説明

紙幣処理装置、および識別データ取得方法

【課題】紙幣を処理する紙幣処理装置において同一の紙幣の複数のデータを効率的に取得する。
【解決手段】まず、(a)紙幣処理装置が、紙幣処理装置の入金口から投入された紙幣の所定の側の面を所定の向きで走査することによって、紙幣の向きに関する第1の状態における第1の識別データを取得する。そして、工程(a)の後に、(b)紙幣処理装置が、紙幣を、紙幣に対する第1の方向を軸として180度回転させる。工程(b)の後に、(c)紙幣処理装置が、回転された紙幣の所定の側の面を所定の向きで走査することによって、紙幣の向きに関する第2の状態における第2の識別データを取得する。工程(c)の後に、(d)紙幣処理装置が、紙幣を紙幣処理装置の出金口に搬送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙幣を処理する紙幣処理装置において紙幣のデータを取得する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州においては、現金自動取引装置(以下「ATM」ともいう)において、偽の紙幣の可能性がある紙幣が検出された場合には、その紙幣のデータをヨーロッパ中央銀行のサーバに送信しなければならない。具体的には、ヨーロッパ中央銀行の理事会規則、1338/2001の第6条(The Council Regulation (EC) no 1338/2001 of the European Central Bank ECB require, Article 6)が、上記のルールを定めている。
【0003】
ヨーロッパ中央銀行のサーバに送信するデータは、被疑紙幣の両面について、被疑紙幣の短辺方向に沿って上から下に向かう向きと、下から上に向かう向きとでそれぞれ走査して取得する合計4個のデータである。また、それら4個のデータは、その被疑紙幣について「偽の紙幣の可能性がある」と判断したATMにおいて、その判断の根拠になった識別データを取得したセンサそのものを使用して、生成されなければならない。なお、これらのデータは上述の4種類について生成されればよく、データの順番は定められてはいない。
【0004】
上記のルールを遵守するため、従来は、次のような処理が行われていた。すなわち、ATMが被疑紙幣を検出した場合には、ATMは、取引は真正の紙幣の場合と同様に行い、その被疑紙幣を他の紙幣とは区別して格納する。そして、ATMの運用を終了した後、オペレータがその被疑紙幣を収納庫から取り出して、ATMの取引用の入金口から紙幣を投入し、通常の取引の場合と同様にATMに被疑紙幣のデータを取得させ、ATMの出金口から被疑紙幣を排出させる。オペレータは、ATMへの紙幣投入の合間に紙幣の向きを変えつつ、ATMに識別データを取得させる処理を合計4回繰り返す。そのようにして、そのATMが通常の現金の出し入れの際に使用しているセンサを使用して、上述の4種類のデータを取得する。
【0005】
なお、オペレータによる合計4回の投入は、それぞれ(1)被疑紙幣の第1の面を上(または奥)にして短辺方向の上から下に向かう向きに行う投入、(2)被疑紙幣の第1の面を上(または奥)にして短辺方向の下から上に向かう向きに行う投入、(3)被疑紙幣の第1の面とは逆の第2の面を上(または奥)にして短辺方向の上から下に向かう向きに行う投入、(4)被疑紙幣の第2の面を上(または奥)にして短辺方向の下から上に向かう向きに行う投入、である。なお、ここでは、上下は紙幣の印刷の向きにしたがうものとする。
【0006】
しかし、上記の処理においては、オペレータは、同一の被疑紙幣を、状態を変えて4回ATMに投入する必要がある。このため、すでにデータを取得した状態について、重複してデータを生成してしまうことがあった。このような問題は、欧州において設置されるATMに限らず、紙幣を処理する装置において同一の紙幣について複数の向きおよび面の組合せでデータを収集する際に、同様に問題となる。
【0007】
【特許文献1】特開2002−338093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の問題の少なくとも一部を取り扱うためのものであり、紙幣を処理する紙幣処理装置において同一の紙幣の複数のデータを効率的に取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的の少なくとも一部を取り扱うために、本発明は、紙幣から識別データを取得することができる紙幣処理装置において以下のような構成を採用する。すなわち、この紙幣処理装置は、紙幣の投入を受ける入金口と、紙幣を排出する出金口と、データ取得部と、反転部と、第1の搬送部と、紙幣処理装置の各部を制御する制御部と、を備える。データ取得部は、入金口から投入された紙幣の所定の側の面を所定の向きで走査して識別データを取得する。反転部は、紙幣を、紙幣に対する第1の方向を軸として180度回転させる。第1の搬送部は、データ取得部を通過した紙幣を、反転部を経由して再びデータ取得部に搬送でき、かつ、データ取得部を通過した紙幣を出金口に搬送できる。
【0010】
この紙幣処理装置の制御部は、機能部として、第1の識別データ取得部と、第1の循環部と、第2の識別データ取得部と、第1の返還部と、を備える。第1の識別データ取得部は、第1の動作モードにおいて、紙幣の向きに関する第1の状態における第1の識別データをデータ取得部に取得させる。第1の循環部は、第1の識別データを取得された紙幣を、第1の搬送部に、反転部を経由してデータ取得部へ搬送させる。第2の識別データ取得部は、第1の状態から180度回転された第2の状態における第2の識別データをデータ取得部に取得させる。第1の返還部は、第1と第2の識別データが取得された後に、第1の搬送部に、紙幣を出金口へ搬送させる。
【0011】
このような態様とすれば、人の手を介さずに、紙幣を反転させて紙幣の両面の識別データを取得することができる。よって、同一の紙幣の複数のデータをミスなく効率的に取得することができる。なお、識別データ取得の際の「所定の側の面」とは、紙幣処理装置を基準として「所定の側」にある面という意味である。また、走査の「所定の向き」とは、紙幣処理装置を基準として定められた向きである。
【0012】
なお、本明細書において「紙幣」とは、国家または国家の中央銀行が発行したものには限られない。すなわち、本明細書において「紙幣」とは、国や団体などの組織が発行し所定の価値を保証するシート状の媒体である。
【0013】
なお、紙幣処理装置は、さらに、オペレータに作業を指示する出力部を備えることが好ましい。そして、そのような態様において、制御部は、さらに、第1の指示部を備えることが好ましい。この第1の指示部は、第1の動作モードにおいて、出金口に搬送された紙幣を、紙幣に対する第2の方向であって第1の方向と垂直な第2の方向を軸として180度回転させ、入金口に再投入する作業を行うべき旨の指示を、出力部を通じてオペレータに行う。
【0014】
このような態様とすれば、紙幣処理装置が行う処理と、オペレータが行う処理との組合せによって、1枚の紙幣から互いに異なる状態についての複数種類の識別データを効率的に取得することができる。
【0015】
なお、制御部は、さらに、第3の識別データ取得部と、第2の循環部と、第4の識別データ取得部と、報告部と、を備えることが好ましい。第3の識別データ取得部は、第1の動作モードにおいて、入金口に再投入された紙幣の向きに関する第3の状態における第3の識別データをデータ取得部に取得させる。第2の循環部は、第3の識別データを取得された紙幣を、所定の場合に、第1の搬送部に、反転部を経由してデータ取得部へ搬送させる。第4の識別データ取得部は、第3の状態から180度回転された第4の状態における第4の識別データをデータ取得部に取得させる。報告部は、第3と第4の識別データが取得された場合に、第1ないし第4の識別データの取得が完了した旨の報告を、出力部を通じてオペレータに行う。
【0016】
このような態様とすれば、紙幣処理装置が行う処理と、オペレータが行う処理との組合せによって、1枚の紙幣から互いに異なる状態についての4種類の識別データを効率的に取得することができる。なお、制御部は、第3と第4の識別データが取得された後に、第1の搬送部を制御して、紙幣を出金口に搬送させ、オペレータに返却する第1の返却部を備える態様とすることもできる。
【0017】
なお、反転部は、識別データが取得された紙幣を、紙幣の第1の面と第2の面との位置関係が、前回、紙幣がデータ取得部を通過したときとは逆となる状態とする態様とすることができる。また、反転部は、識別データが取得された紙幣を、紙幣を紙面内で180度回転する態様とすることができる。
【0018】
また、出力部による指示は、識別データが取得された紙幣を、紙幣の第1の面と第2の面との位置関係が、前回、紙幣が入金口に投入されたときとは逆となる状態として、入金口に投入すべき旨の指示とすることができる。また、出力部による指示は、識別データが取得された紙幣を、入金口に投入されたときの向きから紙面内で180度回転させた状態として、入金口に投入すべき旨の指示とすることもできる。
【0019】
なお、制御部は、さらに、中途返却部と、第2の指示部と、を備えることが好ましい。中途返却部は、第3の識別データが第1または第2の識別データと一致する場合に、出金口を介して紙幣をオペレータに返却する。第2の指示部は、第3の識別データが第1または第2の識別データと一致する場合に、出金口に搬送された紙幣を、第2の方向を軸として180度回転させ、入金口に投入する作業を行うべき旨の指示を、出力部を通じてオペレータに行う。
【0020】
このような態様とすれば、オペレータが作業ミスを犯した場合にも、その後、オペレータに正しく作業を行わせることができる。なお、上述の第2の循環部は、所定の場合として、第3の識別データが第1または第2の識別データと一致しない場合に、第1の搬送部に、反転部を経由してデータ取得部へ搬送させる態様とすることができる。
【0021】
なお、紙幣は長方形である場合には、以下のような態様とすることが好ましい。すなわち、反転部の処理における第1の方向は、紙幣の長辺または短辺に平行な方向である。また、出力部の指示における第2の方向は、紙幣の長方形の面に対して垂直な方向である。このような態様とすれば、紙幣処理装置は、同一紙幣の4種類の識別データを取得するために第2の方向を軸とした回転手段を備える必要がない。よって、紙幣処理装置を小さく構成することができる。
【0022】
また、紙幣処理装置は、紙幣を収納することができる第1および第2の収納部と、識別データが取得された紙幣を第1および第2の収納部に搬送できる第2の搬送部と、を備える態様とすることができる。そのような態様においては、制御部は、さらに、以下のような処理を行うことができる分別部を備えることが好ましい。
【0023】
分別部は、第2の動作モードにおいて、入金口から投入された紙幣が、(1)真正の紙幣ではなく真正の紙幣を装った券でもない第1種の券と、(2)真正の紙幣を装った偽の紙幣である第2種の券と、(3)偽の紙幣である可能性があるがその可能性は第2種の券より低い第3種の券と、(4)真正の紙幣である第4種の券と、を含む複数種類の券のうちのいずれであるかを識別データに基づいて識別する。そして、分別部は、第2の搬送部に、第3種の券を第1の収納部に搬送させ、第4種の券を第2の収納部に搬送させる。
【0024】
このような態様とすれば、偽券である可能性がある紙幣と、真券である紙幣とを区別して保管することができる。
【0025】
なお、制御部は、さらに、第2の指示部を備えることが好ましい。この第2の指示部は、第2の動作モードの後の第1の動作モードにおいて、第1の収納部に第3種の券が収納されている場合に、第1の収納部内の第3種の券を入金口に投入する作業を行うべき指示を、出力部を通じてオペレータに行う。このような態様とすれば、識別データを取得する作業を効率的に行うことができる。
【0026】
なお、本発明は、以下のような態様で実現することもできる。すなわち、紙幣処理装置を用いて紙幣から識別データを取得する際に、以下のような処理を行う。
【0027】
まず、(a)紙幣処理装置が、紙幣処理装置の入金口から投入された紙幣の所定の側の面を所定の向きで走査することによって、紙幣の向きに関する第1の状態における第1の識別データを取得する。そして、工程(a)の後に、(b)紙幣処理装置が、紙幣を、紙幣に対する第1の方向を軸として180度回転させる。工程(b)の後に、(c)紙幣処理装置が、回転された紙幣の所定の側の面を所定の向きで走査することによって、紙幣の向きに関する第2の状態における第2の識別データを取得する。工程(c)の後に、(d)紙幣処理装置が、紙幣を紙幣処理装置の出金口に搬送する。
【0028】
このような態様としても、同一の紙幣の複数のデータを効率的に取得することができる。
【0029】
なお、紙幣処理装置を用いて紙幣から識別データを取得する際に、さらに以下のような処理を行うことが好ましい。すなわち、工程(d)の後に、(e)紙幣処理装置が、出金口に搬送された紙幣を、紙幣に対する第2の方向であって第1の方向と垂直な第2の方向を軸として180度回転させ、入金口に再投入する作業を行うべき旨の指示を、オペレータに行う。そして、工程(e)の後に、(f)オペレータが、出金口に搬送された紙幣を、第2の方向を軸として180度回転させ、入金口に再投入する。工程(f)の後に、(g)紙幣処理装置が、入金口に再投入された紙幣の所定の側の面を所定の向きで走査することによって、紙幣の向きに関する第3の状態における第3の識別データを取得する。工程(g)の後に、(h)紙幣処理装置が、紙幣を、第1の方向を軸として180度回転させる。工程(h)の後に、(i)紙幣処理装置が、回転された紙幣の所定の側の面を所定の向きで走査することによって、紙幣の向きに関する第4の状態における第4の識別データを取得する。
【0030】
このような態様とすれば、紙幣処理装置が行う処理と、オペレータが行う処理とによって、1枚の紙幣から互いに異なる状態についての4種類の識別データを効率的に取得することができる。
【0031】
なお、工程(i)の後に、(j)紙幣処理装置が、第1ないし第4の識別データの取得が完了した旨の報告をオペレータに行うことも好ましい。このような態様とすれば、オペレータが、間違って不要な処理を繰り返す可能性を低減することができる。
【0032】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、紙幣処理方法および紙幣処理装置、紙幣処理装置の制御方法および紙幣処理装置の制御装置、それらの方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのコンピュータプログラムを記録した記録媒体、そのコンピュータプログラムを含み搬送波内に具現化されたデータ信号、等の形態で実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
A.装置の構成:
図1は、この発明の実施形態である紙幣処理装置1の機械的構成を示す断面図である。この紙幣処理装置1は、相互に分離可能な上部ユニット2および下部ユニット3と、表示・操作部9とを有する。
【0034】
上部ユニット2は、第1の偽造紙幣収納部10と、データ読み取り部11と、入出口12と、一時保留部13と、を備えている。
【0035】
入出口12は、それを通じて利用者が紙幣処理装置1に紙幣を投入し、紙幣処理装置1が利用者に対して紙幣を排出する開口である。この入出口12は扉を有している。その扉は、利用者から紙幣の投入を受けるとき、および利用者に紙幣を提供するときに開き、他の時には閉じている。なお、紙幣は、紙幣処理装置1と向かい合うユーザから見て、長辺が左右方向に平行であり短辺が前後方向に平行である向きに、利用者によって入出口12に投入される。紙幣処理装置1内から紙幣が入出口12に排出されるときも同様である。
【0036】
データ読み取り部11は、紙幣処理装置1に投入された紙幣から識別データを収集するユニットである。一時保留部13は、識別データに基づいて真券であると判定された紙幣を、ユーザが投入した全紙幣についての判定を行っている間、一時的に保留するための収容部である。第1の偽造紙幣収納部10は、偽券であると断定はできないが偽券である可能性がある、と識別データに基づいて判定された紙幣(以下「被疑券」という)を収納する収容部である。
【0037】
下部ユニット3は、第2の偽造紙幣収納部14と、回収カートリッジ21と、循環紙幣カートリッジ22a〜22dと、を備えている。第2の偽造紙幣収納部14は、識別データに基づいて偽券であると判定された紙幣を収納する収納部である。回収カートリッジ21は、利用者が入出口12から取り忘れた紙幣や汚れた紙幣等を回収する収納部である。回収カートリッジ21に収納されている紙幣は、ユーザが現金の引き出し処理を行った場合にもその支払いには使用されない。
【0038】
循環紙幣カートリッジ22a〜22dは、それぞれ異なる種類(額面)の真券を収納する収納部である。たとえば、循環紙幣カートリッジ22aは千円紙幣を収納する。循環紙幣カートリッジ22bは5千円紙幣を収納する。循環紙幣カートリッジ22c、22dは1万円紙幣を収納する。これら循環紙幣カートリッジ22a〜22dに収納されている紙幣は、ユーザが現金の引き出し処理を行った場合に、ユーザに渡す紙幣として使用される。なお、循環紙幣カートリッジ22a〜22dをまとめて記述するときには、循環紙幣カートリッジ22と記載する。
【0039】
紙幣処理装置1内には図1中において矢印で示す方向に紙幣を搬送する紙幣搬送路が形成されている。紙幣搬送路は、紙幣が通過できる単なる空間ではなく、紙幣を下流に送るためのローラやベルトなどの様々な搬送手段を有している。本明細書では、これらの搬送手段を含めて「紙幣搬送路」と呼ぶ。
【0040】
紙幣搬送路は、上部ユニット2内部と下部ユニット3内部にそれぞれ設けられている。上部ユニット2内の紙幣搬送路と、下部ユニット3内の紙幣搬送路とは、図1中のA点およびB点で接続されている。A点において、紙幣は上部ユニット2から下部ユニット3へ渡される。また、B点において、紙幣は下部ユニット3から上部ユニット2へ渡される。
【0041】
紙幣搬送路は複数の分岐点を有する。各分岐点には紙幣の搬送先を切り替えるフラッパが設けられている。上部ユニット2内には、フラッパ15a〜15dが設けられている。下部ユニット3内には、フラッパ23a〜23eが設けられている。
【0042】
上部ユニット2内のフラッパ15aは、図1の左から搬送されてきた紙幣の搬送先を、データ読み取り部11に向かう紙幣搬送路と、入出口12に向かう紙幣搬送路とのいずれかに切り替える。フラッパ15bは、データ読み取り部11から搬送されてきた紙幣の搬送先を、下部ユニット3に向かう紙幣搬送路と、一時保留部13に向かう紙幣搬送路とのいずれかに切り替える。フラッパ15cは、フラッパ15bを経て搬送されてきた紙幣の搬送先を、一時保留部13に向かう紙幣搬送路と、入出口12に向かう紙幣搬送路とのいずれかに切り替える。フラッパ15dは、フラッパ15bを経て搬送されてきた紙幣の搬送先を、第1の偽造紙幣収納部10に向かう紙幣搬送路と、下部ユニット3に向かう紙幣搬送路と、とのいずれかに切り替える。
【0043】
下部ユニット3内のB点の下流に設けられているフラッパ23aの2対のフラッパである。フラッパ23aは上部ユニット2から搬送されてきた紙幣の搬送先を、第2の偽造紙幣収納部14に向かう紙幣搬送路と、回収カートリッジ21に向かう紙幣搬送路と、循環紙幣カートリッジ22(22a〜22d)に向かう紙幣搬送路と、のいずれかに切り替える。
【0044】
フラッパ23bは、フラッパ23aを経て搬送されてきた紙幣を、循環紙幣カートリッジ22aに向かう紙幣搬送路と、循環紙幣カートリッジ22b〜22dおよび上部ユニット2に向かう紙幣搬送路と、のいずれかに切り替える。フラッパ23cは、フラッパ23bを経て搬送されてきた紙幣を、循環紙幣カートリッジ22bに向かう紙幣搬送路と、循環紙幣カートリッジ22c,22dおよび上部ユニット2に向かう紙幣搬送路と、のいずれかに切り替える。フラッパ23d,23eもフラッパ23b,23cとほぼ同様の構成および機能を有する。下部ユニット3には、循環紙幣カートリッジ22a〜22dから搬出された紙幣をB点を経て上部ユニット2へ搬送するための紙幣搬送路も形成されている。
【0045】
なお、本明細書において、データ読み取り部11の下流からフラッパ15b,15c,15aを経て入出口12に紙幣を搬送し、また、入出口12からさらにデータ読み取り部11に紙幣を搬送する紙幣搬送路を第1の紙幣搬送路Pb1と呼ぶことがある。また、データ読み取り部11の下流からフラッパ15b,15dを経て第1の偽造紙幣収納部10に紙幣を搬送し、またはデータ読み取り部11の下流からフラッパ15b,15d,23aを経て循環紙幣カートリッジ22a〜22dに紙幣を搬送する紙幣搬送路を第2の紙幣搬送路Pb2と呼ぶことがある。
【0046】
図1の右上に示す表示・操作部9は、ユーザおよびオペレータに対して各種の表示を行い、ユーザおよびオペレータからの入力を受け付けるタッチパネルである。表示・操作部9は、上部ユニット2の入出口12の上部に設けられている。たとえば、表示・操作部9は、ユーザモードにおいて、ユーザ向けに各種の取引を選択させる画面を表示する。また、表示・操作部9は、オペレータモードにおいて、第1の偽造紙幣収納部10および第2の偽造紙幣収納部14に紙幣が収納されている旨の表示を行う。ヨーロッパ中央銀行のサーバに送信するための被疑券の識別データを取得する処理は、オペレータがこの表示・操作部9を介して指示を入力することによって開始される。
【0047】
なお、「ユーザモード」とは、銀行などの顧客(ユーザ)が、ATMを使用して取引を行うことができる動作モードである。「オペレータモード」とは、銀行の職員(オペレータ)が、ATMのメンテナンスやATMを使用した作業を行うためのモードである。ユーザモードとオペレータモードの切り替えは、紙幣処理装置1の背面にあるスイッチ(図示せず)を操作して行う。
【0048】
図2は、紙幣処理装置1の電気的構成を示したブロック図である。紙幣処理装置1は、CPU4と、ROM5と、RAM6と、第1の紙幣センサ7と、第2の紙幣センサ8と、を備えている。CPU4は、紙幣処理装置1の各部を制御する。ROM5は、CPU4を動作させるプログラムや各種のパラメータ等を記録している。RAM6は、CPU4が各部を制御する制御データを読み書き可能に記録する。第1の紙幣センサ7は、入出口12内の紙幣の有無を検知するためのフォトセンサである。第2の紙幣センサ8は、第1の偽造紙幣収納部10内の被疑券の有無を検知するためのフォトセンサである。
【0049】
また、CPU4には、表示・操作部9と、データ読み取り部11と、各種のモータ16と、循環紙幣カートリッジ22と、が接続されている。表示・操作部9およびデータ読み取り部11については、すでに説明したとおりである。CPU4は、データ読み取り部11が取得した識別データに基づいて、紙幣の真偽を判定し、さらに紙幣の種類を識別する。
【0050】
モータ16は、紙幣搬送路が有するローラやベルトなどの様々な搬送手段を駆動するモータである。循環紙幣カートリッジ22a〜22dは、それぞれ格納すべき紙幣の種類のデータを記憶したRAMを有している。CPU4は、各循環紙幣カートリッジ22a〜22dのRAM内のデータを参照して、紙幣を循環紙幣カートリッジ22a〜22dに振り分ける。すなわち、CPU4は、表示・操作部9、データ読み取り部11、循環紙幣カートリッジ22からデータを受け取り、表示・操作部9、データ読み取り部11、モータ16を制御する。
【0051】
以下で、図1を参照して、ユーザモードにおける紙幣処理装置1内における紙幣の流れを説明する。まず、ユーザが、紙幣を入出口12に投入する。紙幣処理装置1の紙幣搬送路は、入出口12に投入された紙幣を1枚ずつデータ読み取り部11へ搬送する。データ読み取り部11では、搬送されてきた紙幣ごとに識別データを取得する。そして、識別データに基づいてCPU4が真偽を判定し、真券および被疑券についてはその種類(額面)を識別する。このとき、ユーザがどの種類の紙幣を何枚投入したかがカウントされる。
【0052】
真券であると判定された紙幣は、フラッパ15b,15cを経て一時保留部13に搬送され、一時保留部13内に保管される。被疑券であると判定された紙幣は、フラッパ15b,15dを経て第1の偽造紙幣収納部10へに搬送され、第1の偽造紙幣収納部10内に保管される。また、偽券であると判定された紙幣は、フラッパ15b,15d,23aを経て第2の偽造紙幣収納部14へに搬送され、第2の偽造紙幣収納部14内に保管される。
【0053】
一方、真券、偽券または被疑券のいずれでもないと判定された媒体は、フラッパ15b,15c,15aを経て入出口12へ戻される。真券、偽券または被疑券のいずれでもないと判定される媒体とは、たとえば、紙幣の間に挟まって投入されたレシートや割引券などである。
【0054】
ユーザが入金した紙幣がすべて一時保留部13、第1の偽造紙幣収納部10、第2の偽造紙幣収納部14、または入出口12へ送られると、次に、一時保留部13内の真券が、その種類に応じて循環紙幣カートリッジ22a〜22dに送られる。具体的には、まず、一時保留部13内の紙幣は、1枚づつ順に、フラッパ15c,15aを経て、再度、データ読み取り部11に送られる。そして、データ読み取り部11では、搬送されてきた紙幣ごとに真偽を判定し、種類(額面)を識別する。
【0055】
再度の判定において、データ読み取り部11によって真券ではないと判定された紙幣は、フラッパ15b,15d,23aを経て回収カートリッジ21に搬送され、回収カートリッジ21内に格納される。再度の判定において、データ読み取り部11において種類を識別できなかった紙幣も、同様に、回収カートリッジ21に搬送され、回収カートリッジ21内に格納される。これらの紙幣は、ユーザへの支払いには使用されない。
【0056】
再度の判定において、データ読み取り部11によって真券であると判定され、種類が識別された紙幣は、その種類に応じて、フラッパ15b,15d,23a〜23eを経て循環紙幣カートリッジ22a〜22dに送られる。そして、それぞれ循環紙幣カートリッジ22a〜22dに格納される。これらの紙幣は、ユーザへの支払いに使用される。
【0057】
以上で説明したようなユーザモードにおける処理を実現するCPU4の機能部を分別部47として図1に示す。
【0058】
なお、入出口12に投入された紙幣が、データ読み取り部11、フラッパ15b,15cを経て一時保留部13に保管され、さらに、一時保留部13から搬出されてフラッパ15aを経て、再び入出口12に戻されたときには、最初に入出口12内に投入されたときに上であった面とは逆の面が上になっている。具体的には、紙幣は、その長辺に平行な方向(図1において紙面に垂直な方向)を軸にして180度回転される。入出口12に投入された紙幣が、一時保留部13を経ずに、データ読み取り部11、フラッパ15b,15c,15aを経て入出口12に戻されたときも同様である。
【0059】
一方、入出口12に投入された紙幣が、データ読み取り部11、フラッパ15b,15c15aを経て、入出口12を経由せずにデータ読み取り部11に戻った場合は、データ読み取り部11の上流の紙幣搬送路Pdにおいて、最初に入出口12内に投入されたときに上であった面が上になっている。
【0060】
図3は、第1の偽造紙幣収納部10内に被疑券を入出口12に投入する作業をオペレータに指示する表示・操作部9の画面を表す図である。オペレータが、紙幣処理装置1の背面にあるスイッチを操作して、表示・操作部9の表示をオペレータモードに切り換えたとき、第1の偽造紙幣収納部10内に被疑券が格納されている場合には、図3の表示がなされる。なお、図3にいう「偽造紙幣保留部」は、偽造紙幣収納部10を意味している。また、「入金口」は入出口12を意味している。第1の偽造紙幣収納部10内に被疑券が格納されているか否かは、第2の紙幣センサ8(図2参照)で検知することができる。第1の偽造紙幣収納部10内に被疑券が格納されている場合に図3の表示を行うCPU4の機能部を、第3の指示部44cとして、図2に示す。
【0061】
オペレータは、図3の表示を見て、画面の右下の「確認」表示にタッチして、被疑券の識別データを取得する処理を開始する。「確認」表示がタッチされると、紙幣処理装置1は、被疑券の識別データを収集するための処理を開始する。なお、以下の手続きにおいて、表示・操作部9の画面に「確認」の表示がなされているときは、紙幣処理装置1は、オペレータが「確認」の表示をタッチしてから、その後の処理を開始する。
【0062】
図4は、被疑券の識別データを収集する際の手順を示すフローチャートである。オペレータは、まず、ステップS10で、第1の偽造紙幣収納部10内の紙幣を1枚選択して、入出口12に投入する。ステップS20では、入出口12からデータ読み取り部11に紙幣が搬送される。そして、データ読み取り部11が、その紙幣が入出口12に投入されたときに上側であった面について、その紙幣が入出口12に投入された方向に沿って、紙幣の先から後に向かう向きに識別データを取得する。なお、被疑券投入(ステップS10)後の最初のステップS20の処理を実現するCPU4の機能部を、第1の識別データ取得部41aとして、図2に示す。
【0063】
最初のステップS10,S20の処理の際に、データ読み取り部11の上流の紙幣搬送路Pdにおいて上側にあった紙幣の面を「第1の面」とよぶ。そして、最初のステップS10,S20の処理における、紙幣搬送路Pd内の紙幣の向きを「第1の投入方向」と呼ぶ。また、このときの、データ読み取り部11上流の紙幣搬送路Pd内における紙幣の状態を「第1の状態」と呼ぶ。第1の状態の紙幣を図1の右上に紙幣BS1として示す。紙幣BS1に示された黒い三角は、その黒い三角が描かれた面が第1の面であることを示す。また、黒い三角が示す方向が第1の投入方向である。
【0064】
その後、図4のステップS30で、その紙幣は、いったん一時保留部13(図1参照)に保管される。そして、ステップS40で、その紙幣は入出口12へ返却される。前述のように、このとき、紙幣は反転され、第1の面が下側となり、第1の面とは逆の第2の面が上側となる状態で、入出口12に返却される。なお、このときには、入出口12の扉は開かない。
【0065】
ステップS45の処理については、後に説明する。図4のフローチャートの処理開始後、最初にステップS45の判定を行う際には、判定結果は自動的にNoとされる。そして、処理はステップS50に進む。
【0066】
ステップS50では、紙幣は入出口12から搬出される。このとき、紙幣は、データ読み取り部11の上流の紙幣搬送路Pdにおいて、第2の面を上にして第1の投入方向とは逆向きの第2の投入方向で搬送される。この状態を「第2の状態」と呼ぶ。第2の状態の紙幣を図1の右上に紙幣BS2として示す。紙幣BS2に破線で示された白い三角は、紙幣の第1の面を表す黒い三角を裏面から見た状態を表している。
【0067】
なお、被疑券投入(ステップS10)後の最初のステップS40〜S50の処理を実現するCPU4の機能部を、第1の循環部42aとして、図2に示す。
【0068】
図4のステップS60では、データ読み取り部11が、第2の面について、その紙幣が入出口12から搬出されたときの方向に沿って、紙幣の先から後に向かう向きに識別データを取得する。このステップS60の処理を実現するCPU4の機能部を、第2のデータ取得部41bとして、図2に示す。
【0069】
紙幣処理装置1においては、前述のように、入出口12に投入された紙幣が、データ読み取り部11、フラッパ15b,15c、一時保留部13、フラッパ15aを経て、再び入出口12に戻されたときには、最初に入出口12内に投入されたときに上であった面とは逆の面が上になっている(図1の紙幣BS1,BS2参照)。このため、データ読み取り部11で識別データを2回取得することによって、被疑紙幣の4種類の識別データのうち2種類のデータを、オペレータの手を経ることなく取得することができる。よって、紙幣処理装置1においては、オペレータのミスによって同じ種類の識別データが取得されてしまう可能性が低い。
【0070】
その後、図4のステップS70で、紙幣は、いったん一時保留部13(図1参照)に保管される。そして、ステップS80で、その紙幣は入出口12へ返却され、入出口12の扉が開かれる。このとき、紙幣は、再び反転され、第1の状態となっている。このときの紙幣の状態を図1の右上に紙幣BS1rとして示す。なお、被疑券投入(ステップS10)後の最初のステップS80の処理を実現するCPU4の機能部を、第1の返還部43aとして、図2に示す。
【0071】
図4のステップS90では、被疑紙幣の両面について、被疑紙幣の短辺方向に沿って上から下に向かう向きと、下から上に向かう向きとでそれぞれ走査して取得した合計4個のデータが取得されたか否かについて判定する。この時点では、被疑紙幣の両面についてそれぞれ一つの向きについて識別データが取得されただけである(ステップS20,S60参照)。よって、ステップS90の判定結果は、Noとなる。そして、処理はステップS100に進む。
【0072】
図5は、入出口12内の被疑券を回転させて再投入する作業をオペレータに指示する表示・操作部9の画面を表す図である。ステップS100では、図5の画面が表示・操作部9に表示される。なお、ステップS100の処理を実現するCPU4の機能部を、第1の指示部44aとして、図2に示す。
【0073】
図5の画面を見たオペレータは、図4のステップS110で、入出口12内の被疑券を取り出して、紙幣の紙面に垂直な方向を軸として紙幣を180度回転させ、再び入出口12に投入する。そして、紙幣処理装置1の紙幣搬送路は、入出口12内の紙幣を搬出する。なお、入出口12内に紙幣が投入されたか否かは第1の紙幣センサ7(図1参照)によって検知することができる。
【0074】
なお、このとき、紙幣は、データ読み取り部11の上流の紙幣搬送路Pdにおいて、第1の面が上であり、第2の投入方向に沿って搬送される。このときの紙幣の状態を「第3の状態」と呼ぶ。第3の状態の紙幣を図1の右上に紙幣BS3として示す。その後、処理は再び図4のステップS20に戻る。
【0075】
紙幣処理装置1においては、ステップS100において、原則として1度だけオペレータの手を介して紙幣を回転させる。そして、その際には、回転の方法を画面でオペレータに指示する(図5参照)。このため、被疑券の4種類の識別データを取得する際に、オペレータのミスによって同じ種類の識別データが取得されてしまう可能性が低い。
【0076】
その後、図4のステップS20において、第1の面について、第2の投入方向に沿って、紙幣の先から後に向かう向きに識別データが取得される(図1の紙幣BS3参照)。そして、ステップS30、S40を経て紙幣が反転され、入出口12に戻される。この時点では、入出口12の扉は閉じている。なお、被疑券を再投入した(ステップS110)後のステップS20の処理を実現するCPU4の機能部を、第3の識別データ取得部41cとして、図2に示す。
【0077】
ステップS45では、ステップS110を経た後、ステップS20で取得された識別データが、ステップS110を経る前(すなわち、オペレータによって回転される前)にステップS20またはS60で取得された識別データと一致するか否かが判定される。なお、ここでいう「一致する」とは、識別データ間の相違が所定の範囲内にあることをいう。
【0078】
ステップS110を経た後、ステップS20で取得された識別データが、ステップS110を経る前にステップS20およびS60のいずれとも異なる場合には、ステップS45の判定結果はNoとなる。その場合には、処理はステップS50に進む。
【0079】
一方、ステップS110を経た後、ステップS20で取得された識別データが、ステップS110を経る前にステップS20またはS60のいずれかと一致する場合には、処理はステップS120に進む。ステップS45の判定結果がYesであるということは、ステップS110において、オペレータが360度の整数倍の角度だけ紙幣を回転させて、第1の状態(図1の紙幣BS1参照)で紙幣を入出口12に再投入したということである。
【0080】
図6は、入出口12内の被疑券を回転させて再投入する作業をオペレータに指示する表示・操作部9の画面を表す図である。ステップS120では、図6の画面が表示・操作部9に表示される。なお、被疑券を再投入した(ステップS110)後のステップS45の処理、およびステップS120の表示を実現するCPU4の機能部を、第2の指示部44bとして、図2に示す。
【0081】
また、ステップS120では、入出口12の扉が開かれて、オペレータが紙幣を取り出せる状態になる。被疑券を再投入した(ステップS110)後、ステップS120で入出口12の扉を開く機能を実現するCPU4の機能部を、中途返却部46として、図2に示す。
【0082】
図6の画面を見たオペレータは、図4のステップS130で、入出口12内の被疑券を取り出して、紙幣の面に垂直な方向を軸として180度回転させ、再び入出口12に投入する。このとき、紙幣は第3の状態となっている(図1の紙幣BS3参照)。その後、処理は再びステップS20に戻る。
【0083】
ステップS45の判定結果がNoであった場合は、ステップS50で、紙幣は入出口12から搬出される。このとき、紙幣は、データ読み取り部11の上流の紙幣搬送路Pdにおいて、第2の面が上であり、第1の投入方向に沿って搬送される。この状態を「第4の状態」と呼ぶ。第4の状態の紙幣を図1の右上に紙幣BS4として示す。なお、被疑券を再投入した(ステップS110)後のステップS45,S50の処理を実現するCPU4の機能部を、第2の循環部42bとして、図2に示す。
【0084】
ステップS60では、データ読み取り部11が、第2の面について、その紙幣が入出口12から搬出されたときの方向に沿って、紙幣の先から後に向かう向きに識別データを取得する。なお、被疑券を再投入した(ステップS110)後のステップS60の処理を実現するCPU4の機能部を、第4の識別データ取得部41dとして、図2に示す。
【0085】
その後、ステップS70,S80の処理を経て、ステップS90では、被疑紙幣の両面について、被疑紙幣の短辺方向に沿って上から下に向かう向きと、下から上に向かう向きとでそれぞれ走査して取得した合計4個のデータが取得されたか否かが判定される。この時点では、ステップS90の判定結果は、Yesとなる。そして、処理はステップS120に進む。なお、被疑券を再投入した(ステップS110)後のステップS80の処理を実現するCPU4の機能部を、第2の返還部43bとして、図2に示す。
【0086】
図7は、1枚の被疑紙幣の4個の識別データの取得が完了したことを示す画面の表示である。ステップS140では、図7の画面が表示・操作部9に表示される。ステップS140の処理を実現するCPU4の機能部を、報告部45として、図2に示す。
【0087】
その後、図4の処理は終了する。なお、オペレータは、入出港12から被疑紙幣を取り出し、まだ他の被疑紙幣がある場合には、その被疑紙幣について、同様に図4の処理を行う。
【0088】
なお、ステップS110において正しく処理が行われず、ステップS45,S120,S130を経た後、次にステップS20の処理が行われる際の紙幣の状態は、ステップS110において正しく処理が行われた後にステップS20の処理が行われる際の紙幣の状態とは、異なっている。具体的には、ステップS110において正しく処理が行われた場合のステップS20における紙幣の状態は、第3の状態(図1の紙幣BS3参照)である。これに対して、ステップS130の後、ステップS20の処理が行われる際の紙幣の状態は、第2の状態(図1の紙幣BS2参照)を紙幣の面に垂直な方向を軸として紙幣を180度回転させた状態である。紙幣がステップS110の後に一度、紙幣処理装置1内の紙幣搬送路を通過しているためである。しかし、ステップS130を経てステップS20に戻った後、ステップS20およびS60の処理が行われることによって、すでに取得された識別データとは異なる2種類の識別データが適切に取得される。
【0089】
B.第2実施例:
図8は、この発明の実施形態である紙幣処理装置1bの機械的構成を示す断面図である。第2実施例の紙幣処理装置1bは、反転機構17を備えている。紙幣処理装置1bの他の点は、紙幣処理装置1と同様である。
【0090】
図9は、反転機構17の構造を簡略に示す斜視図である。反転機構17は、1対のロールに巻き付けられ、それら2本のロールの間で180度ねじれている構成の無端ベルトを2組備えている。図9においては、無端ベルト165は、2本のロール161,163に巻き付けられており、無端ベルト166は、2本のロール162,164に巻き付けられている。そして、ロール161とロール162、ならびにロール163とロール164は、それぞれ互いに接して無端ベルト165および無端ベルト166を挟むように配されている。その結果、無端ベルト165,166は、輪の外側の面で互いに接する。
【0091】
このような構成の反転機構17においては、ロール161とロール162の間に供給された紙幣BS5は、無端ベルト165と無端ベルト166の間に挟まれた状態で180度反転され、ロール161とロール162の間から排出される。このとき、紙幣BS5は、紙幣の搬送方向Atを軸に180度回転させる。すなわち、紙幣の短辺方向に平行な方向Atを軸に180度回転される。反転後の紙幣の状態を、紙幣BS6として図9の右側に示す。
【0092】
2実施例の紙幣処理装置1bにおいては、入出口12に投入された紙幣が、データ読み取り部11、フラッパ15e,15c,15aを経て入出口12を経ずに再びデータ読み取り部11に搬送されたときには、最初にデータ読み取り部11を通過したときに上であった面とは逆の面が上になっている。
【0093】
図10は、第2実施例において、被疑券の識別データを収集する際の手順を示すフローチャートである。図10の処理は、ステップS40,S50の処理(入出口12への返却)を行わない。そして、ステップS60の前に、ステップS55で、一時保留部13から入出口12を経ずにデータ読み取り部11に紙幣を搬送する処理を行う。また、ステップS120の前に、ステップS115で、一時保留部13から入出口12に紙幣を搬送する処理を行う。図10の処理の他の点は、図4の処理と同じである。
【0094】
このような構成としても、被疑券の4種類の識別データを取得する際にオペレータのミスによって同じ種類の識別データが取得されてしまう可能性を低くすることができる。
【0095】
C.第3実施例:
第3実施例の紙幣処理装置1cは、入出口12の下部に、紙幣を紙幣の紙面に垂直な方向を軸として180度回転させることができる回転テーブル19を備える。紙幣処理装置1bの他の点は、紙幣処理装置1と同様である。
【0096】
図11は、回転テーブル19を示す斜視図である。回転テーブル19は、紙幣の紙面に垂直な方向Ax3を軸として紙幣を180度回転させることができる。このような構成を備える紙幣処理装置1cにおいて被疑券の4種類の識別データを取得する際には、図4のステップS100およびS110に代えて、回転テーブル19で紙幣を180度回転させる処理を行う。他の処理は、図4のフローチャートと同様である。
【0097】
そのような態様とすれば、オペレータの手を経ることなく、被疑券の4種類の識別データを取得することができる。よって、オペレータのミスによって同じ種類の識別データが取得されてしまう可能性をなくすことができる。
【0098】
D.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0099】
D1.変形例1:
上記実施例の紙幣処理装置には、紙幣の投入を受ける入金口と、紙幣を排出する出金口とを兼ねる構成として、入出口12が設けられていた。しかし、紙幣処理装置において、入金口と出金口は、それぞれ独立に設けることもできる。
【0100】
D2.変形例2:
紙幣から取得される識別データは、可視光の反射によって得られる画像データ、赤外線や紫外線の反射によって得られる画像データ、磁気データ、形状のデータなど、様々なデータを含むことができる。すなわち、「識別データ」は、紙幣から取得することができ、その紙幣が真券であるか否かの判断に使用することができるデータとすることができる。
【0101】
D3.変形例3:
上記実施例では、紙幣の真偽および紙幣の種類は、データ読み取り部11が取得した識別データに基づいてCPU4が判断していた。しかし、紙幣の真偽および紙幣の種類の判断は、データ読み取り部11が行い、CPU4はその結果のデータを受け取る態様とすることもできる。すなわち、紙幣処理装置に設けられたいずれかのCPU、制御回路等が紙幣の真偽および紙幣の種類を判断することができる。
【0102】
D4.変形例4:
上記実施例においては、オペレータに作業を指示する出力部は、顧客が取引の際に使用するものと同じタッチパネル9であった。しかし、出力部は、他の構成とすることもできる。すなわち、出力部は、入力手段を備えないディスプレイとすることができる。また、顧客が取引の際に使用するタッチパネルとは別に設けることもできる。さらに、出力部は、作業を指示する所定の表示のそばに設けられたランプとすることもでき、音声を出力できるアンプおよびスピーカとすることもできる。そして、出力部は、外部の装置に信号を送信して、外部の装置に映像や音声で指示を行わせる態様とすることもできる。すなわち、出力部は、オペレータに次に行うべき作業の内容を直接または間接に伝えることができる手段とすることができる。
【0103】
D5.変形例5:
上記実施例では説明を省略したが、図4の任意のステップの間において、紙詰まりや紙幣処理装置の機構の異常が生じたか否かのチェックを行い、それらの異常が生じていた場合には、表示・操作部9にその旨の表示を行って処理を終了する態様とすることができる。
【0104】
また、ステップS20、S60の後に、紙幣が搬送方向に対して傾いていたり、紙幣の端が折れていたりする場合に生じる、識別データの読み取り異常が生じたか否かのチェックを行う態様とすることもできる。そして、それらの異常が生じていた場合には、表示・操作部9にその旨の表示を行って処理を終了する態様とすることができる。
【0105】
D6.変形例6:
上記実施例では、ユーザが入金した紙幣がすべて一時保留部13、第1の偽造紙幣収納部10、第2の偽造紙幣収納部14、または入出口12へ送られると、次に、一時保留部13内の真券が、種類に応じて循環紙幣カートリッジ22a〜22dに送られる。しかし、その前に、ユーザに、紙幣の向きを変え、または紙幣の向きをそろえて入出口12に投入する指示を出し、入出口12から1枚づつ紙幣を搬出して、紙幣の真偽および種類の判定を行って、一時保留部13、第1の偽造紙幣収納部10、第2の偽造紙幣収納部14、または入出口12へ搬送する処理を、1回以上行う態様とすることもできる。
【0106】
D7.変形例7:
第1実施例の紙幣処理装置1においては、第1の紙幣搬送路Pb1が紙幣を180度回転させる。また、第2実施例の紙幣処理装置1bは、紙幣を回転させるための手段として反転機構17を備える。そして、第3実施例の紙幣処理装置1cは、紙幣を回転させるための手段として反転機構17を備える。しかし、紙幣処理装置は、紙幣を回転させることができる他の1以上の回転手段を備える態様とすることができる。
【0107】
ただし、紙幣処理装置は、第1の方向を軸に紙幣を回転させることができる第1の回転手段と、第1の方向に垂直な第2の方向を軸に紙幣を回転させることができる第2の回転手段と、を備えることが好ましい。そして、第1と第2の方向に垂直な第3の方向を軸に紙幣を回転させることができる第3の回転手段は備えないことが好ましい。互いに垂直な3方向を軸に紙幣を回転させることができる3種類の回転手段を備えると、装置が大きくなるためである。また、互いに垂直な2方向を軸に紙幣を回転させることができる2種類の回転手段を使用して、それら2方向に垂直な第3の方向を軸に紙幣を回転させたのと同様の操作を行うことができるためである。
【0108】
なお、紙幣処理装置は、紙幣の長辺および短辺にそれぞれ平行な方向を軸に紙幣を回転できる2種類の回転手段を備えることが好ましい。そして、紙幣の面に垂直な方向を軸に紙幣を回転できる回転手段は備えないことが好ましい。紙幣の面に垂直な方向を軸に紙幣を回転できる回転手段の構成は紙幣の長辺および短辺にそれぞれ平行な方向を軸に紙幣を回転できる回転手段に比べて大きくなる傾向があるからである。よって、第1実施例のように、紙幣の長辺または短辺に平行な方向を軸に紙幣を回転できる回転手段を備え、紙幣の面に垂直な方向を軸に紙幣を回転させる操作をオペレータに指示する態様とすることで、4種類の識別データを小さな紙幣処理装置で取得することができる。
【0109】
D8.変形例8:
上記実施例では、紙幣は、紙幣識別部の作成する識別データに基づいて、4種類の分類されていた。しかし、紙幣は、3種類以下や5種類以上の他の数の種類に分類されることもできる。すなわち、紙幣は、紙幣処理装置において、真券と、偽券の疑いのある種類と、を含む複数種類に分類されることができる。
【0110】
D9.変形例9:
上記実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。また、位置の構成で実現していた機能を複数の構成で分担して実現することもできる。例えば、CPU4(図2)の機能の一部を、第1の紙幣センサ7、第2の紙幣センサ8、表示・操作部9、データ読み取り部11、モータ16、や循環紙幣カートリッジ22に設けられた制御回路やCPUが行う態様と得ることもできる。
【0111】
各種の機能を実現するコンピュータプログラムは、フロッピディスクやCD−ROM等の、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録された形態で提供される。コンピュータは、その記録媒体からコンピュータプログラムを読み取って内部記憶装置または外部記憶装置に転送する。あるいは、通信経路を介してプログラム供給装置からコンピュータにコンピュータプログラムを供給するようにしてもよい。コンピュータプログラムの機能を実現する時には、内部記憶装置に格納されたコンピュータプログラムがコンピュータのマイクロプロセッサによって実行される。また、記録媒体に記録されたコンピュータプログラムをコンピュータが直接実行するようにしてもよい。
【0112】
この明細書において、コンピュータとは、ハードウェア装置とオペレーションシステムとを含む概念であり、オペレーションシステムの制御の下で動作するハードウェア装置を意味している。コンピュータプログラムは、このようなコンピュータに、上述の各部の機能を実現させる。なお、上述の機能の一部は、アプリケーションプログラムでなく、オペレーションシステムによって実現されていても良い。
【0113】
なお、この発明において、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】この発明の実施形態である紙幣処理装置1の機械的構成を示す断面図。
【図2】紙幣処理装置1の電気的構成を示したブロック図。
【図3】第1の偽造紙幣収納部10内に被疑券を入出口12に投入する作業をオペレータに指示する表示・操作部9の画面を表す図。
【図4】被疑券の識別データを収集する際の手順を示すフローチャート。
【図5】入出口12内の被疑券を回転させて再投入する作業をオペレータに指示する表示・操作部9の画面を表す図。
【図6】入出口12内の被疑券を回転させて再投入する作業をオペレータに指示する表示・操作部9の画面を表す図。
【図7】1枚の被疑紙幣の4個の識別データの取得が完了したことを示す画面を表す図。
【図8】この発明の実施形態である紙幣処理装置1bの機械的構成を示す断面図。
【図9】反転機構17の構造を簡略に示す斜視図。
【図10】第2実施例において、被疑券の識別データを収集する際の手順を示すフローチャート。
【図11】紙幣を紙幣の紙面に垂直な方向Ax3を軸として180度回転させることができる回転テーブル19を示す斜視図。
【符号の説明】
【0115】
1,1b,1c…紙幣処理装置
2…上部ユニット
3…下部ユニット
4…CPU
5…ROM
6…RAM
7…第1の紙幣センサ
8…第2の紙幣センサ
9…表示・操作部
10…第1の偽造紙幣収納部
11…紙幣識別部
12…入出口
13…一時保留部
14…第2の偽造紙幣収納部
15a〜15d…フラッパ
16…モータ
17…反転機構
19…回転テーブル
21…回収カートリッジ
22,22a〜22d…循環紙幣カートリッジ
23a〜23e…フラッパ
40…制御回路
41a…第1の識別データ取得部
41b…第2のデータ取得部
41c…第3の識別データ取得部
41d…第4の識別データ取得部
42a…第1の循環部
42b…第2の循環部
43a…第1の返還部
43b…第2の返還部
44a…第1の指示部
44b…第2の指示部
44c…第3の指示部
45…報告部
46…中途返却部
47…分別部
161,163…ロール
162,164…ロール
165,166…無端ベルト
At…紙幣の搬送方向を表す矢印
Ax3…紙幣の回転の軸方向
BS1,BS1r…第1の状態の紙幣
BS2…第2の状態の紙幣
BS3…第3の状態の紙幣
BS4…第4の状態の紙幣
BS5〜7…紙幣
Pb1…第1の紙幣搬送路
Pb2…第2の紙幣搬送路
Pd…データ読み取り部11の上流の紙幣搬送路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣から識別データを取得することができる紙幣処理装置であって、
紙幣の投入を受ける入金口と、
前記紙幣を排出する出金口と、
前記入金口から投入された紙幣の所定の側の面を所定の向きで走査して識別データを取得するデータ取得部と、
前記紙幣を、前記紙幣に対する第1の方向を軸として180度回転させる反転部と、
前記データ取得部を通過した前記紙幣を、前記反転部を経由して再び前記データ取得部に搬送でき、かつ、前記データ取得部を通過した前記紙幣を前記出金口に搬送できる第1の搬送部と、
前記紙幣処理装置の各部を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
第1の動作モードにおいて、前記紙幣の向きに関する第1の状態における第1の識別データを前記データ取得部に取得させる第1の識別データ取得部と、
前記第1の識別データを取得された紙幣を、第1の搬送部に、前記反転部を経由して前記データ取得部へ搬送させる第1の循環部と、
前記第1の状態から180度回転された第2の状態における第2の識別データを前記データ取得部に取得させる第2の識別データ取得部と、
前記第1と第2の識別データが取得された後に、前記第1の搬送部に、前記紙幣を前記出金口へ搬送させる第1の返還部と、を備える、紙幣処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の紙幣処理装置であって、さらに、
オペレータに作業を指示する出力部を備え、
前記制御部は、さらに、
前記第1の動作モードにおいて、前記出金口に搬送された前記紙幣を、前記紙幣に対する第2の方向であって前記第1の方向と垂直な第2の方向を軸として180度回転させ、前記入金口に再投入する作業を行うべき旨の指示を、前記出力部を通じて前記オペレータに行う第1の指示部を備える、紙幣処理装置。
【請求項3】
請求項2記載の紙幣処理装置であって、
前記制御部は、さらに、
前記第1の動作モードにおいて、前記入金口に前記再投入された前記紙幣の向きに関する第3の状態における第3の識別データを前記データ取得部に取得させる第3の識別データ取得部と、
前記第3の識別データを取得された紙幣を、所定の場合に、第1の搬送部に、前記反転部を経由して前記データ取得部へ搬送させる第2の循環部と、
前記第3の状態から180度回転された第4の状態における第4の識別データを前記データ取得部に取得させる第4の識別データ取得部と、
前記第3と第4の識別データが取得された場合に、前記第1ないし第4の識別データの取得が完了した旨の報告を、前記出力部を通じて前記オペレータに行う報告部と、を備える、紙幣処理装置。
【請求項4】
請求項3記載の紙幣処理装置であって、
前記制御部は、さらに、
前記第3の識別データが前記第1または第2の識別データと一致する場合に、前記出金口を介して前記紙幣をオペレータに返却する中途返却部と、
前記第3の識別データが前記第1または第2の識別データと一致する場合に、前記出金口に搬送された前記紙幣を、前記第2の方向を軸として180度回転させ、前記入金口に投入する作業を行うべき旨の指示を、前記出力部を通じて前記オペレータに行う第2の指示部と、を備える、紙幣処理装置。
【請求項5】
請求項2記載の紙幣処理装置であって、
前記紙幣は長方形であり、
前記第1の方向は、前記紙幣の長辺または短辺に平行な方向であり、
前記第2の方向は、前記紙幣の前記長方形の面に対して垂直な方向である、紙幣処理装置。
【請求項6】
請求項2記載の紙幣処理装置であって、さらに、
前記紙幣を収納することができる第1および第2の収納部と、
前記識別データが取得された前記紙幣を前記第1および第2の収納部に搬送できる第2の搬送部と、を備え、
前記制御部は、さらに、
第2の動作モードにおいて、前記入金口から投入された紙幣が、
真正の紙幣ではなく前記真正の紙幣を装った券でもない第1種の券と、
前記真正の紙幣を装った偽の紙幣である第2種の券と、
前記偽の紙幣である可能性があるが前記可能性は前記第2種の券より低い第3種の券と、
前記真正の紙幣である第4種の券と、
を含む複数種類の券のうちのいずれであるかを前記識別データに基づいて識別し、前記第2の搬送部に、前記第3種の券を前記第1の収納部に搬送させ、前記第4種の券を前記第2の収納部に搬送させる分別部を備える、紙幣処理装置。
【請求項7】
請求項6記載の紙幣処理装置であって、
前記制御部は、さらに、
前記第2の動作モードの後の前記第1の動作モードにおいて、前記第1の収納部に前記第3種の券が収納されている場合に、前記第1の収納部内の前記第3種の券を前記入金口に投入する作業を行うべき指示を、前記出力部を通じて前記オペレータに行う第2の指示部を備える、紙幣処理装置。
【請求項8】
紙幣処理装置を用いて紙幣から識別データを取得する方法であって、
(a)紙幣処理装置が、前記紙幣処理装置の入金口から投入された紙幣の所定の側の面を所定の向きで走査することによって、前記紙幣の向きに関する第1の状態における第1の識別データを取得する工程と、
(b)前記紙幣処理装置が、前記工程(a)の後に、前記紙幣を、前記紙幣に対する第1の方向を軸として180度回転させる工程と、
(c)前記紙幣処理装置が、前記工程(b)の後に、前記回転された前記紙幣の前記所定の側の面を前記所定の向きで走査することによって、前記紙幣の向きに関する第2の状態における第2の識別データを取得する工程と、
(d)前記紙幣処理装置が、前記工程(c)の後に、前記紙幣を前記紙幣処理装置の出金口に搬送する工程と、を備える方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法であって、さらに、
(e)前記紙幣処理装置が、前記工程(d)の後に、前記出金口に搬送された前記紙幣を、前記紙幣に対する第2の方向であって前記第1の方向と垂直な第2の方向を軸として180度回転させ、前記入金口に再投入する作業を行うべき旨の指示を、オペレータに行う工程と、
(f)前記オペレータが、前記工程(e)の後に、前記出金口に搬送された前記紙幣を、前記第2の方向を軸として180度回転させ、前記入金口に再投入する工程と、
(g)前記紙幣処理装置が、前記工程(f)の後に、前記入金口に前記再投入された前記紙幣の前記所定の側の面を前記所定の向きで走査することによって、前記紙幣の向きに関する第3の状態における第3の識別データを取得する工程と、
(h)前記紙幣処理装置が、前記工程(g)の後に、前記紙幣を、前記第1の方向を軸として180度回転させる工程と、
(i)前記紙幣処理装置が、前記工程(h)の後に、前記回転された前記紙幣の前記所定の側の面を前記所定の向きで走査することによって、前記紙幣の向きに関する第4の状態における第4の識別データを取得する工程と、を備える方法。
【請求項10】
請求項9記載の方法であって、さらに、
(j)前記紙幣処理装置が、前記工程(i)の後に、前記第1ないし第4の識別データの取得が完了した旨の報告を前記オペレータに行う工程と、を備える、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−33382(P2008−33382A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202702(P2006−202702)
【出願日】平成18年7月26日(2006.7.26)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】