説明

紙箱ブランクス圧着補助部材及びその使用方法

【課題】圧着搬送の工程での連続して搬送される紙箱の特に先頭部分と最後尾の部分における糊剥がれによる接着不良品の発生を効果的に抑制し、紙箱の成形において圧着搬送時の圧不足による接着不良の発生による品質ロスの要因の除去が出来るようにする。
【解決手段】紙箱ブランクスの圧着搬送コンベアの工程で用いられる補助部材であって、弾力性のある材料からなり、搬送される折り畳まれた状態の紙箱の寸法以上の矩形の外寸を有し、前方の厚みが後方の厚みと異なることを特徴とする紙箱ブランクス圧着補助部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙箱ブランクスの成形における圧着ベルトでの圧着に用いる補助部材及びその使用方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙容器は食品を中心に広く使われている容器である。内容物使用後、簡単に折り畳むことができ、焼却可能なので広い範囲で使用されるようになっている。
従来、紙箱等の罫線により折曲げ形成する紙容器には、容器内部に保存される内容物の性質や保存状況に応じて、紙あるいは紙を基材とした積層体が使用されている。そして、この紙あるいは積層体を容器の形状に合わせて所定の形状に打ち抜き、同時に折曲げ用の罫線を入れたブランクスとして成形する。そのブランクスを罫線に沿って折曲げ、組み立てて必要な部分を接着することによって紙容器が製造されている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
紙箱ブランクスの容器への成形は、図1にブロックダイアグラムで示したように、通常ブランクスの搬送上流側から順に、給紙部、折りぐせ部、底折り部、糊付け部、本折り部、圧着搬送部及び前とり部を配設して構成されている製函機を用いて行われる(たとえば特許文献2参照)。
【0004】
一般的な紙箱ブランクスを折り曲げて箱を形成する場合には、まず、ブランクスを給紙部(A)から折りぐせ部(B)に供給して折ぐせを付けた後、底折り部(C)に供給して底板を内側に折込んで側板に重ねると共に、耳部を外側に折込む。
次に、糊付け部(D)において、耳部の裏面側と側板フラップの表面側に接着材層をそれぞれ形成した後、残りの底板を内側に折り曲げて側板に重ねる。
【0005】
次に、本折り部(E)において、側板を折込んで一方の底板を他方の底板に折り重ねることにより、一方の底板の耳部の接着材層が他方の底板に接着すると共に、側板フラップの接着材層が側板に接着し、折り畳まれた状態の紙箱を完成する。
この状態での紙箱は接着部分の乾燥が完了していないので、圧着搬送部(F)の上下一対の圧着ベルトにて紙箱を圧着しながら搬送して紙箱の接着を促進して成形を完了し、前とり部(G)でコンベアから流れてくる折り畳まれた状態の紙箱を作業者がダンボールに定数づつ詰めて次工程に流される。次工程ではこれに内容物の充填と蓋閉めを行い製品とするがこの工程は得意先や外部業者が行うことが多い。
【0006】
この圧着搬送の工程では、折り畳まれた状態の紙箱が前後に連続して重なりながら搬送されるために圧着ベルトによる接着剤層への圧力は前後の重なった紙箱の厚みを介してそれぞれの紙箱に付加される。
図2には従来の圧着搬送の工程の一例の断面模式図を示した。
【0007】
圧着搬送部(1)では本折り装置から移送されてきた接着部分の乾燥が完了していない状態で折り畳まれた状態の紙箱(10)を上部圧着ベルト(4)と下部圧着ベルト(5)の間で加圧しながら連続して挟みこんだまま給紙側(8)から排出側(9)の方向へ圧着搬送する。図2の上下の白抜き矢印は圧着ベルトの移動方向を示し、圧着ベルト間の白抜き矢印は折り畳まれた状態の紙箱の搬送方向を示している。
【0008】
上部と下部の圧着ベルトはそれぞれ上部圧着コンベア(2)と下部圧着コンベア(3)に掛けられてプーリーの回転により移動するようになっており、下部圧着ベルトはエアシ
リンダにより上下に昇降する下部ロール(7)によって上下方向に動いて紙箱(10)に上下方向の圧力を加えながら搬送する機構になっている。
【0009】
紙箱に掛かる上下方向の圧力は、前後に連続して重なりながら搬送されている状態では、上下に重なった紙箱の厚みを介して伝達されるために先頭部分(f)と後尾部分(b)を除けばほぼ一定になっている。しかしながら、先頭部分と後尾部分に於いては重なった紙箱の厚みが減少する部分があるために上記圧力は一定にはならない。
【0010】
このために連続して搬送される紙箱の特に先頭部分と最後尾の部分に於いては前後の紙箱が少ない部分があるために前記の圧力が不足して糊剥がれによる接着不良品の発生がたびたび見られ、圧不足による不良の発生は40枚以上にのぼることがあり、品質ロスの大きな要因として改善が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−223627号公報
【特許文献2】特開平10−128873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
紙箱の成形において圧着搬送時の圧不足による接着不良の発生を防止する紙箱ブランクス圧着補助部材及びその使用方法を提供することが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の請求項1に係る発明は、紙箱ブランクスの圧着搬送コンベアの工程で用いられる補助部材であって、弾力性のある材料からなり、搬送される折り畳まれた状態の紙箱の寸法以上の矩形の外寸を有し、先頭の厚みが後尾の厚みと異なることを特徴とする紙箱ブランクス圧着補助部材である。
【0014】
本発明の請求項2に係る発明は、弾力性のある材料が内側層と外側層の二層からなり、外側層が圧着搬送コンベアのベルトと同じ材質であることを特徴とする請求項1に記載の紙箱ブランクス圧着補助部材である。
【0015】
本発明の請求項3に係る発明は、弾力性のある材料の先頭端部と後尾端部とが横から見て斜めにカットされた形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の紙箱ブランクス圧着補助部材である。
【0016】
本発明の請求項4に係る発明は、圧着搬送コンベアで搬送される折り畳まれた状態の紙箱の連続した重なりの最上流側と最下流側に請求項1から3のいずれか1項に記載の紙箱ブランクス圧着補助部材を配置したことを特徴とする紙箱ブランクス圧着補助部材の使用方法である。
【0017】
本発明の請求項5に係る発明は、最上流側と最下流側に配置した紙箱ブランクス圧着補助部材が同一構造の部材を前後反転させたものであることを特徴とする請求項4に記載の紙箱ブランクス圧着補助部材の使用方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の請求項1に係る発明によると、弾力性のある材料からなり、搬送される折り畳まれた状態の紙箱の寸法以上の矩形の外寸を有し、前方の厚みが後方の厚みと異なることを特徴とする紙箱ブランクス圧着補助部材であるために、折り畳まれた状態の紙箱の連続
した重なりの列の必要な場所にはさみこむことによって圧着搬送コンベアからの圧力を前後の位置で調整することが可能になる。この時に該補助部材の外寸が搬送される折り畳まれた状態の紙箱の外寸より大きな矩形の外寸であるために、使用時にはさみ込む位置が狂っても圧力調整に影響することが少なくなる。
【0019】
本発明の請求項2に係る発明によると、弾力性のある材料が内側層と外側層の二層からなるので、適切な厚みで希望の弾力性を得ることが容易であり、部材の表面の特性と全体の弾力性を自由に設計することが出来る。
さらに、搬送される折り畳まれた状態の紙箱に接する外側層が圧着搬送コンベアのベルトと同じ材質であることによって加圧接触による摩擦抵抗で製品に不都合な傷や型が入ることを防止出来る。
【0020】
本発明の請求項3に係る発明によると、弾力性のある材料の先頭端部と後尾端部とが横から見て斜めにカットされた形状であることで、搬送される折り畳まれた状態の紙箱の列の前後に斜めに配置する時にフィットしやすく部材の厚みによる段差の影響を最小限に抑えることが出来る。
【0021】
本発明の請求項4に係る発明によると、圧着搬送コンベアで搬送される折り畳まれた状態の紙箱の連続した重なりの最上流側と最下流側に紙箱ブランクス圧着補助部材を配置したことによって、圧着ムラによる接着不良の最も起き易い、すなわち圧不足の起き易い上流端側と下流端側の圧力不足を補うことで品質ロスを抑えることが可能になった。
【0022】
本発明の請求項5に係る発明によると、最上流側と最下流側に配置した紙箱ブランクス圧着補助部材として同一構造の二つの部材を前後反転させた方向で使用することによって部材の種類と数を増やすことなく、かつ種類が多いことによる間違いも起こりにくい安価で確実な紙箱ブランクス圧着補助部材の使用方法を提供できる。
【0023】
このようにして、圧着搬送の工程での連続して搬送される紙箱の特に先頭部分と最後尾の部分における糊剥がれによる接着不良品の発生を効果的に抑制することが出来るようになった。その結果、紙箱の成形において圧着搬送時の圧不足のための接着不良の発生による品質ロスの要因の除去が出来るようになった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】紙箱ブランクスから容器への成形を行う製函機の構成例。
【図2】従来の圧着搬送工程を示す断面模式図。
【図3】本発明の圧着補助部材を用いた圧着搬送工程を示す断面模式図。
【図4】本発明の圧着補助部材の一例の断面模式図。(1)は使用状態の断面を(2)は圧着補助部材の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の紙箱ブランクス圧着補助部材とその使用方法の一実施形態について、必要に応じて図面を参照して説明する。
図4は本発明の圧着補助部材の一例の拡大模式図である。図4の(1)は使用時の状態を示す断面模式図であり、図4の(2)は部材の構造を示す(1)の拡大模式図である。
【0026】
本発明の圧着補助部材(11)は弾力性のある材料からなり、搬送される折り畳まれた状態の紙箱の寸法以上の矩形の外寸を有し、先頭の厚みが後尾の厚みと異なる紙箱ブランクス圧着補助部材である。
【0027】
この部材(11)はクッション性のある板状のゴム等からなる内側層(12)と圧着搬
送ベルトの表面と同じ材料からなるシート状の外側層(13)により構成され、先頭側厚み(Df)が後尾側厚み(Db)よりも大きくなっている部材である。なお、部材としての先頭側と後尾側の区別は説明の便宜上の区別であり、部材の使用時には同一の部材を先頭側の位置と後尾側の位置とで前後を反転して用いればよく部材として前後の区別は必要がない。
【0028】
部材の先頭側厚み(Df)が後尾側厚み(Db)よりも大きくなっていることによって、図4の(1)に示した使用時の状態では、折り畳まれた状態の紙箱(10)の先頭側の端部に厚みの厚い側を先頭側にして外側層の段差のない部分を下側にして配置する(11f)と列の先頭部分(f)に位置する紙箱の圧着搬送時の圧不足による接着不良を防止することが出来る。
【0029】
また、同様に先頭側厚みが後尾側厚みよりも小さくなっている部材を用いて、折り畳まれた状態の紙箱(10)の後尾側の端部に厚みの厚い側を後尾側にして外側層の段差のない部分を上側にして配置する(11b)と列の後尾部分(b)に位置する紙箱の圧着搬送時の圧不足による接着不良を防止することが出来る。
【0030】
図4の(2)に示したように弾力性のある材料が内側層(12)と外側層(13)の二層からなり、外側層が図4の(1)に示した圧着搬送コンベアの上部圧着ベルト(4)、下部圧着ベルト(5)と同じ材質であることで搬送中の折り畳まれた状態の紙箱に加圧接触した場合でも製品面との摩擦抵抗で紙箱面に補助部品の型等の跡が残ることが少なくなる。
【0031】
内側層(12)の表面に外側層(13)を巻きつけて接着した状態で、使用時に紙箱面に接触する面は段差のない平面とし、接触しない面には段差をつけても構わない。
図4では段差のある面には外側層の端部が接着されている状態を示したが、折り畳まれた紙箱に接触しない面には外側層があってもなくても構わない。
【0032】
さらに、圧着搬送中にこの補助部材の型等の跡が紙箱につくことをより確実に防止するためには図4に示したように補助部材の先頭側と後尾側の端部に、使用時に圧着ベルトと平行に近い方向になる角度での斜めのカット部(14)、(15)を設けることが望ましい。
なお、図4ではカットされた内側層(12)のカット面を含めて外側層(13)を巻きつけた場合が示されているが、カットする前に内側層に外側層を巻きつけて後からカットしても構わない。
【0033】
本発明の紙箱ブランクス圧着補助部材に用いる内側層(12)としては、硬度60度のSBRの板で7mm前後の適切な厚みのものを単体であるいは重ねて使用するのが代表的であるが必要な弾性があればこれらには限られない。
また、外側層(13)としては、NBR等の一般的なゴム材で厚み3mm前後のものが好適に用いられる。
この場合は、圧着ベルト(4)、(5)の表面に用いられている材料と同じ材質であることが望ましい。
【0034】
次に本発明の紙箱ブランクス圧着補助部材の使用方法について説明する。
この圧着搬送の工程では、折り畳まれた状態の紙箱が前後に連続して重なりながら搬送されるために上下の圧着ベルトによる紙箱の接着剤層への圧力は前後の重なった紙箱の厚みを介して付加される。
図3には本発明の圧着補助部材を用いた圧着搬送工程を示す断面模式図を示した。
【0035】
圧着搬送部(1)では本折り装置から移送されてきた、接着部分の乾燥が完了していない状態で折り畳まれた状態の紙箱(10)を上部圧着ベルト(4)と下部圧着ベルト(5)の間で上下から加圧しながら連続して挟みこんだまま給紙側(8)から排出側(9)の方向へ圧着搬送する。
図3の上下の白抜き矢印は圧着ベルトの移動方向を示し、圧着ベルト間の白抜き矢印は折り畳まれた状態の紙箱の搬送方向を示している。
【0036】
上部と下部の圧着ベルト(4)、(5)はそれぞれ上部圧着コンベア(2)と下部圧着コンベア(3)に掛けられてプーリーの回転により移動するようになっており、下部圧着ベルトはエアシリンダによって上下に昇降する下部ロール(7)により上方向に動いて押し付けられ折り畳まれた状態の紙箱(10)に上下方向の圧力を加えながら搬送する機構になっている。
【0037】
このような圧着搬送部に於いて、本発明の紙箱ブランクス圧着補助部材を、前後に連続して重なりながら搬送されている状態の折り畳まれた紙箱の列の先頭部分(11f)と後尾部分(11b)に追加配置することによって、紙箱に掛かる上下方向の圧力は、上下に重なった紙箱の厚みが少ない先頭部分(f)と後尾部分(b)を含めてほぼ一定にすることが出来る。
【0038】
このために本発明の紙箱ブランクス圧着補助部材を用いることによって、連続して搬送される紙箱の特に先頭部分と最後尾の部分に於いて、従来見られた前後の紙箱が少ない部分があるために圧着搬送中の圧力が不足して起こる糊剥がれによる接着不良品の発生がなくなり品質ロスの大きな要因を取り除くことが出来た。
【0039】
また、最上流側と最下流側に配置した紙箱ブランクス圧着補助部材(11f)、(11b)として同一構造の部材(11)を前後反転させたものを使用することによってより簡単に先頭部分と後尾部分の不良発生を防止することが出来るだけでなく、作業の連続する時間によっては、一連の作業の中で先頭部分で使用した部材を取り出して上下を反転して後尾部分に使用することが出来る場合もあり、このような使い方によってより効率的に部材を使用出来るという効果も付加することが出来る。
【符号の説明】
【0040】
A…給紙部
B…折りくせ部
C…底折り部
D…糊つけ部
E…本折り部
F…圧着搬送部
G…前とり部
1…圧着搬送部
2…上部圧着搬送コンベア
3…下部圧着搬送コンベア
4…上部圧着ベルト
5…下部圧着ベルト
6…上部ロール
7…下部ロール
8…給紙側
9…排出側
10…折り畳まれた状態の紙箱
11f…先頭側補助部品
11b…後尾側補助部品
12…内側層
13…外側層
14…カット部分
15…カット部分
Df…先頭側厚み
Db…後尾側厚み
f…先頭側
b…後尾側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙箱ブランクスの圧着搬送コンベアの工程で用いられる補助部材であって、弾力性のある材料からなり、搬送される折り畳まれた状態の紙箱の寸法以上の矩形の外寸を有し、先頭の厚みが後尾の厚みと異なることを特徴とする紙箱ブランクス圧着補助部材。
【請求項2】
弾力性のある材料が内側層と外側層の二層からなり、外側層が圧着搬送コンベアのベルトと同じ材質であることを特徴とする請求項1に記載の紙箱ブランクス圧着補助部材。
【請求項3】
弾力性のある材料の先頭端部と後尾端部とが横から見て斜めにカットされた形状であることを特徴とする請求項1または2に記載の紙箱ブランクス圧着補助部材。
【請求項4】
圧着搬送コンベアで搬送される折り畳まれた状態の紙箱の連続した重なりの最上流側と最下流側に請求項1から3のいずれか1項に記載の紙箱ブランクス圧着補助部材を配置したことを特徴とする紙箱ブランクス圧着補助部材の使用方法。
【請求項5】
最上流側と最下流側に配置した紙箱ブランクス圧着補助部材が同一構造の部材を前後反転させたものであることを特徴とする請求項4に記載の紙箱ブランクス圧着補助部材の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−218690(P2011−218690A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−91216(P2010−91216)
【出願日】平成22年4月12日(2010.4.12)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】