泡が接触する効率を向上させるためには、気泡が浮上することを考慮して、光触媒1を散気手段3の上部に配置することで、光触媒1の表面を気泡が接触しやすくなり、反応が増加し、生成量を増加させることができる。さらに、光触媒1を鉛直方向に長く配置させると、浮上する気体が光触媒1の表面に接触する時間を長くとることができ、反応効率を向上させることができる。
【0034】
本発明の純水製造方法によって生成する活性酸素種とは、ヒドロキシルラジカルや、スーパーオキシドラジカル、一重項酸素、過酸化水素、オゾンなど活性酸素種などの酸化作用を持つものを指す。これらは、有機化合物を酸化、分解する他、細菌や真菌、原生動物、ウイルスなどの微生物を対象とし、これらの増殖、活動を抑制する静菌作用や、構成成分を分解、変性して活動を停止させる殺菌作用を得ることができる。
【0035】
本発明において「抗菌」とは、液相の菌を殺菌及び/又は分解することをいい、好適には液相の菌濃度の低減及び/又は菌の増殖を抑制することをいう。具体的には、抗菌成分と菌が24時間以上接触した場合に、接触した菌濃度を初期濃度よりも2桁以上減少できることをいう。本発明において、抗菌活性の対象は特に制限されず、例えば、細菌、カビ、ウイルス等が挙げられ、抗菌活性の点からは、細菌が好ましい。細菌としては、例えば、大腸菌、黄色ぶどう球菌、緑膿菌、MRSA、セレウス菌、肺炎桿菌が挙げられる。
【0036】
活性酸素種は、酸化力が強いため、有機物の基本骨格であるC−C結合(結合エネルギー約347kJ/mol)や、C−H結合(結合エネルギー約415kJ/mol)、あるいは、C=C結合のπ結合(結合エネルギー約285kJ/mol)などの結合を酸化反応によって切断することが知られている。この結合を切断するためには、結合エネルギーよりも高い解離エネルギーが必要となる。例えば、強い活性酸素種であるヒドロキシルラジカルの酸化電位はおよそ2.8Vであり、解離エネルギーは約504kJ/molであるため、C−C結合を切断して酸化分解することができる。このような酸化剤は、エネルギーが大きいため、反面、不安定で寿命が極めて短い(約1ミリ秒以下)という性質がある。
【0037】
活性酸素種の一つである過酸化水素は、酸化電位は1.77Vであり、解離エネルギーは319kJ/molである。この場合、C−C結合を切断するエネルギーよりも低いため切断できないが、C=C二重結合のπ結合を切断することができる。また、たんぱく質や酵素などの比較的分子量の大きい有機物の場合、元来の機能を果たすためには立体的な高次構造が重要であるが、過酸化水素などの活性物質は強い酸化力によってそれらの高次構造を変性させ、元来の機能を失わせることができ、除菌作用や抗ウイルス作用を得ることができる。そして、過酸化水素は酸化電位が低い分、ヒドロキシルラジカルに比べて安定性が増すため、寿命が長くなる(約1時間以上)という性質がある。液相中の離れた位置に抗菌作用を与えることができる。
【0038】
これらの抗菌成分は、細菌、真菌、あるいは原生動物などの微生物の細胞と反応し、これらの全部、または一部を酸化することによって、抗菌作用を発現する。
【0039】
本発明において、酸化チタンに含有させるオキソ酸化合物とは、ヒドロキシル基(OH)および、オキソ基(C=O)を有する化合物であり、液中でイオンの状態で存在し、光触媒表面で発生した活性酸素種を比較的安定な状態に変換する作用を持つ。オキソ酸によってラジカル状態の物質が安定な化合物に変換されるメカニズムについては明らかではないが、オキソ酸のように酸素を多く含む構造が、ラジカルに配位して、より安定した活性物質へと変換されるものであると考えられる。オキソ酸としては、特に限定されないが、一般的なオキソ酸化合物を使用することができる。例えば、オキソ酸がリン酸化合物である場合、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸カリウム、リン酸カルシウム、リン酸銀(I)、リン酸クロム(III)、リン酸コバルト、リン酸第二鉄、リン酸チタン、リン酸鉄(III)、リン酸銅(II)、リン酸鉛(II)、リン酸マグネシウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸二水素カリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素リチウム、リン酸三アンモニウム、リン酸三カリウム、リン酸三カルシウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三リチウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸水素カルシウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、ポリリン酸、ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸カリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸、メタリン酸アルミニウム、メタリン酸カリウム、メタリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、アデノシン三リン酸、アデノシン二リン酸、核酸化合物等が挙げられる。
【0040】
また、オキソ酸が炭酸化合物である場合、炭酸アンモニウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸鉛、炭酸バリウム、炭酸マンガン、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸セシウム、炭酸セリウム、炭酸鉄、炭酸銅などが挙げられる。
【0041】
また、オキソ酸が硫酸化合物である場合、硫酸、硫酸亜鉛、硫酸アルミニウム、硫酸アンモニウム、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸水素アンモニウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸すず(II)、硫酸ストロンチウム、硫酸セシウム、硫酸第一鉄、硫酸第一マンガン、硫酸第二クロム、硫酸第二鉄、硫酸チタン、硫酸銅(II)、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン、硫酸リチウムなどが挙げられる。
【0042】
また、オキソ酸が硝酸化合物である場合、硝酸、硝酸亜鉛、硝酸アンモニウム、硝酸カリウム、硝酸クロム(III)、硝酸コバルト(II)、硝酸セシウム、硝酸鉄(II)、硝酸銅(II)、硝酸ニッケル、硝酸バリウム、硝酸マグネシウム、硝酸マンガン、硝酸リチウムなどが挙げられる。一方、光触媒により酸化分解されないものが好ましく、リン酸、硫酸、炭酸、硝酸、ホウ酸が挙げられる。
【0043】
オキソ酸として、例えばリン酸を使用する場合、リン酸塩、リン酸水素塩を用いて、適当な濃度の水溶液として用いることができる。また、ポリリン酸やメタリン酸などのリン酸化合物も同様に使用できる。いずれも、その構造中に複数のオキソ基を有している。
【0044】
本発明においては、発生する活性酸素種の種類は、含有するオキソ酸およびハロゲンの種類と量によって選択的に発生させることができる。例えば、オキソ酸化合物としてリン酸塩を使用した場合、活性物質として過酸化水素を発生させることを確認している。また、ハロゲンの含有状態や比率は、発生させたい目的物質によって制御すればよい。尚、オキソ酸を含有させず、ハロゲンから生じるハロゲンオキソ酸にて同様の効果を得ることは、ハロゲンオキソ酸の発生量が少ないため好ましくない。
【0045】
本発明において「ハロゲンの少なくとも一部が酸化チタン(IV)と化学結合している」とは、酸化チタン(IV)とハロゲンの少なくとも一部とが化学的に結合していることをいう。好適には担持や混合ではなく酸化チタンとハロゲンとが原子レベルで結びついている状態のことをいい、より好適には酸化チタンとハロゲンとがイオン結合していることをいう。本発明において「化学結合しているハロゲン」とは、例えば、ハロゲン含有酸化チタンに含まれるハロゲンのうち、水に溶出しにくいハロゲンのことをいう。尚、二種類以上のハロゲンを含有させる場合には、そのうちの1種類以上が化学的に結合している状態であれば効果が得られる。
【0046】
本発明において、酸化チタン(IV)と化学結合させるハロゲンとしては、フッ素、ヨウ素、臭素及び塩素が挙げられる。例えば、ハロゲンとして、フッ素を使用する場合、フッ素の含有量は、活性物質の発生量及び光照射時の抗菌性能の増強の点から、1.25重量%〜4.0重量%であることが好ましい。フッ素含有酸化チタン(IV)におけるフッ素の含有量は、吸光光度分析法(JIS K 0102)により求めることができる。
【0047】
酸化チタン(IV)と化学結合しているハロゲンの量は、酸化チタン光触媒を水中に分散させ、pH調整剤(例えば、塩酸、アンモニア水)でpH=3以下又はpH=10以上に保持し、水中へのハロゲンの溶出量を比色滴定等により測定し、ハロゲン含有酸化チタンに含まれるハロゲンの総量から上記溶出量を差し引くことにより算出できる。
【0048】
化学結合は、イオン結合であることが好ましい。化学結合がイオン結合である場合は、ハロゲンと酸化チタンとが強固に結合し、例えば、抗菌活性や光触媒反応の促進作用を向上できる、酸化チタンとハロゲンとのイオン結合は、光電子分光装置により分析できる。例えば、ハロゲンがフッ素である場合、ハロゲン含有酸化チタンを光電子分光分析装置で分析した際に、フッ素の1s軌道(F1s)のピークトップが683eV〜686eVの範囲となるスペクトルを示す場合をいう。これは、フッ素とチタンとがイオン結合したフッ化チタンのピークトップの値が上記範囲内であることに由来する。
【0049】
[ハロゲン含有酸化チタンの製造方法]
本発明のハロゲン含有酸化チタンは、例えば、n−ブチルアミンの吸着量が8μmol/g以下である酸化チタンの水分散液とハロゲン化合物とを混合し、さらに、前記混合液のpHが3を超える場合は酸を用いてpHを3以下に調整することによって、前記混合液中で前記酸化チタンと前記ハロゲン化合物とを反応させる工程と、前記反応させて得られた反応物を洗浄することによって、ハロゲンの少なくとも一部が酸化チタンと化学結合しているハロゲン含有酸化チタンを得る工程とを含む製造方法により製造することができる。n−ブチルアミンの吸着量が8μmol/g以下であるアナタース型酸化チタンとしては、例えば、堺化学工業株式会社製SSP−25等が使用でき、その水分散液としては、例えば、堺化学工業株式会社製CSB−M等が使用できる。
【0050】
ハロゲン化合物としては、特に限定されないが、一般的なハロゲン化合物を使用できる。ハロゲン化合物が、フッ素化合物である場合、例えば、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム、フッ化ナトリウム、フッ化水素酸が挙げられ、これらの中でも、フッ化アンモニウム、フッ化カリウム及びフッ化水素酸が好ましい。ハロゲン化合物がヨウ素化合物である場合、ヨウ化水素、過ヨウ素酸、ヨウ化アンモニウム等が挙げられる。ハロゲン化合物が臭素化合物である場合、臭化水素酸、臭化アンモニウム等が挙げられる。ハロゲン化合物が塩素化合物である場合、塩酸、塩化ナトリウム、次亜塩素酸が挙げられる。
【0051】
酸化チタン1g当たりのn−ブチルアミンの吸着量の測定方法は以下の通りである。つまり、130℃で2時間乾燥した酸化チタンのサンプル1gを、50mLの共栓付き三角フラスコにて精秤し、これにメタノールで希釈した0.003規定濃度のn−ブチルアミン溶液を30mL加える。次いで、これを1時間超音波分散させた後、10時間静置し、その上澄み液を10mL採取する。そして、採取した上澄み液を、メタノールで希釈した0.003規定濃度の過塩素酸溶液を用いて電位差滴定し、そのときの中和点における滴定量からn−ブチルアミンの吸着量を求めることができる。
【0052】
また、酸化チタン(IV)は、基材に担持することで、光の照射や、光触媒の飛散防止を効果的に行うことができる。基材としては、特に限定されないが、一般的なフィルタ基材を使用でき、金属、プラスチック、合成樹脂繊維、天然繊維、木材、紙、ガラス、セラミックなどが挙げられ、金属やセラミックやガラスなどが適している。プラスチックや紙を基材として用いる場合は、基材表面にシリコーンやフッ素樹脂、シリカなどを被覆して酸化チタンを担持してもよい。
【0053】
基材の形状は特に限定されないが、板状、網状、ハニカム状、繊維状、ビーズ状、スリット状、発泡体形状など、フィルタ状にすると光の照射と空気の接触を効率的に行なうことができる。板状のフィルタであれば、板に孔を空けたパンチング形状、繊維を編みこんだ編物形状、繊維を接着した不織布形状など、開口を備えたものが好適である。板状であれば、板をプリーツ状に折ってフィルタの表面積を広げることによって圧力損失を低減させてもよい。
【0054】
基材にガラス繊維織物を用いると、光や放射線に対する耐久性が強く、有機合成繊維や紙よりも酸性のバインダーによる化学的腐食を受けにくく好適である。また、ガラス繊維は光透過性および光散乱性を有するため、ハロゲン含有酸化チタンに光を照射する場合には、効率的に光を照射することができる。ガラス繊維の材質としては、石英ガラス、Eガラス、Cガラス、Sガラス、Aガラスなどが挙げられる。繊維形状は特に限定されないが、単繊維よりも、4〜9μmの径を有する短繊維ガラスを複数束ねた繊維束によって形成することが好ましい。繊維束は50本〜6400本程度の任意の本数を束ねて利用することができる。複数の短繊維ガラスを束ねた繊維束に酸化チタンを担持すると、繊維間に酸化チタン粒子が入りこみあるいは付着して固定化される。太い単繊維の表面に酸化チタンを担持する場合に比べて、繊維間に酸化チタンを保持することができるため、担持量を増やすことができる。また、繊維間に入り込んだ酸化チタン粒子は繊維にはさまることによって強固に固定化されるとともに、外部から衝撃が加わった場合にも繊維を介して衝撃が伝わるので脱落しにくいという作用を得ることができる。
【0055】
バインダーを使用する場合、Na2O、K2O、LiO2などのケイ酸塩からなるアルカリシリケート、シリカゾル、アルミナゾル、ジルコニアゾルなどの無機コロイド、シリカ、ケイ素、チタンなどのアルコキシド類とその加水分解物などが挙げられる。なお、Naなどのアルカリ成分は酸化チタン(IV)の結晶性を低下させ、性能を低下させることがあるため、バインダーとしては、主成分がSiO2であることがのぞましく、シリカゾルまたはシリカアルコキシド類の加水分解物などが好適である。
【0056】
ケイ素のアルコキシド類としては、テトラエトキシシランおよびその重合体であるメトキシポリシロキサン、エトキシポリシロキサン、ブトキシポリシロキサン、リチウムシリケートなどが挙げられ、チタンのアルコキシド類としては、テトラプロポキシチタンおよびその重合体などが挙げられる。これらの金属アルコキシド類は、水と酸によって加水分解され、バインダーとして用いることができる。チタンアルコキシドの場合、加熱処理することによって、それ自身に光触媒作用を持たせることができる。
【0057】
バインダーは酸性であることが好ましく、ケイ素、チタンなどを酸で加水分解した物や酸性のシリカゾル、アルミナゾルなどが挙げられる。ケイ素、チタンなどを酸で加水分解する場合には、塩酸、硫酸などを用いてpHを1〜5に調整するとよい。シリカゾルを用いる場合には、pH2〜4、粒子径10〜50nm程度のものが好適である。pHが中性あるいはアルカリ性のシリカゾルを用いると、ハロゲンを含有する酸化チタンを添加した際にゲル化をおこし、基材に均一に担持することが困難になることが多い。
【0058】
Na、K、NH4などの陽イオン成分がバインダーに含まれていると、ハロゲンとの反応の進行および酸化チタン(IV)表面への吸着により、抗菌性能の低下が発生することがあり、上記陽イオン成分は極力少ないほうがよい。例えば、バインダー溶液にNaが含まれている場合には、Na濃度がNa2Oとして0wt%より大きく0.05wt%以下であることが好ましい。
【0059】
ガラス繊維織物の目付け量としては10〜900g/m2のものが好ましく、製造を容易にするためには100〜400g/m2のものを選択するとよい。また、織物の織り方は、平織、綾織、朱子織、からみ織り、模紗織など、どのような織り方でもかまわないが、形状安定性の観点から模紗織が好ましい。糸の密度としてはタテ・ヨコの繊維束が20〜40本/25mm、厚さは0.1〜2mm、引張り強度100N/25mm以上が好ましい。
【0060】
基材にハロゲン含有酸化チタンを担持する方法としては、ディップコート、スプレーなどが挙げられるが、基材にハロゲン含有酸化チタンが固定化できればいかなる手段でもよい。1回の処理で担持量が十分でなければ、複数回の処理工程を繰り返してもよい。また、担持後に、乾燥機で50〜700℃程度の温度で0.01〜5時間程度加熱することによりバインダーを収縮させて基材に強固に固定化してもよく、90〜150℃で0.1時間の加熱がさらに好適である。このような加熱乾燥処理を行う場合には、基材の主成分をガラス、セラミックスで構成することが望ましい。
【0061】
ハロゲン含有酸化チタンの粒子径は、繊維の直径よりも小さいほうが好ましい。ハロゲン含有酸化チタンが繊維の直径よりも小さいため、ハロゲン含有酸化チタンが繊維間の編目や重なり部分に入り込みやすく、強固に固定化されるという効果を得ることができる。その結果、ハロゲン含有酸化チタンの担持量を増加させることができる。ハロゲン含有酸化チタンの粒子径は、一次粒子径として6〜100nm程度であるが、実際は一次粒子が凝集して0.1〜100μm程度の二次粒子になっていることが多い。ここでいうハロゲン含有酸化チタンの粒子径は二次粒子の状態を示し、ハロゲン含有酸化チタンを編物に分散させる際に繊維の編目や重なり部分に入り込みやすいことが必要である。
【0062】
作製したハロゲン含有酸化チタンに対し、続いてオキソ酸を添着する。オキソ酸は、適当な溶媒に溶解可能な濃度を混合して添着に使用する。例えば、精製水などに0.01重量%から10重量%程度の濃度になるように溶解して使用する。また、溶液には、化学結合させるハロゲンとは異なる種類のハロゲン化合物を混合して、同時に添着させることができる。このときのハロゲンは、例えば、塩素化合物においては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムなどの塩化物が挙げられる。また、ヨウ素化合物においては、ヨウ化カリウムなどが挙げられる。また、臭素化合物においては、臭化カリウム、臭化カルシウム、臭化アンモニウム、臭化ナトリウムなどの臭化物が挙げられる。これらも、オキソ酸の溶液に溶解可能な量を混合し、溶解させて使用する。例えば、0.01重量%から10重量%程度の濃度になるように溶解し、使用することができる。
【0063】
光触媒1にオキソ酸を添着する方法としては、ディップコート、スプレーなどが挙げられるが、光触媒1に付着できればいかなる手段でもよい。光触媒1をオキソ酸溶液に接触させた後、粉末であれば遠心分離やろ過、また、基材に固定化した状態であれば、引き上げたのち、100℃以下の低温で乾燥させて液体の残留を無くす。このようにして添着されたオキソ酸およびハロゲンは、酸化チタンと化学結合するのではなく、酸化チタンの細孔や、表面にランダムに吸着している状態にあると推測される。
【0064】
このようにして作製され、基材に固定化されたオキソ酸およびハロゲン含有酸化チタンに、紫外線光源を用いて紫外線を照射すると、光触媒反応によって活性酸素種を液中に生成することができ、所期の目的を達することができる。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例にて詳細に説明するが、本発明は、以下の記載に何ら限定して解釈されるものではない。
【0066】
(実施例1)
<1>.ハロゲン含有酸化チタンの調製
酸化チタン(商品名:SSP−25、堺化学工業株式会社製、アナタース型、粒径:5〜10nm、比表面積:270m2/g以上)の濃度が150g/Lとなるように酸化チタンに純水を加え、これを撹拌して、酸化チタン分散液を調製した。この酸化チタン分散液に、酸化チタンに対してフッ素(元素)に換算して3重量%に相当するフッ化水素酸(和光純薬社製、特級)を添加し、pH3に保持しながら25℃で60分間反応させた。得られた反応物を水洗した。水洗は、反応物を濾過して回収される濾液の電気伝導度が1mS/cm以下となるまで行った。そして、これを空気中において130℃で5時間乾燥させてフッ素含有酸化チタンを調製した。
【0067】
<2>.ハロゲン含有酸化チタンを担持したフィルタの作製
得られたハロゲン含有酸化チタンとシリカ系のバインダー(Na成分がNa2O濃度として0.05wt%以下、pH=3、SiO2濃度20wt%のシリカゾル)と精製水を混合し、ボールミルで24時間分散混合してスラリーを作成した。出来上がったスラリーに、基材として開口率15%のガラス繊維織物をディップしてハロゲン含有酸化チタンを含浸させ、エアブローして余剰液を排除した後、120℃の乾燥機で30分乾燥させ、ハロゲン含有酸化チタンを含むフィルタを作成した。同様のディップ作業を繰り返し、ハロゲン含有酸化チタンとバインダーを合わせた担持量を500g/m2にした。フィルタの基材となるガラス繊維織物は、目付け量354g/m2、糸の密度11×3本/25mm(タテ・ヨコ同じ)の模紗織、厚さは0.42mmのものを用いた。作成したフィルタの開口率は約15%であった。
【0068】
<3>.オキソ酸およびハロゲン含有酸化チタンフィルタの作製
得られたハロゲン含有酸化チタンフィルタを、オキソ酸およびハロゲンの供給源である50mMリン酸緩衝生理食塩水に含浸したのち、引き上げ、50℃の乾燥炉にて2時間静置して乾燥させ、オキソ酸およびハロゲン含有酸化チタンフィルタとした。
【0069】
<4>.過酸化水素の発生量の測定
作製した光触媒フィルタを、長さ5cm、幅2cmの短冊状に裁断し、直径3cm深さ10cmのガラス試験管に挿入した。蒸留水に空気を送気するために試験管内に直径3mmのテフロン(登録商標)チュープにて空気配管を設けた。配管の先端には、微細な気泡を放出できるようセラミック多孔体の散気管を設置した。尚、配管の先端は、光触媒フィルタの下方になるように配置した。この状態で配管よりダイアフラム型ポンプで空気を0.1ml/minの流量で液中に送気した。
【0070】
試験管の外側には、試験管を挟むようにブラックライトを5mW/cm2となるように照射し、12時間空気を流通させて、フィルタから発生する過酸化水素を液中に捕集した。12時間後、試験管内の反応液を回収し、液体中の過酸化水素の定量を行った。過酸化水素の測定は、過酸化水素定量用発色基質(商品名:H2O2 DetectionKit Colorimetric、AssayDesigns社製)を使用し、582nmの発色を紫外可視吸光度計にて測定した。その結果を図2に示す。
【0071】
(比較例1)
比較例1として、ハロゲン含有酸化チタンに替えて、ハロゲンを含まず光触媒活性を有するアナタース型酸化チタン(商品名:SSP−25、堺化学工業株式会社製)を使用してフィルタを作成した以外は、実施例1と同様にして活性物質の発生量の測定を行った。その結果を図2に示す。
【0072】
(比較例2)
比較例2として、オキソ酸ハロゲン含有酸化チタンに替えて、オキソ酸を含まないハロゲン含有酸化チタンを使用したフィルタを用いた以外は、実施例1と同様にして過酸化水素の発生量の測定を行った。その結果を図2に示す。
【0073】
(比較例3)
比較例3として、実施例1と同様の方法において、紫外線の照射を行わずに暗所にて過酸化水素の発生量の測定を行った。その結果を図2に示す。
【0074】
図2に示すように、実施例1のフィルタは、24時間後に約153nmol/m3の過酸化水素が検出された。一方、比較例1のフィルタは、0.14nmol/m3、比較例2のフィルタは検出下限以下(0.1nmol/m3未満)、比較例3のフィルタは検出下限以下(0.1nmol/m3未満)であった。オキソ酸を含有し、光照射をすることによって、活性物質である過酸化水素がフィルタ上から放出されていることが確認された。また、ハロゲン含有酸化チタンを用いることにより、その発生量は1000倍以上に増大することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0075】
光触媒を液中で光触媒反応によって活性酸素種を水中に生成する方法を提供することができ、配水設備の除菌や排液の除菌などの用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0076】
1 光触媒
2 光源
3 散気手段
4 純水生成手段
101 超純水製造装置
102 オゾンガス発生装置
103 オゾンガス溶解装置
104 塩基性薬品添加装置
105 ユースポイント
106 pH計
107 溶存オゾンモニター
108 超純水供給配管
109 貯留槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水製造装置の系内であって、純水生成手段の上流側に設置されたオキソ酸およびハロゲンを含有する光触媒と、
前記光触媒を励起するための光源と、を備え、
前記光触媒から生成した活性酸素種によって前記純水製造装置の系内の水中および前記純水製造装置の内壁面および配管内に存在する有機物を分解することを特徴とする純水製造方法。
【請求項2】
光触媒が酸化チタン(IV)であって、
光源が紫外線ランプであることを特徴する請求項1に記載の純水製造方法。
【請求項3】
水中に酸素を含む気体を溶解させるための散気手段を備えたことを特徴する請求項1または2に記載の純水製造方法。
【請求項4】
オキソ酸がリン酸化合物であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の純水製造方法。
【請求項5】
ハロゲンがフッ素であって、
前記フッ素が光触媒に少なくとも一部が化学結合していることを特徴する請求項1から4のいずれかに記載の純水製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−96166(P2012−96166A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−245800(P2010−245800)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】