説明

純水製造装置

【課題】弁開度調節を行うことなく純水製造運転を開始することができる純水製造装置を提供する。
【解決手段】原水は、オリフィス1及び保安フィルタ2を通過し、活性炭濾過装置3によって濾過された後、給水タンク4、ポンプ5を経て逆浸透膜装置6へ送られ、脱塩処理される。逆浸透膜装置6で脱塩処理された水は、水温センサを備えた水質センサ7と接触した後、電気脱イオン装置8へ送られ、電気脱イオン処理される。この電気脱イオン処理水は、処理水(純水)として取り出される。逆浸透膜装置6の濃縮水の一部は、オリフィス10、配管11、オリフィス12を介して排出され、残部は該配管11から分岐した配管13及びオリフィス14を介して給水タンク4へ返送される。電気脱イオン装置8からの濃縮水は、配管15及びオリフィス16を介して給水タンク4へ返送される。電気脱イオン装置8からの電極水は、配管17及びオリフィス18を介して排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は純水製造装置に係り、特に原水を逆浸透膜装置と電気脱イオン装置とによって処理するようにした純水製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工水、市水、井水或いは半導体製造工程等からの回収水を処理して純水を製造するシステムとして、原水を逆浸透膜装置で処理した後、電気脱イオン装置で処理する装置が周知である(例えば下記特許文献1,2)。
【0003】
図1(b)は逆浸透膜装置及び電気脱イオン装置を用いた従来の純水製造装置の一例を示す系統図である。
【0004】
水道水などの原水は、弁21、流量計22、活性炭濾過装置23、保安フィルタ24、給水タンク25、給水ポンプ26、弁27、逆浸透膜装置(RO装置)28、流量計29、電気脱イオン装置(EDI)30、弁31、流量計32の順に流れて純水となる。なお、活性炭濾過装置23には弁23aを有した逆洗排水排出ライン23bが設けられている。逆浸透膜装置28の濃縮水は、配管40を介して取り出され、その一部は弁45、流量計46及び配管47を介して排出され、残部は配管41、弁42、流量計43、配管44を介して給水タンク25へ返送される。
【0005】
電気脱イオン装置30の濃縮水は、弁51、流量計52及び配管53を介して給水タンク25へ返送される。電気脱イオン装置30の電極水は、弁55、流量計56及び配管57を介して排出される。
【0006】
上記の弁21,27,31,42,45,51,55はいずれも開度調整可能な構造のものである。純水製造装置の運転を開始するに際しては、給水ポンプ56を起動した後、製造される純水の水量が規定量となるように各弁の開度を調節する必要がある。
【特許文献1】特開2003−1259号公報
【特許文献2】特開2001−29752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
I.図1(b)の従来例においては、純水製造装置の運転開始に際し、規定量の生産水量となるように各弁の開度調節を行う必要があり、相当の人手と時間がかかっていた。
【0008】
本発明は、弁開度調節を行うことなく所要の生産水量を得るように運転開始することができる純水製造装置を提供することを第1の目的とする。
【0009】
II.原水を逆浸透膜装置及び電気脱イオン装置によって処理して純水を製造する純水製造装置においては、逆浸透膜装置によって処理される水の水温が変動すると、該逆浸透膜装置の透過水の水量が変動し、この結果、純水製造装置で製造される純水の水量が変動する。
【0010】
この水温変動による水量変動を防止するために、逆浸透膜装置の前段側に熱交換器を設置し、逆浸透膜装置への流入水の水温を一定とすることがある。しかしながら、このような熱交換器を設けると、純水製造装置の設備コストが嵩むことになる。
【0011】
本発明は、その一態様において、熱交換器を用いることなく、得られる純水の水量変動が防止される純水製造装置を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明(請求項1)の純水製造装置は、原水を逆浸透膜装置で処理した後、電気脱イオン装置で処理して純水を製造する純水製造装置において、該逆浸透膜装置の濃縮水の一部をオリフィスを介して排出すると共に、残部をオリフィスを介して逆浸透膜装置の上流側へ返送し、電気脱イオン装置の濃縮水をオリフィスを介して電気脱イオン装置の上流側へ返送し、電気脱イオン装置の電極水をオリフィスを介して排出するよう構成したことを特徴とするものである。
【0013】
請求項2の純水製造装置は、請求項1において、該オリフィスはオリフィス板に複数の孔を設けたものであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3の純水製造装置は、請求項1又は2において、該逆浸透膜装置の透過水の水温の検知手段と、該検知手段で検知された水温に基づき、逆浸透膜装置の透過水の水量が一定となるように該逆浸透膜装置への給水ポンプによる給水量を制御する給水ポンプ制御手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0015】
請求項4の純水製造装置は、請求項1ないし3のいずれか1項において、前記水温の検知手段は、逆浸透膜装置の透過水の導電率計又は比抵抗計の温度補正用検出器と兼用されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の純水製造装置は、逆浸透膜装置からの濃縮水の返送量と排出量の割合をオリフィスによって設定している。また、電気脱イオン装置からの濃縮水の返送量及び電極水の排出量をそれぞれオリフィスによって設定している。このようにオリフィスによって流量設定を行うところから、弁開度調節を行うことなく純水製造装置の運転を開始し、所要の生産水量を得ることができる。
【0017】
このオリフィスとして、オリフィス板に2以上の孔を設けたものを用いると、オリフィスから発生する通水騒音が減少する。
【0018】
本発明の純水製造装置においては、逆浸透膜装置の透過水の水温を検知し、この検知水温に基づいて逆浸透膜装置への給水量を制御することにより、該逆浸透膜装置の透過水の水量を一定とすることができる。このように逆浸透膜装置への給水量を制御することにより、逆浸透膜装置の透過水の水量変動が防止され、この結果として純水の水量変動が防止されるので、逆浸透膜装置の前段側に熱交換器を設けることが不要となり、純水製造装置の設備コストが低減される。
【0019】
特に、この水温検知手段として、逆浸透膜装置の透過水の水質検知用の導電率計又は比抵抗計の温度補正用検出器を利用することにより、設備コストをさらに低減させることが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1は実施の形態に係る純水製造装置の系統図である。
【0021】
原水は、オリフィス1及び保安フィルタ2を通過し、活性炭濾過装置3によって濾過された後、給水タンク4に導入される。この給水タンク4内の水は、ポンプ5を経て逆浸透膜装置(RO)6へ送られ、脱塩処理される。逆浸透膜装置6で脱塩処理された水は、水温センサを備えた水質センサ7と接触した後、電気脱イオン装置(EDI)8へ送られ、電気脱イオン処理される。この電気脱イオン処理水は、処理水(純水)として取り出される。
【0022】
逆浸透膜装置6の濃縮水の一部は、オリフィス10、配管11、オリフィス12を介して排出され、残部は該配管11から分岐した配管13及びオリフィス14を介して給水タンク4へ返送される。
【0023】
電気脱イオン装置8からの濃縮水は、配管15及びオリフィス16を介して給水タンク4へ返送される。電気脱イオン装置8からの電極水は、配管17及びオリフィス18を介して排出される。
【0024】
上記のセンサ7の水温検知信号は、ポンプ制御回路9に入力され、水温変動に起因した逆浸透膜装置6の透過水変動を補償して透過水量が一定となるように、ポンプ5の吐出量を制御する。このポンプ5の制御は、例えばインバータにより行われる。なお、一般に逆浸透膜装置の透過水量は水温が高くなる程増加し、水温が低くなる程減少する。そこで、ポンプ制御回路9は、水温が高くなる程ポンプ5の回転数を少なくし、逆に水温が低くなる程ポンプ5の回転数を増加させる。
【0025】
この純水製造装置によると、逆浸透膜装置6からの濃縮水の排出量と返送量との比率の設定をオリフィス10,12,14で行い、電気脱イオン装置8の濃縮水の返送量及び電極水の排出量をそれぞれオリフィス16,18で設定するようにしており、純水製造装置の運転に際し弁開度調節を行うことが不要である。そのため、純水製造装置に配管を接続し、原水を給水タンク4まで通過させて所定水量の活性炭濾過水を給水タンク4に溜めた後、運転開始スイッチをON操作するだけで純水製造装置を起動させ、所要水量の純水を得ることができる。従って、純水製造装置の据え付け後に専門の操作員が居なくても運転開始することができる。
【0026】
また、この純水製造装置によると、逆浸透膜装置6からの脱塩水の水温を水温センサで検知し、これに基づいてポンプ5の吐出量を制御して脱塩水の水量変動を防止するようにしており、脱塩水の水量変動が熱交換器を用いることなく防止されるので、得られる純水の水量変動が確実に防止されると共に、純水製造装置の設備コストも低廉である。
【0027】
加えて、この実施の形態では、水温センサとして水質センサ7の温度補正用の水温センサを利用しているので、水温センサを新設する必要がなく、これによっても純水製造装置の設備コストが一層低廉化される。
【0028】
本発明において、処理対象となる原水は、工水、市水、井水又は製造プロセス回収水、例えば半導体又は液晶等の製造プロセスの洗浄排水等であり、これらの2種以上を混合して原水としても良い。半導体製造回収水のような製造プロセス回収水を原水とする場合であって、当該回収水の有機物(TOC)濃度が高い場合には、生物処理手段、加熱手段、触媒による分解手段等のTOC除去装置で予め処理してもよい。
【0029】
また、工水、市水、井水等の原水は、必要に応じてこの実施の形態のように、活性炭濾過装置3などで前処理するのが好ましい。なお、活性炭濾過装置以外のものとして限外濾過(UF)膜装置、精密濾過(MF)膜装置等を用いてもよい。
【0030】
原水又はその前処理水(又はTOC除去処理水)は、HCl,HSO等の鉱酸を添加してpH4〜6に調整した後、脱酸素装置で処理してもよい。
【0031】
ここで、pH調整は酸素と共に炭酸ガスを除去するために行うものであり、後段の脱塩装置の負荷を軽減させる。この脱酸素装置としては、膜脱気装置、真空脱気装置、空気ガス脱気装置等を用いることができる。pHを酸性として脱酸素装置で脱酸素処理した場合は、その後、NaOH等のアルカリを添加してpH7〜8に調整する。
【0032】
逆浸透膜装置の膜としては特に制限はなく、ポリスルホン、ポリアミド、ポリ酢酸ビニル等の膜を用いることができる。
【0033】
電気脱イオン装置8としては、陽極を備える陽極室と陰極を備える陰極室との間に、複数のアニオン交換膜及びカチオン交換膜を交互に配列して濃縮室と脱塩室とを交互に形成し、脱塩室にアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混合樹脂やイオン交換繊維等のイオン交換体を充填したもの等を使用することができる。この電気脱イオン装置5の印加電圧は10〜100V特に30〜70V程度が好適であり、通電電流密度は4〜20A/m、特に6〜10A/m程度が好適である。
【0034】
電気脱イオン装置8の脱イオン水は、必要に応じ、第2の逆浸透膜装置や、限外濾過膜装置(図示略)で処理して、更に残留する微量のTOCやシリカ等を除去して純度を高めてもよい。
【0035】
なお、オリフィスとして2個以上の孔がオリフィス板に設けられたものを用いることにより、オリフィス通水騒音を低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】(a)図は本発明の純水製造装置の実施の形態を示す系統図である。(b)図は従来の純水製造装置を示す系統図である。
【符号の説明】
【0037】
1,10,12,14,16,18 オリフィス
3,23 活性炭濾過装置
5,26 逆浸透膜装置への給水ポンプ
6,28 逆浸透膜装置
8,30 電気脱イオン装置
9 ポンプ制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を逆浸透膜装置で処理した後、電気脱イオン装置で処理して純水を製造する純水製造装置において、
該逆浸透膜装置の濃縮水の一部をオリフィスを介して排出すると共に、残部をオリフィスを介して逆浸透膜装置の上流側へ返送し、
電気脱イオン装置の濃縮水をオリフィスを介して電気脱イオン装置の上流側へ返送し、
電気脱イオン装置の電極水をオリフィスを介して排出するよう構成したことを特徴とする純水製造装置。
【請求項2】
請求項1において、該オリフィスはオリフィス板に複数の孔を設けたものであることを特徴とする純水製造装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、該逆浸透膜装置の透過水の水温の検知手段と、
該検知手段で検知された水温に基づき、逆浸透膜装置の透過水の水量が一定となるように該逆浸透膜装置への給水ポンプによる給水量を制御する給水ポンプ制御手段と
を備えたことを特徴とする純水製造装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、前記水温の検知手段は、逆浸透膜装置の透過水の導電率計又は比抵抗計の温度補正用検出器と兼用されていることを特徴とする純水製造装置。

【図1】
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【公開番号】特開2006−255652(P2006−255652A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−79702(P2005−79702)
【出願日】平成17年3月18日(2005.3.18)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】