説明

紙幣収納装置

【課題】紙幣の繰り出しを安定させて信頼性を向上させる。
【解決手段】紙幣Pを繰り出すローラ(図1では「キックローラ13」)と、ローラに対向配置され、紙幣Pが積載されて、移動することによって紙幣Pをローラに押し当てるステージ11と、ステージ11をローラ側に弾性力によって移動させる弾性体(図1では「ばね16」)と、弾性体に連結され、ステージ11の移動に弾性体を上回る弾性力が必要になった場合に、ステージ11のローラ側への移動を補助する弾性体(図1では「ばね17」)と、を有する紙幣収納装置10により、紙幣Pの繰り出しを安定させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙幣収納装置に関し、特に紙幣を収納し、紙幣を外部へ繰り出す紙幣収納装置に関する。
【背景技術】
【0002】
銀行などにおける紙幣の自動的な預け入れもしくは払い出しおよび競馬などの公営競技場における投票券などの購入や勝券などの払い戻しに際し、紙幣の入出金処理とともに、紙幣を収納する紙幣収納装置が利用されている。この紙幣収納装置では、紙幣の入出金を行うために、ステージに取り付けたベルトに駆動力を伝達させて、ステージを移動させる。そして、ステージに対向配置させたキックローラに、ステージに積載された紙幣の上面部を押し当てて、キックローラの回転駆動によって紙幣が繰り出される(例えば、特許文献1参照)。また、ステージの移動にはベルトの他に、弾性体の、例えば、ばねが用いられている。ばねを用いることによって、キックローラに対するステージの圧力が、複数の紙幣が重なって繰り出される、紙幣の重送が生じずに1枚ずつ紙幣を繰り出せる範囲に収まるように、ばねの弾性力を選択することが可能である。なお、ばねの弾性力には、移動によるステージにかかる負荷をある程度予測してマージンを持たせている。
【0003】
以下に、このようなステージの移動について図面を参照しながら説明する。
図7は、紙幣収納装置の側断面模式図、図8は、紙幣収納装置の平断面模式図である。なお、図8は、図7におけるA−Aの断面を模式的に示している。
【0004】
紙幣収納装置100は、図7に示されるように、紙幣Pの搬入口21a、搬入口21aから続く搬送路21、阻止ローラ22、搬送ローラ23、キックローラ13および複数枚の紙幣Pが積載されたステージ11で構成されている。紙幣収納装置100は、さらに、図8に示されるように、一対の側壁12、モータ14、プーリ15、ばね16を有する。なお、図8では、図7に示されている阻止ローラ22、搬送ローラ23および下壁面部24の記載については省略している。
【0005】
搬入口21aおよび搬入口21aから続く搬送路21は、互いに平行に相対する下壁面部24および上壁面部13aから形成されている。搬入口21aで紙幣Pが搬入または繰り出される。搬入または繰り出された紙幣Pは搬送路21を搬送させられる。
【0006】
阻止ローラ22は、その外周面部の一部を、搬入口21aの近傍の下壁面部24から搬送路21へ露出するように配置されている。阻止ローラ22は、紙幣Pの搬入時には搬入方向に応じて逆転回転(図中反時計回り方向)し、繰り出し時には回転せずに、固定される。
【0007】
搬送ローラ23は、その外周面部の一部を、搬入口21aの近傍の上壁面部13aから搬送路21へ露出するように配置されている。搬送ローラ23は、紙幣Pの搬送方向に応じて正転および逆転回転(図中、それぞれ時計回りおよび反時計回り方向)する。
【0008】
キックローラ13は、その外周面部の一部を、ステージ11に対向するように上壁面部13aから露出するように配置されている。キックローラ13は、ステージ11に積載された紙幣Pの上面部に押し当てられると逆転回転(図中反時計回り方向)し、紙幣Pを、搬送路21を介して搬入口21aから外部へ繰り出す。
【0009】
ステージ11は、下壁面部24、上壁面部13aおよび一対の側壁12で囲まれる収納領域25内に設置されている。ステージ11は、搬入または繰り出される紙幣Pを積載して、収納領域25内部を上下に移動することができる。ステージ11の上下の移動は、ベルト取り付け部11aを介して取り付けられたベルト15bの動作に応じる。なお、ステージ11の移動については後述する。
【0010】
モータ14は、紙幣収納装置100の底部に、支持台14bに支持される回転軸14aに設けられている。モータ14は回転軸14aで、図8に示す矢印方向に回転駆動することができる。
【0011】
プーリ15は、回転軸15aに設けられている。プーリ15は、ベルト15bを介して、モータ14の回転駆動の回転方向で回転させられる。また、ベルト15bは、既述の通り、ベルト取り付け部11aを介して、ステージ11に取り付けられている。したがって、モータ14の回転駆動によるベルト15bの回転に伴って、ステージ11を移動させることができる。
【0012】
ばね16は、端部が紙幣収納装置100の底部に固定され、プーリ15に巻きかけられて、もう一方の端部がステージ11に固定されている。
次に、このように構成された紙幣収納装置100の紙幣の搬入・繰り出し動作について図面を参照しながら説明する。なお、図7および図8に示した紙幣収納装置100のステージ11の状態を「初期状態」と呼ぶ。
【0013】
図9は、紙幣収納装置に係る紙幣の搬入時を示す側断面模式図、図10は、紙幣収納装置に係るステージの下降時を示す平断面模式図、図11は、紙幣収納装置に係るステージに積載された紙幣がキックローラに押し当てられた時を示す側断面模式図、図12は、紙幣収納装置に係るステージに積載された紙幣がキックローラに押し当てられた時を示す平断面模式図、図13は、紙幣収納装置に係るステージに積載された紙幣の繰り出し時を示す側断面模式図である。なお、図10および図12は、図9および図11のA−Aの断面を模式的にそれぞれ示している。
【0014】
まず、紙幣Pの搬入時の紙幣収納装置100の動作について説明する。
紙幣収納装置100では、紙幣Pを搬入するにあたって、図9および図10に示されるように、初期状態から、さらに、収納領域25内でステージ11を下降しておいて、ステージ11上に、紙幣Pが収納される収納空間をあらかじめ確保しておく。ステージ11の下降は、モータ14を逆転回転(図中反時計回り方向)に駆動させて、プーリ15に巻きつけたベルト15bも逆転回転させる。ベルト15bを逆転回転させることにより、ベルト15bにベルト取り付け部11aを介して取り付けられたステージ11を下降させることができる。そして、図9に示されるように、初期状態からステージ11が下降された紙幣収納装置100の搬入口21aに紙幣Pを搬入する。すると、阻止ローラ22および搬送ローラ23がそれぞれ逆転方向(図中反時計回り方向)および正転方向(図中時計回り方向)に回転し、紙幣Pが搬送路21を搬送される。そして、搬送された紙幣Pは、ステージ11上に積載される。
【0015】
次に、紙幣Pの繰り出し時の紙幣収納装置100の動作について説明する。
紙幣収納装置100では、紙幣Pを繰り出すために、図11および図12に示されるように、初期状態から、さらに、収納領域25内でステージ11を上昇させて、ステージ11上の紙幣Pの上面部をキックローラ13に押し当てる。初期状態で伸ばされたばね16の弾性力によって、ステージ11を上昇させることができる。そして、ステージ11に積載された紙幣Pの上面部がキックローラ13に押し当てられると、図13に示されるように、紙幣Pがキックローラ13の逆転方向(図中反時計回り方向)への回転駆動によって、搬送ローラ23を搬送方向へ回転させながら、固定された阻止ローラ22上を滑り、搬送路21を介して搬入口21aから外部へ繰り出される。
【特許文献1】特開2002−087711号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかし、上記のような紙幣収納装置は、あらかじめマージンを考慮して設計されているものの、予想を超える紙幣の集積の乱れによる紙幣の、収納領域を構成する側壁などへの引っ掛かりや、静電気力が発生してしまう。この結果、ステージからキックローラへの圧力の分散、低下によって紙幣を繰り出せないという問題点があった。
【0017】
また、このような問題点を対処するために、弾性体の弾性力を強化して設計マージンを上げる方法が考えられる。しかし、弾性体の弾性力を強化しすぎると、ステージからキックローラへの圧力が過剰となり、紙幣の重送が生じるといった新たな問題点があった。
【0018】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、紙幣の繰り出しを安定させて信頼性が向上した紙幣収納装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するために、紙幣を収納し、前記紙幣を外部へ繰り出す紙幣収納装置が提供される。
この紙幣収納装置は、前記紙幣を繰り出すローラと、前記ローラに対向配置され、前記紙幣が積載されて、移動することによって前記紙幣を前記ローラに押し当てるステージと、前記ステージを前記ローラ側に弾性力によって移動させる第1の弾性体と、前記第1の弾性体に連結され、前記ステージの移動に前記第1の弾性体を上回る弾性力が必要になった場合に、前記ステージの前記ローラ側への移動を補助する第2の弾性体と、を有する。
【0020】
このような紙幣収納装置によれば、ローラに対向配置され、紙幣が積載されて、移動することによって紙幣をローラに押し当てるステージが、第1の弾性体によって、ローラ側に弾性力によって移動される。さらに、ステージの移動に第1の弾性体を上回る弾性力が必要になった場合に、第1の弾性体に連結された第2の弾性体によって、ステージのローラ側への移動が補助される。
【発明の効果】
【0021】
上記紙幣収納装置では、紙幣の繰り出しを安定化させて信頼性が向上されるようにした。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されるものではない。なお、上記の紙幣収納装置100における構成要素と同一の要素については、同一の符号を付してある。また、図7,9,11,13に示した紙幣収納装置100の側断面模式図は、本実施の形態の紙幣収納装置10の側断面模式図と同一の構成要素である。したがって、以下の説明では、これらの図面を紙幣収納装置10として用いる。
【0023】
本実施の形態では、紙幣を収納して、紙幣を外部へ繰り出す際のステージの移動に、弾性体であるばねを2本連結させて用いた。このため、ステージを移動させるために、2本目のばねが1本目の補助的な役割を担うものである。
【0024】
図1は、実施の形態に係る紙幣収納装置の平断面模式図、図6は、実施の形態に係る紙幣収納装置に用いられる係止手段の平断面模式図である。なお、図1は、図7のA−Aの断面を模式的に示している。
【0025】
紙幣収納装置10は、図7に示した紙幣収納装置100と同様に、紙幣Pの搬入口21a、搬入口21aから続く搬送路21、阻止ローラ22、搬送ローラ23、キックローラ13および複数枚の紙幣Pが積載されたステージ11を有する。そして、紙幣収納装置10は、図1に示されるように、一対の側壁12、モータ14、プーリ15、さらに、連結された2種のばね16,17、ばね16,17の連結に介された係止片18、係止手段19を有する。なお、図1では、図7で示されている阻止ローラ22、搬送ローラ23および下壁面部24の記載については省略している。
【0026】
搬入口21aおよび搬入口21aから続く搬送路21は、互いに平行に相対する下壁面部24および上壁面部13aから形成されている。搬入口21aで紙幣Pが搬入または繰り出される。搬入または繰り出された紙幣Pは搬送路21を搬送させられる。
【0027】
なお、搬入口21aには、紙幣Pの繰り出しを検知する検知手段(図示を省略)が設置されている。
阻止ローラ22は、その外周面部の一部を、搬入口21aの近傍の下壁面部24から搬送路21へ露出するように配置されている。阻止ローラ22は、外周部に所定の円周角を有する摩擦部材(図示を省略)が円周方向に沿って設けられている。そして、紙幣Pの搬入時には搬入方向に応じて逆転回転(図中反時計回り方向)し、繰り出し時には回転せずに、固定される。
【0028】
搬送ローラ23は、その外周面部の一部を、搬入口21aの近傍の上壁面部13aから搬送路21へ露出するように配置されている。搬送ローラ23は、外周部に所定の円周角を有する摩擦部材(図示を省略)が円周方向に沿って設けられている。そして、紙幣Pの搬送方向に応じて正転または逆転回転(図中、それぞれ時計回りまたは反時計回り方向)する。
【0029】
キックローラ13は、その外周面部の一部を、ステージ11に対向するように上壁面部13aから露出するように配置されている。キックローラ13は、外周部に所定の円周角を有する摩擦部材(図示を省略)が円周方向に沿って設けられている。そして、ステージ11に積載された紙幣Pの上面部に押し当てられると逆転回転(図中反時計回り方向)し、紙幣Pを、搬送路21を介して搬入口21aから外部へ繰り出す。
【0030】
ステージ11は、下壁面部24、上壁面部13aおよび一対の側壁12で囲まれる収納領域25内に設置されている。ステージ11は、搬入または繰り出される紙幣Pを積載して、収納領域25内を側壁12に沿って上下に移動することができる。ステージ11の上下の移動は、ベルト取り付け部11aを介して取り付けられたベルト15bの動作に応じる。
【0031】
モータ14は、紙幣収納装置10の底部に、支持台14bに支持される回転軸14aに設けられている。モータ14は回転軸14aで、図1に示す矢印方向に回転駆動することができる。そして、モータ14にはベルト15bが巻きかけられている。
【0032】
プーリ15は、回転軸15aに設けられており、ベルト15bが巻きかけられている。したがって、ベルト15bはモータ14とプーリ15との間にステージ11の移動方向に平行している。ベルト15bはステージ11にベルト取り付け部11aを介して固定されている。プーリ15は、ベルト15bを介してモータ14の回転駆動による駆動力を受けて、モータ14の回転駆動の回転方向で回転させられる。
【0033】
ばね16,17は、係止片18を介して連結されている。なお、係止片18は、例えば、先端部にテーパー角がつけられた形状をしている。連結されたばね16,17は端部が紙幣収納装置10の底部に固定され、プーリ15に巻きかけられて、もう一方の端部がステージ11に固定されている。
【0034】
係止手段19は、紙幣収納装置10の側壁12aに設置されており、係止片18を係止する。係止手段19は、図6に示されるように、可動鉄芯19aおよびソレノイド19bを有する。可動鉄芯19aは、先端部に、係止片18と同様にテーパー角がつけられた係止部19a1と、嵌合部19a2とが一体的に接続している。ソレノイド19bは内部に、嵌合部19a2が嵌合される空芯を有するコイル19b1と、コイル19b1に嵌合される可動鉄芯19aの嵌合部19a2に端部が固定されたばね19b2とを有する。したがって、係止手段19は次のような動作を行う。係止手段19では、ばね19b2により支持された可動鉄芯19aは、ばね19b2の弾性力により図中左右方向に可動する。係止片18が図中の下方から上昇してくる場合、図6に示されているように、係止片18と係止手段19の係止部19a1との互いの先端部がテーパー角に沿って接触する。さらに、係止片18が上昇すると、互いにテーパー角を有するために、係止手段19の可動鉄芯19aが図中右方向に移動する。そして、係止片18は、係止手段19の係止が解除されて、引き続き上昇する。一方、係止片18が図中の上方から下降してくる場合、係止片18と係止手段19の係止部19a1とのテーパー角がつけられていない側の先端部が接触する。この場合、係止片18は可動鉄芯19aを移動させることはできずに、係止手段19に係止される。そこで、係止手段19のコイル19b1に電流を流すと、コイル19b1に発生した磁場により可動鉄芯19aがコイル19b1に引きつけられて、図中右方向に移動する。すると、係止片18は、係止手段19による係止が解除されて、下降が引き続き行われる。
【0035】
次に、以上のような構成要素を有する紙幣収納装置10に係る紙幣Pの搬入搬出動作について図面を参照しながら説明する。なお、図1および図7に示した紙幣収納装置10のステージ11の状態を「初期状態」と呼ぶ。
【0036】
まず、紙幣収納装置10に係る紙幣の搬入動作について説明する。
図2は、実施の形態に係る紙幣収納装置のステージの下降時を示す平断面模式図である。なお、図2は、図9のA−Aの断面を模式的に示している。
【0037】
紙幣収納装置10では、紙幣Pを搬入するにあたって、初期状態から、さらに、収納領域25内でステージ11を下降しておいて、ステージ11上に、紙幣Pが収納される収納空間をあらかじめ確保しておく。なお、初期状態からだけでなく、後に説明する、紙幣Pの繰り出しが検知装置により検知されると、ステージ11を下降させるようにすることも可能である。ステージ11の下降は、モータ14を逆転回転(図中反時計回り方向)に駆動させて、プーリ15に巻きつけたベルト15bも逆転回転させる。図2に示されるように、ベルト15bを逆転回転させて、係止手段19による係止片18の係止が解除されて、ベルト15bを、ベルト取り付け部11aを介して取り付けたステージ11を下降させることができる。そして、図9に示されるように、初期状態の紙幣収納装置10の搬入口21aに紙幣Pを搬入する。すると、図9に示されるように、阻止ローラ22および搬送ローラ23がそれぞれ逆転方向(図中反時計回り方向)および正転方向(図中時計回り方向)に回転し、紙幣Pが搬送路21を搬送される。そして、搬送された紙幣Pは、ステージ11上に積載される。
【0038】
次に、紙幣収納装置10に係る紙幣の繰り出し動作について説明する。
図3は、実施の形態に係る紙幣収納装置ステージの上昇時を示す平断面模式図、図4は、実施の形態に係る紙幣収納装置のステージに積載された紙幣がキックローラに押し当てられた時を示す平断面模式図、図5は、実施の形態に係る紙幣収納装置のステージに積載された紙幣がキックローラに押し当てられ、係止片の係止が解除された時を示す平断面模式図である。なお、図4は、図11のA−Aの断面を模式的に示している。
【0039】
紙幣収納装置10では、紙幣Pを繰り出すために、図3に示されるように、初期状態から、さらに、収納領域25内でステージ11を上昇させる。なお、初期状態からだけでなく、上記で説明したように、紙幣Pが搬入された後に、ステージ11を上昇させることも可能である。このステージ11を上昇させるのは、ステージ11が下降されて伸ばされていたばね16,17の弾性力である。しかし、ばね16,17は、係止片18を介して連結しているため、ばね17が縮むことにより、図3に示されるように、係止片18が係止手段19に係止される。係止片18が係止された後は、図4に示されるように、ばね16のみの弾性力によって、ステージ11が上昇される。そして、ステージ11に積載された紙幣Pの上面部がキックローラ13に押し当てられる。
【0040】
この時、紙幣Pの上面部が押し当てられたキックローラ13は、逆転駆動(図中反時計回り方向)により、紙幣Pを搬入口21aから外部へ繰り出すことができる。ところが、紙幣Pの積載が乱れた場合などにより、ステージ11によるキックローラ13への圧力が弱く、キックローラ13は紙幣Pを安定して繰り出すことができない。そこで、搬入口21aに設置された、紙幣Pの繰り出しを検知する検知手段(図示を省略)によって、紙幣Pの繰り出しが検知されない場合、係止手段19は係止片18の係止を解除する。すると、図5に示されるように、ステージ11の移動に、ばね16の弾性力に加えてばね17による弾性力が加わる。したがって、ステージ11のキックローラ13への圧力が向上し、キックローラ13による繰り出し可能荷重に達する。そして、図13に示されるように、紙幣Pがキックローラ13の逆転方向への回転駆動によって、搬送ローラ23の搬送方向へ回転させながら、固定された阻止ローラ22上を滑り、搬送路21を介して搬入口21aから外部へ安定して繰り出される。
【0041】
また、ばね17の弾性係数を次のようにして決定することができる。なお、ばね16,17のそれぞれの弾性係数をk1,k2、それぞれの弾性力をf1,f2とし、ばね16,17を合わせた弾性係数をK、合わせた弾性力をFとする(但し、変位量をΔxとする)。
【0042】
K=k1*k2/(k1+k2)・・・・・・・・・・・・・・・・・式(1)
F=K*Δx={k1*k2/(k1+k2)}Δx・・・・・・・・式(2)
となり、ばね17を加えることによって弾性力が向上することがわかる。
【0043】
一方、ばね17を加えることによって向上した弾性力ΔFは、
ΔF=(F―f1)*Δx={k12/(k1+k2)}*Δx・・・式(3)
したがって、このΔFが、紙幣Pの重送が生じる、ステージ11からキックローラ13への圧力を超えない範囲でk2を決定すればよい。
【0044】
なお、本実施の形態の紙幣収納装置10では、ステージ11の移動を、モータ14の回転駆動をベルト15bに伝達することで実現した。ステージ11の移動にはこれらの方法に替えて、ステージ11に下降専用の駆動装置を設置するようにしてもよい。また、本実施の形態の紙幣収納装置10では、ステージ11が上下の移動を行う場合を例にあげて説明した。上下方向の他に、左右方向に移動するステージにも本実施の形態を適用することができて、同様の効果が得られる。
【0045】
以上、説明したように、本実施の形態では、キックローラ13に搭載させた紙幣Pを押し当てるためのステージ11の移動に、係止片18を介して連結したばね16,17を用いた。キックローラ13への紙幣Pの押し当てる力がばね16の弾性力だけで弱い場合には、ばね17の弾性力を加えることにより、キックローラ13への紙幣Pの押し上げる力を向上させることで、紙幣Pを安定して外部へ繰り出せて、信頼性が高まった紙幣収納装置10を提供することができる。
【0046】
上記については単に本発明の原理を示すものである。さらに、多数の変形、変更が当業者にとって可能であり、本発明は上記に示し、説明した正確な構成および応用例に限定されるものではなく、対応するすべての変形例および均等物は、添付の請求項およびその均等物による本発明の範囲とみなされる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施の形態に係る紙幣収納装置の平断面模式図である。
【図2】実施の形態に係る紙幣収納装置のステージの下降時を示す平断面模式図である。
【図3】実施の形態に係る紙幣収納装置ステージの上昇時を示す平断面模式図である。
【図4】実施の形態に係る紙幣収納装置のステージに積載された紙幣がキックローラに押し当てられた時を示す平断面模式図である。
【図5】実施の形態に係る紙幣収納装置のステージに積載された紙幣がキックローラに押し当てられ、係止片の係止が解除された時を示す平断面模式図である。
【図6】実施の形態に係る紙幣収納装置に用いられる係止手段の平断面模式図である。
【図7】紙幣収納装置の側断面模式図である。
【図8】紙幣収納装置の平断面模式図である。
【図9】紙幣収納装置に係る紙幣の搬入時を示す側断面模式図である。
【図10】紙幣収納装置に係るステージの下降時を示す平断面模式図である。
【図11】紙幣収納装置に係るステージに積載された紙幣がキックローラに押し当てられた時を示す側断面模式図である。
【図12】紙幣収納装置に係るステージに積載された紙幣がキックローラに押し当てられた時を示す平断面模式図である。
【図13】紙幣収納装置に係るステージに積載された紙幣の繰り出し時を示す側断面模式図である。
【符号の説明】
【0048】
10 紙幣収納装置
11 ステージ
11a ベルト取り付け部
12,12a 側壁
13 キックローラ
13a 上壁面部
14 モータ
14a,15a 回転軸
14b 支持台
15 プーリ
15b ベルト
16,17 ばね
18 係止片
19 係止手段
25 収納領域
P 紙幣

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙幣を収納し、前記紙幣を外部へ繰り出す紙幣収納装置において、
前記紙幣を繰り出すローラと、
前記ローラに対向配置され、前記紙幣が積載されて、移動することによって前記紙幣を前記ローラに押し当てるステージと、
前記ステージを前記ローラ側に弾性力によって移動させる第1の弾性体と、
前記第1の弾性体に連結され、前記ステージの移動に前記第1の弾性体を上回る弾性力が必要になった場合に、前記ステージの前記ローラ側への移動を補助する第2の弾性体と、
を有することを特徴とする紙幣収納装置。
【請求項2】
前記第1の弾性体と前記第2の弾性体との連結に介された係止片と、
前記係止片を係止する係止手段と、をさらに有し、
前記ステージの移動に前記第1の弾性体を上回る弾性力が必要になった場合、前記係止手段は前記係止片の係止を解除することを特徴とする請求項1記載の紙幣収納装置。
【請求項3】
前記係止手段は、
前記係止片を係止する係止部を先端部に備える可動鉄芯と、
前記可動鉄芯を取り巻いて通電により内部に引きつけるコイルと前記可動鉄芯に端部が固定された弾性体とを備えるソレノイドと、
を有することを特徴とする請求項2記載の紙幣収納装置。
【請求項4】
前記紙幣の繰り出しを検知する検知手段をさらに有し、
前記紙幣の繰り出しが検知されない場合、前記係止手段は前記係止を解除することを特徴とする請求項2記載の紙幣収納装置。
【請求項5】
前記係止片を介して連結された前記第1の弾性体および前記第2の弾性体が巻きかけられたプーリと、
前記プーリに一端が巻きかけられ、前記ステージに固定されたベルトと、
前記ベルトの別の一端が巻きかけられ、前記ベルトに駆動力を伝達して、前記ステージを前記ローラから遠ざける側に移動させる駆動手段と、をさらに有し、
前記ステージの前記移動により、前記係止片を前記係止手段に係止させることを特徴とする請求項3記載の紙幣収納装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−215061(P2009−215061A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63620(P2008−63620)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000237710)富士電機リテイルシステムズ株式会社 (1,851)
【Fターム(参考)】