説明

紙幣収納装置

【課題】一時保留部に既に収納されている紙幣の縁部に切れ目がある場合でも、これに引っ掛かることなく遊技機島搬送路から新たな紙幣を一時保留部に受け入れることのできる紙幣収納装置を提供する。
【解決手段】紙幣のうちの受け入れ方向Fと平行な縁部の紙面と接触する程度に一時保留部30の内側へ突出したガイド部材33を紙幣の受け入れ方向に沿って設け、ガイド部材33を境にして一時保留部30を受入室30aと一時収納室30bとに分ける。遊技機島搬送路からガイド部材33に沿って受入室30aに受け入れた紙幣を、回転する押圧羽根36aで受入室30aから一時収納室30bに向けて押圧して一時収納室30bに移して収納し、一時収納室30bから紙幣を収納部に向けて送り出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ機などが並設された遊技機島に設けられ、遊技客によって遊技媒体貸機などに投入された後に遊技機島の長手方向に沿って搬送されてきた紙幣を受け入れて収容する紙幣収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パチンコ機などの遊技機が並設された遊技機島では、一般に、各遊技機の近くに遊技媒体貸機が設置されており、遊技媒体貸機に投入された紙幣は、遊技機島の長手方向に沿って島内に設置された遊技機島搬送路を通じて遊技機島端の紙幣収納装置へ搬送されて収納される。
【0003】
紙幣収納装置には、紙幣を一時保留部で一旦受け入れ、この一時保留部から1枚ごとに分離して送り出した紙幣を識別手段に通過させて金種を識別した後、収納部に収納するように成されたものがある(たとえば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特開2002−197511号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
紙幣は使用される間に小さな切れ目が生じることがある。一時保留部に既に収納されている紙幣の上縁などにこのような切れ目があると、遊技機島搬送路から一時保留部に新たに受け入れた紙幣が既に収納されている紙幣の切れ目に引っ掛かって紙幣詰まりを起こす場合があった。
【0006】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、一時保留部に既に収納されている紙幣の縁部に切れ目がある場合でも、これに引っ掛かることなく遊技機島搬送路から新たな紙幣を一時保留部に受け入れることのできる紙幣収納装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0008】
[1]遊技機島の長手方向に沿って紙幣を搬送する遊技機島搬送路(5)から送り出された紙幣を一時保留部(30)で一旦受入れた後、該一時保留部(30)から送り出して収納部(15、17)に収納する紙幣収納装置において、
前記遊技機島搬送路(5)から受け入れる紙幣のうちの受け入れ方向と平行な縁部の紙面と接触する程度に前記一時保留部(30)の内側へ突出したガイド部材(33)を前記受け入れ方向に沿って設け、該ガイド部材(33)を境にして一時保留部(30)を受入室(30a)と一時収納室(30b)とに分け、
遊技機島搬送路(5)から前記ガイド部材(33)に沿って前記受入室(30a)に受け入れた紙幣を、前記受入室(30a)から前記一時収納室(30b)に向けて押圧手段(36,36a)で押圧することで前記一時収納室(30b)に移して収納し、
前記一時収納室(30b)から紙幣を前記収納部(15、17)に向けて送り出す
ことを特徴とする紙幣収納装置。
【0009】
上記発明では、ガイド部材(33)を境にして一時保留部(30)を受入室(30a)と一時収納室(30b)とに分けておき、ガイド部材(33)に沿って受入室(30a)に受け入れた紙幣を押圧手段(36,36a)で押圧して一時収納室(30b)へ移して収納する。これにより、一時収納室(30b)に既に収納済みの紙幣の縁部に切れ目がある場合でも、この紙幣の切れ目に後から受入室(30a)に受け入れられた紙幣が引っ掛かって詰まることが防止される。
【0010】
[2]前記押圧手段(36,36a)は、回転体(36)と、前記回転体(36)を回転させる駆動部(25)と、前記回転体(36)の周面から伸びる押圧羽根(36a)とを備え、
前記押圧羽根(36a)により、前記受入室(30a)から前記一時収納室(30b)に向けて紙幣を押圧する
ことを特徴とする[1]に記載の紙幣収納装置。
【0011】
上記発明では、ガイド部材(33)に沿って受入室(30a)で受け入れられた紙幣を、簡単な構造で受入室(30a)から一時収納室(30b)に向けて押圧することが可能になる。
【0012】
[3]紙幣の長辺を受け入れ方向にして、前記一時保留部(30)の一端(31)から紙幣を受け入れ、他端(32)から送り出すと共に、
前記押圧手段(36、36a)を前記一時保留部(30)内の前記一端側と他端側に設けた
ことを特徴とする[2]に記載の紙幣収納装置。
【0013】
上記発明では、回転体(36)を紙幣の受入側に配置したことにより、折れ曲がって受け入れられた紙幣であっても押圧羽根(36a)で伸張することができ、折れ曲がった紙幣に後から一時保留部(30)に受け入れられた紙幣が衝突して詰まるのを防ぐことができる。また、回転体(36)を紙幣の送り出し側に配置したことにより、一時収納室(30b)に収納されている紙幣を 常に一時収納室(30b)に向けて押圧羽根(36a)で押圧することができるので、一時収納室(30b)から受入室(30a)へ紙幣が浮き出てくるのを防ぐと共に、送出口(32)から確実に紙幣を排出することができる。
【0014】
[4]紙幣を立てた状態で受け入れると共に、
前記ガイド部材(33)を、前記一時保留部(30)の上部から垂下するように設け、
前記受入室(30a)への紙幣の入口をその下端が前記一時収納室(30b)の底面より高くなるように配置した
ことを特徴とする[1]乃至[3]のいずれか1つに記載の紙幣収納装置。
【0015】
上記発明では、受入室(30a)の紙幣受入口から受け入れられた紙幣は、一時収納室(30b)へ移動する際に自重で落下して一時保留部(30)の底面に当接することにより姿勢が整えられるので、最終的に収納部(15、17)に収納されるまでに詰まるおそれが軽減される。また、一時収納室(30b)内に既に収納済みの紙幣の下縁部に切れ目がある場合に、この紙幣の下縁部と、紙幣受入口から受け入れられた後続の紙幣との間に高低差があるので、収納済み紙幣の下端部の切れ目に後続紙幣が接触せず、切れ目に後続の紙幣が引っ掛かって詰まるのを防ぐことができる。
【0016】
[5]前記ガイド部材(33)の終端は、前記一時収納室(30b)に収納された紙幣の受け入れ方向の先端より手前にある
ことを特徴とする[1]乃至[4]のいずれか1つに記載の紙幣収納装置。
【0017】
上記発明では、ガイド部材(33)の終端位置より奥では受入室(30a)と一時収納室(30b)の境がなくなり、受入室(30a)の奥方では紙幣をスムースに一時収納室(30b)に移して収納することができる。
【0018】
[6]紙幣が受入室(30a)の奥に進むと、前記紙幣とガイド部材(33)との接触面積が減少するようにした
ことを特徴とする[1]乃至[5]のいずれか1つに記載の紙幣収納装置。
【0019】
上記発明では、紙幣が受入室(30a)の奥に進むと紙幣とガイド部材(33)との接触面積が減少するので、紙幣がガイド部材(33)を越え易くなり、受入室(30a)から一時収納室(30b)への紙幣の移動を円滑に行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る紙幣収納装置によれば、一時保留部に既に収納されている紙幣の縁部に切れ目がある場合でも、これに引っ掛かることなく遊技機島搬送路から新たな紙幣を一時保留部に受け入れることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施の形態に係る紙幣収納装置10の設置された遊技機島2の内部構造を示す正面図であり、図2は、遊技機島2に設置された紙幣収納装置10およびその関連機器の配置状態を示す上面図である。遊技機島2は、遊技店のフロア上に構築したフレームにパチンコ機などの遊技機3と遊技媒体貸機4とを一組にしたものを多数背中合わせにして表裏面に並設収容している。
【0023】
遊技媒体貸機4は、遊技機3で使用されるパチンコ球などの遊技媒体を、正面上部の紙幣投入口4aから投入される紙幣の金額に応じて遊技者に貸し出す装置である。背中合わせにして設置された遊技媒体貸機4の背面間には、各遊技媒体貸機4の背面から排出された紙幣を遊技機島2の端部の紙幣収納装置10まで搬送する遊技機島搬送路5が、表裏面の各々に対応させて2経路背中合わせにして遊技機島2の長手方向に沿って延設されている。紙幣はその短辺が略垂直となる姿勢で表裏の各遊技機島搬送路5内を紙幣収納装置10に向けて搬送され、直前で合流されて紙幣収納装置10内へ送り出される。
【0024】
図3は紙幣収納装置10の内部構造を示す上面図、図4は紙幣収納装置10の内部構造を示す正面図、図5は紙幣収納装置10の内部構造を示す左側面図である。図6は、紙幣収納装置10の内部経路を簡略化して示したものである。
【0025】
紙幣収納装置10は、遊技機島搬送路5から送り出された紙幣を収納する装置であり、遊技機島搬送路5からの紙幣を一旦受け入れて保留する一時保留部30と、一時保留部30から1枚ごとに分離して紙幣を送り出す送出手段12と、送出手段12から送り出された紙幣を搬送する共通搬送路13と、共通搬送路13の途中に配置され、通過する紙幣の金種を識別する識別手段14と、金種の識別に成功した紙幣を収納する収納部15と、識別手段14で金種の識別できなかった紙幣を、所定のリトライ条件が成立する場合は一時保留部30へ戻すように搬送するリトライ搬送路16と、金種の識別ができなかった紙幣をリトライ条件が不成立の場合は受け入れて収納するリジェクト部17とを備えている。
【0026】
識別手段14の下流の共通搬送路13には、紙幣の進路を選択する切替爪としてのリトライゲート18aが設けてある。金種の識別に成功した紙幣は、リトライゲート18aによって選択される収納搬送路15aを通じて収納部15へ搬送される。金種の識別できなかった紙幣はさらに共通搬送路13を進み、切替爪であるリジェクトゲート18bにより、リジェクト部17へ紙幣を搬送するリジェクト搬送路17aとリトライ搬送路16のいずれかに進路が選択される。
【0027】
一時保留部30の一端部には、遊技機島搬送路5から送り出される紙幣の受け入れ口である第1受入口31が設けてあり、他端部には共通搬送路13への紙幣の出口となる送出口32が設けてある。第1受入口31と送出口32との間の長さは紙幣の長辺の長さ以上に、高さは紙幣の短辺の長さ以上にしてあり、全体として一時保留部30は紙幣を収納可能な細長の箱状をなしている。
【0028】
図7は、一時保留部30の上面を拡大図示している。一時保留部30には、遊技機島搬送路5から受け入れる紙幣のうちの受け入れ方向(遊技機島搬送方向)Fと平行な縁部の紙面と接触する程度に一時保留部30の内側へ突出したガイド部材33が紙幣の受け入れ方向Fに沿って設けてあり、該ガイド部材33を境にして一時保留部30は受入室30aと一時収納室30bとに分けられている。第1受入口31は受入室30aの一端にあり、送出口32は一時収納室30bの他端に設けてある。
【0029】
一時保留部30の受入室30a側の側壁を成している押圧ユニット34は、図8に示すように第1受入口31寄りに設けられた開閉軸34aを中心にして開閉可能になっている。
【0030】
図9は押圧ユニット34を開放した状態の一時保留部30を押圧ユニット34側から見た様子を示しており、図10は送出口32側から一時保留部30の内部を見た様子を模擬的に示している。図9に示すように、ガイド部材33は、遊技機島搬送路5から受け入れる紙幣N2の上縁部の紙面と接触する程度に一時保留部30の上部から垂下(天井から下方に突出)するように設けてある。また、ガイド部材33の終端は一時収納室30bに収納された紙幣N1の受け入れ方向の先端より手前にある。本実施の形態では、第1受入口31側から送出口32までの約半分のところまで延設されて終端している。
【0031】
第1受入口31は、その入口下端の高さが一時収納室30bの底面より所定長hだけ高くなるように配置されている。受入室30aの底部には、この高さの差に相当する厚みの板状の突設部材35が設けてあり、突設部材35の存在箇所では受入室30aの底面30faが一時収納室30bの底面30fbより突設部材35の厚み分だけ高くなるようにされている。突設部材35の終端は、第1受入口31の近傍から送出口32に向けて、ガイド部材33の終端よりやや第1受入口31側にある(図9参照)。また、一時保留部30の天井面39(少なくとも受入室30aの天井面)は、ガイド部材33の終端より送出口32側に向けて若干の下り傾斜を成している。
【0032】
押圧ユニット34には、図6、図7、図8などに示すように、紙幣の押圧手段として、周面から接線方向に軸を挟んで互いに逆方向に伸びる2枚の押圧羽根36aを備えた回転体36が第1受入口31側と送出口32側の2箇所に設けてある。詳細にはガイド部材33が存在する領域の中ほどと、ガイド部材33の終端より送出口32側の領域の中ほどにそれぞれに回転体36を設けてある。後述するモータ25(駆動部)からのベルト駆動で回転体36を矢印A方向に回転させることによって押圧羽根36aで紙幣を受入室30a側から一時収納室30b側へ押圧するようになっている。押圧羽根36aは弾性を有する樹脂フィルムなどで構成される。
【0033】
図7に示すように、一時保留部30の一時収納室30b側の側壁部Kのうち、第1受入口31寄りの位置には、リトライ搬送路16から送り出された紙幣の受け入れ口となる第2受入口37が設けられている。
【0034】
図3などに示すように、第1受入口31には円筒状をなす一対の受入ローラ21が対向配置されている。受入ローラ21には、上部伝達ギア23および上部モータギア24を介してモータ25の回転が伝達される。モータ25が図3の矢印Bの方向に回転することで、受入ローラ21は紙幣を第1受入口31から一時保留部30の内部へ送り込む方向に回転する。
【0035】
送出口32に設けられた送出手段12は、一時保留部30の一時収納室30bから紙幣を共通搬送路13へ送り出す方向(図7の矢印C)に回転する順転ローラ12aと、該順転ローラ12aの逆方向(図7の矢印D)に回転しかつ順転ローラ12aに比べて表面の摩擦力が小さい逆転ローラ12bとを、逆転ローラ12bが受入室30a側で順転ローラ12aが一時収納室30b側となるように対向配置して構成される。
【0036】
順転ローラ12aは、円筒状に形成され、その周面にゴムなどの弾性部材でギヤ状の歯が設けられており、紙幣に対する接触面積と摩擦力とが大きくなるように形成されている。一方、逆転ローラ12bは、順転ローラ12aのギア状の歯を両側から挟むように配置される上下2つの円盤状に形成されており、周面に歯はなく、紙幣に対する接触面積と摩擦力は順転ローラ12aに比べて小さくなっている。
【0037】
送出口32に到達した紙幣が1枚の場合、逆転ローラ12bの摩擦力が順転ローラ12aの摩擦力に比べて小さいので、この紙幣は順転ローラ12aとの接触により送出口32から送り出される。一方、送出口32に到達した紙幣が複数枚重なっている場合は、順転ローラ12aに接触している紙幣は送出口32から送り出され、逆転ローラ12bに接触している紙幣は一時保留部30の一時収納室30b内に戻される。このように、紙幣が複数枚重なっている場合でも、送出手段12は紙幣を1枚ずつ送出口32から送り出すようになっている。
【0038】
第2受入口37が設けられている一時収納室30bの側部Kには、第2受入口37の近傍から送出口32にかけて紙幣を搬送する送込ベルト38が設けてある。
【0039】
図4などに示すように、共通搬送路13の搬送ローラ13aには、同軸下部に設けられた第1電磁クラッチ26および第1タイミングベルト27を介して上部伝達ギア23の回転力が同軸の下部シャフト23aから伝達され、この搬送ローラ13aから共通搬送路13やリトライ搬送路16の各部に駆動力が伝達される。また、順転ローラ12aには同軸下部に設けられた第2電磁クラッチ28および第2タイミングベルト29を介して上部伝達ギア23の回転力が同軸の下部シャフト23aから伝達される。
【0040】
図3に示すように、受入ローラ21の近傍には、遊技機島搬送路5から到来する紙幣を検知するための受入センサ41が取り付けられている。また、一時保留部30には、一時保留部30内の紙幣を検知する保留センサ42が設けられ、リトライ搬送路16の近傍には、リトライ搬送路16を通る紙幣を検知するリトライセンサ43が設けられている。
【0041】
紙幣収納装置10は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を主要部として構成された図示省略の制御部を備えており、受入センサ41、保留センサ42、リトライセンサ43からそれぞれ検知情報を入力し、これらの検知情報および後述するリトライ条件に基づき、モータ25や第1電磁クラッチ26、第2電磁クラッチ28、リトライゲート18a、リジェクトゲート18bの動作を制御する。なお、リトライゲート18a、リジェクトゲート18bはそれぞれソレノイドのオン/オフによって変位し、制御部はこれらのソレノイドのオン/オフ制御するようになっている。
【0042】
次に、紙幣収納装置10の動作を説明する。
【0043】
図11は遊技機島搬送路5から受け入れた紙幣Nが収納部15に収容される場合の搬送ルートP1を、図12はリトライ搬送路16を通じて紙幣Nが一時保留部30に戻される場合の搬送ルートP2を、図13は紙幣Nがリジェクト部17に収容される場合の搬送ルートP3をそれぞれ示している。
【0044】
まず、遊技機島搬送路5からの紙幣を一時保留部30で受け入れるまでの動作を説明する。遊技機島搬送路5を搬送されてきた紙幣Nが受入センサ41によって検出されると(図11参照)、モータ25が始動し、上部モータギア24および上部伝達ギア23を介して一対の受入ローラ21と送込ベルト38とが駆動されると共に、押圧羽根36aが矢印A方向(図7参照)に回転駆動される。
【0045】
遊技機島搬送路5から短辺が略垂直となる姿勢で到来した紙幣Nは、回転する一対の受入ローラ21によって第1受入口31から一時保留部30の受入室30a内へ送り込まれる。図9、図10に示すように、第1受入口31から進入する紙幣N2は、その下端が突設部材35の上面に支持され、かつ上縁部の一時収納室30b側の紙面はガイド部材33と接触しながら受入室30aへ受け入れられる。
【0046】
少なくとも紙幣N2の先端がガイド部材33の終端を過ぎるまでは、押圧羽根36aによって一時収納室30bに向けて押圧されても紙幣N2の上縁部がガイド部材33に接触しているので、紙幣N2は一時収納室30b側へ移ることなく受入室30a内を奥(送出口32側)に向けて進行する。
【0047】
紙幣N2の先端が突設部材35の終端よりさらに送出口32側へ進行すると、紙幣N2の先端部は突設部材35による下方からの支えを失い、送出口32へ近づくに連れて紙幣N2は先端側が僅かに下向きに傾斜するようになると共に、突設部材35が送出口32に至る途中で終端し、該終端箇所より奥では一時保留部30の天井39が送出口32側に向けて下り傾斜しているので、該傾斜により紙幣N2の上縁部の紙面とガイド部材33との接触面積は次第に減少する。
【0048】
また、ガイド部材33は送出口32に至る途中で終端したことにより、遊技機島搬送路5から受け入れた紙幣は受入室30aの奥へ進むとガイド部材33との係りが少なくなる。また、紙幣N2の先端がガイド部材33の終端より送出口32へ進行し、送出口32側の押圧羽根36aに当接するようになると、紙幣Nの先端側は一時収納室30b側へと押圧される。紙幣N2がさらに送出口32側へ進行し、紙幣N2の後端側が受入ローラ21を過ぎてほぼ全体が受入室30aに収まる頃には、受入ローラ21での挾持による支えが無くなると共に、紙幣の先端側の下降によりガイド部材33と紙幣N2の上縁との接触面積はさらに減少する。そのため、第1受入口31側の押圧羽根36aの押圧力により紙幣N2は湾曲しながらガイド部材33の下を潜るようにして受入室30aから一時収納室30bへ移動し、図13に示すように収納される。
【0049】
すなわち、回転体36を常時駆動させて紙幣に押圧力を常に加えても、受入室30aへ進入した当初はガイド部材33との接触による抗力が押圧力に勝って紙幣はガイド部材33を越えて一時収納室30b側へ移ることはないが、紙幣が受入室30aの奥まで進むと押圧力が勝って紙幣が受入室30aから一時収納室30bへ移るようになる。一時収納室30bへ移動する際に、紙幣N2(特に後端側)は突設部材35の厚み分の段差hを自重により落下して一時収納室30bの底面30fbに当接する。この落下と当接により紙幣Nの姿勢が整えられる。すなわち、第1受入口31の入口下端を一時収納室30bの底面30fbより高くし、その差分の厚みを有する突設部材35を受入室30aの底部に設け、受入室30aから一時収納室30bへ紙幣を押圧して移動させる際に、紙幣が突設部材35の段差を落下するようにしたので、落下時の衝撃により紙幣の姿勢が整えられる。これにより、一時収納室30bから送り出す際および識別手段14を通過する時の紙幣の姿勢が良好となり、共通搬送路13などでの紙詰まりを防止し、識別手段14での識別性を高めることができる。
【0050】
また、紙幣は上端部をガイド部材33に接触させながら受入室30a内を進行するので、図9、図10に示すように、一時収納室30bに既に収納されている収納済み紙幣N1に上縁部の切れ目Raが存在する場合でも、新たに受け入れる後続紙幣N2はガイド部材33の介在により、収納済み紙幣N1の上縁部の切れ目Raに引っ掛かることはない。
【0051】
また、収納済み紙幣N1に下縁部の切れ目Rbがあっても、突設部材35の厚み分だけ後続紙幣N2は収納済み紙幣N1より高い位置にあるので、受け入れ時に収納済み紙幣N1の下縁部の切れ目Rbに引っ掛かることはない。
【0052】
また、受入室30aから一時収納室30bへ紙幣を押圧する押圧手段を、モータ25からのベルト駆動で回転する回転体36と押圧羽根36aによって構成したので、ガイド部材33に沿って受入室30aへ受け入れられた紙幣を、簡単な機構で受入室30aから一時収納室30bに向けて押圧することができ、装置の構成が簡略になる。
【0053】
たとえば、ガイド部材33を第1受入口31から送出口32側の端部まで延設した場合には、受入室30aの奥方に進むほど紙幣とガイド部材33との接触面積が増加するので、紙幣が受入室30aの奥まで進んだことを検知し、そのタイミングで大きな押圧力を加えるといった制御を要する。これに対して、本実施の形態ではそのような制御は不要で、前述したように紙幣の受け入れ中に回転体36を常に回転させておくだけでよいので、構成が簡略化される。
【0054】
さらに、回転体36を紙幣受入側(第1受入口31側)に配置したことにより、折れ曲がって受け入れられた紙幣であっても押圧羽根36aで伸張することができ、折れ曲がった紙幣に、遊技機島搬送路5からの後続紙幣が衝突して詰まるのを防ぐことができる。
【0055】
また、回転体36を紙幣排出側(送出口32側)に配置したことにより、一時収納室30bに収納されている紙幣を常に一時収納室30bに向けて押圧羽根36aで押圧することができるので、一時収納室30bから受入室30aへ紙幣が浮き出てくるのを防ぐことができると共に、送出口32から確実に紙幣を排出することができる。
【0056】
以上のようにして一時保留部30に紙幣が受け入れられると、保留センサ42によって紙幣が検出され、この検出を契機に搬送ローラ13aの下部に取り付けられた第1電磁クラッチ26が作動し、上部伝達ギア23の回転力が同軸の下部シャフト23aから装置下部の第1タイミングベルト27を介して回転駆動力が搬送ローラ13aに伝達される。これにより、識別手段14や収納部15などへ紙幣を搬送する共通搬送路13やリトライ搬送路16などが駆動される。
【0057】
その後、順転ローラ12aの下部に取り付けられた第2電磁クラッチ28が作動し、上部伝達ギア23の回転力が同軸の下部シャフト23aから装置下部の第2タイミングベルト29を介して回転駆動力が順転ローラ12aと逆転ローラ12bに伝達され、順転ローラ12aは紙幣を一時保留部30の一時収納室30bから送り出す方向に、逆転ローラ12bはその逆方向にそれぞれ回転する。
【0058】
一時保留部30の一時収納室30bに収納されている紙幣は、回転する押圧羽根36aに接触して送込ベルト38側へ押圧され、送込ベルト38によって送出口32に向かって送られ、送出口32に到達した紙幣は送出手段12により1枚ずつ分離して共通搬送路13へ送り出される。
【0059】
共通搬送路13へ送り出された紙幣は識別手段14を通過する際に金種の識別が行われ(ここでは、真偽や千円札か否かが判別される)、金種の識別に成功した場合は、リトライゲート18aを制御して紙幣を収納搬送路15a側へ進行させて収納部15に収納する(図11のP1)。
【0060】
金種を識別できなかったときは、紙幣がリジェクトゲート18bへ向かうようにリトライゲート18aを制御する。さらに所定のリトライ条件が成立しているか否かを判断し、リトライ条件が成立している場合は、リジェクトゲート18bを制御して紙幣をリトライ搬送路16へ進行させる。これにより紙幣はリトライ搬送路16を通じて第2受入口37から一時保留部30の一時収納室30bへ戻される(図12、P2)。
【0061】
一方、識別手段14によって金種を識別できず、かつリトライ条件が不成立の場合は、紙幣がリジェクト搬送路17aへ進行するようにリジェクトゲート18bを制御して紙幣をリジェクト部17に収納する(図13、P3)。
【0062】
リトライ条件として、たとえば、以下のいずれかを選択することができる。
(1)リトライセンサ43で単位時間に検出される紙幣の枚数が設定枚数以下の場合は成立し、設定枚数を超えた場合は不成立になる。
(2)リトライセンサ43で検出される紙幣の通過間隔が設定間隔以上の場合は成立し、紙幣の通過間隔が設定間隔未満の場合は不成立になる。
(3)一時保留部30内の紙幣の保留量を保留センサ42によって検出し、検出される保留量が設定枚数以下の場合はリトライ条件が成立し、検出される保留量が設定枚数を超える場合は不成立になる。
なお、いずれをリトライ条件とするか、および各条件における設定枚数や設定間隔は、図示省略の操作部から設定変更することができるようになっている。
【0063】
このように、金種を識別できなかった紙幣をリトライ条件が成立するときはリトライ搬送路16を通じて一時保留部30の一時収納室30bに戻すので、その紙幣を識別手段14に再度通して金種を識別させることができ、最終的に金種の識別される紙幣の割合が高まってリジェクト部17に収容される紙幣の枚数が減り、リジェクト部17の容量を小さくすることができる。
【0064】
また、リトライ条件が不成立の場合は、リジェクト部17へ収納するようにしたので、金種の識別できない紙幣がいつまでも紙幣収納装置10内を周回することがなくなり、遊技機島搬送路5から送り込まれる他の紙幣の識別に支障を与えたり、多数の紙幣がリトライ搬送路16に搬送されて搬送障害を引き起したりすることが防止される。
【0065】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0066】
たとえば、実施の形態では、紙幣の短辺を立てた状態で長辺方向に紙幣を搬送するようにしたが、紙幣は水平に搬送されたり、傾斜した状態で搬送されたりしてもかまわない。また、実施の形態では一時保留部30の上部にのみガイド部材33を設けたが、紙幣の上縁部および下縁部のそれぞれに対応させてガイド部材33を設けてもよい。たとえば、水平搬送の場合、紙幣の受け入れ方向と平行な両方の縁部に対してガイド部材33を設けるように構成するとよい。さらに水平搬送の場合には、ガイド部材33の上側を受入室30aとし下側を一時収納室30bとすれば、一時収納室30bに収納した紙幣が自重で受入室30aに戻り難くなって好ましい。
【0067】
ガイド部材33の突出量(紙幣との接触量)や受け入れ方向に沿った長さ、突設部材35の高さや長さなどは実施の形態に例示したものに限定されず、適宜に設定すればよい。たとえば、実施の形態では、ガイド部材33を第1受入口31から送出口32の途中で終端したが、全長にわたってガイド部材33を設けてもかまわない。この場合には、紙幣が受入室30aの奥まで搬送された後に、一時収納室30bから受入室30aに向けて紙幣を押圧するように、押圧手段の動作をタイミング制御するとよい。
【0068】
また、表裏面に遊技媒体貸機4を有する遊技機島2を例示したが、一方の面のみに遊技媒体貸機4や遊技機3が配設される遊技機島に対しても本発明の紙幣収納装置10は適用される。
【0069】
このほか実施の形態では、パチンコ機の設置された遊技機島2を例示したが、遊技機の種類はこれに限定されず、スロットマシーンなどでもかまわない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の実施の形態に係る紙幣収納装置の設置された遊技機島の内部構造を示す正面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る紙幣収納装置とその関連機器の遊技機島内での配置状態を示す上面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る紙幣収納装置の内部構造を示す上面図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る紙幣収納装置の内部構造を示す正面図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る紙幣収納装置の内部構造を示す左側面図である。
【図6】紙幣収納装置の内部構造を簡略化して示す上面図である。
【図7】一時保留部を拡大して示す上面図である。
【図8】押圧ユニットを開放した状態の紙幣収納装置の内部構造を示す上面図である。
【図9】押圧ユニットを開放した状態の一時保留部を押圧ユニット側から見た様子を示す説明図である。
【図10】送出口側から一時保留部の内部を見た様子であって後続紙幣が受入室にある状態を模擬的に示す説明図である。
【図11】本発明の実施の形態に係る紙幣収納装置において紙幣が収納部に収容される場合の搬送ルートを示す説明図である。
【図12】本発明の実施の形態に係る紙幣収納装置において紙幣がリトライ搬送路を通じて一時保留部に戻される場合の搬送ルートを示す説明図である。
【図13】本発明の実施の形態に係る紙幣収納装置において紙幣がリジェクト部に収容される場合の搬送ルートを示す説明図である。
【図14】送出口側から一時保留部の内部を見た様子であって後続紙幣が一時収納室に移動した状態を模擬的に示す説明図である。
【符号の説明】
【0071】
2…遊技機島
3…遊技機
4…遊技媒体貸機
4a…紙幣投入口
5…遊技機島搬送路
10…紙幣収納装置
12…送出手段
12a…順転ローラ
12b…逆転ローラ
13…共通搬送路
13a…搬送ローラ
14…識別手段
15…収納部
15a…収納搬送路
16…リトライ搬送路
17…リジェクト部
17a…リジェクト搬送路
18a…リトライゲート
18b…リジェクトゲート
21…受入ローラ
23…上部伝達ギア
23a…下部シャフト
24…上部モータギア
25…モータ
26…第1電磁クラッチ
27…第1タイミングベルト
28…第2電磁クラッチ
29…第2タイミングベルト
30…一時保留部
30a…受入室
30b…一時収納室
30fa…受入室の底面(突設部材の上面)
30fb…一時収納室の底面
31…第1受入口
32…送出口
33…ガイド部材
34…押圧ユニット
34a…開閉軸
35…突設部材
36…回転体
36a…押圧羽根
37…第2受入口
38…送込ベルト
39…一時保留部の天井面
41…受入センサ
42…保留センサ
43…リトライセンサ
A…押圧羽根の回転方向
B…モータ回転方向
C…順転ローラの回転方向
D…逆転ローラの回転方向
F…紙幣の受け入れ方向
h…第1受入口の下端と一時収納室底面との高低さ
K…一時収納室側の側壁部
N…紙幣
N1…収納済み紙幣
N2…後続紙幣
P1、P2、P3…搬送ルート
Ra…上縁部の切れ目
Rb…下縁部の切れ目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技機島の長手方向に沿って紙幣を搬送する遊技機島搬送路から送り出された紙幣を一時保留部で一旦受入れた後、該一時保留部から送り出して収納部に収納する紙幣収納装置において、
前記遊技機島搬送路から受け入れる紙幣のうちの受け入れ方向と平行な縁部の紙面と接触する程度に前記一時保留部の内側へ突出したガイド部材を前記受け入れ方向に沿って設け、該ガイド部材を境にして一時保留部を受入室と一時収納室とに分け、
遊技機島搬送路から前記ガイド部材に沿って前記受入室に受け入れた紙幣を、前記受入室から前記一時収納室に向けて押圧手段で押圧することで前記一時収納室に移して収納し、
前記一時収納室から紙幣を前記収納部に向けて送り出す
ことを特徴とする紙幣収納装置。
【請求項2】
前記押圧手段は、回転体と、前記回転体を回転させる駆動部と、前記回転体の周面から伸びる押圧羽根とを備え、
前記押圧羽根により、前記受入室から前記一時収納室に向けて紙幣を押圧する
ことを特徴とする請求項1に記載の紙幣収納装置。
【請求項3】
紙幣の長辺を受け入れ方向にして、前記一時保留部の一端から紙幣を受け入れ、他端から送り出すと共に、
前記押圧手段を前記一時保留部内の前記一端側と他端側に設けた
ことを特徴とする請求項2に記載の紙幣収納装置。
【請求項4】
紙幣を立てた状態で受け入れると共に、
前記ガイド部材を、前記一時保留部の上部から垂下するように設け、
前記受入室への紙幣の入口をその下端が前記一時収納室の底面より高くなるように配置した
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の紙幣収納装置。
【請求項5】
前記ガイド部材の終端は、前記一時収納室に収納された紙幣の受け入れ方向の先端より手前にある
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の紙幣収納装置。
【請求項6】
紙幣が受入室の奥に進むと、前記紙幣とガイド部材との接触面積が減少するようにした
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の紙幣収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−123080(P2009−123080A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−298185(P2007−298185)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000127628)株式会社エース電研 (339)
【Fターム(参考)】