説明

純水製造装置

【課題】熱交換器を用いることなく、得られる純水の水量変動が防止される純水製造装置を提供する。
【解決手段】原水は、活性炭濾過装置1によって濾過された後、逆浸透膜装置用給水ポンプ2を経て逆浸透膜装置3へ送られ、脱塩処理される。逆浸透膜装置3で脱塩処理された水は、水温センサ4aを備えた水質センサ4と接触した後、電気脱イオン装置5へ送られ、電気脱イオン処理される。この電気脱イオン処理水は、水温センサ6aを有した水質センサ6と接触した後、処理水(純水)として取り出される。水温センサ4aの検知信号は、ポンプ制御回路7に入力され、逆浸透膜装置3からの透過水の水量が一定となるように、ポンプ2の給水量を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は純水製造装置に係り、特に原水を逆浸透膜装置と電気脱イオン装置とによって処理するようにした純水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工水、市水、井水或いは半導体製造工程等からの回収水を処理して純水を製造するシステムとして、原水を逆浸透膜装置で処理した後、電気脱イオン装置で処理する装置が周知である(例えば下記特許文献1,2)。
【特許文献1】特開2003−1259号公報
【特許文献2】特開2001−29752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
原水を逆浸透膜装置及び電気脱イオン装置によって処理して純水を製造する純水製造装置においては、逆浸透膜装置や電気脱イオン装置によって処理される水の水温が変動すると、該逆浸透膜装置の透過水あるいは電気脱イオン装置の脱イオン水の水量が変動し、この結果、純水製造装置で製造される純水の水量が変動する。
【0004】
従来は、この水温変動による水量変動を防止するために、逆浸透膜装置の前段側に熱交換器を設置し、逆浸透膜装置への流入水の水温を一定とするようにしている。しかしながら、このような熱交換器を設けると、純水製造装置の設備コストが嵩むことになる。
【0005】
本発明は、熱交換器を用いることなく、得られる純水の水量変動が防止される純水製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(請求項1)の純水製造装置は、原水を逆浸透膜装置で処理した後、電気脱イオン装置で処理して純水を製造する純水製造装置において、逆浸透膜装置の透過水の水温の検知手段と、該検知手段で検知された水温に基づき、逆浸透膜装置の透過水の水量が一定となるように該逆浸透膜装置への給水量を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の純水製造装置は、原水を逆浸透膜装置で処理した後、電気脱イオン装置で処理して純水を製造する純水製造装置において、電気脱イオン装置の脱イオン水の水温の検知手段と、該検知手段で検知された水温に基づき、電気脱イオン装置の脱イオン水の水量が一定となるように該電気脱イオン装置への給水量を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0008】
請求項3の純水製造装置は、請求項1又は2において、前記水温の検知手段は、導電率計又は比抵抗計の温度補正用検出器と兼用されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の純水製造装置は、逆浸透膜装置の透過水又は電気脱イオン装置の脱イオン水の水温を検知し、この検知水温に基づいて逆浸透膜装置又は電気脱イオン装置への給水量を制御することにより、該逆浸透膜装置の透過水の水量を一定とするものである。このように逆浸透膜装置への給水量を制御することにより、逆浸透膜装置の透過水又は電気脱イオン装置の脱イオン水の水量変動が防止され、この結果として純水の水量変動が防止されるので、逆浸透膜装置の前段側に熱交換器を設けることが不要となり、純水製造装置の設備コストが低減される。
【0010】
特に、この水温検知手段として、逆浸透膜装置の透過水あるいは電気脱イオン装置の脱イオン水の水質検知用の導電率計又は比抵抗計の温度補正用検出器を利用することにより、設備コストをさらに低減させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1は実施の形態に係る純水製造装置の系統図である。
【0012】
原水は、活性炭濾過装置1によって濾過された後、逆浸透膜装置(図1中ではROと記載されている。)用給水ポンプ2を経て逆浸透膜装置3へ送られ、脱塩処理される。逆浸透膜装置3で脱塩処理された水は、水温センサ4aを備えた水質センサ4と接触した後、電気脱イオン装置5へ送られ、電気脱イオン処理される。この電気脱イオン処理水は、水温センサ6aを有した水質センサ6と接触した後、処理水(純水)として取り出される。
【0013】
第1の制御方式にあっては、上記の水温センサ4aの検知信号は、ポンプ制御回路7に入力され、水温変動による逆浸透膜装置透過水量の変動を防止するように、ポンプ2の吐出量を制御する。このポンプ2の制御は、例えばインバータにより行われる。
【0014】
このように、この純水製造装置によると、逆浸透膜装置3からの脱塩水の水温を水温センサ4aで検知し、これに基づいてポンプ2の吐出量を制御して脱塩水水量変動を防止するようにしており、脱塩水の水量変動が熱交換器を用いることなく防止されるので、得られる純水の水量変動が確実に防止されると共に、純水製造装置の設備コストも低廉である。
【0015】
第2の制御方式では、上記水温センサ6aの検知信号は、ポンプ制御回路7に入力され水温変動による電気脱イオン装置5からの脱イオン水の水量変動を防止するようにポンプ2の吐出量を制御する。
【0016】
このように水温センサ6aの検知水温に基づいて、電気脱イオン装置5への給水量を制御して電気脱イオン装置5の脱イオン水の水量変動を防止するので、電気脱イオン装置5の前段側に熱交換器を設けることが不要となり、純水製造装置の設備コストが低減される。
【0017】
上記実施の形態では、水温センサとして水質センサ4,6の温度補正用の水温センサ4a,6aを利用しているので、水温センサを新設する必要がなく、これによっても純水製造装置の設備コストが一層低廉化される。
【0018】
本発明において、処理対象となる原水は、工水、市水、井水又は製造プロセス回収水、例えば半導体又は液晶等の製造プロセスの洗浄排水等であり、これらの2種以上を混合して原水としても良い。半導体製造回収水のような製造プロセス回収水を原水とする場合であって、当該回収水の有機物(TOC)濃度が高い場合には、生物処理手段、加熱手段、触媒による分解手段等のTOC除去装置で予め処理してもよい。
【0019】
また、工水、市水、井水等の原水は、必要に応じてこの実施の形態のように、活性炭濾過装置1などで前処理するのが好ましい。なお、活性炭濾過装置以外のものとして限外濾過(UF)膜装置、精密濾過(MF)膜装置等を用いてもよい。
【0020】
原水又はその前処理水(又はTOC除去処理水)は、HCl,HSO等の鉱酸を添加してpH4〜6に調整した後、脱酸素装置で処理してもよい。
【0021】
ここで、調整pHは酸素と共に炭酸ガスを除去するために行うものであり、後段の脱塩装置の負荷を軽減させる。この脱酸素装置としては、膜脱気装置、真空脱気装置、空気ガス脱気装置等を用いることができる。pHを酸性として脱酸素装置で脱酸素処理した場合は、その後、NaOH等のアルカリを添加してpH7〜8に調整する。
【0022】
逆浸透膜装置の膜としては特に制限はなく、ポリスルホン、ポリアミド、ポリ酢酸ビニル等の膜を用いることができる。
【0023】
電気脱イオン装置5としては、陽極を備える陽極室と陰極を備える陰極室との間に、複数のアニオン交換膜及びカチオン交換膜を交互に配列して濃縮室と脱塩室とを交互に形成し、脱塩室にアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合樹脂やイオン交換繊維等のイオン交換体を充填したもの等を使用することができる。この電気脱イオン装置5の印加電圧は10〜100V特に30〜70V程度が好適であり、通電電流密度は4〜20A/m、特に6〜10A/m程度が好適である。
【0024】
電気脱イオン装置5の脱イオン水は、必要に応じ、第2の逆浸透膜装置や、限外濾過膜装置(図示略)で処理して、更に残留する微量のTOCやシリカ等を除去して純度を高めてもよい。
【0025】
なお、本発明においては、電気脱イオン装置5の濃縮水を逆浸透膜装置3の入口側に返送して循環処理するのが水回収率の向上の面で好ましい。この場合においても、電気脱イオン装置5への給水は、逆浸透膜装置3による処理で十分に水質が高められているため、電気脱イオン装置濃縮水を逆浸透膜装置3の入口側に返送することによる処理水水質の低下の問題はない。
【0026】
本発明では、各配管を流れる水量を弁開度の調節によって調節するようにしてもよいが、各配管にオリフィスを設けて流量調節(設定)するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の純水製造装置の実施の形態を示す系統図である。
【符号の説明】
【0028】
1 活性炭濾過装置
2 逆浸透膜装置への給水ポンプ
3 逆浸透膜装置
5 電気脱イオン装置
7 ポンプ制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を逆浸透膜装置で処理した後、電気脱イオン装置で処理して純水を製造する純水製造装置において、
逆浸透膜装置の透過水の水温の検知手段と、
該検知手段で検知された水温に基づき、逆浸透膜装置の透過水の水量が一定となるように該逆浸透膜装置への給水量を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする純水製造装置。
【請求項2】
原水を逆浸透膜装置で処理した後、電気脱イオン装置で処理して純水を製造する純水製造装置において、
電気脱イオン装置の脱イオン水の水温の検知手段と、
該検知手段で検知された水温に基づき、電気脱イオン装置の脱イオン水の水量が一定となるように該電気脱イオン装置への給水量を制御する制御手段と
を備えたことを特徴とする純水製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記水温の検知手段は、導電率計又は比抵抗計の温度補正用検出器と兼用されていることを特徴とする純水製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−255650(P2006−255650A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79700(P2005−79700)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】