説明

紙樹脂複合シート、紙樹脂複合一体成形容器およびその製造方法

【課題】紙を主素材とし、廃棄が容易であり、美観と成形性に優れ、汁漏れの生じない紙樹脂複合シート及び紙樹脂複合一体成形容器、並びにそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明の紙樹脂複合一体成形容器1は、紙層の少なくとも一面に樹脂層を備えた紙樹脂複合シートからなる基部2と、基部2から連続して一体的にプレス成形された前記紙樹脂複合シートからなる凹部3とを有してなり、基部2または凹部3の少なくとも一部に前記紙層の強度を弱めて、前記樹脂層の延伸変形を許容する弱化部6,7,…が形成されてなることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として弁当用容器や菓子・食品の包装などの用途に利用され、深さのある、または中仕切りを有する容器成形に用いられる紙樹脂複合シート、紙樹脂複合一体成形容器およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食生活の多様化から様々な食品が流通し、コンビニエンスストアや食品関係の製造業など、大量に生産・販売され、利便性が重視される分野では、弁当用容器や菓子・食品の包装などの用途に使い捨て容器が広く使用されている。現状の素材は容器形状への成形のしやすさなどからプラスチックが主流であるが、廃棄が容易でないという問題点がある。
近年、環境に対する意識の高まりや、容器包装リサイクル法などの制定により、容器包装の廃棄問題に対して事業者や消費者の意識が高まっている。そのため、可燃物として廃棄できる紙素材の容器が注目されている。
【0003】
紙素材の容器は可燃物として廃棄できる利点があるものの、紙の一般的な伸びが2〜5%程度と、プラスチックと比べて極めて低いため、一体成形性に劣り、従来はせいぜい底の浅い紙皿程度に利用することが精一杯であった。しかも、弁当用容器では、深さだけでなくて容器内を仕切る必要がある。従来、紙素材で弁当容器を作製する場合は、容器本体を折り曲げ式で成形し、仕切り板は別部品を用意していた。しかし、これでは組立などに手間がかかるだけでなく、内容物が汁物であると、漏れた汁が仕切りで止められずに、隣接する食材を汚してしまう。
例えば、特許文献1、2に記載のように、一枚物の組立式の紙容器が幾つか提案されているが、これらは組立構造の複雑さから製造に多くの手間が掛かる上に、縦横の仕切りの組み合わせには別の仕切り板の部品が必要となり、これらの容器では仕切りの汁漏れ防止が不充分である。
そこで、一般的な紙よりも伸び率の高い伸長紙を用いて、絞り加工による一体成形する方法が開発されている。
【特許文献1】特許第3817800号公報
【特許文献2】特開2004−331121号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、伸長紙のように特殊な紙はコストが掛かる上、弁当用容器など高さや仕切りのある複雑な形状では、伸び率の高い伸長紙を用いても成形が困難であり、多重皺ができて美観が損なわれたり、成形の途中で紙層が破断してしまったりする問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、紙を主素材とし、廃棄が容易であり、美観と成形性に優れ、汁漏れの生じない紙樹脂複合シート、紙樹脂複合一体成形容器およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明者は鋭意検討した結果、伸長紙を使用した紙樹脂複合一体成形容器が、成形の途中で紙層が破断してしまっても、その紙層を被覆している樹脂層は破れずに残っている場合が多いことが判明した。そのため、そのように破断しやすい部分の紙層に、予めミシン目、スリット、切り込みなど、強度を弱める弱化部を入れて樹脂層を被覆することで、破断を制御できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち、本発明は以下の構成からなる。
【0007】
(1)本発明の紙樹脂複合シートは、紙層の少なくとも一面に樹脂層を備え、前記紙層の強度を弱めて前記樹脂層の延伸変形を許容する弱化部が、前記紙層に形成されてなることを特徴とする。
(2)本発明の紙樹脂複合一体成形容器は、前述の紙樹脂複合シートからなる基部と、該基部から連続して一体的にプレス成形された前記紙樹脂複合シートからなる凹部とを有してなり、前記基部または前記凹部の少なくとも一部に前記弱化部が形成されてなることを特徴とする。
(3)本発明の紙樹脂複合一体成形容器においては、前記弱化部の形成位置を起点として、前記紙層の一部に破断部が形成され、この破断部を介して前記樹脂層が延伸されて前記凹部が形成されてなることが好ましい。
(4)本発明の紙樹脂複合一体成形容器においては、前記凹部は複数形成され、前記凹部の間に仕切り壁を有することが好ましい。
(5)本発明の紙樹脂複合一体成形容器においては、前記弱化部は、前記凹部の底面と壁面の境界部、及び/または基部と壁面の境界部に形成されていることが好ましい。
(6)本発明の紙樹脂複合一体成形容器においては、前記凹部の横断面の形状が略円型であり、前記壁面において前記凹部の中心から放射状に前記弱化部が形成されていることが好ましい。
(7)本発明の紙樹脂複合一体成形容器においては、前記凹部の横断面の形状が角型であり、前記壁面の角部に前記弱化部が形成されていることが好ましい。
(8)本発明の紙樹脂複合一体成形容器の製造方法は、紙層に強度を弱める弱化部を形成する工程と、
前記弱化部が形成された前記紙層の少なくとも一面に樹脂層を形成して複合シートとする工程と、
前記紙層と前記樹脂層を一体的にプレス成形して凹部を形成する工程と、を備え、
前記凹部を一体的にプレス成形して形成する工程において、前記凹部の底面と壁面の境界部、前記底面、前記壁面のいずれかに、前記弱化部を起点とする前記紙層の破断部を形成しつつ前記複合シートを延伸させて前記凹部を形成することを特徴とする。
(9)本発明の紙樹脂複合一体成形容器の製造方法は、紙層の少なくとも一面に樹脂層を形成する工程と、
前記樹脂層が形成された前記紙層に強度を弱める弱化部を形成する工程と、
前記紙層と前記樹脂層を一体的にプレス成形して凹部を形成する工程と、を備え、
前記凹部を一体的にプレス成形して形成する工程において、前記凹部の底面と壁面の境界部、前記底面、前記壁面のいずれかに、前記弱化部を起点とする前記紙層の破断部を形成しつつ前記複合シートを延伸させて前記凹部を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の紙樹脂複合シートによれば、紙層の少なくとも一面に樹脂層を備え、前記紙層の強度を弱めて前記樹脂層の延伸変形を許容する弱化部が、前記紙層に形成されてなることで、成形時の紙層の破断を和らげることができ、破断が生じても弱化部が入れられた箇所が優先的に破断するため美観を損ねることがなく、紙層の破断部分は樹脂層でカバーされているため、複合シートとしての破断無しに容器形状に成形することが可能である。そのため、伸びの小さい紙を用いることができ、破断する箇所を予め計算して配してあることで、仕切り壁のような過酷な延伸成形部分を持つ容器形状であっても一体成形が可能である。
【0009】
本発明の紙樹脂複合一体成形容器によれば、前述の紙樹脂複合シートからなる基部と、該基部から連続して一体的にプレス成形された前記紙樹脂複合シートからなる凹部とを有してなり、前記基部または前記凹部の少なくとも一部に前記弱化部が形成されてなることで、成形時の紙層の破断を和らげることができ、破断が生じても弱化部が入れられた箇所が優先的に破断するため美観を損ねることがなく、紙層の破断部分は樹脂層でカバーされているため、紙樹脂複合一体成形容器としての破断無しに容器形状に成形することが可能である。そのため、伸びの小さい紙を用いることができ、破断する箇所を予め計算して配してあることで、仕切り壁のような過酷な延伸成形部分を持つ容器形状であっても一体成形が可能であり、得られた容器は耐水性に優れ、樹脂層としてPET(ポリエチレンテレフタレート)やPP(ポリプロピレン)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)を用いれば、耐油性、耐熱性に優れた容器が得られ、電子レンジの使用も可能であり、特に耐熱性の高いPETやPBTは、オーブンレンジで使用することも可能である。
【0010】
また、本発明の紙樹脂複合一体成形容器によれば、前記弱化部の形成位置を起点として、前記紙層の一部に破断部が形成され、この破断部を介して前記樹脂層が延伸されて前記凹部が形成されてなることで、過酷な延伸成形部分に掛かる力を分散することができ、一体プレス成形時の破断をより和らげて、破断を制御する効果が高まる。
【0011】
また、本発明の紙樹脂複合一体成形容器によれば、前記凹部は複数形成され、前記凹部の間に仕切り壁を有することで、弁当用容器など複数の食材を収容するのに便利であり、十分な仕切りや高さを有する仕切り壁を設ければ、漏れた汁が隣り合う凹部に流れることなく、他の食材を汚す恐れもない。
【0012】
また、本発明の紙樹脂複合一体成形容器によれば、前記弱化部は、前記凹部の底面と壁面の境界部、及び/または基部と壁面の境界部に形成されていることで、破断しやすい境界部の紙層の強度が弱められているため、一体プレス成形時の破断を和らげることができる。また、破断が生じても弱化部が入れられた箇所が優先的に破断するため美観を損ねることがなく、紙層の破断部分は樹脂層でカバーされているため、基材としての破断無しに容器形状に成形することが可能である。
【0013】
また、本発明の紙樹脂複合一体成形容器によれば、前記凹部の横断面の形状が略円型であり、前記壁面において前記凹部の中心から放射状に前記弱化部が形成されていることで、破断しやすい壁面の紙層の強度が弱められているため、成形時の破断を和らげることができる。また、破断が生じても弱化部が入れられた箇所が優先的に破断するため美観を損ねることがなく、紙層の破断部分は樹脂層でカバーされているため、基材としての破断無しに略円型の容器形状に成形することが可能である。
【0014】
また、本発明の紙樹脂複合一体成形容器によれば、前記凹部の横断面の形状が角型であり、前記壁面の角部に前記弱化部が形成されていることで、破断しやすい角部の紙層の強度が弱められているため、成形時の破断を和らげることができる。また、破断が生じても弱化部が入れられた箇所が優先的に破断するため美観を損ねることがなく、紙層の破断部分は樹脂層でカバーされているため、基材としての破断無しに角型の容器形状に成形することが可能である。
【0015】
本発明の紙樹脂複合一体成形容器の製造方法によれば、紙層に強度を弱める弱化部を形成する工程と、前記弱化部が形成された前記紙層の少なくとも一面に樹脂層を形成して複合シートとする工程と、前記紙層と前記樹脂層を一体的にプレス成形して凹部を形成する工程と、を備え、前記凹部を一体的にプレス成形して形成する工程において、前記凹部の底面と壁面の境界部、前記底面、前記壁面のいずれかに、前記弱化部を起点とする前記紙層の破断部を形成しつつ前記複合シートを延伸させて前記凹部を形成することで、成形時の破断を和らげることができ、破断が生じても弱化部が入れられた箇所が優先的に破断するため美観を損ねることがなく、紙層の破断部分は樹脂層でカバーされているため、基材としての破断無しに容器形状に成形することが可能である。
【0016】
また、本発明の紙樹脂複合一体成形容器の製造方法によれば、紙層の少なくとも一面に樹脂層を形成する工程と、前記樹脂層が形成された前記紙層に強度を弱める弱化部を形成する工程と、前記紙層と前記樹脂層を一体的にプレス成形して凹部を形成する工程と、を備え、前記凹部を一体的にプレス成形して形成する工程において、前記凹部の底面と壁面の境界部、前記底面、前記壁面のいずれかに、前記弱化部を起点とする前記紙層の破断部を形成しつつ前記複合シートを延伸させて前記凹部を形成することで、成形時の破断を和らげることができ、破断が生じても弱化部が入れられた箇所が優先的に破断するため美観を損ねることがなく、紙層の破断部分は樹脂層でカバーされているため、基材としての破断無しに容器形状に成形することが可能である。
【0017】
上記のいずれの紙樹脂複合一体成形容器の製造方法においても、伸びの小さい紙を用いることができ、破断する箇所を予め計算して配してあることで、仕切り壁のような過酷な成形部分を持つ形状であっても一体プレス成形が可能である。得られた容器は耐水性に優れ、十分な仕切りや高さを有する仕切り壁を設ければ、漏れた汁が他の食材を汚す恐れもない。また、樹脂層としてPETやPP、PBTを用いれば、耐油性、耐熱性に優れた容器が得られ、電子レンジの使用も可能であり、特に耐熱性の高いPETやPBTでは、オーブンレンジで使用することも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1〜8に示すように、本発明の紙樹脂複合一体成形容器は、紙層の少なくとも一面に樹脂層を備え、前記紙層の強度を弱めて前記樹脂層の延伸変形を許容する弱化部が、前記紙層に形成されてなる紙樹脂複合シート(以下、複合シートと略す。)が用いられる。この複合シートからなる基部と、該基部から連続して一体的にプレス成形された前記複合シートからなる凹部とを有してなり、前記基部または前記凹部の少なくとも一部に前記弱化部が形成されてなることを特徴とする。
【0019】
<第1実施形態>
図1、2は、本発明の第1実施形態に係る紙樹脂複合一体成形容器(菓子トレー)1である。
図1、図2(A)、(B)に示すように、菓子トレー1は、紙層の少なくとも一面に樹脂層を備えた複合シートSからなり、外枠(基部)2が正方形で各辺の中央線で4等分する正方形領域の中に4個の凹部3,…が対称的に形成されている。各凹部3の横断面は円型であり、それぞれ底面4と壁面5を備え、底面4から上方に向かって横断面が広がるように、壁面5は少し傾斜を有して形成されている。底面4と壁面5との境界部には円形の弱化部6が形成され、壁面5には凹部3の中心から放射状に等間隔で、ミシン目、V字溝、罫線などからなる弱化部7,…が形成され、凹部3,…の間の壁面5,…と、その壁面5,…の間の上面によって、図2(A)に示すように平面視十字型で、図2(B)に示すように縦断面が逆V字型の仕切り壁8が形成されている。
【0020】
菓子トレー1が形成されている複合シートSは、図2(C)に示すように、紙層2aの内面に樹脂層2bを備えた複合素材からなり、これらの弱化部6,7,…は、紙層2aに形成され、樹脂層2bで被覆されている。また、図2(D)に示すように、紙層2aの外面に更に樹脂層2cが形成され、両面で被覆されていてもよい。
いずれの場合も、弱化部6,7,…は紙層2aのみに形成されており、弱化部6,7,…の破断部分は樹脂層2bまたは、樹脂層2b,2cによって被覆されている。
紙層の重量比は50%以上であることが好ましく、この範囲であると紙容器として表示できる。
【0021】
<第2実施形態>
図3は、本発明の第2実施形態に係る紙樹脂複合一体成形容器(菓子トレー)1Aである。
図3(A)に示すように、菓子トレー1Aは、紙層の少なくとも一面に樹脂層を備えた複合シートSからなり、外枠(基部)1aが長方形で長辺の3等分線と短辺の中央線で6等分する長方形領域の中に6個の凹部3A,…が格子状位置に形成されている。各凹部3Aの横断面は角型であり、それぞれ底面4Aと壁面5Aを備え、底面4Aから上方に向かって横断面が広がるように、壁面5Aは少し傾斜を有して形成されている。底面4Aと壁面5Aとの境界部には底面4Aの形状に相似な弱化部6Aが形成され、壁面5Aの角部には弱化部7A,…がそれぞれ形成され、凹部3A,…の間の壁面5A,…と、その壁面5A,…の間に挟まれる上面によって、図3(B)に示すように縦断面が逆V字型の仕切り壁8Aが形成されている。
【0022】
菓子トレー1Aが形成されている複合シートSは、図2(C)に示すように、紙層2aの内面に樹脂層2bを備えた複合素材からなり、これらの弱化部6A,7A,…は、紙層2aに形成され、樹脂層2bで被覆されている。また、図2(D)に示すように、紙層2aの外面に更に樹脂層2cが形成され、両面で被覆されていてもよい。
いずれの場合も、弱化部6A,7A,…は紙層2aのみに形成されており、弱化部6A,7A,…の破断部分は樹脂層2bまたは、樹脂層2b,2cによって被覆されている。
【0023】
<第3実施形態>
図4、5は、本発明の第3実施形態に係る紙樹脂複合一体成形容器(弁当用容器)11である。
図4(A)、図5(A)、(B)に示すように、弁当用容器11は、外枠(基部)11aが長方形でその長方形を十字で4分する領域の中に4個の凹部12,13,14,15が形成されている。各凹部12,13,14,15の横断面はそれぞれ形の大きさや形の異なる角型であり、それぞれに底面16,17,18,19と壁面20,21,22,23を備え、底面16,17,18,19から上方に向かって横断面が広がるように、壁面20,21,22,23は少し傾斜を有して形成されている。底面16,17,18,19と壁面20,21,22,23との境界部には底面16,17,18,19の形状に相似な弱化部24,25,26,27が形成され、壁面20,21,22,23の角部には、弱化部28,29,30,31が縦に形成され、凹部12,13,14,15の間の壁面20,21,22,23と、その壁面20,21,22,23の間の上面が、図5(A)に示すように平面視十字型で、図5(B)に示すように、縦断面が逆V字型の仕切り壁32が形成されている。
また、図4(B)に示すように、弁当用容器11と同じ形状からなる弁当用容器11Aにおいて、壁面の中央を分断するように、弱化部33,34,35,36が横線状に形成されていてもよい。
紙層が破断すると、その破断部分は樹脂のみとなり強度的には弱くなるが、このような部位に弱化部33,34,35,36を設けると、強い力が掛かった時に壁面20a,21a,22a,23aの中央部を意図的に破断させることができるため、弁当容器11Aとしての使用の際に力が集中する部位である底面16a,17a,18a,19aと壁面20a,21a,22a,23aの境界部や基部11bと壁面20a,21a,22a,23aの境界部の破断を防ぐことができ、弁当容器11Aとしての強度低下を最小限にすることができる。
【0024】
弁当用容器11,11Aは、第1実施形態と同様に紙層の少なくとも一面に樹脂層を備えた複合シートSからなり、図2(C)に示すように、紙層2aの内面に樹脂層2bが被覆されていてもよいし、図2(D)に示すように、紙層2aの外面に更に樹脂層2cが形成され、両面で被覆されていてもよい。
いずれの場合も、弱化部24〜36は紙層2aのみに形成されており、弱化部24〜36の破断部分は樹脂層2bまたは、樹脂層2b,2cによって被覆されている。
【0025】
<第4実施形態>
図6、7は、本発明の第4実施形態に係る紙樹脂複合一体成形容器(饅頭トレー)51である。
図6、図7(A)に示すように、饅頭トレー51は、紙層の少なくとも一面に樹脂層を備えた複合シートSからなり、外枠(基部)51aが正方形で各辺の3等分線で9等分する正方形領域の中に9個の凹部53,…が格子状に形成されている。各凹部53の横断面は角型であり、それぞれ底面54と壁面55を備え、底面54から上方に向かって横断面が広がるように、壁面55は少し傾斜を有して形成されている。底面54と壁面55との境界部には底面54の形状に相似な弱化部56が形成され、壁面55の角部には弱化部57,…がそれぞれ形成され、凹部53,…の間の壁面55,…と、その壁面55,…の間に挟まれる上面によって、図7(A)に示すように平面視格子状で、図7(B)に示すように縦断面が饅頭トレー51の高さよりも浅い逆V字型の仕切り壁58が形成されている。
【0026】
菓子トレー51が形成されている複合シートSは、図2(C)に示すように、紙層2aの内面に樹脂層2bを備えた複合素材からなり、これらの弱化部56,57,…は、紙層2aに形成され、樹脂層2bで被覆されている。また、図2(D)に示すように、紙層2aの外面に更に樹脂層2cが形成され、両面で被覆されていてもよい。
いずれの場合も、弱化部56,57,…は紙層2aのみに形成されており、弱化部56,57,…の破断部分は樹脂層2bまたは、樹脂層2b,2cによって被覆されている。
【0027】
<第5実施形態>
図8は、本発明の第5実施形態に係る紙樹脂複合一体成形容器(コップ)61である。
図8に示すように、コップ61は、紙層の少なくとも一面に樹脂層を備えた複合シートSからなり、円筒型の壁面65と円型の底面(基部)64とから形成された凹部63を有している。底面64と壁面65との境界部には円形の弱化部66が形成され、壁面65には縦に弱化部67が形成されている。
【0028】
コップ61が形成されている複合シートSは、図2(C)に示すように、紙層2aの内面に樹脂層2bを備えた複合素材からなり、これらの弱化部66,67は、紙層2aに形成され、樹脂層2bで被覆されている。また、図2(D)に示すように、紙層2aの外面に更に樹脂層2cが形成され、両面で被覆されていてもよい。
いずれの場合も、弱化部66,67は紙層2aのみに形成されており、弱化部66,67の破断部分は樹脂層2bまたは、樹脂層2b,2cによって被覆されている。
【0029】
以下に、第1〜5実施形態に共通な点について説明する。
「弱化部」
弱化部の形状は、ミシン目、スリット、切り込み、罫線など、弱化部における紙層の強度が他の部分よりも弱くなる形状であればよく、特に限定されない。例えば、図9に示すように、容器を構成する各パーツの紙層70,71,…が完全に分断されて、1枚の樹脂層72に紙層70,71,…が張り合わされた複合シートS´を、絞り加工などによって容器形状に形成されたものでもよい。
弱化部の形成箇所は容器や凹部の形状に合わせて、過酷な成形部分に形成されていればよく、1箇所でも複数個所でもよいし、部位も特に限定されない。例えば、容器形状を成す凹部の底面と壁面の境界部など、破断しやすい部分に形成されていることが好ましい。
このように弱化部を形成することで、成形時の破断を和らげることができ、破断が生じても弱化部が入れられた箇所が優先的に破断するため美観を損ねることがなく、紙層の破断部分は樹脂層でカバーされているため、基材としての破断無しに容器形状に成形することが可能である。そのため、伸びの小さい紙を用いることができ、破断する箇所を予め計算して配してあることで、仕切り壁のような過酷な成形部分を持つ形状であっても一体成形が可能である。
【0030】
「容器形状」
容器の形状は特に限定されないが、図1、2に示した略円型、図3に示した角型、図4、5に示した異形混合型など、図6、7に示した格子状型など、一般的な容器形状に形成されていればよい。
本発明は、主として弁当用容器や菓子・食品の包装などの用途に利用されるため、凹部は2個以上形成され、凹部の間に仕切り壁を有することが好ましく、凹部が3個以上形成されているとより好ましい。このようにすることで、弁当用容器など複数の食材を収容するのに便利であり、十分な仕切りや高さを有する仕切り壁を設ければ、漏れた汁が隣り合う凹部に流れることなく、他の食材を汚す恐れもない。
ただし、凹部は1つだけの容器であってもよいし、図8に示すように、円筒型などの縦長形状であってもよい。
【0031】
「仕切り壁」
仕切り壁の角度は、60〜90°の範囲に形成されていることが好ましい。仕切り壁の角度が60°未満であると、浅い皿状に近くなるため高さが十分に形成されず、90°を超えると開口部より壁面のほうが広がる形状となり成形が困難である。
仕切り壁の高さは、周辺壁の30〜150%の範囲が好ましい。仕切り壁の高さが、周辺壁の30%未満であると、漏れた汁が隣り合う凹部に流れやすく他の食材を汚す恐れがある。また、仕切り壁の高さが、150%を超えると、周辺壁より高くなり過ぎて成形が困難である。
【0032】
「紙」
紙層に用いられる紙の種類は特に限定されない。具体的には、上質紙、薄用紙、クラフト紙、コート紙、板紙、ダンボール紙、和紙などを用いることができる。
坪量は30〜500g/mが好ましく、より好ましくは80〜360g/mである。坪量が30g/m未満では薄すぎて容器の強度が不十分であり、500g/mを超えては紙が厚すぎて成形が困難である。
樹脂層からなるフィルムとのバランスは、例えば、坪量150g/mに対して、フィルム厚10〜40μm、好ましくは15〜30μm程度にすればよい。
【0033】
「樹脂」
樹脂層に用いられる樹脂は、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)等のうちから選べるが、特に成形性や、耐熱、耐油性などの観点からPP、PET、PBTが好ましく、一般にプレス加工に使用される金型は50〜150℃なので、これらフィルムは溶けることはない。更に、220〜230℃まで耐熱性があるPETやPBTがより好ましい。
樹脂層はフィルムでも押出ラミネートでもよく、特に限定されるものではない。
樹脂層は紙層の一面もしくは両面に形成され、トータルでフィルム厚20〜100μmの範囲が好ましい。フィルム厚が20μm未満では薄すぎて紙破断部の形状維持が難しく、100μmを超えても得られる効果に差が無い。
このような樹脂層を備えた容器は耐水性に優れる。樹脂層としてPETやPP、PBTを用いれば、耐油性、耐熱性に優れた容器が得られ、電子レンジの使用も可能であり、特に耐熱性の高いPETやPBTは、オーブンレンジで使用することも可能である。
【0034】
「成形方法」
以上説明した第1〜5実施形態に係る紙樹脂複合一体成形容器の成形方法は、特に限定されないが、主としてプレス成形により成形することができる。
続いて、本発明の紙樹脂複合一体成形容器の製造方法について説明する。
【0035】
本発明に係る紙樹脂複合一体成形容器の製造方法は、紙層に強度を弱める弱化部を形成する工程と、前記弱化部が形成された前記紙層の少なくとも一面に樹脂層を形成して複合シートとする工程と、前記紙層と前記樹脂層を一体的にプレス成形して凹部を形成する工程と、から概略構成されている。
また、本発明の紙樹脂複合一体成形容器の製造方法は、紙層の少なくとも一面に樹脂層を形成してから、紙層に強度を弱める弱化部を形成し、紙層と樹脂層を一体延伸成形して凹部を形成する工程を行なってもよい。
【0036】
凹部を形成する工程は、例えば図10に示すようなプレス加工装置100を用いる。
プレス加工装置100は、複合シートSを挟み込み、容器形状の内側からプレスする型101と、底面の外側をプレスする型102と、型102の更に外側からプレスする型103と、型101を載せる型取付け台104と、容器形状の外周部内側からプレスする型105と、外周部をプレスする型106と、複合シートSの外周を囲む突出部107と、型105を載せる台108と、台108に取付けられたピストン109と、から概略構成されている。
これらの型101,102,103,105,106の間に複合シートSを挟み込みプレスすると、図11(a)に示すような平面形状に、図11(b)に示すような凹部を備えた形状を形成することができる。このとき、凹部の底面と壁面の境界部、底面、壁面のいずれかに、弱化部を起点とする紙層の破断部を形成しつつ複合シートSを延伸させて凹部を形成する。
【0037】
このように加工することで、成形時の破断を和らげることができ、破断が生じても弱化部が入れられた箇所が優先的に破断するため美観を損ねることがなく、紙層の破断部分は樹脂層でカバーされているため、基材としての破断無しに容器形状に成形することが可能である。そのため、伸びの小さい紙を用いることができ、破断する箇所を予め計算して配してあることで、仕切り壁のような過酷な成形部分を持つ形状であっても一体成形が可能である。
【0038】
仕上げに、ピストン109で突出部107の金型部位を操作することで、図11(d)に示すように成形し、更に外周部S1を丸めて成形することができる。
また、プレス加工の際に、加工しやすいように複合シートSにワックスなどを塗布しておいてもよい。
このようにして得られた容器は耐水性に優れ、十分な仕切りや高さを有する仕切り壁を設ければ、漏れた汁が他の食材を汚す恐れもない。また、樹脂層としてPETやPP、PBTを用いれば、耐油性、耐熱性に優れた容器が得られ、電子レンジの使用も可能であり、特に耐熱性の高いPETやPBTであれば、オーブンレンジで使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る紙樹脂複合一体成形容器の斜視図である。
【図2】図2(A)は図1に示した紙樹脂複合一体成形容器の平面図、図2(B)は断面図であり、図2(C)、(D)は複合シートの断面図を示す。
【図3】図3(A)は、本発明の第2実施形態に係る紙樹脂複合一体成形容器の平面図、図3(B)は断面図である。
【図4】図4は、本発明の第3実施形態に係る紙樹脂複合一体成形容器の斜視図である。
【図5】図5(A)は図4に示した紙樹脂複合一体成形容器の平面図、図5(B)は断面図である。
【図6】図6は、本発明の第4実施形態に係る紙樹脂複合一体成形容器の斜視図である。
【図7】図7(A)は図6に示した紙樹脂複合一体成形容器の平面図、図7(B)は断面図である。
【図8】図8は、本発明の第5実施形態に係る紙樹脂複合一体成形容器を上下逆にし、底面からみた斜視図である。
【図9】図9は、成形前の複合シートの一例を示す。
【図10】図10は、プレス加工装置の模式図を示す。
【図11】図11は、本発明に係る紙樹脂複合一体成形容器の製造方法を説明する断面工程図である。
【符号の説明】
【0040】
1,1A,11,51,61…紙樹脂複合一体成形容器、3,3A,12,13,14,15,53,63…凹部、4,4A,16,17,18,19,16a,17a,18a,19a,54,64…底面、5,5A,20,21,22,23,20a,21a,22a,23a,55,65…壁面、6,7,6A,7A,24,25,26,27,28,29,30,31,33,34,35,36,56,57,66,67,70,71…弱化部、8,8A,18,58…仕切り壁、2,1a,11a,11b,51a…基部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙層の少なくとも一面に樹脂層を備え、前記紙層の強度を弱めて前記樹脂層の延伸変形を許容する弱化部が、前記紙層に形成されてなることを特徴とする紙樹脂複合シート。
【請求項2】
請求項1記載の紙樹脂複合シートからなる基部と、該基部から連続して一体的にプレス成形された前記紙樹脂複合シートからなる凹部とを有してなり、前記基部または前記凹部の少なくとも一部に前記弱化部が形成されてなることを特徴とする紙樹脂複合一体成形容器。
【請求項3】
前記弱化部の形成位置を起点として、前記紙層の一部に破断部が形成され、この破断部を介して前記樹脂層が延伸されて前記凹部が形成されてなることを特徴とする請求項2記載の紙樹脂複合一体成形容器。
【請求項4】
前記凹部は複数形成され、前記凹部の間に仕切り壁を有することを特徴とする請求項2または3に記載の紙樹脂複合一体成形容器。
【請求項5】
前記弱化部は、前記凹部の底面と壁面の境界部、及び/または基部と壁面の境界部に形成されていることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の紙樹脂複合一体成形容器。
【請求項6】
前記弱化部の横断面の形状が略円型であり、前記壁面において前記凹部の中心から放射状に前記弱化部が形成されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の紙樹脂複合一体成形容器。
【請求項7】
前記弱化部の横断面の形状が角型であり、前記壁面の角部に前記弱化部が形成されていることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の紙樹脂複合一体成形容器。
【請求項8】
紙層に強度を弱める弱化部を形成する工程と、
前記弱化部が形成された前記紙層の少なくとも一面に樹脂層を形成して紙樹脂複合シートとする工程と、
前記紙層と前記樹脂層を一体的にプレス成形して凹部を形成する工程と、を備え、
前記凹部を一体的にプレス成形して形成する工程において、前記凹部の底面と壁面の境界部、前記底面、前記壁面のいずれかに、前記弱化部を起点とする前記紙層の破断部を形成しつつ前記紙樹脂複合シートを延伸させて前記凹部を形成することを特徴とする紙樹脂複合一体成形容器の製造方法。
【請求項9】
紙層の少なくとも一面に樹脂層を形成して紙樹脂複合シートとする工程と、
前記樹脂層が形成された前記紙層に強度を弱める弱化部を形成する工程と、
前記紙層と前記樹脂層を一体的にプレス成形して凹部を形成する工程と、を備え、
前記凹部を一体的にプレス成形して形成する工程において、前記凹部の底面と壁面の境界部、前記底面、前記壁面のいずれかに、前記弱化部を起点とする前記紙層の破断部を形成しつつ前記紙樹脂複合シートを延伸させて前記凹部を形成することを特徴とする紙樹脂複合一体成形容器の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−35309(P2009−35309A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−202118(P2007−202118)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(000176707)三菱アルミニウム株式会社 (446)
【Fターム(参考)】