説明

紙葉類の取出し装置およびこれを備える紙葉類処理装置

【課題】紙葉類の多重取りを抑制し、紙葉類を安定して取出すことのできる紙葉類の取出し装置および紙葉類処理装置を提供する。
【解決手段】実施形態によれば、紙葉類の取出し装置は、複数枚重ねて載置された紙葉類をその重ね方向に移動させて移動方向先端にある紙葉類を取出し位置へ供給する供給機構2と、取出し位置に供給された紙葉類を前記投入部から1枚ずつ取出す取出し機構56と、紙葉類の形態を検出する検出器122と、を備えている。取出し機構は、取出し位置にある紙葉類を取出す取出し部材79と、取出し部材を通して吸気し前記紙葉類を取出し部材に吸着する空気吸引源61と、取出し部材と空気吸引源との間に設けられ吸着力を調整するバルブ装置300と、検出器により検出された紙葉類の形態に応じて、吸着時の吸着力を前記バルブ装置により変更する制御部と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明の実施形態は、郵便物等の集積された紙葉類を1枚ずつ取出して送り出す紙葉類の取出し装置、およびこれを備える紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハガキ、封書などの郵便物を扱う郵便物処理機などの紙葉類処理装置は、例えば、取出し装置、判別装置(OCR)、集積装置、リジェクト(RJ)集積装置、スイッチバック装置、各装置間を結ぶ搬送路、搬送されてきた紙葉類(郵便物)を各装置に振り分けるゲート等を備えている。取出し装置の供給部にセットした複数枚の紙葉類は、取出し装置にて1枚1枚に分離して取出され、判別装置に送られる。判別装置は、紙葉類の判別し、紙葉類の行き先、例えば、RJ集積装置あるいは集積装置を決定する。その後、紙葉類は、搬送路、ゲート機構を通じて、決定された装置へ搬送され、この装置内で各種処理が行われる。
【0003】
紙葉類処理装置の取出し装置としては、負圧により紙葉類を吸着して取出す吸着取出し方式の取出し装置が提供されている。この取出し装置は、穴開きベルト、エアーチャンバ、バルブ装置を用いて紙葉類を吸着するエアー吸着構造を有し、バルブ装置により1枚ごとに吸着をON−OFFすることにより、供給部で送られてきた紙葉類を1枚ずつ取出すことを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−258182号公報
【特許文献2】特開2008−280139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなエアー吸着構造を用いた紙葉類の取出し装置では、通常の書状を取出す場合に比較して、例えば、薄くて透気しやすい書状を取出す場合においては、取出すべき書状の次の2枚目の書状までエアー吸着影響が及び易く、多重取出しの可能性が高まってしまう。すなわち、本来、取出すべき1枚目の書状だけでなく、次の2枚目の書状までエアー吸着影響が及ぶ可能性があり、1枚目が取出されるのと同時に2枚目も付いていく等、多重取出しの可能性が高まってしまう。
【0006】
また、通常の書状よりも小さい書状、つまり、取出し方向に対して短い書状、を取出す場合、エアー吸着機構のエアーが切れる前に1枚目の書状が前に抜けていくため、次の書状へのエアー吸着影響が及ぶ。すなわち、通常の長さの書状であれば、取出された前の書状が所定の位置まで到達し、エアー吸着が切れた後に、2枚目の書状が吸着位置に面するようになるので問題ない。しかし、短い書状の場合、所定の位置に到達した時点で、次に来る2枚目の書状がエアー吸着され前に送り出されている可能性がある。つまり、多重取出しの可能性が高まる。
【0007】
この発明は以上の点に鑑みなされたもので、その課題は、多重取り出しを低減し、安定した紙葉類の取出しが可能な紙葉類の取り出し装置およびこれを備える紙葉類処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態によれば、紙葉類の取出し装置は、複数枚重ねて載置された紙葉類をその重ね方向に移動させて移動方向先端にある紙葉類を取出し位置へ供給する供給機構と、前記取出し位置に供給された紙葉類を前記投入部から1枚ずつ取出す取出し機構と、前記紙葉類の形態を検出する検出器と、を備え、
前記取出し機構は、前記取出し位置にある紙葉類を取出す取出し部材と、前記取出し部材を通して吸気し前記紙葉類を取出し部材に吸着する空気吸引源と、前記取出し部材と空気吸引源との間に設けられ吸着力を調整するバルブ装置と、前記検出器により検出された紙葉類の形態に応じて、吸着時の吸着力を前記バルブ装置により変更する制御部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施形態に係る郵便物処理装置を概略的に示すブロック図。
【図2】図2は、前記郵便物処理装置の取出し装置を示す平面図。
【図3】図3は、前記取出し装置の投入部を示す斜視図
【図4】図4は、前記取出し装置の取出しベルトおよびガイドを示す斜視図。
【図5】図5は、前記ガイドを示す斜視図。
【図6】図6は、前記取出し装置のバルブ装置を示す側面図。
【図7】図7は、前記バルブ装置を拡大して示す断面図。
【図8】図8は、前記バルブ装置の正面図。
【図9】図9は、前記バルブ装置の対向板および遮蔽板を示す正面図。
【図10】図10は、前記バルブ装置において、通常モードでの吸気オンおよび吸気オフにおける対向板および遮蔽板を示す正面図。
【図11】図11は、前記バルブ装置において、吸着力低減モードでの吸気オンおよび吸気オフにおける対向板および遮蔽板を示す正面図。
【図12】図12は、前記取出し装置の吸引機構を示す斜視図。
【図13】図13は、前記取出し装置の制御部および各種センサを示すブロック図。
【図14】図14は、単位時間あたりの郵便物の厚さの積分値の変化を示す図。
【図15】図15は、前記取出し装置の供給部に装填されたバルク状態の郵便物の例を示す平面図。
【図16】図16は、吸気機構のバルブ装置の制御動作を示すフローチャート。
【図17】図17は、通常モードの吸気オン時における吸着機構のエアー吸着圧力の変化および遮蔽板の位相角度を示す図。
【図18】図18は、他の実施形態に係る取出し装置において、吸着力低減モードでのバルブ装置の吸気オン動作を概略的に示す図。
【図19】図19は、他の実施形態に係る取出し装置において、吸着力低減モードの吸気オン時における吸着機構のエアー吸着圧力の変化および遮蔽板の位相角度を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について、詳細に説明する。
図1は、実施形態に係る紙葉類の取出し装置1を含む紙葉類処理装置100を概略的に示すブロック図である。この紙葉類処理装置100は、取出し装置1の他に、判別部102、リジェクト部104、スイッチバック部106、および集積部108を備えている。なお、本実施形態の処理装置100で処理する紙葉類は郵便物であるが、被処理媒体(すなわち紙葉類)は郵便物に限るものではない。
【0011】
ハガキ、封書などの郵便物は、複数枚積層された状態で取出し装置1にセットされ、取出し装置を後述するように動作することで、搬送路101上に1枚ずつ取出される。搬送路101には、図示しない複数組の無端状の搬送ベルトが搬送路101を挟むように延設されている。取出された郵便物は、搬送ベルトに挟持されて搬送される。
【0012】
搬送路101上に取出された郵便物は、判別部102に送られ、ここで郵便物から各種情報が読み取られる。判別部102は、読み取った各種情報に基づいて、郵便物の搬送姿勢や区分先などを判別する。特に、判別部102は、郵便物に書かれてある郵便番号や住所などの宛先情報を読み取って区分先を判別する。
【0013】
判別部102を通過した後、郵便物は、ゲートG1を介してその搬送方向が振り分けられる。つまり、判別部102でリジェクトすべき郵便物であることが判別された郵便物は、ゲートG1を介してリジェクト部104へ搬送され、リジェクト部に集積される。それ以外の郵便物は、ゲートG1を介して集積部108へ搬送され、この集積部108内に集積される。
【0014】
このとき、郵便物の搬送方向を逆転させる必要があることを判別部102で判別した場合、郵便物はゲートG1およびゲートG2を介してスイッチバック部106へ送り込まれ、ここで搬送方向が逆転される。搬送方向を逆転する必要のない郵便物は、ゲートG2を介してスイッチバック部106を迂回され、集積部108へ搬送される。
【0015】
搬送路101を介して集積部108へ送り込まれた郵便物は、判別部102における判別結果に従って図示しない区分集積ポケットに区分集積される。各区分集積ポケットに区分集積される郵便物は、天地が揃った状態で集積される。
【0016】
次に、紙葉類の取出し装置1について詳細に説明する。
図2は、取出し装置1を示す平面図である。取出し装置1は、複数通の郵便物Pを積層状態で、かつ、各郵便物が水平面に対してほぼ垂直に立った立位状態でセットされる投入部(供給部)51、投入された複数通の郵便物Pをその重ね方向に移動させて移動方向先端にある郵便物Pを後述する取出し位置87へ供給する供給機構2、取出し位置87に供給された郵便物Pをその面方向、ここでは、移動方向とほぼ直交する方向、に送って後述する搬送路10上に取出す取出し機構56、投入部51を介して投入された郵便物Pのうち最先の郵便物Pを取出し位置87に向けて吸引する吸引機構53、取出し位置87から取出される郵便物Pに連れ出される2通目以降の郵便物Pを1通目の郵便物Pから分離する分離機構54、取出し位置87に供給された郵便物Pに対して取出し機構56よりも上流側で負圧を作用させて正逆両方向に回転することで当該郵便物Pの取出し動作を補助する補助機構55、および分離機構54を通過した郵便物Pを取出し速度よりも少し速い速度で引き抜いて下流側へ搬送する搬送機構58を備えている。
【0017】
取出し装置1は、投入部51の一端にある取出し位置87から搬送路10上に取出された郵便物Pの通過を検知する2つのセンサ57a、57b、および複数の搬送ガイド84を有する。2つのセンサ57a、57bは、それぞれ、郵便物Pが通過する搬送路10を挟むように配設された発光部および受光部を有し、その光軸を郵便物Pが遮ることをもって当該郵便物Pの通過を順に検知する。また、複数の搬送ガイド84は、郵便物Pの端辺や面を接触させてその移動や搬送をガイドする。
【0018】
図2および図3に示すように、投入部51には、複数枚の郵便物Pが重ねられた状態で且つ立位状態でまとめて載置される。投入部51の底壁51aには、各郵便物Pの下端辺を当接せしめてその重ね方向(図中矢印F方向)に送るメインベルト126と、郵便物Pの姿勢(傾き)を調整する一対のサブベルト125と、が設けられ、各々独立して駆動可能となっている。メインベルト126は、送り方向Fに沿って、投入部51のほぼ全長に亘って延びている。サブベルト125は、取出し位置87の近傍で、メインベルト126の両側に設けられている。
【0019】
複数枚の郵便物Pのうち移動方向後端にある郵便物Pに面接する位置にはバックアッププレート9が配置されている。バックアッププレート9は、例えば、メインベルト126に簡易的に接続され、メインベルト126と同期して矢印F方向に移動することで郵便物Pを取出し位置方向に押し、移動方向先端の郵便物Pを取出し位置87へ供給する。これらメインベルト126、サブベルト125、バックアッププレート9、およびメインベルト、サブベルトを駆動する後述の駆動モータ90は、供給機構2として機能する。
【0020】
1つの搬送ガイド84は、矢印F方向に沿って投入部51の一側を規定する位置に延設され、各郵便物Pの端辺を案内する。また、他の複数の搬送ガイド84は、投入部51の一端側の取出し位置87に沿って並べて配置され、矢印F方向に供給された移動方向先端の郵便物Pを取出し位置87に停止および位置決めするよう機能するとともに、取出し位置87から取出される郵便物Pの片面に接触して案内するよう機能する。
【0021】
図2に示すように、取出し機構56は、チャンバ52、ガイド60、および真空ポンプ61(または相当品)を有する。真空ポンプ61は配管62および後述するバルブ装置300を介してチャンバ52内に接続されている。また、取出し機構56は、少なくとも一定領域の部位が取出し位置87に沿って図中矢印D1方向(郵便物Pの取出し方向)に走行する無端状の取出しベルト(取出し部材)79、およびこの取出しベルト79を駆動するモータ81を有する。取出しベルト79は、少なくともその一部が、取出し位置87および取出し位置87から連続する搬送路10に沿って図中矢印D1方向に走行するように、複数のローラ80に巻回されて張設されている。
【0022】
図2、図4、図5に示すように、ガイド60は、取出しベルト79の内側でベルトを挟んで取出し位置87に対向する位置に配置されている。チャンバ52は、ガイド60の裏面側、すなわち取出しベルト79およびガイド60を挟んで取出し位置87に対向する位置に配置されている。取出しベルト79は、図4に部分的に拡大して示すように、多数の吸着孔79aを有している。また、ガイド60は、図5に示すように、取出しベルト79の走行方向D1に沿って延びる細長い複数本のスリット60aを有している。
【0023】
図6および図7は、空気吸引源としての真空ポンプ61とチャンバ52との間に設けられるロータリ式のバルブ装置300を示している。真空ポンプ61の吸気口から延びる配管62はバルブ装置300のバルブ機構部302に接続され、更に、バルブ機構部から延出した後、チャンバ52に接続されている。真空ポンプ61、配管62、バルブ装置300およびチャンバ52は、郵便物を取出しベルト79に吸着する吸着機構を構成している。
【0024】
ロータリ式のバルブ装置300は、ベース330と、ベース上に設けられたバルブ機構部302と、このバルブ機構部に組み込まれた遮蔽部材としての円盤状の遮蔽板304を回転するモータ306と、を備えている。バルブ機構部302は、略矩形の第1ブロック321、この第1ブロック321に対向した第2ブロック323、これら第1および第2ブロック321、323の間に形成された隙間Sに回転可能に配置された円盤状の遮蔽板304を有している。
【0025】
ベース330上に支持されたモータ306の回転軸306aには、カップリング328を介して、遮蔽板304の駆動軸329が同軸に接続されている。駆動軸329は、第1ブロック321を貫通して延び、複数のベアリング326を介して第1ブロック321に回動自在に取り付けられている。遮蔽板304は、ネジ329aを用いて駆動軸329の先端に固定されている。
【0026】
下流側の配管62aは、配管継手322aを介して第1ブロック321の裏面側から接続され、上流側の配管62bは、配管継手322bを介して第2ブロック323の裏面側に接続されている。上流側の配管62bと下流側の配管62aとは、遮蔽板304を間に挟んで、互いに同軸的に対向している。この状態で、第2ブロック323は、複数のボルト134によって第1ブロック321に締結固定されて位置決めされている。
【0027】
図7および図8に示すように、第1ブロック321は、第2ブロック323に対向した対向面321aを有し、第2ブロック323は、第1ブロック321に対向した対向面323aを有する。これら対向面321a、323aは、遮蔽板304より一周り大きい円形に形成され、互いに平行に対向している。
【0028】
第1ブロック321の対向面321aには、遮蔽板304と略同径の円板状のシールド部材335が貼り付けられており、第2ブロック323の対向面323aにも、遮蔽板304と略同径のシールド部材336が貼り付けられている。シールド部材335とシールド部材336との間には、遮蔽板304を回転可能に受け入れる隙間Sが形成されている。遮蔽板304は、この隙間S内で回転自在に配置されている。
【0029】
第1ブロック321には、一端を配管62aに連通せしめた長孔337aが形成されている。長孔337は、第1ブロック321のシールド部材335をも貫通し、その他端が隙間Sに連通している。
【0030】
第2ブロック323にも、一端を上流側の配管62bに連通せしめた長孔337bが形成されている。長孔337bは、第2ブロック323のシールド部材336をも貫通し、その他端が隙間Sに連通している。そして、長孔337aおよび長孔337bは、それぞれ断面が円形に形成され、互いに略同軸に対向している。また、長孔337a、337bは、シールド部材335、336の中心から偏心した位置に形成されている。
【0031】
隙間Sに対向した対向面335a、336a同士の距離は、遮蔽板304の厚さより僅かに大きくされているが、長孔337a、337bの他端が露出した部分では、シールド部材335、336間の距離が近付けられている。つまり、長孔337aの他端と長孔337bの他端が遮蔽板304によって塞がれた状態で、隙間Sから漏れる空気をできるだけ少なくするよう、各シールド部材335、336の各長孔の他端周縁部が隙間Sに向けて僅かに円環状に突出している。
【0032】
図9に示すように、遮蔽板304には、その中心から偏心した位置に連通孔325が貫通して形成されている。本実施形態では、連通孔325は、配管62a、62bの内径、すなわち、長孔337a、337bの径と略同じ径かあるいは僅かに小さい径の円形に形成されている。連通孔325の形状は、円形に限らないが、配管62a、63bが一般に円筒形であるため、空気抵抗をできるだけ小さくするため配管と同じ円形にしている。
【0033】
図10(a)に示すように、後述する通常モードにおいて、吸気ON時、遮蔽板304はモータ306により回転され、連通孔325がシールド部材335、336の長孔337a、337bと同軸的に重なるオン位置(第1オン位置)に移動される。これにより、下流側の配管62aと上流側の配管62bが連通孔325を通して連通することにより、配管62を開放し、空気を流通可能とする。また、図10(b)に示すように、吸気OFF時、遮蔽板304が約90度回転され連通孔325がオフ位置に移動し、遮蔽板304によって配管62が遮蔽され、空気の吸気が停止される。
【0034】
上記のように、真空ポンプ61により空気を吸気した状態で、バルブ装置300の遮蔽板304を回転することにより、配管62が所定の周期で開放、閉塞を繰り返す。これにより、配管62を介して吸気機構のチャンバ52が所定の周期で間欠的に吸気、停止される。
【0035】
また、後述するように、薄い書状あるいは短い書状が検出された場合、あるいは、低減モードが設定された場合、図11(a)に示すように、吸気ON時、遮蔽板304はモータ306により回転され、連通孔325が第2オン位置へ移動する。この第2オン位置において、連通孔325は、シールド部材335、336の長孔337a、337bと同軸的な位置から僅かにずれて長孔と重なって位置する。すなわち、連通孔325は、一部が長孔337a、337bから外れて位置する。これにより、連通孔325が第1オン位置にある場合よりも、配管62の流通面積が減少し、チャンバ52の吸気力を低減する。
【0036】
図11(b)に示すように、吸気OFF時、遮蔽板304が約90度回転され連通孔325がオフ位置に移動し、遮蔽板304によって配管62が遮蔽され、チャンバ52の吸気が停止される。
【0037】
図2、図4、および図5に示すように、バルブ装置300の連通孔325を第1あるいは第2オン位置に移動させた状態で真空ポンプ61を動作させてチャンバ52内を真空引きすると、ガイド60に対向したチャンバ52の開口(図示せず)、ガイド60の複数本のスリット60a、および矢印D1方向に走行する取出しベルト79の多数の吸着孔79aを介して、取出し位置87に供給された郵便物Pに負圧(図中矢印S1)が作用し、当該郵便物Pが取出しベルト79の表面に吸着される。吸着された郵便物Pは、取出しベルト79の走行に伴って取出し位置87から搬送路10上へ取出される。
【0038】
この際、真空ポンプ61による矢印S1方向の吸着力は、取出しベルト79に吸着された1枚目の郵便物Pを取出し方向D1に繰り出す搬送力が、少なくとも、1枚目の郵便物Pと2枚目の郵便物Pとの間に働く摩擦力より大きくなるように設定される。この取出し機構56は、取出し位置87の郵便物Pを1枚ずつ搬送路10上へ繰り出すが、複数枚が重なった状態で搬送路10上に繰り出されたものに関しては後述する分離機構54によって1枚ずつに分離する。
【0039】
図2および図6に示すように、吸引機構53は、取出し位置87に対して搬送ガイド84の裏面側に配置されたチャンバ63、およびチャンバ63内の空気を吸引するためのブロワー65(または相当品)を有する。ブロワー65は配管66を介してチャンバ63内に接続されている。チャンバ63は、取出し機構56と後述する補助機構55との間で、その図示しない開口部を搬送ガイド84の裏面に対向させる姿勢で取出し位置87に隣接して配置される。また、搬送ガイド84は、図6に部分的に拡大して示すように、チャンバ63の開口の幅に合わせて複数の長孔84aを有する。複数の長孔84aは、チャンバ63の開口内に配置されている。
【0040】
図2および図12に示すように、ブロワー65を動作させてチャンバ63内の空気を吸引すると、搬送ガイド84の複数の長孔84aを介して図中矢印B1方向に空気流が生じ、投入部51に投入された複数通の郵便物Pのうち取出し位置87に最も近い郵便物Pが取出し位置87に向けて吸引される。取出し位置87に吸引された郵便物Pが取出された後は、次の郵便物Pが取出し位置87に向けて吸引される。つまり、この吸引機構53を設けることで、次に取出す郵便物Pを素早く取出し位置87へ供給することができる。そのため、供給機構2による矢印F方向の供給力を弱くしても1通目の郵便物Pだけは常に安定して取出し位置87へ素早く供給することができる。これにより、上述した取出し機構56による郵便物Pの取出し動作を速めることができる。
【0041】
図2に示すように、分離機構54は、取出し位置87の下流側(図2中上方)に延びた搬送路10に対し、上述した取出し機構56と反対側に設けられている。この分離機構54は、搬送路10を介して搬送される郵便物Pに対して、負圧を作用させつつ郵便物Pの取出し方向と逆方向の分離トルクを付与する。つまり、この分離機構54を動作させることで、取出し位置87から取出される郵便物Pに2通目以降(3通以上重なって取出される場合もある)の郵便物Pが連れ出された場合であっても、上述した負圧および分離トルクによってこの2通目以降の郵便物Pが停止され、或いは逆方向に戻されて、1通目の郵便物Pと分離されることになる。
【0042】
より詳細には、分離機構54は、郵便物Pの取出し方向D1に沿って正逆両方向に回転可能に設けられた分離ローラ68を有する。分離ローラ68は、金属材料などの剛体により略円筒形に形成されており、その外周面が搬送路10に露出する位置に位置決め配置されている。分離ローラ68は、搬送路10に対して固定的に取り付けられた回転軸、すなわち後述するチャンバ64を有する円筒体67に対して、回転可能に取り付けられている。分離ローラ68は、その内周面と外周面を連絡するように貫通した多数の吸着孔を有する。円筒体67は、負圧を発生させるためのチャンバ64を有し、このチャンバ64の開口が搬送路10を向く姿勢で位置決めされて固設されている。
【0043】
分離機構54は、分離ローラ68を所望のトルクで正逆両方向に回転させるACサーボモータ69、およびこのモータ69による駆動力を分離ローラ68に伝達するための無端状のタイミングベルト70を有する。タイミングベルト70は、モータ69の回転軸に固設されたプーリおよび分離ローラ68の回転軸に固設された図示しないプーリに巻回されて張設されている。さらに、分離機構54は、真空ポンプ71を備え、この真空ポンプは、配管72を介して、円筒体67のチャンバ64に接続されている。
【0044】
真空ポンプ71を動作させてチャンバ64内を真空引きすると、チャンバ64の開口、および分離ローラ68の多数の吸着孔のうちチャンバの開口に対向した特定の吸着孔を介して、搬送路10を通過する郵便物Pの表面に負圧が作用され、分離ローラ68の外周面に当該郵便物Pが吸着される。この際、分離ローラ68が回転している場合には、分離ローラ68の外周面に吸着された郵便物Pにも分離ローラ68の回転方向に沿った搬送力が与えられる。
【0045】
一方、ACサーボモータ69は、分離ローラ68に対して常に、取出し方向D1と逆方向D2の一定の分離トルクを付与するように分離ローラ68を駆動する。この分離トルクは、搬送路10を介して搬送される郵便物Pが1枚である場合、この1枚の郵便物Pを吸着せしめた分離ローラ68が取出し方向D1に沿って当該郵便物Pと一緒に回ることのできる程度に設定され、且つ複数枚の郵便物Pが重なった状態で搬送路10上に取出される場合には、分離ローラ68側の2通目以降の郵便物Pを停止または逆方向に戻して1通目の郵便物Pから分離できる程度に設定されている。
【0046】
取出し位置87から1通の郵便物Pが正常に取出されて搬送路10を介して搬送されている状態では、取出し機構56によって当該郵便物Pに付与される順方向(矢印D1方向)の搬送力の方が、逆方向D2の分離トルクを与えられた分離ローラ68によって当該郵便物Pに付与される逆方向の搬送力よりも大きくなり、当該郵便物Pが順方向D1に搬送されるとともに、分離ローラ68は当該郵便物Pと共に順方向D1に回り、或いは停止し、或いは取出し方向とは逆方向に空回りする。
【0047】
分離ローラ68が逆方向D2に空回りする場合、一定の分離トルクを与え続けると回転速度が徐々に速くなって郵便物Pの取出しに悪影響を及ぼす可能性があるため、本実施の形態では、分離ローラ68の逆転速度に上限を設けてある。具体的には、郵便物Pの取出し速度より絶対値が小さい上限速度に設定してある。
【0048】
図2に示すように、吸引機構53の図中下方、すなわち郵便物Pの取出し方向D1に沿って取出し機構56の上流側に配置された補助機構55は、上述した分離機構54と略同じ構造を有する。すなわち、補助機構55は、郵便物Pの取出し方向D1に沿って正逆両方向D2に回転可能に設けられた補助ローラ75を有する。
【0049】
補助ローラ75は、取出し位置87に対向して固定的に設けられた回転軸、すなわち円筒体74に対して回転可能に取り付けられ、その内周面と外周面を連絡するように貫通した多数の吸着孔を有する。補助ローラ75は、略円筒形の金属材料などの剛体により形成されており、その外周面が取出し位置87に露出する位置に位置決め配置されている。円筒体74は、負圧を発生させるためのチャンバ73を有し、このチャンバ73の開口が取出し位置87に向かう姿勢で位置決めされて固設されている。
【0050】
補助機構55は、補助ローラ75を正逆両方向に所望するトルクで回転させるためのACサーボモータ88、およびこのモータ88による駆動力を補助ローラ75に伝達するための無端状のタイミングベルト76を有する。補助機構55は、補助ローラ75を回転可能に取り付けた円筒体74のチャンバに配管78を介して接続された真空ポンプ77を有する。
【0051】
補助機構55は、補助ローラ75を正逆両方向に所望する速度で回転および停止させるとともに、真空ポンプ77による負圧をオン/オフさせることで、郵便物Pの取出し動作および分離動作をサポートする。
【0052】
図2に示すように、取出し機構56により取出された郵便物Pを下流側へ搬送する搬送機構58は、複数の搬送ローラ22、83、テンションローラ26、搬送ベルト20、82、85、テンション機構21を有している。搬送ローラ83は、分離ローラ68の下流側に配置され、搬送路10に隣接している。この搬送ローラ83と図示しない他の搬送ローラとに搬送ベルト82が捲回されている。テンションローラ26と搬送ローラ22とに搬送ベルト20が捲回され、この搬送ベルト20は、搬送ローラ83と共に搬送路10を規定しているとともに搬送ベルト82に接触している。
【0053】
テンション機構21は、その中心部が枢軸25によって回動自在に支持されたテンションアーム24を備えている。テンションローラ26はテンションアーム24の一端に回転自在に支持されている。テンションアーム24の他端には引っ張りばね27が架設され、により付勢されている。これにより、テンションアーム24は、枢軸25の周りで、反時計方向に付勢され、ストッパ29に弾性的に接触している。これにより、テンションローラ26および搬送ベルト20は搬送路10方向に付勢され、搬送ベルト20は張力を保った状態で搬送ベルト82に接触している。更に、他方の搬送ローラ22と図示しない他の搬送ローラとに搬送ベルト85が捲回され、この搬送ベルト85は、搬送ベルト82に接触している。2つの搬送ローラ22間には、これらのローラを同期して回転させる駆動ベルト23が捲回されている。郵便物Pは、搬送ベルト82と搬送ベルト20および85との間に挟持され、これらの搬送ベルトによって搬送される。
【0054】
図2、図3および図13に示すように、取出し装置1は、取出された郵便物Pの厚さを検出する厚さ検出器120、取出された郵便物Pの枚数をカウントするカウントセンサ(カウンタ)121を備えている。厚さ検出器120およびカウントセンサ121は、センサ57a、57bの下流側で搬送路10に設けられている。また、取出し装置1は、取出し位置87あるいは取出し位置87の僅かに上流側において、投入部51に載置されている郵便物Pの有無や疎密を検出する複数のセンサ、例えば、第1書状センサ122および第2書状センサ127と、供給機構2による郵便物Pの押込み力、特に、最先の郵便物Pに作用する押込み力を検出する押込み力検出センサ123と、を備えている。なお、厚さ検出器120は、カウントセンサ121を兼ねる構成としてもよい。
【0055】
センサ57a、57b、厚さ検出器120、カウントセンサ121、第1書状センサ122、第2書状センサ127、押込み力検出センサ123は、取出し装置1の制御部200に接続され、検出信号を制御部200に出力する。この制御部200には、真空ポンプ61,71、77を駆動するドライバ202、ブロワー65を駆動するドライバ204、ACサーボモータ69、81、88を駆動するドライバ206、バルブ装置300のモータ306を駆動するドライバ208、供給機構2の駆動モータ90を駆動するドライバ107がそれぞれ接続され、制御部200は、各センサからの検出信号に応じて、各ドライバを駆動する。
【0056】
図13示すように、取出し装置1は、オペレータにより手動で操作されるモード設定部340を備え、このモード設定部340は制御部200に接続されている。モード設定部340は、処理する郵便物の厚さ、あるいは、長さに応じて、バルブ装置300の吸引力を変更するモードを設定することができる。通常の形態の郵便物、例えば、所定の厚さおよび長さの郵便物の処理に用いる通常モードと、所定の値よりも薄いあるいは短い郵便物を処理する際に用いる吸引力低減モードと、を選択することができる。
【0057】
押込み力検出センサ123は、例えば、圧力センサや、レバーとバネを利用してレバーの押込み量を検出するセンサ等を用いることができ、郵便物Pが取出し位置87にどの程度が押込まれてくるかを判断する。例えば、制御部200は、押込み力検出センサ123からの検出信号により、郵便物Pの押込みが無ければ、すなわち、検出した押込み力が基準値よりも小さい場合、供給機構2を動かして、郵便物Pを前方に送りこむといった動作を促す。また、郵便物Pが押込まれ過ぎた場合には、すなわち、検出した押込み力が基準値よりも小さい場合、制御部200は、供給機構2を逆向きに作動させて郵便物Pの詰まりすぎ状態を緩和させることできる。押込み力検出センサ123は、押込み力そのものを測る場合もあれば、郵便物Pの有無を検出するだけの場合もある。
【0058】
図2および図3に示すように、第1書状センサ122および第2書状センサ127は、取出し位置87あるいはその僅か上流側における紙葉類の有無を、互いに異なる方向から見て検知するセンサであり、少なくとも1つは光学センサで構成されている。本実施形態において、第1書状センサ122は、透過光を検知する透過光学センサで構成され、取出し位置87近傍に集積されている郵便物Pの面方向に検出光を当て、透過した検出光を検知するように設けられている。第1書状センサ122は、郵便物Pが第1書状センサ122の光軸上に無い有りを検出し、あるいは、郵便物Pの疎、密を検出する。例えば、取出し位置87に郵便物Pが有る場合、第1書状センサ122からの検出光は、郵便物Pの書状エッジに当たって遮られ、第1書状センサは暗(オフ)となる。これにより、第1書状センサ122は、郵便物有り情報(暗)を出力する。また、取出し位置87に郵便物Pが無い場合、検出光は、取出し位置を透過し、第1書状センサ122により検知される。これにより、第1書状センサ122は、郵便物無し情報(明)を出力する。更に、第1書状センサ122は、郵便物の厚さを検知する厚さセンサとしても機能することができる。
【0059】
第2書状センサ127は、郵便物Pからの反射光を検知する反射光学センサで構成されている。この第2書状センサ127は、例えば、投入部51の前面壁の近傍に設けられ、取出し位置87に位置している郵便物Pに対して郵便物の表面と交差する方向に検出光を当て、郵便物表面からの反射光を検知するように設けられている。第2書状センサ127は、例えば、取出し位置87に郵便物Pが有る場合、第2書状センサ127からの検出光は、郵便物Pの表面に当たって反射し、この反射光を検知することにより明(オン)となる。これにより、第2書状センサ127は、郵便物有り情報(明)を出力する。また、取出し位置87に郵便物Pが無い場合、第2書状センサ127は反射光を受光せず、暗(オフ)となる。これにより、第2書状センサ127は、郵便物無し情報(暗)を出力する。更に、第2書状センサ127は、長さの短い郵便物Pを検出する長さセンサとしても機能することができる。
【0060】
上記のように構成された取り出し装置1によれば、通常モードにおいて、制御部200は、駆動モータ90によりメインベルト126の走行を制御し、供給機構2による郵便物Pの供給速度あるいは送り量を制御する。第1書状センサ122および第2書状センサ127の少なくとも一方から郵便物無し情報が出力された場合、制御部200は、供給機構2の送り動作を実行し、郵便物Pを取出し位置87へ送り込む。すなわち、取出し位置87に郵便物Pが無いと検出された場合、制御部200は、郵便物Pが空か疎になり、郵便物Pの取出しが間欠的になるおそれがあると判断し、供給動作を行う。その後、制御部200は、第1書状センサ122および第2書状センサ127から郵便物有り情報が出力された時点で、供給機構2による郵便物Pの供給動作を停止する。
【0061】
取出し機構56は、バルブ装置300の連通孔325を第1オン位置に移動させた状態で真空ポンプ61を動作させ最大の吸引力でチャンバ52内を真空引きする。すると、ガイド60に対向したチャンバ52の開口(図示せず)、ガイド60の複数本のスリット60a、および矢印D1方向に走行する取出しベルト79の多数の吸着孔79aを介して、取出し位置87に供給された郵便物Pに負圧(図中矢印S1)が作用し、当該郵便物Pが取出しベルト79の表面に吸着される。吸着された郵便物Pは、取出しベルト79の走行に伴って取出し位置87から搬送路10上へ取出される。所定期間だけチャンバ52を吸気し、郵便物Pが取出された後、バルブ装置300の連通孔325をオフ位置に移動させ吸気を停止する。これを所定の周期で繰り返すことにより、郵便物Pを1枚ずつ取出す。この取出し機構56は、取出し位置87の郵便物Pを1枚ずつ搬送路10上へ繰り出すが、複数枚が重なった状態で搬送路10上に繰り出された場合は、分離機構54によって1枚ずつに分離する。
【0062】
また、取出す郵便物(書状)Pの形態情報として、薄いあるいは短いが検出された場合、バルブ装置300は、吸気オン状態での連通孔325の位置を第1オン位置から第2オン位置にずらすことにより、配管62の流通面積を低減し吸着力を少し小さくする。これにより、郵便物Pが薄くて透気しやすい場合でも、2枚目の郵便物まで吸着するのを防止し、また、短い郵便物が取出されて抜けた直後の2枚目の郵便物を吸着する力を抑えることにより、2枚目の郵便物が前に出て行くことを低減する。
【0063】
郵便物、例えば、書状の厚さ検出方法、長さ検出方法について説明する。
<厚さ検出方法>
1)オペレータが手動によりモード設定部340の切替えを行う。
装置のオペレータが、供給部に装填する郵便物に対して、予めモードなどを選ぶことにより、厚さに適したモードを設定する。例えば、薄いあるいは短い郵便物を装填した場合は、モード設定部340により吸気力低減モードを設定する。
【0064】
2)厚さ検出器により郵便物の厚さを検出する。
【0065】
取出された郵便物Pの厚さを厚さ検出器120で計測することにより、投入部51の取出し位置87近傍にある郵便物Pの厚さを予想する。厚さ検出器120は、レーザー変位計(光学式)による距離測定などによる方法や、他にも接触式による厚さ検出方法など各種考えられる。図14に示すように、厚さ検出器120で各々の郵便物の厚さを測定し、単位時間T0当たりに通過した郵便物の厚さの単位時間平均値THを算出する。ここで、図15に示すように、厚さの異なる郵便物がバルク状態で投入部51に装填されている場合、厚さ情報がほぼ一定であると予想され、ここで算出される平均値THと、投入部51の取出し位置87にいる郵便物の各々の厚さとは同じであると考えることができる。
【0066】
3)投入部51の郵便物送りなどの制御に用いる第1書状センサ122の信号を用いる。
【0067】
投入部51に装填されている郵便物の疎密状態を検出して供給の送りを制御する第1書状センサ122の信号(明暗情報)を用いて郵便物の厚さを検出する。投入部51に薄い郵便物のバルクが装填されている場合、郵便物間の隙間が開きにくく、第1書状センサ122の信号は暗時間が長くなる傾向がある。単位時間当たりの第1書状センサ122の暗時間を積分し、常に積分値を監視する。例えば、監視のサンプリング周期が1msで、暗時間の積分値>0.9(90%)になった場合に、制御部200は、所定の厚さよりも薄い薄物の郵便物のバルクが取出し位置87に存在すると判断する。
【0068】
<長さ検出方法>
1)オペレータが手動によりモード設定部340の切替えを行う。
装置のオペレータが、投入部51に装填する郵便物に対して、予めモードなどを選ぶことにより、長さに適したモードを設定する。例えば、所定の長さよりも短い郵便物を装填した場合は、モード設定部340により吸気力低減モードを設定する。
【0069】
2)取出した郵便物を検知するセンサを用いる。
取出された郵便物Pの長さを、何らかの光学センサ、例えば、カウントセンサ121や厚さ検出器120により計測し、投入部51の取出し位置87にいる郵便物の長さを予想する。ここで、図15に示すように、長さの異なる複数種類の郵便物がバルク状態で装填されている場合、カウントセンサ121や厚さ検出器120で検出された長さ情報がほぼ一定であると予想され、投入部51の取出し位置87にいる郵便物の書状長さは検出結果と同じであると考えることができる。
【0070】
3)第2書状センサ(反射センサ)127等を用いる。
図2および図3に示すように、第2書状センサ127で取出し位置87における郵便物Pを検出する。取出し位置87近傍の郵便物が所定の長さよりも短い場合には、第2書状センサ127で郵便物を検出することができず、しばらく短い郵便物が続くと予想することができる。
【0071】
上述した郵便物の厚さ検出および長さ検出に応じて、バルブ装置300は、郵便物の吸着力を制御する。バルブ装置300の基本動作は、例えば、以下の通りとなる。図16に示すように、通常モードが設定されている場合、まず、バルブ装置300を通常モードで動作させる(S1)。すなわち、吸気オン時、遮蔽板304の連通孔325を第1オン位置に移動させ、配管62の長孔377a、377bと同軸的に配置し、ほぼ最大の吸着力にて郵便物Pを吸着する。
【0072】
取出し動作の間、制御部200は、第1書状センサ122より取出し位置87での郵便物の疎密を検出し、単位時間当たりの明暗の積分値を監視する(S2)。そして、単位時間に対する暗時間の積分値が一定値αよりも小さいか確認し(S3)、αよりも小さい場合には、通常厚さの郵便物であると判断して通常モードを継続する。
【0073】
単位時間に対する暗時間の積分値が一定値(α)よりも大きい場合、制御部200は取出し位置87にある郵便物が所定の厚さよりも薄くなったと予測し、バルブ装置300の動作を吸着力低減モードに変更する(S4)。吸着力低減モードにおいて、バルブ装置300は、吸気オン時、遮蔽板304の連通孔325を第2オン位置に移動させ、通常モード時よりも吸着力を小さくする。
【0074】
吸着力低減モードに移行したことにより、異常が起きていないかの確認は、例えば、搬送路上のカウントセンサ121の信号を確認することにより行う(S5)。制御部200は、カウントセンサ121が一定時間T、例えば、50ms、連続“明”とならない場合、郵便物が正常に取出されてカウントセンサ121を通過していると判断し(S6)、吸着力低減モードを継続する。この間、制御部200は、第1書状センサ122の信号を監視し、単位時間に対する暗時間の積分値が一定値βよりも小さいか否かを判断する(S7)。ここで、積分値βは、前述した積分値αよりも小さい(β<α)ことが望ましい。一例として、α=0.9、β=0.8としている。
【0075】
積分値>βの場合、制御部200は、薄い郵便物が続いていると判断し、S6に戻り、吸着力低減モードを継続する。また、積分値<βとなった場合、制御部200は、取出し位置における郵便物が通常の厚さの郵便物に戻ったと予測し、バルブ装置300の動作を通常モードに戻す(S8)。ここで、α=βとすると、モード変更した直後に元に戻る条件になってしまう場合があり、不安定な制御となる虞がある。そのため、ここでは、αおよびβの値をずらし、β<αに設定している。
【0076】
前述したステップS6において、カウントセンサ121が一定時間T以上、連続“明”のままとなっている場合、制御部200は、何らかの影響で郵便物を正常に取出せない(異常状態)と判断し、通常モードに移行する(S7)。その後、制御部200は、第1書状センサ122の信号を監視し、単位時間に対する暗時間の積分値が一定値βよりも小さいか否かを判断する(S8)。積分値>βの場合、制御部200は、ステップS8に戻り、通常モードを継続する。また、積分値<βとなった場合、制御部200は、取出し位置における郵便物が通常の厚さの郵便物に戻ったと予測し、バルブ装置300の動作を通常モードS1に戻す。
【0077】
ステップS6において異常状態であると判断された後、そのまま第1書状センサ122の検知情報により郵便物が所定値よりも薄いと判断してしまうと、異常処理を繰り返す可能性が高くなる。そのため、本実施形態では、異常状態検出後、第1書状センサ122により、通常厚さの郵便物に戻ったことを確認するまでは、吸着力低減モードに移行することが無いようにしている。
【0078】
なお、郵便物の厚さ検知は、第1書状センサの検出情報による場合に限らず、前述した厚さ検出器120等の他のセンサによる検出情報に基づいて行ってもよい。また、上記説明では、郵便物の厚さ検知に応じてバルブ装置300の動作モードを変更したが、これに限らず、前述した長さ検出方法により検出した郵便物の長さに応じて、動作モードを変更してもよい。例えば、所定長さよりも短い郵便物であることが検知された場合、バルブ装置300の動作モードを通常モードから吸着力低減モードに変更する構成としてもよい。
【0079】
以上のように構成された取出し装置1を備えた紙葉類処理装置によれば、取出し位置にある郵便物あるいは取出された郵便物の厚さ、あるいは長さを検出し、その情報に基づいて、バルブ装置を制御して吸着力を調整することにより、所定よりも厚い郵便物あるいは所定よりも短い郵便物でも吸着力の悪影響を受けることなく多重取出しを低減することができる。これにより、紙葉類の多重取り出しを低減し、安定した紙葉類の取出しが可能な紙葉類の取出し装置およびこれを備える紙葉類処理装置を提供することができる。
【0080】
次に、他の実施形態に係る取出し装置について説明する。
前述した実施形態では、単純に薄いあるいは短い紙葉類などの場合に、バルブ装置300における遮蔽板304の連通孔325の位置をずらして、吸着エアーを絞ることにより多重取りを防いでいるが、エアーの最大吸着力が下がることにより、紙葉類が取出しベルト79に吸着されて繰り出されるまでの一連の動作が遅れる可能性も考えられる。
【0081】
他の実施形態によれば、通常モードにおいて、バルブ装置300は前記実施形態と同様に動作する。すなわち、図10(a)で示したように、吸気ON時、バルブ装置300の遮蔽板304は、モータ306により回転され、連通孔325がシールド部材335、336の長孔337a、337bと同軸的に重なるオン位置(第1オン位置)に移動される。これにより、下流側の配管62aと上流側の配管62bが連通孔325を通して連通することにより、配管62を開放し、空気を流通可能とする。図17a、図17bは、その際の吸着機構のエアー吸着圧力の変化および遮蔽板304の位相角度を示している。
【0082】
また、図10(b)で示したように、吸気OFF時、遮蔽板304が約90度回転され連通孔325がオフ位置に移動し、遮蔽板304によって配管62が遮蔽され、空気の吸気が停止される。
【0083】
一方、他の実施形態によれば、吸着力低減モードにおいて、吸着オンの指令が出た場合、図18に示すように、遮蔽板304はモータ306により吸着オフ状態から回転され、連通孔325は一旦、第1オン位置((長孔337a、337bと同軸的に重なる位置)を通り、第2オン位置(長孔337a、337bからわずかにずれた位置)を目標値に移動する。図19は、吸着機構のエアー吸着圧力の変化および遮蔽板304の位相角度を示している。連通孔325が第1オン位置を通過した後、第2オン位置へ至ることにより、書状吸着時に吸着圧力が一瞬ピークまで上がった後、低減した吸着圧力となる。このように、書状吸着時に吸着圧力が一瞬ピークまで上がるので、1枚目の郵便物が吸着ベルト79に吸着されるときの動作遅れは軽減される。その後、吸着圧力が下がることにより、2枚目の郵便物が吸着されることなく多重枚取りは防がれる。
【0084】
上記のように構成された他の実施形態においても、紙葉類の多重取り出しを低減し、安定した紙葉類の取出しが可能な紙葉類の取出し装置およびこれを備える紙葉類処理装置を提供することができる。
【0085】
本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0086】
なお、バルブ装置は、連通孔を有する遮蔽板の回転位置を変更することにより配管の流通面積を変更し吸着力を変更する構成としたが、これに限らず、配管の流通面積を変更できる構成であればよく、例えば、プランジャ等の直動式のバルブ装置を用いても良い。紙葉類は、郵便物に限らず、他の種々の紙葉類に適用可能である。
【符号の説明】
【0087】
1…取出し装置、2…供給機構、10…搬送路、51…投入部、53…吸引機構、
54…分離機構、55…補助機構、56…取出し機構、58…搬送機構、
61…真空ポンプ(空気吸引源)、62…配管、79…取出しベルト、
120…厚さ検知器、122…第1書状センサ、127…第2書状センサ、
200…制御部、300…バルブ装置、304…遮蔽板、306…モータ、
325…連通孔、337a、337b…長孔、P…郵便物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚重ねて載置された紙葉類をその重ね方向に移動させて移動方向先端にある紙葉類を取出し位置へ供給する供給機構と、
前記取出し位置に供給された紙葉類を前記投入部から1枚ずつ取出す取出し機構と、
前記紙葉類の形態を検出する検出器と、を備え、
前記取出し機構は、前記取出し位置にある紙葉類を取出す取出し部材と、前記取出し部材を通して吸気し前記紙葉類を取出し部材に吸着する空気吸引源と、前記取出し部材と空気吸引源との間に設けられ吸着力を調整するバルブ装置と、前記検出器により検出された紙葉類の形態に応じて、吸着時の吸着力を前記バルブ装置により変更する制御部と、を備えている紙葉類の取出し装置。
【請求項2】
前記検出器は、前記紙葉類の厚さを検知する厚さ検知器を備え、前記制御部は、前記厚さ検知器により、所定の厚さよりも薄い紙葉類が検知された際、吸着時の吸着力を前記バルブ装置により変更する請求項1に記載の紙葉類の取出し装置。
【請求項3】
前記検出器は、前記紙葉類の長さを検知する長さ検知器を備え、前記制御部は、前記長さ検知器により、所定の長さよりも短い紙葉類が検知された際、吸着時の吸着力を前記バルブ装置により変更する請求項1又は2に記載の紙葉類の取出し装置。
【請求項4】
前記バルブ装置は、前記空気吸引源と前記取出し部材とを繋ぐ配管を開閉する遮蔽部材を有し、所定の厚さよりも薄い紙葉類が検知された際、あるいは、所定の長さよりも短い紙葉類が検知された際、前記遮蔽部材により配管の流通面積を小さくし、吸着時の吸着力を通常時よりも弱くする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の紙葉類の取出し装置。
【請求項5】
前記遮蔽部材は、連通孔を有し、この連通孔が前記配管と同軸的に重なる第1オン位置と、前記連通孔が前記配管と僅かにずれて重なる第2オン位置と、へ移動可能に設けられ、前記遮蔽部材は、通常の吸着時、第1オン位置に移動され、前記所定の厚さよりも薄い紙葉類が検知された際、あるいは、前記所定の長さよりも短い紙葉類が検知された際、吸着時に前記第2オン位置へ移動される請求項4に記載の紙葉類の取出し装置。
【請求項6】
前記バルブ装置は、前記所定の厚さよりも薄い紙葉類が検知された際、あるいは、前記所定の長さよりも短い紙葉類が検知された際、吸着時に、吸着力が最大になる第1オン位置を一旦通過したのちに吸着力が弱まる第2オン位置に制御される請求項3に記載の紙葉類の取出し装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の紙葉類の取出し装置と、
前記取出し装置により取出された紙葉類を判別する判別装置と、
前記判別装置による判別に応じて前記紙葉類を振り分ける振分け機構と、
前記振り分けられた紙葉類を集積する集積部と、
を備える紙葉類処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−246071(P2012−246071A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117033(P2011−117033)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】